説明

大豆胚芽入りおからの骨成分増加組成物及び該組成物を含む機能性食品

【課題】 天然物であって、安価な原料を加工することによって得られる風味良好な組成物を用いて、積極的に骨形成を促進して、発育期にあるヒトの骨部の形成を助長する骨量増進組成物及び該組成物を含有する機能性食品を提供する。
【解決手段】 焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物を含む水溶液を成長期及び加齢期のラットに1日1回7日間経口投与した短期間の摂取によるラット大腿骨の骨幹部(皮質量)及び骨幹端部(海綿骨)組織における骨成分の変動からみて、焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物抽出液(1.0ml/100g体重)の投与により、骨カルシウム量の有意な増加が引き起こされた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙煎したおからと焙煎した大豆胚芽との混合物を有効成分とする骨重増進組成物及び骨重量増進組成物を含む機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的におからは豆腐を製造する過程で豆乳を取るためにすりつぶした大豆の絞りかすであるが、その成分は豊富な栄養素を含んでおり、このおからを利用した従来技術として、乳飲料については、例えば、おからを乾燥処理する工程と、乾燥後のおからを焙煎処理する工程を備えたことを特徴とするおから茶の製造法(例えば、特許文献1参照)や、おからに水を加えて撹拌した後、ろ過または遠心分離して抽出液を得る工程と、この抽出液に糖類を0.3〜10.0重量%添加し、PHを3.5〜8.0に調製する工程と、この抽出液を減菌処理する工程と、この抽出液に乳酸菌を撹拌して培養する工程とを含むことを特徴とするおからを原料とする乳酸飲料の製造法(例えば、特許文献2参照)や、乾燥オカラの粉末と,糖質、脂質、タンパク質、無機質及びビタミンの五大栄養素のうちの一つ又は二つ以上の粉末と,味付けの粉末と,水に溶けやすくする性質をもった物質の粉末と,を混合することからなる乾燥オカラの粉末を主成分とした粉末飲料(例えば、特許文献3参照)や、(1)機械的に切断されたおから繊維、(2)おから繊維からなるマトリックス中の繊維間物質の水可溶性多糖類、(3)寒天、キサンタンガム、ジェランガム、グルコマンナン、アルギン酸、グアガム、タラガム、カラギーナンκ、カラギーナンλ、大豆多糖類及びカードランからなる群から選ばれる1種以上の増粘剤、及び(4)水を含有するおから飲料(例えば、特許文献4参照)や、おからを乾燥させた後、一旦パウダー状の微粉末とし、前記微粉末粉を焙煎処理したことを特徴とするおからパウダー茶の製造方法(例えば、特許文献5参照)が、それぞれ知られている。
【0003】
また、食品用としては、含水率80%の生オカラを多量に乾燥せしめ、又圧縮プレスに電気加熱器を取付け、水分を導電媒体として圧縮しながら加熱せしめて水分を蒸気化せしめた後、真空減圧乾燥器で急速乾燥を行い、この粉末を基材として乾燥野菜と螺旋状水藻を混合し、更に甘味料、青ノリ、花粉、田七、ガンマ油、真弧、ハトムギ粉、酵母や酵母を添加した接合剤のアルギニン酸ソーダー、キチンキトサンの酸性液や澱粉を添加して成型して、各種錠剤や丸薬や顆粒状粉に加工した健康食品、飼料加工品、飲料加工品(例えば、特許文献6参照)や、おからと1種または2種以上の澱粉質材料とを含む混合原料を麹菌によって発酵させてなることを特徴とするおから加工食品(例えば、特許文献7参照)や、オカラを植物細胞壁分解酵素の存在下で乳酸発酵してなる乳酸発酵オカラ(例えば、特許文献8参照)が、それぞれ知られている。さらに、焙煎した大豆胚軸及び焙煎したおからを含有するおから茶(例えば、特許文献9参照)が知られている。
【0004】
