説明

大麦水飴及びその製造方法

【課題】 充分な量のアミノ酸を含有することにより発酵促進効果の高い大麦水飴を提供する。また、その様な大麦水飴を効率的、経済的に生産しうる製造方法を提供する。
【解決手段】 大麦もしくはその粉砕物を液化して液化液を得る液化工程と、液化液に麦芽または麦芽酵素を添加して50〜60℃の温度条件下で反応させて糖化液を得る糖化工程と、液化液又は糖化液にカビ由来プロテアーゼを添加して50〜60℃の温度条件下で反応させるタンパク質分解工程とを備える大麦水飴の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大麦もしくはその粉砕物を原料とする大麦水飴及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、高濃度のアミノ酸を含有する大麦水飴およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の発酵食品業界においては、高分子原料の分解に要する時間とコストを削減すべく、穀類を代表とするデンプン質やタンパク質などの高分子原料の一部を、低分子原料に置き換えることが行われている。
例えば、味醂の製造の場合、本来原料としてうるち米、もち米、焼酎等が用いられるが、この他に醸造用糖類や醸造アルコールを原料に加えることにより、より短時間、低コストで製造することができる。
また、発泡酒の製造の場合、ビールの製造と比較すると麦芽使用量が少ない一方、糖類が用いられている。この糖類は澱粉質を低分子化したものであり、より短時間、低コストで製造することができる。
しかし、こうした製造方法は消費者に安価な発酵食品を供給できるという利点があるものの、得られる発酵食品の香味は不充分となりがちである。これは原料組成が糖類に偏りすぎ、アミノ酸を代表とする微生物に必要な栄養素が充分でないため、発酵が良好に進まないためである。
【0003】
原料の低分子化による香味の低減を抑えるため、従来から種々の工夫がなされている。例えば、特許文献1には、発酵食品にアミノ酸含有水飴を用いることにより、原料に不足するアミノ酸を補って良好な発酵を促進し、香味を改善できることが記されている。
【0004】
また、特許文献2には、発泡酒の仕込み工程においてプロテアーゼを添加することによりタンパク質を分解して低分子化するか、仕込み工程以降発酵工程に入るまでの間にアミノ酸を添加することにより、良好な発酵を促進し、有機酸・エステル類・高級アルコール類の生成量を制御し、香味を改善できることが記されている。
【0005】
特許文献3には、発泡酒原料の一部または全部を大麦分解物に置き換えることにより、プラスチック様のS(硫黄)系臭、こげ臭などのいわゆる発泡酒臭を改善できることが記されている。
特許文献3の大麦分解物とは、「大麦に大麦麦芽を特定の割合で混合したものを酵素反応により糖化処理し、得られた糖化液を濃縮したもの」と定義されているように、大麦が持つ澱粉質を大麦麦芽中に含まれる酵素により酵母が摂取できる形態まで分解したものに他ならない。特許文献3に記された如き大麦水飴は、何種類か市販もされている。
【特許文献1】特開2003−164265号公報
【特許文献2】特開平10−225287号公報
【特許文献3】特開2001−333760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にはアミノ酸量が0.2%、特許文献2にはFAN(遊離アミノ態窒素)が129mg/Lと記載されているように、何れもアミノ酸の絶対量が少なく、充分な風味改善効果が得られなかった。
一方、特許文献3では、実施例において、原材料に対する大麦分解物の使用比率が15%では効果が薄く、使用比率25%においてさえ充分でないことが示されている。特許文献3に記された如き大麦水飴は、タンパクが水飴に溶解する程度に分解されているだけなので、アミノ酸の含有量が1質量%前後にしかすぎないからである。
アミノ酸が1質量%前後の大麦水飴を加えて、充分に良好な発酵促進効果を得ようとすれば、大量の大麦水飴を加える必要がある。その際、大麦の持つ独特な臭みにより逆に発酵食品の風味を損なうことが少なくない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、充分な量のアミノ酸を含有することにより発酵促進効果の高い大麦水飴を提供すること、およびその様な大麦水飴を効率的、経済的に生産しうる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の大麦水飴は、大麦もしくはその粉砕物を原料とし、アミノ酸の含有量が2.5質量%以上であることを特徴とする。
