説明

多重管の先端から高圧流体を噴射して地盤を改良する地盤改良装置

【課題】地盤の削孔時において多重管の流路の一部を削孔水用の流路に兼用する地盤改良装置において、削孔水を流す場合と流さない場合とで流路の切換を確実に行う。
【解決手段】
本発明の地盤改良装置1は、内管流路24aと内管流路24aの外側を囲む外管流路26aを形成し、地盤Gを削孔するための削孔ビット22が下端に設けられた注入管20と、注入管20の下端部側面に設けられ、内管流路24aを流れる硬化材と外管流路26aを流れる高圧空気とを噴射する下側ノズル35と、外管流路26aに連通され、地盤Gの削孔時に削孔ビット22に供給される削孔水が流れる削孔水流路29と、内管流路24aに内部空間27aが連通された弾性体によって作製され、硬化材の内部空間27aへの供給に伴って膨張されて削孔水流路29を塞ぐ閉塞部材27とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化材や空気等の高圧流体を、多重管内の流路を通じて高圧で供給し、多重管の先端側面に設けたノズルからこれらの高圧流体を噴射させて地盤を改良する地盤改良装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超高圧で流体を噴射させて地盤を切削するとともに硬化材を充填し、固結体を造成することで地盤の改良を行う地盤改良装置において、ガイドホールの自削孔時に注入材用の流路を削孔水用の流路としても使用するものがある(例えば、特許文献1を参照)。この装置では、内管流路の清水(高圧流体)によって高圧差動弁を移動させることで、注入材用の流路を流れる流体の供給先を切り換えている。
【0003】
この装置における高圧差動弁は、内管流路の流体圧力に応じて管長手方向に移動するものであり、内管流路の下端に弁体の上端部が挿入された状態でスプリングによって押し上げられている。そして、スプリングの力が内管流路の流体圧力に勝ると、高圧差動弁が上昇して注入材用の流路と削孔ビットへの流路とが連通される。この連通状態で削孔水を注入材用の流路に流すと、削孔水が削孔ビットへ供給される。一方、内管流路の流体圧力がスプリングの力に勝ると、高圧差動弁が下降して流路同士が遮断される。この遮断状態で注入材を注入材用の流路に流すと、注入材が注入ノズルから噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3172782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、高圧差動弁の上昇や下降によって流路の切り換えを行っている。このように、弁体を上下方向に移動させる方式のため、土砂粒子が噛んでしまうと弁体による流路の遮断が不完全になり、流体が漏れ出すといった不具合が生じてしまう。この不具合により、削孔水を流す場合と流さない場合とで流路の切り換えが上手くいかなくなる虞があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、地盤の削孔時において多重管の流路の一部を削孔水用の流路に兼用する地盤改良装置において、高圧差動弁のようなスライド式の弁体を用いることなく、注入する流体の圧力を利用して流路の切り換えを確実に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の地盤改良装置は、第1流路と前記第1流路の外側を囲む第2流路を形成し、地盤を削孔するための削孔ビットが下端に設けられた多重管と、前記多重管の下端部側面に設けられ、前記第1流路を流れる第1高圧流体と前記第2流路を流れる第2高圧流体とを噴射するノズルと、前記第2流路に連通され、地盤の削孔時に前記削孔ビットに供給される削孔水が流れる削孔水流路と、前記第1流路に内部空間が連通された弾性体によって作製され、前記第1高圧流体の前記内部空間への供給に伴って膨張されて前記削孔水流路を塞ぐ閉塞部材とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の地盤改良装置によれば、閉塞部材を膨張させることで削孔水流路を閉塞でき、収縮させることで削孔水流路を開放できる。このように、閉塞部材の膨張状態に応じて削孔水流路を開閉できるため、土砂等の異物が削孔水流路に入り込んだとしても、流路の閉塞時には閉塞部材が異物を覆う状態で膨張するので、流路の切り換えを確実に行うことができる。
【0009】