他方、骨代謝、骨形成不全により、骨中のカルシウム量の減少などが生じて、種々の骨疾患が起こると考えられている。骨疾患の代表として骨折、骨軟化症、骨減少症、骨粗鬆症、腰背痛等がある。特にこれら骨疾患の中でも骨粗鬆症は、加齢による骨吸収と骨形成のバランスが崩れることで、相対的に骨吸収が優位となるために骨量の減少が起こり、骨の微細構造の変化により骨の強度が低下し、骨折が起こりやすくなる病態を示す。特に女性の場合には、閉経や卵巣摘除などにより骨量の減少は急速に起こる。骨粗鬆症になると、骨折したり、激しい痛みなどを伴うだけでなく、特に老人の寝たきりの原因ともなるため、高齢化社会における生活の質の向上という観点からも、有効な治療法が求められている。骨粗鬆症は発症してから治療するのは困難であることから、予防に努めることが重要であり、若年期から骨量を増やすことが不可欠で、日常的に骨形成に必要な栄養成分や、骨形成を促進する食品を積極的に摂取するようにしなければならないことが深く認識されるようになった。骨を強化する食品としては、現在、主にカルシウムやマグネシウム、ビタミンDが利用されている。また、カルシウムの腸管からの吸収を促進するカゼインホスホペプチドなども利用されている。
【0005】
骨粗鬆症等の骨疾患の治療薬としては、活性型ビタミンD3や女性ホルモン(エストロゲン)、カルシトニン、イプリフラボン類が臨床に用いられ、最近になって、ビタミンK2に代表されるポリイソプレノイド誘導体の破骨細胞形成抑制作用に基づく抗骨粗鬆症剤(例えば、特許文献10参照)も開発されている。また、カゼインホスホペプチド及びゲニステインを有効成分として含有する骨強化剤(例えば、特許文献11参照)、サポニン、ダイジン、ダイゼイン、ゲニスチン及びゲニスティンを主たる有効成分とする骨形成促進及び抗骨粗鬆症組成物(例えば、特許文献12参照)、ワサビ抽出物を有効成分とし、抗骨粗鬆症作用を発揮する骨量増進組成物(例えば、特許文献13参照)、アセキサム酸亜鉛を有効成分とする骨疾患治療剤(例えば、特許文献14参照)、イソフラボンを主たる有効成分とする骨形成促進及び骨塩量減少防止用組成物(例えば、特許文献15参照)、ビタミンK2と亜鉛を共に強化した抗骨粗鬆症組成物(例えば、特許文献16参照)、骨組織復元システムであって、骨格および、骨形成の増進を促進させるために前記骨格に固定させた生物学的活性分子からなる第1成分、ならびに骨再吸収の低減を促進させるための第2成分を含むシステム(例えば、特許文献17参照)なども提案されている。
【0006】
一方、焙煎したおから及び焙煎した大豆胚芽混合物を骨量の増進が必要とされる疾病の予防や治療のために用いられることは知られていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−074474号公報
【特許文献2】特開昭63−192366号公報
【特許文献3】特開平09−051776号公報
【特許文献4】特開2002−051755号公報
【特許文献5】特開2003−116501号公報
【特許文献6】特開平10−191929号号公報
【特許文献7】特開2003−000174号公報
【特許文献8】特開2004−154122号公報
【特許文献9】特開2003−210146号公報
【特許文献10】特開平7−215849号公報
【特許文献11】特開2001−302539号公報
【特許文献12】特開2000−191526号公報
【特許文献13】特開平10−279492号公報
【特許文献14】特開平10−218767号公報
【特許文献15】特開平10−114653号公報
【特許文献16】特開平10−36256号公報
【特許文献17】特表2003−513682号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、天然物であって、安価な原料を加工することによって得られる風味良好な組成物を用いて、積極的に骨形成を促進して、発育期にあるヒトの骨部の形成を助長する骨量増進組成物及び該組成物を含有する機能性食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、豆腐の製造の際産出されるおからは、種々の栄養素、生理活性物質を含んでいるにも拘わらず、特有の臭い、味の点で殆どが飼料に利用されるか廃棄されている現状を鑑みて、おからの有効利用を目的とし、特に人の健康の維持、若しくは病気の予防・治療等に新しい効能があるのではないかと種々検討したところ、焙煎したおからとさらに別に焙煎した大豆胚芽との混合物に、顕著な骨量増進作用があることを見い出した。すなわち、焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物を含む水溶液を成長期及び加齢期のラットに1日1回7日間経口投与した短期間の摂取によるラット大腿骨の骨幹部(皮質量)及び骨幹端部(海綿骨)組織における骨成分の変動からみて、焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物抽出液(1.0ml/100g体重)の投与により、骨カルシウム量の有意な増加が引き起こされた。