説明

大きな心室壁ストレス領域における心臓刺激

電気刺激療法によって心室リモデリングを改善するための装置および方法。心室は、収縮期中にストレス部位に小さな前負荷および後負荷をもたらすために心筋層のストレス部位が他の部位と比較して早期に興奮させられるような形で1つ以上の刺激パルスを送達することによって、ペーシングされる。ストレスを加えられた心筋層から時間外にストレスを除去することは、望ましくない心室リモデリングの改善をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医療機器に関し、より詳細には植え込み型の心臓刺激治療装置および心臓刺激治療の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鬱血性心不全(CHF)は、心機能の異常が心拍出量を末梢組織の代謝要求を十分に満足させるレベル以下にまで低下させる臨床的な症候群である。CHFは様々な病因に起因することがあり、そして最も一般的には虚血性心疾患に起因する。心臓が動脈系内へ血液を十分に送り出すことができないことを“前方不全”と呼ぶことがあり、また“後方不全”とは、その結果としてもたらされる肺および体静脈における高血圧を意味し、それにより鬱血が生じる。
【0003】
肺系統および静脈系統における血液を送り出すことができないので、後方不全は前方不全から発生する当然の結果である。前方不全は、心室の収縮障害によって、あるいは、例えば全身性高血圧または弁機能不全に起因する大きな後負荷(すなわち血液送出に抵抗する力)によって発生することがある。
【0004】
心拍出量を増加させるように作用する1つの生理学的代償的機構は、心室の拡張期充満圧を増加させ、それによって前負荷(すなわち拡張期の終了時点において心室が心室内の血液量によって引き伸ばされる程度)を増加させる後方不全によるものである。前負荷の増加は収縮期における1回拍出量を増加させ、これはフランク−スターリングの法則として知られている現象である。したがって、心不全は、この機構によって少なくとも部分的に代償されることがあるが、肺鬱血および/または全身性鬱血を犠牲にする可能性がある。
【0005】
心室が大きな前負荷によってある時間期間にわたって引き伸ばされると、心室は拡張された状態になる。心室容積の増大は、与えられた収縮期圧において心室壁ストレスを増大させる。心室によってなされる圧容積仕事の増加とともに、これは心室筋の肥大を刺激する役割をなし、それは細胞組織の変質をもたらし、このプロセスは心室リモデリングと呼ばれる。
【0006】
肥大は収縮期圧を増加させることがあるが、また心室のコンプライアンスを低下させ、すなわち拡張期充満圧を増加させ、さらなる鬱血をもたらす。また、肥大を発生させる持続性ストレスは、心筋細胞のアポトーシス(すなわちプログラムされた細胞死)を誘発させ、そして最終的には心機能のさらなる悪化をもたらす壁の薄化を発生させる場合があることが知られている。したがって、心室の拡張および肥大は、最初は代償性のものであり、心拍出量を増加させる場合があるが、そのプロセスは最終的には収縮機能障害および拡張機能障害の両方をもたらす。心室リモデリングの程度はCHF患者の大きな死亡率との間に正の相関が認められることが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電気刺激療法によって心室リモデリングを改善するための装置および方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電気刺激療法によって心室リモデリングを改善するための装置および方法に関する。本発明の実施形態によれば、心室は、心筋層のこれまでにストレスを加えられかつリモデリングした部位が組織リモデリングを改善するために他の部位と比較して早期に興奮させられるような形で1つ以上の刺激パルスを送達することによって、ペーシングされる。
【0009】
本発明による心臓リモデリングを改善する方法は、患者の心臓にアクセスし、そして、心臓壁の近傍において、隣接する部位と比較してあるレベルの異常な壁運動を有する標的部位を検出することを含む。電極が標的部位の近くに植え込まれてもよい。標的部位は、心臓リモデリングを治療するために標的部位におけるストレスを変化させるために、電極を用いて、心臓壁の隣接する部位と比較して早期に興奮させられる。
【0010】
心臓壁の動きは、例えば加速度測定、歪測定、および/または局所的ドップラー組織速度測定等の超音波速度測定を用いて検出されてもよい。電極が、心房感知、心房ペーシング、心室感知または心室ペーシングイベント、または他のタイミングイベントまたは方法に応じて標的部位を早期興奮させるのに使用されてもよい。リモデリング改善早期興奮は、代謝要求を表現する活動レベルの測定に基づいて調節されてもよい。心臓の標的部位を検出することは、1つ以上の電気生理学的特性、複素インピーダンス特性、またはリモデリングを示す心臓壁組織の他の特性等の、心臓壁組織の活性化特性を感知することを含んでもよい。
【0011】
リモデリングを改善するのに最も適したパルス出力シーケンスは、血行動態的な効率を最大化するための最適なパルス出力シーケンスでなくてもよい。したがって、別の実施形態においては、パルス出力シーケンスは、代謝要求を表現する活動レベル測定値に基づいて自動的に調節される。そして、パルス出力シーケンスは、体の代謝要求が大きい場合に血行動態的により効率的な収縮をもたらすように設計されたものと、代謝要求があまり大きくない場合にリモデリングを改善するように設計されたものとの間で交互に切り替えられる。
【0012】
本発明による心臓リモデリング改善に適した心臓システムは、心臓の監視および刺激を制御するように構成されたコントローラを有する植え込み型ハウジングを含む。検出回路およびエネルギー送達回路がハウジング内に提供され、かつ、コントローラに接続される。リードが検出回路およびエネルギー送達回路に接続される。リードは少なくとも1つの心臓電極と、リード本体によって支持されかつ異常な心臓壁の動きを検出するように構成された少なくとも1つのセンサーとを備えたリード本体を含む。センサーは、心臓壁の隣接する箇所と比較して大きなストレスを有する心臓壁の標的箇所の近くに心臓電極を配置するのに役立つ情報を提供する。センサーはリードの遠端部に配置されてもよく、あるいは、心臓電極はリードの遠端に配置されてもよく、かつ、センサーは心臓電極の近くに配置されてもよい。
