説明

多重円板脱水装置

【課題】
多重円板脱水装置に於いて、円板間に位置するスペーサからも効果的に濾過できる様にし、脱水効率、濾過効率向上を図る。
【解決手段】
回転可能な軸体に円板31、該円板より小径のスペーサ32を交互に多重に嵌設して構成した濾体を、前記円板の一部が重合する様所要数連設し、前記円板の重合部分の隙間から濾過する様にした濾体群を具備する多重円板脱水装置に於いて、前記円板、前記スペーサを貫通する濾液通路を形成して該濾液通路に漏出した濾液を前記濾体の軸端から排出する様にし、前記スペーサ全周に亘って濾過溝を形成し、該濾過溝は半径方向に延び一端が通路孔51に連通する様に開口し他端が前記スペーサ周面に開口し、濾液が該通路孔を通って前記通路孔に漏出する様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥、し尿汚泥、その他産廃汚泥に対して濾過処理をして固形分と濾液とを分離する多重円板脱水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥、し尿汚泥、その他産廃汚泥に対して濾過処理をして固形分と濾液とを分離する濾過装置の1つに、多重円板脱水装置がある。
【0003】
従来、多重円板脱水装置としては、特許文献1、特許文献2に示されるものがある。斯かる多重円板脱水装置について、図11、図12を参照して概略を説明する。
【0004】
多重円板脱水装置は、主に、多重円板脱水機1及び該多重円板脱水機1に連設された凝集装置2を具備している。
【0005】
前記多重円板脱水機1は、脱水槽3の内部に上部濾体群4と下部濾体群5とがケーキ搬送路6を形成する様に上下に配設されており、該ケーキ搬送路6は下流側に向って断面積が漸次減少し、下流端が前記脱水槽3の壁面に開口して吐出口10を形成すると共に前記上部濾体群4の上流側は前記下部濾体群5に対して短くなっており、前記ケーキ搬送路6の上流端部の上面は開放された形状となっている。
【0006】
前記上部濾体群4、前記下部濾体群5は、それぞれ所要数の濾体7が一部重合する様に連設されて構成されており、該濾体7は前記脱水槽3の両側壁に掛渡って回転可能に設けられ、図示しない駆動装置により前記上部濾体群4、前記下部濾体群5の対峙部がそれぞれ下流側に向って回転する様に駆動されている。
【0007】
前記濾体7は、回転軸8に多数の円板9がスペーサ20を介して固着されており、隣接する濾体7,7の円板9,9は前記スペーサ20が形成する隙間に一部嵌入して一部が重合する様になっており、隣接する前記濾体7,7の前記円板9,9間に形成される隙間が液を濾過する目となっている。又、前記濾体7には、前記円板9、前記スペーサ20を軸心方向に貫通する濾液通路11が形成されている。
【0008】
前記スペーサ20の所要枚数毎に、例えば5枚毎に、該スペーサ20の外周部に欠切部40が形成され、該欠切部40によって前記濾液通路11が開放状態となっている(図12中、20aで示す)。従って、濾過された濾液は、前記欠切部40を通って前記濾液通路11に漏出し、該濾液通路11は漏出した濾液を前記濾体7の軸端に導き、前記脱水槽3の側壁から排出する様になっている。
【0009】
前記凝集装置2は凝集槽12を有し、該凝集槽12は凝集原液供給口13によって前記脱水槽3に連設されている。前記凝集槽12には原液供給ライン14及び凝集液供給ライン15が接続され、前記凝集槽12には前記原液供給ライン14から原液供給ポンプ16により原液が供給され、又前記凝集液供給ライン15からは凝集液供給ポンプ17により凝集液が供給される様になっている。
【0010】
前記凝集槽12には攪拌機18が設けられ、該攪拌機18により原液と凝集液が攪拌されることで、原液中の固形分の凝集が促進される。
【0011】
