説明

大きな曲げ角度でのカテーテルの力測定

【課題】力測定プローブを較正するための方法を提供する。
【解決手段】プローブ28が遠位先端を有する挿入管と弾力性部材を含む接続部とプロセッサに連結している接続部センサとを有する工程と、プロセッサはその中に記憶された接続部の軸方向変位閾値の記憶媒体を有し遠位先端に力を印加する工程と、遠位先端の変位及び偏向を測定する工程と、遠位先端の測定された変位及び偏向と印加した力との相関関係を明らかにし軸方向変位閾値に達するまで相関関係を記憶媒体に保存する工程と、遠位先端に軸方向変位閾値よりも大きい力を印加して新しい力の値を定義する工程と、遠位先端にかかる力の方向を横断する平面内での遠位先端の位置を測定する工程と、力の方向を横断する平面内での遠位先端の測定された位置と新しい力の値との相関関係を明らかにし新しい力の値のあらかじめ確立された上限値に達するまで相関関係を記憶媒体に保存する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般に侵襲的な医療装置に関連し、特に、患者の身体に対して適用されるプローブ(例えばカテーテルなど)内における接続部の変位を検出し、かつ、そのカテーテルの遠位端又は先端にかかる力、特にそのカテーテル遠位端で極度又は大きな曲げ角度をもたらす力を測定するための、方法及び装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
一部の診断及び治療技術では、カテーテルを心臓の内腔に挿入し、内心臓壁に接触させる。このような手技では、確実に良好に接触させるのに十分な圧力で、カテーテルの遠位先端が心内膜に係合することが一般に重要である。しかしながら、過剰な圧力は、心臓組織に望ましくない損傷、及び心臓壁の穿孔を生じさせる場合さえある。
【0003】
例えば、心内高周波(RF)焼灼法では、その遠位先端に電極を有するカテーテルが、患者の血管系を通して心臓の内腔に挿入される。電極を心内膜上の部位(又は複数の部位)に接触させ、その部位で心臓組織を焼灼するために、RFエネルギーをカテーテルを通して電極に印加する。焼灼中に電極と心内膜とが適切に接触することは、組織に過剰な損傷を与えることなく、所望の治療効果を達成するために必要である。
【0004】
多数の特許公報に、組織接触を検出する一体型圧力センサを備えるカテーテルが記載されている。一例として、その開示が本明細書に参照により組み込まれる米国特許出願公開第2007/0100332号には、組織焼灼のための電極−組織接触を評価するシステム及び方法が記載されている。カテーテルシャフト内の電気機械的センサは、カテーテルシャフトの遠位部内における、電極の移動の量に対応する電気信号を発生させる。出力装置は、電極と組織との間の接触レベルを評価するための電気信号を受信する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在のところ、カテーテルなどの装置内における接続部の変位を正確に検出し、かつ、その装置の遠位端又は先端にかかる力、特にその装置の遠位端で極度又は大きな曲げ角度をもたらす力を測定するための、装置又は方法は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、患者の身体に対して実施される医学的処置に使用される力測定プローブを較正するための方法を目的とする。この方法は、プローブを提供する工程であって、このプローブは、長手方向軸及び遠位端を有する挿入管と、挿入管の遠位端に配置され、身体の組織に接触するよう構成された遠位先端と、弾力性部材を含む接続部であって、遠位先端が組織に係合したときに、遠位先端にかかる力に対応して変形するよう構成され、遠位先端を挿入管の遠位端に接合する、接続部と、挿入管の遠位端に対する遠位先端の位置を検出するための、プローブ内に包含された接続部センサであって、接続部の相対するそれぞれの側面に沿ってプローブ内に配置される第1サブアセンブリ及び第2サブアセンブリを含む、接続センサと、を含み、第1サブアセンブリ及び第2サブアセンブリは1つ又は2つ以上の磁気変換器を含む。
【0007】
プロセッサは、第1サブアセンブリ及び第2サブアセンブリの一方に電流を印加するようプローブに接続されており、これにより第1サブアセンブリ及び第2サブアセンブリの一方が少なくとも1つの磁場を生成するようになっており、かつ、少なくとも1つの磁場に反応して第1サブアセンブリ及び第2サブアセンブリのもう一方から出力される1つ又は2つ以上の信号を受信し処理するよう接続されており、これによって、挿入管の遠位端に対する遠位先端の位置の変化を検出することができ、ここにおいて、プロセッサによって検出された遠位先端の位置の変化は、挿入管の遠位端に対する遠位先端の軸方向変位と遠位先端の角偏向とを含み、プロセッサは、位置の検出された変化に対応して、遠位先端にかかる力を示す出力と、プロセッサ内に記憶された接続部の軸方向変位閾値を有する記憶媒体とを生成するよう構成されている。
