説明

大気浄化装置

【課題】触媒の浄化効率を高めることが可能な大気浄化装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、金属からなり、大気中の化学物質を浄化する触媒4と、触媒4に通電を行うバッテリ8と、触媒4の電気抵抗を測定することができる電流計15と、を具備し、電流計15により測定された電気抵抗に基づいて推定される触媒4の温度が触媒4の活性温度より低い場合、バッテリ8は、触媒4の温度が活性温度まで上昇するように通電を行う大気浄化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への意識の高まりに伴い、オゾン等のような、空気中の化学物質を浄化する触媒を用いた大気浄化装置が車両に搭載されることがある。車両が走行することにより、空気が大気浄化装置に接触して流れ、浄化される。
【0003】
特許文献1には、触媒が金属上に被覆させてなる、ラジエータに搭載された大気浄化装置が開示されている。特許文献2には、大気の流通を確保させたセンサ素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−527951号公報
【特許文献2】特開2002−139472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の大気浄化装置では、触媒の浄化機能が低下することがあった。本発明は上記課題に鑑み、触媒の浄化機能を高めることが可能な大気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属からなり、大気中の化学物質を浄化する触媒と、前記触媒に通電を行う通電手段と、前記触媒の電気抵抗を測定する抵抗測定手段と、を具備し、前記抵抗測定手段により測定された電気抵抗に基づいて推定される前記触媒の温度が前記触媒の活性温度より低い場合、前記通電手段は、前記触媒の温度が前記活性温度まで上昇するように通電を行う大気浄化装置である。本発明によれば、触媒に通電を行うことで、触媒の温度を活性温度まで上昇させ、触媒の浄化機能を高めることができる。また、簡単な構成で触媒の温度を把握することができる。
【0007】
上記構成において、前記抵抗測定手段により測定された電気抵抗に基づき、前記触媒の浄化機能を診断する浄化機能診断手段と、を備える構成とすることができる。この構成によれば、簡単な構成で浄化機能の自己診断が可能となる。
【0008】
上記構成において、前記浄化機能診断手段が前記触媒の浄化機能が異常であると診断した場合に、前記通電手段は前記触媒の浄化機能を回復するための通電を行い、前記触媒の浄化機能を回復するための通電は、前記触媒の温度を前記触媒の浄化機能が回復するような温度まで上昇させるような通電である構成とすることができる。この構成によれば、簡単な構成で、浄化機能の自己診断と浄化機能の回復とが可能となる。
【0009】
上記構成において、前記浄化機能診断手段が前記触媒の浄化機能が異常であると診断した場合に、前記通電手段は前記触媒の浄化機能を回復するための通電を行い、前記触媒の浄化機能を回復するための通電は、前記触媒に生成された酸化物の電気分解を起こすような通電である構成とすることができる。この構成によれば、簡単な構成で、浄化機能の自己診断と浄化機能の回復とが可能となる。
【0010】
上記構成において、前記大気浄化装置が搭載される車両の走行距離を測定する走行距離測定手段、又は前記車両のエンジンの運転時間を測定する運転時間測定手段、を備え、前記走行距離測定手段により測定された走行距離が所定の距離になった場合、又は前記運転時間測定手段により測定された運転時間が所定の時間になった場合に、前記通電手段は、前記触媒の温度を前記触媒の浄化機能が回復するような温度まで上昇させるように通電を行う構成とすることができる。この構成によれば、触媒の被毒成分を脱離し、浄化機能を回復することができる。
【0011】
上記構成において、前記大気浄化装置が搭載される車両の速度を測定する速度測定手段を備え、前記速度測定手段により測定された速度が第1速度より大きい場合、前記通電手段は、前記触媒の温度を上昇させるように通電を行う構成とすることができる。この構成によれば、触媒の温度上昇をより容易に行うことができる。また、大気の浄化をより効率的に行うことができる。