【0013】
本発明による装置の実施形態は、リードを心臓壁の標的位置に取り付けるように構成された固定配置を有するリードを含んでもよい。さらなる実施形態は、ハウジングの中にあるいはハウジングの上に配置されかつコントローラに接続された活動センサーを含み、コントローラは、活動センサーから受け取られる代謝要求を示す信号に応じてペーシング治療を調節するようにプログラムされる。
【0014】
本発明の上述した概要は、本発明の各々の実施形態またはすべての実施形態を説明しようとするものではない。本発明の利点および実現が、本発明をより完全に理解するとともに、添付の図面とともに以下の詳細な説明および請求項を参照することによって、明らかとなり、かつ、評価されるはずである。
【0015】
本発明は、様々な形態に容易に変更および置き換えることができ、本発明の特定の形態が、例として図面に示されており、かつ、以下で詳細に説明される。しかしながら、説明される特定の実施形態に本発明を限定しようとするものではないことを理解すべきである。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内に存在するあらゆる変更、等価物、および置き換えを網羅しようとするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明による心臓刺激の方法および装置を用いた装置は、以下で説明される特徴、構造、方法などを組み合わせたものの1つ以上を含んでもよい。例えば、心臓モニターまたは心臓刺激装置および心臓植え込み装置は、以下で説明される有益な特徴および/またはプロセスの1つ以上を含むように実施されてもよい。そのような装置または方法はここで説明される特徴および機能のすべてを含まなくてもよいことを意図するものであるが、組み合わせられて独特の構造および/または機能を提供する選択された特徴および機能を含むように実施されてもよい。
【0017】
植え込まれたペースメーカーによる一般的な心臓ペーシングは、心筋層と電気的に接触する電極を使用することによって、心臓への興奮性の電気的刺激を含む。“興奮性の刺激”という用語がここで使用される場合、これは筋線維の収縮を引き起こすに足る刺激を意味し、それは一般的にはペーシングとも呼ばれる。さらに“ペースメーカー”という用語は、電気的徐細動/細動除去または薬物送達等のそれが実行することが考えられる何らかの他の機能に関係なくペーシング機能を備えた何らかの心調律管理装置を意味すると考えられるべきである。ペースメーカーは、通常、患者の胸部の皮下に植え込まれ、また、典型的には、上部静脈系の血管を介して心臓にねじ込まれたリードによって、ペーシングされる心腔ごとの電極に接続され、および/または心外膜に配置される。感知された電気的な心臓イベントおよび経過した時間に応じて、ペースメーカーは、活動電位を発生させるに足る振幅および期間を有する脱分極電圧パルスを心筋層に送達する。そして、脱分極興奮の波は心筋層を介して伝播し、心拍を発生させる。
【0018】
様々な形態の心臓ペーシングは、多くの場合CHF患者に利益をもたらすことができる。例えば、徐脈をもたらす洞機能不全は、一般的な徐脈ペーシングによって治すことのできる心不全の一因となる。また、CHF患者の一部は、ある程度の房室ブロックを患っており、そのために彼らの心拍出量はプログラムされたAV遅延間隔(すなわち心房誘発心室ペーシングまたは房室順次ペーシング)を用いて、心房および心室の収縮を二腔ペーシングに同期させることによって改善される。
【0019】
CHF患者はまた心臓の特殊伝導系の伝導欠損(脚ブロックとも呼ばれる)を患っているかもしれず、そのために、房室結節からの脱分極インパルスは、他方の心室よりも前に一方の心室に到達する。CHFによってもたらされる心室壁の伸張はまた心室を介して脱分極インパルスをゆっくりと伝導することをもたらすことがある。伝導速度が右心室よりも左心室において遅ければ、例えば、心室収縮期中の2つの心室の収縮は協調性のないものとなり、それはポンプ効率を低下させる。これらの両方の状況において、左心室収縮と右心室収縮との同期を改善することによって、心拍出量を増加させることができる。
【0020】
したがって、両方の心室にペーシングを提供する心臓ペースメーカーが開発されてきた。例えば、本発明のいずれかの装置は、次の参考文献、Mowerに発行された米国特許第4,928,688号、共同所有の2002年10月11日に出願された発明の名称が“Timing Cycles for Synchronized Multisite Cardiac Pacing”である米国特許出願第10/270,035号、米国特許第6,411,848号、米国特許第6,285,907号、米国特許第4,928,688号、米国特許第6,459,929号、米国特許第5,334,222号、米国特許第6,026,320号、米国特許第6,371,922号、米国特許第6,597,951号、米国特許第6,424,865号、および、米国特許第6,542,775号の1つ以上の特徴を含んでもよく、これらの明細書の各々は、本明細書に組み込まれる。
【0021】
心臓の特殊ヒス・プルキンエ伝導網は、興奮性インパルスを洞房結節から房室結節へ、そして心室筋へ素早く伝導し、両心室の調整された収縮をもたらす。心筋層の領域内に取り付けられた電極による人工的なペーシングは、興奮を心室全体に伝導するための心臓の通常の特殊伝導系を利用しない。これは房室結節から生じるインパルスによってしか特殊伝導系に入ることができないためである。したがって、心室ペーシング部位からの興奮の波及は、きわめてゆっくりと伝導する心室筋線維だけを経由して進まなければならず、電極からより遠位に位置する心室の部分よりもかなり前に収縮するペーシング電極によって刺激された心室筋の部分をもたらす。心臓のポンプ効率は最適なものよりもいくらか低下するが、大半の患者は人工的なペーシングによって、それでも十分以上の心拍出量を維持することができる。
【0022】
