説明

大腿切断患者用自動義足

切断患者の大腿連結部(100)に適用される大腿義足(P)であって、患者の大腿連結部に連結される上部ヒンジ(1)、膝の動きを再現する機能を有する関節軸(2)、大腿部に駆動可能に連結する脛骨・ふくらはぎ筋肉装置(3)およびふくらはぎ筋肉の機能をいくらか再現し、義足がブレーキをかけ、歩行の典型的な連続したスイングとスタンス段階を可能にするダンパ(5)とを備える。ダンパはシリンダ(5c)を備え、ピストン(10)およびステム(9)が互いに連結作用して、義足にかかる力に対応して、該ダンパの減衰反応をもたらす。特に、力変換器はダンパ、特にステムに設ける。マイクロプロセッサは変換器から力信号を受信し、検出された力信号に応じてダンパの反応を調整する手段を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科器具の分野に関し、より正確には、大腿切断患者の自動義足に関する。
【0002】
さらに、本発明はこの義足を制御することの可能な電子装置に関する。
【背景技術】
【0003】
種々の大腿切断患者用の義足が知られている。これらの種類の多くは、膝の動きを再現する関節軸の周りに枢動自在に相互連結する大腿部および脛骨部を設けた構造を有する。さらに、大腿部を脛骨部と接続する油圧ダンパが設けられている。これらの義足の例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に開示されている。
【0004】
脛骨部は足首によって、つま先、足裏およびかかとを有する足に関節接合される。膝の動きは、つま先を地面から上げてかかとが着地するまでの間のいわゆるスイング段階と、かかとの着地、足裏の荷重かけおよびつま先の持ちあげから成るいわゆるスタンス段階とに分けることができる。スタンス段階において、大腿部の脛骨部との相対的な動きを減衰させることによって、脛骨部に、大腿部と脛骨部との間の結合ヒンジ周りのブレーキがかけられる。
【0005】
特許文献5におけるものように、いくつかの義足の例では、調整可能な絞りを有するバルブを用いて、膝の曲げ伸ばしの様々なステップにおいて、プログラムおよびマイクロプロセッサによって制御される調整可能なバルブでダンパのブレーキ作用を変化させる。特許文献6もまた、ダンパの流体が通過する絞り断面を設けている。流体は、電気粘性流体であり、電場の影響を受けると減衰率が変化する。力変換器が脚に作用する力のデータを伝達し、マイクロプロセッサがこのデータによって油圧ダンパの粘度を調整する。
【0006】
関節軸は、上述した文献に述べられるような単一のヒンジであってもよいし、特許文献7に述べられるような、モータまたは電磁ブレーキであってもよい。関節にブレーキがかけられる段階、もしくは関節が自由なままである段階、または特に関節が加速させられる段階の選択は、脛骨部に配置された力変換器によって行われ、当該選択によって、モータまたはブレーキを作動させることが可能となる。さらに特許文献7は、人工装具の足によって作動させられ、関節に配置された油圧モータを作動させる油圧ポンプが散逸させるエネルギーを使ってエネルギーを回収することを教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭52−047638号公報
【特許文献2】英国特許第826314号
【特許文献3】米国特許第4212087号
【特許文献4】米国特許第3599245号
【特許文献5】英国特許第2216426号
【特許文献6】英国特許第2244006号
【特許文献7】仏国特許第2623086号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の大腿切断患者用義足の多くの課題の中の1つは、いわゆるトウクリアランス(Toe Clearance)と呼ばれる、スイング段階中につま先が地面にぶつかるリスクである。特に低速歩行において、大腿骨の動的作用が最も小さいことが人工装具の足を少し持ち上げる際に害を及ぼす。人工装具の足の剛性はスイング段階で大腿骨脛骨間の十分な伸展の役に立たないため、スイング段階につま先が地面にあたるリスクが生じる。
【0009】
別の課題は、高齢者の患者または大腿切断後の歩行回復を行う患者が平らな地面を歩く際の、脛骨と大腿骨の再整列である。実際、大腿部と脛骨部との間の上死点(TDC)が通過してしまうと、脛骨部のスイング作用が最小であることによって、大腿部と脛骨部との再整列に困難が生じる。
【0010】
さらなる課題は、従来の義足は歩行サイクル内でペースを調整することが不可能なことである。こういった必要性は、思わぬ障害物に出会った場合に、それを通り越すために速度を変える、または歩行を素早く停止させる際に感じられるものである。
【0011】
またさらなる課題は、従来の義足では、患者が義足に慣れてくるにつれて歩行のパラメータを徐々に調整していくことが難しいことである。通常は、義足を変える、または技術の専門家によって機械的な調整を行う必要がある。
【0012】
さらなる課題は、電池式モータまたは電動アクチュエータを必要とする義足の歩行可能距離にあり、これらを必要とする場合にはさらに、電池の充電段階を簡単なものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の全般的な目的は、切断患者の歩行能力を健常者の歩行能力と同様の状態に回復させる大腿切断患者用義足を提供することであり、これによって先行技術を改善し、そして上述の課題を解消することである。
【0014】
失くした肢のあらゆる特徴を再生する義肢を提供するのも本発明の特徴であり、具体的には、周囲のデータ、および周囲の空間に対する肢の相対的な位置に関するデータを検出できるようにする。
【0015】
本発明のもう一つの特徴は、肢の状態、特に肢が受ける応力・歪みに関するデータも検出でき、義足に関係する接合部の瞬間の剛性状態を分析できることである。
【0016】
本発明のさらなる特徴は、先行技術よりも優れた制御論理回路を有する人工肢を提供し、快適で安全な歩行を確実に行うための操作を選択できるようにすることである。
【0017】
また、本発明の特徴は、歩行中に膝の接合部および/または足首でのエネルギーの供給/散逸/回収を可能にし、特に、散逸を伴う歩行段階中に獲得して、肢からエネルギーの要求があればその段階中に使用することのできる一次エネルギー(例えば力学的仕事)を回収することのできる義肢を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる特徴は、患者によるエネルギーの消費を低減し、ペースに応じて反応し、種々のルートに適合し、義足からのエネルギー要求を最小限に抑え、大腿切断患者が自然な歩行を行えるようにする人工肢を提供することである。
【0019】
また本発明の特徴は、歩行能力が非常に制限されている患者、すなわち、高齢者または歩行の不安定な患者を補助する人工肢を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる特徴は、動的減衰を確実に行い、歩行中に快適さと安定を達成し、不自然なこわばった応答を回避する人工肢を提供することである。
【0021】
また、本発明のさらなる特徴は、膝の制御の安全性を増大させ、いわゆるトウクリアランス段階において大きなクリアランスを達成する人工肢を提供することである。
【0022】
本発明のさらなる特徴は、適切な変換器を適用することにより、地面に対するベクトル力としての荷重の位置を決定するよう適合された人工肢を提供することである。
【0023】
また、本発明のさらなる特徴は、足から地面への力の作用点およびその強さを決定することのできる人工肢を提供することである。
【0024】
本発明の目的の一つは、空間内の義足の位置、特に患者の身体に対する足の位置を感知し、そして認識することのできる人工肢を提供することである。
【0025】
また、本発明の特徴は、膝の応答の剛性を変化させることによって、衝撃の回避に役立つとともにカーブの存在するところで足首の位置を回復させ、安全性の高い歩行を確保するのみならず、患者が絶え間なく周囲に気を配らなくてもすむようにした人工肢を提供することである。
【0026】
本発明のもう一つの特徴は、歩行サイクル内で歩行のペースを変化させる人工肢を提供することである。
【0027】
本発明のもう一つの特徴は、充電および交換が簡単にできる電池により、義足の歩行可能距離を増やす人工肢を提供することである。
【0028】
本発明のこれらの、および他の特徴は、大腿切断患者用義足の1つの例示的義足であって、
大腿接合部に固定することのできる大腿部と、
膝の動きを再現する関節軸の周りに枢動自在に相互連結された脛骨部とを備え、
該脛骨部は、つま先、足裏およびかかとを有する足に足首によって関節接合されており、
前記膝の動きは、つま先を地面から持ち上げてかかとを着地させるまでの間のいわゆるスイング段階と、かかとの着地、足裏への荷重かけおよびつま先の地面からの持ち上げより構成されるいわゆるスタンス段階とを含み、
前記義足は、
油圧ダンパであって、前記大腿部および前記脛骨部にそれぞれ連結された上部ヒンジおよび下部ヒンジを有し、前記スタンス段階において、前記脛骨部に対して前記大腿部と前記脛骨部との間の膝関節周りにブレーキをかけるように前記大腿部に対する前記脛骨部の相対運動を減衰させ、且つ、シリンダ・ピストンおよび該ピストンにヒンジで留められたステムを有する該油圧ダンパと、
所定の力・位置関数に従って前記ダンパの減衰反応を調整する手段を有するマイクロプロセッサとを備える義足によって達成することができる。
【0029】
本発明の第1特定態様において、前記義足は、
前記ダンパ内に力変換器を備え、
前記マイクロプロセッサは、前記力変換器より力信号を受信し、前記ダンパからの力信号に応答して、前記ダンパの反応を調整する手段を作動させる。
【0030】
具体的には、前記力変換器は前記ステム内に配置する。好適には、前記力変換器は、モアハウスリング(Morehouse ring)等のリング動力計であり、
該リング動力計は、前記ステム内に形成された穴に設置されており、
該穴の軸は前記ステムの軸に直交している。
【0031】
あるいは、前記ダンパにおける前記力変換器は、前記ダンパの下部ヒンジに配置されたロードセルである。
【0032】
このように、ダンパの負荷状況の即座の検証および膝の動的挙動のフィードバック制御が可能である。
【0033】
有利には、前記義足は、前記大腿部内に力変換器を備え、
前記マイクロプロセッサは、前記大腿部内の前記力変換器から力信号を受信し、前記大腿部で生成された前記力信号に応じて、前記ダンパの反応を調整する手段を作動させる。
【0034】
有利な例示的実施形態において、前記大腿部の前記力変換器は、大腿骨の長手方向における大腿骨での作用を検知するように適合された第1力変換器と、大腿骨の直角方向における大腿骨での作用を検知するように適合された第2力変換器とを備える。このように、大腿骨およびダンパでの全体的な力の情報により、人工肢の張力状態を十分に決定することができる。
【0035】
例示する簡単な実施形態において、大腿骨の前記第2力変換器は、大腿骨の直交方向における大腿骨での力の信号のみを提供する。
【0036】
さらに、膝の動きを再現する位置変換器を関節軸に設けることができ、前記位置変換器は膝の回転を検知する。
【0037】
有利には、前記大腿部および前記脛骨部は、動きの最大進展段階であり、前記スイング段階の終わりである、歩行サイクルの始まりに、前記ダンパに一体化された機械的接合点によって特異点にある状態が検知する構造になる。このようにして、前記ダンパにおける前記力変換器は、この特異点にある状態においても、前記関節に伝わる実際の負荷を検知し、該検知した値を計算する前記マイクロプロセッサは、前記歩行におけるこのステップを識別し且つ制御することができる。
【0038】
有利には、関節の最大屈曲の状態であり、通常は歩行の一部ではない前記した状態は、特殊の変換器によって、または隣接領域が同じダンパに一体化されている場合にはダンパに一体化されている前記力変換器によって検出および決定される。それにより、マイクロプロセッサが人工肢に付与された負荷の全部の履歴を検知し、および正確には、その人工肢の安定性を脅かすおそれのある過負荷の発生を検知し、この場合には、適切な信号手段および緊急手段を作動させることができる。
【0039】
有利には、前記ダンパは、油圧タイプであり、且つ衝撃等の高荷重が存在する場合に油の流出を制御するよう適合されたブレードを有することにより患者に高い快適さを保証する。
【0040】
好適には、前記ダンパは、油圧タイプであり、且つ前記ピストンによって分けられる第1チャンバ(A)および第2チャンバ(B)を有し、
前記義足はさらに、
・補償チャンバと、
・前記補償チャンバから前記第1チャンバまでの第1一方向ダクトと、
・前記第1チャンバ(A)から前記補償チャンバまでの第2一方向ダクトであって、該第2一方向ダクトに沿って、前記マイクロプロセッサによって制御される調整可能流量弁が配置された該ダクトと、
・前記補償チャンバから前記第2チャンバまでの第3一方向ダクトと、
・第4ダクトとを備え、
該第4ダクトは、
・前記第2チャンバから前記補償チャンバまでの一方向ダクトであって、該一方向ダクトに沿って、前記マイクロプロセッサによって制御される調整可能流量弁が配置されたダクトと、