【0008】
力が遠位先端に印加され、その遠位先端の軸方向変位及び角偏向が測定される。次の工程は、遠位先端に印加された力に対する遠位先端の測定された軸方向変位と角偏向との相関関係を明らかにし、軸方向変位閾値に達するまで、その相関関係を記憶媒体に保存することである。
【0009】
これが達成された後、遠位先端に軸方向変位閾値よりも大きい力を印加して、新しい力の値を定義し、その遠位先端にかかる力の方向を横断する平面内での遠位先端の位置が測定される。
【0010】
次に、力の方向を横断する平面内での遠位先端の測定された位置は、その新しい力の値との相関関係を明らかにし、新しい力の値のあらかじめ確立された上限値に達するまで、その相関関係が記憶媒体に保存される。
【0011】
本発明は、添付の図面と共になされる、以下の本発明の実施形態の詳細な説明によって更に十分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による、カテーテルに基づいた医学システムの概略描写図。
【図2】本発明の実施形態による、心内膜組織と接触したカテーテルの遠位先端を示す概略詳細図。
【図3】本発明の実施形態によるカテーテルの遠位端の詳細を示す概略断面図。
【図4】本発明の実施形態による、圧縮の力閾値での図3のカテーテルの遠位端の詳細を示す概略断面図。
【図5】本発明の実施形態による力較正方法の概略フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願は、本特許出願の出願人に譲渡され、また両方の参照文献の開示が参照することにより本明細書に組み込まれる、同一出願人による係属中の米国特許出願第11/868,733号(2007年10月8日出願)、及び米国特許出願第12/327,226号(2008年12月3日出願)の技術開示を用いる。したがって、類似又は同様の機構は、米国特許出願第12/327,226号と同じ符番を用いて識別される。
【0014】
上述の米国特許出願第11/868,733号は、バネ仕掛けの接続部によって遠位先端がカテーテル挿入管の遠位端に連結されたカテーテルを開示しており、バネ仕掛けの接続部は、遠位先端が組織に係合したときにかかる圧力に応答して変形する。接続部の両側にコイルを含む、プローブ内の磁気位置検出アセンブリは、挿入管の遠位端に対する遠位先端の位置を検出する。この相対位置の変化は、バネの変形の指標となり、ひいては圧力の指標となる。
【0015】
本明細書で後述される本発明の実施形態は、先端の動きの正確な測定と、力のより正確な測定を促進するような、検出アセンブリの設計、並びに較正方法及び操作方法を提供する。この設計のコイル形状は、この較正方法及び操作方法と共に、挿入管にカテーテル先端を接続する接続部の、非常に大きな偏向及び最大圧縮での正確な検出並びに正確な力測定を可能にする。よって、カテーテルの大きな曲げ角度であっても、先端圧力は、強化された精度で正確に測定することができ、これにより、そのカテーテル及びその使用方法が、大きな又は極度の曲げ角度(すなわち、接続部の完全又は最大圧縮をもたらすような曲げ角度)であっても、そのカテーテル先端にかかる実際の力が、より正確かつ予測可能になる。これについては下記に詳しく記述される。
【0016】
図1は、本発明の実施形態による、心臓カテーテル法のためのシステム20の概略描写図である。システム20は、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,California)による製造の、CARTO(商標)システムに基づき得る。このシステムは、カテーテル28の形態の侵襲性プローブ及び制御コンソール34を含む。以降で説明する実施形態では、カテーテル28は、当該技術分野において既知であるように、心内膜組織を焼灼する際に使用される。あるいは、このカテーテルは、必要な変更を加えて、心臓又は体内の他の臓器の他の治療的及び/又は診断的目的で使用してよい。
【0017】
心臓専門医などの操作者26は、カテーテルの遠位端30が患者の心臓22の内腔に入るように、患者24の血管系を通してカテーテル28を挿入する。操作者は、カテーテルの遠位先端が、所望の位置で心内膜組織と係合するように、カテーテルを前進させる。カテーテル28は、典型的には、その近位端で、好適なコネクタによってコンソール34に接続される。コンソールは、高周波(RF)発生器を備えてよく、この高周波発生器は、遠位先端に係合する位置において、カテーテルを介して心臓内の組織を焼灼するための高周波電気エネルギーを供給する。あるいは又は加えて、カテーテル及びシステムは、当技術分野で周知である他の治療的及び診断的手技を実行するように構成されてよい。