前記原液供給ライン14から原液、前記凝集液供給ライン15から凝集液を供給することで、凝集原液19が前記凝集原液供給口13からオーバフローして前記脱水槽3に供給される。前記凝集原液19の供給量は、前記ケーキ搬送路6の上流端部開放部に自由液面21を形成する様に調整される。
【0012】
前記ケーキ搬送路6に供給された前記凝集原液19は、前記ケーキ搬送路6の上流部では重力による濾過により、濾液が分離され、分離された濾液の大部分は前記円板9,9間の目より落下し、残りの一部は前記濾液通路11に漏出し、該濾液通路11を通って前記脱水槽3の側壁から排出される。
【0013】
又、分離された凝集フロックは、前記下部濾体群5上に着床し、前記上部濾体群4、前記下部濾体群5の回転によって下流側に搬送される。又、凝集フロックは、搬送過程で上下の前記上部濾体群4、前記下部濾体群5により圧搾され、濾液が分離されてケーキとなる。即ち、前記ケーキ搬送路6の上流部は重力脱水部、下流部は圧搾脱水部が形成される。
【0014】
圧搾によって、分離した濾液の大半は前記円板9,9間の目を通って落下し、前記下部濾体群5の下方に落下し、残部は前記濾液通路11に漏出し、該濾液通路11を通って前記脱水槽3の側壁から排出される。
【0015】
又、脱水されたケーキは前記上部濾体群4、前記下部濾体群5の搬送作用により前記吐出口10より吐出される。
【0016】
又、上記した従来の多重円板脱水装置に於いて、前記ケーキ搬送路6上流部での濾液分離作用は、重力による液分離となっている。又、濾液が通過する目は隣接する前記濾体7,7同士が重合した部分に形成される僅かな隙間と、所定枚数毎の前記スペーサ20に形成された前記欠切部40からだけである。
【0017】
前記下部濾体群5の前記ケーキ搬送路6に面する大部分は、前記スペーサ32が占めており、該スペーサ32に前記濾液通路11と連通する前記欠切部40を形成し、該欠切部40を通して濾液を前記濾液通路11に漏出させても、前記欠切部40は極一部に形成されるのみであり、濾過には充分でない。更に該欠切部40を形成することで形成される目は前記スペーサ32に貫通する前記濾液通路11の直径に相当する程度に長いスリット孔となり、濾液を濾過する目の大きさとしては前記欠切部40の長さをLとするとL×t(スペーサの厚み)となる。これは、前記円板9,9重合部に形成される隙間に比して著しく大きく、凝集フロックが前記濾液通路11に漏出し易くなるという問題を有する。
【0018】
而して、前記重力脱水部で充分な脱水が進行しない場合は、前記圧搾脱水部に進入したケーキの含水率が大きく、効果的な圧搾作用が得られない。更に、前記重力脱水部での脱水作用が少ない場合は、前記自由液面21の低下が遅く原液等の供給量が制限され、処理量の増加が見込めないという問題もあった。
【0019】
【特許文献1】特開2004−330060号公報
【0020】
【特許文献2】特開2005−7327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は斯かる実情に鑑み、円板間に位置するスペーサからも効果的に濾過できる様にし、脱水効率、濾過効率向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、回転可能な軸体に円板、該円板より小径のスペーサを交互に多重に嵌設して構成した濾体を、前記円板の一部が重合する様所要数連設し、前記円板の重合部分の隙間から濾過する様にした濾体群を具備する多重円板脱水装置に於いて、前記円板、前記スペーサを貫通する濾液通路を形成して該濾液通路に漏出した濾液を前記濾体の軸端から排出する様にし、前記スペーサ全周に亘って濾過溝を形成し、該濾過溝は半径方向に延び一端が通路孔に連通する様に開口し他端がスペーサ周面に開口し、濾液が該濾過溝を通って前記通路孔に漏出する様にした多重円板脱水装置に係るものである。
【0023】
