説明

大豆食品の製造法

【課題】本発明は、青臭みが少なく、甘味が増加した豆乳などの大豆食品を目的とした。
【解決手段】本発明は、大豆もしくは脱脂大豆から得られたスラリーまたは溶液に、直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を複数回行うことを特徴とする大豆食品の製造法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は青臭みなどの大豆臭の極めて少ない豆乳などの大豆食品の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆食品として豆乳、豆腐、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、粉末豆乳などがある。そして、これらを素材として加工した畜肉或いは魚肉製品、ハンバーグなどの食品など多くの食品が知られている。
ところで、大豆食品には大豆由来の青臭みなどの所謂大豆臭が存在するので、これらを除去したりマスキングしたりする技術が多種多様に知られている。
それらの技術のなかで、豆乳または脱脂豆乳に直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱処理を二度以上の複数回にわたって行うことは従来行われたことがなかった。
【0003】
一方、直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱処理は主に殺菌処理として乳製品を代表として溶液或いはスラリー状の食品に応用されてきた。UHT(ultra high temperature)加熱装置(超高温瞬間殺菌装置)の代表としてアルファラバル社のVTIS(商品名)は、かかる直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱処理装置として従来から多用されている。
例えば、特許文献1には、乳化油脂組成物を製造する際に、120〜160℃で1〜60秒の超高温瞬間加熱処理することを開示している。豆乳の例として、本出願人は、特許文献2に、豆乳に凝固剤を添加し、均質化し、蒸気による直接高温瞬間加熱することを開示している。これは凝固剤により凝固させた後の蒸気による直接高温瞬間加熱処理である。
また、特許文献3には、豆乳に対し、高温にした後、減圧する高温減圧処理を施し、その後、高圧処理を施すことが開示されている。
しかし、この高温減圧処理は確かに本発明の蒸気直接吹き込み高温瞬間加熱処理であるが、処理を2回以上施すことは開示していない。そしてこの処理の後の高圧処理は直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱処理ではない。
また、特許文献4には、大豆スラリーを、水の亜臨界条件または超臨界条件のいずれか一方または両方を組み合わせた高温高圧条件下で0,001秒〜60分間加熱して豆乳を製造することを開示しているが、かかる亜臨界条件または超臨界条件での処理を2回以上施すことは開示していない。
【0004】
【特許文献1】特公平6−9464号公報
【特許文献2】特開2000−050826号公報
【特許文献3】特開2002−262806号公報
【特許文献4】特開2002−095433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、青臭みや雑味が少なく、より好ましくは甘味が増加した豆乳などの大豆食品を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究するなかで、脱脂豆乳に直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を2回以上施すことにより、予期せぬ風味改良効果と甘み付与効果を見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、大豆もしくは脱脂大豆から得られたスラリーまたは溶液に、直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を複数回行うことを特徴とする大豆食品の製造法である。
大豆もしくは脱脂大豆から得られた溶液は豆乳または脱脂豆乳を用いることができる。
直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理の態様は、蒸気を大豆もしくは脱脂大豆から得られた溶液またはスラリーに直接吹き込み、該溶液またはスラリーの温度を80〜180℃に上昇させる工程、該温度を0.1〜180秒保持する工程、しかる後に減圧する工程を含むことが好ましい。
大豆食品は大豆もしくは脱脂大豆から得られた溶液、これを凝固させたものまたは乾燥して粉末化したものを挙げることができる。
