説明

大腸癌を検出する方法及び組成物

【課題】癌の診断及び治療のための新たな方法を提供する。
【解決手段】被験者における結腸新生物を検出する方法であって、該被験者からの試料におけるビメンチンタンパク質又は核酸の発現を検出することを含む当該方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2001年には、120万症例を超えるヒトの癌が診断され、50万人を超える人々が、癌により死亡するであろう(米国癌学会の推計)。それにもかかわらず、これまでよりも多くの人々が、癌と共に生活し、癌にもかかわらず生存している。例えば、1997年には、約890万人の生きている米国人が、癌の病歴を有した(国立癌研究所の推計)。人々は、ますます、早期に診断されれば、治療が一層上首尾となるので、癌にもかかわらずに生存するようになりそうである。初期の検出は、質の高い方法の利用可能性に依存している。かかる方法は又、患者の予後予測、治療法の選択、治療に対する応答の監視及び更なる治療を受けさせる患者の選択の決定にも有用である。従って、特異的で、正確で、侵襲性が最小で、技術的に簡単で且つ安価な癌の診断法への要求がある。
【背景技術】
【0002】
例えば、結腸直腸癌(即ち、結腸又は直腸の癌)は、特に重要な種類のヒトの癌の一つである。結腸直腸癌は、米国成人の癌による死亡の第二位の死因である(Landis等、1999, CA Cancer J Clin, 49:8-31)。結腸直腸癌を有する個人の約40%が死亡する。2001年には、135,400症例の新たな結腸直腸癌(98,200症例の結腸癌及び37,200症例の直腸癌)と、その病気による56,700人の死亡(48,000の結腸癌死及び8,800の直腸癌死)があると推計されている(米国癌学会)。他の癌と同様に、これらの率は、改良された診断方法によって減少させることができる。結腸癌を検出するための他の方法があるにもかかわらず、それらの方法は、理想的なものではない。例えば、指による直腸検査(即ち、医師の手による直腸の検査)は、比較的安価であるが、不愉快であり且つ不正確でありうる。便潜血試験(即ち、大便中の血液の検出)は、大便中の血液は、多数の原因があるので、非特異的である。結腸内視鏡検査及びS状結腸鏡検査法(即ち、結腸の、可撓性の直視用機器を用いた直接的検査法)は、両方とも、不愉快であり且つ高価である。二重造影バリウム注腸(即ち、バリウムを充填した結腸のX線撮影)も又、通常放射線専門医により行なわれる高価な手順である。
【0003】
癌を検出し又は治療するための既存の方法の不便さの故に、癌の診断及び治療のための新たな方法が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Landis等、1999, CA Cancer J Clin, 49:8-31
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある面において、本発明は、部分的に、出願人の、特定のヒトゲノムDNA領域であって、ヒトの癌(例えば、結腸癌)由来の組織におけるCpGジヌクレオチド中のシトシンが差次的にメチル化されている当該領域の発見及び該領域の正常組織における非メチル化の発見に基づいている。該領域を、以後、「ビメンチン−メチル化標的領域」(例えば、図45中のSEQ ID NO:45)と称する。本発明の方法は又、部分的に、ヒトの癌に由来する組織におけるビメンチン転写物のレベルが、正常組織におけるビメンチン転写物のレベルより低いという出願人の発見に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一具体例において、この方法は、被験者からの組織試料又は体液試料における、差次的にメチル化されたビメンチンヌクレオチド配列の存在(例えば、ビメンチンメチル化標的領域中)のアッセイを含む。好適な体液には、血液、血清、血漿、血液由来の画分、大便、結腸排出物又は尿が含まれる。一具体例において、この方法は、制限酵素/メチル化感受性PCRを包含する。他の具体例において、この方法は、試料由来のDNAの、非メチル化シトシン塩基(「変換感受性」シトシンとも呼ばれる)を異なるヌクレオチド塩基に変換するがメチル化シトシン塩基は変換しない化学化合物との反応を含む。好適具体例において、この化学化合物は、重亜硫酸ナトリウムであり、これは、非メチル化シトシン塩基をウラシルに変換する。この化合物で変換したDNAを、次いで、この化合物で変換されたDNAテンプレートを、もし試料由来のDNAのCpGジヌクレオチド中のシトシン塩基がメチル化されていれば増幅するプライマーを利用するメチル化感受性ポリメラーゼ連鎖反応(MSP)を利用して増幅する。PCR産物の生成は、被験者が、癌又は前癌性腺腫を有していることを示している。メチル化DNAの存在をアッセイするための他の方法は、当分野で公知である。
【0007】
他の具体例において、この方法は、試料中の減少したレベルのビメンチン転写物のアッセイを包含する。かかるアッセイの例には、ビメンチンのコード配列に由来するプライマーを利用するRT−PCRアッセイが含まれる。このビメンチンcDNA配列は、例えば、NCBI受入れ番号NM_003380において見出すことができる。
【0008】
他の具体例において、本発明は、癌を有する又は有することが疑われる被験者における、癌(例えば、結腸癌)の予後予測のための検出方法を提供する。かかる方法は、被験者に由来する組織試料又は体液中の、メチル化ビメンチンDNA(例えば、ビメンチンメチル化標的領域中)の存在についてのアッセイを含む。ある症例においては、メチル化ビメンチンDNAの血液画分における検出は、進行癌(例えば、進行した結腸癌)を指示するものであるということが予想される。他の症例においては、組織若しくは大便由来の試料又は他の体液由来の試料における、メチル化ビメンチンDNAの検出は、DNAを脱メチル化し、又はビメンチン遺伝子の発現を再活性化する治療剤に応答するであろう癌を指示するものでありうる。
【0009】
他の具体例において、本発明は、被験者の癌(例えば、結腸癌)の状態を経時的に監視する方法を提供する。この方法は、第一の時点で被験者から採った組織試料又は体液及び第二の時点で被験者から採った対応する組織試料又は体液において、メチル化ビメンチンDNAの存在について(例えば、ビメンチンメチル化標的領域で)アッセイすることを含む。第一の時点で採った組織試料又は体液由来のメチル化ビメンチンDNAの非存在及び第二の時点で採った組織試料又は体液におけるメチル化ビメンチンDNAの存在は、癌が進行中であることを示している。第一の時点で採った組織試料又は体液中のメチル化ビメンチンDNAの存在及び第二の時点で採った組織試料又は体液中のメチル化ビメンチンDNAの非存在は、癌が退行していることを示している。
【0010】
他の具体例において、本発明は、癌(例えば、結腸癌)を有し又は有すると疑われる被験者における治療を評価する方法を提供する。この方法は、治療前に被験者から採った組織試料又は体液及び治療中又は治療後に被験者から採った対応する組織試料又は体液において、メチル化ビメンチンDNAの存在について(例えば、ビメンチンメチル化標的領域で)アッセイすることを含む。治療後又は治療中に採った試料中のメチル化ビメンチンDNAのレベルの喪失又は治療前に採った試料中のメチル化ビメンチンDNAのレベルと比較しての減少は、該治療を受けた被験者における癌の退行に対する該治療の正の効果を示している。
【0011】
本発明は又、ビメンチン遺伝子のメチル化状態を検出するためにデザインされたアッセイ(例えば、メチル化感受性PCRアッセイ又はHpaIIアッセイ)における利用のためのオリゴヌクレオチドプライマー配列にも関係している。
【0012】
本発明は又、癌細胞(例えば、結腸癌)の成長を阻害し又は減じる方法をも提供する。この方法は、ビメンチンタンパク質の癌細胞におけるレベルを増加させることを含む。一具体例において、これらの細胞を、ビメンチンタンパク質又は生物学的に活性な同等物又はそれらの断片と、該タンパク質又は断片の取込みを可能にする条件下で接触させる。他の具体例においては、これらの細胞を、ビメンチンタンパク質をコードし且つ癌細胞中で活性なプロモーターを含有する核酸と(該プロモーターは、ビメンチンタンパク質をコードする領域と作動的に結合されている)、該核酸の該癌細胞による取込みを可能にする条件下で接触させる。他の具体例において、この方法は、メチル化ビメンチンDNAの脱メチル化或はサイレンシングを受けたビメンチンプロモーターの再活性化を含む。
【0013】
他の具体例において、この出願は、単離された又は組換えによるビメンチンヌクレオチド配列(SEQ ID NO:2〜7及び45〜50の何れか一つのヌクレオチド配列、並びに該配列の10、15、20、25、50、100又は150塩基対長の断片と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%又は同一であるもの)であって、ビメンチン関連疾患の細胞において差次的にメチル化される当該単離された又は組換えによるビメンチンヌクレオチド配列を提供する。
【0014】
他の具体例において、この出願は、結腸癌を検出する方法であって、a)患者から試料を得ること;及びb)該試料を、ビメンチン、SLC5A8、HLTF、p16及びhMLH1よりなる群から選択する少なくとも2つの遺伝子内の核酸配列のメチル化の存在についてアッセイすることを含み、これらの2つの遺伝子内のヌクレオチド配列のメチル化が結腸癌を示す当該方法を提供する。かかる方法において、この試料は、血液、血清、血漿、血液由来の画分、大便、尿、及び結腸排出物よりなる群から選択する体液である。例えば、体液は、結腸癌を有すると疑われる被験者又は結腸癌を有することが既知の被験者から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aは、CpGジヌクレオチドの位置を、ビメンチン遺伝子(ヌクレオチド1〜6200)の5’ゲノム領域中のバルーンとして示している。この領域の4つのサブドメイン(A〜D)は、結腸癌における異所的メチル化につき試験される。
【図1B】図1Bは、AL133415配列の塩基対56,123〜62,340に対応するビメンチン遺伝子の5’ゲノム配列(SEQ ID NO:51)を示している。
【図2】図2は、ビメンチンが正常な結腸細胞株ではよく発現されるが、結腸癌細胞株では、発現が乏しいというRT−PCRの結果を示している。このビメンチンの発現は、脱メチル化剤5−アザシチジンによって、12の結腸癌細胞株中の9株において誘導されている。
【図3】図3は、30サイクル(上パネル)又は40サイクル(下パネル)のPCR増幅によるC領域内のビメンチンメチル化についてのHpaIIアッセイの結果を示している。これらのPCR反応は、未消化(U)、メチル化感受性制限酵素HpaIIでの消化(H)、又はメチル化に中立な酵素Msp1での消化(M)後に行なわれる。3つの癌でない正常組織(NN1、NN2及びNN3)は、すべてメチル化されていないが、10の結腸癌細胞株全部のうちの9つは、メチル化を示している。
【図4】図4は、10対の正常結腸組織試料/腫瘍結腸組織試料(N1〜10及びT1〜10)のC領域内のビメンチンのメチル化についての、HpaIIによる制限酵素消化後の40サイクルのPCR増幅による、HpaIIアッセイの結果を示している。
【図5】図5は、22対の正常結腸組織試料/腫瘍結腸組織試料(N11〜32及びT11〜32)のC領域内のビメンチンのメチル化についての、HpaIIによる制限酵素消化後の40サイクルのPCR増幅による、HpaIIアッセイの結果を示している。
【図6】図6は、ビメンチン遺伝子の更なる図式描写を示している。B及びC領域内のMS−PCRのためのプライマーの位置を、MS−PCR対1〜5として示してある。
【図7】図7は、ビメンチンのゲノム配列のB及びC領域を部分的にカバーするプライマー対1〜5を利用するMS−PCRの結果を示している。プライマー対1、4及び5は、すべて、40サイクルのMS−PCRによりアッセイした場合、正常結腸組織(Nで示してある)においてビメンチンのメチル化を検出している。対照的に、プライマー対3は、ビメンチン非発現性結腸癌細胞株においてメチル化されるが正常結腸組織又はビメンチン発現性細胞株SW480ではメチル化されない差次的メチル化領域を規定している。
【図8】図8は、プライマー対MS3を利用するMS−PCRの結果を示している。ビメンチンのメチル化は、癌以外の切除術由来の14の正常結腸組織試料(NNで示してある)の何れにおいても、MS3反応を、順次的な40サイクルの反応を2回行なうことにより、PCRの80サイクルまで行なった場合でさえ、検出されていない。
【図9】図9は、10対の正常結腸組織試料/腫瘍結腸組織試料でのC領域におけるビメンチンのメチル化を検出するための、HpaIIアッセイ(上段)の、MSP3を40サイクルで利用するMS−PCR(下段)に対する比較を示している。
【図10】図10は、20対の正常結腸組織試料/腫瘍結腸組織試料(N1〜20及びT1〜20)におけるビメンチンのメチル化を検出するための、MSP3プライマーを40サイクルで利用するMS−PCRを示している。
【図11】図11は、26対の正常結腸組織試料/腫瘍結腸組織試料(N21〜46及びT21〜46)におけるビメンチンのメチル化を検出するための、MSP3プライマーを40サイクルで利用するMS−PCRを示している。
【図12】図12は、一組の結腸癌細胞株におけるビメンチンのメチル化を検出するための、MSP3プライマーを40サイクルで利用するMS−PCRを示している。
【図13】図13は、A、C及びD領域におけるビメンチンヌクレオチド配列を増幅するための、HpaIIアッセイにおけるプライマー配列を示している。A.フォワードPCRプライマー VM−HpaII−679U(SEQ ID NO:8)及びリバースPCRプライマーVM−HpaII−1266D(SEQ ID NO:9)は、HpaIIでの消化後に、A領域内のメチル化されているビメンチン配列を選択的に増幅するが、メチル化されていないビメンチン配列は増幅しない。非メチル化DNAは、HpaIIにより切断され、それ故、PCR増幅されえない。B.フォワードPCRプライマーVM−HpaII−1826U(SEQ ID NO:10)及びリバースPCRプライマーVM−HpaII−2195D(SEQ ID NO:11)は、HpaIIでの消化後に、C領域内のメチル化されたビメンチン配列を選択的に増幅するが、メチル化されていないビメンチン配列は増幅しない。C.フォワードPCRプライマーVM−HpaII−2264U(SEQ ID NO:12)及びリバースPCRプライマーVM−HpaII−2695D(SEQ ID NO:13)は、HpaIIでの消化後に、D領域内のメチル化されたビメンチン配列を選択的に増幅するが、メチル化されていないビメンチン配列は増幅しない。
【図14】図14は、ビメンチンのメチル化を検出するためのMSP−PCRプライマーのセット1〜5の配列を示している。MSP1、MSP1−2、及びMSP3は、二本鎖メチル化ビメンチンDNAの重亜硫酸塩変換されたセンス鎖を増幅するためのプライマーセットであり、フォワードプライマーVIM1374MF(SEQ ID NO:14)及びリバースプライマーVIM1504MR(SEQ ID NO:15);フォワードプライマーVIM1374MF(SEQ ID NO:14)及びリバースプライマーVIM1506MR(SEQ ID NO:18);フォワードプライマーVIM1776MF(SEQ ID NO:23)及びリバースプライマーVIM1982MR(SEQ ID NO:24)を含んでいる。MSP2及びMSP5は、二本鎖メチル化ビメンチンDNAの重亜硫酸塩変換されたアンチセンス鎖を増幅するためのプライマーセットであり、フォワードプライマーVIM1655MF(ASS)(SEQ ID NO:19)及びリバースプライマーVIM1797MR(ASS)(SEQ ID NO:20);フォワードプライマーVIM1935MF(ASS)(SEQ ID NO:27)及びリバースプライマーVIM2094MR(ASS)(SEQ ID NO:28)を含んでいる。下線を付けた配列は、二本鎖非メチル化ビメンチンDNA(UF又はURとして示してある)の重亜硫酸塩変換された配列(センス又はアンチセンス)を増幅するために用いるコントロールプライマーセットであり、フォワードプライマーVIM1368UF(SEQ ID NO:16)及びリバースプライマーVIM1506UR(SEQ ID NO:17);フォワードプライマーVIM1651UF(ASS)(SEQ ID NO:21)及びリバースプライマーVIM1799UR(ASS)(SEQ ID NO:22);フォワードプライマーVIM1771UF(SEQ ID NO:25)及びリバースプライマーVIM1986UR(SEQ ID NO:26);フォワードプライマーVIM1934UF(ASS)(SEQ ID NO:29)及びリバースプライマーVIM2089UR(ASS)(SEQ ID NO:30)を含んでいる。
【図15】図15は、ビメンチンのメチル化を検出するためのMSP−PCRプライマーセット6〜10の配列を示している。MSP6、MSP7、MSP8及びMSP9は、二本鎖メチル化ビメンチンDNAの重亜硫酸塩変換されたセンス配列を増幅するためのプライマーセットであり、フォワードプライマーVIM1655MF(SEQ ID NO:31)及びリバースプライマーVIM1792MR(SEQ ID NO:32);フォワードプライマーVIM1655MF(SEQ ID NO:31)及びリバースプライマーVIM1796MR(SEQ ID NO:35);フォワードプライマーVIM1655MF(SEQ ID NO:31)及びリバースプライマーVIM1804MR(SEQ ID NO:36);フォワードプライマーVIM1843MF(SEQ ID NO:37)及びリバースプライマーVIM1982MR(SEQ ID NO:24)を含んでいる。MSP10は、二本鎖メチル化ビメンチンDNAの重亜硫酸塩変換されたアンチセンス配列を増幅するためのプライマーセットであり、フォワードプライマーVIM1929MF(ASS)(SEQ ID NO:39)及びリバースプライマーVIM2094MR(ASS)(SEQ ID NO:28)を含んでいる。下線を引いた配列は、二本鎖非メチル化ビメンチンDNA(UF又はURと示してある)の重亜硫酸塩変換された配列(センス又はアンチセンス)を増幅するのに利用されるコントロールプライマーであり、フォワードプライマーVIM1651UF(SEQ ID NO:33)及びリバースプライマーVIM1800UR(SEQ ID NO:34);フォワードプライマーVIM1843UR(SEQ ID NO:38)及びリバースプライマーVIM1986UR(SEQ ID NO:26);フォワードプライマーVIM1934UF(ASS)(SEQ ID NO:29)及びリバースプライマーVIM2089UR(ASS)(SEQ ID NO:30)を含んでいる。