【0012】
上記構成において、前記通電手段は、前記触媒に生成された酸化物の電気分解を行うための液体に接触している場合に、前記電気分解を起こすように通電を行う構成とすることができる。この構成によれば、通電によって電気分解を行うことで、触媒の浄化機能を回復させることができる。
【0013】
上記構成において、前記電解液は、雨水、又は前記大気浄化装置が搭載される車両が散布するウォッシャー液である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記大気浄化装置が搭載される車両の速度を測定する速度測定手段を備え、前記速度測定手段により測定された速度が第2速度より小さい場合、前記通電手段は通電を行う構成とすることができる。この構成によれば、浄化機能が低い低速走行時に浄化機能を回復させ、浄化機能が高い高速走行時に浄化を行うことで、効率的な浄化が可能となる。
【0015】
上記構成において、前記浄化機能診断手段が前記触媒の浄化機能が異常であると診断した場合に、前記通電手段は通電を行う構成とすることができる。この構成によれば、簡単な構成で、浄化機能の自己診断と浄化機能の回復とが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、触媒の浄化機能を高めることが可能な大気浄化装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)は実施例1に係る大気浄化装置の構成を例示する模式図であり、図1(b)は実施例1に係る大気浄化装置の構成を例示する機能ブロック図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、実施例1に係る大気浄化装置の制御を例示するフローチャートである。
【図3】図3は実施例2に係る大気制御装置の制御を例示するフローチャートである。
【図4】図4は実施例2に係る大気制御装置の制御を例示するフローチャートである。
【図5】図5(a)及び図5(b)は走行距離と浄化機能との関係を例示する図であり、図5(c)は車速と触媒のオゾン浄化量との関係を例示する図である。
【図6】図6は実施例3に係る大気制御装置の制御を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
初めに、実施例1に係る大気浄化装置の構成について説明する。図1(a)は実施例1に係る大気浄化装置の構成を例示する模式図であり、図1(b)は実施例1に係る大気浄化装置の構成を例示する機能ブロック図である。
【0020】
図1(a)に示すように、実施例1に係る大気浄化装置1は、ECU(Engine Control Unit)2、触媒4、配線6、バッテリ8(通電手段)、走行距離計10(走行距離測定手段)、時計12(運転時間測定手段)、速度計14(速度測定手段)、及び電流計15(抵抗測定手段)を備える。大気浄化装置1は、車両に搭載される。また、大気浄化装置1を搭載する車両は、電解液散布手段16を備える。
【0021】
触媒4は例えばモノリス状の金属層からなり、大気と接触することで大気中の化学物質を分解する。触媒4は例えばAg(銀),Pt(白金),Pd(パラジウム),Rh(ロジウム),Cu(銅),Co(コバルト),Ni(ニッケル),又はMn(マンガン)等の金属からなる。触媒4は1つの金属で構成されていてもよいし、複数の金属で構成されていてもよい。触媒4が浄化する大気中の化学物質として、例えばオゾン、HC(炭化水素)、NO等がある。なお図中では、触媒4はモノリス状に形成されているが、例えばペレット状や、ハニカム状に形成されていてもよく、形状は限定されない。
【0022】
触媒4の温度が活性温度に達した場合、触媒4の浄化機能が高まる。触媒4の温度が活性温度より低い場合、触媒4の浄化機能は低下する。また、触媒4に異物が吸着した場合や、触媒4が酸化した場合等も、浄化機能は低下する。
【0023】
