説明

大電流発生装置

【課題】原理的に出力電流値に上限がなく、出力電流パルス数の制御が容易な大電流発生装置を提供する。
【解決手段】環状に並べられたN個の誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-Nを取り巻く円筒体である回転保持体50の内面には、給電電極3a,3bと、ある誘導性エネルギー蓄積用コイルの第2端と隣接する蓄積用コイルの第1端とを接続しうる連結電極5-1,…,5-N-1と、全ての蓄積用コイルの第1端に接触しうる第1出力電極5aと、全ての蓄積用コイルの第2端に接触しうる第2出力電極5bとが形成されている。回転保持体50は、回転機構6により回転される。
【効果】N個の誘導性エネルギー蓄積用コイルを直流電源に対して直列接続して誘導性エネルギーを蓄積し、N個の誘導性エネルギー蓄積用コイルを負荷に対して並列接続して誘導性エネルギーを出力するので、誘導性エネルギー蓄積時の励磁電流PinのN倍の出力電流Pout を負荷へ供給できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大電流発生装置に関し、さらに詳しくは、原理的に出力電流値に上限がなく、出力電流パルス数の制御が容易な大電流発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図8に示す如き大電流発生装置500が知られている(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)。
この大電流発生装置500において、電流取出しスイッチ65が開いた状態で励磁スイッチ75を閉じると、直流電源1から励磁電流Pinが供給されて誘導性エネルギー蓄積用コイル2が励磁され誘導性エネルギーが蓄積される。
次に、図9に示すように、誘導性エネルギー蓄積用コイル2に誘導性エネルギーが蓄積された段階で電流取出しスイッチ65を閉じると共に励磁スイッチ75を開くと、誘導性エネルギー蓄積用コイル2に蓄積された誘導性エネルギーが出力トランスTを介して負荷Rに供給される。
【非特許文献1】電気学会・大電流エネルギー応用技術調査専門委員会編「大電流エネルギー工学」、オーム社、pp.107-108.
【非特許文献2】J.Kaugerts, et.al. "Magnet and Superconductor Development for a High Power SMES Based Power ModuIator" Paper presented at the 16th lntern. Conference on Magnet Technology, Sep 26-Oct 2, 1999, USA.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の大電流発生装置500には次のような問題があった。
(1)誘導性エネルギー蓄積用コイル2から取り出せる出力電流Pout を励磁電流Pinより大きくできない。
(2)電流取出しスイッチ65および励磁スイッチ75の開閉により出力電流パルス数が決まるが、電流取出しスイッチ65および励磁スイッチ75の開閉の制御が煩雑なので、出力電流パルス数の制御が容易でない。
そこで、この発明の目的は、原理的に出力電流値に上限がなく、出力電流パルス数の制御が容易な大電流発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、この発明は、電源と、複数個の誘導性エネルギー蓄積用コイルと、前記誘導性エネルギー蓄積用コイルのそれぞれの両端が接続された複数個の環状に並んだコイル接点と、前記コイル接点に摺接しうるように環状に並んだ複数個の接点であって前記コイル接点に対して相対回転し第1位置では前記複数個の誘導性エネルギー蓄積用コイルを前記電源に対して直列接続し第2位置では前記複数個の誘導性エネルギー蓄積用コイルを負荷に対して並列接続する直並列接続接点とを具備したことを特徴とする大電流発生装置を提供する。
上記第1の観点による大電流発生装置では、誘導性エネルギー蓄積用コイルの個数をNとすると、誘導性エネルギー蓄積時の励磁電流PinのN倍の出力電流Pout を負荷へ供給でき、原理的に出力電流値に上限がなくなる。また、コイル接点に対する直並列接続接点の相対回転数を制御することにより容易に出力電流パルス数を制御できる。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による大電流発生装置において、前記複数個の誘導性エネルギー蓄積用コイルが、環状に並んでいることを特徴とする大電流発生装置を提供する。
上記第2の観点による大電流発生装置では、複数個の誘導性エネルギー蓄積用コイルを環状に並べることで磁束の漏れを少なくし周辺への影響を小さく出来る。
【発明の効果】
【0006】
この発明の大電流発生装置によれば、原理的に出力電流値に上限がなくなる。また、出力電流パルス数の制御が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図に示す実施の形態によりこの発明をさらに詳細に説明する。なお、これによりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0008】
図1は、実施例1にかかる大電流発生装置100を示す分解斜視図である。
この大電流発生装置100において、N(>2)個の誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-Nは環状に並べられ、固定保持体20により固定されている。誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-Nのそれぞれの両端がコイル接点を構成している。
【0009】
回転保持体50は、環状に並べられたN個の誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-Nを取り巻く円筒体である。
回転保持体50の内面には、一つの誘導性エネルギー蓄積用コイルの第1端に接触しうる第1給電電極3aと、隣接する誘導性エネルギー蓄積用コイルの第2端に接触しうる第2給電電極3bと、ある誘導性エネルギー蓄積用コイルの第2端と隣接する誘導性エネルギー蓄積用コイルの第1端とに接触しうる連結電極5-1,…,5-N-1と、全ての誘導性エネルギー蓄積用コイルの第1端に接触しうる第1出力電極5aと、全ての誘導性エネルギー蓄積用コイルの第2端に接触しうる第2出力電極5bとが形成されている。
第1給電電極3aと第2給電電極3bには、直流電源1が接続されている。
また、回転保持体50は、回転機構6により回転される。
【0010】
図2〜図6は、N=6とした場合の誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-6の第1端(図で下側のコイル端部)および第2端(図で上側のコイル端部)と、第1給電接点3a〜第2出力電極5bの相対位置を示す展開図である。
【0011】
図2に示す相対位置では、誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1の第1端が給電電極3aに接触し、誘導性エネルギー蓄積用コイル2-6の第2端が給電電極3bに接触し、誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-6が連結電極5-1,…,5-N-1により直列接続される。この結果、直流電源1に対して誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-6が直列に接続され、励磁電流Pinで励磁され、誘導性エネルギーが蓄積される。
