説明

大豆β−コングリシニン高含有和菓子様食品及びその製造法

【課題】
大豆は栄養的に優れた素材であり、中でもβ−コングリシニンは血中脂質低下等の効果がある。しかし、大豆に含まれる大豆蛋白のなかにβ-コングリシニンはわずか15重量%しか含まれておらず、大豆からβ−コングリシニンを必要量摂取することは容易ではない。そこで性別年齢を問わずおいしく食べることができ、β-コングリシニンの適切な摂取が可能な食品を目的とする。
【解決手段】
大豆βーコングリシニンが加熱によりゲルを形成する点、得られたゲルが美しい透明乃至半透明感を示す点、口当たり良好なゲル物性を示す点、甘味がβーコングリシニン主体蛋白の悪風味をマスキングするうえで極めて適する点などを考慮し、水饅頭、葛饅頭、蕨餅のような柔らかい和菓子様食品に適用することで、性別年齢を問わずおいしく食べることができ、β-コングリシニンの適切な摂取が可能な食品を完成させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆β-コングリシニンを高含有する和菓子様食品に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆およびその加工品は、食生活において重要な蛋白源であるとともに、その種々の成分には生体調整機能があることが知られている。なかでも、大豆たん白質の主要成分の一つであるβ-コングリシニンには、一日当たり5g以上の摂取で血中中性脂肪を低下させる効果があることが判っている(非特許文献1「血中の中性脂肪抑制の有効量;KAMBARA Therapeutic Research vol.23 no.1」 2002」)。
【0003】
しかし、丸大豆中には約5重量%(相対的にβ-コングリシニン含量の高い分離大豆たん白質においても僅か15重量%)しか含まれておらず、大豆および大豆加工品食品から生体調整機能を示すのに十分な量のβ-コングリシニンを摂取することは量的に困難であり、相対的にβ-コングリシニン含量の高い従来の分離大豆たん白を原料とした食品を利用した場合でも、十分な効果を示す量のβ-コングリシニンを摂取することは量的に容易ではない。また、大豆β-コングリシンを含む食品の摂取量を少なくする為に分離大豆たん白の配合量を増やしても、摂取する食品の必要量を十分に減らすことは出来ないうえに、風味的な問題が生じる。
【0004】
大豆蛋白は主に肉(鳥獣魚介肉)加工食品に利用されてきた。大豆蛋白特有の強いゲル化性や粘弾性を利用したかまぼこのようなプリプリした弾力のあるゲルを形成するからである。
そして、この大豆蛋白には7S蛋白(β-コングリシニン)、11S蛋白(グリシニン)、その他の蛋白が含まれている。11S蛋白(グリシニン)は強いプリプリしたゲルを形成する。
そして、7S蛋白(β-コングリシニン)を得る方法としては、大豆蛋白から分画により得る方法と育種技術などによる7S高含有大豆から抽出して得る方法がある。
例えば、特許文献1(WO2002-028198号公報)には、大豆蛋白を効率よく、且つ工業的に高純度の7Sグロブリンと11Sグロブリンに分画する方法が開示されている。
この7Sグロブリン(β-コングリシニン)の応用例として例えば特許文献2(特開平9-075007号公報)の「大豆蛋白質及びゲル状食品」などが知られている。このゲル状食品は、加塩ゲル状食品であり、特に歯切れが良い食感に特徴がある。
また、特許文献3(2007-116961号公報)には大豆β-コングリシニン蛋白ゲルが開示され肉加工食品などやゼリーなどのゼラチン利用菓子類にも応用できることも開示されているが、和菓子への応用は示唆されていない。
【0005】
大豆蛋白に澱粉やゲル化剤を入れて食感を蕨餅様にした「蕨餅風豆腐食品」が特許文献4(特開平9-322732号公報)に開示されているが、透明でも半透明でもなくβ-コングリシニンを必要量容易に摂取することは困難である。何故ならこの蕨餅風豆腐食品には豆乳5g(蛋白含量20重量%)しか含まれておらず、大豆蛋白はβ-コングリシニンをわずか15重量%程度しか含まないのでこの蕨餅風豆腐食品にはβ-コングリシニンがわずか0.15gしか含まれないからである。
以上のように大豆β-コングリシニン蛋白を主原料とした和菓子、特に葛餅のような透明乃至半透明の和菓子に利用することは知られていない。