【0018】
コンソール34は、磁気位置検出を使用して、心臓22の内部のカテーテル28の遠位端30の位置座標を決定する。この目的のために、コンソール34内の駆動回路38は、場発生器32を駆動して、患者24の身体付近に磁場を発生させる。典型的には、この場発生器は、患者の胴体の下方の、患者の外部の既知の位置に設置されるコイルを含む。これらコイルは、心臓22を含む所定の可動範囲で体内に磁場を発生させる。カテーテル28の遠位端30内の磁場センサ(図3に示す)が、これらの磁場に応答して電気信号を発生させる。信号プロセッサ36は、典型的には、位置及び向きの座標の双方を含む、遠位端の位置座標を判定するために、これらの信号を処理する。この位置検出の方法は、上述のCARTOシステムに実装され、その開示が全て参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際特許公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されている。
【0019】
プロセッサ36は、典型的には、カテーテル28から信号を受信し、コンソール34の他の構成要素を制御するための、好適なフロントエンド回路及びインターフェイス回路を備える、汎用コンピュータを含む。このプロセッサは、本明細書で説明される機能を実行するように、ソフトウェアでプログラムすることができる。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール34にダウンロードしてもよく、又は光学的、磁気的、若しくは電子的記憶媒体などの、有形媒体上に提供されてもよい。あるいは、プロセッサ36の一部又は全ての機能を、専用の又はプログラム可能な、デジタルハードウェア構成要素によって実行してもよい。カテーテル及びシステム20の他の構成要素から受信した信号に基づき、プロセッサ36は、患者の体内での遠位端30の位置及びカテーテルの遠位先端の変位に関する視覚的フィードバック、並びに進行中の手技に関する状況情報及びガイダンスを操作者26に与えるために、ディスプレイ42を駆動する。
【0020】
あるいは、又は更に、システム20は、患者24の体内でカテーテル28を誘導及び操作するための、自動化機構を含み得る。そのような機構は、典型的には、カテーテルの長手方向の動き(前進/後退)、及びカテーテルの遠位端の横方向の動き(偏向/操舵)の双方を制御することが可能である。この種の機構の一部は、例えば、この目的のためのDC磁場を使用する。そのような実施形態では、プロセッサ36は、カテーテル内の磁場センサによって提供される信号に基づいて、カテーテルの動きを制御するための制御入力を生成する。これらの信号は、以降で更に説明するように、カテーテルの遠位端の位置、及び遠位端にかかる力の双方を示す。
【0021】
図2は、本発明の実施形態による心臓内のカテーテル28の遠位端30を示す心臓22の内腔の概略断面図である。このカテーテルは、典型的に、大静脈又は大動脈等などの血管を通して経皮的に心臓に挿入される挿入管50を備える。このカテーテルの遠位先端52の電極56が、心内膜組織58に係合する。心内膜に接触している遠位先端によりかかる圧力が心内膜組織を局所的に変形させ、その結果電極56は、比較的大きな面積にわたって組織と接触する。図示した例では、電極は、真正面ではなく、角度をなして心内膜と係合している。したがって、遠位先端52は、カテーテルの挿入管50の遠位端に対する弾性接続部54で屈曲する。この屈曲は、電極と心内膜組織との間の最適な接触を促進する。
【0022】
接続部54の弾力的な性質のため、接続部の屈曲角度及び軸方向変位は、組織58によって遠位先端52にかかる圧力(又は遠位先端によって組織にかかる圧力と同等である)に比例する。このように、屈曲角度及び軸方向変位の測定値は圧力の指標となる。この圧力の指標は、所望の治療的又は診断的結果を得るのに十分な程度堅固であるが、望ましくない組織損傷を引き起こすほどは強くなく、遠位先端が心内膜を押圧していることを確実にするために、カテーテル20の操作者が使用することができる。
【0023】
図3は、本発明の実施形態によるカテーテルの構造の詳細を示す、カテーテル28の遠位端30の概略断面図である。上述したように、挿入管50は接続部54により遠位先端52に接続される。挿入管は、例えば、Celcon(登録商標)、Teflon(登録商標)、又は耐熱性ポリウレタンなどの可撓性絶縁材料62で被覆される。接合部54の領域もまた、可撓性絶縁材料で被覆される。この可撓性絶縁材料は、材料62と同一であってもよく、又は接続部のスムーズな曲げ及び圧縮を可能にするように特別に適合されていてもよい。(この材料は、カテーテルの内部構造を見せるために、図3に切り取られて示される。)遠位先端52は、典型的に、白金/イリジウム合金のような導電性物質により作製される電極56によって少なくとも部分的に被覆されてよい。あるいは、当業者に明らかであるような他の適切な物質を使用してよい。更にもう1つの方法として、一部の用途では、電極で被覆されていない遠位先端を作製する場合もある。遠位先端は、典型的に、可撓性挿入管と比べて比較的剛性である。