乾燥して粉末化したものとして粉末豆乳、粉末脱脂豆乳、濃縮大豆蛋白または分離大豆蛋白を挙げることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、青臭みや雑味が少なく、適度な甘味や濃厚感を付与した豆乳などの大豆食品を得ることが出来るようになったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、大豆もしくは脱脂大豆から得られたスラリーまたは溶液に、直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を複数回行うことが特徴である。
【0009】
大豆脱脂大豆から得られたスラリーは、大豆を水に浸漬して摩砕した「呉」、大豆を温アルカリ水などで膨潤させて摩砕した「呉」、脱脂大豆を水に分散した水性スラリー、脱脂大豆を温水中で撹拌した水性スラリーなどを用いることができる。
大豆もしくは脱脂大豆から得られた溶液は、前記大豆スラリーもしくは脱脂大豆スラリーからオカラ成分を除いた豆乳または脱脂豆乳、これら豆乳を膜処理など大豆蛋白を凝固沈殿させることなくホエー成分を取り除いた大豆蛋白溶液などを用いることができる。
特に豆乳や脱脂豆乳のようにホエー成分が除去されていない大豆蛋白溶液がより好ましい。大豆ホエー中の大豆少糖類が含まれる状態で直接蒸気吹き込み処理を2回以上行うと、得られる大豆食品にほんのり甘みを付与できる効果があるためである。
【0010】
これらのスラリーや溶液中に含まれる大豆蛋白は通常凝集または凝固していない。
分離大豆蛋白を製造する工程において脱脂豆乳をいったん酸沈殿してしまうと、大豆蛋白が凝集して沈殿する際に、大豆の持つ風味を吸着して内部に取込んでしまうためか、その後に直接蒸気吹き込み処理を行っても、大豆の青臭みや雑味を十分に除くことが困難である。
従って、本発明のように凝固または凝集処理を受けていない大豆由来のスラリーまたは溶液に直接蒸気吹き込み処理を2回以上することで従来にない風味改善効果を得ることができるものである。
【0011】
本発明は、これらのスラリーまたは溶液に直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を複数回行うことが特徴である。
例えば、蒸気を直接吹き込み減圧させる装置としてUHT(Ultra High Temperature)加熱装置、具体的には市販されているVTIS(アルファラバル社製)などの直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理機能を有する装置を利用することができる。
直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理は、蒸気を大豆もしくは脱脂大豆から得られたスラリーまたは溶液に直接吹き込み、該溶液またはスラリーの温度を80〜180℃に上昇させる工程、該温度を0.1〜180秒保持する工程、しかる後に減圧する工程を含むことが適当である。
【0012】
以下、かかる工程について説明する。
本発明において、蒸気を大豆もしくは脱脂大豆から得られたスラリーまたは溶液に直接吹き込む必要がある。
蒸気のインジェクション部で生じるせん断力と高温により蛋白質が変性されることで、蛋白質に吸着されていた青臭みや雑味の成分が解離されると推察される。さらに、1回目の処理により変性を受けて青臭みや雑味の成分の吸着力が弱くなっているため、2回目以降の処理で劇的に青臭みや雑味が低減すると考えられる。また、2回以上加熱することにより豆乳中の糖分と蛋白質が反応し、好ましい甘味が付与されていると考えられる。
かかる理由により複数回の直接蒸気吹き込みと減圧を繰り返す処理が必要である。
【0013】
本発明の大豆もしくは脱脂大豆から得られたスラリーや溶液の温度を80〜180℃に上昇させるためには、これより高い温度の蒸気を直接吹き込む必要がある。
蒸気の温度が、120〜200℃程度の生蒸気が実用的である。これよりも低い温度だと使用する蒸気量が増え、減圧させた後も吹き込んだ蒸気が蒸散しきれずに豆乳濃度が下がり、生産効率が下がる可能性が出てくる。またこれよりも高い温度の蒸気を使用すると、瞬間的、部分的に過加熱になり不快臭が発生する。
吹き込む蒸気の量は処理する豆乳の温度に依存するが、あらかじめ豆乳を40〜80℃程度に加熱しておくことにより、加熱処理の効率を上げることができる。
【0014】
大豆もしくは脱脂大豆由来のスラリー又は溶液の温度は80〜180℃に上昇させることが必要である。より好ましくは100〜170℃、より好ましくは130〜160℃が適当である。