バッテリ8は、配線6を介して触媒4と電気的に接続されており、触媒4に電流を流すことができる。配線6は撥水性の樹脂により被覆されている。走行距離計10は、大気浄化装置を搭載する車両の走行距離を測定する。時計12は、車両の運転時間を測定する。速度計14は、車両の速度(車速)を測定する。電流計15は、バッテリ8が通電することにより触媒4に流れる電流を測定する。また電流計15が検出する電流とバッテリ8の電圧とから、触媒4の電気抵抗を測定することができる。電解液散布手段16は、例えば車両のウォッシャー液散布手段である。大気浄化装置1は、ウォッシャー液が触媒4に到達するような箇所、例えばラジエータ等に設けられることが好ましい。つまり、電解液としては車両のウォッシャー液を使用することができる。
【0024】
ECU2はバッテリ8による通電を制御し、また電解液散布手段16による電解液の散布を制御する。さらにECU2は、走行距離計10から走行距離を、時計12から運転時間を、速度計14から速度を、電流計15から電流を、取得する。次に機能ブロック図を参照して、大気浄化装置1の構成についてさらに説明する。
【0025】
図1(b)に示すように、ECU2は、温度推定手段18、通電制御手段20、及び浄化機能診断手段22として機能する。温度推定手段18は、触媒4の電気抵抗に基づいて、触媒4の温度を推定する。実施例1では、触媒4の温度が上昇することに応じて、触媒4の電気抵抗は低下するものとする。通電制御手段20は、バッテリ8による通電を制御する。浄化機能診断手段22は、触媒4の浄化機能を診断する。なお、触媒4は使用時間や使用環境により劣化して、使用開始時から電気抵抗が変化することがある。触媒4が劣化した場合、ECU2は触媒4の劣化状況に応じて、触媒4の電気抵抗から触媒4の温度を推定することが可能である。詳しくは後述する。
【0026】
次に大気浄化装置1が行う制御について説明する。図2(a)及び図2(b)は、実施例1に係る大気浄化装置の制御を例示するフローチャートである。
【0027】
図2(a)に示すように、最初に通電制御手段20は、バッテリ8による通電が可能であるか判断する(ステップS10)。通電可否判断の制御について、図2(b)を参照して説明する。
【0028】
図2(b)に示すように、通電制御手段20は、速度計14により測定された車両の車速Vが、所定の速度であるV3(第3速度)より大きいか判断する(ステップS15)。V3は、閾値として予め定められている速度である。Noの場合、制御はステップS15を繰り返す。Yesの場合、通電制御手段20はバッテリ8による通電が可能であると判断する(ステップS16)。ステップS16の後、通電可否判断の制御は終了する。図2(a)に戻り、ステップS10以降の制御について説明する。
【0029】
図2(a)に示すように、ステップS10の後、通電制御手段20は、触媒4の電気抵抗Rが所定の電気抵抗であるR1より大きいか判断する(ステップS11)。Noの場合、制御はステップS11を繰り返す。
【0030】
Yesの場合、通電制御手段20はバッテリ8による触媒4への通電をONにする(ステップS12)。ステップS12の後、通電制御手段20は、電気抵抗Rが所定の電気抵抗であるR2より小さいか判断する(ステップS13)。R2はR1より小さな電気抵抗である。Noの場合、制御はステップS12に戻る。
【0031】
Yesの場合、通電制御手段20は、バッテリ8による通電をOFFにする(ステップS14)。ステップS14の後、制御は終了する。
【0032】
実施例1によれば、バッテリ8は、触媒4の電気抵抗RがR1より大きい場合、触媒4への通電を行う(ステップS11及びS12)。触媒4への通電により、触媒4の温度は上昇し、電気抵抗Rは低下する。触媒4の温度は、電気抵抗RがR2からR1の範囲内に入るように上昇する(ステップS13及びS14)。電気抵抗R2からR1までの範囲は、触媒4の活性温度の範囲に対応する。つまり、通電制御手段20は、触媒4の温度が活性温度より低い場合、活性温度まで上昇するように、バッテリ8が通電を行うような制御をする。これにより、触媒4の温度は活性温度まで上昇し、触媒4の浄化機能を高めることができる。
【0033】