【0024】
接続部54は、弾力性連結部材60を含む。この実施形態では、連結用部材は、その長さの一部に沿って螺旋形の切込みを有する弾性材の管状部品の形態を有する。例えば、連結用部材は、ニッケル・チタニウム(ニチノール)などの超弾性合金を含んでよい。螺旋形の切込みは、遠位先端52にかかる力に応答して、管状部品をバネのように挙動させる。この種の連結用部材の製作及び特徴に関する更なる詳細は、本特許出願の出願人に譲渡され、その開示が参照することにより本明細書に組み込まれる、2008年6月6日に出願された米国特許出願第12/134,592号に示されている。あるいは、連結用部材は、所望の可撓性及び強度特性を有するコイルバネ又は任意の他の好適な種類の弾力性構成要素を含んでよい。
【0025】
連結用部材60の剛性は、遠位先端にかかる力に応答して先端52と挿入管50との間の相対的な動きの範囲を決定する。焼灼手技中に遠位先端が心内膜に対して押し付けられるとき、このような力が引き起こされる。焼灼中の、遠位先端と心内膜との間の良好な電気的接触に望ましい圧力は、約0.20〜0.29ニュートン(20〜30グラム)である。この連結用部材は、軸方向変位(すなわち、カテーテル28の軸に沿った側方運動)及び先端への圧力に比例する遠位先端の角偏向を可能にするように構成される。プロセッサ36による変位及び偏向の測定は、圧力の指標を与え、ひいては焼灼中に確実に正確な圧力を印加するのに役立つ。
【0026】
カテーテル28内のコイル64、66、68及び70を含む接続部検出アセンブリは、軸方向変位及び角偏向を含む、挿入管50の遠位端に対する遠位先端52の位置の正確な読み取りを提供する。これらコイルは、本発明の実施形態で用いることができる磁気変換器の一種である。本願及び特許請求の範囲の文脈中で「磁気変換器」は、印加された電流に応答して磁場を発生させる装置、及び/又は印加された磁場に応答して電気信号を出力する装置を意味する。本明細書に記載される実施形態ではコイルを磁気変換器として使用するが、代替の実施形態では、当業者にとっては自明であるように、他の種類の磁気変換器を用いてもよい。
【0027】
カテーテル28内のコイルは、接続部54の両側に存在する2つのサブアセンブリに分けられ、1つのサブアセンブリは、ケーブル74を介してコンソール34からの電流により駆動されて磁場を発生させるコイル64を含む。この磁場は、コイル64から軸方向に離間したカテーテルのセクションに位置するコイル66、68及び70を含む第2のサブアセンブリに受信される。(本願及び特許請求の範囲の文脈中で用いられる「軸方向」という用語は、カテーテル28の遠位端30の長手方向軸の方向を指し、図3におけるZ−方向と同一である。軸平面とは、この長手方向軸に対して垂直な平面であり、軸方向セクションとは、2つの軸平面間に含まれるカテーテルの一部分である)。コイル66、68及び70は、コイル64が発生させる磁場に応答して電気信号を発する。これらの信号は、ケーブル74によってプロセッサ36に伝達され、プロセッサ36は、接続部54の軸方向変位及び角偏向を測定するために信号を処理する。
【0028】
コイル66、68及び70は、異なる半径方向偏向又は角偏向位置で、カテーテル28内に固定されている。(用語「半径方向」又は「角」は、カテーテルの軸に対する座標を示す(すなわち、図3のX−Y平面内の座標))。具体的には、この実施形態では、コイル66、68及び70のすべてが、カテーテルの軸に関して異なる方位角で同一の軸平面中に位置する。例えば、これら3つのコイルは軸から同一の半径方向距離だけ離れて、方位角的に120度の間隔をあけて配置されることができる。
【0029】
コイル64、66、68及び70の軸は、カテーテルの軸に対して平行である(そして、接続部54が偏向していない限り互いに平行である)。したがって、コイル66、68及び70は、コイル64が発生させた場に応答して強力な信号を出力し、この信号は、コイル66、68及び70の、コイル64からの距離に強く依存して変化する。(あるいは、実質的な信号を与えるためにコイル軸が十分な平行成分を有している限り、コイル64及び/又はコイル66、68及び70の軸はカテーテル軸に対して角度をなしていてもよい)。先端52の角偏向は、偏向の方向及び強度に依存して、コイル66、68及び70から出力される信号に微分変化を生じさせる。その理由は、これらのコイルのうち1つ又は2つ以上が、コイル64に対して相対的に接近するためである。先端の圧縮変位は、コイル66、68及び70のすべてからの信号を増加させる。