多部位ペーシングにおいては、心房および/または心室は、よりよく調整された収縮をもたらす興奮の波及を達成するために、複数の部位においてペーシングされる。上述したように、両心室ペーシングは多部位ペーシングの一例であり、両方の心室はそれらの各々の収縮を同期させるためにペーシングされる。また、多部位ペーシングは1つの心腔だけに適用されてもよい。例えば、心室は、ペーシング部位から生じる脱分極の複数の波を発生させるために、興奮性刺激パルスによって複数の部位においてペーシングされてもよい。これは、心室のより調整された収縮をもたらし、それによって、存在する場合がある心室間の伝導欠損を代償してもよい。収縮の協調性を改善して心室間の伝導欠損を克服するために多部位ペーシングによって心室の一方あるいは両方を刺激することは、再同期治療と呼ばれる。
【0023】
また、多部位ペーシングによって心室収縮の協調性を変更することは、心臓ポンプサイクル中に心室が経験する壁ストレスの分布を意図的に変化させるのに使用されてもよい。心筋線維が収縮する前にそれがどの程度引き伸ばされるかは、前負荷と呼ばれる。心筋線維が縮む最大張力および最大速度は、前負荷を増加させることによって増加する。前負荷を増加させることによる心臓の収縮反応の増加は、フランク−スターリングの法則として知られている。心筋部位が他の部位よりも遅れて収縮すると、これらの対立部位の収縮はより遅い収縮部位を引き伸ばし、前負荷を増加させる。心筋線維が収縮するときの張力またはストレスの程度は、後負荷と呼ばれる。心室内の圧力は、血液が大動脈および肺動脈の中へ送り出されるとき、拡張期値から収縮期値まで急速に上昇するので、興奮性刺激パルスにより最初に収縮する心室の部分は、遅れて収縮する心室の部分よりもきわめて小さな後負荷に抵抗する。したがって、他の部位よりも遅れて収縮する心筋部位は、大きな前負荷および後負荷の両方が加わる。この状況は、心不全および心室機能不全に関連する心室伝導遅延によって頻繁に発生する。
【0024】
大きな前負荷および後負荷からもたらされる不均一なストレスに対する心臓の初期の生理反応は、心筋層の遅れて収縮する部位における代償性肥大である。リモデリングの後期において、それらの部位は、大きなストレスによる壁薄化によって萎縮変化を経験することがある。他方において、心臓周期において早期に収縮する心筋層の部分はそれほどストレスを受けることはなく、肥大リモデリングを経験する可能性はあまりない。本発明は、特殊パルス出力シーケンスによって心臓周期中に1つ以上の興奮性刺激パルスで心室(または、心房)における1つ以上の部位をペーシングすることによってリモデリングを改善するために、この現象を利用するものである。1つ以上のペーシングが、心筋層のこれまでにストレスを加えられかつリモデリングした部位を収縮期の早期に興奮させるような形で提供され、そのために、それは後負荷および前負荷をそれほどは経験しない。この他の部位と比較してリモデリングした部位を、このように早期に興奮させることは、その部位から機械的なストレスを除去し、リモデリングの改善を発生させる。
【0025】
本発明の他の適用分野においては、早期興奮刺激は、虚血または他の原因によって弱められたストレス心筋部位からストレスを除去するのに使用されてもよい。心筋層のそのような部位は、とりわけ拡張および動脈瘤の形成に対して脆弱である場合がある。大きな前負荷および後負荷はまた筋肉による大きなエネルギー消費を要求し、そして、そのことが、潅流量を増加させ、さらなる虚血をもたらすことがある。したがって、虚血部位の早期興奮は、その部位の必要血液量を減少させ、それと同時に収縮期中にその部位に加えられる機械的なストレスを低下させることができ、さらなる拡張の可能性を減少させる。
【0026】
本発明を実施するのに適した心調律管理装置のブロック図が図1に示される。装置のコントローラは双方向データバスを介してメモリ12と通信するマイクロプロセッサ10からなり、メモリ12は典型的にはプログラムを記憶するためのROM(リードオンリーメモリ)およびデータを記憶するためのRAM(ランダムアクセスメモリ)を含む。また、コントローラは装置の動作を制御するようにプログラムされたマイクロプロセッサの代わりにあるいはそのマイクロプロセッサに加えて、専用回路を含んでもよい。装置は、電極34、リード33、感知増幅器31、パルス発生器32、および心房チャンネルインタフェース30を含む心房感知/刺激チャンネルを有し、その心房チャンネルインタフェース30はマイクロプロセッサ10のポートと双方向通信する。また装置は多部位単心室ペーシングまたは多部位両心室ペーシングを提供するための複数の心室感知/刺激チャンネルを有する。2つのそのような心室チャンネルが図面に示され、それらは電極24a〜24b、リード23a〜23b、感知増幅器21a〜21b、パルス発生器22a〜22b、および心室チャンネルインタフェース20a〜20bを含み、ここで“a”は一方の心室チャンネルを示し、“b”は他方の心室チャンネルを示す。チャンネルごとに同じリードおよび電極が感知および刺激の両方に使用されてもよい。チャンネルインタフェース20a〜20bおよび30は、感知増幅器からの信号入力をディジタル化するためのアナログ−ディジタル変換器と、刺激パルスを出力し、刺激パルス振幅を変更し、そして感知増幅器の利得およびしきい値を調節するためにマイクロプロセッサによって書き込むことが可能なレジスタとを含んでもよい。遠隔測定インタフェース40が外部プログラマーと通信するために提供される。
【0027】
コントローラは、感知されたイベントおよび時間の満了に応じてパルスがどのように出力されるかを定義するいくつかのプログラムされたペーシングモードで装置を動作させることができる。徐脈を治療するための大半のペースメーカーは、定められた間隔内に発生し感知された心臓イベントがペーシングパルスを誘発するあるいは抑制するいわゆるデマンドモードで同期して動作するようにプログラムされる。抑制デマンドペーシングモードは、感知された内因性活動に基づいてペーシングを制御するために補充収縮間隔を使用し、それによって、ペーシングパルスは心腔による内因性拍動が検出されない定められた補充収縮間隔が満了して初めて心臓周期中に心腔に送達される。心室ペーシングのための補充収縮間隔は、心室イベントまたは心房イベントによって再開されてもよく、心房イベントはペーシングが内因性心房拍動に追従するのを可能にする。また、心拍感応型ペーシングモードが使用されてもよく、このモードにおいては、心室補充収縮間隔および/または心房補充収縮間隔は、患者の運動レベルに対応する測定値に基づいて変調される。
【0028】