一方、焙煎おから抽出液単独より焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物が骨増進効果が認められた。このような焙煎おからと焙煎大豆胚芽が骨成分増加効果を奏するとの知見は現在まで報告されていない。また、ラットにおける骨形成量の増大が確認された効果は、経験的にヒトでもほぼ100%有効性が確認されている。本発明はこれら知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち本発明は、焙煎したおから若しくはその処理物と、焙煎した大豆胚芽若しくはその処理物との混合物、又はその処理物を有効成分とすることを特徴とする骨量増進組成物(請求項1)や、焙煎したおからと焙煎した大豆胚芽とが7:3〜9:1の割合で混合されていることを特徴とする請求項1記載の骨量増進組成物(請求項2)や、焙煎したおからが、おからを280℃〜320℃で熱風乾燥し、得られた乾燥おからを220℃〜260℃でドラム乾燥し、強制冷却することにより得られたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の骨量増進組成物(請求項3)や、焙煎した大豆胚芽が、乾燥大豆を脱皮・脱胚芽処理し、選別機により、皮・胚芽を分離し、風力又はロールによる選別機により胚芽を分離し、220〜260℃でドラム乾燥することにより得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の骨量増進組成物(請求項4)に関する。
【0011】
また本発明は、焙煎したおから若しくはその処理物と、焙煎した大豆胚芽若しくはその処理物との混合物、又はその処理物を含有する飲食品であって、骨量増進作用を有することを特徴とする骨量の増進が必要とされる疾病の予防・治療用の機能性食品(請求項5)や、焙煎したおから若しくはその処理物と、焙煎した大豆胚芽若しくはその処理物との混合物、又はその処理物を含有する飲食品であって、骨量増進作用を有することを特徴とし、骨量の増進が必要とされる疾病の予防・治療のために用いられる旨の表示を付した機能性食品(請求項6)や、焙煎したおからと焙煎した大豆胚芽との混合物が、焙煎したおからと焙煎した大豆胚芽とが7:3〜9:1の割合で混合されたものであることを特徴とする請求項5又は6記載の機能性食品(請求項7)や、焙煎したおからが、おからを280℃〜320℃で熱風乾燥し、得られた乾燥おからを220℃〜260℃でドラム乾燥し、強制冷却することにより得られたものであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか記載の機能性食品(請求項8)や、焙煎した大豆胚芽が、乾燥大豆を脱皮・脱胚芽処理し、選別機により、皮・胚芽を分離し、風力又はロールによる選別機により胚芽を分離し、220〜260℃でドラム乾燥することにより得られたものであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか記載の機能性食品(請求項9)に関する。
【0012】
さらに本発明は、飲食品が、飴、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒーであることを特徴とする請求項5〜9のいずれか記載の機能性食品(請求項10)や、飲食品が、スポーツ飲料等の各種飲料や、プリン、クッキー、パン、ケーキ、ゼリー、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダであることを特徴とする請求項5〜9のいずれか記載の機能性食品(請求項11)に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の、焙煎したおから及び焙煎した大豆胚芽との混合物を有効成分とし、積極的に骨量増進をなさしめて骨疾患を予防・治療することができる顕著な効果を有する骨量増進組成物や、該組成物を含有する機能性食品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の骨量増進組成物としては、焙煎したおから若しくはその処理物と、焙煎した大豆胚芽若しくはその処理物との混合物、又はその処理物を有効成分とする組成物であれば特に制限されるものではなく、上記処理物としては、微粉砕物、顆粒化物、懸濁物、抽出物、酵素処理物、発酵処理物、冷凍物などを例示することができる。