【0030】
プロセッサ36は、接続部54の偏向及び変位を測定するために、コイル66、68及び70から出力される信号を解析する。信号の変化の合計から圧縮の測定値が得られ、一方、変化の差から偏向が得られる。差のベクトルの方向が、屈曲方向の指標を与える。接続部の偏向及び変位に対する信号の正確な依存度を測定するために、適切な較正手順を用いてよい。
【0031】
図示され、上述された構成に加えて、検出サブアセンブリにおいて、他の様々なコイル構成を用いてもよい。例えば、場発生器コイルが接続部54の近位側に位置し、センサコイルが遠位先端に位置するように、サブアセンブリの位置を逆にしてよい。別の代替法として、コイル64がセンサとして機能しながら、コイル66、68及び70を場発生器として駆動させてよい(場を区別するために時分割多重化及び/又は周波数分割多重化を用いて)。図3のコイルの大きさ及び数はほんの一例であり、接続部の偏向の示差測定を可能にするために、サブアセンブリの1つが異なる半径方向位置に少なくとも2つのコイルを備える限り、種々の異なる位置に、より多数の又はより少数のコイルを同様に用いてもよい。
【0032】
先端52に対する圧力と接続部54の動きとの関係の事前較正は、コイル信号の圧力換算においてプロセッサ36を用いることができる。変位及び偏向を組み合わせて検出するので、電極が心内膜と真正面から係合しているか、角度をなして係合しているかに関わらず、この圧力検出システムは圧力を正確に読み取る。例えば、圧電性センサとは異なり、圧力の読み取りは、温度変化に反応せず、またドリフトがない。図3に示されるコイル64、66、68及び70の配置により提供される接続部の動きに対する感度が高いので、プロセッサ36は、小さな変位及び偏向を高精度で測定することができる。したがって、連結部材60は、比較的剛性に作製してよく、プロセッサ36は、更に、先端52における圧力を正確に検出し、測定することができる。連結部材が剛性であることによって、操作者がカテーテルを操縦及び制御することがより容易になる。
【0033】
コイル64、66、68及び70のうちの1つ又は2つ以上はまた、場発生器32が発生させる磁場に応答して信号を出力するために使用することもでき、よって位置検出コイルとしても機能する。プロセッサ36は、場発生器により規定される外部基準系で遠位端30の座標(位置及び向き)を測定するために、これら信号を処理する。付加的に又はもう1つの方法として、この目的のために、1つ又は2つ以上の更なるコイル72(又は他の磁気センサ)をカテーテルの遠位端に配備することができる。カテーテル28の遠位端30の位置検出コイルは、先端の圧力に加えて、コンソール34が体内のカテーテルの位置及び向き並びに先端52の変位及び偏向を出力することを可能にする。
【0034】
磁気位置検出アセンブリの操作及びその圧力検出における使用は、カテーテルに基づく焼灼の状況で上述されたが、本発明の原理は、接続部の動きの正確な検出が要求される他の用途、特に体内の心臓及び他の臓器の両方で侵襲的プローブを用いる治療的及び診断的な用途にも同様に応用されることができる。一例として、システム20において実行される位置及び圧力検出のための装置及び技術は、必要な変更を施して、カテーテル挿入シース使用の誘導と制御に応用することができる。シースの位置が適切に制御されずに、その挿入において過剰な力が用いられる場合、シースが心臓壁又は血管組織を穿孔する可能性がある。この不測の事態は、シースの遠位先端の位置及びそこにかかる圧力を検出することにより防止できる。これに関して、本明細書において使用される「遠位先端」という用語は、プローブ本体に対して屈曲及び/又は変位することができる、プローブの遠位端における任意の種類の構造を含むことを理解すべきである。
【0035】
図4に最もよく図示されているように、カテーテル先端52にかかる力Fによって、接続部54(カテーテルバネ)には、軸方向の圧縮及び角偏向の両方が引き起こされる。上記に概説したように、これらの動きの寸法はいずれも、先端位置を力Fに変換するために考慮に入れられている。しかしながら特定の力限度(すなわち、圧縮閾値)を超えると、図4に示すようにバネ54の巻き線の間にある隙間が閉じ、それ以上の圧縮が不可能になる。よって、バネ54の軸方向圧縮限度に到達し、これは、図3及び4に示すバネ設計では約0.29ニュートン(30グラム)である。これにより、所定の力限度を超えてカテーテル先端52にかかる任意の追加の力Fは、偏向でのみ表わすことができる(これまでの時点で)。
【0036】
