説明

多面体状の箱及びその製造方法

【課題】意匠性に富み、且つ、十分な強度及び安定性を有する多面体状の箱及びその製造方法を提供する。
【解決手段】底面12及び天面13並びに前後左右の側面14〜17から成る6面体状の
箱体10から箱を構成する。底面12及び天面13は長方形状の平面からなり、直線状の折線20によって側面14〜17と接している。前後左右の側面14〜17はいずれも波目が水平方向に延びる波状曲面からなり、波形状の折線21を介して接している。前後の側面14,15は線対称な花瓶状の図形からなり、上半部が山部、下半部が谷部となる波状曲面となっている。左右の側面16,17は線対称な上下逆向きの花瓶状の図形からなり、上半部が山部、下半部が谷部となる波状曲面となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波状曲面からなる側面を有する多面体状の箱及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製の箱は、その表面に図柄や絵柄、宣伝・広告用のメッセージ等を印刷し易いことから、商品のパッケージ、各種イベントや店頭に展示される宣伝・広告用ディスプレイ等として利用されている。特に、カートンブランクを折り曲げて組み立てられる紙製の箱は、組み立てが容易であること、組み立て前のカートンブランクの状態では嵩張らず保管スペースを小さくできること、廃棄し易いこと等の理由から様々な分野で広く利用されている。
【0003】
加工の容易性からカートンブランクの折り曲げ部分は直線状とされることが多く、このため、カートンブランクを折り曲げて成形される紙製の箱は通常、底面及び天面並びに側面の全てが平面状に構成されている。ところが、このように全ての面が平面状である紙製容器は面白味が無く、意匠性が乏しい。
【0004】
これに対して、一部の面を曲面状にすることにより、意匠性に富み、宣伝効果を高めた紙製の箱が提供されている(特許文献1参照)。
しかし、曲面状の部分は、少しの衝撃で凹んだり歪んだりし易い。特に、宣伝・広告用ディスプレイとして用いられる大型の箱は、商品パッケージとして用いられる小型の箱に比べると凹んだり歪んだりし易い。
【特許文献1】特開2000-313476号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、意匠性に富み、且つ、十分な強度及び安定性を有する多面体状の箱及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明は、少なくとも底面と側面を有する箱体からなる多面体状の箱であって、
前記側面のうちの少なくとも一面は波状曲面から構成され、
前記波状曲面からなる側面の裏面には、平板と波板からなる片面段ボール製の補強材が、その波板の波目が前記波状曲面の波目と同方向に延びるように貼付されていることを特徴とする。
ここで、「波状」とは、一方向の曲率がゼロであり、それと直交する方向にのみ正及び負の曲率を有する曲面をいう。曲率がゼロとなる方向を「波目」と呼ぶ。
【0007】
前記箱体は可撓性を有するシート状部材からなるカートンブランクを折り曲げて成形することができる。この場合、前記波状曲面からなる側面の裏面には、当該側面よりもやや小さい補強材を貼付すると良い。可撓性を有するシート状部材としては、紙製シートやプラスチック製シートを用いることができる。
【0008】
また、本発明は、底面及び天面並びに2n個(nは2以上の整数)の波状曲面からなる側面を有し、カートンブランクを折り曲げることにより形成される多面体状の箱の製造方法であって、
2n個の側面及び接着片を連設してなる長方形部と、前記長方形部の各側面を構成する部分の上下辺部に連設され底面及び天面を構成する複数の小片部とからなるカートンブランクを形成し、
前記カートンブランクの長方形部の各側面を構成する部分の裏面に、平板とその一方の面に接着された波板からなり各側面よりもやや小さい片面段ボール製の補強材を、その波板の波目が前記波状曲面の波目と同方向に延びるように貼付し、
前記カートンブランクを前記補強材の周縁部で折り曲げ、