図1に示されるように、活動レベルセンサー52(例えば、毎分換気量センサーまたは加速度計)は、心拍感応型モードで心臓をペーシングするために、運動レベルの量をコントローラに提供する。また、徐脈モードに基づいて心臓をペーシングするために、かつ収縮を再同期させて伝導欠損を代償するために、複数の興奮性刺激パルスが心臓周期中に複数の部位に送達されてもよい。本発明によれば、コントローラはまた選択された心筋部位へのストレスを減少させるために、所定のパルス出力シーケンスで刺激パルスを送達するようにプログラムされてもよい。
【0029】
好適には、本発明による方法および装置は肥大するあるいは薄化したストレス心筋部位からストレスを除去するのに使用されてもよい。図2は、心外膜刺激/感知電極が取り付けられてもよいペーシング部位210および220を備えた左心室200を示す。ペーシング部位210における心筋層は、ペーシング部位220における心筋層と比較すれば、肥大しているものとして示される。図1に示されるような心調律管理装置は、ペーシングモードに基づいて、部位の心室刺激/感知チャンネルを介して、それらの両方の部位に刺激パルスを送達してもよい。収縮期において、肥大した部位210からストレスを除去するために、かつ、それによって肥大の改善を促進するために、心室は他方の部位220よりも前に、肥大した部位210を刺激するパルス出力シーケンスによってペーシングされる。そして、収縮期における機械的ストレスの低下は、部位210が肥大を改善を可能にする。図3は左心室200を示し、その図3においてペーシング部位240は比較的に正常なものであるが、部位230は末期状態リモデリングまたは虚血等の他のストレスのために薄化した心筋部位である。この場合にもやはり、部位240と比較して部位230を早期に興奮刺激することによる心室のペーシングは薄化した部位からストレスを除去し、収縮期にその部位230に機械的ストレスがあまり加わらないようにする。その結果として、リモデリングが改善されるかあるいはさらなる壁の薄化が減少する。
【0030】
一実施形態においては、早期興奮刺激パルスは、ストレス部位だけに、または心筋層のどこか他の場所に刺激パルスを送達した時刻との所定の時間的関係でストレス部位に印加される。例えば、右心室および左心室の両方は、各々の心室に送達されるパルス間で所定の心室間の遅延だけずれて送達される刺激パルスによって個々の部位をペーシングされてもよい。心室間遅延を調節することによって、その結果として、心室ペーシング部位の一方が他方と比較して早期に興奮させられることによって、2つのペーシング部位間の活性化の波及を修正し、収縮期収縮中にこれらの部位の近くに現れる壁ストレスを変化させることができる。別の実施形態は、心房あるいは心室のいずれかに配置された複数のペーシング部位にパルスを所定のパルス出力シーケンスに基づいて送達するための複数の電極および刺激チャンネルを使用してもよい。多部位ペースメーカーはまた、様々な心臓周期中にペーシングパルスの出力を選択された電極間で切り替えてもよく、または電極のグループ間で切り替えてもよい。そして、ペーシングは、ペーシング電極の切り替え可能な構成を介して心腔に提供され、パルス出力構成は、ペーシングされる心腔に取り付けられかつペーシングパルスが同様にパルス間の所定のタイミング関係で印加される2つ以上の電極からなる特定の部分集合として定義される。2つ以上の異なるパルス出力構成は、ペーシングのために選択されてもよい電極の部分集合として定義されてもよい。パルス出力構成を異なる構成に切り替えることによって、心腔へのペーシングは、それによって、取り付けられたすべての電極間に時間的に分散される。しかしながら、心筋層の他の部位と比較してストレス心筋部位を早期に興奮させることによってそのストレス心筋部位からストレスを除去するこれらの実施形態においては、原理は同じままである。
【0031】
別の実施形態においては、心室筋のストレス部位は、内因性拍動が発生したことまたは内因性拍動が今にも起ころうとしていることを示す誘発イベントとの時間的関係で早期興奮させられる。例えば、早期興奮刺激パルスは、心室のどこか他の場所で内因性活性化を最初に検出した直後にストレス部位に印加されてもよい。そのような活性化は、一般的な心室感知電極を備えた電気記録図から検出されてもよい。初期に発生した誘発イベントは、信号処理技術を用いた特別の心室感知電極からヒス・プルキンエ束伝導電位を抽出することによって検出されてもよい。
【0032】
他の部位において何らかの内因性活性化が発生するかなり前に早期興奮刺激をストレス部位に送達するために、刺激は、心房感知または心房ペーシングに続く所定のAV遅延間隔の後に印加されてもよい。この状況における目的は、房室結節からの興奮が特殊伝導経路を経由して心室に到達する前に早期興奮刺激を送達することである。したがって、正常な内因性房室遅延(例えば、植え込まれたリードを用いて記録された心電図上のPR間隔と同等のエレクトグラム時間)が、測定されてもよく、そして、AVペーシング遅延間隔は、測定される内因性AV遅延間隔よりも所定の早期興奮間隔だけ短くなるようにプログラムされる。AVペーシング遅延間隔は、何らかの値(例えば、0〜150msの可変範囲の場合、60ms)に定められるか、または、心拍数または運動レベル等の測定された変数によって動的に変化するようになされてもよい。
【0033】
心房感知または心房ペーシングに続いて早期興奮刺激を送達するためのAVペーシング遅延間隔は、V−V間隔と呼ばれる早期興奮させられるべき部位と別の心室部位との間の測定された内因性伝導遅延間隔に基づいて設定されてもよい。この場合における目的は、異符号の類似する遅延によってペーシングすることによって、2つの部位間に存在する内因性伝導遅延を改善することである。例えば、ストレス心室部位と初期興奮部位との間の内因性伝導遅延が、測定される。そして、ストレス部位は、測定されたV−V間隔に基づいて設定された心房感知または心房ペーシングに続くAVペーシング遅延間隔の後に早期興奮させられる。一実施形態においては、早期興奮間隔は、V−V間隔の線形関数、

早期興奮間隔=(a)(V−V間隔)+b

として設定される。
【0034】
そして、AVペーシング遅延間隔が、測定された内因性AV遅延間隔から早期興奮間隔を引き算することによって計算される。
【0035】
