説明

多部位処置用ブランケット

対流加温ブランケットが、頭部と、中央部の側部から直角に延在する複数の周辺部を有する。中央部は、頭部下方の基端からブランケット足末端まで途切れることなく延在する。破断可能な、または引裂可能な共通シール部により、各周辺部は隣接する周辺部から分離できる。少なくとも1本の通り抜けられる通路が、各周辺部を中央部に接続されており、加熱された空気をブランケットに入れると、周辺部が膨らまされる。周辺部の各々は中央部に対して移動可能であり、患者の身体の相異なる部分に選択的に処置を施すことができる。ブランケットの頭部は、ブランケットの基部から延在する2つの管状部により形成されており、ブランケットを患者に掛けた時にこれら管状部が患者の頭を囲繞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対流式加温ブランケットに関し、より詳しくは、臨床医または外科医が、ブランケットに覆われている患者の身体の相異なる部分を選択的に処置できるように構成されたブランケットに関する。
【背景技術】
【0002】
外科的処置において、患者を術前、術後および/または術中に温めるために、あるいは患者が低体温に陥るのを防ぐために、膨らませることが可能な対流式ブランケットを使用することは公知である。手術中、医者または外科医にとって、患者の身体の所定部分の処置が必要になることが、しばしばある。以前は、患者の身体の所定部分を露出させる一方、患者の身体の他の部分については、これらを覆い、患者への温かさを維持することを保障するために、複数のブランケットを使われていた。しかし、複数のブランケットをたびたび使用することは、手間を要する。さらに、患者の身体の所定部分の処置が完了した後、患者の身体の他の部分の処置が必要になり、前に処置していた患者の身体の部分を温かく保たなければならない、という場合もある。現在市場では、多部位処置用ブランケットが商品番号モデル315としてアリザント(Arizant)により販売されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の対流ブランケットは、ブランケット基部からブランケット足部または末端まで延在する中央部を有する主部を備えた、全身用の膨らませることが可能な加温ブランケットである。ブランケット基部は、患者の頭の下方に位置する基端を有する。ブランケット頭部は、ブランケット基部に接続されるとともに、流体移動可能にブランケット基部と連通している。中央部の側部に対して直角に、複数の周辺部が延在しており、周辺部の各々は中央部に対して折り曲げることができ、ブランケット長さ方向に沿って患者の身体の一部分を選択的に露出させることができる。隣接する周辺部は、破断可能な、または引裂可能な共通シール部により、互いに接続されており、隣接する周辺部を互いに分離することを可能にし、また、これらをブランケットの他の部分に対して動かせるようにし、例えばある周辺部をブランケット中央部に向かって畳むと、この周辺部により覆われていた患者の身体の部分を選択的に露出させることができる。隣接する周辺部を分割する、破断容易な、または引裂可能な共通シール部は、その長さ方向に沿って予めカットされていてもよく、あるいはその長さ方向に沿って並んだ一連のスリット群を有していてもよい。これにより、引裂き力が共通シール部に加えられた時に、隣接する周辺部を互いに容易に分離することができる。
【0004】
ブランケット頭部は、基部から延在する2つの管状部により形成されている。これら管状部の各々は、閉端を有し、これら閉端は、互いに接続し、あるいは共通シール部により取り外し可能に互いに取り付けられている。共通シール部は、前もって分離してもよく、あるいはそれに沿う引裂可能なスリットを有していてもよい。ブランケットが患者に掛けられた時に、2つの管状部は一緒に患者の頭についての囲繞部を形成する。これら管状部に孔が設けられており、ブランケットに入れられた加熱された空気が患者の頭へ送られる。ブランケット基部に、プラスチック製のカバーシートまたはフラップの端部または部分が取り付けられており、これらをブランケット頭部の上へと畳みこむことで、患者の頭を覆い、そしてこの覆いの下の温かい空気を維持するができる。
【0005】