前記接着片を接着すると共に前記小片部の一部を重ね合わせて箱体を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、箱体の少なくとも一側面を波状曲面としたことにより、意匠性に富んだ多面体状の箱を提供することができる。また、片面段ボール製の補強材を波状曲面の側面の裏面に貼付した。片面段ボールは、その波目と直交する方向に柔軟に湾曲する性質を有する。従って、補強材を貼付したことにより波状曲面の側面の強度を高めつつ滑らかな波状曲面を形成することができる。
【0010】
また、本発明の多面体状の箱の製造方法によれば、カートンブランクを折り曲げることにより簡単に箱体を形成することができる。この場合、前記波状曲面からなる側面を構成する部分の裏面に、各側面よりもやや小さい補強材を貼付した後、前記補強材の周縁部で折り曲げるようにしたため、予め折線を設けておく必要がなく、より簡単に箱体を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を宣伝・広告用ディスプレイに用いられる箱に適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜図6は本発明の第1の実施形態を示している。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る多面体状の箱は、底面12及び天面13並びに前後左右の側面14〜17から成る6面体状の箱体10から構成されている。底面12及び天面13は長方形状の平面からなり、直線状の折線20によって側面14〜17と接している。前後左右の側面14〜17はいずれも波目が水平方向に延びる波状曲面からなり、波形状の折線21を介して接している。図2に示すように、前後の側面14,15は左右に線対称な花瓶状の図形からなり、上半部が山部、下半部が谷部となる波状曲面となっている。左右の側面16,17は左右に線対称な上下逆向きの花瓶状の図形からなり、上半部が山部、下半部が谷部となる波状曲面となっている。
【0012】
上記構成の箱体10は図3〜図5に示す紙製シートからなるカートンブランク24を組み立てて形成される。図3は、箱体10の外面側からみたカートンブランク24の展開図、図4は箱10の内面側から見たカートンブランク24の展開図、図5は途中まで組み立てられた状態のカートンブランク24を示している。通常、図5に示す筒状のカートンブランク24の状態で保管される。
【0013】
図3及び図4に示すように、カートンブランク24は、長方形部26とその上部及び下部に延設された複数の小片部28から構成されている。長方形部26は、接着片27と、組み立てられたときに前後左右の側面14〜17を構成する部分から構成されている。ここでは、前後左右の側面14〜17を構成する部分をそれぞれ前側面構成部14a、後側面構成部15a、左側面構成部16a,16b、右側面構成部17aとする。後述するように、左側面構成部16a,16bは、接着片27を左側面構成部16bに接着することにより連結されて左側面16全体に対応する形状となる。
【0014】
各側面構成部の裏面にはそれぞれ補強材30が貼付されている。前側面構成部14a、後側面構成部15a、左側面構成部16a,16bの裏面には各側面構成部よりもやや小さい形状の1枚の補強材30が貼付されている。右側面構成部17aの裏面には、当該側面構成部よりもやや小さい形状のものを2分割してなる2枚の補強材30が貼付されている。具体的には、各補強材30は各側面構成部に対して1〜5mm程度のマージンを有するよう設計されている。
補強材30は、平板D1と波板D2を貼り合わせてなる片面段ボールD(図6参照)を打ち抜いて形成されたものである。各補強材30は、その波板の波目が各側面14〜17の波目と同じ方向となるように、平板側において各側面構成部に貼付されている。
【0015】
前記カートンブランク24は次のように組み立てることにより箱体10が形成される。まず、補強材30の周縁部に沿ってカートンブランク24を順に折り曲げて折目を付ける。この結果、カートンブランク24に折線20〜22が設けられる。尚、一点鎖線は山折り線を、二点鎖線は谷折り線を示している。
【0016】
続いて、接着片27を左側面構成部16bの外面に接着すると共に接着片27と左側面構成部16aの間、右側面構成部17aに設けられる折線22で折り畳む。これにより、図5に示す折り畳まれた状態の筒状のカートンブランク24が形成される。尚、折線22は、筒状のカートンブランク24を折り畳めるようにするために設けられたものであり、この結果、筒状のカートンブランク24の保管スペースを小さくすることができる。
