説明

大規模太陽光発電システム

【課題】
本発明は、安価かつ拡張性に優れた構内配線を有する大規模太陽光発電システムを提供することにある。
【解決手段】
総発電出力が1MW以上の大規模太陽光発電システムであって、複数の太陽電池アレイと、前記太陽電池アレイで得られた直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換装置と、変換された交流電力を昇圧し、電力系統へ連系する連系変電設備と、前記太陽電池アレイと前記DC/AC変換装置と前記連系変電設備とを接続し、全部または一部を架空線とした構内配線と、から構成される大規模太陽光発電システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構内配線に架空線を用いた大規模太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低い発電方式として、複数の太陽電池アレイを配置して1MW以上の発電を行う大規模太陽光発電システムが注目されている。
【0003】
総発電出力が1MW以上では用地の総面積が10,000m2以上となることが多く、構内配線の延長距離も長くその経路も複雑となる。大規模太陽光発電システムの建設コストのうち、構内配線の設備コストは無視できない割合を占めており、割高な太陽光発電のコストを下げるため、構内配線に係わるコストの削減が求められていた。
【0004】
従来は、この構内配線には地中配線や地上配線が用いられてきた。地中配線とは、地中に電線管等を埋設し、その中にケーブルを配線することである。また、道路横断部等では、電線管を高耐荷性の多孔管の中に入れて埋設することも行われていた。
【0005】
地上配線とは、地上にケーブルトラフ等を付設し、その中にケーブルを配線することである。ケーブルトラフとして主に用いられているのはコンクリートトラフであるが、重量が重く、長尺であるため施工性に劣る点が問題なっていた。そのため、軽量、短尺のグリーントラフ(登録商標)も用いられていた。
【0006】
また、太陽電池アレイの架台内に配線することも行われている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の太陽光発電システムでは、太陽電池アレイの架台に溝を設け、その中に電力ケーブルを配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−191195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の架台内配線は、大規模太陽光発電システムでは配線が輻輳するので適用困難であった。
また、構内配線を全て地中配線にすると、掘削を伴うため工期が長くなり、工事費も高くなっていた。
【0009】
地上配線を用いると多少工事費を削減できるが、その削減にも限界があった。特に、大規模太陽光発電システムでは、構内配線にもAC600V以上の構内高圧配線があり、電力ケーブルが併設される場合には一定の離隔を設ける必要があった。そのため、配線用設備が大型化して工事費の削減が進まなかった。
【0010】
さらに、一部の太陽電池アレイを設置してから発電を開始し、その後順次パネルを増設していく場合には、地中配線や地上配線では拡張性に劣る点も問題となっていた。
【0011】
本発明は、これらの課題を解決するためになされたものであり、安価かつ拡張性に優れた構内配線を有する大規模太陽光発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、総発電出力が1MW以上の大規模太陽光発電システムであって、複数の太陽電池アレイと、前記太陽電池アレイで得られた直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換装置と、変換された交流電力を昇圧し、電力系統へ連系する連系変電設備と、前記太陽電池アレイと前記DC/AC変換装置と前記連系変電設備とを接続し、全部または一部を架空線とした構内配線と、から構成されることを特徴とする。
構内配線の全部または一部を架空線としたことにより、掘削が不要で工事費用が安く、施工も早く、拡張性にも優れた配線を行うことができる。
【0013】
ここで、前記構内配線のうち構内高圧配線の全部または一部を架空線とすることが好ましい。
構内配線は、電圧によってAC600V以下(もしくはDC750V以下)の構内低圧配線とAC600V(もしくはDC750V)を超えて7000V以下の構内高圧配線とに分けられる。特に構内高圧配線を架空線としたことにより、冷却効果が高く、通電容量を確保しやすい架空線の特徴をより活かすことができる。
【0014】
また、前記架空線は、前記大規模太陽光発電システムの北、東および西から選択される1以上の方角の側縁のみに配置されることが好ましい。大規模太陽光発電システムの北、東または西側のみに架空線を配置し、南側には配置しないことにより、架空線の影が太陽電池アレイにかかる影響を無くすか、最小限に抑制することができる。
【0015】
また、前記架空線に用いられる電柱に、通信ケーブルも共架されることが好ましい。架空線は高さ方向に離隔が取れるので、電力ケーブルと通信ケーブルを容易に共架することができる。そのため、通信ケーブル用の配線設備を省略して、設備コストを低減できる。
【0016】
また、前記架空線に用いられる電柱に、柱上区分開閉器が設けられていることが好ましい。電柱に柱上区分開閉器を設けることで、小さいエリア単位で開閉が容易となり、メンテナンスや将来の増設にも柔軟に対応可能となる。なお、柱上区分開閉器は地上設置型区分開閉器よりも大幅に安価であり、予め複数箇所設置して利便性を高めることが可能である。