本発明のブランケットは2枚の不透気性層またはシートから成り、2枚の不透気性層またはシートは、相異なる位置において選択的に接合され、中央部や周辺部を有する膨らませることが可能なブランケット構造体を形成する。これらのうち患者と接触することになるシートまたは層には、その中央部や周辺部に沿って複数の孔を設ける。ブランケットを膨らますためにブランケット内に入れられた加熱された空気がこれらの孔から放出されて、患者を温める。複数の空気入口をブランケット基部に設け、複数の空気入口のうち1つのみが、加熱された空気をブランケット内に入れるために使用されるように構成してもよい。
【0006】
ブランケット内の加熱された空気の流れを容易にするために、ブランケット中央部に、ブランケット基部から延在し、中間部を通り、ほぼブランケット末部の始点まで達するように、第1中央シール部を設ける。第1中央シール部に縦方向に並行するように、ブランケット末部に沿って延在する第2中央シール部を設ける。これにより、ブランケット中央部に沿って、2本の通り抜けられる通路が形成され、これら通路は、加熱された空気をブランケット基部からブランケット末部へと誘導する。
【0007】
周辺部は、中央部の各側部から直角に延在させ、少なくとも1本の通り抜けられる通路を介して、周辺部は中央部に流体移動可能に連通させる。その結果、中央部の各側部における周辺部の各々を、中央部に流体移動可能に連通させ、したがって加熱された空気などの温度処理された空気をブランケットに入れると、各周辺部が膨らむ構成とする。
【0008】
このように、本発明は、患者の身体の相異なる複数の部分を選択的に露出させるよう構成された、膨らませることが可能な対流ブランケットであり、主部を備え、前記主部が、患者の頭の下方にある基端から延在する基部と、ブランケット末端まで延在する末部と、前記基部と前記末部との間に位置する中間部と、患者の頭を置くために前記基部に接続された頭部とを含む、膨らませることが可能な対流ブランケットに関する。前記主部は、さらに、前記基端から前記ブランケット末端まで途切れることなく縦に延在する中央部と、前記中央部から直角に延在する周辺部を有し、患者の身体の特定部分を露出させるために、前記周辺部はそれぞれ少なくとも前記中央部に対して移動可能であり、前記頭部、前記中央部及び前記周辺部が、流体移動可能に互いに接続され、ブランケット内に入れられた温度処理された空気により、前記頭部、前記中央部及び前記周辺部を膨らませることができる。前記中央部と前記周辺部の各々は患者と接触する表面に、患者へと温度処理された空気を排出するための複数の孔を有する。
【0009】
また本発明は、患者の身体の相異なる複数の部分を選択的に露出させるよう構成された対流ブランケットであり、主部を備え、前記主部が、患者の頭の下方にある基端から延在する基部と、ブランケット末端まで延在する末部と、前記基部と前記末部との間に位置する中間部と、患者の頭を置くために前記基部に接続された頭部とを含む、対流ブランケットに関する。前記主部が、さらに、前記基端から前記ブランケット末端まで途切れることなく縦に延在し、流体移動可能に前記基部と前記中間部と前記末部とに連通する中央部と、各々が前記中間部における前記中央部の側部から直角に延在する2つの第1周辺部と、各々が前記末部における前記中央部の側部から直角に延在する2つの第2周辺部とを有し、前記中央部の各側部において前記第1周辺部と前記第2周辺部とが互いに隣接し、前記頭部が流体移動可能に前記基部に連通し、前記第1周辺部と前記第2周辺部の各々が流体移動可能に前記中央部に接続し、ブランケット内に入れられた温度処理された空気により前記頭部と前記中央部と前記第1周辺部と前記第2周辺部を膨らませることができる。前記第1周辺部と前記第2周辺部の各々はブランケットの他の部分に対して移動可能であり、これにより患者の身体の対応部分を露出させることができ、前記中央部、前記第1周辺部及び前記第2周辺部の各々は患者と接触する面に、患者へと温度処理された空気を排出するための複数の孔を有する。
【0010】