しかしながら、図5に最もよく図示されているように、本発明は図3及び4のカテーテル30についての較正方法を目的としている。カテーテル先端52にかかる非常に大きな(かなりの)又は極度の力Fについて、精度及び力測定を強化するため、前述した力較正手順に加えて、更なる較正手順(図5)が実施される。図5に概略的に示されている本発明のこの追加較正手順は、軸方向最大圧縮にすでに達した(図4)後の力測定値Fを得ることを目的とする。
【0037】
したがって、装置又はカテーテル30の全体的な較正の一部として、工程100において較正が開始され、ステップ105においてカテーテル先端52に力が印加され、さまざまな別個の力印加及び測定に対して、対応する軸方向圧縮及び角偏向の測定がなされ、前述のように較正記憶媒体に保存される(工程110)。
【0038】
工程120は論理工程であり、測定された軸方向圧縮を、既知/あらかじめ確立された圧縮閾値又は限度(例えば、図3及び4に示されるカテーテル先端設計については約0.29ニュートン(30グラム))と比較する。測定された軸方向圧縮が圧縮閾値より低い場合は、工程105において力レベルFは増加され(例えば、控えめな力増加分で)、測定された軸方向の圧縮レベルが工程120で圧縮閾値に達する(すなわち、圧縮閾値以上になる)まで、工程110の測定と工程120の比較/論理工程を繰り返す。
【0039】
工程120において軸方向圧縮閾値に達すると、工程125において、追加の力F(新しい力の値として、軸方向圧縮閾値よりも大きな力)が先端52(図4に示されている)に印加される(例えば、バネ54の圧縮限度又は閾値を超える控えめな力レベル、すなわち、図3及び4の実施形態において0.29ニュートン(30グラム)よりも大きい力レベル)。
【0040】
工程130において、バネ軸方向圧縮閾値を上回る控えめな力の印加(工程125において)のそれぞれについて、先端52の位置座標が、力Fの方向を横断する平面内で測定される。よって、図3及び4の図示された例において、力FがX−Z軸方向に印加され、工程130において、X−Y横断軸又は平面について位置座標が測定される。これらの位置座標は、位置及び向きの情報の6次元であり、すなわちX、Y、Z軸方向、並びにピッチ、ヨー、及びロールの向きである。
【0041】
工程135において、横断平面(すなわち、この例ではX−Y横断平面)で測定された位置座標は、工程125において印加され、工程140においてシステム34(図1)の記憶媒体に保存された、新しい力のレベル又は値Fに直接的に相関している。
【0042】
更なる論理工程140が実施され、工程125において印加された新しい力のレベルFが、あらかじめ確立された力Fの上限値(試験設計による)(例えば、試験される力Fの、圧縮閾値を上回る最大限度)と比較される。試験の力上限の一例は、0.59ニュートン(60重量グラム)である。これは、特に、提示された例においてバネ54の軸方向圧縮閾値が約0.29ニュートン(30グラム)である場合、かなりの力がカテーテル先端52にかけられることになる。力の最大限度に達していない場合は、力Fの上限値(試験限度)に達して、工程150で較正が完了するまで、工程125、130、135、140及び145が繰り返される。
【0043】
本発明は、カテーテル先端52にかかる力Fが、力の方向を横断する平面(すなわち、図3及び図4の座標系のX−Y平面)内のカテーテル先端52の位置の投影の大きさに比例するという発見を利用している。よって、力Fがバネ圧縮閾値(この例では約0.29ニュートン(30グラム))を上回るときは、検出コイル66、68及び70から出力される信号に基づいて、カテーテル先端の投影を測定すること、すなわち、横断平面又は横断軸方向で先端52の位置を測定することによって、正確な力の読み取りを得るには十分である。
【0044】
よって、カテーテル30の較正において、力閾値Fを上回る較正モデル及びパラメータは、先端の横断軸投影の測定値に直接的に相関しており(この例では、横断平面はX−Y軸平面になる)、かつ、印加された力Fと先端投影/位置(位置座標に基づく)との間の比例性及び相関関係の計算に直接的に関係している。よって、外科処置(図1)における装置/カテーテル30の実際の操作中に、バネ閾値に到達した後であっても、カテーテル先端52にかかる実際の力に基づいて、正確な力測定を行うことができる。
【0045】
それゆえ、上述の実施形態は例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、説明しているものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲には、上記で説明した様々な特徴の組み合わせ及び副次的組み合わせの双方、並びに当業者であれば上記の説明文を読むことで想到されるであろう、先行技術に開示されていないそれらの変型及び修正が含まれる。
【0046】