又、本発明は、前記スペーサと前記円板とは一体に成形された多重円板脱水装置に係り、又前記スペーサは、濾過溝を形成する様に所定間隔で全周に亘ってリング状に突設された突起により形成された多重円板脱水装置に係るものである。
【0024】
又本発明は、前記濾過溝は中心に向って漸次断面積が大きくなる形状を有する多重円板脱水装置に係り、又前記円板の周面に所要間隔で突部を形成した多重円板脱水装置に係るものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、回転可能な軸体に円板、該円板より小径のスペーサを交互に多重に嵌設して構成した濾体を、前記円板の一部が重合する様所要数連設し、前記円板の重合部分の隙間から濾過する様にした濾体群を具備する多重円板脱水装置に於いて、前記円板、前記スペーサを貫通する濾液通路を形成して該濾液通路に漏出した濾液を前記濾体の軸端から排出する様にし、前記スペーサ全周に亘って濾過溝を形成し、該濾過溝は半径方向に延び一端が通路孔に連通する様に開口し他端が前記スペーサ周面に開口し、濾液が該濾過溝を通って前記通路孔に漏出する様にしたので、前記スペーサの周面も濾過作用に寄与し、濾過効率が増大する。
【0026】
又、本発明によれば、前記スペーサと前記円板とは一体に成形されたので、部品点数が減少して装置の製作コストが低減する。
【0027】
又本発明によれば、前記濾過溝は中心に向って漸次断面積が大きくなる形状を有するので、凝集フロックの抜けがよく、目詰りが防止される。
【0028】
又、本発明によれば、前記円板の周面に所要間隔で突部を形成したので、該突部が円板の重合部分に形成される隙間に付着するフロックを掻取り、該隙間の目詰りを防止する等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0030】
図1、図2は本発明が実施される多重円板脱水装置の一例、特にケーキ搬送路6が閉鎖構造となっている多重円板脱水装置を示すものである。
【0031】
先ず、多重円板脱水装置について説明する。
【0032】
尚、図1、図2中、図11中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0033】
脱水槽3内に上部濾体群4、下部濾体群5が上下に対向して設けられ、前記上部濾体群4と前記下部濾体群5間にはケーキ搬送路6が形成される。
【0034】
前記上部濾体群4、前記下部濾体群5は、それぞれ所要数の濾体7が一部重合する状態で連設されて構成されている。尚、該濾体7の構造については、従来の多重円板脱水装置で説明したと同様であるので、説明を省略する。
【0035】
前記ケーキ搬送路6の上流端に上流端濾体群23が設けられる。該上流端濾体群23は、前記上部濾体群4、前記下部濾体群5と同様、前記濾体7によって構成され、前記上流端濾体群23の上下両端に位置する前記濾体7は、前記上部濾体群4、前記下部濾体群5の上流端に位置する前記濾体7と一部が重合する様に連設される。
【0036】
従って、前記ケーキ搬送路6は前記脱水槽3の両側壁、前記上部濾体群4、前記下部濾体群5、前記上流端濾体群23によって閉鎖された空間となる。
【0037】
前記上部濾体群4、前記下部濾体群5、前記上流端濾体群23を構成する前記濾体7はそれぞれ図示しない駆動源に連結され、前記ケーキ搬送路6内の凝集原液、或はフロックに下流方向の力を与える様に回転されている。
【0038】
前記ケーキ搬送路6の下流端に開口する吐出口10には、吐出抵抗付与手段として抵抗板24が設けられている。該抵抗板24は上端を前記脱水槽3に回転自在に支持され、自重で前記吐出口10を閉鎖する様に吊下げられている。又、前記抵抗板24には錘板25が所要枚数着脱可能となっており、該錘板25の枚数で、前記吐出口10の閉鎖力が調整可能となっている。
【0039】
密閉構造の凝集槽12と前記脱水槽3とは凝集原液供給管26によって接続され、該凝集原液供給管26は前記脱水槽3の側壁の前記ケーキ搬送路6の上流端に開口する。