・前記第2チャンバおよび前記第1チャンバとの間の前記ステム内の一方向軸ダクトであって、前記ステムは前記第2チャンバを横断し、前記第2チャンバ内に複数の放射開口を備え、前記伸展段階の前記ステムの動きによって、前記開口部は徐々に遮られ、前記ピストンの動きに対してより高い抵抗を与えるダクトと
からなる群から選択したものである。
【0041】
特に、前記ステム上の前記補償チャンバと油シールチャンバとの間に第5ダクトを備え、
該油シールチャンバ内の圧力を前記補償チャンバの圧力と同じとすることで、前記油シールチャンバ内の圧力ピークを回避する。
【0042】
本発明の第2特定態様において、
前記足に力および位置変換器の配列を有する足底を備え、
該力および位置変換器の信号を前記マイクロプロセッサが計算することで、前記マイクロプロセッサは周囲に対する患者の足の相互作用モードを決定する。
【0043】
足底の可能な実施形態では、前記足底に位置する変換器により、その強さ、方向および位置成分に関する合成荷重ベクトルを決めることができ、これにより、マイクロプロセッサはダンパの反応を最も好適に調整することができる。
【0044】
足底のもう1つの実施形態において、前記足底に位置する変換器は合成荷重ベクトルの作用点に関するデータを与え、人工肢には1つ以上の力変換器が配置されており、前記マイクロプロセッサは、該力変換器の信号を、前記足底が生成した信号と共に計算することで、伝達された合成荷重ベクトルを決定することができる。
【0045】
有利には、前記人工肢は、足首に配置されている、脛骨と足の間の相対的傾斜を制御するよう適合された、角度位置の変換器をさらに有する。負荷は足首を必ず通過するので、この情報により、前記足底が与えた力ベクトルのデータと関連させて、前記力ベクトルに対応する足首の位置を決定することができる。
【0046】
本発明の第3特定態様において、前記膝関節軸は、歩行サイクルのいくつかの段階でエネルギーを供給し、他の段階でエネルギーを受給することのできるジェネレータ/モータを有し、
前記義足は、歩行サイクルの段階で、前記マイクロプロセッサによって制御される前記モータを介し、前記エネルギーを蓄積し、この蓄積したエネルギーを放出するよう適合されたエネルギー蓄積装置を備える。
【0047】
特に、前記膝関節に対応して配置された力および位置変換器を備えることで、前記エネルギー貯蔵装置と前記ジェネレータ/モータとの間のエネルギー交換を行わせ、それにより、エネルギーの供給/散逸/回収を可能とする。より詳細には、前記マイクロプロセッサに設けられた、前記膝関節に対応して配置された力および位置変換器から受信した信号に応じて作動するプログラム手段を備え、
前記マイクロプロセッサは前記モータ/ジェネレータに対し、該モータ/ジェネレータが脚の再整列段階ではモータとして、支持段階ではジェネレータとしてそれぞれ機能するように信号を送信する。
【0048】
このように、平らな地面を歩く場合の様な歩行の大部分では、大腿骨と脛骨の相対運動の中で、大腿骨から与えられるエネルギーを膝が散逸させるので、散逸するエネルギーをできる限り蓄積し、そして必要であれば足の関節が動く際にこの蓄積したエネルギーを戻す、高精度なエネルギー回収となる。より詳細には、前記マイクロプロセッサは安定機能を用いて着地する際に、ブレーキトルクで脛骨部のスイング作用を低減させる。これらの際に、膝によって散逸させられるエネルギーは、前記エネルギー貯蔵装置によって回収され、歩行サイクルのいくつかの段階、特に、脛骨を加速する際に、可変遅れで供給され、大腿骨との再整列を確実に実行させる。他の受動的な段階、例えば着席時等の力学的な仕事が人工肢に加えられる際には、エネルギーを貯蔵装置に蓄積する。
【0049】
そして、膝関節のブレーキ/モータ装置を使って、あらゆる歩行条件、特に低速度時において、脛骨部に対して大腿部の正しい配置を確保することが可能である。
【0050】
有利には、前記モータは、患者、特に切断手術直後の患者または高齢者が歩行に際してためらいがある場合に、脛骨の正しい再整列を確実にすることができる。
【0051】
好適には、義足のエネルギー消費を低減し、そしてモータ/ジェネレータシステムの歩行可能距離を増やすために、可変ピッチバネが提供され、それにより、理想的な剛性、すなわち、大腿部と脛骨部との間の小さな角度の移動には低い剛性、そして大きな角度の移動には高い剛性を有することを達成することができる。
【0052】
特に、これらの可変ピッチバネはらせん状のバネとし、直径ならびに一端で第1ピッチPおよび他端で第2ピッチPを有し、剛性が第1値Kおよび第2値Kとの間で連続的に推移するものとする。代替的に、ピッチの異なる2つの部分によってバネの特性を定める。
【0053】
有利には、前記脛骨部と前記足の間の前記足首関節は、さらにモータ/ジェネレータを有する。該モータ/ジェネレータは、弾性素子および/または減衰素子、およびマイクロプロセッサに接続する力および角度位置変換器と平行に配置することができる。
【0054】
このように、足首も、かかとが着地する際に、ジェネレータとして作用して脛骨と足の相対的な回転にブレーキをかけ、モータとして作用して足を持ち上げるために必要な力を提供する。
【0055】
有利には、足首のモータ/ジェネレータは、脛骨部に対する足の傾斜角を調整することが可能であり、より簡単で自然な方法で、スイング段階につま先が地面にぶつかるリスク(トウクリアランス)を避けることができる。
【0056】
この特徴により、前記義足は、歩行能力の低い切断患者、すなわち、高齢者や歩行中に歩行をためらう人に最適であり、このようにして歩行を補助する。
【0057】
スイング段階につま先が地面にぶつかるリスクを避けるために、マイクロプロセッサは、前記足首関節に対応して配置した前記力および位置変換器からの信号により、歩行の段階を認識し、スイング段階につま先が地面にぶつかるリスクを判断するように適合されたプログラム手段で、膝・足首のモータ/ジェネレータからなるシステムを管理し、脛骨部に対する足の傾斜角度を変更し、そのようなスイング段階につま先が地面にぶつかるリスクを避ける。従って、膝・足首システムは、患者の歩行の進歩に適応でき、より良く安全な性能を確実に提供する。
【0058】
有利には、膝と足首は同じエネルギー貯蔵装置を共有する。よって、膝に連結されたモータ/ジェネレータがモータとして動作しなければならない場合には、当該膝のモータ/ジェネレータは、足首に連結されたモータ/ジェネレータがジェネレータとして作動する段階に当該足首のモータ/ジェネレータが事前に生成し、エネルギー貯蔵装置に蓄積したエネルギーを使うことができる。
【0059】
このコンセプトの用途は階段を上ることである。足は1つの段に置かれ、そして、重心の前への動きによって、足首で仕事がなされ、これを蓄積することができる。このエネルギーは膝が患者の身体を持ち上げるために使われる。このように、膝と足首は互いに接続され、前記エネルギー貯蔵装置によってエネルギーを交換し、全体的なエネルギーの回収が達成される(全体的回収システム:Total Recovery System)。
【0060】
有利には、膝の接合部および足首の接合部に関連する前記モータ/ジェネレータデバイスは流体デバイスである。
【0061】
本発明の第4特定態様において、人工肢は、
同じ歩行サイクルにおける歩行のペースを調整するよう適合された手段を備え、
該手段は、少なくとも以下の変数、すなわち、時間、脛骨と大腿骨との間の相対回転角度、および該角度の時間による一次導関数からなる関数を与える。
【0062】
特に、同じ歩行サイクル内の歩行のペースを調整するよう適合された前記手段は閉曲線を有する。例えば、平らな地面の歩行は、平均歩行速度に応じて異なる振幅を有する同様の曲線のグループによって定義される。より正確には、同じ歩行サイクル内の歩行のペースを調整するよう適合された前記手段は、歩行サイクルを示すよう適合されたn次元空間に曲線を定義し、該曲線は、脛骨−大腿骨間角度とその時間による導関数によって描かれる、時間に対する脛骨の軌跡よりなる。
【0063】
平らな地面を歩行する場合、各曲線は、決定された平均速度での理想的な歩行サイクルを定義し、平均速度が変化するにつれて、曲線はその振幅を変えるが、曲線の形状は実質的に同じであるようにする。その結果、平面ないし多次元空間に描かれた同様の曲線のグループは、平らな地面の歩行、および平均速度などのパラメータを一義的に特定し、グループ中の曲線を互いに区別する。
【0064】
歩行サイクルの速度の変化を検知する手段、および脛骨を歩行サイクルのその段階に対応する曲線に沿わせる手段を設ける。このようにして、切断患者が歩行速度を変更する必要性を素早く認識し、次に続くサイクルの開始を待たずに、既に沿わせた曲線とは振幅が異なる曲線に脛骨が沿うように切り替えることができる。
【0065】
立ち止まる、座る、および立ち上がる際の典型的な動作は、今度は特別な曲線のグループによって定義することができる。同様に、上り坂での歩行、下り坂での歩行、階段の上り下り、自転車漕ぎ、スキーおよび他のどの種類の歩行もほぼ、一般に、n次元空間において特性曲線のグループによって表すことができる。
【0066】
曲線の各々のグループは、1つの特性形状と、曲線を他の曲線から区別するために該曲線を分類するパラメータとによって特徴付けられる。
【0067】
考えられる構成において、例示的で限定的なものでなく、前記空間における座標は下記の5つである:
・時間;
・脛骨と大腿骨との間の相対回転角度;
・該角度の時間による一次導関数;
・地面に伝えられる合成荷重ベクトルの代数値;
・関節の回転軸周りの該合成ベクトルのモーメントの代数値。
【0068】
角度の二次導関数などのさらなるパラメータを用いて、より完全で汎用的な方法で異なる可能な歩行の条件を表すことが可能である。
【0069】
好適で簡単化した構成において、空間の座標は次の3つである:脛骨・大腿骨の回転角度、脛骨・大腿骨の回転角度の時間による一次導関数、およびダンパに作用する力。
【0070】
前記空間の座標を表す前記パラメータを連続時間または離散時間で検知するよう適合させた変換器手段をさらに設ける。具体的には、前記曲線の特性データを記憶し、変換器が決定したデータを時間に関連させて記憶するよう適合させたRAM,ROM,EPROMなどの少なくとも1つのメモリユニットを設ける。
【0071】
さらに、変換器によって決定されたデータを分析し、それを前記記憶装置に記録したデータと比較して、記録されたデータの中から曲線のグループと、実際の歩行を表すのに最も適した曲線、いわゆる理想曲線とを決定する手段を有するマイクロプロセッサを設ける。
【0072】
前記マイクロプロセッサは、ダンパの反応を調整して、誤差、例えばn次元空間における実在する変換器によって検知された値で定義される実際の点と、これに対応する理想曲線上の点との間の距離の誤差、および関節(膝または足首)の角度とその導関数とに基づく力の誤差を最小化する。
【0073】
有利には、前記マイクロプロセッサは、使用した理想曲線および曲線のグループに対する誤差に基づき、実際の理想曲線を使い続けるのが有益か、または異なる理想曲線を使う方がいいか、もしくは曲線グループを変更する方がいいかを確認する。
【0074】
有利には、制御の前記アーキテクチャを、患者の心身状態の進展に応じて歩行を最適化するよう適合させる。これにより、患者は、歩行へのためらいの大きい切断手術直後でも常にベストな状態で歩くことができ、患者は自信をつけることができる。さらなる利点は、歩行の修正および改善に適した電子リハビリ装置の機能を実行する装置によって患者を継続的に補助するので、リハビリの時間を減らすことができることである。
【0075】
考えられる例示的実施形態は、関節における大腿骨のモーメントを検知することを含む。この場合、本発明の範囲を制限することなく、前記空間の座標は下記の通りとする:
・時間;
・脛骨と大腿骨との間の相対回転角度;
・該角度の時間による一次導関数;
・ダンパに作用する長手方向の力;
・大腿骨によって関節に伝えられるモーメント。
【0076】
患者の意思は切断端が関節に生成するモーメントによって裏付けられるため、この最後のパラメータによって患者の意思を間接的に検出することができる。
【0077】
本発明の範囲を制限するものではないが、平らな地面で歩行を加速させる必要がある場合、大腿部に直角なモーメントおよび/または力の変動が生じ、患者が減速したい場合にも、同様の状況が生じる。
【0078】
制御システムは、患者の要求と相互に関連するこれらのパラメータの値を取得し、人工肢の挙動を調整することで、患者の意思に瞬時に従うべく非常に迅速な応答を確実に実行することができる。本制御システムは、大きな活力を必要とする患者に特に適している。一般に、本制御システムは、失った肢の固有受容感覚の少なくとも一部を回復させる。これは、義肢の切断端の圧力等の患者の意思、作用および知覚の間に直接的な関係が確立されることによる。
【0079】
選択的に、前記した歩行条件を定義する手段をマトリクスタイプのものとする。
【0080】
本発明の第5特定態様では、電気モータに連結した高速シャフトと膝の膝関節に連結した低速シャフトをと有する減速装置を設け、前記モータに電流を供給し、該電流の強さをマイクロプロセッサで調整して、油圧ダンパで得られるものと同様のトルクを関節軸で得る。