リモデリングをもたらされたか、さもなければストレスを加えられた領域を決定するために、臨床医は、様々な技術を使用してもよい。例えば、心室壁の厚さ異常および心筋塊における局所的変形が、心エコー検査または磁気共鳴映像法によって観察されてもよい。また、適切な画像診断法によって収縮中に心室の運動不能部位または運動異常部位を観測することが、ストレス部位を示すのに使用されてもよい。血流異常を示す冠動脈造影図および虚血または梗塞の部位を示す電気生理学的研究が、虚血によってストレスを加えられた部位を同定するのに使用されてもよい。また、電気生理学的研究は、早期興奮刺激によって改善される場合がある局所的伝導遅延を測定するのに使用されてもよい。そして、多部位ペースメーカーのパルス出力シーケンスまたは両心室ペースメーカーの心室間遅延が、最初に、これらの結果に基づいて規定されてもよく、それによって、ストレス部位は、ペーシングされた心臓周期中に最初に興奮させられる。
【0036】
改良されたさらなる実施形態においては、植え込まれた心調律管理装置は、心筋塊の測定に基づいて、パルス出力シーケンスを自動的に調節してもよい。そのような測定は、複数感知/刺激電極によって感知される場合には、心筋層を介して広がる興奮の伝導遅延を測定することによってなされてもよい。ある部位を介しての大きな伝導遅延は、例えば、早期興奮刺激によって減少させることのできるその部位におけるストレスを表現するものである場合がある。別の実施形態においては、インピーダンス測定が、心筋塊における変形と収縮シーケンスとを相関させる心臓の近くに存在する電極間においてなされてもよい。そのような測定は、心筋層の運動不能部位または運動異常部位を同定するとともに、壁の厚さ異常を示すのに使用されてもよい。また、装置によって使用される特定の早期興奮間隔は、リモデリングプロセスにおいて検出される変化に基づいて、自動的に調節されてもよい。すなわち、早期興奮間隔は、リモデリングが改善される場合には減少させられてもよく、あるいは、リモデリングが悪化する場合には増加させられてもよい。リモデリングの変化は、例えば、伝導遅延、収縮シーケンス、拡張末期容量、1回拍出量、駆出率、壁の厚さ、または、圧力の測定値における変化または傾向を測定することによって検出されてもよい。
【0037】
別の実施形態においては、心調律管理装置によって使用されるパルス出力シーケンスは、体の代謝要求が大きい場合により効果的な収縮を血行動態的に発生させるように設計されたものと、代謝要求がそれほど大きくない場合にリモデリングの改善を促進するように設計されたものとの間で交互に切り替えられてもよい。肥大部位からストレスを除去するパルス出力シーケンスは、血行動態的な効率を最大化するための最適なパルス出力シーケンスでなくてもよい。例えば、より血行動態的に効果的な収縮は、心筋層のすべての領域を同時に興奮させることによって、これは肥大またはリモデリングの改善を効果的には促進しない場合があるが、達成されてもよい。したがって、パルス出力シーケンスは、代謝要求を表現する運動レベル測定に基づいて、自動的に調節されてもよく、そのために、肥大部位またはストレス部位からストレスを除去するパルス出力シーケンスは、大きな運動期間中には使用されない。
【0038】
図4Aを参照すると、本発明の実施形態に基づいて心室壁のリモデリングを改善するのに使用されてもよい植え込み型リードを備えたいくつかの種類の装置の中の1つを表現する体内植え込み型装置が示される。例えば、ペースメーカー/除細動器として図4Aに示される患者内部医療装置(PIMD)400は、ペースメーカー、除細動器、電気的除細動器、心臓モニター、または、再同期装置(例えば、複数心腔装置または多部位装置)のすべてまたは一部を代表するものであってもよい。
【0039】
図4Aに示される植え込み型の装置は、心臓内リードシステム402に電気的にかつ物理的に接続された植え込み型ペースメーカー/除細動器を含むPIMD400の一実施形態である。心臓内リードシステム402は、人体の中の植え込まれ、心臓内リードシステム402の一部分は、心臓401の中へ挿入される。心臓内リードシステム402の電極は、心臓401によって生成された心臓信号を検出および分析し、そして、予め定められた条件下にある心臓401に刺激エネルギーおよび/または治療エネルギーを提供し、心臓401の心不整脈を治療するのに使用されてもよい。
【0040】
図4Aに示されるPIMD400は、複数心腔装置であり、心臓401の右心房420および左心房422および右心室418および左心室424の1つ以上からの信号を感知し、右心房420および左心房422および右心室418および左心室424の1つ以上へペーシングパルスを提供することができる。低エネルギーペーシングパルスが、心臓401へ送達され、例えば、リモデリングを改善するために心拍を調節してもよい。電気的徐細動/細動除去能力を含む構成においては、電気的徐細動または細動除去を必要とする不整脈が、検出された場合、高エネルギーパルスもまた心臓401に送達されてもよい。
【0041】
心臓内リードシステム402は、右心室リードシステム404、右心房リードシステム405、および、左心房/左心室リードシステム406を含む。右心室リードシステム404は、RV先端ペーシング/感知電極412、RVコイル電極414、および、経胸腔インピーダンスを測定するのに適した1つ以上の電極461、462、463を含む。一実施形態においては、インピーダンス感知駆動電極461、462、463は、リング電極として構成される。インピーダンス駆動電極461は、例えば、右心室418内に配置されてもよい。インピーダンス感知電極462は、右心房420内に配置されてもよい。代替的に、あるいは、追加的に、インピーダンス感知電極463が、上右心房420内に、または、上大静脈内の右心房420の近くに配置されてもよい。
【0042】
RV先端電極412は、右心室418をペーシングするために、また、右心室418内における心臓活動を感知するために、右心室418内の適切な位置に配置される。また、右心室リードシステムは、例えば、右心室418内におよび上大静脈内に各々配置された1つ以上の細動除去電極414、416を含んでもよい。
【0043】
心房リードシステム405は、A先端およびAリング心臓ペーシング/感知電極456、454を含む。図4Aの構成においては、心臓内リードシステム402は、心臓401内に配置され、心房リードシステム405の一部分は、右心房420の中へ延びる。A先端およびAリング電極456、454は、右心房420をペーシングするために、また、右心房420内における心臓活動を感知するために、右心房420内の適切な位置に配置される。