【0040】
前記凝集槽12、又は前記凝集原液供給管26、又は前記ケーキ搬送路6の上流端等の適宜位置には圧力計29が設けられ、前記ケーキ搬送路6の上流部の圧力が検出される様になっている。
【0041】
前記凝集槽12には原液供給ライン14、凝集液供給ライン15が接続され、それぞれ原液供給ポンプ16、凝集液供給ポンプ17により原液、或は凝集液を前記凝集槽12に圧送可能となっている。該凝集槽12は密閉構造であるが、前記ケーキ搬送路6内の圧力変動を吸収可能なアキュムレータ(図示せず)を前記凝集槽12に連設してもよい。
【0042】
該凝集槽12内の原液は攪拌機18により攪拌され、凝集液による凝集作用が促進される。
【0043】
次に、図2、図3に於いて、前記濾体7等について具体的に説明する。
【0044】
前記脱水槽3の前記下部濾体群5の下方は濾液貯留部27となっており、又前記脱水槽3の両側、又一側には濾液貯留側室28が形成され、前記濾液貯留部27には重力脱水部により落下した濾液、及び圧搾脱水部で分離された濾液を貯留する様になっており、又前記濾液貯留側室28には後述する様に前記上部濾体群4、前記下部濾体群5に形成された濾液通路11に集められた濾液が流入する様になっている。
【0045】
図3は前記濾体7を示しており、軸体30に円板31が多重に嵌装され、前記円板31,31との間にはスペーサ32が設けられ、前記濾体7全体としては棒状となっている。前記スペーサ32の外径は前記円板31の外径より小さく、前記スペーサ32の厚みは前記円板31の板厚より僅かに大きくなっている。尚、図3では分り易くする為、前記スペーサ32の厚みを大きく示している。
【0046】
前記濾体7の外周部には前記円板31と前記スペーサ32とによって溝33が形成され、該溝33に隣接する前記濾体7の前記円板31が嵌入することで、前記濾体7と隣接する濾体7とが一部重合する状態となっている。又、前記円板31の先端と前記スペーサ32の周面との間に濾液が通過する目38が形成される。
【0047】
前記濾体7には、前記円板31、前記スペーサ32を貫通する前記濾液通路11が円周所要等分した位置、例えば図4では円周8等分した位置に形成されている。
【0048】
前記脱水槽3の前記濾液貯留側室28に臨接する側壁34には、所要数の濾液流入口35が穿設され、該濾液流入口35は前記濾液通路11が設けられている円周と同一径の円周上に配置されている。前記濾液流入口35の形状は、前記濾液通路11と略同一、若しくは該濾液通路11より若干大きくなっている。従って、前記濾液流入口35と前記濾液通路11とは、該濾液通路11が穿設されているピッチ角度回転する毎に、該濾液通路11と前記濾液流入口35とが合致する。図示の例では、前記濾体7が45゜回転する毎に前記濾液通路11と前記濾液流入口35が合致する様になっている。
【0049】
前記脱水槽3の他の側壁36の少なくとも1箇所に孔39が設けられ、該孔39に隣接して洗浄ノズル37が設けられ、該洗浄ノズル37からは前記濾液通路11に向ってジェット水流が噴射される様になっている。
【0050】
又、ジェット水流の噴射方向は、前記濾液通路11の軸心に対して傾斜しており、傾斜角θは、前記濾液通路11の全長をL、該濾液通路11の直径をDとすると、0<θ<α≒tan-1(D/L)である。尚、傾斜角は厳密でなくともよく、要はジェット水流が前記濾液通路11を貫通或は通過し、且つ前記濾液通路11の軸心に傾斜していればよい。
【0051】
次に、図4〜図7に於いて前記円板31、前記スペーサ32について説明する。
【0052】
尚、図4〜図7に図示されるものは、前記濾体7を構成する前記円板31、前記スペーサ32を一体化した場合のスペーサ付円板47を示している。
【0053】