【0006】
従来から透明乃至半透明のゲルを形成する蛋白として動物性蛋白の一つであるゼラチンが知られている。その応用としてゼリーなどの洋菓子が知られている。しかし、ゼラチンは水系下で加熱溶融、冷却ゲル化する性質を有するので和菓子のような蒸すなどの加熱には不適である。
本発明に用いるβ-コングリシニン主体蛋白は水系下で加熱ゲル化するものであり和菓子のような蒸すなどの加熱によりゲル化するので利用も容易である。なによりゼラチンはβ-コングリシニンを含まないので本発明のような生体調整機能を期待することはできない。
【0007】
【特許文献1】WO2002-028198号公報
【特許文献2】特開平9-075007号公報
【特許文献3】2007-116961号公報
【特許文献4】特開平9-322732号公報
【非特許文献1】血中の中性脂肪抑制の有効量;KAMBARA Therapeutic Research vol.23 no.1 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
背景技術の項でも述べたように大豆は栄養的に優れた素材であり、中でもβ−コングリシニンは血中脂質低下等の効果がある。しかし、大豆に含まれる大豆蛋白のなかにβ-コングリシニンはわずか15重量%しか含まれておらず、大豆からβ−コングリシニンを必要量摂取することは容易ではない。そこで性別年齢を問わずおいしく食べることができ、β-コングリシニンの適切な摂取が可能な食品の創造を本出願の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。そして、大豆βーコングリシニンが加熱によりゲルを形成する点、得られたゲルが美しい透明乃至半透明感を示す点、口当たり良好なゲル物性を示す点、甘味がβーコングリシニン主体蛋白の悪風味をマスキングするうえで極めて適する点などを見出し、また再認識した。それらの性質を活かすことのできる用途としての食品をさらに鋭意検討した結果、意外なことに水饅頭、葛饅頭、蕨餅のような柔らかい和菓子様食品に非常に適することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は
(1)生地が大豆β-コングリシニンを主成分とする和菓子様食品。
(2)和菓子様食品の生地が透明乃至半透明である(1)の和菓子様食品。
(3)風味剤が練り込まれ、または包餡され、または上掛けされた(1)または(2)の和菓子様食品。
(4)大豆β-コングリシニン主体蛋白を含水状態で加熱ゲル化させることを特徴とする和菓子様食品の製造法。
(5)大豆β-コングリシニン主体蛋白が乾燥固形分当たりβ-コングリシニンを70重量%以上含む(4)の製造法。
(6)風味材をa.和菓子様食品生地に練り込む、b.和菓子様食品生地に内包する、c.和菓子様食品生地に上掛けする、いずれかの、(3)〜(5)いずれか1記載の製造法。
に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、血中中性脂肪低減などの生体調整機能を示すのに十分な量の大豆β-コングリシニンを容易に摂取することが可能となったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は和菓子様食品とその製造法であるが、先に製造法について説明しその後で物について説明する。
まず本発明の、大豆β-コングリシニン主体蛋白を含水状態で加熱ゲル化させることを特徴とする和菓子様食品の製造法について説明する。
【0012】
本発明に用いる大豆β-コングリシニン主体蛋白は、これまでに報告されているいずれの方法で得られたものでもよく、例えば「背景技術」の項で述べた特許文献1(WO2002/028198号公報)に記載するように酸性下の加熱処理とフィターゼ処理によって大豆β-コングリシニンとその他の蛋白質を分ける方法に準じて調製したものを利用することができる。
【0013】
本発明に用いる大豆β-コングリシニン主体蛋白は乾燥固形分当たりβ-コングリシニンを70重量%以上含むものをさす。好ましくはβ-コングリシニンを75重量%以上、より好ましくは80重量%以上含むことが適当である。