【図16】図16は、ビメンチン遺伝子の図式描写を示している。10対のMS−PCRプライマーセットをデザインした(それは、bp1347と2094の間のビメンチンB及びC領域の部分を調べた)。これらのプライマー対により調べられた領域を、図式表示してある。
【図17】図17は、12の癌でない正常試料と12の結腸癌細胞株における、ビメンチンのメチル化の検出のための、3対のプライマーセットMSP1、MSP1−2、及びMSP3を利用するMS−PCRの結果を示している。
【図18】図18は、12の癌でない正常組織と12の結腸癌細胞株における、ビメンチンのメチル化の検出のための、3対のプライマーセットMSP5、MSP6、MSP7、MSP8、MSP9、及びMSP10を利用する、MS−PCRの結果を示している。
【図19】図19は、顕微解剖した異常な凹窩病巣(ACF、「A」で示してある)における、ビメンチンのメチル化の検出のための、2対のプライマーセットMSP3及びMSP1−2を利用する、MS−PCRの結果を示している。
【図20】図20は、ヒトのビメンチンタンパク質のアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を示している。
【図21】図21〜26は、ビメンチンの5’ゲノム領域の決定的配列を与えるものである。各図は、領域A〜Dを包含するビメンチン遺伝子の5’領域に及ぶNCBIヒトゲノムクローンAL133415の塩基対56,822〜58,822に対応する配列を与える。各図は、結腸癌において差次的にメチル化される塩基対57,427〜58,326の領域を太字で示している。その上、各図において、MS−PCRプライマーにより調べられる特殊な配列に下線を引いてある。図21は、AL133415配列(SEQ ID NO:2)の塩基対56,822〜58,822に対応するビメンチンのセンス鎖配列を5’〜3’方向で示している。塩基対57,427〜58,326(SEQ ID NO:45)の、差次的にメチル化された領域は、太字にしてある(図45も参照されたい)。
【図22】図22は、図21に示したビメンチン遺伝子のセンス鎖(SEQ ID NO:3)に由来する、メチル化テンプレートの重亜硫酸塩変換された配列を示している。差次的にメチル化された領域に由来する配列は、太字にしてある塩基対57,427〜58,326(SEQ ID NO:46)である。
【図23】図23は、図21に示したビメンチン遺伝子のセンス鎖に由来する未メチル化テンプレートの重亜硫酸塩変換された配列(SEQ ID NO:4)を示している。この差次的にメチル化された領域に由来する配列は、太字にしてある塩基対57,427〜58,326(SEQ ID NO:47)である。
【図24】図24は、AL133415配列(SEQ ID NO:5)の塩基対56,822〜58,822に対応する、ビメンチンのアンチセンス鎖の配列(3’〜5’)を示している。この差次的にメチル化された領域は、太字にしてある塩基対57,427〜58,326(SEQ ID NO:48)である。
【図25】図25は、図24に示したビメンチン遺伝子のアンチセンス鎖(3’〜5’)に由来するメチル化されたテンプレートの重亜硫酸塩変換された配列(SEQ ID NO:6)を示している。差次的にメチル化された領域に由来する配列は、太字にしてあり、塩基対57,427〜58,326(SEQ ID NO:49)である。
【図26】図26は、図24に示したビメンチン遺伝子のアンチセンス鎖(3’〜5’)に由来する未メチル化テンプレートの重亜硫酸塩変換された配列(SEQ ID NO:7)を示している。差次的にメチル化された領域に由来する配列は、太字にしてあり、塩基対57,427〜58,326(SEQ ID NO:50)である。
【図27】図27は、HpaIIアッセイに便利な部位を有していることにより最初に定義された「A領域」の配列(AL133415の塩基対56799〜57385、SEQ ID NO:40)を示している。この配列は又、図1A及び1Bに示したSEQ ID NO:51のヌクレオチド679〜1266とも呼ばれた。
【図28】図28は、HpaIIアッセイに便利な部位を有していることにより最初に定義された「B領域」の配列(AL133415の塩基対57436〜57781、SEQ ID NO:41)を示している。この配列は又、図1A及び1Bに示したSEQ ID NO:51のヌクレオチド1317〜1661とも呼ばれた。
【図29】図29は、HpaIIアッセイに便利な部位を有していることにより最初に定義された「C領域」の配列(AL133415の塩基対57946〜58315、SEQ ID NO:42)を示している。この配列は又、図1A及び1Bに示したSEQ ID NO:51のヌクレオチド1826〜2195とも呼ばれた。
【図30】図30は、HpaIIアッセイに便利な部位を有していることにより最初に定義された「D領域」の配列(AL133415の塩基対58384〜58815、SEQ ID NO:43)を示している。この配列は又、図1A及び1Bに示したSEQ ID NO:51のヌクレオチド2264〜2695とも呼ばれた。
【図31】図31は、B領域並びにB領域とC領域の間のギャップをカバーする「B’領域」の配列(AL133415の塩基対57436〜57945、SEQ ID NO:44)を示している。この配列は又、図1A及び1Bに示したSEQ ID NO:51のヌクレオチド1317〜1825とも呼ばれた。このB’領域は又、差次的メチル化領域をも包含する。
【図32】図32は、NCBIヒトゲノム配列エントリーAL133415の、塩基対56700〜58800の、ビメンチンの5’ゲノム領域の図式表示を示している。ボックスは、ビメンチンの領域A、B、C及びDを示している。バルーンは、潜在的メチル化の標的であるCpGジヌクレオチドを示している。黒いバルーンは、個体群多型であるCpGを示している。図32は、領域A〜Bを示し、図33〜34は、領域C〜Dを示している。図の下のバーは、種々のメチル化特異的PCR領域により調べられる領域を示している(MSP1〜MSP50と番号付けられている)。これらの図において、MS−PCR反応の第一の結果は、MS−PCRプライマーに次いで示してある。これらの反応物の最も左側のセットは、12の癌でない正常試料におけるMS−PCRの結果であり;陰性の結果は、好適な結果である。これらの反応物の最も右側のセットは、11の結腸癌細胞株のアッセイの結果であり;好適な結果は、陽性反応である。
【図33】図33は、NCBIヒトゲノム配列エントリーAL133415の、塩基対56700〜58800の、ビメンチンの5’ゲノム領域の図式表示を示している。ボックスは、ビメンチンの領域A、B、C及びDを示している。バルーンは、潜在的メチル化の標的であるCpGジヌクレオチドを示している。黒いバルーンは、個体群多型であるCpGを示している。図32は、領域A〜Bを示し、図33〜34は、領域C〜Dを示している。図の下のバーは、種々のメチル化特異的PCR領域により調べられる領域を示している(MSP1〜MSP50と番号付けられている)。これらの図において、MS−PCR反応の第一の結果は、MS−PCRプライマーに次いで示してある。これらの反応物の最も左側のセットは、12の癌でない正常試料におけるMS−PCRの結果であり;陰性の結果は、好適な結果である。これらの反応物の最も右側のセットは、11の結腸癌細胞株のアッセイの結果であり;好適な結果は、陽性反応である。
【図34】図34は、NCBIヒトゲノム配列エントリーAL133415の、塩基対56700〜58800の、ビメンチンの5’ゲノム領域の図式表示を示している。ボックスは、ビメンチンの領域A、B、C及びDを示している。バルーンは、潜在的メチル化の標的であるCpGジヌクレオチドを示している。黒いバルーンは、個体群多型であるCpGを示している。図32は、領域A〜Bを示し、図33〜34は、領域C〜Dを示している。図の下のバーは、種々のメチル化特異的PCR領域により調べられる領域を示している(MSP1〜MSP50と番号付けられている)。これらの図において、MS−PCR反応の第一の結果は、MS−PCRプライマーに次いで示してある。これらの反応物の最も左側のセットは、12の癌でない正常試料におけるMS−PCRの結果であり;陰性の結果は、好適な結果である。これらの反応物の最も右側のセットは、11の結腸癌細胞株のアッセイの結果であり;好適な結果は、陽性反応である。
【図35】図35は、図32〜34にまとめたMS−PCR反応のためのプライマー配列(MSP1〜MSP50)を与える。MFは、フォワードプライマーを示し、MRは、リバースプライマーを示している。プライマーは、センスゲノム鎖の重亜硫酸塩変換された配列を増幅すると仮定されている。アンチセンスゲノム鎖の重亜硫酸塩変換された配列を増幅するプライマーは、(ASS)により示してある。この表は又、増幅生成物に対応するゲノム位置(クローンAL133415の塩基対ナンバリングシステムに対するもの)をも与える。この表は又、増幅された断片の長さをも与える。影を付けたプライマーは、最良の及び好適な反応を与える。SEQ ID NO:14、15、18、19、20、23、24、27、28、31、32、36、37、39及び52〜72を、この図中に見出すことができる。
【図36】図36は、種々のMS−PCRアッセイの技術的な感度及び特異性を示している。左奥には、癌でない正常結腸組織について行なった45又は90サイクルのMS−PCR反応の結果を示してある。90サイクルの反応は、45サイクルPCR反応物からアリコートを採って、それを新鮮なPCR反応物中に希釈して、更なる45サイクルを反復することにより行なった。これらの示した反応物につき、MS−PCR反応は、正常組織についての90サイクル以下のPCRにおいて偽陽性を検出しなかった。陽性対照の結腸癌細胞株を、すぐ右に並べて示してある。右奥には、種々のMS−PCR反応の技術的な感度のアッセイを示してある。中央の及び最も右側の反応物のセットは、Vaco5(ビメンチンのメチル化を有する細胞株)由来のDNAについて行なったMS−PCRの希釈シリーズを示している。投入メチル化Vaco5DNAの100ピコグラムのレベルまで陽性反応が得られている。
【図37】図37は、更なるプライマーセットについての種々のMS−PCRアッセイの技術的な感度及び特異性を示している。左欄は、45サイクルのMS−PCRでの、11の結腸癌細胞株のパネルのアッセイの結果を示している。右側の結果は、一群の癌でない正常組織の45及び90サイクルのMS−PCR反応を評価する欄を示している。次は、候補の反応物を増大するVaco5DNA希釈物に対してアッセイする希釈シリーズのアッセイを示す2つの欄を示している。最良の希釈物(例えば、VIM−MSP50M)は、殆どの結腸癌細胞株の検出に関する高度の技術的感度を示し、正常結腸についての低い陽性率、及び投入DNAの50ピコグラムまでのVaco5DNAの希釈物の検出に関する高度の感度を示している。右側に示したこれら2つの希釈シリーズは、それらが、予め重亜硫酸塩処理した正常及びVaco5DNAを混合することにより為された(中央欄)か、先ずVaco5及び正常DNAを混合し;該混合物を希釈してから;該希釈混合物を重亜硫酸塩処理することにより行なった(最右欄)かどうかで異なっている。
【図38】図38は、正常及び腫瘍の対の、種々のビメンチンMS−PCR反応によるアッセイからの一次データを示している。
【図39】図39は、正常な結腸及び癌の対、結腸腺腫、及び結腸癌細胞株の、種々のMS−PCR反応によるアッセイからの一次データを示している。
【図40】図40は、結腸癌細胞株及び癌でない正常な結腸試料の、種々のMS−PCR反応によるアッセイからの一次データを示している。
【図41】図41は、図37を補って、更に、ビメンチンDNAメチル化についての種々のMS−PCRアッセイの技術的感度を示している。2つのプライマーセット(MSP29M及びMSP50M)を試験した。
【図42】図42は、図38を補って、更に、ビメンチンDNAメチル化についての種々のMS−PCRアッセイの臨床的感度を示している。この一次データは、正常及び腫瘍の対のアッセイから得られた。3つのプライマーセット(MSP29M、MSP47M、及びMSP50M)を利用した。
【図43】図43は、図39及び40を補って、更に、ビメンチンDNAメチル化についての種々のMS−PCRアッセイの臨床的感度を示している。この一次データは、結腸癌細胞株、癌でない正常な結腸試料(N.C.N)、結腸の正常/腫瘍対、及び結腸腺腫のアッセイから得られた。3つのプライマーセット(MSP29M、MSP47M、及びMSP50M)を利用した。
【図44】図44は、MSP29、MSP47、及びMSP50を利用するMS−PCRからの生のデータを与える。このデータは、細胞株N/T対、及び結腸腺腫試料それぞれについての3つの表で示されている。メチル化試料は、赤く暗号化されてMと標識されているが、非メチル化試料は、緑色に暗号化されてUと標識されている。V−MSP29、VMSP−47、及びV−MSP50が、ビメンチンプライマーである。H−MSP5は、比較のためのコントロールプライマー(HLTF−MSP5)である。
【図45】図45は、GenBank受入れ番号AL133415の塩基対57,427〜58,326に対応するヒトビメンチン遺伝子の5’ゲノム配列:センス鎖(SEQ ID NO:45)を示している。
【図46】図46は、GenBank受入れ番号AL133415の塩基対57,427〜58,326に対応するヒトビメンチン遺伝子の5’ゲノム配列:センス鎖(重亜硫酸塩変換/メチル化したもの)(SEQ ID NO:46)を示している。
【図47】図47は、GenBank受入れ番号AL133415の塩基対57,427〜58,326に対応するヒトビメンチン遺伝子の5’ゲノム配列:センス鎖(重亜硫酸塩変換し/メチル化してないもの)(SEQ ID NO:47)を示している。
【図48】図48は、GenBank受入れ番号AL133415の塩基対57,427〜58,326に対応するヒトビメンチン遺伝子の5’ゲノム配列:アンチセンス鎖(SEQ ID NO:48)を示している。
【図49】図49は、GenBank受入れ番号AL133415の塩基対57,427〜58,326に対応するヒトビメンチン遺伝子の5’ゲノム配列:アンチセンス鎖(重亜硫酸塩変換/メチル化したもの)(SEQ ID NO:49)を示している。
【図50】図50は、GenBank受入れ番号AL133415の塩基対57,427〜58,326に対応するヒトビメンチン遺伝子の5’ゲノム配列:アンチセンス鎖(重亜硫酸塩変換し/メチル化してないもの)(SEQ ID NO:50)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
I.定義
便宜のために、明細書、実施例及び添付の請求の範囲で用いた幾らかの用語を、ここに集めた。別途規定しない限り、ここで用いるすべての技術及び科学用語は、この発明が属する分野の当業者に普通に理解されているものと同じ意味を有する。
【0017】
本願では、単数表現のものであっても、複数の場合をも指すものとする。例えば、「エレメント」は、1つのエレメント又は1つより多くのエレメントを意味する。
【0018】
用語「腺腫」、「結腸腺腫」及び「ポリープ」は、ここでは、結腸の任意の前癌性新生物を記載するために用いる。
【0019】
用語「結腸」は、ここで用いる場合、右結腸(盲腸を含む)、横行結腸、左結腸、及び直腸を包含することを意図している。
【0020】
用語「結腸直腸癌」及び「結腸癌」は、ここでは、結腸(上記のように、直腸を含む)の任意の癌性新生物を指すために交換可能に用いる。
【0021】
用語「血液由来の画分」は、ここでは、全血液の構成成分を指す。全血液は、液体部分(即ち、血漿)及び固体部分(即ち、血液細胞)を含む。血液の液体部分及び固体部分は、各々、多数の成分例えば、血漿中の種々のタンパク質又は固体部分の種々bの細胞型よりなる。これらの成分の一つ又はこれらの成分の何れかの混合物は、全血液中で見出される少なくとも一つの成分が失われているならば、血液由来の画分である。
【0022】
「細胞」、「宿主細胞」又は「組換え宿主細胞」は、ここでは、交換可能に用いる用語である。かかる用語は、特定の主題の細胞を指すだけでなく、かかる細胞の子孫又は潜在的子孫をも指すということは理解される。ある種の改変は、突然変異又は環境の影響のために続く世代で起こりうるので、かかる子孫は、実際は、親細胞と同一でないかもしれないが、やはり、ここで用いる場合、この用語の範囲に含まれる。
【0023】
用語「化合物」、「試験化合物」、「薬剤」及び「分子」は、ここでは、交換可能に用いて、ペプチド、核酸、炭水化物、小型有機分子、天然物抽出物ライブラリー、及び任意の他の分子(化学物質、金属、及び有機金属化合物を含むが、これらに限られない)を含むことを意味する(但し、これらに限られない)。
【0024】
用語「化合物変換されたDNA」は、ここでは、DNA中の非メチル化C塩基を異なるヌクレオチド塩基に変換する化学化合物で処理し又は該化合物と反応させたDNAを指す。例えば、一つのかかる化合物は、重亜硫酸ナトリウムであり、これは、非メチル化CをUに変換する。もし変換感受性シトシンを含むDNAを重亜硫酸ナトリウムで処理したならば、この化合物変換されたDNAは、Cの代わりにUを含むであろう。もし重亜硫酸ナトリウムで処理したDNAがメチルシトシンのみを含むならば、その化合物変換されたDNAは、メチルシトシンの代わりにウラシルを含まないであろう。
【0025】
用語「脱メチル化剤」は、ここで用いる場合、該剤での処理に際して、メチル化によるサイレンシングを受けた標的遺伝子の活性及び/又は遺伝子発現を回復する薬剤を指す。かかる薬剤の例には、制限はしないが、5−アザシチジン及び5−アザ−2’−デオキシシチジンが含まれる。
【0026】
ここで用いる場合、用語「遺伝子発現」又は「タンパク質発現」は、試料中に存在する遺伝子転写物又はタンパク質の量に関係する任意の情報、並びに、遺伝子又はタンパク質が生成され又は蓄積し又は分解される速度に関する情報(例えば、レポーター遺伝子のデータ、核流出実験からのデータ、パルスチェースデータなど)を含む。ある種のデータは、遺伝子及びタンパク質発現の両方に関係していると見ることができる。例えば、細胞中のタンパク質レベルは、タンパク質のレベル並びに転写のレベルを反映しており、かかるデータは、句「遺伝子又はタンパク質発現の情報」に含まれるべきものである。かかる情報は、細胞当たりの量の形態、コントロール遺伝子又はタンパク質に対する量、ユニットレス測定などで与えられうる。用語「情報」は、如何なる特定の表現手段に限られるものではなく、適切な情報を与える任意の表現を意味することを意図している。用語「発現レベル」は、遺伝子転写物の蓄積又はタンパク質の蓄積又はタンパク質合成速度などを指向するものであっても、遺伝子又はタンパク質発現データに反映され又はそれから導き出せる質を指している。
【0027】
用語「検出」は、ここで用いる場合、生物学的試料中の、マーカー、又はマーカーの変化(例えば、マーカーのメチル化状態の変化など)を観察する任意の方法を指す(マーカー又はマーカーの変化が現実に検出されるか否かにかかわらず)。換言すれば、試料をマーカー又はマーカーの変化についてプローブ検出する行為は、たとえマーカーが存在しないと測定され又は感度レベルより低いと測定されたとしても、「検出」である。検出は、定量的、半定量的又は非定量的観察であってよい。