【0015】
本発明で使用する焙煎おからと焙煎大豆胚芽とを骨量増進組成物として用いるためには、おから及び大豆胚芽はそれぞれ物性等が異なり、最大の骨量増進効果と最適の味や風味を得るために、それぞれを別々に焙煎する必要がある。焙煎処理は、これらの食品に香ばしさを与え、大豆臭を消して食味や風味を倍加させる。また、焦げ色を付けることで視覚的にも風味を倍加させることができる。
【0016】
本発明において、焙煎おからと焙煎大豆胚芽との配合比率(重量)は、特に制限されるものではないが、7:3〜9:1の割合で混合されることが好ましい。
【0017】
焙煎胚芽が混合物の10%以上であると、骨量増進の作用が十分に発揮することができ、また30%以下では、骨量増進作用に優れ、供給源が少ない焙煎大豆胚芽を有効に利用でき、焙煎おからとの相乗作用も期待できる。
【0018】
本発明の焙煎大豆胚芽を添加した焙煎おからの製造方法について、図1により説明する。先ず、本発明で使用する焙煎おからの原料である生おからは、通常、豆腐を製造するときの豆乳の絞り粕であるおからであれば特に制限されるものではない。おからは、通常、水分約80〜85%を含んでおり、このように水分を多量に含んでいるので、先ず、熱風乾燥などの乾燥手段により水分5〜10%になるまで乾燥する乾燥工程(乾燥おから)に入る。乾燥工程では、熱風乾燥の他に、ドラム乾燥、マイクロ波照射による乾燥、ローラー式加熱乾燥等が採用できるが、本発明では特に熱風乾燥が好ましい。乾燥温度、乾燥時間は、乾燥法の種類により異なるが、熱風乾燥を採用する場合は、280℃〜320℃の温度で、重量が約1/5程度になるまで乾燥を行う。乾燥後の水分5〜10%を含むおからを焙煎工程(焙煎おから)に移す。本発明における焙煎方法は特に制限されるものではないが、焙煎工程では、ドラム式焙煎、焙煎釜への直接加熱による焙煎、オーブン内での雰囲気加熱による焙煎等があるが、適宜これらの焙煎方法を採用できる。本発明では、ドラム式焙煎が好ましく、220〜260℃の温度で行い、焙煎時間は、おから特有の臭みが取れ、かつ焦げ臭のない程度の時間で焙煎することが好ましい。
【0019】
本発明で使用する大豆胚芽は、大豆の種類には特に制限されず、大豆胚芽であればよく、生の大豆を乾燥工程(乾燥大豆)に付し、次いで共雑物から精選するために選別機により選別して乾燥大豆を得、さらに、乾燥大豆を、回転する複数の羽根と網状のドラムとの相互作用により脱皮、脱胚芽処理を行い、皮、大豆胚芽を得る。その後、皮と大豆胚芽とを分離するために、風力・ロール選別等による選別機を用いて選別して大豆胚芽を得ることができる。該大豆胚芽を焙煎する方法としては、焙煎による焦げ臭が少なく、芳しい風味を有する大豆胚芽が得られる方法であればどのような方法でもよく、例えば、220〜260℃のドラム式焙煎機により焙煎する方法が好ましく、焙煎時間は、前記温度の範囲内で、温度が低いと焙煎時間を長くし、逆に温度が高いと焙煎時間を短かくするなど適宜選択することができる。
【0020】
おからを原料とする工程から得られた焙煎おからと、乾燥大豆を原料とする工程より得られた焙煎胚芽とをミキサー等により適宜の割合でブレンドする。このようにして、焙煎胚芽入りおからを製造することができる。
【0021】
上記本発明の骨量増進作用を有する、焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物を含有する機能性食品又は食品素材は、飲食品原料の一部として用いたり、あるいは製造工程又は製造後に添加・配合することにより得ることができる。かかる機能性食品としては特に制限されるものではなく、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料や、クッキー、パン、ケーキ、煎餅などの焼き菓子、ラムネ菓子等などの錠菓、羊羹などの和菓子、プリン、ゼリー、アイスクリーム類などの冷菓、チューインガム、飴等の菓子類や、クラッカー、チップス等のスナック類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、チーズ、バターなどの乳製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、ふりかけ、甘味料等の調味類や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ、スープ、シチュー等の各種総菜などを具体的に例示することができる。