尚、ここで大豆β-コングリシニン含量は、「背景技術」の項に記載の特許文献1(WO2002/028198号公報)に記載されているようなSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で得られたパターンのデンシトメトリーによる面積比に基づき補正純度を算出して得た値である。
【0014】
本発明の大豆β-コングリシニン主体蛋白を含水状態で加熱ゲル化させるには大豆β-コングリシニン主体蛋白に加水して水和させ、和菓子に応じた形態に整形し、加熱してゲル化させることが適当である。
加水し水和する手段としては公知の混合・混練手段、例えばボールカッターやサイレントカッターなどの混合・混練手段を利用することができる。
風味剤の添加態様により異なるが、一般に加水割合は大豆β-コングリシニン主体蛋白100重量部に対して4〜11.5倍とすることができる。
本発明の大豆β-コングリシニン主体蛋白は8重量%程度の濃度から加熱ゲルを形成し始め、和菓子の形態にもよるが、例えば葛餅様食品あるいは葛饅頭様食品の場合では、大豆β-コングリシニン主体蛋白の濃度が約13重量%(加水倍率6.7倍)、葛餅様食品の場合で13〜14重量%(加水倍率6.2〜6.7倍)、蕨餅様食品では約15重量%(加水倍率5.7倍)が最も好ましい。
【0015】
一般に和菓子は砂糖などの甘味剤を含む風味剤を併用することで美味しく食することができる。
風味剤は和菓子の種類により異なり、和菓子に応じた風味剤を利用することができる。
例えば葛饅頭、蕨餅などの場合であれば、黒糖、餡、黄粉などの和菓子に用いる風味剤を利用することができる。黒糖は単品でも用いることができるが、甘味剤として砂糖と同様餡や黄な粉に混合あるいは混練して用いることもできる。
これらの風味材の利用形態は目的とする和菓子の種類により異なるが、a.和菓子様食品生地に練り込む、b.和菓子様食品生地に内包する、c.和菓子様食品生地に上掛けするなどすることができる。
例えば餡や黒糖や黄な粉の場合練り込んだり、包餡したりすることができ、黒糖であればタレとして上掛けすることができ、餡や黄な粉であればまぶすなどすることができる。
より具体例としては、黒糖のような風味剤を用いる場合は、大豆β-コングリシニン主体蛋白と水と黒糖や黒糖のような風味剤を含む生地をそのまま、好ましくは減圧や遠心脱泡した後、包餡せずに、または包餡し、必要に応じて成形して70℃以上で加熱することにより調製することが出来る。
【0016】
加熱は、大豆β-コングリシニンが水系下でゲル化する温度以上であればよく、通常70℃以上、好ましくは80℃以上が適当である。
加熱の態様は和菓子を製造するときに用いる手段と同様、例えば煮たり蒸したりすることができる。
【0017】
以上のようにしてβ-コングリシニンを多量に含むにもかかわらずみた目に美味しい和菓子様食品を得ることができる。
得られた本発明の和菓子様食品は見た目には葛饅頭や蕨餅のように生地が透明乃至半透明に透けて見える和菓子様食品とすることができる。例えば和菓子様食品の生地に餡を包餡すればその餡が透けて見える。
【0018】
次に本発明の和菓子様食品について説明する。
本発明は、生地が大豆β-コングリシニンを主成分とする和菓子様食品である。「和菓子」という言葉の由来には諸説あるが、明治時代以降、多くの洋菓子が日本に伝わったことで、従来からある日本風の菓子を総称した言葉であるとの説がある。主な特徴は、せんべいなどの干菓子以外では甘いものが多い点、油はほとんど使われない点などである。本発明で言う和菓子様食品とは、これらの特徴を有したもののうち、生菓子、半生菓子に分類されるもので、甘味を主体とし、餡、黒糖、黄粉などの味が適するものである。より具体的には、水饅頭、葛饅頭、蕨餅などが好適である。

本発明の和菓子様食品の生地は水饅頭、葛饅頭、蕨餅などのように透明乃至半透明である。例えば餡とか黒糖を内包したときに透けて見える程度である。生地に何も練りこまないとき生地5mmの可視光(OD660nm)の、分光光度計による透過率で示すと、5%以上である。
また本発明の和菓子様食品の食感は大豆蛋白を用いているのにゲルがプリンプリンしたかまぼこのようなものではなく水饅頭、葛饅頭、蕨餅などのようにソフトなゲル状である。
【0019】
以上のように本発明の和菓子様食品は透明乃至半透明であたかも水饅頭、葛饅頭、蕨餅のような見た目に美味しい和菓子様食品であるが、そのまま食べるのはもとより、風味剤、好ましくは甘い食材で味を付与することがより好ましい。