さらに本発明は、患者の身体の複数部分の選択的な処置を可能にし、相異なる複数の位置で封止接合された2枚の不透気性シートにより形成される全身用対流加温ブランケットであり、主部を備え、前記主部が、患者の頭の下方にある基端から延在する基部と、ブランケット末端まで延在する末部と、前記基部と前記末部との間に位置する中間部と、患者の頭を置くために前記基部に接続された頭部とを含む、全身用対流加温ブランケットに関する。前記主部が、さらに、前記基部、前記中間部及び前記末部に沿って前記基端から前記ブランケット末端まで途切れることなく縦に延在する中央部と、各々が前記中央部の一方の側部から直角に延在する複数の第1周辺部と、各々が前記中央部の他方の側部から直角に延在する複数の第2周辺部とを有し、互いに隣接して対を成す前記第1周辺部と互いに隣接して対を成す前記第2周辺部が引裂可能な共通シール部により取外し可能に互いに接続され、前記第1周辺部と前記第2周辺部の各々が流体移動可能に前記中央部に接続され、ブランケット内に入れられた温度処理された空気により、前記頭部、前記中央部、前記第1周辺部及び前記第2周辺部を膨らませることができる。前記第1周辺部と前記第2周辺部の各々は少なくとも前記中央部に対して移動可能であり、これにより患者の身体の特定部分を選択的に露出させることができ、前記2枚の不透気性シートのうち患者に接触する不透気性シートに、患者へと温度処理された空気を排出するための複数の孔を有する。
【0011】
下記の図面と連係した本発明の以下の説明により、本発明がより明らかとなり、また本発明が最も良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の対流加温ブランケットの平面図であり、ブランケットの上側層と下側層の双方を示す。
【図2】図1における2−2線に沿ったブランケットの断面図である。
【図3】患者に掛けられた本発明のブランケットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明のブランケット2を示しており、ブランケット2は、基端6から中間部8の始点まで延在する基部4を有し、中間部8は、ブランケット2の末端12を終端とする末部10の始点まで延在する。基部4、中間部8、および末部10の組合せを、ブランケット2の主胴部と称してもよい。従来から知られている態様と同様に、ブランケット2は2枚の不透気性シートまたは層から成る。図1では、図示目的のために、これら2枚のシートがともに示されており、上側シートが下側シートの上に重なっていて、ブランケット2の多数の孔を有する下側シートすなわち底側層も見ることができる。従来から知られている態様と同様に、2枚のシートは、ブランケット2の種々の位置で封止接合され、膨らませることが可能な構造体を形成する。例えば、ブランケット2の外縁は、外側外縁シール部12と内側外縁シール部14により接合されている。後に詳述するように、ブランケット2の頭部の管状部により形成される囲繞部は、内縁シール部15により画定されている。
【0014】
外縁シール部12と14に加えて、シール部16aと16bから成る第1セットを、ブランケット2の縦軸18に直交するように設ける。シール部16aと16bの各々は、縦シール部18aと18bにぶつかるまで、ブランケット2の中心に向かって外縁シール部14から延在させる。ブランケット2の一例において、シール部16aと16bの第1セットは、おおよそ基部4と中間部8が交わる連結点に配置し、中間部8と末部10が交わる連結点またはその近傍に、シール部20aと20bから成る第2セットを、ブランケット内側に向かって外縁シール部14から直角になるように配してもよい。直交シール部16aと16bを、縦シール部18aと18bとそれぞれ合流させ、直交シール部20aと20bを、縦シール部22aと22bとそれぞれ合流させる。縦シール部18aと18bの間および縦シール部22aと22bの間を通り、途切れることなく基端6から末端12まで縦に延びるブランケット2の部分を、ブランケット2の中央部と称してもよく、図1においてこの部分は参照符号24で示されている。図1のブランケット2の例において、直交シール部16a、16b、20a、および20bを水平シール部と称してもよく、また縦シール部18a、18b、22a、および22bを垂直シール部と称してもよい。
【0015】
水平シール部16a、16b、20a、および20bと垂直シール部18a、18b、22a、および22bによるブランケット2の分割に関して、これらシール部により仕切られるブランケット2の部分を、中央部24から直角に延在する周辺部とみなしてもよい。かくして周辺部26aを、シール部16a、18a、22a、および20aにより仕切り、周辺部26bを、シール部16b、18b、22b、および20bにより仕切る。ブランケット2の中間部8またはその近傍において、周辺部26aと26bのそれぞれを中央部24から延在させる。同様に、周辺部28aと28bを水平シール部20aと20bにより仕切り、ブランケット2の末部10またはその近傍において、周辺部28aと28bのそれぞれを中央部24から延在させる。