例えば、焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物を微粉末化し、該微粉末を常法に従い打錠することにより錠菓を製造することができ、この場合かかる微粉末を造粒した後に打錠することもできる。好ましくは、前記の微粉末化物を飴の製造過程で混合しておから飴としたり、ふりかけの一原料としておからふりかけとしたり、冷菓の材料に用いておからアイス飲料とすることができる。また、チューインガムに用いておからガムとしたり、各種シリアルに混合しておからシリアルとすることができる。さらに、おからには、食物繊維が多く含まれており、本発明の混合物にも同様に食物繊維を多く含有していることから、おからファイバーとして各種食品及び飲料等に混入することができる。
【実施例1】
【0022】
(焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の製造法)
豆腐の製造時に副産物としてできたおからを熱風チャンバー室において300℃の熱風で当初の重量の約1/5になるまで乾燥した。即ち、水分含量5〜10%まで乾燥し、該乾燥おからを220℃〜260℃の温度においてドラム式の加熱機により焙煎し、強制冷却した。焙煎後の重量は、焙煎前の重量の約5/6程度となった。
【0023】
一方、焙煎大豆胚芽の製造方法は、乾燥大豆を共雑物から精選するために選別機により選別して精選乾燥大豆を得、さらに、精選乾燥大豆を、回転する複数の羽根と網状のドラムとの相互作用により脱皮、脱胚芽処理を行う。その後、種皮と大豆胚芽とを分離するために、風力・ロール選別による選別機を用いて選別して大豆胚芽を得た。該大豆胚芽を220℃〜260℃の温度においてドラム式の加熱機により焙煎し、強制冷却した。焙煎後の重量は、焙煎前の重量の約6/7となった。
【0024】
前記の製造方法により得られた焙煎おからと焙煎大豆胚芽とを、80:20の割合で混合することにより、本発明の焙煎混合物が得られた。
【0025】
粉末状の焙煎おから(100%)及び焙煎おからと焙煎大豆胚芽のそれぞれ100g中の生理活性物質について、日本食品分析センターにより分析されたものを表1に示す。大豆サポニン量については、標準品として、ソヤサポゲノールA及びソヤサポゲノールBを用い、それぞれをソヤサポニンA及びソヤサポニンIに換算してその合計量を大豆サポニン量とした。
【0026】
【表1】

【0027】
表1より、粉末焙煎おから単独よりは、さらに粉末焙煎大豆胚芽を80:20の割合で混合したものが、大豆サポニンでは4倍、ダイジンでは17倍、ダイゼインでは1.35倍、ゲネスチンでは4.55倍増えており、ゲネステインではほぼ等倍である。
【実施例2】
【0028】
(実験方法)
焙煎おから(100%)或いは焙煎おから(80%)と大豆胚芽(20%)との混合物を用いて、その100gに水1000mlを加え80〜90℃で20分間加熱抽出し、抽出液中に含まれる生理活性成分の含量を日本食品分析センターにより分析された結果を表2,3に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
表2と表3より、熱湯により抽出した、焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物は焙煎おから単独のものより、大豆サポニンは、4.84倍増加し、検出されなかったダイジン、ゲネスチンは、それぞれ6.1mg/100g、1.0mg/100g含有されていることがわかった。これらの結果は、焙煎大豆胚芽を混合したことによるものと思われる。
【0032】
前記の焙煎おから、及び焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の加熱抽出液を用いて、その1.0mlをラットに1日1回7日間胃ゾンデを用いて経口投与し、最終投与の24時間目に軽いエーテル麻酔下で、心臓せん刺により採血後、解剖し、大腿骨を抽出した。使用したラットは、日本エスエルシー(浜松)より入手し、体重90〜100gの4週齢の雄ラットを用いた。一方、骨粗鬆症との関連で雌性の加齢(50週齢)ラットも使用した。
【0033】
採血した血液は2000回転で5分間遠心分離し、その上澄(血清)を採取し、カルシウム及び無機リン濃度を測定した。
【0034】