【0028】
用語「差次的にメチル化されたビメンチンヌクレオチド配列」は、ビメンチン関連新生物においてメチル化されていることが見出されるビメンチンヌクレオチド配列の領域、例えば結腸癌組織又は細胞株においてメチル化されていることが見出されるが正常組織又は細胞株においてはメチル化されていないビメンチンヌクレオチド配列の領域を指す。例えば、図45は、NCBI AL133415配列(SEQ ID NO:45)の塩基対57427〜58326に対応する差次的にメチル化されるビメンチン領域を与える。この配列は、主として、B及びC領域内にある。
【0029】
「発現ベクター」は、所望のタンパク質をコードするDNAを発現させるために用いられる複製可能なDNA構築物を指し、これは、(1)遺伝子発現における調節の役割を有する遺伝子エレメント例えばプロモーター、オペレーター又はエンハンサー、(2)これらに作動的に結合された所望のタンパク質(本件では、ビメンチンタンパク質)をコードして、mRNAに転写されてタンパク質に翻訳されるDNA配列、及び(3)適当な転写及び翻訳の開始及び終結用配列のアセンブリを含む転写ユニットを含む。プロモーター及び他の調節エレメントの選択は、一般に、宿主細胞によって変化する。一般に、組換えDNA技術において有用なベクターは、しばしば、「プラスミド」の形態であり、これは、環状二本鎖のDNAループであって、それらのベクター型では、染色体に結合していない。本明細書においては、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドが最も一般的に用いられるベクターの形態であるので、交換可能に用いる。しかしながら、この発明は、かかる他の形態の発現ベクターであって同等の機能を果すものを包含することを意図しており、それらは、以下で公知となろう。
【0030】
これらの発現ベクターにおいて、転写又は翻訳を制御する調節エレメントは、一般に、哺乳動物、微生物、ウイルス又は昆虫遺伝子に由来するものであってよい。宿主において複製する能力(通常、複製起点により与えられる)及びトランスフォーマントの認識を容易にする選択用遺伝子を追加的に組み込むことができる。ウイルス例えばレトロウイルス、アデノウイルスなどに由来するベクターを利用することができる。
【0031】
用語「健康な」、「正常な」及び「非新生物の」は、ここでは、ビメンチンと関係する新生物形成(例えば、メチル化によるビメンチン遺伝子発現のサイレンシングと関係する新生物)などの病気でない被験者又は特定の細胞若しくは組織を指すために交換可能に用いる。これらの用語は、ここでは、しばしば、結腸の組織及び細胞に関して用いられる。従って、この出願の目的に関して、重い心臓病を有しているが、ビメンチンサイレンシングに関係した病気を有しない患者は、「健康な」者と呼ばれる。
【0032】
「ビメンチンと関係した新生物」は、ビメンチン遺伝子の減少した発現又は無発現と関係した新生物を指す。ビメンチンと関係した新生物の例には、胃腸内新生物及び結腸新生物などが含まれる。
【0033】
「ビメンチン関連増殖性疾患」は、ビメンチン遺伝子の減少した発現又は過剰発現と関連した病気を指す。
【0034】
「ビメンチンメチル化標的領域」は、ここで用いる場合、差次的にメチル化されることが見出されているビメンチンの領域を指す。例えば、図45は、ある一定の配列が差次的にメチル化される(例えば、SEQ ID NO:45)ビメンチン領域を開示している。
【0035】
「ビメンチンヌクレオチド配列」又は「ビメンチン核酸配列」は、ここで用いる場合、SEQ ID NO:2〜7に示したビメンチンのゲノム配列及びそれらの断片を指す。
【0036】
「ビメンチンのサイレンシングと関連する疾患」は、ここで用いる場合、ビメンチン関連新生物を包含する。
【0037】
「相同性」又は「同一性」又は「類似性」は、2つのペプチド間の又は2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性及び同一性は、各々、比較の目的のために整列させうる各配列中の一つの位置を比較することにより決定される。比較した配列中の同等の位置が、同じ塩基又はアミノ酸により占められていたならば、それらの分子は、その位置で同一であり;同等の部位が同じ又は類似のアミノ酸残基(例えば、立体的及び/又は電子的性質が類似している)により占められていたならば、それらの分子は、その位置で相同(類似)であるいうことができる。相同性/類似性又は同一性のパーセンテージによる表現は、比較した配列に共有される位置の同一又は類似のアミノ酸の数の関数を指す。「無関係」又は「相同でない」配列は、本発明の配列と、40%未満の、好ましくは25%未満の同一性を共有する。2つの配列の比較において、残基(アミノ酸又は核酸)の非存在又は余分な残基の存在も又、同一性及び相同性/類似性を減少させる。
【0038】
用語「相同性」は、類似の機能又はモチーフを有する遺伝子又はタンパク質を同定するのに用いられる配列類似性の数学に基づく比較を記載する。本発明の核酸及びタンパク質配列は、例えば、他のファミリーメンバー、関連配列又は同族体を同定するために、公開されたデータベースに対する検索を実行するための「問合わせ配列」として利用することができる。かかる検索は、Altschul等、(1990) J Mol.Biol. 215:403-10のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を利用して行なうことができる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム(スコア=100、ワードレングス=12)を用いて行なって、この発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム(スコア=50、ワードレングス=3)を用いて行なって、この発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的のためにギャップ入りのアラインメントを得るために、GappedBLASTを、Altschul等、(1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載されたように利用することができる。BLAST及びGappedBLASTプログラムを利用する場合には、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びBLAST)のデフォルトパラメーターを利用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov を参照されたい。
【0039】
ここで用いる場合、「同一性」は、配列を、配列マッチングが最大になるように整列させた場合(即ち、ギャップ及び挿入を考慮する)に、2つ以上の配列における対応する位置の同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基のパーセンテージを意味する。同一性は、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M.編、Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W.編、Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M.及びGriffin, H.G.編、Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;及びSequence Analysis Primer, Gribskov, M.及びDevereux, J.編、M Stockton Press, New York, 1991;及びCarillo, H.及びLipman, D., SIAM J.Applied Math., 48:1073, 1988に記載されたものを含む(但し、これらに限られない)公知の方法によって、容易に計算することができる。同一性を決定する方法は、試験した配列の間の最大のマッチングを与えるようにデザインされる。その上、同一性を決定する方法は、公衆が利用可能なコンピュータープログラム中に編集されている。2つの配列の間の同一性を決定するコンピュータープログラムによる方法は、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J.等、Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN及びFASTA(Altschul, S.F.等、J.Molec.Biol. 215:403-410(1990))及びAltschul等、Nuc. Acids Res. 25:3389-3402(1997))を含むが、これらに、限られない。BLAST Xプログラムは、NCBI及び他の供給者(BLAST Manual, Altschul, S.等、NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894;Altschul, S.等、J. Mol. Biol. 215:403-410(1990))から公衆に利用可能となっている。周知のSmith Watermanアルゴリズムを利用して同一性を決定することもできる。
【0040】
用語「含む」は、ここで用いる場合、句「含むが、〜に限られない」を意味し、該句と交換可能に用いられる。
【0041】
用語「単離された」は、核酸例えばDNA又はRNAに関してここで用いる場合、天然に存在しない形態の分子を指す。その上、「単離された核酸」は、天然には断片として存在せず且つ自然状態では見出されない核酸断片を含むことを意味する。
【0042】
用語「メチル化感受性PCR」(即ち、MSP)は、ここでは、化合物で変換されたテンプレート配列の増幅を行なうポリメラーゼ連鎖反応を指す。2つのプライマーセットを、MSPで用いるためにデザインする。各プライマーセットは、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含む。メチル化特異的プライマーと呼ばれる1セットのプライマー(下記参照)は、もしビメンチンDNA中のCpGジヌクレオチド中のC塩基がメチル化されているなら、化合物で変換されたテンプレート配列を増幅するであろう。非メチル化特異的プライマーと呼ばれる他のプライマーセット(下記参照)は、ビメンチンDNA中のCpGジヌクレオチド中のC塩基がメチル化されていないならば、化合物で変換されたテンプレート配列を増幅するであろう。
【0043】
ここで用いる場合、用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)及び適宜リボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを指す。この用語は又、同等物として、ヌクレオチド類似体から作られるRNA又はDNAの類似体をも包含し、記載した具体例に適用可能であれば、一本鎖(センス又はアンチセンスなど)及び二本鎖ポリヌクレオチドをも包含すると理解されるべきである。
【0044】
「作動的に結合された」は、2つのDNA領域間の関係を記載する場合には、単に、それらが互いに機能的に関係していることを意味している。例えば、プロモーター又は他の転写調節配列は、もしコード配列の転写を制御するならば、該コード配列に作動的に結合される。
【0045】
用語「又は」は、ここでは、用語「及び/又は」を意味するように用いられ、該用語と交換可能に用いられる(文脈的に明らかに違う場合を除く)。
【0046】
用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、ここでは、交換可能に用いられる。
【0047】
「試料」は、分子マーカー又は分子マーカー例えばメチル化状態の変化の検出のために得られ又は調製される任意の物質を包含し、又は分子マーカー若しくは分子マーカーの変化の検出の目的のために検出試薬若しくは検出装置と接触される任意の物質を包含する。
【0048】
「被験者」は、任意の関心ある生物体、一般には哺乳動物被験者例えばマウス好ましくはヒトの被験者である。
【0049】
ここで用いる場合、用語「特異的にハイブリダイズする」は、この発明の核酸プローブ/プライマーの、標的配列、又はその相補鎖、又はその天然の変異体の少なくとも12、15、20、25、30、35、40、45、50又は100個の連続するヌクレオチドにハイブリダイズする能力を指し、それで、標的遺伝子以外の細胞性核酸(例えば、mRNA又はゲノムDNA)に対する15%未満の、好ましくは10%未満の、一層好ましくは5%未満のバックグラウンドハイブリダイゼーションを有する当該能力を指す。様々なハイブリダイゼーション条件を利用して、特異的ハイブリダイゼーションを検出することができ、ストリンジェンシーは、主に、ハイブリダイゼーションアッセイの洗浄段階により決定される。一般に、高温及び低塩濃度は、高いストリンジェンシーを与え、低温及び高塩濃度は、低いストリンジェンシーを与える。低いストリンジェンシーでのハイブリダイゼーションは、例えば、約2.0×SSCによる50℃での洗浄により達成され、高いストリンジェンシーは、約0.2×SSCによる50℃での洗浄により達成される。更なるストリンジェンシーの記載は、下記に与える。
【0050】
ポリペプチドに適用する場合、用語「実質的な配列同一性」は、2つのペプチド配列がデフォルトギャップを利用するプログラムGAP又はBESTFITなどによって最適に整列させたときに、少なくとも90パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも95パーセントの配列同一性、一層好ましくは少なくとも99パーセントの配列同一性又はそれより高い配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なっている。例えば、類似の化学的特性例えば電荷又は極性を有するアミノ酸の置換が、タンパク質の性質に影響することはありそうにない。例には、アスパラギンに対するグルタミン又はアスパラギン酸に対するグルタミン酸が含まれる。
【0051】
ここで用いる場合、用語「導入遺伝子」は、それを導入されるトランスジェニック動物又は細胞にとって部分的に又は完全に異質(即ち、外来性)であるか、又は該動物又は細胞の内因性遺伝子にとって同質であるが、該動物のゲノムに該ゲノムを変化させるような仕方(例えば、それは、天然遺伝子とは異なる位置に挿入され又はその挿入がノックアウトを生じるような仕方)で挿入されるようにデザインされ又は挿入されている核酸配列(例えば、ビメンチンポリペプチドをコードする)を意味する。ビメンチン導入遺伝子は、少なくとも一つの転写調節配列及び任意の他の核酸例えばイントロン(選択した核酸の最適な発現に必要でありうる)を含むことができる。ビメンチン導入遺伝子は、ビメンチンヌクレオチド(SEQ ID NO:2)又はその断片を含む。
【0052】
II.概観
ある面において、この発明は、患者が、結腸新生物を有することがありそうであるか、ありそうもないかどうかを決定する方法に関係する。結腸新生物は、結腸内に位置し、又は結腸に由来する、任意の癌性又は前癌性の増殖物である。結腸は、腸管の一部であり、約3フィート長であって、小腸の最後から直腸に至る。横断面で見ると、結腸は、消化された物質が通過する内腔と呼ばれる内部空間を囲む同心環状に配置された4つの識別可能な層からなっている。内腔から外側に向かって順に、これらの層は、粘膜、粘膜下組織、筋層及び漿膜下層と呼ばれている。この粘膜は、上皮層(内腔に隣接する細胞)、基底膜、固有層及び粘膜筋板を含んでいる。一般に、結腸の「壁」は、粘膜下組織及び該組織の外側の層を指すことが意図されている。「裏打ち」は、この粘膜である。
【0053】
前癌性結腸新生物は、腺腫又は腺腫性ポリープと呼ばれる。腺腫は、典型的には、結腸の裏打ち上の小さいマシュルーム様又はイボ様増殖物であり、結腸壁に侵入しない。腺腫は、結腸内視鏡又は可撓性のS字結腸鏡などの装置により見ることができる。幾つかの研究は、腺腫のスクリーニング及び除去を受けた患者は、結腸癌による死亡率が低下することを示した。これ及び他の理由の故に、一般に、腺腫が結腸癌の大部分の真性前駆体であるということは受け入れられている。
【0054】
結腸新生物が結腸の基底膜に侵入する場合は、それは、結腸癌と考えられる(本願では、用語「結腸癌」を用いるので)。結腸癌の記載において、この明細書は、一般に、いわゆる「Dukes」結腸癌ステージシステムに従う。癌を記載する特徴は、一般に、認識可能なステージを記載するのに用いられる特定の用語より一層重要である。最も広く用いられているステージシステムは、一般に、次の特徴の少なくとも一つを利用する:腫瘍の結腸壁中への貫入の程度(一層大きい貫入は、一般に、一層危険な腫瘍と相関する);腫瘍の結腸壁を通っての他の近隣組織への侵入の程度(一層大きい侵入は、一般に、一層危険な腫瘍と相関する);腫瘍の局所リンパ節への侵入の程度(一層大きい侵入は、一般に、一層危険な腫瘍と相関する);及び一層遠い組織(例えば、肝臓)への転移性侵入の程度(一層大きい転移性の侵入は、一般に、一層危険な病気ステージと相関する)。
【0055】
「Dukes A」及び「Dukes B」の結腸癌は、結腸壁に侵入したが他の組織には広がっていない新生物である。Dukes A の結腸癌は、粘膜下組織を超えて侵入してない癌である。Dukes B の結腸癌は、2つの群Dukes B1と Dukes B2に細分される。「Dukes B1」結腸癌は、筋層まで侵入しているがそれを通過してない新生物である。Dukes B2結腸癌は、筋層を完全に破っている癌である。5年間にわたって、Dukes Aの癌の外科手術(即ち、患部組織の切除)を受けた患者は、90%を超える生存率を有している。同じ期間にわたって、Dukes B1及びDukes B2の癌の外科手術を受けた患者は、それぞれ、約85%及び75%の生存率を有している。Dukes A、B1及びB2の癌は、T1、T2及びT3〜T4の癌とも呼ばれる。
【0056】
「Dukes C」結腸癌は、局所リンパ節例えば消化管のリンパ節まで広がった癌である。外科治療だけを受けたDukes C の癌患者は、5年にわたる35%の生存率を有するが、この生存率は、化学療法を受けた患者では60%まで増加する。
【0057】
「Dukes D」結腸癌は、他の器官に転移した癌である。肝臓は、転移性結腸癌が見出される最も一般的な臓器である。Dukes D結腸癌の患者は、治療養生法の如何によらず、5年にわたる5%未満の生存率を有する。
【0058】
一般に、結腸新生物は、染色体不安定性、ミクロサテライト不安定性、及びCpGアイランドメチレーター表現型(CIMP)と呼ばれる少なくとも3つの異なる経路の1つによって発達する。幾らかの重複はあるが、これらの経路は、幾分異なる生物学的挙動を与える傾向がある。腫瘍の発達の経路、関連する標的遺伝子、及び遺伝的不安定の根底にある機構の理解によって、種々の型の結腸新生物を検出して治療するためのストラテジーを実行することが可能である。