【0017】
筒状のカートンブランク24の折線22の折目を延ばした後、折線20,21で折り曲げると共に、小片部28同士を適宜重ね合わせる。これにより小片部28から平面状の底面12及び天面13が形成され、各側面構成部から波状曲面状の側面14〜17が形成されて箱体10が完成する。
【0018】
このように、本実施形態の箱体10によれば前後左右の側面14〜17を波状曲面としたので、意匠性に優れるという効果を有する。また、本実施形態では、各側面14〜17を左右に線対称な図形としたため、折線21で折り曲げることにより全側面14〜17を容易に波状曲面にすることができる。また、上半部が山部で下半部が谷部となる側面と、上半部が谷部で下半部が山部となる側面を交互に配置したことにより、造形的なおもしろさを有する箱体10を形成することができる。従って、前記箱体10を宣伝・広告用ディスプレイとして用いた場合に人目を引くことになり、高い宣伝効果を得ることができる。
【0019】
また、各側面14〜17の裏面に片面段ボールからなる補強材30を、その波目と各側面14〜17の波目が同じ方向になるように貼付した。
図6に示すように、片面段ボールDは、波目が延びる方向P1には折れ曲がり難く、波目と直交する方向P2には柔軟に湾曲する。従って、各側面14〜17の裏面に補強材30を貼付することにより、波状曲面の滑らかさを損なうことなく各側面14〜17の強度を向上させることができる。しかも、補強材30を平板側で各側面14〜17の裏面に貼付したため、補強材30の波目が側面14〜17の外面に浮き出ることがない。このため、補強材30を貼付したことにより各側面14〜17の滑らかさが損なわれることがない。
【0020】
尚、本実施形態では接着片27を左側面構成部16bの外面に接着したが、左側面構成部16bの裏面(内面)に接着しても良い。この場合は、接着片27を左側面構成部16bの裏面に接着した後、その上から補強材30を貼付する。
また、本実施形態では筒状のカートンブランク24を折りたためるように折線22を設けたが、シート状のカートンブランク24から直接、箱体10を形成する場合は、折線22は不要である。
【0021】
図7及び図8は本発明の第2の実施形態を示している。この実施形態では、2種類のシート状のカートンブランク41,42を繋げて筒状のカートンブランク43を構成し、この筒状のカートンブランク43から箱体10を形成している。
一方のシート状のカートンブランク41は、接着片27,左側面16の一部を構成する左側面構成部45a,前側面構成部46,右側面構成部47と、その上下に連接された小片部28から構成されている。他方のシート状のカートンブランク42は、接着片27と、右側面17の一部を構成する右側面構成部47a、後側面構成部48、左側面構成部45と、その上下に連接された小片部28から構成されている。
【0022】
カートンブランク41の左側面構成部45a,前側面構成部46の裏面には各構成部よりもやや小さい形状の補強部材30がそれぞれ貼付されている。カートンブランク42の右側面構成部47a、後側面構成部48の裏面には各構成部よりもやや小さい形状の補強材30がそれぞれ貼付されている。
【0023】
本実施形態では次のようにして箱体10が組み立てられる。まず、カートンブランク41及び42を補強材30の周縁部で折り曲げて折目を付ける。これにより、カートンブランク41,42に折線20〜22が形成される。次に、カートンブランク41の接着片27をカートンブランク42の左側面構成部45の裏面の接着部50に接着し、他方のカートンブランク42の接着片27をカートンブランク41の右側面構成部47の裏面の接着部51に接着する。続いて、カートンブランク41の左側面構成部45の裏面に接着片27の上から補強材30を貼付し、カートンブランク42の右側面構成部47の裏面に接着片27の上から補強材30を貼付する。そして、折線22で折り畳むことにより、図8に示す折り畳まれた状態の筒状のカートンブランク43が形成される。
【0024】
この後、カートンブランク43の折線22の折目を延ばした後、折線20,21で折り曲げると共に、小片部28同士を適宜重ね合わせる。これにより底面12及び天面13並びに各側面14〜17が形成されて、箱体10が完成する。
【0025】