【0017】
また、前記柱上区分開閉器は、前記通信ケーブルが接続され、遠隔制御されることが好ましい。柱上区分開閉器が遠隔制御できれば、開閉作業にかかる人件費を削減でき、運転コストを低減できる。
【0018】
さらに、廃棄物処分場に立地されることが好ましい。廃棄物処分場は軟弱地盤のため不等沈下の可能性があるが、架空線では確立した地盤沈下対策技術を適用でき、不等沈下の影響を緩和することが容易となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、安価かつ拡張性に優れた構内配線を有する大規模太陽光発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係わる大規模太陽光発電システムの代表的な設備構成を表す概要図である。
【図2】本発明の実施形態に係わる大規模太陽光発電システムの概要を表す斜視図である。
【図3】従来例に係わる大規模太陽光発電システムの概要を表す斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係わる大規模太陽光発電システムの概要を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係わる大規模太陽光発電システムの代表的な設備構成を表す概要図である。本発明では、総発電出力が1MW以上の大規模太陽光発電システムを対象とする。
【0023】
この大規模太陽光発電システム10は、複数の太陽電池アレイ11と、太陽電池アレイ11で得られた直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換装置13と、変換された交流電力を昇圧し、電力系統へ連系する連系変電設備15と、太陽電池アレイ11やDC/AC変換装置13および連系変電設備15を接続する構内配線20とから主に構成される。
【0024】
その他、太陽電池アレイ11とDC/AC変換装置13との間には、太陽電池アレイ11で発生した電気を集める中継点として接続箱12が設けられる。この接続箱12に集められた電気はDC400V程度の電圧に調整される。
また、総発電出力が1MW以上の場合は、一般的にAC66kVの電力系統に連系される。この電圧まで連系変電設備15のみで昇圧するだけでなく、DC/AC変換装置13と連系変電設備15との間に中間変電設備14を設けて段階的に昇圧することが多い。例えば、図1の場合には、DC/AC変換装置13により変換されたAC400Vを、中間変電設備14でAC6kV程度に昇圧し、さらに連系変電設備で特別高圧(例えばAC66kV)に昇圧している。
【0025】
構内配線20の電力ケーブルは、前述の通り電圧によってAC600V以下(もしくはDC750V以下)の構内低圧配線21と、AC600V(もしくはDC750V)を超えて7000V以下の構内高圧配線22とに分けられる。図1の場合には、中間変電設備14までは構内低圧配線21となり、中間変電設備14から連系変電設備15までは構内高圧配線22となる。また、構内配線20には電力ケーブルだけでなく、通信ケーブルの配線も含まれる。
【0026】
図2は、本発明の実施形態に係わる大規模太陽光発電システムの概要を表す斜視図である。本実施形態は、構内配線20の一部を架空線30としたことに特徴がある。架空線30を用いることにより、地中配線とは違い掘削が不要となり、工事費用が安く、施工も早く、拡張性にも優れた配線を行うことができる。なお、図2では、他に地中配線(点線で図示)や地上配線(実線で図示)も併用しているが、これに限定されず構内配線20の全てを架空線30としても良い。
【0027】
架空線30に用いる電力ケーブル31の種類や太さは特に限定されるものではなく、負荷の大きさ、経済性、気象条件、環境条件を勘案して最適なものを適宜選定すればよい。なかでも絶縁電線が好ましく、例えば、屋外用硬アルミ導体架橋ポリエチレン絶縁電線(HAL−OC電線)や屋外用鋼心アルミ導体ポリエチレン絶縁電線(ACSR−OE電線)を好適に用いることができる。架空線30における電力ケーブル31の設置高さも特に限定されないが、一般の配電線と同様に地面から6〜10m程度の高さに設置されるのが通常である。
【0028】
電柱32は遠心力で中空状に製造した遠心カプレストレストコンクリート柱が好適に用いられる。電柱32の高さ、配置間隔も特に限定されないが、例えば図2では高さ12mの電柱32が25m程度の間隔で配置される場合を示している。
【0029】
架空線30は、大規模太陽光発電システム10の北、東あるいは西の方角の側縁のみに配置されるのが好ましい。北側に架空線30を配置した場合には、電柱32の影は太陽電池アレイ11へかからない。東側あるいは西側に架空線30を配置した場合には、電柱32の影により多少日射が遮られるが、朝夕の日射が一部遮られるのみであり、太陽電池アレイ11による発生電力量に与える影響は軽微である(例えば、試算によれば架空線30の配置有無による発電量の差は0.04%程度である)。なお、東側あるいは西側に架空線30を配置する場合には、太陽電池アレイ11から一定の離隔をとることで、電柱32の影の影響をさらに低減することができる。
【0030】
この架空線30を用いた大規模太陽光発電システム10は、廃棄物処分場に立地される場合に好適に用いることができる。廃棄物処分場は軟弱地盤のため不等沈下の可能性があるが、架空線30では電柱32の根固め工法等の地盤沈下対策技術が確立されており、地中配線や地中配線と比べて不等沈下の影響を受けにくいためである。
【0031】
また、架空線30を用いた大規模太陽光発電システム10は、廃棄物処分場に限られず不等沈下が発生する恐れのある場所全般に好適に用いることができる。例えば、湾岸の埋立地や、丘陵部で太陽電池アレイを飛び地状に配置する場合にも適している。