【0059】
この出願は、少なくとも部分的に、ある種の標的遺伝子は、標的遺伝子の5’隣接又はプロモーター領域内のCpGアイランドの差次的メチル化によって、サイレンシング又は不活性化することができるという認識に基づいている。CpGアイランドは、DNA配列中のシトシン−グアニン残基のクラスターであり、これは、我々のゲノムにおいて、約半分の遺伝子の5’隣接領域又はプロモーター領域内に顕著に表れる。特に、この出願は、少なくとも部分的に、ビメンチンヌクレオチド配列の差次的メチル化は結腸新生物を示すことができるという認識に基づいている。一面において、この出願は、ビメンチン遺伝子が、癌細胞(例えば、結腸新生物)におけるメチル化及び後成的遺伝子サイレンシングの一般的標的でありえて、候補の腫瘍抑制遺伝子として機能しうることを開示する。
【0060】
ビメンチンは、細胞質の中間径フィラメント(IF)を形成する細胞骨格タンパク質の一つである。細胞骨格は、マイクロフィラメント、微小管、及び中間径フィラメント3つの異なるクラスからなる。中間径フィラメントは、高等真核生物の細胞骨格の腫瘍成分である。ビメンチンは、繊維芽細胞及び内皮細胞などの間充織細胞に特徴的なIFタンパク質である(例えば、Evans, 1998, BioEssays, 20:79-86参照)。ビメンチンの発現は、発生において調節され、これは、このタンパク質の細胞内の足場としての役割以外の重要な機能を示唆している。ビメンチンは、c−fos、fra1、CREB及びc−junなどのある種の転写因子のDNA結合領域と構造的配列類似性を共有しており、これは、ビメンチンの調節的役割を更に示唆している(例えば、Capetanaki等、1990, Oncogene, 5:645-655参照)。最近、ビメンチンが、サイトゾルホスホリパーゼA2の機能的核周囲アダプターとして作用するということが示され、これは、プロスタグランジンの生合成の調節におけるビメンチンIFの役割を示唆している(例えば、Murakami等、2000, Biochem Biophys Acta, 1488:159-66参照)。幾つかのタンパク質は、ビメンチンとの幾らかの相互作用を有するとして報告されている:例えば 1)フィラメント結合タンパク質例えばプレクチン及びIAF−300(Svitkina等、1996, J Cell Biol, 135:991-1007;Yang等、1985, J Cell Biol, 100:620-631);2)シャペロンタンパク質例えばHsc70及びアルファ−クリスタリン(Lee等、1995, J Cell Biol, 57:150-162;Nicholl等、1994, EMBO J, 13:945-953);3)キナーゼ例えばプロテインキナーゼC(PKC)、cGMPキナーゼ及びYesキナーゼ(Murti等、1992, Exp Cell Res, 202:36-44;Owen等、1996, Exp Cell Res, 225:366-373;Pryzwansky等、1995, Blood, 85:222-230;Ciesielski-Treska等、1996, Eur J Cell Biol, 68:369-376)。加えて、ビメンチンの14−3−3タンパク質との会合を、ホスファターゼインヒビターカリクレインAによる処理により誘導することができる(Tzivion等、2000, J Biol Chem, 275:29772-8)。14−3−3タンパク質は、それらの標的に、該標的タンパク質上に存在する特異的なセリン/スレオニンリン酸化モチーフによって結合する。この結合が、シグナル変換及び細胞周期の制御に関与する様々なキータンパク質のリン酸化依存性の調節において決定的なステップであることはありそうなことである。更に、Cdc42H及びRac1 GTPアーゼ(2つのRhoファミリーメンバー)は、チロシンリン酸化事象を含むビメンチンIFの組織化を制御することができるということが示されている。例えば、活性なCdc42H及びRac1の発現は、核周囲の崩壊を示すIFネットワークの再編成へと導いた(Meriane等、2000, J Biol Chem, 275:33046-52)。
【0061】
上記のように、結腸新生物の初期の検出は、適当な介入と共に、患者の生存率の増加のために重要である。現在の結腸新生物をスクリーニングするためのシステムは、特異性及び/又は感度の欠如(例えば、便潜血試験、可撓性S字結腸鏡検査)又は高いコスト及び医用資源(例えば、結腸鏡検査)の集中的利用を含む様々な理由の故に、不十分なものである。結腸新生物の検出のための別のシステムは、広範な他の臨床環境でも有用であろう。例えば、結腸癌の外科手術及び/又は薬物療法を受ける患者は、再発を経験しうる。かかる患者が、再発した結腸新生物を有するかどうかを測定する別のシステムを有することは有利であろう。更なる例として、別の診断システムは、結腸新生物を有することが知られた患者における結腸新生物の増減又は残存の監視を容易にするであろう。化学療法を受ける患者を監視して、該両方の効力を評価することができる。
【0062】
III.ビメンチンの核酸、ポリペプチド、及び抗体
本発明は、少なくとも部分的に、ビメンチンのヌクレオチド配列は、ある種のビメンチン関連新生物例えば結腸新生物において、差次的にメチル化されるという観察に基づいている。一面において、この出願は、ビメンチン関連新生物において差次的にメチル化されるある領域を有するビメンチンのヌクレオチド配列例えばSEQ ID NO:2及び45並びにそれらの断片を開示する。従って、一具体例において、この出願は、差次的にメチル化された核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%同一である単離された又は組換えにより生成されたヌクレオチド配列を提供する(ここに、差次的メチル化核酸配列の何れか一つにおけるメチル化の検出は、ビメンチン関連新生物例えば結腸新生物を示す)。当業者は、SEQ ID NO:2及び45並びにそれらの変異体と相補的なビメンチン核酸配列も又、この発明の範囲内にあることを認めるであろう。かかる変異体ヌクレオチド配列は、少なくとも1ヌクレオチドの置換、付加又は欠失により異なる配列例えばアレル変異体を包含する。
【0063】
更に別の具体例において、ビメンチンヌクレオチド配列は又、高度にストリンジェントな条件下で、SEQ ID NO:2又は45に示したヌクレオチド配列並びにそれらの断片とハイブリダイズするヌクレオチド配列をも包含する。上記のように、当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適当なストリンジェンシー条件が変化しうることを容易に理解するであろう。例えば、ハイブリダイゼーションを、6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)で、約45℃で行なってから、2.0×SSCで、50℃での洗浄を行なうことができる。例えば、洗浄ステップでの塩濃度は、約2.0×SSC(50℃)の低ストリンジェンシーから約0.2×SSC(50℃)の高ストリンジェンシーから選択することができる。加えて、洗浄ステップの温度は、室温(約22℃)の低ストリンジェンシー条件から約65℃の高ストリンジェンシー条件まで増大させることができる。温度と塩の両方を変えることもできるし、又は温度若しくは塩濃度を一定に維持しつつ他の変数を変えることもできる。一具体例において、この発明は、6×SSC(室温)の低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸(ハイブリダイズ後、室温で2×SSCで洗浄する)を提供する。
【0064】
更に別の面において、この出願は、SEQ ID NO:2若しくは45又はこれらの断片のヌクレオチド配列のメチル化形態(該配列中に存在するCpGアイランドのシトシン塩基はメチル化されている)を提供する。換言すれば、これらのビメンチンヌクレオチド配列は、メチル化された状態(例えば、ビメンチン関連新生物で見られるように)であってもよいし、メチル化されていない状態(例えば、正常細胞で見られるように)であってもよい。更なる具体例において、この発明のビメンチンヌクレオチド配列は、単離することができ、組換えによるものであってよく、及び/又は異質ヌクレオチド配列と融合したものであってよいし、或はDNAライブラリー中にあってもよい。
【0065】
差次的にメチル化されたビメンチンヌクレオチド配列に加えて、構成的にメチル化されたヌクレオチド配列も又、ビメンチン配列中に存在する(例えば、Aluリピート及びC領域内のAluでない構成的にメチル化された領域)。構成的にメチル化されたビメンチンヌクレオチド配列は、正常細胞及び癌細胞の両方でメチル化されているので、当業者は、ここに与えたように差次的にメチル化されたビメンチンヌクレオチド配列を検出することの重要性を認めるであろう。
【0066】
ある具体例において、本発明は、重亜硫酸塩変換されたビメンチンテンプレートDNA配列例えばSEQ ID NO:3〜4、6〜7、46〜47及び49〜50並びにこれらの断片を提供する。かかる重亜硫酸塩変換されたビメンチンテンプレートDNAは、例えばMSP反応により又は直接的配列決定によって、メチル化状態の検出に利用することができる。これらの重亜硫酸塩変換されたビメンチン配列は又、重亜硫酸塩変換後に、メチル化又は非メチル化ビメンチンテンプレートを特異的に検出するMS−PCR反応用のプライマーのデザインにも有用である。更に別の具体例において、この発明の重亜硫酸塩変換されたビメンチンヌクレオチド配列は又、高度にストリンジェントな条件下で、SEQ ID NO:3〜4、6〜7、46〜47及び49〜50から選択する任意のヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列をも包含する。
【0067】
更なる面において、この出願は、かかる重亜硫酸塩変換されたヌクレオチド配列を製造する方法を提供し、例えば、この出願は、ヌクレオチド配列を、重亜硫酸塩剤で処理し、それで、非メチル化シトシン塩基が異なるヌクレオチド塩基例えばウラシルに変換される方法を提供する。
【0068】
更に別の面において、この出願は、SEQ ID NO:8〜39の何れか一つ又は図35に列記した何れか一つのビメンチン核酸配列内の領域を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーを提供する。ある面において、一対のオリゴヌクレオチドプライマー(例えば、SEQ ID NO:8〜13)は、検出アッセイ例えばHpaIIアッセイにおいて利用することができる。ある面において、MSP反応で利用するプライマーは、特異的に、メチル化ビメンチンDNAと非メチル化ビメンチンDNA(例えば、SEQ ID NO:14〜39又は図35に列記したプライマー)を識別することができる。
【0069】
この発明のプライマーは、ビメンチン核酸の増幅の特異的な開始を与えるのに、十分な長さ及び適当な配列を有している。この発明のプライマーは、増幅すべきビメンチン核酸配列の各鎖に「実質的に」相補的であるようにデザインされる。典型的プライマーは、SEQ ID NO:8〜39及び図35に与えてあるが、SEQ ID NO:2又は45の重亜硫酸塩変換されたビメンチン配列とハイブリダイズする任意のプライマーは、この発明の範囲内に含まれ且つ上記のように、メチル化核酸を検出するためのこの発明の方法において有用であるということは理解される。同様に、SEQ ID NO:2又は45の差次的メチル化領域内のメチル化感受性制限部位を増幅するのに役立つであろう任意のプライマーが、この発明の範囲内に含まれること及びそれが、記載したように、メチル化核酸の検出のためのこの発明の方法において有用であるということは理解される。
【0070】
この発明のオリゴヌクレオチドプライマーは、任意の適当な方法例えば慣用のホスホトリエステル及びホスホジエステル法又はその自動化された具体例を利用することにより、製造することができる。かかる自動化された具体例の一つにおいて、ジエチルホスホルアミダイトが、出発物質として利用され、Beaucage等により記載されたように合成することができる(Tetrahedron Letters, 22:1859-1862, 1981)。改変固体支持体上でのオリゴヌクレオチドの合成のための一つの方法は、米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0071】
この出願で利用した様々な配列同定番号(配列番号)を下記の表Iにまとめた。
【0072】
【表1−1】

【0073】
【表1−2】

【0074】
ある別の面において、この発明は、SEQ ID NO:1のビメンチンポリペプチドをコードするビメンチン核酸及びその変異体と関係する。変異体は、少なくとも一つのヌクレオチドの置換、付加又は欠失によって異なる配列(アレル変異体など)を含み、それ故、このコード配列のヌクレオチド配列と、例えば遺伝コードの縮重のために異なるコード配列を含む。ある具体例において、変異型核酸は、高度にストリンジェントな条件下で、SEQ ID NO:1をコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする配列をも含む。
【0075】
遺伝コードの縮重のためにSEQ ID NO:1をコードする核酸と異なる単離されたビメンチン核酸も又、この発明の範囲内にある。例えば、幾らかのアミノ酸は、一つより多くのトリプレットにより示される。同じアミノ酸を特定するコドン、即ちシノニム(例えば、CAUとCACは、ヒスチジンに対するシノニムである)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」変異を生じうる。しかしながら、主題のタンパク質のアミノ酸配列の変化へと導くDNA配列の多型が哺乳動物細胞中に存在するであろうことは予想される。当業者は、これらの、特定のタンパク質をコードする核酸の少なくとも1ヌクレオチド(最大でヌクレオチドの約3〜5%)の変異が、所定の種の個体中に、自然のアレル変異のために存在しうることを認めるであろう。任意の及びすべてのかかるヌクレオチド変異及びその結果生じるアミノ酸多型は、この発明の範囲内にある。
【0076】
ある具体例において、組換えビメンチン核酸は、発現用構築物において、少なくとも1つの調節用ヌクレオチド配列と作動的に結合させることができる。調節用ヌクレオチド配列は、一般に、発現のために用いる宿主細胞に適している。様々な宿主細胞用の、多くの種類の適当な発現ベクター及び適当な調節用配列が、当分野では知られている。典型的には、該少なくとも一つの調節用ヌクレオチド配列には、プロモーター配列、リーダー又はシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終結用配列、翻訳開始及び終結用配列ならびにエンハンサー又はアクチベーター配列が含まれうるが、これらに限られない。当分野で公知の構成的又は誘導性プロモーターは、この発明により企図される。これらのプロモーターは、天然のプロモーターであってもよいし、一つより多くのプロモーターのエレメントを合わせたハイブリッドプロモーターであってもよい。発現用構築物は、細胞内で、エピソーム上にプラスミドとして存在しうるし、又は染色体中に組み込まれることもできる。好適具体例において、この発現ベクターは、トランスフォームされた宿主細胞の選択を可能にする選択マーカー遺伝子を含む。選択マーカー遺伝子は、当分野で周知であり、用いる宿主細胞によって変化する。
【0077】
ある面において、この発明は、ここに記載のビメンチンポリペプチド(SEQ ID NO:1)及びその変異体ポリペプチドに関係する。ある具体例において、変異体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示したアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する。他の具体例において、この変異体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示したアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0078】
ある面において、変異型ビメンチンポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示したビメンチンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストである。これらのポリペプチドの変異体は、過度の又は構成的な活性を有しうるし、或は、ビメンチンの腫瘍抑制性を妨げうる。例えば、少なくとも一つのドメインを欠く先端切除型は、優性ネガティブ効果を有しうる。
【0079】
ある面において、ビメンチンポリペプチドの単離されたペプチド性部分は、SEQ ID NO:1に示したポリペプチドをコードする核酸の対応する断片から組換えにより生成したポリペプチドをスクリーニングすることによって得ることができる。加えて、断片は、当分野で公知の技術例えば慣用のMerrifield固相f−Moc又はt−Boc化学を利用して、化学合成することができる。これらの断片を生成し(組換えにより又は化学合成によって)、試験して、ビメンチンの腫瘍抑制機能のアゴニスト又はアンタゴニストとして機能しうるペプチド性断片を同定することができる。
【0080】
ある面において、様々なビメンチンポリペプチドは、少なくとも一つの融合ドメインを含む。かかる融合ドメインの周知の例には、例えば、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインC、及び免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合性タンパク質(MBP)が含まれ、これらは、融合ポリペプチドのアフィニティークロマトグラフィーによる単離に特に有用である。アフィニティー精製の目的のためには、アフィニティークロマトグラフィー用の適当なマトリクス例えばグルタチオン−、アミラーゼ−、及びニッケル−又はコバルト−結合された樹脂を利用する。多くのかかるマトリクスは、(HIS6)融合パートナーを利用すると有用であるPharmacia GST 精製システム及びQIAexpress(商標)システム(Qiagen)などの「キット」形態で入手可能である。当分野で周知の他の融合ドメインは、グリーン蛍光タンパク質(GFP)である。この融合パートナーは、蛍光「タグ」として役立ち、これは、この発明の融合ポリペプチドを、蛍光顕微鏡により又はフローサイトメトリーによって同定することを可能にする。このGFPタグは、融合ビメンチンポリペプチドの細胞内局在性を評価する場合に、有用である。このGFPタグは又、融合ビメンチンポリペプチドを発現する細胞の、蛍光活性化セルソーティング(FACS)などのフローサイトメトリー法による単離にも有用である。融合ドメインは又、「エピトープタグ」をも包含し、これらは、通常、短いペプチド配列であって、それらに対する特異的モノクローナル抗体を利用することができる。特異的モノクローナル抗体を容易に利用することのできる周知のエピトープタグには、FLAG、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、及びc−mycタグが含まれる。幾つかの場合に、これらの融合ドメインは、適当なプロテアーゼが融合ビメンチンポリペプチドを部分消化し、それにより組換えポリペプチドがそこから遊離することを可能にするプロテアーゼ開裂部位(例えば、因子Xa又はトロンビン用)を有する。遊離したポリペプチドは、その後、融合パートナーから、引き続いてのクロマトグラフィーによる分離によって単離することができる。