本実施形態では、接着片27を左側面構成部45や右側面構成部47に接着した後、その接着部分を左側面構成部45及び右側面構成部47で覆うように構成した。このため、左側面構成部45と右側面構成部47aのつなぎ目、右側面構成部47と右側面構成部47aのつなぎ目が外部から見えない。このため、カートンブランク43を組み立てて箱体10を形成したときに、いずれの側面14〜17にもつなぎ目ができず、見栄えを良くすることができる。
【0026】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく例えば次のような変形が可能である。
補強材は、波板側において各側面の裏面に貼付しても良い。この場合は、補強材の波目が各側面の外面に浮き出ることが考えられるが、この場合は新たな模様を側面に付与することができるという効果を有する。
箱体の材料には、紙製シートの他、合成樹脂製シートを用いることができる。
本発明は6面体以外の多面体にも適用できる。また、底面及び天面と2n個(nは2以上の整数)の側面を有する多面体の場合、各側面の両側の折線を線対称な形状にすることにより、全ての側面を波状曲面にすることができる。
また、本発明は宣伝・広告用ディスプレイの他、商品パッケージとしての箱にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る多面体状の箱の全体構成を示す斜視図。
【図2】多面状の箱の平面図(a)、正面図(b)、左側面図(c)。
【図3】箱体の外側からみたカートンブランクの展開図。
【図4】箱体の内側からみたカートンブランクの展開図。
【図5】接着片を接着し筒状にしたカートンブランクの平面図。
【図6】片面段ボールの機能を説明するための図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る多面体状の箱のカートンブランクの展開図。
【図8】接着片を接着し筒状にしたカートンブランクの平面図。
【符号の説明】
【0028】
10…箱体
12…底面
13…天面
14〜17…側面
20,22…折線
24,41〜43…カートンブランク
26…長方形部
27…接着片
28…小片部
30…補強材
D…片面段ボール
D1…平板
D2…波板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底面と側面を有する箱体からなる多面体状の箱において、
前記側面のうちの少なくとも一面は波状曲面から構成され、
前記波状曲面からなる側面の裏面には、平板と波板からなる片面段ボール製の補強材が、その波板の波目が前記波状曲面の波目と同方向に延びるように貼付されていることを特徴とする多面体状の箱。
【請求項2】
前記箱体は可撓性を有するシート状部材からなるカートンブランクを折り曲げて成形され、
前記波状曲面からなる側面の裏面には、当該側面よりもやや小さい補強材が貼付されていることを特徴とする請求項1に記載の多面体状の箱。
【請求項3】
前記箱体は2n個(nは2以上の整数)の側面を有し、
前記側面の全てが、底面と平行な方向に延びる波目の波状曲面から構成されていることを特徴とする請求項2に記載の多面体状の箱。
【請求項4】
底面及び天面並びに2n個(nは2以上の整数)の波状曲面からなる側面を有し、カートンブランクを折り曲げることにより形成される多面体状の箱の製造方法において、
2n個の側面及び接着片を連設してなる長方形部と、前記長方形部の各側面を構成する部分の上下辺部に連設された底面及び天面を構成する複数の小片部とからなるカートンブランクを形成し、
前記カートンブランクの長方形部の各側面を構成する部分の裏面に、平板と波板からなり各側面よりもやや小さい片面段ボール製の補強材を、その波板の波目が前記波状曲面の波目と同方向に延びるように貼付し、
前記カートンブランクを前記補強材の周縁部で折り曲げ、
前記接着片を接着すると共に前記小片部の一部を重ね合わせることにより底面及び天面を形成することを特徴とする多面体状の箱の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−67428(P2009−67428A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236522(P2007−236522)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000133157)株式会社TANAーX (28)
【Fターム(参考)】