【0044】
また、図4Aに示されるリードシステム402は、左心房/左心室リードシステム406を含む。左心房/左心室リードシステム406は、心臓401の冠状静脈465内に配置された1つ以上の電極434、436、417、413を含んでもよい。追加的に、あるいは、代替的に、1つ以上の電極が、中心静脈、左後静脈、左辺縁静脈、大心静脈、または、前心静脈内に配置されてもよい。
【0045】
左心房/左心室リードシステム406は、LA先端電極436、LAリング電極434、LV先端電極413、および、LVリング電極417を左心房422および左心室424の近くの適切な位置に各々配置するために、上大静脈(SVC)、右心房420、冠状静脈洞の弁、そして、冠状静脈洞450に沿って前進する1つ以上の心内膜ペーシング/感知リードを含んでもよい。一例においては、リードを配置することは、左鎖骨下静脈または橈側皮静脈等の経皮的アクセス血管に開口を生成することを必要とする。例えば、リードシステム402は、上大静脈を経由して心臓の右心房420の中へ案内されてもよい。
【0046】
右心房420から、左心房/左心室リードシステム406は、冠静脈洞入口部すなわち冠状静脈洞450の開口の中へ挿入される。左心房/左心室リードシステム406は、冠状静脈洞450を介して、左心室424の冠状静脈へ案内される。この冠状静脈は、リードのためのアクセス経路として使用され、心臓の右側から直接にアクセスすることのできない左心房422および左心室424の表面に達する。左心房/左心室リードシステム406のためのリードを配置することは、鎖骨下静脈アクセスを介して達成されてもよい。例えば、事前成形した案内カテーテルが、LV電極413、417およびLA電極436、434を各々左心室424および左心房422の近くに挿入するために使用されてもよい。
【0047】
左心房/左心室リードシステム406のためのリードを配置することは、鎖骨下静脈アクセス、および、LV電極413、417およびLA電極436、434を各々左心室424および左心房422の近くに挿入するための事前成形案内カテーテルを介して達成されてもよい。一構成においては、左心房/左心室リードシステム406は、単一パスリードとして実施される。LV先端電極413およびLVリング電極417に関するこれまでの段落における説明は遠位LVリング電極および近位LVリング電極を使用するリード構成(LV先端電極を備えない)に同じように適用できることがわかる。
【0048】
複数の心腔の様々な感知能力、ペーシング能力、リモデリング改善能力、および、細動除去能力を可能にするために、感知電極、ペーシング電極、および、細動除去電極の追加的な構成が、心臓内リードシステム402内に含まれてもよい。別の構成においては、心臓内リードシステム402は、ただ1つのリードだけを有してもよく、電極は、右心室内に配置され、単一心腔の心臓ペーシングを実施する。さらに別の実施形態においては、心臓内リードシステム402は、左心房/左心室リード406を含まなくてもよく、また、右心房および右心室だけのペーシングおよび感知をサポートしてもよい。本発明の実施形態によるこのシステムの範囲内において、心臓内リードおよび電極のどのような配置および構成でも植え込まれてもよい。
【0049】
PIMD400は、局所的な壁の動き、速度、および/または、ストレスを検出するように構成された1つ以上のセンサーを含んでもよい。例えば、1つ以上の加速度計491、493が、局所的な壁の動きを監視するのに使用されてもよい。この情報は、ペーシングの部位(複数の電極が利用可能な場合)またはタイミングを変化させることによって治療を制御するのに閉ループの形で使用されてもよい。代替的に、あるいは、追加的に、歪計492が、心室壁の局所的な収縮によって発生する屈曲を検出するのに使用されてもよい。歪計492および/または加速度計491、493は、心臓内リードシステム402内のまたは心臓内リードシステム402上の様々な位置に提供されてもよい。例えば、歪計492および/または加速度計491は、LV電極413の近くに、LV電極436の近くに、RV電極412の近くに、または、ペーシング電極に関連して局所的な壁のストレスを測定するのに適した他の位置に提供されてもよい。歪計492および/または加速度計491、493は、様々な種類のものであってもよく、限定はしないが、マイクロマシン技術(MEMS)によるセンサーを含んでもよい。
【0050】
PIMD400は、例えば、心室収縮の協調性を改善するために心室壁のリモデリングを改善しようとして電気的なペーシング刺激を心室の一方あるいは両方に提供することなどによって、本発明に基づいて問題を処理するように構成されてもよい。PIMD400は、共同所有の米国特許第6,597,951号、米国特許第6,574,506号、米国特許第6,512,952号、米国特許第6,501,988号、米国特許第6,411,848号、および、米国特許第6,363,278号に記載されるような形で構造的および機能的に構成されてもよく、これらの明細書の各々は、本明細書に組み込まれる。
【0051】
ここで、図4Bを参照すると、PIMD400は、心臓壁を局所的に測定するように構成されたメッシュ481を含むものとして示される。メッシュ481は、ケーブル482を用いてPIMD400に接続される。メッシュ481は、(x,y)座標グリッドとして構成されてもよく、各々の垂直メッシュエレメントおよび各々の水平メッシュエレメントは、(x,y)座標系の1つのノードにおいて交差する。メッシュエレメントが、図4Bに示されるように、メッシュ481の左上隅から開始する番号を有するならば、例えば、ノード483は、第3の水平メッシュエレメントと第3の垂直メッシュエレメントとの交点においてメッシュ481上で同定される。そして、ノード483は、(x,y)座標(3,3)に対応する。したがって、各々のノードは、局所的な心臓壁ストレス計算に有用な歪測定能力に関連づけられてもよい。
【0052】
図5は、心臓リモデリング改善のための心外膜リードを用いた本発明の実施形態を示す。図5は、患者の心臓590を胸郭550に沿った断面図で示す。螺旋状電極520を有するリード510が、本発明の実施形態に基づいて、心筋層580内に植え込まれる。リード510を送達する場合に、電極520が、リード510を回転させることによって、心筋層580内に植え込まれる。別の実施形態においては、電極520は、心筋層580内に挿入され、リードから外へ、そして、心筋組織の中へ積極的に延びてもよい。