【0081】
この発明の他の面は、ビメンチンポリペプチドのエピトープと特異的に免疫反応性の単離された抗体と関係する。例えば、ビメンチンポリペプチドに由来する免疫原を利用することにより(例えば、cDNA配列に基づいて)、抗タンパク質/抗ペプチド抗血清又はモノクローナル抗体を、標準的プロトコール(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual Harlow及びLane編(Cold Spring Harbor Press: 1988)参照)により作成することができる。哺乳動物例えばマウス、ハムスター又はウサギを、ビメンチンペプチドの免疫原型で免疫化することができる。タンパク質又はペプチドに免疫原性を与えるための技術には、キャリアーへの結合又は他の当分野で周知の技術が含まれる。ポリペプチドの免疫原性部分をアジュバントの存在下で投与することができる。免疫化の進行は、血漿又は血清中の抗体力価の検出によりモニターすることができる。標準的ELISA又は他の免疫アッセイを、免疫原を抗原として利用して、抗体レベルを評価することができる。
【0082】
ある具体例において、この発明の抗体は、ビメンチン関連疾患の検出又は治療のための診断剤又は治療剤として有用でありうる。
【0083】
用語「抗体」は、ここで用いる場合、ビメンチンポリペプチドの一つとやはり特異的に反応するその断片を包含することを意図している。抗体は、慣用の技術を利用して、断片化することができ、それらの断片は、有用性について、全抗体について上記したものと同じ仕方でスクリーニングすることができる。例えば、F(ab)2断片は、抗体をパパインで処理することにより生成することができる。その結果生成したF(ab)2断片を、ジスルフィドブリッジを還元するように処理して、Fab断片を生成することができる。この発明の抗体は、更に、ビメンチンタンパク質に対する親和性を有する複特異性、一本鎖、並びにキメラ及びヒト化分子を含むことを意図している。好適具体例において、この抗体は、更に、それに結合されて検出されうる標識(例えば、この標識は、放射性同位体、蛍光性化合物、酵素又は酵素の補因子であってよい)をも含む。
【0084】
IV.アッセイ及び薬物スクリーニング方法論
ある面において、この出願は、ビメンチンヌクレオチド配列を、健康な細胞とビメンチン関連疾患の細胞を識別する分子マーカーとして利用するアッセイ及び方法を提供する。例えば、一具体例において、この出願は、ビメンチンヌクレオチド配列を、健康な細胞と結腸新生物細胞を識別するマーカーとして利用する方法及びアッセイを提供する。一面において、この発明の分子マーカーは、差次的にメチル化されたビメンチンヌクレオチド配列である。他の面において、ここに与える他のマーカーは、ビメンチン遺伝子の発現産物である。
【0085】
ある具体例において、この発明は、差次的にメチル化されたビメンチンヌクレオチド配列例えばB及びC領域内に見られる差次的メチル化パターン(例えば、SEQ ID NO:45)を検出するためのアッセイを提供する。従って、差次的にメチル化されたビメンチンヌクレオチド配列は、そのメチル化状態において、ビメンチン関連新生物特異的改変でありうる(それは、ここに記載した様々な方法及び、この出願の教示の故に、当業者の知識範囲の内にある方法を利用する検出のための標的として役立つ)。
【0086】
ある面において、メチル化ビメンチンヌクレオチド配列を検出するためのかかる方法は、ビメンチンのゲノムDNAの、非メチル化Cを異なるヌクレオチド塩基に変換するが、メチル化C(即ち、5mC)は変換しない化学化合物での処理に基づいている。一つのかかる化合物は、重亜硫酸ナトリウムであり、これは、CをUに変換するが、5mCは変換しない。DNAの重亜硫酸塩での処理方法は、当分野で公知である(Herman等、1996, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 93:9821-6;Herman及びBaylin, 1998, Current Protocols in Human Genetics, N.E.A. Dracopoli編、John Wiley & Sons, 2:10.6.1-10.6.10;米国特許第5,786,146号)。説明のために、非メチル化Cヌクレオチドを含むDNA分子を重亜硫酸ナトリウムで処理して化合物変換されたDNAとする場合には、そのDNAの配列は、変化する(C→U)。変換されたヌクレオチド配列中のUの検出は、非メチル化Cを示す。
【0087】
化合物変換されたヌクレオチド配列中に存在する異なるヌクレオチド塩基(例えば、U)は、その後、様々な方法で検出することができる。好適具体例において、本発明は、化合物変換されたビメンチンDNA配列中のUを、「メチル化感受性PCR」(MSP)を利用することにより検出する方法を提供する(例えば、Herman等、1996, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 93:9821-9826;米国特許第6,265,171号;米国特許第6,017,704号;米国特許第6,200,756号参照)。MSPにおいて、一組のプライマー(即ち、フォワード及びリバースプライマー)は、この化合物変換されたテンプレート配列を、もしビメンチンDNA中のCpGジヌクレオチドがメチル化されているなら、増幅する。このプライマーのセットは、「メチル化特異的プライマー」と呼ばれる。他のプライマーのセットは、化合物変換されたテンプレート配列を、もしビメンチン5’隣接配列中のCpGジヌクレオチド内のC塩基がメチル化されてないならば、増幅する。このプライマーのセットは、「非メチル化特異的プライマー」と呼ばれる。
【0088】
MS−PCRにおいて、これらの反応は、被験者の試料由来の化合物変換されたDNAを利用する。ビメンチンメチル化DNAのアッセイにおいては、メチル化特異的プライマーを利用する。そのDNAの標的配列のCpGジヌクレオチド中のCがメチル化されている場合には、これらのメチル化特異的プライマーは、化合物変換されたテンプレート配列をポリメラーゼの存在下で増幅し、MSP産物が生成されるであろう。もしDNAの標的配列のCpGジヌクレオチド中のCがメチル化されていなければ、メチル化特異的プライマーは、ポリメラーゼの存在下でも化合物変換されたテンプレートを増幅せず、MSP産物も生成されないであろう。
【0089】
非メチル化ビメンチンDNAの検出のために対照用反応を行なうことは、やはり、しばしば有用である。これらの反応は、被験者の試料由来の化合物変換されたDNAを利用し、非メチル化特異的プライマーを利用する。DNAの標的配列のCpGジヌクレオチド中のCがメチル化されていない場合には、非メチル化特異的プライマーは、ポリメラーゼの存在下で化合物変換されたテンプレート配列を増幅して、MSP産物が生成されるであろう。もしDNAの標的配列のCpGジヌクレオチド中のCがメチル化されていれば、非メチル化特異的プライマーは、ポリメラーゼの存在下でも化合物変換されたテンプレート配列を増幅せず、MSP産物は、生成されないであろう。生物学的試料は、しばしば、メチル化特異的プライマーによりシグナルを生じる新生物細胞と、非メチル化特異的プライマーによりシグナルを生じる正常細胞エレメントの両方の混合物を含むことに注意されたい。非メチル化特異的シグナルは、しばしば、対照用反応として有用であるが、この場合は、メチル化特異的プライマーを利用する反応に由来する陽性シグナルにより示されるように、結腸新生物の非存在を意味しない。
【0090】
MSP反応のためのプライマーは、化合物変換されたビメンチンテンプレート配列から導かれる。ここでは、「から導かれる」は、それらのプライマーの配列が、化合物変換されたテンプレート配列をMSP反応において増幅するように選択されることを意味する。各プライマーは、少なくとも8ヌクレオチド長の一本鎖DNA断片を含む。好ましくは、これらのプライマーは、50ヌクレオチド長未満であり、一層好ましくは、15〜35ヌクレオチド長である。化合物変換されたビメンチンテンプレート配列は、重亜硫酸ナトリウムで処理される二本鎖DNAのワトソン鎖又はクリック鎖の何れであってもよいので、これらのプライマーの配列は、ワトソン又はクリック化合物変換されたテンプレート配列の何れが、MSPにおいて増幅するために選択されるかどうかに依存している。ワトソン又はクリック鎖の何れも、増幅するために選択することができる。
【0091】
この化合物変換されたビメンチンテンプレート配列(及び、それ故、MSP反応の産物)は、20〜3000ヌクレオチド長、好ましくは50〜500ヌクレオチド長、一層好ましくは80〜150ヌクレオチド長であってよい。好ましくは、これらのメチル化特異的プライマーは、非メチル化特異的プライマーにより生成されたMSP産物とは異なる長さのMSP産物を生じる。
【0092】
様々な方法を利用して、MSP産物が、反応アッセイにおいて生成されたかどうかを決定することができる。MSP産物がこの反応アッセイで生成されたかどうかを決定するための一つの方法は、その反応の一部分をアガロースゲル電気泳動によって分析することである。例えば、0.6〜2.0%アガロースの水平アガロースゲルを作成して、MSP反応混合物の一部分を、そのアガロースゲル中を電気泳動させる。MSP産物は、紫外光によるイルミネーション中に見れば、可視的である。標準化したサイズマーカーとの比較により、MSP産物が、正しい予想されたサイズのものであるかどうかを決定することができる。
【0093】
他の方法を利用して、産物がMSP反応において作られたかどうかを決定することもできる。一つのかかる方法は、「リアルタイムPCR」と呼ばれる。リアルタイムPCRは、螢光計(即ち、蛍光を測定する機器)を組み込んだサーマルサイクラー(即ち、PCR反応に必要な温度変化を与える機器)を利用する。このリアルタイムPCR反応用混合物は又、産物への組込みを定量することができて、その定量がテンプレート中のその配列のコピー数を示す試薬をも含有する。一つのかかる試薬は、選択的に二本鎖DNAに結合して、その蛍光が二本鎖DNAに結合することによって大幅に増強されるSYBRグリーンI(Molecular Probes, Inc.; オレゴン、Eugene在)と呼ばれる蛍光染料である。PCR反応を、SYBRグリーンIの存在下で行なう場合には、その結果生成したDNA産物は、SYBRグリーンIに結合して、蛍光を生じる。この蛍光は、蛍光計によって検出されて定量される。かかる技術は、PCR反応における産物の量の定量に特に有用である。加えて、このPCR反応の産物は、「リアルタイムPCR」において、その産物にハイブリダイズする様々なプローブ(TaqManプローブ及び分子ビーコンを含む)を利用して定量することができる。測定は、絶対的基礎の上にあってよいし、又は構成的にメチル化されたDNA鎖に対して相対的なものであってもよいし、又はメチル化されてないDNA鎖に対するものであってもよい。一例において、メチル化ビメンチン由来の産物の非メチル化由来のビメンチン産物に対する比を構築することができる。
【0094】
この発明においてビメンチンDNAのメチル化を検出する方法は、MSPに限られず、DNAのメチル化を検出するための任意のアッセイをカバーすることができる。ビメンチンDNAのメチル化を検出するための他の例の方法は、「メチル化感受性」制限エンドヌクレアーゼの利用によるものである。かかる方法は、被験者から単離したゲノムDNAをメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼで処理してからその制限エンドヌクレアーゼ処理したDNAをPCR反応においてテンプレートとして利用することを含む。ここでは、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、DNA中の特異的配列を認識して、もし認識配列中のC塩基がメチル化されてなければ開裂させる。もしこの制限エンドヌクレアーゼの認識配列中のC塩基がメチル化されていれば、そのDNAは開裂されない。かかるメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼの例には、HpaII、SmaI、SacII、EagI、MspI、BstUI及びBssHIIが含まれるが、これらに限られない。この技術において、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼのための認識配列は、テンプレートDNA中に、PCR反応に利用されるフォワード及びリバースプライマーの間に位置している。メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ認識配列中のC塩基がメチル化されていない場合には、該エンドヌクレアーゼは、DNAテンプレートを開裂し、該PCR反応において該DNAがテンプレートとして利用された場合にはPCR産物は形成されないであろう。このメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ認識配列中のC塩基がメチル化されている場合には、該エンドヌクレアーゼは、該DNAテンプレートを開裂せず、該DNAがPCR反応においてテンプレートとして利用された場合にはPCR産物が形成されるであろう。それ故、C塩基のメチル化は、PCR産物の存否によって測定されうる(Kane等、1997, Cancer Res, 57:808-11)。この技術では、重亜硫酸ナトリウムは、利用しない。
【0095】
ビメンチンDNAのメチル化を検出するための、更に別の典型的方法は、改変MSPと呼ばれ、この方法は、MSP反応の産物が、化合物変換されたテンプレート配列がCpGジヌクレオチドを含むかUpGジヌクレオチドを含むかに依って、制限エンドヌクレアーゼによる消化を受けることができるようにデザインされて選ばれたプライマーを利用する。
【0096】
ビメンチンDNAのメチル化を検出するための更に別の方法には、MS−SnuPE法が含まれる。この方法は、化合物変換されたビメンチンDNAを、プライマー伸長反応におけるテンプレートとして利用し、該反応において、利用したプライマーは、産物を、化合物変換されたテンプレートがCpGジヌクレオチドを含むかUpGジヌクレオチドを含むかに依存して生成する(例えば、Gonzalgo等、1997, Nucleic Acids Res., 25:2529-31参照)。
【0097】
ビメンチンDNAのメチル化を検出するための別の典型的な方法は、COBRA(即ち、combined bisulfite restriction analysis)と呼ばれる。この方法は、DNAのメチル化の検出のために日常的に用いられてきており、当分野で周知である(例えば、Xiong等、1997, Nucleic Acids Res, 25:2532-4参照)。
【0098】
ある具体例において、この発明は、MSP反応から生成した産物を直接配列決定して、化合物変換されたビメンチンテンプレート配列がCpGジヌクレオチドを含むのかUpGジヌクレオチドを含むのかを決定することを含む方法を提供する。分子生物学の技術例えばPCR産物の直接的配列決定は、当分野で周知である。
【0099】
別の具体例において、当業者は、本発明が、部分的に、ビメンチンは、腫瘍抑制遺伝子として機能しうるという認識に基づいていることを認めるであろう。従って、ある面において、この発明は、健康な細胞とビメンチン関連疾患の細胞例えば結腸新生物細胞を識別する分子マーカーを検出するためのアッセイを提供する。上記のように、本願の分子マーカーの一つは、メチル化ビメンチンヌクレオチド配列を含む。従って、一具体例において、このビメンチンヌクレオチド配列のメチル化状態のアッセイは、ビメンチンサイレンシング関連疾患の検出のために、モニターすることができる。
【0100】
この出願は、更に、別の分子マーカーであるビメンチン遺伝子の発現転写物又は遺伝子産物をも提供する。従って、他の具体例において、このビメンチン核酸又はタンパク質の発現を、ビメンチンサイレンシング関連疾患例えば結腸新生物の検出のために、モニターすることができる。
【0101】
ある具体例において、この発明は、患者が病気を有するかどうかを決定するために、上記のビメンチン分子マーカーをアッセイすることによる検出方法を提供する。更に、かかる病気は、ここに記載のビメンチン核酸又はタンパク質の減少した発現により特徴付けることができる。ある具体例において、この発明は、患者がビメンチン関連疾患を有することがありそうなことであるかどうかを、ビメンチンヌクレオチド配列の発現を検出することによって決定する方法を提供する。更なる具体例において、この発明は、患者が再発を有するかどうか又は患者の癌が治療に応答性であるかどうかを決定する方法を提供する。
【0102】
好適具体例において、この出願は、結腸新生物を検出する方法を提供する。ある具体例において、本発明は、ビメンチン遺伝子のサイレンシングと関連する結腸新生物を検出する方法を提供する。かかる方法は、メチル化されたビメンチンヌクレオチド配列の、被験者から得られた試料における存在についてアッセイすることを含む。他の面において、この発明は、患者が、結腸癌を有することがありそうかどうかを決定する方法と関係する。更なる面において、この発明は、被験者における結腸新生物をモニターする方法と関係する。
【0103】
ある具体例において、この発明は、ここに記載のビメンチンタンパク質又は核酸転写物を検出するためのアッセイを提供する。ある具体例において、この発明の方法は、生物学的試料を用意して、その生物学的試料を、ビメンチンの発現(ビメンチンのタンパク質又は核酸転写物を含む)につきプローブ検出することを含む。ビメンチンの発現状態(及び、適宜、ビメンチン発現の定量的レベル)に関する情報は、次いで、生物学的試料の性質に関する推論を引き出すために利用することができ、もしその生物学的試料が被験者から得られたものであるならば、その被験者の健康状態に関する推論を引き出すために利用することができる。
【0104】