触媒4が金属からなるため、電気抵抗に基づいて温度を推定し、触媒4の温度が活性温度であるか調べることができる(図2(a)のステップS11)。また、上述のように、触媒4に通電することで温度を上昇させることも可能となる。すなわち、触媒4の温度の把握と、活性機能の向上とを、簡単な構成で実現できる。これにより、大気浄化装置の低コスト化、小型化が可能となる。
【0034】
車速VがV3より小さい場合、通電制御手段20はバッテリ8が通電を行わないように制御する(図2(b))。これにより、例えば大気浄化装置がラジエータに搭載されている場合、通電によってラジエータの温度が上昇することが抑制される。ラジエータの温度上昇を抑制することで、特に低速走行時にラジエータの負担を軽減することができる。また、車外から浸入した異物が触媒4や配線6に接触して漏電することを抑制できる。
【0035】
また、配線6は撥水性の樹脂により被覆されている。樹脂が水の浸入を抑制するため、例えば雨水等によってショートすることによる大気浄化装置の誤作動が抑制される。また、触媒4は大気に接触することで浄化をするため、樹脂で被覆されないことが好ましい。
【0036】
触媒4は大気に接触することで大気を浄化する。このため、大気浄化装置は多くの大気に接触する場所に搭載することが好ましい。例えば車両の前方に大気浄化装置1を搭載することで、走行風と接触し、効率的な浄化が可能となる。具体的には、車両のバンパーやラジエータ等である。
【実施例2】
【0037】
実施例2は、大気浄化装置が自己診断(OBD:On−board diagnostics)及び回復制御を行う例である。まずは自己診断について説明する。図3は実施例2に係る大気制御装置の自己診断制御を例示するフローチャートである。なお、大気浄化装置1の構成については、図1(a)及び図1(b)において既述したので、説明を省略する。
【0038】
図3に示すように、初めにECU2は大気浄化装置1が回復制御中であるか判断する(ステップS17)。回復制御については後述する。Yesの場合、浄化機能診断手段22は、測定した触媒4の電気抵抗Rが、所定の電気抵抗であるR3からR4までの範囲内にあるか判断する(ステップS18)。
【0039】
ステップS18においてYesの場合、浄化機能診断手段22は大気浄化装置の浄化機能が正常であると診断する(ステップS19)。ステップS19の後、制御は終了する。
【0040】
ステップS18においてNoの場合、浄化機能診断手段22は、大気浄化装置の浄化機能が異常であると診断する(ステップS20)。ステップS20の後、大気浄化装置は回復制御を行う(ステップS21)。ステップS21の後、制御は終了する。
【0041】
ステップS17においてNoの場合、浄化機能診断手段22は、測定した触媒4の電気抵抗Rが、所定の電気抵抗であるR5からR6までの範囲内にあるか判断する(ステップS22)。ステップS22においてYesの場合、制御はステップS19に進む。Noの場合、制御はステップS20に進む。ステップS20以降の制御は既述したので説明を省略する。以上で、自己診断制御は終了する。
【0042】
上述のように、触媒4の電気抵抗Rが、R3からR4までの範囲内に含まれない場合(ステップS18)、又はR5からR6までの範囲内に含まれない場合(ステップS22)、浄化機能診断手段22は触媒4の浄化機能が異常であると診断する(ステップS20)。浄化機能の異常は、例えば触媒4に大気中の被毒成分等が吸着したことにより生ずる。
【0043】
次に回復制御について説明する。図4は実施例2に係る大気制御装置の回復制御を例示するフローチャートである。
【0044】
図4に示すように、まず通電制御手段20は、走行距離計10により測定された車両の走行距離Lが、所定の距離であるL1より大きいか判断する(ステップS23)。L1は閾値として予め定められている距離である。Noの場合、制御はステップS23を繰り返す。
【0045】
Yesの場合、通電制御手段20はバッテリ8による通電が可能であるか判断する(ステップS24)。Noの場合、制御はステップS24を繰り返す。Yesの場合、通電制御手段20は、速度計14により測定された車速Vが所定の速度V1(第1速度)より大きいか判断する(ステップS25)。なお、速度V1は図2(b)の速度V3より大きく、閾値として予め定められている。
【0046】