本発明の地盤改良装置において、前記閉塞部材を、上端部が前記第1流路を区画する筒状部材の下端部に接続された有底筒状の弾性体とし、外周面によって前記削孔水流路の一部を区画する構成とした場合には、膨張された閉塞部材が削孔水流路を直接的に閉塞するので、閉塞の確実性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地盤の削孔時において多重管の流路の一部を削孔水用の流路に兼用する地盤改良装置において、高圧差動弁のようなスライド式の弁体を用いることなく、注入する流体の圧力を利用して流路の切り換えを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】地盤改良装置の全体構成を説明する図である。
【図2】注入管の先端部分を拡大して示す断面図である。
【図3】(a)は図2のX−X断面図、(b)は図2のY−Y断面図、(c)は図2のZ−Z断面図である。
【図4】注入管の先端部分における流路等を簡略化して示す図である。
【図5】通常の噴射攪拌工法にて各流路に流す流体を説明する図である。
【図6】(a)は地盤の削孔を説明する図である。(b)は地盤の改良処理を説明する図である。
【図7】削孔時における注入管の先端部分を説明する図であり、(a)は流体の流れを示す断面図、(b)は流体の流れを簡略化して示す図である。
【図8】地盤改良時における注入管の先端部分を説明する図であり、(a)は流体の流れを示す断面図、(b)は流体の流れを簡略化して示す図である。
【図9】注入管の先端部分における他の構成を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、地盤改良装置1は、造成マシン10と、注入管20とを有している。
【0013】
造成マシン10は、地盤Gを削孔してガイドホールGHを形成し、ガイドホールGHに挿入された注入管20の先端部分(後述する下端部分21)から空気、水、硬化材等の流体を高圧で噴射させるとともに、注入管20を回転させつつ引き上げることで、地盤Gの切削と硬化材の混合攪拌とを同時に行うものである。
【0014】
注入管20は、高圧流体を流すための複数の流路を内部に有する多重管によって構成されている。そして、ガイドホールGHに挿入された状態で下側に位置する一方の先端部分には、削孔ビット22が取り付けられ、上側に位置する他方の先端部分には注入管スイベル23が取り付けられている。便宜上、以下の説明では、一方の先端部分のことを下端部分21という。
【0015】
図2及び図3に示すように、注入管20は、内管24、中管25、及び外管26を有する3重管によって構成されている。すなわち、外管26の内側空間に中管25が挿入され、中管25の内側空間に内管24が挿入され、かつ、内管24、中管25、及び外管26が同心状に配置されている。そして、内管24の外径は中管25の内径よりも小さく定められ、中管25の外径は外管26の内径よりも小さく定められている。このため、この注入管20は、内管24の中心部に形成される内管流路24aと、内管24の外周面と中管25の内周面との間に内管流路24aを囲む状態で形成される中管流路25aと、中管25の外周面と外管26の内周面との間に中管流路25aを囲む状態で形成される外管流路26aとを有している。
【0016】
内管流路24aは第1流路に相当し、地盤Gの削孔時において硬化材は供給されず、大気圧の空気で満たされている。一方、地盤Gの改良時において、内管流路24aにはセメントミルク等の硬化材が高圧で供給される。外管流路26aは第2流路に相当し、地盤Gの削孔時においては削孔用の水(圧力水)が供給される。一方、地盤Gの改良時において、外管流路26aには空気が高圧で供給される。中管流路25aは第3流路に相当し、地盤Gの削孔時においては静圧水で満たされる。一方、地盤Gの改良時において、中管流路25aには高圧空気が供給される。なお、各流路24a〜26aに流れる流体については後で説明する。
【0017】
内管24の下端部には、閉塞部材27の上端部が取り付けられている。この閉塞部材27は、上面が開放された有底円筒状の弾性体である。本実施形態の閉塞部材27は、側面部分がゴムによって作製されている。この閉塞部材27を内包する状態で、注入管20の下端部には水路形成部材28が設けられている。水路形成部材28は、閉塞部材27を収納可能な大きさの空間が形成された上面開放の有底筒状部材である。水路形成部材28は肉厚の円筒状をしており、その内径は閉塞部材27の外径よりも一回り大きく定められている。閉塞部材27は、水路形成部材28と同心上に配置されているため、閉塞部材27の外周面と水路形成部材28の内周面との間には隙間が形成される。この隙間は、水路形成部材28の下面まで一連に形成され、削孔水を流すための削孔水流路29となる。