ここで、前記円板31、前記スペーサ32は、例えば、合成樹脂により前記スペーサ付円板47として一体成形されたものであり、前記円板31の中央に前記軸体30(図3参照)が貫通する嵌合孔48が形成され、該嵌合孔48の周囲は厚肉のボス部49となっている。該ボス部49の周囲には前記濾液通路11を形成する為の通路孔51が穿設されている。該通路孔51の周囲には、円周所要ピッチで楔状の突起52が全周に亘って突出形成されている。該突起52が形成されている箇所の厚みは前記ボス部49の厚みと同一となっている。
【0054】
又、図6に見られる様に、前記突起52,52の間には濾過溝53が形成され、該濾過溝53は外周側が狭く、中心側が広いテーパ形状をしている。
【0055】
前記円板31を前記軸体30に組込み、前記円板31,31を重合させると、前記突起52が隣接する円板31に当接して、前記濾過溝53が径方向に延びる濾過孔として機能する。又、前記突起52は図3で示した前記スペーサ32として機能する。形成された濾過孔は外端が前記スペーサ32の周面に開口すると共に内端も前記通路孔51に連通する様に開口している。又、前記濾過溝53は中心側の断面積が広くなっているので、凝集フロックが流入した場合も抜けがよく、前記濾過孔が目詰りすることが防止される。又、外周に開口する開口の大きさは、前記通路孔51の間隔を適宜設定して目38(図3参照)と同等の大きさとすることができる。
【0056】
前記円板31の外周には所要間隔で突部50が突設されている。該突部50は、前記円板31の前記目38に臨接する部分に付着した凝集フロックを掻取るものである。
【0057】
又、前記濾過孔を形成する別の方法として、従来の様に前記円板31と別途製作した前記スペーサ32との組合わせとしてもよい。
【0058】
次に、円板とスペーサとを別体として製作した場合を説明する。
【0059】
図8、図9は前記円板31,31間に介設されるスペーサ54を示し、該スペーサ54は濾過孔を形成する。該スペーサ54は、リング状の薄板を断面が矩形波状となる様にプレス加工して径方向に延びる濾過孔55を形成したものである。
【0060】
前記スペーサ54を前記円板31に嵌込み、カシメ等所要の手段で固着し、前記スペーサ54が一体化された前記円板31を前記軸体30に所定数嵌合して、前記濾体7が構成される。
【0061】
上記実施の形態では、前記濾体7の全周に亘り開口する濾過孔が形成され、該濾過孔を通して濾液が前記濾液通路11に導かれる。前記濾体7の全周に亘って前記濾過孔が形成されることで、前記下部濾体群5の全体に均一な濾過の為の目が形成されるので、濾過効率が大幅に向上する。
【0062】
尚、前記濾過溝53は、円周に部分的に設けてもよい。例えば前記通路孔51が設けられている範囲に対応させて設けてもよい。
【0063】
前記円板31を一体成形するには、合成樹脂を使用すると安価で軽量化が図れるが、合成樹脂の円板を使用した場合、前記円板31の強度を考慮して前記上部濾体群4、前記下部濾体群5の重力脱水部には合成樹脂の前記円板31を使用し、圧搾脱水部には金属板を使用する等、負荷によって使分けをしてもよい。又、合成樹脂製の円板に対して所要枚数毎に金属板の円板を介設して補強する等してもよい。或は、前記円板31の外周部をステンレス鋼等の金属材料とし、中心部を合成樹脂製とし、外周部と中心部とを圧入、或は成形時に鋳込む等して一体成形する等して補強してもよい。
【0064】
以下、上述した多重円板脱水装置の作用について説明する。
【0065】
前記原液供給ポンプ16、前記凝集液供給ポンプ17を駆動して前記凝集槽12内に原液、凝集液を圧送する。該凝集槽12内で原液、凝集液が攪拌され、原液内の固形分が凝集された凝集原液となり、前記凝集原液供給管26を介して前記ケーキ搬送路6の上流部に送給される。
【0066】
前記抵抗板24により前記吐出口10が閉鎖されているので、前記ケーキ搬送路6が所定圧力に上昇する迄、前記吐出口10からは凝集原液、ケーキのいずれの状態でも吐出されない。