【0016】
ブランケット2を膨らますために、基部4の基端6の近くに複数の空気入口30aと30bを設ける。動作中、これら空気入口30aと30bのうち1つのみを使用する。ブランケット2を膨らますために、空気加温機のホース(図示せず)を、これら空気入口の1つに結合し、加熱された空気などの温度処理された空気をブランケット2に入れて、ブランケット構造体を膨らます。
【0017】
ブランケット2に入れられる温度処理された空気によりブランケット2の種々の部分を膨らますために、ブランケット2の種々の周辺部を中央部24に接続する、通り抜けられる通路を少なくとも1本設け、これにより周辺部および中央部24の間に流体が行き来できる連通経路を複数形成する。図示されるように、垂直シール部18aと22aの2つの対向端の間に画定された通り抜けられる通路30aを介して、周辺部26aを流体移動可能に中央部に接続する。周辺部26bと中央部24との間に流体連通を確立する、対応する通り抜けられる通路30bは、垂直シール部18bと22bの対向端の間に画定される。周辺部28aには、末部10において縦に延びる内側シール部34aと34a′の対向端の間に画定された通り抜けられる通路32aと、シール部34a′の他端とブランケット2の末端14との間に画定された通り抜けられる通路32a′とを設ける。同様に、末部10において縦に延びる内側シール部34bと34b′の対向端により画定された通り抜けられる通路32bと、シール部34b′の他端とブランケット2の末端14とにより画定された通り抜けられる通路32b′とが存在する。このように種々の周辺部26a、26b、28a、および28bが、それぞれ中央部24と流体移動可能に連通しており、したがってこれら周辺部はブランケット2において互いに流体移動可能に連通している。
【0018】
ブランケット2における空気の流れを容易にするために、中央シール部36aを、基部4から中間部8を通り、ほぼ中間部8が末部10と出会う連結点まで縦に延在するように、ブランケット2に設ける。中央シール部36aと並列するように、しかし中央シール部36aから離間するように第2中央シール部36bを設け、該第2中央シール部36bを末部10に沿って縦に延在させる。縦シール部36aと36bにより、中央部24に沿って2本の通路38aと38bが形成され、基部4における例えば空気入口30bから入った加熱された空気は、これら空気通路38aと38bにより案内され、通り抜けられる通路30a、30b、32a、32a′、32b、および32b′を介して周辺部26a、26b、28a、および28bに到達する。基部4もまた入れられた空気により膨らまされる。
【0019】
膨張度合いを良くするために、また孔40を介してなされる加熱された空気の患者への排出を良くするために、多数のシール部42をブランケット2に設ける。シール部42と、シール部42に隣接する孔40の配置的構成を、図1に示す。中央部24から直角に延在し、中間部8から基部4を分割する境界を画定する共通シール部16aと16bは、それらに沿って形成されたスリット41aと41bをそれぞれ有し、したがって、引裂き力を共通シール部16aと16bに加えると、周辺部26aと26bをブランケット基部4から分離できる。同様に、周辺部28aと28bから周辺部26aと26bを分ける共通シール部20aと20bに沿って、スリット43aと43bが形成されている。かくして周辺部26aと26bをブランケット2の他の部分から分離することができ、また周辺部26aと26bをブランケット2の他の部分から離れる方向に畳むことができ、これによりブランケット2を掛けられた患者の身体の特定部分を選択的に露出させることができる。ここで明らかにしたように、シール部18aと22aに沿って周辺部26aを畳んだり、移動したりすることができ、また、シール部18bと22bに沿って周辺部26bを縦に折り曲げたり、移動したりすることができる。同様に、最初にスリット43aに沿って引裂き、次にシール部34aと34a′に沿って折り曲げることにより、周辺部28aを中央部24、すなわちブランケット2の他の部分に対して相対的に折り曲げたり、移動したりすることができる。スリット43bに沿って引裂くことにより、周辺部28bを周辺部26bから分離した後、縦シール部34bと34b′に沿って周辺部28bを折ることが出来る。