ある具体例において、この発明の方法は、試料中のビメンチンタンパク質の存在を検出することを含む。適宜、この方法は、試料中のビメンチンタンパク質の定量的測定を得ることを含む。この明細書の故に、当業者は、他の泊質の存在を検出し、適宜、定量するために利用することのできる広範な技術を認識するであろう。好適具体例において、ビメンチンタンパク質は、抗体により検出される。多くの具体例において、抗体ベースの検出アッセイは、試料と抗体を接触させ、それで、該抗体が、対応するエピトープを有するタンパク質と結合する機会を有するようにすることを含む。多くの具体例において、抗体ベースの検出アッセイは又、典型的には、抗体エピトープ複合体の存在を検出し、それにより、対応するエピトープを有するタンパク質の存在の検出を達成するためのシステムをも含む。抗体は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、ウエスタンブロットを含む様々な検出技術において利用することができる。タンパク質の同定のための、抗体に依存しない技術も又、利用することができる。例えば、質量分析(特に、液体クロマトグラフィーと組み合せたもの)は、試料中の多数のタンパク質の検出と定量を可能にする。2次元ゲル電気泳動も又、タンパク質を同定するために利用することができ、質量分析又は他の検出技術例えばN末端タンパク質配列決定法と組み合せることができる。関心あるタンパク質に対する特異的結合を有するRNAアプタマーも又、生成して、検出用試薬として利用することができる。
【0105】
試料は、一般に、用いる検出システムと一致する仕方で調製すべきである。例えば、タンパク質検出システムで利用される試料は、一般に、プロテアーゼの非存在下で調製すべきである。同様に、核酸検出システムで利用する試料は、一般に、ヌクレアーゼの非存在下で調製すべきである。多くの場合に、抗体ベースの検出システムで利用するための試料は、実質的な製造工程にかけられないであろう。例えば、尿は、唾液及び血液のように、直接利用されうる(血液は、ある種の好適具体例においては、血漿及び血清などの画分に分離されるが)。
【0106】
ある具体例において、この発明の方法は、試料中のビメンチンの発現された核酸例えばmRNAの存在を検出することを含む。適宜、この方法は、試料中のビメンチンの発現された核酸の定量的測定を得ることを含む。この明細書の故に、当業者は、核酸の存在を検出し、適宜、定量するために利用できる広範な技術を認めるであろう。核酸検出システムは、一般に、試料の精製核酸画分を調製すること、及び試料を直接検出アッセイ又は増幅工程とその後の検出アッセイにかけることを含む。増幅は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素(RT)及び結合させたRT−PCRによって達成することができる。核酸の検出は、一般に、精製核酸画分を、関心ある核酸にハイブリダイズするプローブでプローブ検出することによって達成され、多くの場合に、検出は、増幅をも包含する。ノーザンブロット、ドットブロット、マイクロアレイ、定量的PCR、及び定量的RT−PCRは、すべて、試料中の核酸を検出するための周知の方法である。
【0107】
ある具体例において、この発明は、ビメンチン核酸に特異的に結合する核酸プローブを提供する。かかるプローブは、例えば、蛍光性成分、放射性核種、酵素又は親和性タグ例えばビオチン成分によって標識することができる。例えば、TaqMan(登録商標)システムは、プローブが遊離のときに蛍光シグナルが消光し、一層大きい核酸に組み込まれたときに輝くような仕方で標識した核酸プローブを利用する。
【0108】
ビメンチンマーカーに向けられたモノクローナル抗体を利用するイムノシンチグラフィーを利用して、癌を検出及び/又は診断することができる。例えば、99テクネチウム、111インジウム、125ヨウ素で標識したビメンチンマーカーに対するモノクローナル抗体は、かかるイメージングに効果的に利用することができる。当業者には明らかとなるであろうが、投与すべき放射性同位体の量は、放射性同位体に依存している。当業者は、投与すべきイメージング剤の量を、活性成分として利用する所与の放射性核種の比放射能及びエネルギーに基づいて、容易に配合することができる。典型的には、投与量当たり0.1〜100ミリキュリー、好ましくは、1〜10ミリキュリー、最もしばしば、2〜5ミリキュリーのイメージング剤を投与する。従って、放射性成分と結合された標的成分を含むイメージング剤として有用な本発明の組成物は、0.1〜100ミリキュリーを、幾つかの具体例において好ましくは1〜10ミリキュリーを、幾つかの具体例において好ましくは2〜5ミリキュリーを、幾つかの具体例において一層好ましくは1〜5ミリキュリーを含む。
【0109】
ある具体例において、本発明は、ビメンチン遺伝子の腫瘍抑制機能を強化する試験化合物を同定するための薬物スクリーニングアッセイを提供する。一面において、これらのアッセイは、ビメンチンの発現レベルを強化する試験化合物を検出する。他の面において、これらのアッセイは、ビメンチンヌクレオチド配列のメチル化を阻止する試験化合物を検出する。ある具体例において、試験化合物を、それらの、ビメンチンポリペプチドの安定性又は機能に干渉する能力に基づいて検出する薬物スクリーニングアッセイを生成することができる。或は、単一の結合アッセイを利用して、ビメンチンポリペプチドとその相互作用するタンパク質(例えば、プレクチン、IFAP−300、Hsc70、アルファ−クルスタリン、PKC、cGMPキナーゼ、又はYesキナーゼ)との間の相互作用又はビメンチンポリペプチドの標的DNAへの結合を阻止し又は強化する化合物を検出することができる。
【0110】
様々なアッセイ形式を利用することができ、本開示に照らして、ここに明白に記載していないものであっても、当業者の視野の内にあると考えられよう。アッセイ形式は、ビメンチン発現レベル、ビメンチン配列のメチル化状態、腫瘍抑制活性、中間フィラメント形成活性などの条件に近づくことができ、多くの異なる形態で生成することができる。多くの具体例において、この発明は、無細胞系と無傷の細胞を利用する細胞ベースのアッセイの両方を含むアッセイを提供する。
【0111】
試験すべき化合物は、例えば、細菌、酵母又は他の生物により生成することができ(例えば、天然物)、化学的に生成することができ(例えば、ペプチド模倣物を含む低分子)、又は組換えにより生成することができる。この化合物の効力は、様々な濃度の試験化合物を利用して得られたデータから投与量応答曲線を生成することにより評価することができる。その上、対照用アッセイを行なって、比較のためのベースラインを与えることもできる。対照用アッセイにおいては、複合体の形成を、試験化合物の非存在下で定量する。
【0112】
化合物のライブラリー及び天然抽出物を試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、高スループットアッセイは、所定時間内に調べられる化合物数を最大化するために望ましい。無細胞系(精製した若しくは半精製したタンパク質又は溶解物を利用して開発しうるものなど)において好適な本発明のアッセイは、しばしば、迅速な開発及び分子標的の試験化合物により媒介される変化の比較的容易な検出を可能にするように生成されうる点において、「一次」スクリーニングとして選ばれる。その上、試験化合物の細胞毒性の効果及び/又はバイオアベイラビリティーは、一般に、イン・ビトロ系では無視されうる。該アッセイは、主として、分子標的の他のタンパク質との結合親和性の変化又は酵素的特性の変化において現れうるような、薬物の分子標的に対する効果に集中する。
【0113】
ある具体例において、これらのアッセイから同定される試験化合物は、ビメンチン関連増殖性疾患を治療するための治療方法において利用することができる。
【0114】
この出願の更に別の面は、異質ビメンチン遺伝子を発現し、又は少なくとも一種類の組織又は細胞型において少なくとも一つのゲノムビメンチン遺伝子が破壊されたトランスジェニック非ヒト動物を提供する。例えば、ビメンチン遺伝子座が破壊されているトランスジェニックマウスを生成することができる。
【0115】
他の面において、この出願は、誤発現されるビメンチンアレルを有するビメンチン関連増殖性疾患についての動物モデルを提供する。例えば、ビメンチンアレルが欠失したマウス、又は少なくとも一つのビメンチンエキソンの全部又は部分が欠失したマウスを繁殖させることができる。かかるマウスモデルは、その後、ビメンチン遺伝子の誤発現から生じる病気の研究に利用することができる。
【0116】
従って、本願は、トランスジェニック動物であって、ビメンチン導入遺伝子を含む細胞(当該動物の細胞)からなり、好ましくは(適宜)、その動物の少なくとも一つの細胞において外因性ビメンチンタンパク質を発現する当該トランスジェニック動物を開示する。このビメンチン導入遺伝子は、このタンパク質の野生型をコードすることができ、又はその同族体(アゴニスト及びアンタゴニストの両方を含む)並びにアンチセンス構築物をコードすることができる。このビメンチン導入遺伝子は、ビメンチンヌクレオチド配列(例えば、SEQ ID NO:2)又はその断片を含むことができる。好適具体例において、この導入遺伝子の発現は、例えば、発現を所望のパターンに制御するシス作動性配列を利用する特定の細胞、組織又は発生段階のサブセットに限られる。
【0117】
位置特異的遺伝子操作によりイン・ビボで調節されうる導入遺伝子の発現を可能にする遺伝子技術は、当業者に公知である。例えば、標的配列の遺伝的組換えを触媒するレコンビナーゼの調節された発現を可能にする遺伝子システムが、利用可能である。ここで用いる場合、語句「標的配列」は、レコンビナーゼにより遺伝的組換えを受けるヌクレオチド配列を指す。この標的配列は、レコンビナーゼ認識配列と隣接しており、一般に、レコンビナーゼ活性を発現する細胞で切り出され又は逆転される。レコンビナーゼに触媒される組換え事象は、標的配列の組換えが、ビメンチンポリペプチドの発現の活性化又は抑制を生じるようにデザインすることができる。例えば、組換えビメンチン遺伝子の発現に干渉する標的配列の切り出しをデザインして、その遺伝子の発現を活性化することができる。このタンパク質の発現への干渉は、様々な機構例えばビメンチン遺伝子のプロモーターエレメントからの空間的分離又は内部の停止コドンにより生じうる。その上、この導入遺伝子は、該遺伝子のコード配列が、レコンビナーゼ認識配列と隣接し、最初に、プロモーターエレメントに対して3’〜5’の向きで細胞にトランスフェクトされるようにすることができる。かかる場合において、標的配列の逆位は、主題の遺伝子に、コード配列の5’末端をプロモーターエレメントに関してプロモーターに駆動された転写活性化を可能にする方向に置くことによって、新しい方向を与える。
【0118】
説明用の具体例において、バクテリオファージP1のcre/loxPレコンビナーゼシステム(Lakso等(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6232-6236;Orban等(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6861-6865)又はサッカロミセス・セレビシエのFLPレコンビナーゼシステム(O'Gorman等(1991)Science 251:1351-1355;PCT公開WO92/15694)を利用して、イン・ビボの位置特異的な遺伝的組換えシステムを生成することができる。Creレコンビナーゼは、loxP配列の間に位置する介在性標的配列の位置特異的な組換えを触媒する。loxP配列は、Creレコンビナーゼが結合し、Creレコンビナーゼ媒介の遺伝的組換えに必要とされる、34塩基対のヌクレオチドの反復配列である。loxP配列の向きは、介在性標的配列が、Creレコンビナーゼが存在する場合に、切り出される又は逆転されるかどうかを決定し(Abremski等(1984)J.Biol.Chem.259:1509-1514);loxP配列が直列反復方向であれば標的配列の切り出しを触媒し、loxP配列が逆向反復の向きであれば標的配列の逆転を触媒する。
【0119】
V.被験者及び試料
ある面において、この発明は、ビメンチン関連疾患例えば結腸新生物を有することが疑われ又は有する被験者に関係する。或は、被験者は、日常的スクリーニングを受けていてよいし、必ずしもかかるビメンチン関連疾患を有することが疑われていなくてもよい。好適具体例において、この被験者は、ヒトの被験者であり、ビメンチン関連疾患は、結腸新生物である。
【0120】
結腸新生物を有することが知られていない被験者からの試料における上記のビメンチンマーカーについてのアッセイは、その被験者におけるかかる結腸新生物の診断において助けとなりうる。説明のために、ビメンチンヌクレオチド配列のメチル化状態のMSPによる検出は、それだけで利用できるし、又は他の様々なアッセイと組み合わせて利用することにより、結腸新生物の検出の感度及び/又は特異性を改良することができる。好ましくは、かかる検出は、癌の発生の初期の段階でなされ、それで、治療が有効であることは、一層ありそうなこととなる。
【0121】
診断に加えて、結腸新生物を有することが知られていない被験者からの試料におけるビメンチンマーカーのアッセイは、その被験者の予後予測となりうる(即ち、この病気のありそうな経過を指示する)。説明のために、結腸新生物を発生する素因を有する被験者は、メチル化ビメンチンヌクレオチド配列を有しうる。被験者からの試料におけるビメンチンマーカーのアッセイは又、その被験者の結腸新生物に対して特に有効な特定の治療を選択するために、又は有効でありそうにない治療を排除するために利用することもできる。
【0122】
ビメンチン遺伝子のサイレンシングと関係する癌を有する(又は有していた)ことが知られている被験者からの試料におけるビメンチンマーカーのアッセイも又、有用である。例えば、本発明の方法を利用して、治療がある被験者にとって有効かどうかを同定することができる。少なくとも一つの試料を、同じ被験者から、治療の前後に採取して、ビメンチンマーカーについてアッセイする。治療前に採った試料中にビメンチンマーカーが存在して治療後には存在しない(又は、低レベルである)という発見は、その治療が有効であって変更する必要がないことを示している。治療前に採った試料中及び治療後に採った試料中にビメンチンマーカーが存在する場合には、癌が被験者において根絶される見込みを増大させるために治療を変更することが望ましい。従って、本発明の方法は、治療に対する患者の応答を測定するために用いられる一層侵襲的な手順を実行する必要性を回避することができる。
【0123】
癌は、進行癌の患者において、治療後に頻繁に再発する。この場合及び他の場合において、この発明のアッセイは、ビメンチン遺伝子のサイレンシングと関連する癌の状態を経時的にモニターするのに有用である。癌が進行している被験者については、最初の試料を採取したときには幾つかの又はすべての試料にビメンチンマーカーが存在せず、その後、第二の試料を採取したときに少なくとも一つの試料に出現することがありうる。癌が退行している被験者については、ビメンチンマーカーは、最初の試料を採ったときに一つ又は幾つかの試料中に存在して、その後、第二の試料を採ったときにはこれらの試料の幾つか又は全部に存在しないことがありうる。
【0124】
ここに記載した方法を利用する試料は、本質的に、関心ある如何なる生物学的材料であってもよい。例えば、試料は、被験者からの体液試料、被験者からの組織試料、被験者からの固体又は半固体試料、被験者に由来する一次細胞培養物又は組織培養物、細胞株からの細胞、又は細胞若しくは組織培養物からの培地若しくは他の細胞外物質、又は異種移植片(第二の被験者例えば免疫無防備マウス中で培養された第一の被験者例えばヒトからの癌の試料を意味する)であってよい。用語「試料」は、ここで用いる場合、被験者から直接得られる生物学的材料(一次試料として記載されうる)並びに一次試料の任意の操作された形態又は部分の両方を包含することを意図している。試料は又、生物学的材料を外因性液体と接触させて、その接触した生物学的材料の幾らかの部分を含む洗浄液を生成することによっても得ることができる。その上、用語「試料」は、少なくとも一種の添加剤例えば防腐剤、キレート化剤、抗凝固因子などと混合した後の一次試料を包含することを意図している。
【0125】
ある具体例において、体液試料は、血液試料である。この場合には、用語「試料」は、患者から直接得られた血液のみならず、血液の画分例えば血漿、血清、細胞画分(例えば、血小板、赤血球及びリンパ球)、タンパク質調製物、核酸調製物などをも包含することを意図している。ある具体例において、体液試料は、尿試料又は結腸排出物試料である。ある具体例において、体液試料は、大便試料である。
【0126】
被験者は、好ましくは、ヒトの被験者であるが、ここに開示した分子マーカー(特に、他の動物に由来するそれらの同族体)は、他の動物においても同様に有用であるということは予想される。他の具体例において、生物学的材料の分離した部分を得ることなく、生物体中で直接ビメンチンマーカーを検出することは可能であろう。かかる場合には、用語「試料」は、検出工程に含まれる試薬又はデバイスと接触する生物学的材料の部分を包含することを意図している。
【0127】
ある具体例においては、MSP反応においてテンプレートとして利用されるDNAは、体液試料から得られる。好適な体液の例は、血液、血清、血漿、血液由来の画分、大便、結腸排出物又は尿である。他の体液も又、利用することができる。それらは、被験者から容易に得ることができ、多くの病気についてのスクリーニングのために利用することができ、血液及び血液由来の画分は、特に有用である。例えば、結腸直腸癌の患者におけるDNAの変化を、被験者の血液において検出することができるということが示されている(Hibi等、1998, Cancer Res, 58:1405-7)。血液由来の画分は、血液、血清、血漿、又は他の画分を含むことができる。例えば、細胞画分は、5mlの全血液を10分間重力の800倍で遠心分離することによって、「バフィーコート」(即ち、白血球富化血液部分)として調製することができる。赤血球は、最も速く沈降し、遠心管の最も底の画分として存在する。バフィーコートは、赤血球の上に薄いクリーム状の白い層として存在する。血液の血漿部分は、バフィーコートの上に層を形成する。血液由来の画分は又、他の様々な方法で単離することもできる。一つの方法は、特定のサイズ又は密度の細胞を富化させるための遠心分離で用いる勾配から画分を採取することによるものである。
【0128】
次いで、これらの体液由来の試料からDNAを単離する。かかる試料からのDNAの単離のための手順は、当業者には周知である。一般に、かかるDNAの単離手順は、例えば、試料中に存在する任意の細胞の洗剤を利用した溶解を含む。細胞溶解後、一般に、タンパク質を様々なプロテアーゼを用いてDNAから除去する。RNAは、RNアーゼを用いて除去する。次いで、一般に、DNAを、フェノールを用いて抽出し、アルコール中で沈殿させて、水溶液中に溶解させる。
【0129】
VI.ビメンチン関連疾患の治療方法