蒸気を直接吹き込んだ後の大豆由来のスラリー又は溶液の温度が低いと青臭みや雑味はほとんど低減されず、高いとメイラード反応の進行等により色調が黒っぽくなり、また、過加熱による不快な味が生じやすくなるため好ましくない。
【0015】
蒸気を直接吹き込んだ後の大豆由来のスラリー又は溶液は0.1〜180秒保持することが必要である。より好ましくは3〜120秒、より好ましくは5〜90秒が適当である。
前記温度とこの保持時間により大豆由来のスラリー又は溶液の青臭みや雑味を低減させほのかな甘味を付与することができる。
【0016】
このように直接蒸気吹き込みと減圧を複数回繰り返す処理が必要であるが、上記温度範囲及び時間範囲のうちでも低温域で長時間保持することにより甘味を増すことができ、高温域で短時間保持することにより青臭みや雑味を低減することができる。そのため複数回の繰り返し処理において各処理ごとに温度や保持時間を目的により適宜調整・選択し、それらを組み合わせることができる。
具体的には、比較的低温での長時間処理と比較的高温での短時間処理を組み合わせる場合、一方の処理温度を他方の処理温度より高く設定したり、あるいは一方の処理時間を他方の処理時間よりも長くするなどし、適宜組み合わせて調整することができる。
例えば、比較的低温の処理は80〜160℃、好ましくは100〜140℃、高温処理は120〜180℃、好ましくは140〜160℃の範囲から選ぶことができる。長時間処理は温度にもよるが10〜180秒、好ましくは30〜90秒、短時間処理も温度によるが0.1〜60秒、好ましくは3〜30秒の範囲から選ぶことができる。
このように温度と時間を変えた処理を組み合わせることにより、得られる大豆食品の甘味付与、青臭みや雑味の低減効果を最大限に引き出すことができる。
あまり高い温度で長時間維持すると大豆特有の臭いが発生することがあるので注意を要する。
【0017】
本発明において、前記のように蒸気を直接吹き込んだ後、減圧させることが必要である。
蒸気を直接吹き込んで大豆由来のスラリー又は溶液を0.1〜120秒保持した後、これを減圧させることにより、十分な風味改良効果を得ることができる。
しかも2回以上繰り返すことによりその効果はより顕著になるものである。
これは、直接蒸気吹込みにより解離された青臭みや雑味の成分が蒸気に溶け出し、減圧処理時に蒸発する蒸気とともに取り除かれるためであると推察される。
減圧させるときの真空度は特に限定しないが-0.01〜-0.10 MPa程度が適当である。
真空度が低すぎると風味改良効果が低くなり、また吹き込んだ蒸気が十分に蒸発しないため豆乳濃度が低下し、生産効率の低下を招く。また、真空度が高すぎると豆乳温度が低くなり、2回目の直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理時に使用する蒸気量が増えるなど、非効率である。
【0018】
以上の工程を経て大豆もしくは脱脂大豆から得られたスラリーまたは溶液、これを凝固させたものまたは乾燥して粉末化したものなどの大豆食品を得ることができる。
例えば、大豆もしくは脱脂大豆から得られた溶液として豆乳や脱脂豆乳などの大豆食品とすることができる。また大豆もしくは脱脂大豆から得られた溶液を凝固させて豆腐のような大豆食品とすることができる。また乾燥して粉末化して粉末豆乳、粉末脱脂豆乳、濃縮大豆蛋白または分離大豆蛋白とすることができる。
【0019】
例えば、分離大豆蛋白は、得られた脱脂豆乳を酸沈殿させてホエーを除き、中和して溶解させ、噴霧乾燥などして粉末状分離大豆蛋白とすることができる。
通常分離大豆蛋白はその製造工程中で、脱脂豆乳を酸沈殿させてホエーを除き、中和してからVTISなどの高温瞬間加熱殺菌処理を行う。しかし、一旦酸沈殿させた後、いくらVTIS処理を2回以上行っても、本発明のように酸沈殿前の豆乳の段階でVTISのような直接蒸気吹き込み減圧加熱を2回以上おこなった豆乳から得られる分離大豆蛋白のような良好な風味は得がたいものである。
【0020】
また、例えば、濃縮大豆蛋白は、この脱脂大豆スラリーを酸沈殿させてホエーを除き、中和して溶解させた後に噴霧観想するなどして粉末状濃縮大豆蛋白とすることができる。
通常、濃縮大豆蛋白は脱脂大豆を酸沈殿させるかアルコール洗浄して製造するが、酸沈殿の前に本発明のような2回以上の直接蒸気吹き込み加熱処理することは知られていない。
更に、大豆スラリーであればかかる工程のあと風味の優れた「呉」のような大豆食品とすることができる。
以上のように、本発明の大豆食品は「呉」、豆乳、脱脂豆乳、これらの乾燥品、豆腐、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白などとすることができる。
【実施例】
【0021】
以下実施例により本発明の実施態様を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によってその技術範囲が限定されるものではない。