Noの場合、制御はステップS25を繰り返す。Yesの場合、通電制御手段20は、触媒4の電気抵抗Rが所定の電気抵抗R7より大きいか判断する(ステップS26)。Noの場合、制御はステップS26を繰り返す。Yesの場合、通電制御手段20は、バッテリ8による通電をONにする(ステップS27)。通電により触媒4の温度は上昇する。このとき、触媒4の温度は、触媒4に吸着した被毒成分が脱離して、触媒4の浄化機能が回復する温度まで上昇する。
【0047】
ステップS27の後、通電制御手段20は、電気抵抗Rが所定の電気抵抗R8より小さいか判断する(ステップS28)。なおR8はR7より大きな電気抵抗である。Noの場合、制御はステップS27に戻る。Yesの場合、通電制御手段20は、車両の走行距離Lが、所定の距離であるL2より大きいか判断する(ステップS29)。距離L2は距離L1より大きい。Noの場合、制御はステップS27に戻る。Yesの場合、通電制御手段20はバッテリ8による通電をOFFにする(ステップS30)。以上で、回復制御は終了する。
【0048】
実施例2によれば、浄化機能診断手段22が触媒4の抵抗に基づいて、触媒4の浄化機能を診断する(図3)。従って、大気浄化装置は浄化機能について自己診断が可能となる。例えば、触媒4が常温触媒のように反応熱の少ない触媒である場合、温度だけでは触媒の浄化機能を診断することが困難である。実施例2では電気抵抗に基づいて診断を行うため、触媒4の反応熱が少ない場合でも、診断が可能となる。
【0049】
また実施例2によれば、浄化機能が異常である場合に、バッテリ8が通電を行うことで、触媒4の温度は所定の温度まで上昇する(ステップS27)。これにより、触媒4に付着した被毒成分が脱離され、浄化機能が回復する。つまり実施例2によれば、バッテリ8が触媒4に通電を行うことにより、簡単な構成で、浄化機能の自己診断と、浄化機能の回復とが可能となる。また、実施例1で説明したように、触媒4の温度を活性温度まで上昇させることもできる。なお、被毒成分を脱離させるためには、ステップS27において、触媒4の温度を活性温度より高い温度まで上昇させることが好ましい。
【0050】
温度によって触媒4の電気抵抗は変動する。つまり、回復制御中の場合と回復制御中でない場合とで、大気浄化装置が検出する触媒4の電気抵抗が変動する。このため、図3のステップS17において回復制御中であるか判断し、その結果に応じてステップS18におけるR3とR4、及びステップS22におけるR5とR6のように、互いに異なる電気抵抗を閾値として、自己診断を行うことが好ましい。なお、触媒4の劣化状況に応じて、触媒4の電気抵抗から、触媒4の温度を推定することも可能である。
【0051】
ここで、車両の走行距離と、触媒4との浄化機能の関係について、図を参照して説明する。図5(a)及び図5(b)は、走行距離と触媒の浄化機能との関係を例示する図である。横軸は車両の走行距離を、縦軸は触媒の浄化効率を、それぞれ表す。
【0052】
図5(a)に示すように、走行距離が延びると、触媒4の浄化効率は低下する。車両が走行すると、大気浄化装置は、より多くの大気に接触することになる。このため、車両の走行距離が延びると、触媒4に大気中の被毒成分がより多く吸着する。その結果、図4(a)のように浄化効率が低下する。
【0053】
図5(b)に示すように、実施例2では、一定の走行距離ごとに浄化効率が回復する。実施例2によれば、車両の走行距離Lが所定の距離L1になった場合に、通電が行われる(ステップS23)。また通電制御手段20は、走行距離Lが所定の距離L2に達するまで、通電を続ける(ステップS29)。すなわち、車両が一定距離走行後に、大気浄化装置は、触媒4の温度を上昇させ、かつ温度を上昇させた状態を維持する。これにより図5(b)に示すように、一定距離走行ごとに触媒4から被毒成分が脱離され、浄化効率が回復する。
【0054】
なお、走行距離以外に、時計12により車両の走行時間を測定し、一定時間ごとに通電を行ってもよい。また走行距離と、走行時間との両方に基づいて、回復制御を行ってもよい。
【0055】
次に、車速と触媒4の浄化機能との関係について説明する。図5(c)は車速と触媒のオゾン浄化量との関係を例示する図である。横軸は車速であり、縦軸はオゾン浄化量である。