【0081】
有利には、足首関節に連結する第2ギアモータを設け、該モータを油圧ダンパと同様のトルクを得るためにマイクロプロセッサによって制御する。
【0082】
有利には、膝関節に配置した前記減速装置は、互いに直交する、電気モータに連結された高速シャフトと関節に接続された低速シャフトとを有し、それにより、負担を低減させて人体での大きさに極力近づけることが達成される。
【0083】
有利には、人工肢は、足首関節の低速シャフトに連結される直交方向軸を有する第2減速装置モータを備える。
【0084】
好適には、ウォーム駆動装置等の前記ギアモータは、前記高速シャフトと前記低速シャフトとの間に5以上のギア比を有し、
前記高速シャフトには前記高速シャフトの瞬間位置を決定する第1位置変換器が取り付けられており、
前記低速シャフトには第2位置変換器が取り付けられており、
前記モータは前記低速シャフトに対する所定の遊びを維持し、動作の可逆性を可能にするように前記高速シャフトを操作する。
【0085】
有利には、前記膝関節に配置された前記減速装置と前記関節との間にフリーホイール機構を備え、
該フリーホイール機構は、前記スイング段階、すなわち、前記脚の慣性によりもたらされる段階に、前記減速装置から前記脛骨を解放するよう適合されており、
前記フリーホイール機構は、前記モータ/ブレーキが前記脛骨に作用しなければならない場合に、逆に2つの運動を互いに拘束する。
【0086】
前記フリーホイール機構の代わりに、減速装置の前記シャフトに2つの角度変換器を適用して前記シャフトの角度位置の検知に適合させる。
【0087】
前記減速装置は、前進効率よりも小さい後退効率を有することを特徴とする。前記マイクロプロセッサは、前記変換器によって生成されるデータを計算し、モータを作動させて後退トルクの伝送側と反対側のギアの歯と歯の間の接触を保ち、減速装置での脚の運動エネルギーの散逸を制限する。この運動エネルギーの散逸の制限は、運動の連続の中に現れる避けられないバックラッシュによるものであり、本発明ではこのバックラッシュをは積極的に活用して、脚の慣性エネルギーにブレーキをかけないように、またはブレーキをできるだけ小さくするようにマイクロプロセッサでモータを作動させることを可能とする。
【0088】
代替的な例示的実施形態では、1つ以上のモーメント変換器を角度変換器の代わりに設ける。この場合、マイクロプロセッサはモータを作動して、ギアモータで散逸させなければならない電力量、および/または蓄積器に貯蔵しなければならない電力量を管理する。
【0089】
本発明の第6特定態様において、人工肢に配置した電子装置には、膝関節のみに配置した場合と、これを足首関節への配置と組み合わせたものの双方の場合において、人工肢を装着できる同じ患者が迅速且つ自立的に交換することのできる充電式バッテリ、例えば、リチウムイオンを用いるタイプのものによって給電する。
【0090】
例えば、音響アラームなどの特殊な装置は、人工肢の電池が切れそうになると患者に信号を出し、患者は携帯している第2バッテリと簡単に交換することができる。このようにして、義足の歩行可能距離は長くなる。
【0091】
患者の携帯する充電バッテリの数は通常2つよりも多くすることができ、これはトレッキングの好きな患者、または電気が簡単に入手できない場所に時折であっても宿泊する患者、または1つのバッテリの充電を長い間待たないですむという利点がある。
【0092】
選択的に、人工肢にはUSBポートが例示的且つ非制限的な方法で存在し、この手段によって、膝関節のみの場合および足首関節と組み合わせる場合の双方の場合に人工肢をコンピュータに接続して、人工肢に配置された電子デバイスに給電するバッテリに充電し、ファームウェアを更新し、人工肢が記録したデータを後で分析するためコンピュータへ転送することができる。
【0093】
有利には、コンピュータにインストールされる、またはネットワークで利用できる特別なソフトウェアによって、人工肢のメモリに保管されたデータの分析を行い、ファームウェアを再プログラミングして、患者の意思に応じて人工肢の挙動を改善する。
【0094】
有利には、人工肢の前述した特徴を組み合わせ、または選択した場合において、膝関節のみの場合、または足首関節との組み合わせの場合の双方とも、人工肢に配置された電子デバイスには、変圧器のの第1/第2接続によって、人工肢の外部の供給回路に接続可能な充電回路を有する充電式バッテリ、例えば、リチウムイオンを用いるタイプのものによって給電する。
【0095】
このようにして、患者は人工肢、化粧被覆および衣服を着用したままで簡単に電池を充電することができる。
【0096】
有利には、患者が装着すること、例えば、腰のベルトに固定すること、リュックッサックに入れること、ポケットに入れること等ができる大型のバッテリによって順次、外部充電回路に給電する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
本発明は、本明細書の添付図面を参照して、例示的で非限定的な、下記の例示的実施形態の記載によってより明確になる。
【0098】
【図1】先行技術の大腿義足の運動学的図である。
【図2】足首の機構の表示を除く、機能的歩行形態において患者の切断端に適用される、好適な例示的実施形態における大腿義足の断面図である。
【図3】足首の機構の表示を除く、機能的歩行形態において患者の切断端に適用される、好適な例示的実施形態における大腿義足の断面図である。
【図4】ピストンが完全に後退した状態の、図2および図3の大腿義足の一部の断面拡大図であり、膝関節と、動きを制御し且つ制限するダンパとを備える義足を患者の大腿部に連結する上部ヒンジの詳細を示す図である。
【図5】図4の断面と直交する断面で切断した、大腿義足の断面図であり、ダンパを脛骨・ふくらはぎ筋肉部に連結する拘束手段も示す図である。
【図6】ふくらはぎ筋肉の機能を再現するよう適合された、本発明による、ダンパ動作の油圧回路図を簡単に表す図である。
【図6A】ふくらはぎ筋肉の機能を再現するよう適合された、本発明による、主要部が図6と異なる、ダンパ動作の油圧回路を簡単に表す図である。
【図7】個々に義足の圧縮および伸展段階で作用、動作する個々のバルブグループに取り付けた制御部とサーボモータとを有する、ダンパ部のシリンダの前面図である。
【図8】個々のサーボモータ(断面化されていない)を有するダンパに一体化されるバルブ部の断面図である。
【図9】図8の矢印IX−IXによる、流体が個々のポートを通過する領域におけるバルブ部の断面図である。
【図10】ステムにリング状の力変換器を取り付けた、ステム・ピストン装置の可能な例示的実施形態の斜視図である。
【図11】ステムから分離した図10のピストン部材の斜視図である。
【図12】具体的には、、図11に類似する特別な「4面」ステム・ピストンであって、特に、内部に設けたチャネルを通って、一方の面から他の面へ油の流出が起こった際の、該ステム・ピストンの動作のステップにおける図である。
【図13】幾何学的に調整可能なブレーキ装置の断面図である。
【図14】図13の装置の拡大図である。
【図15】周囲のデータの受信と分析に適合される変換器の位置を示す図1の運動学的図である。
【図16】大腿骨/脛骨および脛骨/足の間のエネルギー回収素子および周囲のデータを受信する装置によって構成される、大腿義足の運動学的図である。
【図17】スイング段階につま先が地面にぶつかるリスクのある場合(I)およびスイング段階につま先と地面の衝突がない場合(II)の、いわゆるトウクリアランスを示す図である。
【図17A】スイング段階につま先が地面にぶつかるリスクのある場合(I)およびスイング段階につま先と地面の衝突がない場合(II)の、いわゆるトウクリアランスを示す図である。
【図17B】スイング段階につま先が地面にぶつかるリスクのある場合(I)およびスイング段階につま先と地面の衝突がない場合(II)の、いわゆるトウクリアランスを示す図である。
【図18】層状ピストンを有する油圧ダンパの大腿義足を示す図である。
【図18A】歩行中に快適と安定が達成できるような動的減衰を確保する相対グラフである。
【図18B】歩行中に快適と安定が達成できるような動的減衰を確保する相対グラフである。
【図19】周囲の装置に関するインターフェースと制御変換器の配置図である。
【図19A】膝のグラフである。
【図19B】足首のグラフである。
【図20】油圧ダンパの代わりに磁気モータを設けた大腿義足を図式的に示す図である。
【図21】流体ショックアブソーバ、ロードセルによって制御される電気モータおよびエネルギー蓄積器に連結される圧力変換器を有するシステムを図式的に示すものである。
【図22】バネ機構蓄積器を有する可能な例示的実施形態の油圧システムを示す図である。
【図23】固有受容性脚の足の位置変換器の配置を示す図である。
【図23A】大腿骨/脛骨および脛骨/足の間の相対角度に対応するグラフである。
【図23B】大腿骨/脛骨および脛骨/足の間の相対角度に対応するグラフである。
【図24】地面に対する力の方向を検出するセンサ機能を持つ足底を示す図である。
【図25】大腿義足の足部に適用されるセンサ機能を持つ足底を示す図である。
【図26】膝のヒンジが前進位置にある大腿切断患者の義足を図式的に示す図である。
【図27】膝関節軸が前進位置に配置された大腿義足を図式的に示し、このような義足が図25Aのいわゆるトウクリアランス段階で持つ利点を示す図である。
【図27A】膝関節軸が前進位置に配置された大腿義足を図式的に示し、このような義足が図25Aのいわゆるトウクリアランス段階で持つ利点を示す図である。
【図28】義足が地面に対して直交する場合の、膝関節軸が前進位置に配置された大腿義足を図式的に示す図である。
【図29】大腿部およびダンパ上の変換器の位置ならびに地面に対するベクトル力の方向を示す図である。
【図30】モータ/フリーホイール機構を有する減速装置を図式的に示す図である。
【図31】膝の関節軸に取り付けられたブレーキ/モータとして動作する、ギアモータが取り付けられた自転車タイプのフリーホイール機構の例の断面図である。
【図31A】膝の関節軸に取り付けられたブレーキ/モータとして動作する、ギアモータが取り付けられた自転車タイプのフリーホイール機構の例の断面図である。
【図32】動作の簡単な構造におけるウォーム駆動のギアモータを示す図である。
【図33】義足のエネルギー消費を低減する様々な構成において、最適な剛性を達成する可変ピッチバネを有するモータを示す図である。
【図34】それぞれ時速2キロと4キロの歩行サイクルの段階を再現するグラフである。
【図35】3次元の簡単な表示で、脛骨・大腿骨の回転角度、脛骨・大腿骨の回転角度の時間による一次導関数およびダンパに作用する力をそれぞれ識別する曲線を示す図である。
【図35A】各曲線が参照モデルとは異なる歩行をさらに表す3次元曲線を示す図である。
【図35B】歩行の動作および制御において、マイクロプロセッサに従う主要段階を示すフローチャートである。
【図36】脛骨部に取り外し可能に適用される充電式バッテリの形状の貯蔵装置を示す図である。
【図37】個々の保護素子を有する図36のエネルギー貯蔵装置を示す図である。
【図38】患者が充電のために携帯することのできる、内部バッテリよりも大きなサイズの外部バッテリを示す図である。
【図39】相互接続素子を有する個々のハウジングに収納されたエネルギー貯蔵装置を示す図である。
【図40】図39に示すバッテリを、充電および/または交換のために取り出す動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
図1は、患者の大腿連結部100に適用される、大腿切断患者の先行技術の大腿義足Pの運動学的図であり、下記を含む:
・患者の大腿連結部100との連結を達成する、義足Pに属する上部ヒンジまたは大腿部1;
・大腿部1を脛骨部3と連結させ、通常の膝の動きを再現する関節軸2;
・脛骨部3を義足400と連結させる足首3a;および
・上述の部分の間の相対運動を弱めて、大腿義足Pが通常の肢の機能のいくつかを繰り返すことができるようにする、大腿部1と脛骨部3との間に位置するダンパ5。
【0100】
特に、図1の大腿義足Pにおいて、大腿部1および脛骨部3は、膝の動きを再現する関節軸2の周りに互いに枢動自在に連結する。さらに、脛骨部3は足首3aによって、つま先400a、足の足底400bおよびかかと400cを備える足400に関節接合する。
【0101】
周知の様に、膝の動きは、つま先400aを地面から離してかかと400cが着地するまでの、いわゆるスイング段階、およびかかと400cの着地、足の足底400bの荷重かけおよびつま先400aの地面からの持ち上げを含むいわゆるスタンス段階とに分けられる。
【0102】
油圧ダンパ5は大腿部1を脛骨部3に連結し、大腿部1の脛骨部3との相対運動を弱め、特にスタンス段階において、そしてスイング段階においても、脛骨部3は連結ヒンジ2および大腿部1に対してブレーキがかかるようにする。
【0103】
図2および3を参照すると、本発明による大腿義足Pが示されており、これは、切断患者の大腿連結部100に適用され、足首の詳細は示さない図2および図3に示すように、適宜人工のフットカバーで隠される。義足Pは、
・患者の大腿連結部100に連結する上部ヒンジまたは大腿部1;
・膝の動きを再現する機能を有する関節軸2;