【0018】
水路形成部材28の下端部には、削孔ビット22が取り付けられている。この削孔ビット22は、下端に切削用の刃が形成された円筒状部材であり、水路形成部材28とともに回転する。そして、造成マシン10によって注入管20を押し下げつつ軸周りに回転させることで地盤Gを削孔することができる。ここで、削孔水流路29の出口は、削孔ビット22の内側空間に開口しているため、削孔水流路29を通じて削孔水を排出しながら地盤Gを削孔すると、削孔時の抵抗低減や刃の目詰まりを防止が図れ、削孔を円滑に行うことができる。
【0019】
水路形成部材28と注入管20との境界部分には、分流空部31が設けられている。この分流空部31は、閉塞部材27の外周を囲む扁平なリング状の空間であり、後述する上側ノズル及び下側ノズルよりも下の位置に設けられている。そして、図3(a)や(b)に記載された外管連通路32を介して、分流空部31と外管流路26aとが連通されている。
【0020】
また、図2や図3(b)に記載されたノズル連通路33を介して、分流空部31と下側ノズル空部34とが連通されている。この下側ノズル空部34は、下側ノズル35の高さ位置に、内管24の外側を囲む状態に形成されたリング状の空間である。そして、下側ノズル35は、二重型ノズルによって構成されており、内管流路24aを流れる高圧流体と外管流路26aを流れる高圧流体とを、注入管20の側方に向かって噴射する。この下側ノズル35において、外管流路26aからの高圧流体を噴射する部分(すなわち下側ノズル空部34と連通する部分)は、流路の断面積が、削孔水流路29の断面積よりも十分に小さく定められている。
【0021】
下側ノズル空部34の直上には、下側遮蔽弁36を間に挟んだ状態で上側ノズル空部37が形成されている。この上側ノズル空部37は、上側ノズル38の高さ位置に、内管24の外側を囲む状態に形成されたリング状の空間である。この上側ノズル空部37の直上には、上側遮蔽弁39を間に挟んだ状態で中管流路25aの下端が位置している。そして、上側ノズル38は、注入管20の周方向において下側ノズル35と背中合わせの位置(180度回転した位置)に設けられている。
【0022】
この上側ノズル38もまた二重型ノズルによって構成されており、内管流路24aを流れる高圧流体と、中管流路25a又は外管流路26aを流れる高圧流体とを、注入管20の側方であって下側ノズル35とは反対方向に向けて噴射する。そして、この上側ノズル38においても、中管流路25aや外管流路26aからの高圧流体を噴射する部分(すなわち上側ノズル空部37と連通する部分)は、流路の断面積が、削孔水流路29の断面積よりも十分に小さく定められている。
【0023】
下側遮蔽弁36は、リング状のゴム片によって構成された逆止弁である。この下側遮蔽弁36は、下側ノズル空部34と上側ノズル空部37との境界部分の開口を上側ノズル空部37側から覆っている。そして、下側ノズル空部34の流体圧力(すなわち、外管流路26aの流体圧力)が上側ノズル空部37の流体圧力(すなわち、中管流路25aの流体圧力)よりも高い場合に上方に湾曲し、境界部分の開口から離れた開放状態に変換される。これにより、上側ノズル空部37と下側ノズル空部34とが連通される。反対に、上側ノズル空部37の流体圧力が下側ノズル空部34の流体圧力の流体圧力よりも高い場合に下方に押圧されて境界部分の開口を塞いだ閉塞状態に変換される。これにより、上側ノズル空部37と下側ノズル空部34とが遮断される。
【0024】
上側遮蔽弁39もまた、リング状のゴム片によって構成された逆止弁である。この上側遮蔽弁39は、中管流路25aと上側ノズル空部37の境界部分の開口を上側ノズル空部37側から覆っている。そして、中管流路25aの流体圧力が上側ノズル空部37の流体圧力よりも高い場合に下方に湾曲し、境界部分の開口から離れた開放状態に変換される。これにより、中管流路25aと上側ノズル空部37とが連通される。反対に、上側ノズル空部37の流体圧力が中管流路25aの流体圧力の流体圧力よりも高い場合に上方に押圧されて境界部分の開口を塞いだ閉塞状態に変換される。これにより、中管流路25aと上側ノズル空部37とが遮断される。
【0025】
前述したように、下側ノズル空部34は、ノズル連通路33、分流空部31、及び外管流路26aを介して、外管流路26aと連通されている。このため、外管流路26aの流体圧力が中管流路25aの流体圧力よりも高い場合には、下側遮蔽弁36が開放状態となる一方で上側遮蔽弁39が閉塞状態になる。この場合、下側ノズル空部34と上側ノズル空部37の両方が、外管流路26aの流体で満たされることになる。これにより、上側ノズル38と下側ノズル35のそれぞれから内管流路24aを流れる高圧流体と外管流路26aを流れる高圧流体とが噴射される。