【0022】
◆実施例1
脱脂大豆に6倍加水しホモミキサーを用いて60℃で30分間抽出後、遠心分離して不溶物(以下オカラ)を除去し脱脂豆乳を得た。
この脱脂豆乳が流されるチューブ内に直接蒸気を注入することにより140℃付近まで瞬時に昇温させ、10秒間保持した後、減圧処理を行わない脱脂豆乳と、急激に真空度-0.02〜-0.07MPaに減圧することで65℃まで冷却させた脱脂豆乳を得た。
次に、再度これらの脱脂豆乳を同様にチューブ内に直接蒸気を注入することにより140℃付近まで瞬時に昇温させ、10秒間保持した後、減圧処理を行わない脱脂豆乳と急激に真空度-0.07MPaに減圧することで65℃まで冷却させた脱脂豆乳を得た。得られた脱脂豆乳について官能評価を行った。評価はC1-1の青臭み、雑味を5、甘味、豆味を1としてそれぞれ5段階評価(弱い=1〜5=強い)で採点を行った(表1)。
【0023】
(表1)

【0024】
C1-1〜C1-2では減圧処理の有無に関わらず青臭み、雑味の低減は見られなかった。C1-3〜C1-6を比較すると減圧処理をしていないC1-3はほとんど青臭み、雑味の低減は見られず、C1-4およびC1-5ではやや青臭み雑味の低減が見られた。C1-6では、有意に青臭み、雑味の低減が見られた。
【0025】
◆実施例2
脱脂大豆に6倍加水しホモミキサーを用いて60℃で30分間抽出後、遠心分離してオカラを除去し脱脂豆乳を得た。
この脱脂豆乳が流されるチューブ内に直接蒸気を注入することにより130〜150℃付近まで瞬時に昇温させ、10〜60秒間保持した後、急激に真空度-0.07MPaに減圧することで65℃まで冷却させた。
こうして高温減圧処理された脱脂豆乳が流れるチューブ内に再び直接蒸気を注入することにより、130〜150℃付近まで瞬時に昇温させ、10〜60秒間保持した後、急激に真空度-0.07MPaに減圧することで65℃付近まで冷却させた。
こうして得られた脱脂豆乳について加熱殺菌後、噴霧乾燥を行い、脱脂豆乳の粉末を得た。得られた粉末を5%溶液にして官能評価を行った。評価はC2-1の青臭み、雑味を5、甘味、豆味を1としてそれぞれ5段階評価(弱い=1〜5=強い)で採点を行った(表2)。
【0026】
(表2)

【0027】
C2-1〜C2-6では直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理が1回であるため、青臭み、雑味が十分に除去されず強く感じた。また、C2-1〜C2-3では甘味は非常に少なかったが、C-4〜C-6では長時間処理により甘味が増す傾向にあった。ただし青臭み、雑味に加えて豆味が強く感じられた。
一方、T2-1〜T2-7では直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を2回行うことにより、青臭み、雑味の低減が確認された。
T2-1〜T2-3を比較すると、短時間処理を2回行った場合、温度が高い方が青臭みや雑味の低減効果は高いことが示された。
また、T2-4〜T2-6を比較すると、長時間処理を2回行った場合、青臭みや雑味の低減効果は短時間処理の場合とほとんど同じであったが、全体的に甘味が増す傾向にあった。ただし、T2-5では豆味が強くなっており、T2-6ではさらに豆味を強く感じた。
【0028】
これらの結果より、適度な甘味を付与できるT2-5と青臭み、雑味低減効果が高いT-3を組み合わせたT2-7において、青臭み、雑味が非常に少なく、適度な甘味が付与された脱脂豆乳粉末を得ることができた。
また、C-5では豆味が強く感じられたのに対し、T2-7ではC2-5に適度な直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を組み合わせることにより豆味は非常に少なく良好な風味となっていたことから本発明は2回以上の直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理が重要であることが確認された。
【0029】
◆実施例3 −分離大豆蛋白粉末の製造−
脱脂大豆に10倍加水し、ホモミキサーを用いて55℃で30分間抽出後、遠心分離してオカラを除去し脱脂豆乳を得た。この脱脂豆乳に実施例2と同様の直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を行った後、塩酸を加えてpH4.5に調整し、遠心分離して酸沈殿画分を回収した。この酸沈殿画分に固形分が12%となるように水を添加し、さらに水酸化ナトリウムを添加してpH7.0に調整した。
こうして得られた蛋白溶液について加熱殺菌後、噴霧乾燥を行い、分離大豆蛋白の粉末を得た。得られた粉末を5%溶液にして官能評価を行った。評価はC3-1の青臭み、雑味を5、甘味、豆味を1としてそれぞれ5段階評価(弱い=1〜5=強い)で採点を行った(表3)。