大腿骨は、筋肉を取り除き、骨髄を冷0.25M蔗糖液中で洗浄除去し、骨幹部(皮質骨)と骨幹端部(海綿骨)に分け、そのカルシウム量、骨石灰化促進酵素のアルカリ性ホスファターゼ活性及び骨組織中の細胞数の指標としてのDNA量を測定するために使用した。
【0035】
得られた結果は、Student’st検定を用いて統計的に処理し、危険率0.05以下の場合に有意差があるとした。
【0036】
(骨カルシウムの測定)
組織片に濃硝酸を加えて120℃で12時間灰化し、原子吸光分光光度計(パーキンエルマー社製「パーキンエルマー303」)を用いて骨カルシウム量を定量した。
【0037】
(アルカリ性ホスファターゼ活性の測定)
骨の石灰化の促進に関する最も重要な酵素であるアルカリ性ホスファターゼの量を調べた。骨組織片を0.25Mの蔗糖液で洗浄し、6.5mMのバルビタール緩衝液(pH7.4)3ml中で破砕し、超音波処理した。この液を遠心分離して上清を酵素液としてWalter及びSchuttの方法(in Method of Enzymatic Analysis, Vol1-2,p856, Academic Press, New York, 1965)に従って測定した。すなわち、p−ニトロフェニール燐酸を基質として、ジエタノールアミン緩衝液(pH9.8)2mlに酵素液0.05mlを添加し、37℃で30分間インキュベーションし、0.05NのNaOHを10ml添加した後、分光光度計を用いて吸光度(405nm)を測定し、骨に対する治療剤及び骨に対する作用の知られている化合物の骨アルカリ性ホスファターゼ活性を調べた。
【0038】
(DNA量の定量)
骨組織片を0.25Mの蔗糖溶液で洗浄し、湿重量を測定した。その後、0.1NのNaOH4ml中で粉砕して、4℃で24時間浸透させた。この液を遠心分離し、上清を試料としてCeriottiらの方法(J.Biol.Chem., 241: 34-77, 1951)に従って定量した。即ち、試料2mlに濃塩酸1ml及び0.04%のインドール溶液1mlを添加し沸騰水中で100℃に加熱後、急冷して、クロロホルム4mlで抽出し、クロロホルム層を採取して、分光光度計(490nm)を用いて骨中のDNA量を測定した。
【実施例3】
【0039】
(成長期ラットに及ぼす効果について)
成長期(雄性、5週齢)のラットに焙煎おから、及び焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物をそれぞれ加熱抽出した溶液をラット体重100g当たり、1.0mlを1日1回7日間連続経口投与した。ときの血清成分と骨成分の変動を調べた。その結果を表4及び表5に示す。
【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
前記表4によると、焙煎おから、及び焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の抽出液の投与は、ラットの体重並びに血清中カルシウムと無機リン濃度の有意な変動を引き起こさなかったことから、毒性的効果を示さなかった。
【0043】
ラットの大腿骨組織を骨幹部(皮質骨)と骨幹端部(海綿骨)組織に分け、それぞれの骨成分の変動を調べた。その結果、表5に示すように、骨幹部及び骨幹端部組織のカルシウム量は、焙煎おから、及び焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の抽出物の投与のいずれも有意に増加することが分った。骨幹部カルシウム量の増加は、焙煎おから抽出液よりも焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の抽出液を投与した場合において、強い効果が認められた。
【0044】
骨組織中のアルカリ性ホスファターゼは骨石灰化促進酵素として機能し、造骨細胞の骨芽細胞のマーカー酵素である。骨幹部及び骨幹端部組織のアルカリ性ホスファターゼ活性は、焙煎おから、及び焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の抽出液の投与により、有意に増加したが、焙煎大豆胚芽添加の効果は見られなかった。
【0045】
骨組織中のDNA量は、骨組織中の細胞数の指標となり得る。骨幹部組織中のDNA量は焙煎おから抽出液の投与で有意に増加しなかったが、焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の抽出液を投与した場合には有意に増大することが見出され、焙煎大豆胚芽添加の効果が認められた。
【0046】