【0020】
スリットの代わりに、破断可能な共通シール部16a、16b、20a、および20bを、中心線または中央部に沿って引裂可能な材料で形成してもよく、これにより、ブランケット構造体の上側シートと下側シートを接合して、縦中央部24から直角に延在する周辺部を画定する全体的なシール機能は維持される。前述のように、患者と接触することになるブランケット2の下側シートまたは層には、ブランケット2の種々の部分を介して、加熱された空気を患者の身体の異なる複数の部分へと排出する、多数の孔40があけられている。
【0021】
ブランケット2は、基部4から延在する2つの管状部46aと46bにより画定される頭部44を有する。管状部46aと46bは、それらの閉端48aと48bにおいて、共通シール部50により接合され、共通シール部50は一連のスリット群52を有し、これにより管状部46aと46bが互いに分離できるようになっている。完全に膨らまされた時に患者の頭に対する囲繞部54を形成するために、図1に示されるように閉端48aと48bが互いに対向していれば、使用前閉端48aと48bは互いに接続されていなくてもよい。患者にブランケット2が掛けられている時に、患者の頭を囲繞し、そして患者の頭を露出させる囲繞部54を形成するように、管状部46aと46bを構成する。患者の頭に向かって加熱された空気を出すための孔40′を、管状部46aと46bのそれぞれに設ける。加熱された空気が容易に外部へと逃げてしまうのを防ぐために、透明なフラップ56(プラスチックが使用可能である)を、その一部分または縁部56′を基部4に取り付けて設置し、フラップ56を囲繞部54の上へと折りたたむことができるようにすることで、フラップ56の下で患者の頭へと当てられる熱を維持することができる。
【0022】
図2は、図1における2−2線に沿ったブランケット2の断面図であり、参照符号16bや20bなどで示される接合シール部ならびに外縁シール部14を介して下側層またはシート56bに接合された第1層または第1シート56aを示す。また図2は、2−2線断面に沿った周辺部26bと孔40とを示し、孔40は加熱された空気を周辺部26bからブランケット2が掛けられている患者へと排出する。さらに図2は、頭部44のための管状部46aと46bにより画定された囲繞部54を示す。図示簡略化のために、図2は正確な縮尺率で描かれているわけではなく、また種々の部分は膨らまされた状態として図示されてはいない。
【0023】
図3は、患者58を覆うブランケット2を示す。図示されるように、患者58の頭は、頭部44の囲繞部54の中に位置する。図3において、患者58の頭は、プラスチック製の透明なフラップ56によりカバーされている。互いに異なる周辺部をブランケット2の他の部分に対して相対的に動かし、そして折り返すことにより、患者の身体のそれぞれ異なる部分に処置を施すことができる。例えば、患者の右手と右大腿部にアクセスしようとする場合、引裂可能なスリット43aと41aを介して共通シール部16aと20aに沿って周辺部26aをブランケット2の他の部分から分離し、そして縦シール部18aと20aに沿って中央部24の上に畳む。同様に、患者の左大腿部を露出させる場合、周辺部26bを共通シール部16bと20bに沿って分離し、そして中央部24に対して折り曲げる。周辺部28aと28bも同様に中央部24に向かって折り曲げ、この場合それぞれ患者の右脚と左脚を露出させることができる。また患者の両脚を露出させるために、両周辺部28aと28bを、水平共通シール部20aと20bに沿って、ブランケット2の基端に向かって折り曲げてもよい。同様に、両周辺部26bと28bを中央部24の上に畳んでもよく、この場合、患者の左側部分を露出させることができる。また両周辺部26aと28aを中央部24の上に畳んでもよく、この場合患者の右側部分を露出させることができる。このように、相異なる周辺部を種々の組合せで折ることにより、患者の身体の相異なる部分を選択的に処理することができ、同時に患者の身体の残りの部分の温かさを維持することができる。
【0024】