〔実施の態様〕
(1) 患者の身体に対して実施される医学的処置に使用される力測定プローブを較正するための方法であって、前記方法が、
プローブを提供する工程であって、前記プローブが、長手方向軸及び遠位端を有する挿入管と、前記挿入管の前記遠位端に配置され、前記身体の組織に接触するよう構成された遠位先端と、弾力性部材を含む接続部であって、前記遠位先端が組織に係合したときに、前記遠位先端にかかる力に対応して変形するよう構成され、前記遠位先端を前記挿入管の前記遠位端に接合する、接続部と、前記挿入管の前記遠位端に対する前記遠位先端の位置を検出するための、前記プローブ内に包含された接続部センサであって、前記接続部の相対するそれぞれの側面に沿って前記プローブ内に配置される第1サブアセンブリ及び第2サブアセンブリを含む、接続部センサと、を含み、前記第1サブアセンブリ及び前記第2サブアセンブリは1つ又は2つ以上の磁気変換器を含む、工程と、
プロセッサであって、前記第1サブアセンブリ及び前記第2サブアセンブリの一方に電流を印加するよう前記プローブに接続されており、これにより前記第1サブアセンブリ及び前記第2サブアセンブリの一方が少なくとも1つの磁場を生成するようになっており、かつ、前記少なくとも1つの磁場に反応して前記第1サブアセンブリ及び前記第2サブアセンブリのもう一方から出力される1つ又は2つ以上の信号を受信し処理するよう接続されており、これによって、前記挿入管の前記遠位端に対する前記遠位先端の位置の変化を検出することができる、プロセッサを含み、前記プロセッサによって検出された前記遠位先端の前記位置の変化は、前記挿入管の前記遠位端に対する前記遠位先端の軸方向変位と前記遠位先端の角偏向とを含み、前記プロセッサは、前記位置の前記検出された変化に対応して、前記遠位先端にかかる力を示す出力と、プロセッサ内に記憶された前記接続部の軸方向変位閾値を有する記憶媒体とを生成するよう構成されており、
前記遠位先端に力を印加する工程と、
前記遠位先端の前記軸方向変位及び前記角偏向を測定する工程と、
前記遠位先端に印加された力に対する前記遠位先端の前記測定された軸方向変位と前記角偏向との相関関係を明らかにし、前記軸方向変位閾値に達するまで、前記相関関係を前記記憶媒体に保存する工程と、
前記遠位先端に前記軸方向変位閾値よりも大きい力を印加して、新しい力の値を定義する工程と、
前記遠位先端にかかる力の方向を横断する平面内での前記遠位先端の前記位置を測定する工程と、
力の方向を横断する前記平面内での前記遠位先端の前記測定された位置と、前記新しい力の値との相関関係を明らかにし、前記新しい力の値のあらかじめ確立された上限値に達するまで、前記相関関係を前記記憶媒体に保存する工程と、を含む、方法。
(2) コイルを含む磁気変換器を提供する工程を更に含み、前記第1サブアセンブリは、前記挿入管の前記長手方向軸に対して平行な第1コイル軸を有する第1コイルを含み、前記第2サブアセンブリは、前記第1サブアセンブリから軸方向に離間した前記プローブの区域内において、異なるそれぞれの半径方向の位置にある2つ又は3つ以上の第2コイルを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記身体の近くで更なる磁場を発生させ、かつ前記更なる磁場に反応して位置信号を生成するため、前記プローブ内に位置センサとして前記第1サブアセンブリ又は前記第2サブアセンブリの一方の内部にある前記磁気変換器の少なくとも1つを使用するための、磁場発生器を提供する工程を更に含み、前記プロセッサは、前記プローブとは別の基準系に対する前記プローブの位置座標を計算するために、前記位置信号を受信し処理するよう接続されている、実施態様2に記載の方法。
(4) 6次元の位置及び向き情報である位置座標を決定する工程を更に含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 約0.29ニュートン(30重量グラム)の軸方向変位閾値を提供する工程を更に含む、実施態様4に記載の方法。
(6) 約0.29ニュートン(30重量グラム)よりも大きい新しい力の値を提供する工程を更に含む、実施態様5に記載の方法。
(7) カテーテルであるプローブを提供する工程を更に含む、実施態様6に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体に対して実施される医学的処置に使用される力測定プローブを較正するための方法であって、前記方法が、