骨幹端部組織中のDNAは、焙煎おから抽出液、及び焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の抽出液の投与により有意に増加した。
【実施例4】
【0047】
(加齢期ラットに及ぼす効果について)
雌性の加齢期(50週齢)のラットを閉経後骨粗鬆症に対するモデル動物として用いた。焙煎おから抽出液、及び焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の抽出液をラット体重100g当たり1.0mlを1日1回7日間経口投与した。その最終投与の24時間目に軽いエーテル麻酔下で解剖した。ラットの体重、血清中カルシウム及び無機リン濃度を測定した。その結果を表6に示す。
【0048】
【表6】

【0049】
表6より、焙煎おから抽出液、及び焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の抽出液を投与したものとでは、ラットの体重、血清中のカルシウム及び無機リン濃度のいずれも有意に変動しなかった。
【0050】
次に大腿骨組織の骨成分の変動を調べた。その結果を表7に示す。
【0051】
【表7】

【0052】
表7より、骨幹部及び骨幹端部組織中のカルシウム量は、焙煎おから抽出液、及び焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の抽出液を投与したものでは有意に増加したが、その効果は焙煎大豆胚芽を添加した焙煎おから抽出液の方が強かった。 一方、骨幹部及び骨幹端部組織中のアルカリホスファターゼ及びDNA量は、焙煎おから抽出液を投与したものでは有意に増加しなかったが、焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の抽出液を投与したものでは有意に増大することが見出された。
【0053】
このように、実施例3,4において、焙煎おから、及び焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物のそれぞれの抽出液をラットに経口投与して、その骨成分に及ぼす効果を調べた。その結果、焙煎おから抽出液をラットに7日間経口投与すると骨成分が増加する効果がもたらされることが見出された。さらに焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の抽出液を投与したものでは、その効果は有意に増進することがわかった。焙煎おから、及び焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の両抽出液中において、前記の表2(焙煎おから100%)と表3(焙煎おから80%と焙煎大豆胚芽20%)を比較すると、表2には、大豆サポニンが含有され、イソフラボンは検出されず、表3には、大豆サポニンの濃度が極めて高く、イソフラボン(ダイジン、ゲネステイン)も含有されていることから、サポニン投与が骨成分の増量を引き起こすことがラットを用いた実験により明らかとなった。したがって、焙煎おからの骨成分増加効果は、主にサポニンによるものであり、焙煎大豆胚芽を添加することによりイソフラボンの増加がもたらされ、さらにサポニンの量が増加することから、これらの成分の増量が焙煎おからの抽出液と比較して、焙煎大豆胚芽の抽出液投与の骨成分増進効果として発揮されたものと思われる。
【0054】
以上のことより、焙煎おから抽出液は骨成分増加効果を奏することが、さらに、本発明の焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物の抽出液はより強い骨効果をもたらすことが分った。同様に、粉末状の焙煎おからと焙煎大豆胚芽との混合物も、抽出液と同等かそれ以上の骨成分増進効果を奏する。
【実施例5】
【0055】
(おから入り飴)
砂糖64g、水アメ29gに水20gを加え混合し、150℃まで煮詰め、水分を完全に蒸発させた後、70℃程度まで冷却し焙煎大豆胚芽5g,焙煎おから10gを添加、混合した後、5gを20mmφの型に入れて整形、冷却して、飴を得た。
【実施例6】
【0056】
(おから入りアイス飲料)
混合ミキサーに生乳6部、脱脂粉乳5部、バター10部、卵黄3部、グラニュー糖14部、前記実験方法により得られた本発明の焙煎おから混合物抽出液(焙煎大豆胚芽20%含有)10部及び水52部を添加、混合し、30〜50℃に加温しながら粉体物を溶解し、アイスクリームミックスを調製した。このアイスクリームミックスを均質機を用いて均質圧150kg/cm2で均質処理し、次いで90℃で10分間バッチ式殺菌機を用いて加熱殺菌し、プレート式熱交換機を用いて10℃に冷却した。120mlの容器に充填し、アイス飲料を製造した。