・大腿部1に駆動可能に連結される、油圧、電気および電子素子などの義足Pを構成する多くの素子を内部に収納する、脛骨・ふくらはぎ筋肉部すなわち脛骨部3;
・ふくらはぎ筋肉のいくつかの機能を再現し、義足Pが確実にブレーキをかけ、歩行に典型的な順次的なスイングおよびスタンス段階を確実に行うようにするダンパ5;および
・相対足首3a(図示せず)および義足400とを連結する下部ヒンジ11
を備える。
【0104】
図2および図3もまたダンパ5を示し、ダンパ5は、ピストン10およびステム9を互いに連結して動かし、義足にかかる力に応じて減衰反応を実行するように適合されたシリンダ5cを備える。
【0105】
本例示的実施形態において、ダンパ5は油圧ダンパであり、シリンダ5cに油を含む油圧ダンパである。
【0106】
具体的に、シリンダ5cにおけるピストン10およびステム9の交互の動作により、大腿部1と脛骨部3との間の相対運動が可能となり、義足Pは2つの主要運動を行うことができる。これらの運動は、図2に示す第1伸展動作14と図3に示す第2圧縮動作15である。具体的には、好適な例示的実施形態によれば、脛骨部3は約110度の角度で関節軸2の周りを回転することができる。
【0107】
図4を参照すると、義足Pの上部の拡大図において、大腿部1、関節軸2、ダンパ5を収納する脛骨部3を再度示すのに加え、義足Pに電気を供給するためのバッテリ(本図には図示せず、図37および38に80として示す)を収納する領域6、ダンパ5と一体化し、相対的マイクロプロセッサ(図示せず)によって作動および制御される2つのバルブグループ20aおよび20bならびにサーボモータ(本図には図示せず、図7に20として示す)を示す。図4では、矢印7aは2つのそれぞれのバルブグループ20aおよび20bに取り付けられるサーボモータの位置を示す。サーボモータは制御部にある図示しないマイクロプロセッサによって作動され、これはバルブ(図示せず)の開および閉運動を作動させ、これによって、伸展動作14と圧縮動作15が生じる。
【0108】
具体的に、大腿部1は大腿連結部100と係合する連結素子1cを備える。連結素子1cは、好適な例示的実施形態によれば、プリズムの形状である。
【0109】
図4において、本発明の例示的実施形態によれば、膝関節2の能動的素子である、詳しくは示さないギアモータ4を、回転止め装置(図示せず)によって大腿部1に連結する。
【0110】
また、義足は受動的素子、すなわちダンパ5を備え、これはヒンジ5a(図5に示す)で脛骨部3に、ヒンジ5b(図4)で大腿部1に連結する。具体的に、ギアモータ4は歩行サイクルのいくつかの段階においてトルクを提供し、ユーザのニーズに合わせて義足の動作を調整するよう適合されている。例えば、ギアモータ4は、低速歩行中の大腿骨の慣性が脛骨部を大腿部と位置合わせするのに十分でない場合に作動される。
【0111】
図5を参照すると、これは本発明による膝義足Pを、図4で示すものに対して直角な断面の断面図で示したものであり、ギアモータ4を備え、これを金属フレーム4aに取り付け、接続ネジ(図示せず)で大腿部1に拘束する。具体的に、金属フレーム4aはブッシュ4bを中心に回転し、ブッシュは、例えばPTFEであり、脛骨部3にネジ4eによって拘束される支持部4cに配置される。
【0112】
このような連結によって、ギアモータ4のシャフト4dを脛骨部3と一体化することができ、また、ギアモータ4の本体を大腿部1と一体化することができる。具体的に、ギアモータ4と大腿部1との間の連結はシャフト1aと受動的係合部1b(図4)によって行う。このように、大腿部1に対して、ギアモータ4はシャフト4dへの動作を発生させ、これによって脛骨部3は回転する。
【0113】
さらに図5では、2つのヒンジ5aを示し、これらはダンパ5を脛骨部3に回転可能に連結し、これにより、ダンパは大腿部1と脛骨部3との間の相対運動に対応してその角度位置を調整することができる。
【0114】
図6を参照すると、これはダンパ5の図式的な油圧回路の簡単な図であり、上述のタイプの義足Pに取り付け、ダンパ5の動的部品であるピストン10とステム9がその中で滑動するシリンダ5cを備える。具体的には、ステム9とピストン10はシリンダ5cを作動油を含むチャンバAとチャンバBの2つのチャンバに分ける。
【0115】
義足Pの伸展14または圧縮15の際、油はチャンバAからチャンバBに流れる。具体的には、シリンダ5cに入る/出るステム9の容量を補わなければならないので、一部油13、および一部空気圧18を充填した外部補償チャンバ16を設ける。
【0116】
図示しない異なる例示的実施形態において、あるいは、空気圧18に対して一定の弾性定数を持つバネを設けることができる。
【0117】
図6のダンパ5の油圧回路図はさらに下記を備える:
・チャンバBから補償チャンバ16に延在するチャネルE_1。この間に、予備充電されていないチェック弁VN_1と遠隔調整弁19_Eを配置する;
・補償チャンバ16からチャンバAに延在するチャネルE_2。この間に、予備充電されていないチェック弁VN_2を配置する;
・チャンバAから補償チャンバ16に延在するチャネルC_1。この間に、予備充電されていないチェック弁VN_3と遠隔調整弁19_Cを配置する;
・補償チャンバ16からチャンバBに延在するチャネルC_2。この間に、チェック弁VN_4を配置する;
・油シールチャンバ9aのチャンバ9bをチャンバ16に連結して、油シールチャンバ9aの圧力ピークを回避するために使用し、補償チャンバとしても使用することができ、ダンパ5の充填段階では空気抜きチャンバとしても使用することのできる、チャネル14’。
【0118】
さらに、ピストンに2つのさらなるチャネルを検討することができる。特に、予圧バネと固有減衰の特性を持つチェック弁として作用するチャネル10Aおよびチャネル10Bである。具体的には、これらのチャネルはチャンバAをチャンバBと直接接触させ、圧力ピークに対する可能な安全システムとして作用する可能性がある。
【0119】
ダンパ5の動作は、主に圧縮15と伸展14を提供する。具体的には、ダンパ5の動作中の圧縮段階15は下記より構成される:
・チャンバAの容量が減少し、そしてチャンバBの容量が増加するような、ピストン10とステム9の運動。チャネルE_1およびチャネルE_2に生成された減圧によってチェック弁VN_1とVN_2は閉じる。よって油はピストン10の圧縮によって押され、チャネルC_1を流れ、バルブVN_3を開く。次にバルブVN_3の出口の油は、適切な入口圧に調整されたバルブ19_Cの抵抗に達する。油は一旦バルブ19_Cの抵抗を通過して補償チャンバ16に入る。具体的には、ステム9によって入口で生じた油量は補償チャンバ16内に残り、一方で、上部チャンバBによって引き寄せられた油量はチャネルC_2から入って、バルブVN__4を開く。
【0120】
伸展段階14は下記より構成される:
・チャンバAの容量が増加し、チャンバBの容量が減少するようなピストン10とステム9の運動。チャネルC_1およびチャネルC_2はチェック弁VN_3とVN_4によって閉じられる。次に油はチャネルE_1を通って流れ、よって、バルブVN_1を開き、やはり所定の出力圧によって調整されるバルブ19_Eの抵抗に到る。油は補償チャンバ16に入り、チャンバ16からチャンバAに、チェック弁VN_2を通って排出された流量が流れる。チャネル14’は伸展段階で圧力ピークのある場合に使用され、シーリング部材への低圧システムとして作用する。
【0121】
伸展段階に関しては、ブレーキ動作は漏れ領域を有する「純粋な漏れ(pure leakage)タイプであり、これは、ブレーキ動作による位置に応じて変化し、ブレーキは膝屈曲ストロークの最後の7〜10度で作動する。反対に、肢の圧縮は、ほぼ逆の複数の段階で実行される
【0122】
6Aの代替例示的実施形態において、「幾何学」タイプの伸展段階中のブレーキ動作の調整がある。より詳細には、伸展段階の際に、チャネル10Aの代わりに、漏れステム9’が設けられる、この際、穴9”のサイズは互いに異なる。このことによって油の前進的な通過が可能になる。この場合、実際には伸展段階で、油戻りチャネルC_2はチェック弁VN_4によって閉じられ、油は通ることができない。このように、このようなチャネルに配置されるチェック弁VN_5によって、油はチャンバBからチャンバAへステム9’に存在するチャネルを通って流れる。具体的に、油はステム9’の横断穴9”からステム9’内に作られたチャネルへ流れ、バルブVN_5を開く。逆に、圧縮段階では、ステム上のチェック弁は遮断される。
【0123】
尚、油の流れはステム9’の横断穴9”によって調整される。それらがステム9’の滑動ブッシュにある場合、それらは油の流れに関与せず、油通路の断面は減少し、ブレーキ動作は上述で「幾何学的」と定めたように、このように強くなる傾向にある。
【0124】
図7はダンパ5のシリンダ5cを示し、外部に2つのバルブグループ20aと20bを有し、これらをそれぞれのサーボモータ20に連結する。具体的には、サーボモータ20は、各バルブ部20aと20bに、それぞれのマイクロプロセッサ制御部(図示せず)によって調整されたトルクを伝達し、これは、個々の内部弁(図8に示す)の開ステップと閉ステップとを作動して調整する。
【0125】
特に、ダンパ5の減衰動作は、特定の歩行条件から派生する必要性に基づき、図2および図3の伸展段階14および圧縮段階15を同時にまたは別々に調整することによって得られる。各サーボモータ20は個々にバルブユニット20aまたは20bに取り付けられ、伸展段階14および圧縮段階15を両方とも個々に制御する。
【0126】
図8は、拡大図においてさらに2つのサーボモータ20のうちの1つを示す。これは、関係するバルブユニット20a(または図示しない20b)との機械的および油圧的連結を説明するものである。具体的には、バルブユニット20aは断面で示され、下記を備える:
・マイクロプロセッサ制御ユニット(図示せず):これはバルブ24を作動、調整する。ここで、バルブ24は固定される本体24aを有し、これには開口部19を生成する。そして、タップ24bは回転することによって、開口部19を開いたり遮断したりする(図9も参照のこと);
・サーボモータ20のシャフト21とタップ24bとの間にトルクを伝達するスリーブ接合部23:具体的には、タップ24bはその回転運動をバルブ本体24に伝え、開口部19の開運動と閉運動を調整する;
・スリーブ23が回るベアリング22aと、それを支持するために適合されるマウントリング;および
・バルブ本体24に流入する油用のシール素子23bおよびバルブ24aのエンドストッパ25。
【0127】
具体的には、マイクロプロセッサ部はケーブル(図示せず)で、ホール効果角度変換器7およびサーボモータ20に連結する。
【0128】
図9は、バルブ24a、タップ24bよびバルブ本体24のラインIX−IXによる断面図である。具体的には、開口部19を示す。これによって油が流れ、連続して配置され、大きさは異なる。このように、バルブ24aは、開口部19が生成されるバルブ本体24の周りの相対回転において、上述の開口部19の一部または全体的な開口を調整し、義足によって必要とされる減衰強度に応じて油を流す。
【0129】
図10を参照するに、斜視図はステム9およびそれぞれのピストン10を示す。これは、ダンパ5の能動的部分であり、シリンダ5cを2つのチャンバAとB(図6)に分ける。具体的には、ステム9には、ステム9の軸に垂直な軸を使って8aの穴を生成し、ここにいわゆる「Morehouse ring:モアハウスリング」と呼ばれる動力計8を挿入する。ステムには別のタイプの力変換器を適用できることは明らかである。
【0130】
ステム9の上端部にはさらに、大腿部1(図4)のヒンジ5bを表す対極側の部分(図示せず)に連結するためのハウジング9cを設ける。
【0131】
あるいはさらに、図示されない方法で、本発明によって提供されるように、力変換器を、上部ヒンジ5b(図10)のハウジング9c、ハウジング内の下部ヒンジ5aなどの他のポイントのダンパに、歪みゲージやロードセル、あるいはリング変換器などを使って設けることができる。
【0132】
図11はダンパ5の部品である図10のピストン10の斜視図および詳細図である。具体的には、ピストン10は「面」10a、10b、10cおよび10dを備え、このピストンは異なる厚さと径の金属ブレードおよびディスク(図12)で被覆されるように配置される。これは、バネとして作用し、シリンダ5cのステムの速度に応じて開口部を開く。
【0133】
図12は、ピストン10と関連するステム9の拡大図であって、好適な例示的実施形態によれば、第1層30aと第1層30aよりも径と厚さの小さな第2層30bとを有する。具体的には、第1層30aはピストン10(図11)の面10aに位置し、第2層30bは第1層30aに位置する。具体的に、ブレード30aおよび30bはピストン10に位置し、対称軸がそれぞれステム9の軸と一致するようにする。
【0134】
詳細には、第1層30aは、ピストンの面10b(図11)と層30aの下部面との間に溝10eを生成する。具体的には,溝10eにより、チャンバAからチャンバBに最小の油の流れが可能となる。より正確には、図12に示すピストン10の動きはシリンダ5cの圧縮段階15を表す。圧縮動作15において、油はチャネル10fを通ってチャンバAからチャンバBに流れる。油の流れ69の力はチャネル10fを通り、ブレード30aよび30bの変形を生じ、油は一方のチャンバから他方のチャンバに漏れる。具体的には、ブレード30aと30bは、ダンパにかかる力とピストン10の速度に応じて油の流れの高低を制御する。上述と同様の動作ステップにおいて、義足(図示せず)の伸展段階14も制御することができる。