風味剤としては餡(小豆餡、粒餡、こし餡)、黒糖、黄な粉など通常の和菓子に用いる風味剤を含むことができる。黒糖は風味剤としてだけでなく餡や黄な粉などの甘味剤として砂糖などと同様に用いることができる。
これらの風味剤は和菓子様食品生地に練り込まれたり、包餡されたり、上掛けされたりしていることができる。例えば餡であれば生地に練りこんだり包餡したりまぶすなど上掛けすることができる。黄な粉であればまぶすなど上掛けすることができる。黒糖は包餡や練りこむこともできるがたれのように流動性を付与して上掛けすることができる。
【0020】
本発明の和菓子様食品は、和菓子のように澱粉類を主原料としないで大豆β-コングリシニン主体蛋白を主原料とするにも関わらず水饅頭様食品、蕨餅様食品または葛餅様食品とすることができる。
本発明の和菓子様食品の生地は大豆β-コングリシニンを主成分とし乾燥固形分中の大豆β-コングリシニンが40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上が適当である。
尚、和菓子様食品生地中野大豆β-コングリシニン含量は、「背景技術」の項に記載の特許文献1(WO2002/028198号公報)に記載されているようなSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で得られたパターンのデンシトメトリーによる面積比に基づき算出し補正純度としてて得ることができるが、和菓子様食品中のβ-コングリシニン含量はELISA法を利用するほうが好ましい。
なお、ELISAは酵素免疫測定法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay )の略である。
【0021】
以上のような本発明の和菓子様食品は美味しく誰でも食べることが容易であるので、例えば、実施例に示したように水饅頭様食品1個で約1.4gの大豆β-コングリシニンを摂取できるので3個食べると約4.2g、4個で5.6gのβ-コングリシニンを摂取でき、血中中性脂肪低減効果を期待できる。所謂「メタボ」と言われるメタボリック症候群を防止できる効果を気体できる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例及び比較例を例示する。
製造例1
(大豆β-コングリシニン主体蛋白の製造例)
低変性脱脂大豆1重量部に、10重量部の抽出水を加え、室温、pH7.0において1時間攪拌抽出した後、遠心分離して脱脂豆乳を得た。この脱脂豆乳を塩酸にてpH4.8に調整した後、50℃になるように加温して50℃で15分間保持し、その後、苛性ソーダでpH5.8に調整してバッチ式遠心分離機(3,000G)で15分間遠心分離して大豆β-コングリシニンを含む可溶性画分を得た。得られた可溶性画分を40℃に冷却した後、固形分当たり0.2重量%のフィターゼ(新日本化学製「スミチームPHY」)を加え、30分間酵素反応を行い、反応後、塩酸にてpH4.7に調整し、バッチ式遠心分離機(3,000G)で10分間遠心分離して酸沈澱カードを得た。得られた酸沈殿カードに4倍重量の水を加えて攪拌し、苛性ソーダでpH7.0に中和後、142℃で7秒間の殺菌し、噴霧乾燥して大豆β-コングリシニンを主成分とする蛋白質を得た。得られた蛋白質の水分は4.7重量%、粗たん白質は97.8重量%/乾物、β-コングリシニン含量は83.9重量%で風味の良好な蛋白質であった。
【0023】
尚、粗たん白質はケルダール法に基づく方法で求めた全窒素量に係数6.25を掛けて換算し、大豆β-コングリシニン含量はWO2002/028198号公報に記載されている方法に基づいて補正純度を求めた。
【0024】
(和菓子様食品の製造例)
実施例1(葛饅頭様食品)
上記製造例で得られた大豆β-コングリシニン主体蛋白12重量部、黒砂糖(上野砂糖株式会社製)10重量部に水88重量部を加え、フードカッターで攪拌混合して水和物(生地)を調製した。
得られた水和物は流動性が高く、減圧脱泡した後にΦ40mmのカップに約15g流し込み、市販の練り餡(加藤産業販売)約6gを生地中に入れて80℃で15分間蒸し加熱して水和物を凝固させることにより葛饅頭様食品を得た。
得られた大豆β-コングリシニン主体蛋白を用いた葛饅頭様食品は、外皮(生地)の透過率が24%の中身の餡がはっきりと見える葛饅頭様の食感と良好な風味を有するものであった。