【0026】
反対に、中管流路25aの流体圧力が外管流路26aの流体圧力よりも高い場合には、下側遮蔽弁36が閉塞状態となる一方で上側遮蔽弁39が開放状態になる。この場合、上側ノズル空部37は中管流路25aの流体で満たされ、下側ノズル空部34は外管流路26aの流体で満たされることになる。これにより、上側ノズル38からは内管流路24aを流れる高圧流体と中管流路25aを流れる高圧流体とが噴射され、下側ノズル35からは内管流路24aを流れる高圧流体と外管流路26aを流れる高圧流体とが噴射される。
【0027】
前述した注入管20の下端部分21は、図4に示すように簡略化して示すことができる。理解を容易にするため、以下の説明に際しては簡略化した図も用いて説明することとする。
【0028】
次に、この地盤改良装置1を用いた地盤改良工法について説明する。
【0029】
図5に示すように、地盤Gの削孔時において、外管流路26aには削孔水を流し、中管流路25aを静圧水で満たし、内管流路24aを大気開放する(すなわち大気圧の空気で満たす)。そして、図6(a)に示すように、注入管20の下端部分21から削孔水を排出しつつ注入管20を軸回りに回転させ、注入管20を少しずつ押し下げる。
【0030】
図7(a),(b)に示すように、削孔時において内管流路24aは大気開放されているので、閉塞部材27の内部空間27aも大気圧の空気で満たされる。これにより、閉塞部材27は膨らまず、削孔水流路29は開放された状態になる。そして、外管流路26aを流れる削孔水の圧力は、中管流路25a内の水圧よりも高いので、下側遮蔽弁36が開放状態になり、上側遮蔽弁39が閉塞状態になる。
【0031】
ここで、各ノズル35,38における削孔水の流出部分は、その断面積が削孔水流路29の断面積よりも十分に小さい。このため、各ノズル35,38から流出される削孔水の流量は、削孔水流路29を通じて排出される削孔水の流量よりも十分に少なくなる。以上より、外管流路26aを流れる削孔水は、その大半が削孔水流路29を通じて排出され、残りが下側ノズル空部34や上側ノズル空部37に流入して下側ノズル35や上側ノズル38から流出される。
【0032】
このように、削孔時に各ノズル35,38から削孔水が流出することにより、削孔ビット22で掘削された土砂が地上へと排出される過程で、各ノズル35,38に目詰まりが生じることを防止する効果が得られる。
【0033】
図5に示すように、地盤改良時には、内管流路24aに高圧で硬化材を流し、中管流路25a及び外管流路26aに高圧空気を流す。これにより、各ノズル35,38からは硬化材が高圧空気とともに噴射される。そして、図6(b)に示すように、注入管20の下端部分21から硬化材や高圧空気を噴射しつつ注入管20を軸回りに回転させ、注入管20を引き上げる。これにより、地盤Gの切削と硬化材の攪拌混合とが行われる。
【0034】
図8(a),(b)に示すように、地盤改良時において内管流路24aには硬化材が高圧で流される。これに伴い、上側ノズル38及び下側ノズル35における内管流路24aとの連通部分からは、硬化材が噴射される。また、閉塞部材27の内部空間27aに硬化材が充填され、閉塞部材27が側方に膨らんで削孔水流路29が閉塞される。削孔水流路29の閉塞に伴って、外管流路26aを流れる高圧空気は、分流空部31から外管連通路32を通じて下側ノズル空部34に流入する。
【0035】
ここで、中管流路25aの空気圧力を、外管流路26aの空気圧力よりも高くすると、上側遮蔽弁39が開放状態になるとともに下側遮蔽弁36が閉塞状態になる。これにより、下側ノズル空部34と上側ノズル空部37とが遮断され、中管流路25aを流れる高圧空気が上側ノズル空部37に流入する。この場合、下側ノズル35からは内管流路24aを流れる硬化材と外管流路26aを流れる高圧空気とが噴射され、上側ノズル38からは内管流路24aを流れる硬化材と中管流路25aを流れる高圧空気とが噴射される。なお、中管流路25aの高圧空気を外管流路26aの高圧空気よりも低い圧力に調整すると、各ノズル35,38からは、内管流路24aの硬化材が外管流路26aの高圧空気とともに噴射される。
【0036】
本実施形態の地盤改良装置1は、内管流路24aを流れる硬化材によって閉塞部材27を膨張させて削孔水流路29を塞ぐ構成であるため、削孔時に生じた土砂が削孔水流路29に入り込んだとしても、弾性を有する閉塞部材27が土砂を覆うように膨張して水路形成部材28の内壁面に密着する。その結果、弁体を上下方向移動させる構成よりも閉塞度合いを高めることができる。また、閉塞部材27の外周面が削孔水流路29の一部を区画しているので、膨張時において閉塞部材27が削孔水流路29を直接に閉塞する。その結果、閉塞の確実性を高めることができる。