【0135】
図13および14は、図6Aの油圧回路に図式的に示すように、幾何学的制御で膝の人工装具Pのブレーキ動作を行う装置の断面図を示す。具体的には、この装置において、油の流れは、ステム9’に生成される横断穴9”によって調整される。このように、これらがステム9’の滑動ブッシュ内にある場合には、油の流れは停止し、油通路の断面が絞られ、よって、ブレーキ動作は増大する。
【0136】
本発明の例示的実施形態において、図15を参照し、そして、大腿切断患者用義足Pの図式を再度示し、上述のあらゆる例示的実施形態に加え、下記を設ける:
・周囲に関するデータを受信する変換器31であって、具体的には、これによって、大腿骨に対する相対的位置または力に関する情報の取得を可能とするもの;
・データの計算を行い、最良の制御論理回路および動作の選択を決定し、快適で安全な歩行を確保するマイクロプロセッサ32;
・歩行中にエネルギーを回収することによって得られる一次エネルギーを貯蔵し、そしてそれを、装置からのエネルギーが要求されるステップで使用することを確実に行うのに適した方法で作動するエネルギー蓄積器33;および
・膝の接合部では34で示す、または足首の接合部では35で示す、または両方に設けられる、歩行の際にエネルギーの提供/散逸/回収が可能な装置を備えた調整可能な剛性を有する拘束手段。
【0137】
図16では、図15に示すものをブロック図で示す。すなわち、膝・足首TRS(全体的回収システム)であって、下記のものを備える:
・大腿部100と脛骨部3との間の回収装置34;
・脛骨部3と足400との間の回収装置35;
・エネルギー蓄積器33;
・足首3aのデータ取得変換器36;および
・関節軸2のデータ取得変換器31。
【0138】
具体的に、TRSの動作によって、関節軸2と足首3aとが互いに連動してデータおよびエネルギーを交換することができる。
【0139】
周知の様に、歩行の大部分で平らな地面を歩く際に、関節軸2が作動して供給されるエネルギーを散逸させる。というのも、大腿部100(大腿部と脛骨の間の相対運動)によって供給されるエネルギーは脛骨3を持ち上げて動かすからである。関節軸2は脛骨3のスイング動作を低減させ、支持段階の間に安定したモーメントを安全に与える。これらの段階で、通常関節軸2で散逸させられるエネルギーは、装置内の適切な貯蔵装置を使って回収することができ、この装置はエネルギー蓄積器33の機能を持つ。エネルギーは、その一部は、同じ関節軸2から採取し、例えば、歩行サイクルのいくつかの段階で、特に脛骨3を加速して大腿部1との再整列を確実に行う際にエネルギーを供給することができる。また、エネルギーの一部は、足首3aによって採取し、他の目的のために供給することもできる。
【0140】
歩行中、足首3aは散逸的素子および能動的素子の両方として機能する。具体的には、かかと400cの着地から始まる歩行の第1段階において、足首3aはバネとダンパのシステムとして同時に作用する。この際、脛骨3に対する足400の相対運動において、エネルギーの散逸が生じる。次いで、かかと400cがそれ以上圧縮されなくなると、足400は能動的素子として作動し、肢を持ち上げるためのエネルギーを供給する。散逸的段階において、余剰エネルギーは関節軸2で蓄積器33に蓄積することができる。関節軸2で生じることと同様に、足首3aは、足首に設けられるバネと並行して、別の能動的素子を使い、その能動的段階で蓄積器33からのエネルギーを使用する。
【0141】
エネルギー蓄積装置33は、図15に示すように、例えば脛骨に配置することができる。あるいは、貯蔵装置は膝のヒンジに取り付けられるモータ34と一体化することができる。
【0142】
装置33と装置34とを一体化することにより、足首3aと関節軸2の挙動に作用でき、これにより、一体化されたデバイス34と33の挙動を適切に段階分けするようにする。関節軸2と足首3aの位置データは、変換器36と変換器31によって連続的に監視され、これはまた、2つの変換器の力のデータの交換も管理する。
【0143】
図17は膝と足首のモータ/ジェネレータがどのように以下のものを備える膝・足首システムTC(トウクリアランス)を形成することができるのかを示す:
・図16のモータ/ジェネレータ34に一体化される関節軸2を調整、制御する装置41;
・図16のモータ/ジェネレータ35に一体化される足首3aを調整、制御する装置42;
・決定装置として機能するマイクロプロセッサ32;および
・歩行の状態を定めるインターフェース地面/脚の2つの変換器44および45。
【0144】
さらに、角度αは大腿部1および脛骨3との間で、角度βは脛骨3および脛骨3に直角な軸3a’との間で決定される。
【0145】
具体的に、低速度では、大腿部100の最小動的効果は、義足400の小さな持ち上げが、足400の剛性により、スイング段階において、大腿部1および脛骨3との間のTDCを超えずに終了することを決定する。しかし、つま先がスイング段階に地面にぶつかるリスクが生じる(図17A)。
【0146】
高齢者または切断手術から間もない患者が平らな地面を歩行する際、脛骨3と大腿部1とを簡単に再整列するのは難しい。先ず、トウクリアランス状況が発生する。すなわち、歩行中、つま先400と地面との間の隙間が足りない(図17A II)。この段階で、大腿骨100による最小動的効果により、脛骨3の不適切な持ち上げが生じ、これは、大腿部1に対する相対角度を大変低くし、足400のつま先が地面にぶつかるリスクを生じる。後者の場合、TDCが大腿部1と脛骨3との間を一旦通過すると、脛骨3のスイング動作が最小の場合に、効果的な再整列の問題が発生する。この最初の問題、すなわち、スイング段階のトウクリアランスを解決するために、膝・足首システムTCは、変換器によって検知されたデータによって電流構成を識別し、これらのデータを対応する理想構成の値と比較する。このようにして、脛骨3に対する足400の傾斜角度βを変えることにより、スイング段階につま先が地面にぶつかるリスクを避けることができる(図17A II)。同様に、エネルギーを関節軸2に供給することにより、低速歩行速度の場合、大腿部1と脛骨3の再整列を確実に行うことができる。
【0147】
よって、膝・足首システムTCは、システムの接合部に向かって、および接合部からのエネルギーの双方向の流れを制御し、これによって、適切な制御論理回路の手段により、安全、快適およびエネルギー節約に関して最適化された歩行条件を決めるデバイスが存在する。
【0148】
図18は、図4から図14に示すものと同様の例示的実施形態を図式的に示したものである。すなわち、油圧ダンパ46を取り付けた大腿義足Pは、油圧シリンダ46aによって連結される2つのチャンバ46bおよび46cを備え、このシリンダには、リーク弁46eと層弁46dの2つの弁が平行して存在する。これらは、2つまたは4つの面を有するピストン(図11)を使用することが可能であることを特徴とする。2つのバルブ46eと46dとの組み合わせは、ピストン46aの速度に対応する可変領域を有する弁と同等である。この解決策は、位置制御に代わる等価の力制御を用いることで進歩的なブレーキ挙動を確実にもたらす。その結果は、衝撃荷重が加えられた場合にダンパの突然の異なる応答を許さない、大変進歩的な動的挙動となる。そのような応答は、固定された領域の開口部を有する従来の純粋な漏れシステムの典型的なものである。従って、ダンパはローパスフィルタのようなものであり、濾過を行うことができ、患者に衝撃荷重を伝えず、よって、より快適な歩行を約束することができる。尚、大腿義足Pは、層バルブ46dまたはバイパスの相対領域の剛性に作用して制御することができ、よって、図18Bのブレーキ曲線IV,V,VI,VIIの転換を確実に行い、支持の段階に同等の高い剛性を取得し、再整列またはかかとの高速歩行速度での持ち上げ段階の減衰および停止により、歩行の他の動的段階のための調整が可能である。
【0149】
図19は大腿義足Pの本発明の可能な実施形態を図式的に表している。当該大腿義足Pは、義足Pの内部変形のデータの検出を可能にする変換器48、義足の足底400の変換器49、位置変換器50、および周囲のデータを取得する位置変換器51とを備える。具体的には、このような義足により、大腿切断患者は自然な歩行を行うことができ、筋肉および腱の受容体と同様の受容体の活動ならびに景色および空間の相対位置によって、部分的に固有受容感覚機能を再現する歩行を調整、制御するシステムを開発することができる。義足Pをこのように制御すると、肢が安全で快適な応答を求める実際の歩行において、適切な制御論理回路の使用を確実に行うための適切な方法で、周囲に関する予測性の態様を持つことができる。
【0150】
図20を参照すると、大腿義足Pに関して、本発明の可能な実施形態が図式的に示してあり、これは、低ノイズモータ/ジェネレータを備える。具体的には、好適な例示的実施形態によれば、このようなモータ/ジェネレータ52は、自動車の用途で使用されるもののような、超音波パルス式モータまたはリニアモータである。さらに装置は、ジェネレータおよび電子ダンパの機能をモータ52に与えることを特徴とする。
【0151】
図21は、大腿義足Pに関する本発明の可能な実施形態を図式的に示したものであり、油圧ダンパ55および56、電気モータ57および58を備え、これらはそれぞれ、大腿部1と脛骨3との間および脛骨3と足400との間に適用される。具体的には、電気モータ57および58は、例えばエンコーダなどのそれぞれの位置変換器59を備え、必要に応じて歩行中にトルクを与える。さらに図21において、荷重変換器60およびエネルギー回収装置61を示す。これには、2つの油圧ダンパ55および56が連結される。散逸的ステップでは、関節軸2の動きで、余剰エネルギーをデバイス61に蓄積することができる。関節軸2と同様に、足首3aは回収デバイス61によってエネルギーを吸収し、能動的ステップを行うことができる。
【0152】
図22は、バネ手段によるエネルギー貯蔵装置を備える大腿義足Pの図である。この図は、特に、バネ蓄積器64に連結する油圧装置63および63aを示す。さらに、大腿義足Pは予圧バネ67を有し、これは、大腿部100、脛骨3aおよび足400の間の相対的な減衰において、油圧装置62と同時に作用する。図22は、足底400に位置するロードセル68と適合される関節軸2と足首3aに適用される位置変換器63を示す。このような変換器は、2つのシステムの力に関するデータの交換を管理するソフトウェアによって連続的に監視され、歩行の状態を判断するには適切である。
【0153】
図23は特に、義足Pの足部400に設置される位置変換器70の配置を示す。特にこのような変換器70は互いにインターフェース接続されて、地面に対する足の位置を検知し、地面からの起こり得る高さを変更する。図23Aは歩行サイクルの対応する段階における、図23Bの地面からの距離Δtと比較した角度β(図23Aでは、図16に示した角度に対応する)のコースを詳細に示す。
【0154】
図24を参照するに、本発明の第2特定態様において、義足は図25に示すように、足400で、配列された力および位置変換器を有する足底を備え、その信号はマイクロプロセッサによって計算され、患者の足400の周囲との相互作用を判断する。
【0155】
足底の可能な実施形態において、変換器は閉曲線201によって示される足底200に位置し、その強さ、方向および位置成分の合成荷重ベクトルを決めることができ、これにより、マイクロプロセッサはダンパの反応を最も好適に調整することができる。
【0156】
足底200の別の実施形態において、足底に位置する変換器201は、合成荷重ベクトルの作用点に関するデータを提供する。ここで、1つ以上の力変換器を義肢に設け、その信号を前記足底によって生成される信号によって計算し、これにより、マイクロプロセッサは伝わる合成荷重ベクトルを決める。
【0157】
さらに義肢は、足首3a(図示せず)に位置して脛骨3aと足400との間の相対傾斜を制御するために適合される角度位置変換器をさらに備える。この情報により、足底によって提供される力ベクトルに関するデータと関連して、荷重の足首を通過する必要性により、対応するベクトル力に対応する足首の位置を、足底によって提供される力ベクトルのデータと関連させて決めることができる。
【0158】
図25は、大腿義足Pの足400に適用されるセンサ機能を持つ足底200を示す。具体的に、足底は、足400とそれが置かれる地面との間の接点にある力の位置に関連するデータを取得する。このようにして、空間における義足Pの位置の正確な予測を特に、ユーザの身体に対する足400について確実に行うことができる。主な目的は、軸上の力変換器を通じて同時に決定される力の強さと一体をなす、地面上の力の作用点を知ることである。
【0159】
図26は関節軸2が前方位置にある大腿義足Pを示す。この構成により、足400の位置をもっと上げることができ、遮断されたダンパ5によって与えられるブレーキ動作による安全性を特徴とする。
【0160】