【0067】
前記ケーキ搬送路6内で凝集原液は目38で凝集フロックと濾液に分離され、濾液は前記目38を通過して濾液貯留部27に落下し、又前記スペーサ32全周に開口する前記濾過溝53を通って前記濾液通路11に流入し、前記濾液流入口35を通って前記濾液貯留側室28に流出する。
【0068】
前記ケーキ搬送路6の内部が昇圧することで、重力脱水部での濾液分離作用が促進され、濾液分離処理量が増大する。従って、圧搾脱水部に移行したケーキの含水率が低下し、該圧搾脱水部でのケーキ圧搾作用が効果的となり、ケーキからの脱水処理量が増大する。
【0069】
前記重力脱水部で脱水されたケーキは前記ケーキ搬送路6の上流側の圧搾脱水部で圧搾される。
【0070】
圧搾により、ケーキに含有されている液が濾過分離され、圧搾脱水部で分離された濾液の一部は、前記スペーサ32の前記濾過溝53を通って前記濾液通路11に漏出し、該濾液通路11を通り前記濾液流入口35を介して前記濾液貯留側室28に流入する。
【0071】
又、前記ケーキ搬送路6が加圧されることで、濾液は前記上部濾体群4の上側にも漏出し、該上部濾体群4上に溜る場合がある。この場合、該上部濾体群4を前記濾液貯留側室28側に下り傾斜となる様に傾斜させるか、或は前記脱水槽3自体を前記濾液貯留側室28側が下となる様に傾斜させる。前記上部濾体群4が傾斜されることで、該上部濾体群4上に溜った濾液は、前記濾液貯留側室28に落下排出される。
【0072】
又前記ケーキ搬送路6内が加圧されることでケーキに吐出方向の力が作用し、更に、ケーキの含水率が低下することで、前記上部濾体群4、前記下部濾体群5によりケーキの搬送力が増大する。搬送されたケーキが前記抵抗板24を押上げ、前記吐出口10から吐出される。尚、前記錘板25の枚数を調整することで、前記抵抗板24による前記吐出口10の閉鎖力が調整でき、ケーキの吐出時の抵抗を変えられることから、ケーキの含水率の調整が可能となる。
【0073】
前記ケーキ搬送路6の内部の圧力の制御は、前記原液供給ポンプ16、前記凝集液供給ポンプ17の供給量を制御することでも実施される。前記圧力計29によって前記ケーキ搬送路6の圧力が検出され、検出結果は前記原液供給ポンプ16、前記凝集液供給ポンプ17の駆動にフィードバックされ、前記ケーキ搬送路6の圧力が所定圧力となる様に、原液、凝集液の供給量が制御される。制御される圧力の所定値は、例えば0.05MPA程度が選択される。
【0074】
而して、検出圧力が所定値となる様に凝集原液の圧送を行う様にし、濾過状態を凝集原液の状態に適合させることができ、濾過効率の維持向上が図れる。
【0075】
尚、アキュムレータを具備している場合は、圧力の変動がアキュムレータによって吸収されるので、前記原液供給ポンプ16、前記凝集液供給ポンプ17の供給量は定量供給とすることができる。
【0076】
凝集原液の濾過、脱水を継続することで、凝集フロックが前記円板31に付着し、又前記濾液通路11の内壁にも付着する。前記円板31に付着した凝集フロックは重合した円板31,31間の摺動により掻取られ除去される。
【0077】
又、前記濾液通路11の内壁に付着した凝集フロック、或は該濾液通路11を詰らせた凝集フロックは、前記洗浄ノズル37からジェット水流を前記濾液通路11に噴出することで除去される。
【0078】
尚、図10(A)、図10(B)、図10(C)に示される様に、該濾液通路11の洗浄は、ジェット水流の噴出方向が該濾液通路11の軸心に対して傾斜していることから、前記濾体7が回転すると、ジェット水流は最初洗浄ノズル37側(手前)の壁面に衝突し(図10(A)参照)、次に前記濾体7の回転と共に当接位置は次第に奥に移動し(図10(B)参照)、最後は前記濾液通路11を貫通する(図10(C)参照)。従って、ジェット水流により該濾液通路11の貫通と該濾液通路11の壁面の洗浄とを同時に行うことができる。