プローブを提供する工程であって、前記プローブが、長手方向軸及び遠位端を有する挿入管と、前記挿入管の前記遠位端に配置され、前記身体の組織に接触するよう構成された遠位先端と、弾力性部材を含む接続部であって、前記遠位先端が組織に係合したときに、前記遠位先端にかかる力に対応して変形するよう構成され、前記遠位先端を前記挿入管の前記遠位端に接合する、接続部と、前記挿入管の前記遠位端に対する前記遠位先端の位置を検出するための、前記プローブ内に包含された接続部センサであって、前記接続部の相対するそれぞれの側面に沿って前記プローブ内に配置される第1サブアセンブリ及び第2サブアセンブリを含む、接続部センサと、を含み、前記第1サブアセンブリ及び前記第2サブアセンブリは1つ又は2つ以上の磁気変換器を含む、工程と、
プロセッサであって、前記第1サブアセンブリ及び前記第2サブアセンブリの一方に電流を印加するよう前記プローブに接続されており、これにより前記第1サブアセンブリ及び前記第2サブアセンブリの一方が少なくとも1つの磁場を生成するようになっており、かつ、前記少なくとも1つの磁場に反応して前記第1サブアセンブリ及び前記第2サブアセンブリのもう一方から出力される1つ又は2つ以上の信号を受信し処理するよう接続されており、これによって、前記挿入管の前記遠位端に対する前記遠位先端の位置の変化を検出することができる、プロセッサを含み、前記プロセッサによって検出された前記遠位先端の前記位置の変化は、前記挿入管の前記遠位端に対する前記遠位先端の軸方向変位と前記遠位先端の角偏向とを含み、前記プロセッサは、前記位置の前記検出された変化に対応して、前記遠位先端にかかる力を示す出力と、プロセッサ内に記憶された前記接続部の軸方向変位閾値を有する記憶媒体とを生成するよう構成されており、
前記遠位先端に力を印加する工程と、
前記遠位先端の前記軸方向変位及び前記角偏向を測定する工程と、
前記遠位先端に印加された力に対する前記遠位先端の前記測定された軸方向変位と前記角偏向との相関関係を明らかにし、前記軸方向変位閾値に達するまで、前記相関関係を前記記憶媒体に保存する工程と、
前記遠位先端に前記軸方向変位閾値よりも大きい力を印加して、新しい力の値を定義する工程と、
前記遠位先端にかかる力の方向を横断する平面内での前記遠位先端の前記位置を測定する工程と、
力の方向を横断する前記平面内での前記遠位先端の前記測定された位置と、前記新しい力の値との相関関係を明らかにし、前記新しい力の値のあらかじめ確立された上限値に達するまで、前記相関関係を前記記憶媒体に保存する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
コイルを含む磁気変換器を提供する工程を更に含み、前記第1サブアセンブリは、前記挿入管の前記長手方向軸に対して平行な第1コイル軸を有する第1コイルを含み、前記第2サブアセンブリは、前記第1サブアセンブリから軸方向に離間した前記プローブの区域内において、異なるそれぞれの半径方向の位置にある2つ又は3つ以上の第2コイルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記身体の近くで更なる磁場を発生させ、かつ前記更なる磁場に反応して位置信号を生成するため、前記プローブ内に位置センサとして前記第1サブアセンブリ又は前記第2サブアセンブリの一方の内部にある前記磁気変換器の少なくとも1つを使用するための、磁場発生器を提供する工程を更に含み、前記プロセッサは、前記プローブとは別の基準系に対する前記プローブの位置座標を計算するために、前記位置信号を受信し処理するよう接続されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
6次元の位置及び向き情報である位置座標を決定する工程を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
約0.29ニュートン(30重量グラム)の軸方向変位閾値を提供する工程を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
約0.29ニュートン(30重量グラム)よりも大きい新しい力の値を提供する工程を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
カテーテルであるプローブを提供する工程を更に含む、請求項6に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−210410(P2012−210410A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−75815(P2012−75815)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(511099630)バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
【住所又は居所原語表記】4 Hatnufa Street, Yokneam 20692, Israel
【Fターム(参考)】