【0053】
固定された電極配置において、リード510が、回転させられると、螺旋状電極520の鋭い端部500は、心外膜560を貫通し、心外膜腔565を貫通し、そして、心筋層580の中へ入り込む。リード510が、さらに回転させられると、鋭い端部500は、組織の中を押し進み、心筋組織の中へさらに入り込み、そして、電極を心筋層580の中にしっかりと固定する。このプロセスは、螺旋状電極520を心筋組織の中へ効果的にねじ込む。
【0054】
リード510は、異常な壁ストレスを有することが予め確認されている位置に取り付けられてもよく、および/または、リード510は、加速度センサー、歪センサー、超音波速度センサー、または、他の局所的なストレスセンサー等の異常壁ストレス位置を確認するための1つ以上のセンサーを含んでもよい。例えば、螺旋状電極520は、歪計の役割をなすことによって、植え込まれた後に局所的壁ストレス異常を測定するのに有用なストレス測定能力を備えてもよい。任意選択的に、または、追加的に、リード510は、例えば、局部的超音波ドップラー速度計測法を使用することなどによって、局所的壁ストレスを測定することのできるセンサーを含んでもよい。超音波ドップラーシステムを備えたリードについては、共同所有の発明の名称が“Sensor Guided Epicardial Lead”である2004年8月31日に代理人整理番号第GUID.090PA号で出願された米国特許出願第10/930,088号にさらに説明されており、この明細書は、本明細書に組み込まれる。
【0055】
局所的な壁ストレス異常は、リードを配置する前に、予め確認されてもよい。例えば、電極は、Acorn Cardiovascular Inc.in St.Paul,Mnnesota,USAから市販されている商標登録された装置であるCORCAP等の心臓支持装置のメッシュに組み込まれてもよい。電極は、心臓の周囲の心外膜面上に配置されてもよく、そして、電気的な活性化の遅延を感知するのに使用されてもよい。代替的に、あるいは、追加的に、歪計が、CORCAP型装置のメッシュの様々な箇所に配置されるのであれば、心臓の機械的活性化における遅延が、監視されてもよい。これは、機械的な非同期性を監視する1つの方法であり、および/または、壁ストレス異常を確認する1つの方法である。
【0056】
ここで、図6を参照すると、本発明による心臓リモデリング改善の方法600は、心臓壁の近くにおいて、隣接する部位と比較してあるレベルの異常な壁の動きを有する標的部位を検出すること(620)を含む。電極が、標的部位の近くにまたは標的部位に植え込まれる(630)。標的部位が、標的部位におけるストレスを変化させて心臓組織リモデリングを治療するために、電極を用いて、心臓壁の隣接する部位と比較して早期に興奮させられる(640)。
【0057】
心臓壁の動き(620)は、例えば、加速度計測定、歪測定、および、局所的ドップラー組織速度測定等の超音波速度測定を用いて検出されてもよい。電極は、心房感知、心房ペーシング、心室感知または心室ペーシングイベント、または、他のタイミング的な方法に応じて、標的部位を早期興奮(640)させるのに使用されてもよい。リモデリング改善早期興奮(640)は、代謝要求を表現する活動レベル測定値に基づいて調節されてもよい。心臓の標的部位を検出すること(620)は、1つ以上の電気生理学的特性、複素インピーダンス特性、またはリモデリングを示す心臓壁組織の他の特性等の心臓壁組織の活動特性を感知することを含んでもよい。
【0058】
本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更および追加が、これまでに説明された好ましい実施形態になされてもよい。したがって、本発明の範囲はこれまでに説明された特定の実施形態によって限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲に記載される請求項およびそれに等価なものによってのみ定義されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明による実施例としての心調律管理装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による感知/ペーシング電極の実施例としての配置を示す図である。
【図3】本発明の実施形態による感知/ペーシング電極の実施例としての配置を示す図である。
【図4A】心臓の断面図において植え込まれて示されるリード組立品を含む植え込み型心臓装置を示す図であり、装置は、本発明の実施形態に基づいて心室壁リモデリングを改善するように構成されている。
【図4B】局所的なストレスを測定するように構成されたメッシュを含む植え込み型心臓装置を示す図であり、装置は、本発明の実施形態に基づいて心室壁リモデリングを改善するように構成されている。
【図5】本発明の実施形態に基づいて心室壁リモデリングを改善するための心筋層内における螺旋状固定配置を有する心外膜リードを示す図である。
【図6】本発明に基づいて心臓組織リモデリングを改善する方法を実現するためのフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓システムであって、
植え込み型のハウジングと、
前記ハウジング内に提供された回路と、
前記回路に接続されたリードと、
を備え、
前記リードが、
リード本体と、
前記リード本体に接続された少なくとも1つの心臓電極と、
前記リード本体によって支持される少なくとも1つのセンサーと、
を備え、
前記回路が、隣接する心臓壁部位における心臓組織と比較して大きなストレスを示す心臓壁部位における心臓組織の特性を検出するように構成された、
心臓システム。
【請求項2】
前記センサーが前記リード本体の末端部に配置された、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項3】
前記センサーが心臓壁の動きを検出するように構成された、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項4】