以上で説明した本発明のブランケット2は、基部、中間部、末部、および、ブランケット2の各縦側部分につき互いに近接して設けられた2つの周辺部を備えるが、患者の身体の相異なる部分へのより選択的な処置を可能にするために、中央部24の各側部から延在する、より小さな寸法の周辺部を追加してもよい。例えば、この形態に限定されるものではないが、中央部24の各側部から延在する4つの周辺部が存在してもよい。この場合、共通の引裂可能なシール部と、周辺部を画定する縦シール部により分けられた互いに隣接する周辺部を、ブランケットの他の部分に対して折り曲げたり、移動したりしてもよい。中央部24の上へと折り曲げられる周辺部の長さを画定する、垂直すなわち縦シール部は、ブランケットの長さ方向に沿って互いに並行させる必要はなく、水平共通シール部の長さを変えてもよく、ブランケット全長に渡り中央部24の幅を一定とする必要なはい。これにより、例えば、折り返した時にブランケット幅の8分の1が露出するように第1の周辺部を構成してもよく、折り返した時にブランケット幅の4分の1が露出するように他の周辺部を構成してもよい。ただし、挿入した空気が流れるブランケットの共通部または中央部24と各周辺部とが、流体移動可能に連通している必要があり、これにより、温度処理された空気をブランケットに入れることで、すべての周辺部が膨らまされる。
【0025】
以上で説明した本発明には、多くの変形例、部分的変更例、および細部にわたっての変更例が存在する。本明細書で述べられた全ての事項および添付図に示された全ての事項は、説明のためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、添付請求項の主旨と範囲によってのみ限定され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体の相異なる複数の部分を選択的に露出させるよう構成された、膨らませることが可能な対流ブランケットであり:
主部を備え、前記主部が、患者の頭の下方にある基端から延在する基部と、ブランケット末端まで延在する末部と、前記基部と前記末部との間に位置する中間部と、患者の頭を置くために前記基部に接続された頭部とを含み、
前記主部が、さらに、前記基端から前記ブランケット末端まで途切れることなく縦に延在する中央部と、前記中央部から直角に延在する周辺部を有し、患者の身体の特定部分を露出させるために、前記周辺部はそれぞれ少なくとも前記中央部に対して移動可能であり、
前記頭部、前記中央部及び前記周辺部が、流体移動可能に互いに接続され、ブランケット内に入れられた温度処理された空気により、前記頭部、前記中央部及び前記周辺部を膨らませることができ、前記中央部と前記周辺部の各々は患者と接触する表面に、患者へと温度処理された空気を排出するための複数の孔を有する、
膨らませることが可能な対流ブランケット。
【請求項2】
前記頭部が、各々が前記基部から延在するとともに流体移動可能に前記基部に接続された2つの管状部を含み、前記中央部と前記周辺部が膨らまされた時に前記管状部の各々が膨らまされ、前記管状部は各々閉端を有し、これら閉端が互いに接続され、または取り外し可能に互いに取り付けられ、患者の頭を置くための膨らませることが可能な囲繞部を形成する、請求項1に記載のブランケット。
【請求項3】
前記管状部の各々が、患者の頭へ温度処理された空気を排出するための複数の孔を有する、請求項2に記載の膨らませることが可能な対流ブランケット。
【請求項4】
さらに、その縁部が前記基部に取り付けられた、透明なプラスチック製のフラップを備え、管状の囲繞部により取り囲まれた患者の頭を覆うために、前記フラップを前記頭部の上へと畳むことができる、請求項2に記載の対流ブランケット。
【請求項5】
前記周辺部は前記中央部の各側部に2つ設けられ、前記周辺部の各々は、その中心位置において少なくとも1本の通り抜けられる通路により前記中央部に流体移動可能に連通し、前記中央部の各側部に設けられた2つの前記周辺部は互いに分離することが可能であるとともに、互いに移動可能であり、また前記中央部に対して移動可能であり、したがって患者の身体の部分を露出させるために、前記中央部の各側部に設けられた2つの前記周辺部の各々または両方は前記中央部に対して移動可能である、請求項1に記載のブランケット。
【請求項6】