この出願の更に別の面は、細胞におけるビメンチン遺伝子の減少した発現又は過剰発現から生じるビメンチン関連疾患の治療方法に関係する。かかるビメンチン関連増殖性疾患(例えば、結腸新生物)は、様々な病的細胞増殖状態から生じうる。ある具体例において、ビメンチン関連増殖性疾患の治療には、ビメンチン遺伝子発現又はビメンチン活性の調節が含まれる。用語「調節する」は、ビメンチンが過剰発現される場合にはその発現の抑制を、又はビメンチンが過少発現される場合にはその発現の増大を構想している。
【0130】
一具体例において、本発明は、ビメンチン遺伝子構築物を、ビメンチンタンパク質が誤発現され又は発現されない細胞におけるビメンチンタンパク質(SEQ ID NO:1)の機能を再構成するなどのための、遺伝子治療プロトコールの一部分として利用することによる治療方法を提供する。説明のために、病的な又は異常な増殖を示す細胞型は、おそらく、少なくとも部分的に、ビメンチンタンパク質の機能に依存している。例えば、ビメンチンタンパク質をコードする遺伝子治療用構築物は、ビメンチン遺伝子のサイレンシングと関係する結腸新生物において利用することができる。
【0131】
ある具体例において、この発明は、ビメンチンの再発現を誘導する薬剤を利用する治療方法を提供する。ビメンチン関連疾患細胞におけるビメンチン遺伝子発現の喪失は、少なくとも部分的に、ビメンチンヌクレオチド配列のメチル化のためでありえて、メチル化抑制剤例えば5−デオキシアザシチジン又は5−アザシチジンを、それらの病気の細胞に導入することができる。他の類似の薬剤は、当業者に公知であろう。好適具体例において、このビメンチン関連疾患は、ビメンチンヌクレオチド配列の増大したメチル化と関係する結腸新生物である。
【0132】
ある具体例において、この発明は、核酸アプローチ例えばアンチセンス核酸、リボザイム又はトリプレックス剤を利用して、mRNAをアンチセンス核酸若しくはトリプレックス剤でマスクすることにより又はそれをリボザイムで開裂させることによって、特異的なビメンチンmRNAの転写又は翻訳をブロックする治療方法を提供する。かかる病気には、例えば、神経退行性疾患が含まれる。アンチセンス核酸は、特異的mRNA分子の少なくとも一部分と相補的なDNA又はRNA分子である(Weintraub, Scientific American, 262:40, 1990)。この細胞において、アンチセンス核酸は、対応するmRNAとハイブリダイズして、二本鎖分子を形成する。これらのアンチセンス核酸は、このmRNAの翻訳に干渉する(二本鎖のmRNAは、翻訳されないので)。約15ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが好適である(それらは、容易に合成されて、標的のビメンチンを過剰生産する細胞に導入したときに問題を引き起こすことが一層長い分子よりもありそうにないので)。転写を失速させるためのオリゴヌクレオチドの利用は、該オリゴマーが二重らせんDNAに巻き付いて三重らせんを形成するので、トリプレックス戦略として公知である。それ故、これらのトリプレックス化合物は、選択した遺伝子上のユニーク部位を認識するようにデザインすることができる(Maher等、Antisense Res. and Dev., 1(3):227, 1991;Helene, C., Anticancer Drug Design, 6(6):569, 1991)。リボザイムは、他の一本鎖RNAを、DNA制限エンドヌクレアーゼに類似した仕方で、特異的に開裂させる能力を有するRNA分子である。これらのRNAをコードするヌクレオチド配列の改変によって、RNA分子中の特異的ヌクレオチド配列を認識してそれを開裂させる分子を工作することができる(Cech, J.Amer.Med.Assn., 260:3030, 1988)。
【0133】
本発明は又、ビメンチンタンパク質により媒介される増殖性又は遺伝学的疾患を治療するための遺伝子治療をも提供する。かかる治療は、その治療効果を、ビメンチンアンチセンスポリヌクレオチドの、増殖異常を有する細胞への導入によって達成する。或は、完全長のビメンチンをコードするポリヌクレオチドを病気の細胞に導入することは望ましいであろう。
【0134】
アンチセンスビメンチンポリヌクレオチド又はビメンチン遺伝子の送達は、組換え発現ベクター例えばキメラウイルス又はコロイド分散系を利用して達成することができる。アンチセンス配列の治療用の送達のために特に好適なのは、標的を定めたリポソームの利用である。ここに教示した遺伝子治療に利用することのできる様々なウイルスベクターには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、又は好ましくはRNAウイルス例えばレトロウイルスが含まれる。好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウス又はトリレトロウイルスの誘導体である。単一の外来遺伝子を挿入することのできるレトロウイルスベクターの例には、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)及びラウス肉腫ウイルス(RSV)が含まれるが、これらに限られない。好ましくは、被験者がヒトである場合には、ベクター例えばテナガザル白血病ウイルス(GaLV)が利用される。幾つかの更なるレトロウイルスベクターは、多くの遺伝子を組み込むことができる。これらのベクターのすべては、形質導入された細胞を同定して生成することができるように、選択マーカーをトランスファーし又は組み込むことができる。関心あるビメンチン配列を、例えば、特異的標的細胞上のレセプターに対するリガンドをコードする他の遺伝子と共に、ウイルスベクターに挿入すれば、そのベクターは、標的特異的である。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質又はタンパク質を結合することにより、標的特異的とすることができる。好適なターゲティングは、レトロウイルスベクターを標的とする抗体を利用することにより達成される。当業者は、レトロウイルスゲノムに挿入することができ又はウイルスエンベロープに結合させて、アンチセンスビメンチンポリヌクレオチド又はビメンチン遺伝子を含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にする特異的ポリヌクレオチド配列を知るであろう(或は、過度の実験をすることなく、容易に確かめることができる)。
【0135】
この発明は又、ビメンチン5’隣接ポリヌクレオチド又はビメンチン構造遺伝子に作動的に結合されたビメンチン5’隣接ポリヌクレオチドを製薬上許容しうる賦形剤又は媒質中に含む医薬又は医薬組成物であって、ビメンチン関連細胞増殖性疾患例えば結腸新生物の治療に利用される当該医薬又は医薬組成物にも関係する。
【0136】
典型的具体例
この発明は、今や、一般的に記載されており、それは、下記の実施例を参照することにより、一層容易に理解されよう(該実施例は、単に、本発明のある面及び具体例の説明の目的のために含まれるものであり、この発明を制限することを意図するものではない)。
【実施例】
【0137】
実施例1:
1.細胞培養及び5−アザシチジン処理
これらの培養物を生育させて、以前に記載されたように処理した(Veigl等、1998, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 95:8698-8702)。最適許容投与量を、各処理される株について測定し、幾つかの株については、1〜3μg/mlに及ぶ2種類の投与量を用いた。
【0138】
2.メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼアッセイ(例えば、HpaIIアッセイ)
我々は、潜在的にメチル化されうるCpG濃密領域を含むビメンチン遺伝子の上流及び該遺伝子内のゲノム配列(ここでは、5’−ビメンチンゲノム配列と呼ぶ)を試験した(図1及び6参照)。このCpGリッチな領域のメチル化を試験するために、我々は、先ず、HpaIIアッセイを利用した。試料のDNAを、メチル化感受性酵素のHpaIIで消化してから、PCRプライマー対によって増幅した。DNAがメチル化されている場合には、それは、HpaII消化に耐性であり、従って、PCR産物が生成される。他方、DNAがメチル化されていない場合には、それは、HpaII消化を受けやすく、従って、PCR産物は生成されない。CpGジヌクレオチドの位置は、ビメンチン遺伝子の5’ゲノム領域内にバルーンとして示されており、このゲノム領域の4つのサブドメインA〜Dを、結腸癌における異所的メチル化について試験した(図1)。これらのHpaIIアッセイに用いたPCRプライマーの位置も又、図1に示してある。HpaIIアッセイにおいてA、C及びD領域を増幅するために利用したPCRプライマーの配列は、図13に与えてある。
【0139】
3.結腸癌細胞における減少したビメンチン発現
RT−PCRは、ビメンチンが、正常な結腸では十分に発現されるが、結腸癌細胞株では僅かしか発現されないことを示した(図2)。メチル化がビメンチン遺伝子発現のサイレンシングの原因であるということを確立するために、ビメンチンDNAのメチル化を有する細胞株を、5−アザシチジン(5−アザC)(脱メチル化剤)で処理した。図2に示したように、5−アザC処理は、12の結腸癌細胞株の内の9つ(V400、V429、V503、RCA、V5、RKO、V432、V703及びV457)でビメンチン発現を再活性化した。
【0140】
4.ビメンチンは、結腸癌細胞株で、頻繁にメチル化されて、サイレンシグを受ける
C領域内のビメンチンゲノム配列のメチル化を、結腸癌細胞株(図3)又は結腸腫瘍(図4〜5)におけるHpaIIアッセイにより検出した。PCR増幅を、未消化(U)、メチル化感受性制限酵素HpaIIでの消化(H)、又はメチル化に関係ない酵素Msp1での消化(M)後に、30又は40サイクルで行なった。3つの癌でない正常組織(NN)は、すべてメチル化されていないが、10の結腸癌細胞株の9つは、すべてメチル化を示している(図3)。C領域のビメンチンゲノム配列のメチル化は又、対にした正常試料/腫瘍試料においてもHpaIIアッセイにより検出された。図4及び5に示したように、C領域におけるビメンチンの差次的メチル化は、40サイクルのPCR増幅後に、31の結腸腫瘍中16で検出された。
【0141】
全体として、HpaIIアッセイは、74%の結腸癌の診断の感度で且つ93%の特異性(結腸癌を有しない者の正常組織における2つの偽陽性)で、C領域におけるビメンチンのメチル化を示している。これらの結果は、ビメンチンを、結腸癌において差次的にメチル化される遺伝子として確立している。
【0142】
加えて、類似のHpaIIアッセイの結果は、結腸癌におけるビメンチンヌクレオチド配列の異所的メチル化の発生率は、A及びD領域(全ブロックとして)においてC領域より一層少ないことを示唆した。しかしながら、B領域及びA領域の3’部分も又、C領域に加えて、ビメンチンの癌特異的な異所的メチル化を有しうる良好な候補領域であり続けている。結腸癌細胞株におけるA、C、D領域のHpaIIアッセイの結果は、すぐ下の表IIにまとめてある。
【0143】
【表2】

【0144】
5.メチル化特異的PCR(MS−PCR)
各試料からの500ngのDNA(50μlの容積)を、NaOH(新しく生成した、終濃度0.2Mのもの)により、37℃で、15分間変性させた。次に、30μlの10mMハイドロキノン(新鮮)及び520μlの3.0M NaHSO4(新たに調製した重亜硫酸ナトリウム、pH5.0)を加えて、55℃で16時間インキュベートした。改変DNAを、ウィザードDNAクリーンアップシステム(Promega)を利用して精製した。この反応を、終濃度0.3MのNaOHによって、室温で、15分間、脱スルホン化して、10M NH4OAc(pH7.0)を終濃度3Mまで加えることにより中和した。DNAを、3容の無水エタノールにより、30分間、−80℃で沈殿させた。このDNAペレットを、次いで、蒸留水に溶解させて、約10ng/μlとした。重亜硫酸ナトリウム処理したDNAを、その後のメチル化特異的PCRのためのテンプレートとして利用した。
【0145】
ビメンチンゲノム配列のB及びC領域内のMS−PCR用のプライマーの位置は、MS−PCR対1〜5として示してある(図6)。更なるMS−PCRプライマー対1〜2及びMSP対6〜10の位置は、図16に示してある。これらのすべてのプライマー配列は、ビメンチン5’ゲノム配列に基づいてデザインされ、完全に改変されたDNAに特異的であった。MSP−PCRプライマーセット1、1−2及び3−10の配列は、図14及び15に示してある。二本鎖非メチル化ビメンチンDNAの重亜硫酸塩変換された配列(センス又はアンチセンス)(UF又はURとして示してある)を増幅するために用いる対照用プライマーセットの配列も又、図14及び15に与えてある。PCRを行って、該PCR産物を、3.0%アガロースゲル上で泳動させた。
【0146】
6.ビメンチンのメチル化を検出するためのMS−PCRの改良された感度及び特異性
我々は、更に、メチル化又は非メチル化DNAテンプレートの増幅に特異的なPCRプライマーを利用して、メチル化特異的PCR技術を、ビメンチンのCpGリッチ領域のメチル化の試験に利用した(図7〜12)。図7に示したように、MS−PCRプライマー対1、4及び5は、すべて、40サイクルのPCRによりアッセイした際に正常結腸組織でメチル化を検出した。対照的に、MS−PCRプライマー対3は、差次的にメチル化した領域を限定し、それは、ビメンチンを発現しない結腸癌細胞株でメチル化されるが、正常結腸組織又はビメンチンを発現する細胞株SW480ではメチル化されない。独立したMS−PCRアッセイは、MS-PCRプライマー対MS3が、ビメンチンのメチル化を、癌でない切除物からの正常結腸切除物において、たとえPCR反応を、2つの順次的40サイクル反応によって80サイクル行なった場合でも、検出しないことを確認した(図8)。
【0147】
図9に示したように、プライマー対MSP3を利用するMS−PCRアッセイを、10対の正常/腫瘍試料におけるC領域内のビメンチンのメチル化についてHpaIIアッセイと比較した。これらの10の場合において、プライマー対MSP3を利用するMS−PCRアッセイは、下記の表IIIにまとめたように、ビメンチンのメチル化の検出について実質的に改良された感度及び特異性を示した。特に、MS−PCRアッセイにおいて、MSP3プライマーは、結腸癌の検出について、70%の感度と90%の特異性(非メチル化腫瘍による1つの偽陽性)を示している。
【0148】
【表3】

【0149】
MSP3プライマーを利用するMS−PCRアッセイを、更に、図10(試料N1〜20及びT1〜20)及び図11(試料N21〜46及びT21〜46)に示した46対の正常/腫瘍試料の分析にまで拡張した。これらの46対の試料を、ビメンチンヌクレオチド配列のメチル化(M)又は非メチル化(U)についてのMSP3プライマーを利用する40サイクルのMS−PCRによってアッセイした。これらの46のケースにおいて、プライマー対MSP3を利用するMS−PCRアッセイは、結腸癌の検出について、下記の表IVにまとめたように、84%の感度及び96%の特異性を示した。
【0150】
【表4】

【0151】
このMS−PCR反応を、更に、図12に示した一組の結腸癌細胞株を特性決定するために利用した。これらの39の細胞株試料において、ビメンチンのメチル化についてのMS−PCRアッセイにおいて用いたMSP3プライマーは、結腸癌の検出について、82%の感度である。
【0152】
上記の結果は、ビメンチンゲノム配列(ヌクレオチド1〜6200、SEQ ID NO:2)が、結腸癌ではメチル化されているが正常組織ではメチル化されていない差次的メチル化領域を含むことを示している。これらのHpaIIアッセイ及びMSP3プライマー対を利用するMS−PCRアッセイは、ビメンチン5’隣接領域及びエキソン1−イントロン1領域内の差次的メチル化のアッセイに利用することができる。体液及び排出物例えば血液及び大便におけるメチル化ビメンチンの検出は、結腸癌及び前癌性結腸腺腫の有用な初期診断を与えることができる。
【0153】
7.ビメンチンのメチル化の検出のためのMS−PCRアッセイの更なる結果
ビメンチンゲノム配列における差次的メチル化の程度を更に研究するために、更なる6対のMS−PCRプライマーのセットを、B及びC領域内でデザインした。すべてのMS−PCRプライマーの配列を、図14及び15に示し、それらの位置を図16に示してある。
【0154】
これらのMS−PCRプライマーを、12の癌でない正常試料と12の結腸癌細胞株のセットにおいて評価した(図17及び18)。図14で太字で示したように、実行できる最良のプライマーセットは、最初に評価したプライマーMSP3、及び新たなプライマーセットのMSP1−2である。従って、MSP1−2は、B領域内にある新しい差次的メチル化領域を同定する。
【0155】
更に、ビメンチンヌクレオチド配列の異所的メチル化は、結腸新生物における初期事象であるようである。13の結腸腺腫試料を、ビメンチンDNAの異所的メチル化についてMSP3プライマーを利用するMS−PCR反応によりアッセイしたところ、かかるメチル化が13例中7つという結果であった。これらの結果を、下記の表Vにまとめた。
【0156】
【表5】

【0157】
加えて、図19は、顕微鏡的な初期の結腸新生物である幾つかの顕微解剖した異所的凹窩病巣(即ち、ACF、図19では、「A」と略記してある)におけるビメンチンの異所的メチル化の検出の結果を示している。対照的に、このビメンチンのメチル化は、同じ個人の顕微解剖された正常組織(図19では、「N」と略記してある)では検出されなかった。
【0158】
結論として、本発明は、ビメンチンのメチル化の少なくとも3つのアッセイ:1)MSP3プライマーを利用するMS−PCRアッセイ;2)MSP1−2を利用するMS−PCRアッセイ;及び3)HpaIIアッセイを開示する。これらのすべてのアッセイは、ビメンチンゲノム配列の差次的メチル化を癌細胞において(正常細胞ではない)同定するために利用することができる。ビメンチンゲノム配列中に存在する他のCpG配列に対する類似のアッセイを形成することができるというのはありそうなことである。かかるアッセイは、体液に適用した場合、癌例えば結腸癌、前癌性結腸腺腫の初期の検出のために、及び多くの異所的凹窩病巣のために結腸癌の発生の増大した危険にある個人の検出のために利用することができる。
【0159】
実施例2:
下記の実験及びデータは、更に、メチル化が結腸癌の高頻度マーカーであるビメンチンの特異的領域及びそれらの配列を特定する。加えて、これらのデータは、これらの配列についてのアッセイを特定する。
【0160】