なお、透過率は葛饅頭生地5mmを分光光度計(島津製作所製のUV-1600)を用いて可視光(OD660nm)の透過率を測定した。
【0025】
得られた葛饅頭様食品は、1個当たり約1.4gの大豆β-コングリシニンを含有した風味食感の良い和菓子の形態であり、複数個食すると生体調整機能を示すのに十分な量の大豆β-コングリシニンを摂取することができる。
【0026】
実施例2(蕨餅様食品)
製造例1と同様にして得た大豆β-コングリシニン主体蛋白15部に砂糖4部、水85部の水を加え、フードカッターで攪拌して生地を調製した。得られた生地を減圧脱泡し、ステンレス製トレー上に厚さが約1.5cmとなるように延ばした後に、85℃で15分間蒸し加熱して蕨餅様食品を得た。
得られた蕨餅様食品を約1.5cm角にカットし、黄な粉、および黒糖シロップを掛けてわらび餅様の食感と良好な風味を有する蕨餅様食品を得た。
【0027】
市販されているわらび餅は一パック100〜200g程度のものが多いが、この蕨餅様食品は、50gあたり約6gの大豆β-コングリシニンを含有しており、生体調整機能を示すのに十分な量の大豆β-コングリシニンを摂取することができる。
【0028】
比較例1(分離大豆蛋白を用いた葛餅様食品)
分離大豆蛋白(不二製油株式会社製;フシ゛フ゜ロ-R)18重量部、黒砂糖(上野砂糖株式会社製)10重量部に水82重量部を加え、実施例1と同様に減圧脱泡した生地を調製した。
尚、分離大豆蛋白は実施例1の大豆β-コングリシニンを主成分とする蛋白質よりもゲル形成能力が弱い為に配合比を多くする必要があり、その結果、実施例1とは異なる流動性のない生地であった。
Φ40mmのカップに調製した生地約15gを計り入れ、さらに市販の練り餡約6gを生地中に埋め込み、カップと同様の形となるように成型した後に80℃で15分間蒸し過熱して葛餅様食品を得た。
得られた分リ大豆蛋白を用いた葛餅様食品は、ゲルで形成された外皮の透過率は0%で中味の餡は見えず、食感はネチャ付きが強く、甘味とは相性の良くない風味で、葛饅頭とは外観・食感・風味のいずれも異なるものであった。
【0029】
尚、得られた葛餅様食品中の大豆β-コングリシニン含量は約0.4gと少なく、葛餅様食品のみ食しても生体調整機能を示すのに十分な量の大豆β-コングリシニンの摂取することは容易ではない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、生体調整機能を有するβーコングリシニンを、その機能を発現するために必要な量を、年齢性別に関係なく極めて容易に、美味しく摂取できるようになった。本発明のように、生体調整機能を有しつつ、見た目にも美しく、おいしく摂取できる食品は極めて限られており、βーコングリシニンにおいては、従来存在しなかったものである。
本発明のような、生体調整機能を有しつつ、通常の食品と同等か、それ以上に美しく、おいしい食品が普及することで、人々は、おいしく楽しい食生活を送る中で健康になることができ、一般消費者および食品産業に与える利益はきわめて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地が大豆β-コングリシニンを主成分とする和菓子様食品。
【請求項2】
和菓子様食品の生地が透明乃至半透明である請求項1の和菓子様食品。
【請求項3】
風味剤が練り込まれ、または包餡され、または上掛けされた請求項1または2の和菓子様食品。
【請求項4】
大豆β-コングリシニン主体蛋白を含水状態で加熱ゲル化させることを特徴とする和菓子様食品の製造法。
【請求項5】
大豆β-コングリシニン主体蛋白が乾燥固形分当たりβ-コングリシニンを70重量%以上含む請求項4の製造法。
【請求項6】
風味材をa.和菓子様食品生地に練り込む、b.和菓子様食品生地に内包する、c.和菓子様食品生地に上掛けする、いずれかの、請求項3〜5いずれか1項記載の製造法。

【公開番号】特開2010−94035(P2010−94035A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265211(P2008−265211)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】