図27に示すようなスイングの場合、IRCの位置は図27Aによるグラフで示すように、地面に対する空間を回収する。この際、ピーク値101は、大腿部1および脛骨部3との間に形成される最大角度(図19)に対応する。特に、トウクリアランスの段階は腿部1と脛骨3との間の最大相対角度に概ね対応し、関節軸2’の予想位置により、地面に対して数ミリの隙間を確保する。具体的に、垂直方向に対する大腿部の角度が20度の場合、関節軸2’の各ミリメートルの前進運動に対して、地面に対して0.35mmの隙間を持つことが可能である。1cmの前進運動は地面からの隙間3.5mmの回収とほぼ同等であり、2cmは地面からの隙間7mmと同等である。
【0161】
本発明の例示的実施形態による図28は、地面に直角な大腿部100の軸を有する義足P1を図式的に表したものである。図28は関節軸2’の位置と義足P1のダンパ5の異なる配置を示す。特に、関節軸2’の位置による義足P1の不安定性は、歩行段階のダンパ5によって供給される安全によって補償される。
【0162】
図29を参照すると、大腿義足P,特に本発明の第1特定態様によるものが示される。義足はダンパ5に位置する力変換器S1を有し、マイクロプロセッサは力変換器S1による力信号を受信し、手段を作動させて、ダンパで検出された力信号に対応するダンパの反応を調整する。
【0163】
具体的に、力変換器S1はステムの締め具、あるいは図10に示すものに配置する。
【0164】
あるいは、ダンパ上の力変換器はダンパ5の下部ヒンジ5aに配置するロードセルである。このように、ダンパの荷重状態の即座の検証および膝の動的挙動のフィードバック制御が可能である。
【0165】
有利な例示的実施形態によると、あるいはさらに、大腿部1(図29)に力変換器S2をさらに加え、マイクロプロセッサが大腿部1の変換器S2から力信号を受信し、大腿部1の検出された力信号に対応するダンパの反応を調整する手段を作動させる。
【0166】
有利な実施形態において、大腿部1の力変換器S2は、大腿部の長手方向の大腿部100の動作の検知に適合された第1力変換器、および大腿部に直角方向の大腿部100の動作の検知に適合された第2力変換器とを有する。このように、大腿部100およびダンパ5の全体的な力の情報により、義肢の引っ張り状態を十分に判断することができる。
【0167】
例示的で簡単な実施形態において、大腿部100の第2力変換器は、それに直角な方向の大腿部の力の信号のみを提供する。
【0168】
さらに、位置変換器を膝の動きを生成する関節軸2に設けることができ、この位置変換器は膝の回転を検知する。
【0169】
特定の実施形態において、この動作により、大腿部1と脛骨部3は、運動の最大伸展の段階であるスイングの終わりの段階の始めに、ダンパに一体化される機械的接合点によって検知される特異点の状態に位置する。このように、ダンパ5の力変換器S1は、特異点の状態においても、関節に伝わる実際の荷重を検知し、検知された値を計算するマイクロプロセッサは歩行中にこの段階を区別し、制御することができる。
【0170】
図30は、本発明の第5特定態様において、患者にいかなる場合でも揺動動作すなわちスイングを可能にすることのできる膝関節のモータを示す。第1の可能な実施形態では、これはモータ91に取り付け、電気モータ91に連結される高速シャフト(図示せず)と膝関節に連結される低速シャフト93とを有する減速装置92によって得られる。モータ91には電流を供給し、その強さは油圧ダンパによって得られるものと同様のトルクを関節軸で得るために、マイクロプロセッサ(図示せず)によって調整する。エンコーダ90はマイクロプロセッサにモータのrpmを伝える。低速シャフト93には、出力シャフト95をバックラッシュの検知システムと共に取り付ける。
【0171】
特にモータ91の角度位置はエンコーダ90によって連続的に決める。低速シャフト95の角度位置は第2エンコーダまたは磁石を有するホール効果センサ94によって連続的に決める。このように、例えば、伝わるモーメントとの一致または不一致およびギアモータの前進または後退運動により、運動の連鎖によって生じるバックラッシュを蓄積するために、所望の回転速度でサーボモータを駆動することが可能である。このようにして、前進運動よりも効率の低い後退運動で散逸させられるエネルギーの量を最小限にすることができ、そして運動エネルギーの使用と蓄積器内へのエネルギーの回収を最大限にする。
【0172】
同様に、図示しない、しかし膝のギアモータに類似した方法で、油圧ダンパと同様のトルクを得るために、マイクロプロセッサで制御される足首関節に連結する第2ギアモータを設けることができる。
【0173】
図示しない方法で、膝関節に位置する減速装置は、電気モータに連結される高速シャフトと、関節に連結される低速シャフトとを有し、これらはたがいに直交し、それにより負担を低減させて当該負担の大きさを人体での大きさに極力近づけている。同様に、人工肢は、直交軸を有し、足首関節の低速シャフトに連結される第2ギアモータを備える。
【0174】
あるいは、膝関節および足首関節にフリーホイール機構が位置し(図31、図31A)、これは、スイング段階に減速装置から脛骨を解放するために適合されている。すなわち、脚の慣性により、フリーホイール機構は、モータ/ブレーキが脛骨に作用しなければならない場合には、2つの運動を逆に互いに拘束する。図示しないさらなる例示的実施形態では、フリーホイール機構、減速装置のシャフト上に2つの角度変換器を適用し、シャフトの角度位置の検知に適用する。
【0175】
前のものと同等の例示的代替構造は、角度変換器に1つ以上のモーメント変換器を備える。
【0176】
図32はウォーム駆動タイプのギアモータ110を示す。特に、ホイール105は高速シャフト107および低速シャフト108の間に5以上のギア比を有する。
【0177】
クイックシャフト107には、特に第1位置変換器(図示せず)を適用し、その瞬間の位置を決める。低速シャフト108には第2位置変換器(図示せず)を取り付ける。このように、モータ109は、低速シャフト108の所定の遊びを維持し、動作の可逆性を可能にするように、高速シャフト107を駆動する。
【0178】
図33は、膝関節2のブレーキ/モータ装置96の別の例示的実施形態を示す。目的は、あらゆる歩行条件、特に低速条件において、脛骨部3に対する大腿部100の位置の修正を確実に行うことである。
【0179】
特に、患者、特に高齢者の手術直後の切断患者が歩行の際にためらう場合には、モータ96が干渉して脛骨3の正確な再整列を確実に行うようにする。
【0180】
本解決策の動作によれば、義足Pのエネルギー消費を低減してモータ/ジェネレータシステム96の歩行可能距離を増やすために、可変ピッチバネ97を備え、これにより、理想的な剛性の達成を可能にする、すなわち、大腿部100と脛骨部3との間の角度移動が小さな場合には低い剛性を、そして角度移動が大きな場合には、高い剛性を与える。
【0181】
具体的に、可変ピッチバネ97はらせん状のバネであり、直径、片方の端には第1ピッチP、そして反対側の端には第2ピッチP2を有し、第1値Kと第2値Kとの間で剛性の連続的な推移を得る。
【0182】
図34は、本発明の第4特定態様によるグラフを示し、これによって、人工肢の運動を再現して、同じ歩行サイクルの歩行のペースを調整する。特に、図34は、平らな地面を歩く場合を示し、平均歩行速度に対応する異なる振幅を有する同様の曲線グループによって定義される。これらの曲線は、脛骨・大腿骨、および時間によるその導関数によって描かれる時間に対する脛骨3の軌跡よりなる。
【0183】
より詳細には、検知速度に関し、歩行を示す理想的な曲線は、2つの副曲線、すなわちスタンス段階に対応するより小さな内曲線X’および、一部はスタンス段階に常に対応し、少なくとも一部は第1四分円に対応する外部曲線X”を備える。
【0184】
どちらの曲線も起点を通過する。曲線は歩行速度に対して形状を変え、歩行速度が増すにつれて軌跡の幅は大きくなる。それぞれ対応曲線XI’とXI”によって示される。特に、歩行の相対速度は曲線X’,X”およびXI’、XI”に対してそれぞれ時速2キロと4キロである。
【0185】
次に、各曲線は検知速度の理想的な歩行サイクルを定義し、曲線は歩行速度に対して形状を変え、そして各曲線は対応するパラメータを持つので、新しい速度は別として、歩行サイクル内で速度の変化が検出されると、脛骨3を歩行サイクルのその段階に対応する曲線に沿わせることが可能である。このように、歩行速度を変える切断患者のニーズを素早く認識することにより、以前に沿ったものに対して異なる振幅の曲線に義足を沿わせることが可能である。
【0186】
歩行、着席、起立を停止させる典型的な動作を曲線の特殊グループによって画定することができる。同様に、上り坂、下り坂、階段の上り下り、自転車のペダル漕ぎ、そして一般的な他の可能な運動条件は、一般に特性曲線により、n次元空間で表すことができる。
【0187】
曲線を画定するパラメータを増やすことは可能であり、例示的で非限定的な空間の可能な構造において、座標は下記の5つである:
・時間;
・脛骨と大腿骨の間の相対回転角度;
・該角度の時間による一次導関数;
・地面に伝えられる合成荷重ベクトルの代数値;および
・関節の回転軸周りの、結果としてのモーメントの代数値。
【0188】
角度の二次導関数などのさらなるパラメータを使って、より完全で一般的なやり方で異なる可能な歩行条件を表すことも可能である。または、簡単でより粗く表現するために、座標の数を減らすことも可能である。
【0189】
加えて、さらに変換器手段を設けて、空間の座標を表すパラメータを時間に対して連続的に検知したり、不連続な時間間隔で検知することが可能である。特に、RAM,ROM,EPROMなどの少なくとも1つの記憶装置を設け、曲線X’,X”およびXI’,XI”の特性データを記憶するために適合し、変換器によって検知した時間に関するデータを記憶する。
【0190】
さらに、マイクロプロセッサを設け、変換器によって検知したデータを分析し、そのデータを記憶装置に記録したデータと比較し、記録したデータの中から、理想曲線と呼ばれる実際の歩行を表す最も適切な曲線を決める。
【0191】
このように、マイクロプロセッサはダンパの反応の調整を行い、その座標が変換器による検知である実際の点と理想曲線の対応する点との間のn次元空間の中で、距離として定めることのできる誤差を最小限に抑える。さらにマイクロプロセッサは、使用する理想曲線および曲線のグループに対する誤差により、実際の理想曲線で続けるのが有益か、または別の理想曲線を使う方がいいか、または曲線のグループを変更するのが良いかを決める。
【0192】
よって、制御のアーキテクチャは患者の心理状態の展開に対応して歩行を最適化することが可能である。よって、患者は、切断手術直後で歩行へのためらいが大きい時も、自信を回復した時も、常にベストな状態で歩行する。さらなる利点は、リハビリの時間が減ることである。というのも、患者は歩行の修正や改善に適切な電子リハビリ装置の機能を実行する装置によって連続的に補助されるからである。
【0193】
別の可能な例示的実施形態は、接合部で大腿骨のモーメントの検知を提供する。そしてこの場合、本発明の範囲を制限することなく、空間の座標は以下の通りである:
・時間;
・脛骨と大腿骨の間の相対回転角度;
・該角度の時間による一次導関数;
・ダンパに作用する長手方向の力;
・大腿骨によって関節に伝えられるモーメント。
【0194】
患者の意思は切断端が関節に生成するモーメントに裏付けられるので、この最後のパラメータによって、患者の意思を間接的に検出することができる。
【0195】
図35は決められた平均速度の理想的な歩行サイクルを決定する曲線を示す。平均速度に対して、曲線はその振幅を変更するが、曲線の形状は同じである。図35に示すような、3次元空間で描かれた同様の曲線のグループは、平らな地面上の歩行と、平均速度などのパラメータを一義的に識別し、グループの曲線をそれぞれ区別する。
【0196】
図35Aは、特にスイング段階の制御と調整に使用する複数の3次元曲線を示す。この図は参照モデルと区別する曲線120を強調する。この場合は、患者の歩行が良くないため、歩行中に障害物にぶつかったりよろめいたりしている。
【0197】
この簡単な構成において、空間の座標は次の3つである:脛骨・大腿骨回転角度102、脛骨・大腿骨回転角度の時間による一次導関数103、および102と103の2つの軸を含む平面と直交するダンパに作用する力104。
【0198】
本発明の範囲を制限することなく、平らな地面での歩行を加速する必要性により、モーメントおよび/または大腿骨に直交する力の変動が発生する。同様のことは患者が減速を要求する場合にも発生する。
【0199】
患者のニーズに関連付けられる3つのパラメータの値を得る制御システムは、人工肢の挙動を調整することができ、ほぼ即座に患者の意思に沿った大変素早い応答を確実に行うことができる。この制御システムは大きな活力を必要とする患者には特に適切である。一般に、それは少なくとも部分的に失った肢の固有受容感覚を回復する。というのも、患者の意思(例えば、切断端の肌上の義足の締め具の圧力)動作と知覚との間に直接的な関係が確立されるからである。
【0200】
あるいは、歩行条件を画定する手段はマトリックスタイプである。
【0201】