前記センサーが前記隣接する心臓壁部位に比較して大きなストレスに関連する前記心臓壁部位の近くに前記心臓電極を配置するのに役立つ情報を提供するように構成された、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項5】
前記センサーが前記リードの内腔の中に支持される、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項6】
前記センサーが加速度計を備える、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項7】
前記センサーが歪計を備える、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項8】
前記センサーが超音波速度計を備える、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項9】
前記回路によって検出される前記心臓組織の特性が前記心臓組織の活性化特性を含む、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項10】
前記回路によって検出される前記心臓組織の特性が前記心臓組織の1つ以上の電気生理学的特性を含む、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項11】
前記回路によって検出される心前記臓組織の特性が前記心臓組織の非同期性脱分極特性を含む、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項12】
前記回路によって検出される前記心臓組織の特性が前記心臓組織の複素インピーダンス特性を含む、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項13】
内因性伝導に先立って、早期興奮刺激を前記心臓壁部位に送達するのを調整するように構成された前記ハウジング内に提供されかつ前記リードに接続された前記エネルギー送達回路をさらに備えた、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項14】
ハウジング内に提供されかつリードに接続されたエネルギー送達回路をさらに備え、前記エネルギー送達回路が、ペーシングパルスの送達に先立って早期興奮刺激を前記心臓壁部位に送達するのを調整するように構成された、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項15】
前記ハウジング内に提供されかつ前記リードに接続されたエネルギー送達回路をさらに備え、前記エネルギー送達回路が、心房感知または心房ペーシングイベントに応じて、早期興奮刺激を前記心臓壁部位に送達するのを調整するように構成された、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項16】
前記ハウジング内に提供されかつ前記リードに接続されたエネルギー送達回路と、前記ハウジングの中あるいは上に配置されかつ前記エネルギー送達回路に接続された活動センサーとをさらに備え、エネルギー送達回路が、前記活動センサーから受け取られる代謝要求を支持する信号に応じて、ペーシング治療で調節を行うように構成された、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項17】
前記ハウジング内に提供されかつ前記リードに接続されたエネルギー送達回路と、前記ハウジングの中あるいは上に配置されかつ前記エネルギー送達回路に接続された活動センサーとをさらに備え、前記エネルギー送達回路が、代謝要求を表現する前記活動センサーによって測定された活動レベルに基づいて、心臓壁部位における早期興奮刺激を調節するように構成された、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項18】
前記ハウジング内に提供されかつ前記リードに接続されたエネルギー送達回路をさらに備え、前記エネルギー送達回路が、心臓リモデリングを治療するために前記心臓壁部位のストレスを変化させるために、前記リード電極を用いて、前記隣接する心臓壁部位と比較して早期の興奮刺激を前記心臓壁部位に送達するように構成された、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項19】
前記リードが心外膜に植え込むように構成された、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項20】
前記リードが心内膜に植え込むように構成された、請求項1に記載の心臓システム。
【請求項21】
システムであって、
患者の心臓の近傍において、心臓壁の隣接する部位と比較して大きなストレスを示す特性を有する心臓の壁の標的部位を検出するための手段と、
前記標的部位におけるストレスを変化させるために、前記隣接する部位と比較して前記標的部位を早期に興奮させるための手段と、
を備えたシステム。
【請求項22】
前記検出する手段が、前記患者の心臓の近傍において、前記心臓壁の隣接する部位と比較して低レベルの壁の運動を有する前記心臓壁の部位として前記標的部位を検出するための手段を備えた、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記検出する手段が、前記患者の心臓の近傍において、前記心臓壁の隣接する部位と比較して非同期性の脱分極特性を有する心臓壁の部位として前記標的部位を検出するための手段を備えた、請求項21に記載のシステム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−514373(P2008−514373A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534771(P2007−534771)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/035076
【国際公開番号】WO2006/037108
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(592245720)カーディアック ペースメーカーズ,インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】