【0037】
この地盤改良装置1では、内管流路24aの硬化材の圧力に応じて閉塞部材27の膨張度合いを制御でき、閉塞部材27の膨張度合いに応じて外管流路26aの流体を削孔水流路29と下側ノズル空部34の両方に流すことと、下側ノズル空部34にのみ流すこととを選択できるので、硬化材の地盤Gへの注入を開始した後であっても、注入管20を引き上げることなく削孔水を削孔ビット22に供給することができる。これにより、硬化材の注入開始後に再度の削孔を行う際の作業効率を高めることができる。
【0038】
ところで、以上の実施形態に関する説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨、目的を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、次のように構成してもよい。
【0039】
閉塞部材27に関し、前述の実施形態では、上面が開放された有底円筒状の弾性体で構成されたものを例示した。この閉塞部材27に関し、シート状の弾性体を袋状にした弾性体袋を用いてもよい。この弾性体袋は、内管流路24aの流体が内部空間に充填されると、水風船のように膨らんで削孔水流路29を閉塞する。要するに閉塞部材27は、内管流路24aを流れる流体の充填状態に応じて膨張あるいは収縮し、削孔水流路29を閉塞したり、開放したりするものであればよい。
【0040】
また、注入管20の下端部分21に関し、前述の実施形態では、外管流路26aを流れる流体が分流空部31及び外管連通路32を通じて下側ノズル空部34に流入するように構成されていた。この先端部分に関し、図9に示すように、中管流路25aを流れる流体を分流空部31及び連通路33´を通じて下側ノズル空部34に流入するように構成してもよい。なお、このように構成した場合、外管流路26aを流れる流体は、上側遮蔽弁39を通じて上側ノズル空部37に流入される。他の構成は、前述した実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0041】
また、注入管20に関し、前述の実施形態では3重管によって構成されていたが、2重管で構成してもよいし、4重管によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 地盤改良装置
10 造成マシン
20 注入管
21 下端部分
22 削孔ビット
23 注入管スイベル
24 内管(24a 内管流路)
25 中管(25a 中管流路)
26 外管(26a 外管流路)
27 閉塞部材(27a 内部空間)
28 水路形成部材
29 削孔水流路
31 分流空部
32 外管連通路
33 ノズル連通路
34 下側ノズル空部
35 下側ノズル
36 下側遮蔽弁
37 上側ノズル空部
38 上側ノズル
39 上側遮蔽弁
G 地盤
GH ガイドホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路と前記第1流路の外側を囲む第2流路を形成し、地盤を削孔するための削孔ビットが下端に設けられた多重管と、
前記多重管の下端部側面に設けられ、前記第1流路を流れる第1高圧流体と前記第2流路を流れる第2高圧流体とを噴射するノズルと、
前記第2流路に連通され、地盤の削孔時に前記削孔ビットに供給される削孔水が流れる削孔水流路と、
前記第1流路に内部空間が連通された弾性体によって作製され、前記第1高圧流体の前記内部空間への供給に伴って膨張されて前記削孔水流路を塞ぐ閉塞部材と
を有することを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
前記閉塞部材は、上端部が前記第1流路を区画する筒状部材の下端部に接続された有底筒状の弾性体であって、外周面によって前記削孔水流路の一部が区画されることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−136842(P2012−136842A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288713(P2010−288713)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(509235545)株式会社SEET (7)
【Fターム(参考)】