図35Bは、義足に取り付けられる歩行の制御および動作のループのフロー図である。例えば、関節の角度とその一次導関数などのデータを入力すると、歩行速度の見積りが計算される。同時に、プログラムはメモリから参照曲線を呼び戻す。次いで、選択した参照曲線を統合することによって得られる参照速度を得る。このようにして、連続する歩行サイクルにおいて、対応する参照力と誤差の補償を、ダンパにかかる力の入力と出力によって得る。最終ステップとして、義足の油圧回路が図6に示すようなものである場合には、個々の電磁弁によって油の流れを調整するために、コマンド信号を送る。反対に、図6Aの場合には、伸展段階の幾何学的調整により、コマンド信号を電磁弁のみに送る。
【0202】
図36および37は、本発明の第6特定態様において、膝関節のみおよび、足首関節との組み合わせの場合の両方の場合における、義肢に配置する電子デバイスを示し、これには例えばリチウムイオンタイプの充電式バッテリ80で充電し、電池交換の際には、その義肢を装着する患者によって、素早くそして自律的に交換可能である。
【0203】
例えば音響アラーム(図示せず)などの特殊装置は、人工肢の電池80が切れそうになると患者に信号を出す。よって、患者は携帯した第2バッテリとそれを簡単に交換することができる。このように、義足の歩行可能距離は長くなる。
【0204】
患者の携帯する充電バッテリの数は通常2以上が可能であり、これはトレッキングの好きな患者、または電気が簡単に入手できない場所に時折であっても宿泊する患者、または1つのバッテリの充電を長い間待つのを避けるには有利である。
【0205】
バッテリ80は関節軸2に対して前方位置の膝蓋骨に位置する。患者は、安全な状態、すなわち着席時のみに、除去、交換のためにバッテリ80に近づくことができる。一方で、バッテリを包含するスロットは他の状況では開けることができない(図40に示すように)。よって、バッテリを前位置に配置することにより、上から簡単にアクセスすることが可能であり、同時に、安全な人間工学の条件を尊重した、失った肢の生体構造に沿った形状を実現する。
【0206】
人工肢に関する以前の特徴と組み合わせて、または代替的に、膝関節のみの場合あるいは足首関節と組み合わせる場合の両方の場合に、デバイスを、例えば、リチウムイオンタイプの充電式バッテリ80によって充電し、その充電回路は肢の外部の供給回路83’に、図38に示すような変圧器の第1/第2接続部88によって接続する。
【0207】
2つの回路の間の識別および接続は2つの個々の磁石によって行い、これらを使用時に互いに一致する位置に配置する。このようにして、患者は義肢、図36にも示す化粧被覆81および衣服81’をつけたままで簡単に電池80を充電することができる。
【0208】
さらに、外部充電回路は大型バッテリ(図示せず)によって給電することができ、これを患者は、例えば、腰のベルトに固定し、リュックッサックに入れ、ポケットに入れること等ができる。
【0209】
あるいは、人工肢には例えば図39に示すUSBタイプのポート85が存在し、この手段により、人工肢Pは膝関節のみの場合および足首関節との組み合わせの両方の場合にコンピュータに連結させることができ、1つのリンクによって、人工肢に配置される電子デバイスに給電するバッテリ80を充電し、ファームウェアを更新し、人工肢によって記録されたデータを後で分析するためコンピュータへの転送する。
【0210】
さらに、コンピュータにインストールされた、またはネットワークで利用できる特別なソフトウェアによって人工肢のメモリに保管されたデータの分析を行い、ファームウェアを再度プログラミングし、患者の希望に応じて人工肢の挙動を改善する。
【0211】
図40はバッテリ80の交換ステップを示す。具体的に、これらは単に、カバー84を開けるステップとバッテリ80の交換ステップとを含む。バッテリ80は関節軸2に対して前方位置の膝蓋骨にあり、患者が着席した安全な位置で、肢の幾何学と一致して、着席位置の患者により、上からアクセス可能である。
【0212】
特定の実施形態の上述の記載は、概念的な観点によって本発明を完全に開示するものであり、よって他者は、現在の知識を適用することによって、さらなる調査を行うことなく、そして発明から切り離すことなく、修正を行うことができ、および/または実施形態などの種々の用途に適用することが可能である。よって、このような適用および修正は特定の実施形態と同等であると考えるべきであると理解されたい。本明細書に記載の異なる機能を実現するための手段および材料は、発明の分野から逸脱することなく、この理由により、異なる性質を持つであろう。本明細書に使用される表現または用語は説明の目的のためのものであり、制限するものではないことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿切断患者用義足であって、
大腿接合部に固定することのできる大腿部と、
膝の動きを再現する関節軸の周りに枢動自在に相互連結された脛骨部とを備え、
該脛骨部は、つま先、足裏およびかかとを有する足に足首によって関節接合されており、
前記膝の動きは、つま先を地面から持ち上げてかかとを着地させるまでの間のいわゆるスイング段階と、かかとの着地、足裏への荷重かけおよびつま先の地面からの持ち上げを含むいわゆるスタンス段階とを含み、
前記義足は、
油圧ダンパであって、前記大腿部および前記脛骨部にそれぞれ連結された上部ヒンジおよび下部ヒンジを有し、前記スタンス段階において、前記脛骨部に対して前記大腿部と前記脛骨部との間の膝関節周りにブレーキをかけるように前記大腿部に対する前記脛骨部の相対運動を減衰させ、且つ、シリンダ・ピストンおよび該ピストンにヒンジで留められたステムを有する該油圧ダンパと、
所定の力・位置関数に従って前記ダンパの減衰反応を調整する手段を有するマイクロプロセッサとを備える義足。
【請求項2】
請求項1に記載の義足において、
前記ダンパ内に力変換器を備え、
前記マイクロプロセッサは、前記力変換器より力信号を受信し、前記ダンパからの力信号に応答して、前記ダンパの反応を調整する手段を作動させる義足。
【請求項3】
請求項2に記載の義足において、
前記ステム内に前記力変換器を備え、
前記マイクロプロセッサは、前記ステムの前記変換器から力信号を受信し、前記ステムで検出された力信号に応答して、前記ダンパの反応を調整する手段を作動させる義足。
【請求項4】
請求項2に記載の義足において、
前記力変換器は、モアハウスリング(Morehouse ring)等のリング動力計であり、
該リング動力計は、前記ステム内に形成された穴に設置されており、
該穴の軸は前記ステムの軸に直交している義足。
【請求項5】
請求項2に記載の義足において、前記ダンパにおける前記力変換器は、前記ダンパの下部ヒンジに配置されたロードセルである義足。
【請求項6】
請求項2に記載の義足において、
前記大腿部内に力変換器を備え、
該力変換器は、直交方向力変換器、長手方向力変換器、トルク変換器、またはそれらの組み合わせからなる群から選択したものであり、
前記マイクロプロセッサは、前記大腿部内の前記力変換器から力信号を受信し、前記大腿部で生成された前記力信号に応じて、前記ダンパの反応を調整する手段を作動させる義足。
【請求項7】
請求項2に記載の義足において、膝の完全な曲げの状態、すなわち屈曲している際に特異点にある状態が発生した際に過大な曲げ荷重の存在を検知する、屈曲隣接領域上に配置された力変換器等の力変換器を備える義足。
【請求項8】
請求項6に記載の義足において、
前記力変換器の力データを記憶する手段と、
該記憶したデータを最大許容値と比較する手段とを備える義足。
【請求項9】
請求項2に記載の義足において、膝の動きを再現する関節軸に膝の回転を検知する位置変換器を備える義足。
【請求項10】
請求項2に記載の義足において、
前記大腿部および前記脛骨部は、前記スイング段階の終わりである、歩行サイクルの始まりに、前記ダンパに一体化された機械的接合点によって特異点にある状態が検知する構造になり、
前記ダンパにおける前記力変換器は、この特異点にある状態においても、前記関節に伝わる実際の負荷を検知し、
該検知した値を計算する前記マイクロプロセッサは、前記歩行におけるこのステップを識別し且つ制御することができる義足。
【請求項11】
請求項2に記載の義足において、
前記ダンパは、油圧タイプであり、且つ衝撃等の高荷重が存在する場合に油の流出を制御するよう適合されたブレードを有することにより患者に高い快適さを保証し、
該ブレードは、チェック弁バネとして作用して、シリンダ内のステムの速度に応じ、油流れのための開口部を生じさせる義足。
【請求項12】
請求項2に記載の義足において、
前記ダンパは、油圧タイプであり、且つ前記ピストンによって分けられる第1チャンバ(A)および第2チャンバ(B)を有し、
前記義足はさらに、
・補償チャンバと、
・前記補償チャンバから前記第1チャンバまでの第1一方向ダクトと、
・前記第1チャンバ(A)から前記補償チャンバまでの第2一方向ダクトであって、該第2一方向ダクトに沿って、前記マイクロプロセッサによって制御される調整可能流量弁が配置された該ダクトと、
・前記補償チャンバから前記第2チャンバまでの第3一方向ダクトと、
・第4ダクトとを備え、
該第4ダクトは、
・前記第2チャンバから前記補償チャンバまでの一方向ダクトであって、該一方向ダクトに沿って、前記マイクロプロセッサによって制御される調整可能流量弁が配置されたダクトと、
・前記第2チャンバおよび前記第1チャンバとの間の前記ステム内の一方向軸ダクトであって、前記ステムは前記第2チャンバを横断し、前記第2チャンバ内に複数の放射開口部を備え、前記伸展段階の前記ステムの動きによって、前記開口部は徐々に遮られ、前記ピストンの動きに対してより高い抵抗を与えるダクトと
からなる群から選択したものである義足。
【請求項13】
請求項12に記載の義足において、
前記補償チャンバと、前記ステム上の油シールチャンバとの間に第5ダクトを備え、
前記油シールチャンバ内の圧力を前記補償チャンバの圧力と同じとすることで、前記油シールチャンバ内の圧力ピークを回避するようにした義足。
【請求項14】
請求項1に記載の義足において、
前記足に力および位置変換器の配列を有する足底を備え、
該力および位置変換器の信号を前記マイクロプロセッサが計算することで、前記マイクロプロセッサは周囲に対する患者の足の相互作用モードを決定し、
前記足底に位置する前記変換器によって、
・強さ、方向および位置成分に関する前記義足の合成荷重ベクトルであって、これにより、前記マイクロプロセッサが、前記ダンパの反応を最も好適に調整することができる該合成荷重ベクトルと、
・前記合成荷重ベクトルの作用点と
からなる群から選択したデータを決定することを可能とし、
人工肢には1つ以上の力変換器が配置されており、
前記マイクロプロセッサは、該力変換器の信号を、前記足底が生成した信号と共に計算することで、伝達された合成荷重ベクトルを決定することができる義足。
【請求項15】
請求項14に記載の義足において、
前記人工肢は、足首に配置されている、脛骨と足の間の相対的傾斜を制御するよう適合された、角度位置の変換器をさらに有し、
前記マイクロプロセッサは、前記足首に位置する前記角度位置の変換器から信号を受信し、前記足底が与えた力ベクトルのデータと関連させて、前記力ベクトルに対応する足首の位置を決定する義足。
【請求項16】
請求項1に記載の義足において、
前記膝関節軸は、歩行サイクルのいくつかの段階でエネルギーを供給し、他の段階でエネルギーを受給することのできるジェネレータ/モータを有し、
前記義足は、歩行サイクルの段階で、前記マイクロプロセッサによって制御される前記モータを介し、前記エネルギーを蓄積し、この蓄積したエネルギーを放出するよう適合されたエネルギー蓄積装置を備える義足。
【請求項17】
請求項16に記載の義足において、
前記膝関節に対応して配置された力および位置変換器と、
前記マイクロプロセッサに設けられた、前記膝関節に対応して配置された力および位置変換器から受信した信号に応じて作動するプログラム手段とを備え、
前記マイクロプロセッサは前記モータ/ジェネレータに対し、該モータ/ジェネレータが脚の再整列段階ではモータとして、支持段階ではジェネレータとしてそれぞれ機能するように信号を送信する義足。
【請求項18】
請求項17に記載の義足において、
前記マイクロプロセッサは、前記エネルギー蓄積装置に、膝が散逸させた、ジェネレータの機能を持つ前記モータ/ジェネレータからのエネルギーを向かわせ、
また、前記マイクロプロセッサは、脛骨を加速させる際等の歩行サイクルのいくつかの段階において、前記エネルギー蓄積器から可変遅れでエネルギーを回収して、該エネルギーを、モータの機能を持つ前記モータ/ジェネレータに推進力として向かわせることで、前記大腿部との再整列を確実に実行させる義足。
【請求項19】
請求項16に記載の義足において、大腿部と脛骨部の間の小さな角度の移動には低い剛性を有することを可能とし、且つ、大きな角度の移動には高い剛性を有することを可能とする可変ピッチバネを前記ダンパ内に備える義足。
【請求項20】
請求項16に記載の義足において、前記脛骨部と前記足の間の前記足首関節は、さらにモータ/ジェネレータを有する義足。
【請求項21】
請求項20に記載の義足において、前記足首関節は、前記モータ/ジェネレータに平行に配置された減衰素子を有する義足。
【請求項22】
請求項20に記載の義足において、
前記足首関節は、力および角度位置変換器をさらに有し、