【実施例7】
【0057】
(おから入りカレールー)
食用油脂32重量部、小麦粉30重量部、本発明の焙煎おから混合物(焙煎大豆胚芽20%含有)粉末6部、カレー粉9部、食塩11部、砂糖4部、調味料(粉末)1.5部、調味料(ペースト)6.5部、乳化剤0.3部を用いて、常法によりカレールーを製造した。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の焙煎大豆胚芽入り焙煎おからの製造工程を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎したおから若しくはその処理物と、焙煎した大豆胚芽若しくはその処理物との混合物、又はその処理物を有効成分とすることを特徴とする骨量増進組成物。
【請求項2】
焙煎したおからと焙煎した大豆胚芽とが7:3〜9:1の割合で混合されていることを特徴とする請求項1記載の骨量増進組成物。
【請求項3】
焙煎したおからが、おからを280℃〜320℃で熱風乾燥し、得られた乾燥おからを220℃〜260℃でドラム乾燥し、強制冷却することにより得られたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の骨量増進組成物。
【請求項4】
焙煎した大豆胚芽が、乾燥大豆を脱皮・脱胚芽処理し、選別機により、皮・胚芽を分離し、風力又はロールによる選別機により胚芽を分離し、220〜260℃でドラム乾燥することにより得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の骨量増進組成物。
【請求項5】
焙煎したおから若しくはその処理物と、焙煎した大豆胚芽若しくはその処理物との混合物、又はその処理物を含有する飲食品であって、骨量増進作用を有することを特徴とする骨量の増進が必要とされる疾病の予防・治療用の機能性食品。
【請求項6】
焙煎したおから若しくはその処理物と、焙煎した大豆胚芽若しくはその処理物との混合物、又はその処理物を含有する飲食品であって、骨量増進作用を有することを特徴とし、骨量の増進が必要とされる疾病の予防・治療のために用いられる旨の表示を付した機能性食品。
【請求項7】
焙煎したおからと焙煎した大豆胚芽との混合物が、焙煎したおからと焙煎した大豆胚芽とが7:3〜9:1の割合で混合されたものであることを特徴とする請求項5又は6記載の機能性食品。
【請求項8】
焙煎したおからが、おからを280℃〜320℃で熱風乾燥し、得られた乾燥おからを220℃〜260℃でドラム乾燥し、強制冷却することにより得られたものであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか記載の機能性食品。
【請求項9】
焙煎した大豆胚芽が、乾燥大豆を脱皮・脱胚芽処理し、選別機により、皮・胚芽を分離し、風力又はロールによる選別機により胚芽を分離し、220〜260℃でドラム乾燥することにより得られたものであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか記載の機能性食品。
【請求項10】
飲食品が、飴、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒーであることを特徴とする請求項5〜9のいずれか記載の機能性食品。
【請求項11】
飲食品が、スポーツ飲料等の各種飲料や、プリン、クッキー、パン、ケーキ、ゼリー、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダであることを特徴とする請求項5〜9のいずれか記載の機能性食品。

【図1】
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【公開番号】特開2006−67801(P2006−67801A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247411(P2004−247411)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(500405646)有限会社ダイハナ (2)
【Fターム(参考)】