【0056】
図5(c)に示すように、車速が大きい方が、オゾン浄化量は大きくなる。これは、車速が大きい方が、触媒がより多くの大気に接触するからである。また、例えば大気浄化装置がラジエータに搭載されている場合、高速での走行時はラジエータが高温になり、これに伴い触媒4の温度も上昇する。従って、触媒は活性温度に達しやすくなる。
【0057】
実施例2では、車速Vが速度V1より大きい場合に、通電制御手段20は通電を行うよう制御する(ステップS25)。つまり、図5(c)の点線で示す領域のような高速走行時に、回復制御における通電が行われる。高速走行時は低速走行時と比較してラジエータ等の温度が高くなるため、触媒4の温度の上昇が容易になる。また、浄化機能の回復した触媒4が、高速走行によって多くの大気に接触するため、より効率的に大気の浄化を行うことができる。なお、回復制御における通電は、低速走行時に行われてもよいが、上述のように浄化機能の回復及び浄化を、効率的に行うためには高速走行時が好ましい。
【0058】
なお実施例2では、一定の走行距離又は走行時間ごとに浄化効率を回復させるとしたが、発明の適用例はこれに限定されない。すなわち、浄化機能診断手段22が異常と診断した場合には、走行距離や走行時間に関らず、回復制御を行うとしてもよい。また、自己診断制御を行わずに、例えば一定の走行距離又は走行時間ごとに、回復制御を行ってもよい。
【実施例3】
【0059】
実施例3も、実施例2と同様、大気浄化装置が自己診断及び回復制御を行う例である。図5は実施例3に係る大気浄化装置の回復制御を例示するフローチャートである。なお、自己診断制御は図3に示したものと同じであるため、説明を省略する。
【0060】
図6に示すステップS31からS33は、図4のステップS23,S24及びS26と同様の制御である。ステップS33の後、速度計14により車速Vを測定する。通電制御手段20は、速度計14により測定された車速Vが、速度V3からV2(第2速度)の範囲内に含まれるか判断する(ステップS34)。速度V2はV3より大きく、閾値として予め定められている。Noの場合、制御はステップS34を繰り返す。
【0061】
Yesの場合、ECU2は車両のワイパーが作動しているか判断する(ステップS35)。Yesの場合、つまり雨天の場合、制御はステップS37に進む。Noの場合、電解液散布手段16はウォッシャー液を散布する(ステップS36)。触媒4は、電解液散布手段16により散布されたウォッシャー液に接触する。ステップS36の後、制御はステップS37に進む。
【0062】
通電制御手段20は、バッテリ8による通電をONにする(ステップS37)。ステップS37の後、制御はステップS38に進む。ステップS38、ステップS39及びステップS40は、図4のステップS28、ステップS29及びステップS30と同様の制御である。ステップS40の後、制御は終了する。
【0063】
触媒4が金属からなる場合、酸化物が付着して浄化効率が低下することがある。実施例3によれば、触媒4にウォッシャー液が散布された状態、または雨天のため触媒4が雨水に濡れた状態で、触媒4への通電が行われる。通電により、ウォッシャー液又は雨水を電解液として電気分解が行われる。電気分解により、触媒4に付着した酸化物は還元され、金属になる。結果的に、酸化物が除去され、酸化により劣化した触媒4の浄化機能が回復する。
【0064】
図5(c)に示すように、低速走行時は、触媒4のオゾン浄化量は低い。実施例3によれば、バッテリ8による通電は、車速VがV3からV2の範囲内に含まれる場合に行われる(ステップS34)。つまり、車速がV3からV2の範囲内にあるような低速の状態において、触媒4の浄化機能を回復させた後に、高速走行をすることができる。これにより、高速走行時には効率的な浄化が可能となる。なお、高速走行時に、通電を行ってもよい。また、車速VがV3より小さい場合に通電を行ってもよい。ただし既述したように、ラジエータ等への負担を抑制し、また車外からの異物による漏電を抑制するためには、V3より大きな車速において、通電を行うことが好ましい。
【0065】