【0030】
(表3)

【0031】
C3-1〜C3-4では青臭み、雑味が十分に除去されず強く感じた。これに対し、T3-1〜T3-3では直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を2回行うことにより、すべての条件において青臭み、雑味は低減されており、T3-3で風味は最も良好であった。酸沈殿画分の分離時にホエー成分が除去されているため、甘味は実施例2と比較して少ないものとなっていた。
【0032】
◆実施例4 −濃縮大豆蛋白粉末の製造−
脱脂大豆に10倍加水し、ホモミキサーを用いて55℃で30分間抽出し、スラリーを得た。得られたスラリーについて、実施例2と同様の直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を行った後、塩酸を加えてpH4.5に調整し、遠心分離してホエーを除去した。
ホエーを除去した残渣の固形分が12%となるように水を添加し、さらに水酸化ナトリウムを添加してpH7.0に調整した。こうして得られた蛋白溶液について加熱殺菌後、噴霧乾燥を行い、濃縮大豆蛋白の粉末を得た。
得られた粉末を5%溶液にして官能評価を行った。評価はC4-1の青臭み、雑味を5、甘味、豆味を1としてそれぞれ5段階評価(弱い=1〜5=強い)で採点を行った(表4)。
【0033】
(表4)

【0034】
実施例2と同様、直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を2回行うことにより青臭み、雑味は低減することが確認された。ただし、濃縮大豆蛋白はもともと雑味が強いため、実施例2よりも全体的に雑味をやや強く感じた。
【0035】
◆実施例5 −豆乳の製造−
丸大豆10kgを水洗後、50℃の水30Lに60分以上浸漬して膨潤させた浸漬大豆に、60Lの熱水(90℃)を加えながら磨砕した。得られた磨砕物について実施例2と同様に直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を行った後、遠心分離でオカラを除去し、豆乳を得た。得られた豆乳について官能評価を行った。評価はC5-1の青臭み、雑味を5、甘味、豆味を1としてそれぞれ5段階評価(弱い=1〜5=強い)で採点を行った(表5)。
【0036】
(表5)

【0037】
実施例1〜3の結果と同様、直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を2回行うことにより青臭み、雑味は低減することが確認された。T5-3では青臭みや雑味は非常に少なくなっており、まろやかな甘味と適度な濃厚感が感じられた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明により、青臭みが少なく、適度な甘味や濃厚感を付与した「呉」、豆乳、脱脂豆乳、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白などの大豆食品を得ることが出来るようになったものである。
これらの大豆食品は飲料、畜肉や魚肉加工食品、ハンバーグなどの惣菜の素材などとして食品に応用範囲が広がるものであり、食品産業の発達に大いに寄与するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆もしくは脱脂大豆から得られたスラリーまたは溶液に、直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理を複数回行うことを特徴とする大豆食品の製造法。
【請求項2】
大豆もしくは脱脂大豆から得られた溶液が豆乳または脱脂豆乳である請求項1の製造法。
【請求項3】
直接蒸気吹き込み高温瞬間加熱減圧処理が、蒸気を大豆もしくは脱脂大豆から得られた溶液またはスラリーに直接吹き込み、該溶液またはスラリーの温度を80〜180℃に上昇させる工程、該温度を0.1〜180秒保持する工程、しかる後に減圧する工程を含む請求項1の製造法。
【請求項4】
大豆食品が大豆もしくは脱脂大豆から得られた溶液、これを凝固させたものまたは乾燥して粉末化したものである請求項1の製造法。
【請求項5】
乾燥して粉末化したものが粉末豆乳、粉末脱脂豆乳、濃縮大豆蛋白または分離大豆蛋白である請求項4の製造法。

【公開番号】特開2007−82510(P2007−82510A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278650(P2005−278650)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】