図32〜34は、NCBIヒトゲノム配列エントリーAL133415の塩基対56700〜58800のビメンチン5’ゲノム領域の図式表示を示す概要である。ボックスは、ビメンチンのA、B、C及びD領域を示している。以前のHpaII消化アッセイは、A及びD領域が、癌ではメチル化されていないことを示した。従って、C中の領域を、メチル化特異的PCRアッセイによって徹底的に調べた。図上のバルーンは、潜在的メチル化の標的であるCpGジヌクレオチドを示している。黒いバルーンは、集団多型であるCpGを示している。図32は、A〜B領域を示しており、図33〜34は、C〜D領域を示している。図の下のバーは、種々のメチル化特異的PCR反応(MSP1〜MSP50と番号付けられたものなど)によって調べられた領域を示している。これらの図において、MS−PCR反応の主な結果は、バーの隣りに示されている。最も左側の反応のセットは、12の癌でない正常試料におけるMS−PCRの結果であり;陰性の結果が、好適な結果である。最も右側の反応のセットは、11の結腸癌細胞株のアッセイの結果であり;好適な結果は、陽性反応である。
【0161】
図32〜34のMS−PCRアッセイは、11の結腸癌細胞株の、12の癌でない正常結腸試料と比較しての、45サイクルのMS−PCRでのアッセイにより測定して、5つの異なるグループに類別された。第一のグループ(図32のMSP1、MSP14、MSP17;図33のMSP3、MSP20A、MSP29、MSP30、MSP31;及び図34のMSP50を含む)は、結腸癌細胞株の高いパーセンテージで、強いMS−PCRゲルバンドで、メチル化を検出し、癌でない正常試料では0%のメチル化を検出したアッセイを示す。これらの反応の最良のものは、更に、下線を付けた数字で示されており、これらの内で最も良いものは、更に、下線を付けた太字の数字で示されている。第二のグループ(図33のMSP8、MSP22A、MSP23、MSP24、MSP32を含む)は、結腸癌細胞株の高いパーセンテージで、弱いMS−PCRゲルバンドで、メチル化を検出し、癌でない正常試料では0%のメチル化を検出したアッセイを示す。第三のグループ(図33のMSP33;図34のMSP35、MSP36、MSP37、MSP40、MSP41、MSP47を含む)は、結腸癌細胞株の高いパーセンテージで、強いMS−PCRゲルバンドで、メチル化を検出し、癌でない正常試料中で10%のメチル化を有する試料を検出したアッセイを示す。第四のグループ(図33のMSP21;及び図34のMSP10、MSP38、MSP39、MSP43、MSP44、MSP45を含む)は、結腸癌細胞株の高いパーセンテージで、強いMS-PCRゲルバンドで、メチル化を検出し、癌でない正常試料中で20%のメチル化を有する試料を検出したアッセイを示す。第五のグループ(図33のMSP2、MSP6、MSP7、MSP9、MSP25A、MSP26、MSP27、MSP28;図34のMSP5、MSP42、MSP46、MSP48、MSP49を含む)は、結腸癌細胞株の高いパーセンテージで、強いMS−PCRゲルバンドで、メチル化を検出し、癌でない正常試料中で30%のメチル化を有する試料を検出したアッセイを示す。
【0162】
図35は、図32〜34にまとめたMS−PCR反応のためのプライマーの配列を与えている。MFは、フォワードプライマーを示し、MRは、リバースプライマーを示している。プライマーは、センスゲノム鎖の重亜硫酸塩変換された配列を増幅すると推定される。アンチセンスゲノム鎖の重亜硫酸塩変換された配列を増幅するプライマーは、(ASS)により示されている。この表は又、増幅生成物に対応するゲノム中の位置(クローンAL133415の塩基対ナンバリングシステムに対するもの)をも与える。この表は又、増幅された断片の長さをも与える。暗い影を付けたプライマーは、最良の及び好適な反応を与える。
【0163】
図36〜37は、種々のMS−PCRアッセイの技術的感度及び特異性を示している。図41は、更に試験した2つのプライマーセット(MSP29M及びMSP50M)で、図36及び37を補っている。
【0164】
図36の左側は、種々のMS−PCR反応についての技術的特異性を示している。左奥には、癌でない正常な結腸組織において、45又は90サイクルのPCRで行われたMS-PCR反応の結果が示されている。90サイクルの反応は、45サイクルのPCR反応物からアリコートを採り、新たなPCR反応物中希釈して、更なる45サイクルにつき反応させることにより行われた。示したこれらの反応について、MS−PCR反応は、正常組織についての90サイクルまでのPCRにおいて偽陽性を検出しない。陽性対照の結腸癌細胞株は、すぐ右隣に示してある。右奥には、異なるMS-PCR反応の技術的感度が示されている。中央及び右端の反応のセットは、Vaco5(ビメンチンのメチル化を有する細胞株)からのDNAに対して行なったMS−PCRの希釈シリーズを示している。メチル化したVaco5DNA投入量の100ピコグラムのレベルまで陽性反応が得られている。
【0165】
図37は、更なるプライマーセットについての、同様のデータを示している。左蘭は、11の結腸癌細胞株の45サイクルのMS−PCRのパネルに対するアッセイの結果を示している。右側の結果は、癌でない正常組織のグループに対する45及び90サイクルのMS−PCRを評価する欄を示している。隣りは、Vaco5DNAの増大する希釈物に対して候補の反応物をアッセイしている希釈シリーズのアッセイを示す2つの欄を示している。最良の反応物例えばVIM−MSP50Mは、殆どの結腸癌細胞株の検出について高い技術的感度を示し、正常結腸の検出についての低い陽性率を示し、そしてVaco5DNAの希釈物の検出についての高い感度(投入DNAの50ピコグラムまで)を示している。右側に示したこれらの2つの希釈シリーズは、予め重亜硫酸塩処理した正常及びVaco5DNAを混合して行なう(中央欄)か、先ずVaco5及び正常DNAを混合し;その後、その希釈混合物を重亜硫酸塩処理することにより行なう(右端欄)かどうかで異なっている。
【0166】
種々のビメンチンMS−PCRプライマーを、47の結腸癌細胞株におけるメチル化の検出につき評価した。これらのアッセイにおいて、MSP−29は、最大感度であり、細胞株の80%でメチル化を検出している。増大した感度は、MSP−29をMSP−14又はMSP−17と組み合せることにより達成されたものであろう。別々の実験において、種々のビメンチンMS−PCRプライマーを、同様に、結腸癌患者の広範なグループに由来するマッチした結腸癌組織及び対にした正常結腸組織のパネルにおいて評価した。結腸癌の検出感度は、これらのアッセイにおいて、85%を超えている。MSP−29は、一つの正常試料をメチル化されているとして検出しただけで、85%の感度を示しており、それ故、好適な反応である。他の別々の実験において、種々のビメンチンMS−PCRプライマーは、同様に、13の結腸腺腫試料のパネルにおいて評価された。62〜69%の感度が、腺腫試料における異所的メチル化の検出について達成されている。
【0167】
図21〜26は、ビメンチンゲノム領域の限定的配列を与えている。配列は、センス及びアンチセンスビメンチンゲノム領域について、ビメンチンセンス鎖のメチル化及び非メチル化形態に由来するテンプレートの重亜硫酸塩変換された配列について、及びビメンチンアンチセンス鎖のメチル化及び非メチル化形態に由来するテンプレートの重亜硫酸塩変換された配列について与えられている。各図は、A〜D領域を包含するビメンチン遺伝子の5’領域に及ぶ、NCBIヒトゲノムクローンAL133415の塩基対56,822〜58,822に対応する配列を与えている。各図は、結腸癌で差次的にメチル化されることが示されている(即ち、結腸癌において高頻度でメチル化されており、正常結腸組織ではメチル化されていない)塩基対57,427〜58,326からの領域を太字で示している。この領域は、我々が限定した高品質MS−PCR反応のすべてを包含する。その上、各図は、bestMS−PCR反応に対応するMS−PCRプライマーによって調べられる特定の配列に下線を付してある。
【0168】
特に、図21は、AL133415配列の56,822〜58,822に対応するビメンチンセンス鎖配列を5’〜3’方向で示しており、57,427〜58,326の差次的にメチル化される領域を太字で示してある。図22は、図21に対応するビメンチン遺伝子のセンス鎖に由来するメチル化テンプレートの重亜硫酸塩変換された配列を示しており、差次的にメチル化される領域57,427〜58,326に由来する配列を太字で示している。図23は、図21に対応するビメンチン遺伝子センス鎖に由来する非メチル化テンプレートの重亜硫酸塩変換された配列を示しており、差次的にメチル化される領域57,427〜58,326に由来する配列を太字で示している。図24は、AL133415配列の56,822〜58,822に対応するビメンチンアンチセンス鎖の配列を示しており、57,427〜58,326に由来する差次的にメチル化される領域を太字で示している。配列が3’〜5’方向で書かれていることに注意されたい。図25は、図24に対応するビメンチン遺伝子のアンチセンス鎖に由来するメチル化テンプレートの重亜硫酸塩変換された配列を示しており、差次的にメチル化される領域57,427〜58,326に由来する配列を太字で示している。配列が3’〜5’方向に書かれていることに注意されたい。図26は、図24に対応するビメンチン遺伝子のアンチセンス鎖に由来する非メチル化テンプレートの重亜硫酸塩変換された配列を示しており、差次的にメチル化される領域57,427〜58,326に由来する配列を太字で示している。配列が3’〜5’方向に書かれていることに注意されたい。
【0169】
上記のデータは、差次的メチル化がヒトの結腸癌及び前癌性腺腫の特異的マーカーであるビメンチン遺伝子の領域を発見したこの発明の最終的開示にとって核となる情報を提供する。この出願は又、下記のように、幾つかの更なる支持データも提供する。
【0170】
図38は、正常及び腫瘍の対の種々のビメンチンMS−PCR反応によるアッセイからの一次データを示している。図42は、図38を補うものであり、更に、3つのプライマーセット(MSP29M、MSP47M及びMSP50M)を利用するMS−PCRアッセイの臨床的感度を示している。
【0171】
図39及び40は、結腸の正常/腫瘍対、結腸腺腫、結腸癌細胞株、及び癌でない正常結腸試料(N.C.N)についての種々のMS−PCR反応によるアッセイからの一次データを示している。図43は、図39及び40を補うものであり、更に、3つのプライマーセット(MSP29M、MSP47M及びMSP50M)を利用する種々のMS−PCRアッセイの臨床的感度を示している。
【0172】
図44は、3つのプライマーセット(MSP29、MSP47及びMSP50)を利用するMS−PCRアッセイからの生データを与える。これらのデータは、細胞株、N/T対及び結腸腺腫試料についての3つの表に、それぞれ示してある。メチル化試料を赤で暗号化してMと標識し、非メチル化試料を緑色で暗号化してUと標識した。V−MSP29、VMSP−47、及びV−MSP50は、ビメンチンプライマーである。H−MSP5は、比較のためのコントロールプライマー(HLTF−MSP5)である。上記の感度データのまとめを下記の表VIに列記した。例えば、MSP29は、を示している。細胞株の同定について80%の感度を示しており(41株を試験)、腫瘍の同定について85%の感度を示している(46腫瘍を試験)。MSP50は、結腸癌細胞株の同定について73%の感度を示し、結腸癌腫瘍の同定について87%の感度を示している。
【0173】
【表6】

【0174】
まとめると、このデータは、ビメンチン遺伝子配列の塩基対57,427〜58,326の結腸癌及び腺腫特異的な異所的メチル化の説明を与え、癌特異的反応における異所的メチル化を単一反応で約85%の感度で検出することができ、他のMS−PCR反応によるパネルとの組合せにおいては約90%の感度で検出することのできるMS−PCR反応を与えている。
【0175】
参考文献の組込み
本書で言及したすべての刊行物及び特許を、個々の刊行物又は特許が特に、個別に、参考として援用されると示されているかのように、参考として、そっくりそのまま本明細書中に援用する。矛盾が生じた場合には、本願(定義を含む)が、調整する。
【0176】
同等物
主題の発明の特定の具体例を論じてきたが、上記の明細書は、説明のためのものであって、制限するためのものではない。この明細書及び請求の範囲を概観すれば、この発明の多くの変形物が、当業者には明らかとなろう。この発明の全範囲は、同等物の全範囲と共に請求の範囲を及びかかる変形物と共に明細書を参照することによって決められるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者における結腸新生物を検出する方法であって、該被験者からの試料におけるビメンチンタンパク質又は核酸の発現を検出することを含む当該方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記検出することが、前記試料におけるビメンチンタンパク質又は核酸の量を定量的に測定することを含む当該方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記定量的に測定することが、前記試料におけるコントロールのタンパク質及び核酸の量に対しての、前記試料におけるビメンチンタンパク質又は核酸の量を測定することを含む当該方法。
【請求項4】
試料が、血液、血清、血漿、血液由来の画分、大便、尿、及び結腸排出物よりなる群から選択する体液である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
試料が、固体又は半固体試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
試料が、組織試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
試料が、結腸腫瘍由来の細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
試料が、結腸新生物を有すると疑われる被験者、又は結腸新生物を有することが既知の被験者に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記結腸新生物が結腸癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記結腸新生物が腺腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ビメンチンタンパク質をイムノアッセイにより検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ビメンチン核酸を直接検出アッセイにより検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ビメンチン核酸を増幅アッセイにより検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、ビメンチン核酸を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写(RT)、ノーザンブロット、ドットブロット、マイクロアレイ、定量的PCR及びリアルタイムPCRのうち1以上を使用することを含む方法により検出する、該方法。
【請求項15】
結腸新生物を経時的にモニターする方法であって、該方法は、下記:
a)被験者からの試料中のビメンチンタンパク質又は核酸発現を最初に検出し;そして
b)同じ被験者からの試料中のビメンチンタンパク質又は核酸発現を一層遅い時点で検出する;
ことを含み、
最初の時点で採ったビメンチンタンパク質又は核酸発現に対する一層遅い時点で採ったビメンチンタンパク質又は核酸発現の増加は、癌の退行を示し;
最初の時点で採ったビメンチンタンパク質又は核酸発現に対する一層遅い時点で採ったビメンチンタンパク質又は核酸発現の減少は、癌の進行を示す
当該方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記検出することが、前記試料におけるビメンチンタンパク質又は核酸の量を定量的に測定することを含む当該方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記定量的に測定することが、前記試料におけるコントロールのタンパク質及び核酸の量に対しての、前記試料におけるビメンチンタンパク質又は核酸の量を測定することを含む当該方法。
【請求項18】
試料が、血液、血清、血漿、血液由来の画分、大便、尿、及び結腸排出物よりなる群から選択する体液である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
試料が、固体又は半固体試料である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
試料が、組織試料である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
試料が、結腸腫瘍由来の細胞を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
試料が、結腸新生物を有すると疑われる被験者、又は結腸新生物を有することが既知の被験者に由来する、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記結腸新生物が結腸癌である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記結腸新生物が腺腫である、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
ビメンチンタンパク質をイムノアッセイにより検出する、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
ビメンチン核酸を直接検出アッセイにより検出する、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
ビメンチン核酸を増幅アッセイにより検出する、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
請求項15に記載の方法であって、ビメンチン核酸を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写(RT)、ノーザンブロット、ドットブロット、マイクロアレイ、定量的PCR及びリアルタイムPCRのうち1以上を使用することを含む方法により検出する、該方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【公開番号】特開2011−200237(P2011−200237A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105798(P2011−105798)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【分割の表示】特願2006−523432(P2006−523432)の分割
【原出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(597138069)ケース ウエスタン リザーブ ユニバーシティ (16)
【Fターム(参考)】