【0012】
回転保持体50が回転機構6により回転され、図3に示す相対位置になると、誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1の第1端と第2端が第1出力電極5aと第1連結電極5-1によって短絡される。他の誘導性エネルギー蓄積用コイル2-2〜2-6の第1端と第2端も同様に短絡される。この結果、励磁電流Pinが各誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-6に流れ続ける。
【0013】
さらに回転保持体50が回転機構6により回転され、図4に示す相対位置になると、全誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-6の第1端が第1出力電極5aに接触し、全誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-6の第2端が第2出力電極5bに接触する。この結果、負荷に対して全誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-6が並列になり、励磁電流Pinの6倍の出力電流Pout を負荷に供給可能になる。
【0014】
さらに回転保持体50が回転機構6により回転され、図5に示す相対位置になると、各誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1〜2-6の第1端と第2端が再び短絡される。この結果、残った誘導性エネルギーに応じた電流が各誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-6に流れ続ける。
【0015】
さらに回転保持体50が回転機構6により回転され、図6に示す相対位置になると、コイル位置が1つずれて、図2と同じ状態になり、直流電源1に対して誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-6が直列に接続され、励磁電流Pinで励磁され、誘導性エネルギーが蓄積される。
以下、同様に誘導性エネルギーの蓄積と出力が繰り返される。
【0016】
なお、図7に示すように、電極3a,3b,5-1,…,5-N-1の幅をWaとし、出力電極5a,5bの幅をWbとし、誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-Nの接点部の幅をWAとし間隔をWBとし、電極3a,3b,5-1,…,5-Nおよび出力電極5a,5bによって各誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-Nが短絡される時の最大接触幅をδとし、回転速度をvとするとき、励磁時間Tin=(WA+Wa−4δ)/Vとなり、出力時間Tout=(WA+Wb−4δ)/Vとなる。従って、Wa,Wb,WAおよびWBを変えることによって励磁時間Tinと出力時間Toutを変えることが出来る。
【0017】
実施例1の大電流発生装置100によれば次の効果が得られる。
(1)誘導性エネルギー蓄積時の励磁電流値PinのN倍の出力電流Pout を負荷へ供給でき、原理的に出力電流値に上限がなくなる。
(2)回転保持体50の回転を制御することにより容易に出力電流パルス数を制御できる。
(3)誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1,…,2-Nを誘導性エネルギー蓄積用と電流出力用とに兼用しているため、エネルギー分配による損失が無い。
【実施例2】
【0018】
実施例1では、1対だけの給電電極3a,3bを円周上に設けていた。この場合、N個の誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1〜2-Nが全て直列になる。しかし、直流電源1から見たインダクタンスが大きくなる(トロイダル状にコイルが並んでおり、Nの二乗で大きくなる)ため、励磁時間が長くかかる。
これに対して実施例2では、P(≧2)対の給電電極3a,3bを円周上に均等間隔に設けると共に各対の給電電極3a,3bごとに直流電源を設ける。これにより、N個の誘導性エネルギー蓄積用コイル2-1〜2-Nが連続するN/P個ずつのグループに分けられ、直流電源から見たインダクタンスが小さくなる。よって、励磁時間を短縮することが出来る。なお、Wa,Wb,WAおよびWBを変えることによってPに応じた適切な励磁時間Tinと出力時間Toutを設定することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明の大電流発生装置は、例えば電磁加速装置や強磁場発生装置の電源として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1にかかる大電流発生装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】実施例1にかかる大電流発生装置のエネルギー蓄積状態の相対位置を示す展開図である。
【図3】実施例1にかかる大電流発生装置のエネルギー保存状態の相対位置を示す展開図である。
【図4】実施例1にかかる大電流発生装置のエネルギー出力状態の相対位置を示す展開図である。
【図5】実施例1にかかる大電流発生装置のエネルギー出力後のエネルギー保存状態の相対位置を示す展開図である。
【図6】実施例1にかかる大電流発生装置のエネルギー蓄積状態の次の相対位置を示す展開図である。
【図7】電極の幅と距離を示す展開図である。
【図8】従来例にかかる大電流発生装置のエネルギー蓄積状態を示す回路図である。
【図9】従来例にかかる大電流発生装置の出力状態を示す回路図である。
【符号の説明】
【0021】
1 直流電源
2-1,2-2,… 誘導性エネルギー蓄積用コイル
3a,3b 給電電極
5-1,5-1,… 連結電極
5a,5b 出力電極
6 回転機構
100 大電流発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、複数個の誘導性エネルギー蓄積用コイルと、前記誘導性エネルギー蓄積用コイルのそれぞれの両端が接続された複数個の環状に並んだコイル接点と、前記コイル接点に摺接しうるように環状に並んだ複数個の接点であって前記コイル接点に対して相対回転し第1位置では前記複数個の誘導性エネルギー蓄積用コイルを前記電源に対して直列接続し第2位置では前記複数個の誘導性エネルギー蓄積用コイルを負荷に対して並列接続する直並列接続接点とを具備したことを特徴とする大電流発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の大電流発生装置において、前記複数個の誘導性エネルギー蓄積用コイルが、環状に並んでいることを特徴とする大電流発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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