また、本発明の製造方法は、大麦もしくはその粉砕物を液化して液化液を得る液化工程と、液化液に麦芽または麦芽酵素を添加して50〜60℃の温度条件下で反応させて糖化液を得る糖化工程と、液化液又は糖化液にカビ由来プロテアーゼを添加して50〜60℃の温度条件下で反応させるタンパク質分解工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の大麦水飴は、アミノ酸の含有量が2.5質量%以上のため、発酵食品の風味を損なうことなく、高い発酵促進効果が得られる発酵食品材料であり、酵母を利用した発酵食品、発酵飲料に利用することができる。本発明の製造方法によれば、アミノ酸の含有量が2.5質量%以上である大麦水飴を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の大麦水飴は、アミノ酸の含有量が2.5質量%以上である。アミノ酸の含有量は、2.5〜8質量%であることが好ましく、2.5〜4質量%であることがより好ましい。
本発明のアミノ酸含有量は、大麦もしくはその粉砕物中のタンパク質に由来するアミノ酸含有量であり、他から添加したものではない。他からアミノ酸を添加すれば、アミノ酸の含有量は容易に増やすことができるが、多種類のアミノ酸を添加することが難しいため、特定のアミノ酸種に偏りがちとなり、その結果微生物発酵産物にも偏りが生じて却って風味を損ねてしまう。本発明の大麦水飴は、多種類のアミノ酸種とオリゴペプチドを含有する複雑な微生物代謝物であり、風味豊かなものである。
【0011】
以下に、アミノ酸の含有量が2.5質量%以上である大麦水飴を製造する方法について説明する。
まず、大麦もしくはその粉砕物を液化して液化液を得る(液化工程)。液化法には、酵素液化法と酸液化法とがあるが、工業的には酵素液化法が好ましい。
酵素液化法の条件は特に限定されるものではないが、液化酵素としては、α−アミラーゼを用いることが好ましい。また、α−アミラーゼに、プロテアーゼ、セルラーゼを配合した混合酵素を用いることがより好ましい。
混合酵素とすることにより、大麦の構成成分であるタンパク質、多糖類を破壊し、その結果、α−アミラーゼの澱粉質への攻撃を容易として、歩留まりを上げられるからである。
混合酵素の場合、α−アミラーゼに対するプロテアーゼの質量比は、5〜50%であることが好ましい。また、α−アミラーゼに対するセルラーゼの質量比は、5〜50%であることが好ましい。
添加量、反応時間には特に制限がないが、大麦、もしくはその粉砕物(以下「固形分」という。)1gあたり50〜1000U添加し、10分〜5時間反応させることが好ましい。反応温度は、通常大麦の糊化温度より高い温度に設定するが、液化酵素、特にα−アミラーゼの至適温度にするのがより好ましい。なお、ここで言う至適温度とは酵素活性が最も高くなる温度のことである。反応pHは、通常4〜10にするが、液化酵素、特にα−アミラーゼの至適pHにするのがより好ましい。なお、ここで言う至適pHとは酵素活性が最も高くなるpHのことである。
例えば、大麦、もしくはその粉砕物100部に対し水を170部添加し、消石灰によりpHを6.0に調整してpHが安定するまで充分攪拌した後に、プロテアーゼ、セルラーゼを配合したα−アミラーゼを固形分1gあたり500U添加し、55℃1時間反応後、30分かけて90℃まで昇温し、90℃に30分保持することにより液化できる。
【0012】
次に、液化液を糖化酵素により糖化して糖化液を得る(糖化工程)。糖化酵素としては麦芽、もしくは麦芽酵素を用いる。糖化酵素として、β−アミラ−ゼを用いると、充分なアミノ酸を得ることができない。麦芽、もしくは麦芽酵素であれば、β−アミラ−ゼ以外の糖化酵素、及び複数のプロテアーゼが含まれているため、澱粉質から糖類への分解と同時に、タンパク質からアミノ酸への分解も生じさせることができる。
麦芽としては、市販のもの、例えばエイチビィアイ社の引割麦芽などを使用することができる。麦芽酵素としては、例えば、日本バイオコン社の「ベータラーゼ1500EL」を使用することができる。
添加量、反応時間には特に制限がないが、麦芽の場合は固形分1gあたり1〜20%、麦芽酵素の場合、固形分1gあたり0.1〜5%添加し、8〜96時間反応させことが好ましい。反応pHは、通常4〜10にするが、糖化酵素の至適pHにするのがより好ましい。
反応温度は、50〜60℃である。50℃より低い温度で反応させた場合、麦芽もしくは麦芽酵素中に含まれる微生物が増殖し、液化液のpHが低下する。この場合、麦芽若しくは麦芽酵素中のプロテアーゼの至適pHからずれてしまい、充分なアミノ酸を得ることができない。また、60℃より高い温度で反応させた場合、糖化は進むものの麦芽若しくは麦芽酵素中のプロテアーゼが失活して、充分なアミノ酸を得ることができない。
【0013】
また、液化液又は糖化液にプロテアーゼを添加して反応させる(タンパク質分解工程)。タンパク質分解工程は、糖化工程と同時に行っても、糖化工程の後に行ってもよい。すなわち、プロテアーゼは、糖化酵素と同時に液化液に添加してもよいし、糖化酵素よりも後から糖化液に添加してもよい。なお、麦芽若しくは麦芽酵素中にもプロテアーゼが含有されるが、それ以外のプロテアーゼを補うことによって、充分なアミノ酸量をえることがより容易になる。