前記周辺部は、前記中間部における前記中央部の側部から直角に延在する周辺部と、前記末部における前記中央部の側部から直角に延びる周辺部とを含む請求項1に記載のブランケット。
【請求項7】
前記中央部は、温度処理された空気が流れる2本の縦通路を含み、前記2本の縦通路が第1縦中央シール部により互いに分割され、前記第1縦中央シール部が、前記基端からブランケット共通直交軸の間に予め決められた長さで延在し、前記ブランケット共通直交軸は、直交シール部が前記中央部の側部から直角に延在する隣接対をなす前記周辺部を互いに分離する位置であり、第2縦中央シール部が前記末部に沿って延在し、前記第2縦中央シール部は、前記第1縦中央シール部と縦方向に並行するが、前記第1縦中央シール部から離間している、請求項1に記載のブランケット。
【請求項8】
さらに、前記基部に位置する少なくとも1つの空気入口を備え、この空気入口において温度処理された空気がブランケット内に入れられる、請求項1に記載のブランケット。
【請求項9】
前記中央部の側部から直角に延びる前記周辺部は、第1の引裂可能な共通シール部により取外し可能に隣接する周辺部に取り付けられ、第2の引裂可能な共通シール部が前記第1の引裂可能な共通シール部に平行に配置され、前記第2の引裂可能な共通シール部が、前記中間部から前記基部にかけての前記中央部の側部から直角に延在する前記周辺部を取外し可能に互いに接合する、請求項6に記載のブランケット。
【請求項10】
前記ブランケットが、流体移動可能に接続された各部を封止形成するために、相異なる位置において選択的に接合された2枚の不透気性層からなり、前記2枚の不透気性層のうち患者に接触する不透気性層が長手方向に沿って複数の孔を有し、当該ブランケットが患者に掛けられ、そして当該ブランケットが温度処理された空気により作動状態へと膨らまされた時に、前記不透気性層の孔が温度処理された空気を患者へと排出する、請求項1に記載のブランケット。
【請求項11】
患者の身体の相異なる複数の部分を選択的に露出させるよう構成された対流ブランケットであり:
主部を備え、前記主部が、患者の頭の下方にある基端から延在する基部と、ブランケット末端まで延在する末部と、前記基部と前記末部との間に位置する中間部と、患者の頭を置くために前記基部に接続された頭部とを含み、
前記主部が、さらに、前記基端から前記ブランケット末端まで途切れることなく縦に延在し、流体移動可能に前記基部と前記中間部と前記末部とに連通する中央部と、各々が前記中間部における前記中央部の側部から直角に延在する2つの第1周辺部と、各々が前記末部における前記中央部の側部から直角に延在する2つの第2周辺部とを有し、前記中央部の各側部において前記第1周辺部と前記第2周辺部とが互いに隣接し、
前記頭部が流体移動可能に前記基部に連通し、前記第1周辺部と前記第2周辺部の各々が流体移動可能に前記中央部に接続し、ブランケット内に入れられた温度処理された空気により前記頭部と前記中央部と前記第1周辺部と前記第2周辺部を膨らませることができ、前記第1周辺部と前記第2周辺部の各々はブランケットの他の部分に対して移動可能であり、これにより患者の身体の対応部分を露出させることができ、前記中央部、前記第1周辺部及び前記第2周辺部の各々は患者と接触する面に、患者へと温度処理された空気を排出するための複数の孔を有する、
対流ブランケット。
【請求項12】
前記頭部が、各々が前記基部から延在するとともに流体移動可能に前記基部に接続された2つの管状部を含み、前記中央部と前記周辺部が膨らまされた時に前記管状部の各々が膨らまされ、前記管状部は各々閉端を有し、これら閉端が互いに接続され、または取り外し可能に互いに取り付けられ、患者の頭を置くための膨らませることが可能な囲繞部を形成し、前記管状部の各々が、患者の頭へ温度処理された空気を排出するための複数の孔を有する、請求項11に記載のブランケット。
【請求項13】
さらに、その縁部が前記基部に取り付けられた、透明なプラスチック製のフラップを備え、管状の囲繞部により取り囲まれた患者の頭を覆うために、前記フラップを前記頭部の上へと畳むことができる、請求項12に記載のブランケット。
【請求項14】
前記中央部は、温度処理された空気が流れる2本の縦通路を含み、前記2本の縦通路が第1縦中央シール部により互いに分けられ、前記第1縦中央シール部が前記基部から前記中間部と前記末部とがぶつかる位置またはその近傍まで延在し、第2縦中央シール部が前記末部に沿って延在し、前記第2縦中央シール部が前記第1縦中央シール部に縦方向において並行するが、前記第1縦中央シール部から離間する、請求項11に記載のブランケット。