【0032】
架空線30は、構内低圧配線21よりも構内高圧配線22の全部または一部に好適に用いられる。構内高圧配線22の方が、冷却効果が高く通電容量を確保しやすい架空線の特徴をより活かすことができるためである。
【0033】
また、構内高圧配線22に架空線30を用いることで設備コストを大幅に低減することが可能となる。この理由について図3に示す従来例と対比することで説明する。
【0034】
図3は、従来例に係わる大規模太陽光発電システムの概要を表す斜視図である。従来は大規模太陽光発電システム40の外縁にトラフ42(点線で図示)を配置して、地上配線41により構内高圧配線を行う場合が多かった。その結果、構内高圧配線が多数併走することになり、電力ケーブル31の延長距離が長くなると共に、ケーブル間の離隔を確保するためトラフ42が大型化していた。さらに、地上配線41ではそれぞれの電力ケーブル31を連系変電設備15まで直接接続する必要があり、連系変電設備15に設ける接続用スイッチ(キュービクル面数、図示せず)も多数設置する必要があった。
【0035】
一方、図2に示す架空線30によれば、構内高圧配線22の途中に比較的柔軟に接続点を設けて電力ケーブル31を接続できるため、ケーブル延長距離や連系変電設備15の接続用スイッチ数も低減できる。例えば試算によれば、地上配線よりも配線に係る費用を1/3〜1/2に低減可能である。
【0036】
以上、説明の通り、本実施形態によれば、安価かつ拡張性に優れた構内配線を有する大規模太陽光発電システム10を提供することができる。
【0037】
図4は、本発明の他の実施形態に係わる大規模太陽光発電システムの概要を表す斜視図である。図4に示す他の実施形態では、図2に示す実施形態に加えて隣接地点に太陽電池アレイ11を増設し、大規模太陽光発電システム10を拡張した場合を対象としている。
【0038】
他の実施形態では、架空線30に用いられる電柱32に柱上区分開閉器33が設けられていることを特徴とする。電柱32に柱上区分開閉器33を設けることで、小さいエリア単位で開閉が容易となり、メンテナンスや増設にも柔軟に対応可能となる。
【0039】
柱上区分開閉器33には、空気絶縁式のPAS(Pole
mounted Air Switch)やガス絶縁式のPGS(Pole
mounted Gas Switch)がある。これら柱上区分開閉器33は地上設置型区分開閉器よりも大幅に安価であり、予め複数箇所設置しておくことで増設時の利便性を高めることが可能である。
【0040】
また、他の実施形態では、電力ケーブル31に加えて通信ケーブル34も電柱32に共架されることも特徴である。架空線30は高さ方向に離隔が取れるので、電力ケーブル31と通信ケーブル34を容易に共架するができる。そのため、通信ケーブル用の配線設備を省略して、設備コストを低減できる。
【0041】
この場合、通信ケーブル34を柱上区分開閉器33に接続し、柱上区分開閉器33を遠隔制御してもよい。柱上区分開閉器33が遠隔制御できれば、開閉作業にかかる人件費を削減でき、運転コストを低減できるためである。
【符号の説明】
【0042】
10 本発明に係わる大規模太陽光発電システム
11 太陽電池アレイ
12 接続箱
13 DC/AC変換装置
14 中間変電設備
15 連系変電設備
20 構内配線
21 構内低圧配線
22 構内高圧配線
30 架空線
31 電力ケーブル
32 電柱
33 柱上区分開閉器
34 通信ケーブル
40 従来例に係わる大規模太陽光発電システム
41 地上配線
42 トラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
総発電出力が1MW以上の大規模太陽光発電システムであって、
複数の太陽電池アレイと、
前記太陽電池アレイで得られた直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換装置と、
変換された交流電力を昇圧し、電力系統へ連系する連系変電設備と、
前記太陽電池アレイと前記DC/AC変換装置と前記連系変電設備とを接続し、全部または一部を架空線とした構内配線と、
から構成される大規模太陽光発電システム。
【請求項2】
前記構内配線のうち構内高圧配線の全部または一部を架空線としたことを特徴とする請求項1に記載の大規模太陽光発電システム。
【請求項3】
前記架空線は、前記大規模太陽光発電システムの北、東および西から選択される1以上の方角の側縁のみに配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の大規模太陽光発電システム。
【請求項4】
前記架空線に用いられる電柱に、通信ケーブルも共架されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の大規模太陽光発電システム。
【請求項5】
前記架空線に用いられる電柱に、柱上区分開閉器が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の大規模太陽光発電システム。
【請求項6】
前記柱上区分開閉器は、前記通信ケーブルが接続され、遠隔制御されることを特徴とする請求項5に記載の大規模太陽光発電システム。
【請求項7】
廃棄物処分場に立地されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の大規模太陽光発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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