足首に設置された前記力および角度位置変換器は、該変換器からの信号に応答する前記マイクロプロセッサに接続されており、
足首に設置された前記力および角度位置変換器によって、かかとの地面への支持ステップの際に足首により発生されたエネルギーを前記エネルギー貯蔵装置へ送り、前記蓄積器からのエネルギーを可変遅れで回収し、該エネルギーを、足の持ち上げに必要な電力として、足首上のモータとして作用する前記モータ/ジェネレータに向け、足と地面の起こりうる衝撃を回避し、より簡単で自然な歩行を可能とした義足。
【請求項23】
請求項20に記載の義足において、前記マイクロプロセッサは、前記膝および足首関節に配置された前記力および位置変換器からの信号に基づいて歩行段階を認識するよう適合されたプログラム手段を使って、前記膝・足首の前記モータ/ジェネレータを管理する義足。
【請求項24】
請求項20に記載の義足において、前記膝の前記モータ/ジェネレータおよび前記足首の前記のさらなるモータ/ジェネレータは、同じエネルギー蓄積装置を共有している義足。
【請求項25】
請求項24に記載の義足において、膝の接合部および足首の接合部ならびにエネルギー蓄積装置に関連する前記モータ/ジェネレータ装置は流体装置である義足。
【請求項26】
請求項1に記載の義足において、
同じ歩行サイクルにおける歩行のペースを調整するよう適合された手段を備え、
該手段は、少なくとも以下の変数、すなわち、時間および脛骨と大腿骨との間の相対回転角度、または等価的に、脛骨と大腿骨との間の相対回転角度および該角度の時間による一次導関数からなる関数を与え、
前記義足は、
歩行サイクル内の前記角度の変化、および前記一次導関数ないし角速度の変化を検知する手段と、
前記脛骨を、前記角度および前記角速度の所定の値によって特徴付けられる、歩行サイクルの前記段階に対応する関数に沿わせる手段と
を備える義足。
【請求項27】
大腿切断患者用義足であって、
大腿接合部に固定することのできる大腿部と、
膝の動きを再現する関節軸の周りに枢動自在に相互連結された脛骨部とを備え、
該脛骨部は、つま先、足裏およびかかとを有する足に足首によって関節接合されており、
前記膝の動きは、つま先を地面から持ち上げてかかとを着地させるまでの間のいわゆるスイング段階と、かかとの着地、足裏への荷重かけおよびつま先の地面からの持ち上げを含むいわゆるスタンス段階とを含み、
前記義足は、スタンス段階において脛骨部に前記関節軸でブレーキがかかるよう関節軸で所望のトルクを得るようにマイクロプロセッサで強さを調整した電流が供給されるモータ/ジェネレータを備え、
前記マイクロプロセッサは、所定の力・位置関数に従って前記減速装置モータの前記ダンパの減衰反応を変更し、
前記義足は、同じ歩行サイクル内の歩行のペースを調整するよう適合された手段を備え、
該手段は、少なくとも以下の変数、すなわち、時間および脛骨と大腿骨との間の相対回転角度、または等価的に、脛骨と大腿骨との間の相対回転角度および該角度の時間による一次導関数からなる関数を与え、
前記義足は、
歩行サイクル内の前記角度の変化、および前記一次導関数ないし角速度の変化を検知する手段と、
前記脛骨を、前記角度および前記角速度の所定の値によって特徴付けられる、歩行サイクルの前記段階に対応する関数に沿わせる手段と
を備える義足。
【請求項28】
請求項26または27に記載の義足において、
同じ歩行サイクル内の歩行のペースを調整するよう適合された前記手段は閉曲線を有し、
前記マイクロプロセッサは、同様の形状と平均歩行速度に応じて異なる振幅とを有する前記閉曲線のグループによって各モードを表現した複数の歩行モードを記憶している義足。
【請求項29】
請求項26または27に記載の義足において、
前記空間は、
・肢に作用し、地面に伝わる合成荷重ベクトルの代数値、
・関節の回転軸周りの前記合成ベクトルのモーメントの代数値、
・大腿骨が関節に伝えるモーメント、
・大腿骨での長手方向の力、
・大腿骨での直交方向の力、
・前記回転角度の二次導関数、
またはこれらの組み合わせからなる群から選択した座標をさらに有する義足。
【請求項30】
請求項26または27に記載の義足において、前記空間はダンパに作用する長手方向の力をさらに有する義足。
【請求項31】
請求項26または27に記載の義足において、
同じ歩行サイクル内の歩行のペースを調整するよう適合された前記手段は、少なくとも次の変数、すなわち、脛骨と足の間の相対回転角度、および脛骨と足の間の前記角度の時間による一次導関数からなる関数をさらに与え、
前記義足は、
歩行サイクル内の前記一次導関数ないし角速度の変化を検知する手段と、
前記角速度を有する、歩行サイクル内の前記段階に対応した関数に足を沿わせることにより、義肢に前記関数の特徴を再現させる手段と
を備える義足。
【請求項32】
請求項26、27または31に記載の義足において、
前記空間の座標を表す前記パラメータを連続時間または離散時間で検知し、時間に関連させた前記パラメータを記憶するよう適合された手段を備え、
前記マイクロプロセッサは、変換器によって決定されたデータを分析し、それを前記記憶装置に記録したデータと比較して、記録されたデータの中で、実際の歩行を表すのに最も適した曲線、いわゆる理想曲線を決定する手段を有する義足。
【請求項33】
請求項32に記載の義足において、
前記マイクロプロセッサは、ダンパおよび/またはモータの応答を調整することで誤差を最小限に抑え、
該誤差は、その座標が変換器によって検知された値である実際の点と、理想曲線の対応する点との間のn次元空間中の偏差からなる義足。
【請求項34】
請求項31に記載の義足において、前記マイクロプロセッサは、ダンパの反応を、歩行サイクル内の大腿骨に直交するモーメントおよび/または力の変動によって調節する義足。
【請求項35】
請求項26または27に記載の義足において、
前記マイクロプロセッサ内に設けられ、歩行中の足の地面に対する支持の持続時間を検知するよう適合され、且つ、各々の異なる支持持続時間に対する信頼性パラメータを、前記マイクロプロセッサが前記ダンパに与えた減衰剛性の検知された値に対応する信頼性パラメータに関連付けるプログラム手段を備え、
歩行中の足の地面に対する支持の持続時間を検知する前記手段は、歩行の速度を生じさせる上下運動の持続時間と、切断肢へ負荷を与えた時間とを検知し、それらを、失った肢へ負荷を与える時間に関連して記録されたデータと比較し、決定した失った肢へ負荷を与える時間と、検知した失った肢へ負荷を与える時間との偏差が小さいほど、大きい屈曲を膝に与えることを可能とする義足。
【請求項36】
請求項1に記載の義足において、
電気モータに連結された高速シャフトと膝関節に連結された低速シャフトとを有する減速装置を備え、
前記モータには、関節軸で所望のトルクを得るよう前記マイクロプロセッサが強さを調整した電流が供給される義足。
【請求項37】
大腿切断患者用義足であって、
該義足は、大腿接合部に固定することのできる大腿部と、
膝の動きを再現する関節軸の周りに枢動自在に相互連結された脛骨部とを有し、
該脛骨部は、つま先、足裏およびかかとを有する足に足首によって関節接合されており、
前記膝の動きは、つま先を地面から持ち上げてかかとを着地させるまでの間のいわゆるスイング段階と、かかとの着地、足裏への荷重かけおよびつま先の地面からの持ち上げを含むいわゆるスタンス段階とを含み、
前記義足は、電気モータに連結した高速シャフトと膝の膝関節に連結した低速シャフトをと有する減速装置を備え、
前記モータには、スタンス段階において、脛骨部に前記関節軸周りのブレーキがかかるよう関節軸で所望のトルクを得るように前記マイクロプロセッサが強さを調整した電流が供給され、
前記マイクロプロセッサは、所定の力・位置関数に従って前記減速装置モータの前記ダンパの減衰反応を変更する義足。
【請求項38】
請求項36または37に記載の義足において、
前記足首関節に連結された第2減速装置モータを備え、
該足首関節は、電気モータに連結された高速シャフトと、前記足首関節に連結された低速シャフトとを有し、
前記モータには、関節軸で所望のトルクを得るように前記マイクロプロセッサが強さを調整した電流が供給される義足。
【請求項39】
請求項16,36、37または38に記載の義足において、前記ギアモータ、またはそれぞれの前記減速装置モータは、さらにジェネレータとして作用する義足。
【請求項40】
請求項36、37または38に記載の義足において、前記高速シャフトと前記関節に連結した前記低速シャフトとを互いに直交させることで、負担を低減させて該負担の大きさを人体での大きさに極力近づけることを達成した義足。
【請求項41】
請求項40に記載の義足において、
ウォーム駆動装置等の前記減速装置モータは、前記高速シャフトと前記低速シャフトとの間に5以上のギア比を有し、
前記高速シャフトには前記高速シャフトの瞬間位置を決定する第1位置変換器が取り付けられており、
前記低速シャフトには第2位置変換器が取り付けられており、
前記モータは前記低速シャフトに対する所定の遊びを維持し、動作の可逆性を可能にするように前記高速シャフトを操作する義足。
【請求項42】
請求項36、37または38に記載の義足において、
前記膝関節に配置された前記減速装置と前記関節との間にフリーホイール機構を備え、
該フリーホイール機構は、前記スイング段階、すなわち、前記脚の慣性が能動的である場合に、前記減速装置から前記脛骨を解放するよう適合されており、
前記フリーホイール機構は、前記モータ/ブレーキが前記脛骨に作用しなければならない場合に、逆に2つの運動を互いに拘束する義足。
【請求項43】
請求項42に記載の義足において、前記マイクロプロセッサは、屈曲段階では前記モータを作動させて、咬み合い位置にある場合に前記フリーホイール機構により確保されている脛骨の動きにブレーキをかける一方で、伸展段階では前記モータを作動させて、または作動させないで、前記フリーホイール機構を咬み合わせ、又は咬み合わせない義足。
【請求項44】
請求項36、37または38に記載の義足において、
減速装置の前記シャフトは前記シャフトの角度位置を検知するよう適合された2つの角度変換器を有し、
前記減速装置は前進効率よりも小さい後退効率を有し、
前記マイクロプロセッサは、前記変換器によって生成されるデータを計算し、前記モータを作動させて、前記脚の運動エネルギーの前記減速装置内の散逸を制限し、運動の連続の中で生じる遊びを適切に回復させる義足。
【請求項45】
請求項36、37または38に記載の義足において、前記減速装置の前記シャフトは1つ以上のモーメント変換器を有する義足。
【請求項46】
請求項1,30および27に記載の義足において、
充電式バッテリと、
前記充電式バッテリと解放可能に係合する手段とを備え、
該バッテリは、前記義足に配置された電子デバイスに給電する義足。
【請求項47】
請求項46に記載の義足において、
前記バッテリは、関節軸の前方位置で前記義足に連結しており、且つ、前記肢の構造に適う要領で座った姿勢をとっている患者によって上からアクセスされることができ、
それにより、この着座姿勢の患者が前記バッテリを引き抜いたり、元の位置に戻したりできる義足。
【請求項48】
請求項47に記載の義足において、USBポート等のポートを備え、
該ポートを用い、前記人工肢をコンピュータに接続して、前記人工肢に配置された電子デバイスに給電する前記バッテリに充電し、ファームウェアを更新し、人工肢が記録したデータを後で分析するためコンピュータへ転送することができる義足。
【請求項49】
請求項48に記載の義足において、前記充電式バッテリは、変圧器の第1/第2接続により、肢の外部の供給回路に接続可能な充電回路を有する義足。

【図1】
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【図2−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6A】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図23A−23B】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図27A】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図31A】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図35A】
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【図35B】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公表番号】特表2011−518633(P2011−518633A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506786(P2011−506786)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001074
【国際公開番号】WO2010/064063
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(510287430)
【氏名又は名称原語表記】RIZZOLI ORTOPEDIA S.P.A.
【Fターム(参考)】