電解液は、電気分解のための液体であれば、ウォッシャー液以外の液体でもよい。ただし、大気浄化装置の構成を簡略化し、低コスト化、及び小型化を図るためには、電解液はウォッシャー液であり、電解液散布手段16はウォッシャー液散布手段であることが好ましい。なお実施例3も実施例2と同様に、浄化機能診断手段22が異常と診断した場合には、走行距離や走行時間に関らず、回復制御を行うとしてもよいし、自己診断制御を行わずに、回復制御を行ってもよい。また、走行距離、走行時間、自己診断制御の有無に関らず、ウォッシャー液の散布に応じて、通電を行うとしてもよい。
【0066】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
ECU 2
触媒 4
配線 6
バッテリ 8
走行距離計 10
時計 12
速度計 14
電流計 15
電解液散布手段 16
温度推定手段 18
通電制御手段 20
浄化機能診断手段 22

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなり、大気中の化学物質を浄化する触媒と、
前記触媒に通電を行う通電手段と、
前記触媒の電気抵抗を測定する抵抗測定手段と、を具備し、
前記抵抗測定手段により測定された電気抵抗に基づいて推定される前記触媒の温度が前記触媒の活性温度より低い場合、前記通電手段は、前記触媒の温度が前記活性温度まで上昇するように通電を行うことを特徴とする大気浄化装置。
【請求項2】
前記抵抗測定手段により測定された電気抵抗に基づき、前記触媒の浄化機能を診断する浄化機能診断手段を備えることを特徴とする請求項1記載の大気浄化装置。
【請求項3】
前記浄化機能診断手段が前記触媒の浄化機能が異常であると診断した場合に、前記通電手段は前記触媒の浄化機能を回復するための通電を行い、
前記触媒の浄化機能を回復するための通電は、前記触媒の温度を前記触媒の浄化機能が回復するような温度まで上昇させるような通電であることを特徴とする請求項2記載の大気浄化装置。
【請求項4】
前記浄化機能診断手段が前記触媒の浄化機能が異常であると診断した場合に、前記通電手段は前記触媒の浄化機能を回復するための通電を行い、
前記触媒の浄化機能を回復するための通電は、前記触媒に生成された酸化物の電気分解を起こすような通電であることを特徴とする請求項2記載の大気浄化装置。
【請求項5】
前記大気浄化装置が搭載される車両の走行距離を測定する走行距離測定手段、又は前記車両のエンジンの運転時間を測定する運転時間測定手段、を備え、
前記走行距離測定手段により測定された走行距離が所定の距離になった場合、又は前記運転時間測定手段により測定された運転時間が所定の時間になった場合に、前記通電手段は、前記触媒の温度を前記触媒の浄化機能が回復するような温度まで上昇させるように通電を行うことを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の大気浄化装置。
【請求項6】
前記大気浄化装置が搭載される車両の速度を測定する速度測定手段を備え、
前記速度測定手段により測定された速度が第1速度より大きい場合、前記通電手段は、前記触媒の温度を上昇させるように通電を行うことを特徴とする請求項3または5記載の大気浄化装置。
【請求項7】
前記通電手段は、前記触媒に生成された酸化物の電気分解を行うための液体に接触している場合に、前記電気分解を起こすように通電を行うことを特徴とする請求項4記載の大気浄化装置。
【請求項8】
前記電解液は、雨水、又は前記大気浄化装置が搭載される車両が散布するウォッシャー液であることを特徴とする請求項7記載の大気浄化装置。
【請求項9】
前記大気浄化装置が搭載される車両の速度を測定する速度測定手段を備え、
前記速度測定手段により測定された速度が第2速度より小さい場合、前記通電手段は通電を行うことを特徴とする請求項4、7及び8いずれか一項記載の大気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224457(P2011−224457A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96284(P2010−96284)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】