【請求項15】
さらに、前記基部に位置する少なくとも1つの空気入口を備え、この空気入口において温度処理された空気がブランケット内に入れられる・請求項11に記載のブランケット。
【請求項16】
前記中央部の同一側部から直角に延在する前記第1周辺部と前記第2周辺部は、第1の引裂可能な共通シール部により取外し可能に互いに取り付けられ、前記第1の引裂可能な共通シール部と平行に配置された第2の引裂可能な共通シール部が、前記第1周辺部を取外し可能に前記基部に接合する、請求項11に記載のブランケット。
【請求項17】
前記ブランケットが、流体移動可能に接続された各部を封止形成するために、相異なる位置において選択的に接合された2枚の不透気性層からなり、前記2枚の不透気性層のうち患者に接触する不透気性層が長手方向に沿って複数の孔を有し、当該ブランケットが患者に掛けられ、そして当該ブランケットが温度処理された空気により作動状態へと膨らまされた時に、前記不透気性層の孔が温度処理された空気を患者へと排出する、請求項11に記載のブランケット。
【請求項18】
患者の身体の複数部分の選択的な処置を可能にし、相異なる複数の位置で封止接合された2枚の不透気性シートにより形成される全身用対流加温ブランケットであり:
主部を備え、前記主部が、患者の頭の下方にある基端から延在する基部と、ブランケット末端まで延在する末部と、前記基部と前記末部との間に位置する中間部と、患者の頭を置くために前記基部に接続された頭部とを含み、
前記主部が、さらに、前記基部、前記中間部及び前記末部に沿って前記基端から前記ブランケット末端まで途切れることなく縦に延在する中央部と、各々が前記中央部の一方の側部から直角に延在する複数の第1周辺部と、各々が前記中央部の他方の側部から直角に延在する複数の第2周辺部とを有し、互いに隣接して対を成す前記第1周辺部と互いに隣接して対を成す前記第2周辺部が引裂可能な共通シール部により取外し可能に互いに接続され、前記第1周辺部と前記第2周辺部の各々が流体移動可能に前記中央部に接続され、ブランケット内に入れられた温度処理された空気により、前記頭部、前記中央部、前記第1周辺部及び前記第2周辺部を膨らませることができ、前記第1周辺部と前記第2周辺部の各々は少なくとも前記中央部に対して移動可能であり、これにより患者の身体の特定部分を選択的に露出させることができ、前記2枚の不透気性シートのうち患者に接触する不透気性シートに、患者へと温度処理された空気を排出するための複数の孔を有する、
全身用対流加温ブランケット。
【請求項19】
前記頭部が、各々が前記基部から延在するとともに流体移動可能に前記基部に接続された2つの管状部を含み、前記中央部と前記周辺部が膨らまされた時に前記管状部の各々が膨らまされ、前記管状部は各々閉端を有し、これら閉端が互いに接続され、または取り外し可能に互いに取り付けられ、患者の頭を置くための膨らませることが可能な囲繞部を形成し、前記管状部の各々が、患者の頭へ温度処理された空気を排出するための複数の孔を有する、請求項18に記載のブランケット。
【請求項20】
さらに、その縁部が前記基部に取り付けられた、透明なプラスチック製のフラップを備え、管状の囲繞部により取り囲まれた患者の頭を覆うために、前記フラップを前記頭部の上へと畳むことができる、請求項18に記載のブランケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−517884(P2012−517884A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551058(P2011−551058)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/000451
【国際公開番号】WO2010/096162
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(500091601)スミスズ メディカル エイエスディー インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】