【0079】
又、前記洗浄ノズル37を複数設け、各洗浄ノズル37からのジェット水流の噴射方向を変えることで、各洗浄ノズル37毎に前記濾液通路11の壁面の異なる部分の洗浄が可能となり、該濾液通路11の壁面全体を洗浄することができる。更に、前記洗浄ノズル37からのジェット水流の方向が前記濾液通路11の軸心と平行のものを組合わせてもよい。
【0080】
尚、上記実施の形態は、ケーキ搬送路6が閉鎖した多重円板脱水装置について説明したが、図11に示したケーキ搬送路6が開放している多重円板脱水装置に実施することが可能であることは言う迄もない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略説明図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】本発明の実施の形態に於ける下部濾体群の部分平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に使用される円板を示し、図3のB矢視図である。
【図5】本発明の実施の形態に使用される円板の側面図である。
【図6】図4のC部拡大図である。
【図7】図5のD部拡大図である。
【図8】本発明の実施の形態に使用される他の円板の例を示し、円板を構成するスペーサ部分の部分正面図である。
【図9】該スペーサ部分の部分平面図である。
【図10】(A)、(B)、(C)は本発明に於ける濾液通路洗浄についての説明図である。
【図11】従来の多重円板脱水装置を示す概略斜視図である。
【図12】従来の多重円板脱水装置に用いられる濾体の側面図である。
【符号の説明】
【0082】
3 脱水槽
4 上部濾体群
5 下部濾体群
6 ケーキ搬送路
7 濾体
8 回転軸
10 吐出口
11 濾液通路
13 凝集原液供給口
14 原液供給ライン
15 凝集液供給ライン
16 原液供給ポンプ
17 凝集液供給ポンプ
23 上流端濾体群
24 抵抗板
30 軸体
31 円板
32 スペーサ
33 溝
37 洗浄ノズル
38 目
47 スペーサ付円板
49 ボス部
50 突部
51 通路孔
52 突起
53 濾過溝
54 スペーサ
55 濾過孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な軸体に円板、該円板より小径のスペーサを交互に多重に嵌設して構成した濾体を、前記円板の一部が重合する様所要数連設し、前記円板の重合部分の隙間から濾過する様にした濾体群を具備する多重円板脱水装置に於いて、前記円板、前記スペーサを貫通する濾液通路を形成して該濾液通路に漏出した濾液を前記濾体の軸端から排出する様にし、前記スペーサ全周に亘って濾過溝を形成し、該濾過溝は半径方向に延び一端が通路孔に連通する様に開口し他端が前記スペーサ周面に開口し、濾液が該濾過溝を通って前記通路孔に漏出する様にしたことを特徴とする多重円板脱水装置。
【請求項2】
前記スペーサと前記円板とは一体に成形された請求項1の多重円板脱水装置。
【請求項3】
前記スペーサは、濾過溝を形成する様に所定間隔で全周に亘ってリング状に突設された突起により形成された請求項2の多重円板脱水装置。
【請求項4】
前記濾過溝は中心に向って漸次断面積が大きくなる形状を有する請求項1の多重円板脱水装置。
【請求項5】
前記円板の周面に所要間隔で突部を形成した請求項1の多重円板脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−808(P2007−808A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185361(P2005−185361)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】