補うプロテアーゼとしては、カビ由来プロテアーゼを用いる。例えば天野製薬製AアマノG(Aspergillus oryzae由来)などを使用することができる。カビ由来プロテアーゼはexo型endo型をバランスよく含むため、アミノ酸を効率的に生成できるものと考えられる。カビ由来以外のプロテアーゼを用いると充分なアミノ酸を得ることができない。
添加量、反応時間には特に制限がないが、液化液又は糖化液の固形分1gあたり5〜5000Uのプロテアーゼを添加し、8〜96時間反応させることが好ましい。反応pHは、通常4〜10にするが、カビ由来プロテアーゼの至適pHにするのがより好ましい。
反応温度は、50〜60℃である。50℃より低い温度で反応させた場合、麦芽もしくは麦芽酵素中に含まれる微生物が増殖し、液化液又は糖化液のpHが低下する。この場合、麦芽若しくは麦芽酵素中のプロテアーゼやカビ由来プロテアーゼの至適pHからずれるため、充分な活性が得られず、充分なアミノ酸を得ることができない。また、60℃より高い温度で反応させた場合、糖化は進むものの、プロテアーゼが失活して充分なアミノ酸を得ることができない。
【0014】
この様にして製造した糖化液から遠心分離やフィルタープレスにより不溶部を除いた後、可溶部をケイソウ土や活性炭などを助材としてろ過し、さらに精密ろ過を行うことにより精製し、最後に濃縮することによって、目的とする水飴を得ることができる。
なお、液化工程で酸液化法を採用する場合、酸の除去のため、通常精密ろ過の前にイオン交換樹脂による脱イオン工程を行うのが通常である。しかし、本発明では脱イオン工程を行わないことが好ましい。この工程を経ると、アミノ酸がイオン交換樹脂に吸着し、アミノ酸含有量が低下してしまうからである。液化工程で酵素液化法を採用すれば、脱イオン工程を問題なく省略することができる。
濃縮は、固形分濃度(Bx)が、65〜90%となるまで行うことが好ましく、75〜85%となるまで行うことがより好ましい。65%以上、特に75%以上に濃縮することにより、雑菌汚染やカビの増殖を防ぐことができる。また、90%以下、特に85%以下の濃縮に留めることにより、粘度が高くなりすぎることを防ぐことができる。
【実施例】
【0015】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例における分析値及び評価は次の方法で得たものである。
pHは、サンプルを30w/v%の濃度となるように純水で希釈後、20℃にて、堀場製作所製pHメーターDS−12を用いて測定した。
アミノ酸濃度はホルモール滴定法(第4回改正国税庁所定分析法注解、日本醸造協会、23頁)に基づいて行った。すなわち、サンプルを30w/v%の濃度となるように純水で希釈後、10mLを計り採り、これにフェノールフタレイン指示薬2〜3滴を加えて0.1N水酸化ナトリウムで中和し、これに中性ホルマリン液5mlを加えることにより遊離した酸を0.1N水酸化ナトリウムで淡桃色になるまで滴定することにより求めた。なお、滴定値からアミノ酸濃度への換算は、(滴定値)×0.0075×10×1.108×75÷30の式により行った。
Bxは、アタゴ製精密アッベ屈折計3Tを用いた温度20℃における屈折率測定により求めた。
発酵食品の評価は10人のパネラーによる官能評価により行った。評価は大麦水飴を用いたパンにより行い、評価項目は「組織」、「食感」、「風味」の3項目とし、1〜5点の5段階で評価し、評価点数の平均値を求めた。
【0016】
〔実施例1〕
国産大麦の粉砕物345gを純水655gに分散させた。これに消石灰を加えて、pHを6.0に調整後、丸米液化H−3(天野エンザイム製、枯草菌由来と糸状菌由来の混合酵素)を100000U添加し、55℃で1時間反応させた。次に加熱し、1時間かけて90℃に昇温し、もう一度丸米液化H−3を100000U添加して、90℃で1時間反応させて液化液を得た(液化工程)。
次に、60℃まで冷却し、pHを変えずにベータラーゼ1500EL(日本バイオコン社、麦芽酵素)を4000U添加し、60℃で24時間糖化反応させて糖化液を得た(糖化工程)。その後、プロテアーゼとしてAアマノG(天野エンザイム製、Aspergillus oryzae由来プロテアーゼ)を60000U添加して、60℃で24時間反応させた(タンパク質分解工程)。
【0017】
得られた反応液を遠心分離(9000G、20分)し、その上清を加熱した。加熱後の上清を、ろ紙No.5C(東洋濾紙製)上に10gの活性炭白鷺A(武田薬品工業製)をコートしたヌッチェに通液してろ過した。このろ過液を孔径0.45μのニトロセルロースタイプメンブランフィルター(東洋濾紙製)に通液した後、エバポレーターにてBx75%まで濃縮し、大麦水飴を得た。
【0018】
〔実施例2〕
糖化工程において、反応温度を55℃とした他は、実施例1と同様にして、大麦水飴を得た。
〔実施例3〕
タンパク質分解工程において、反応温度を55℃とした他は、実施例1と同様にして、大麦水飴を得た。
【0019】
〔比較例1〕
糖化工程においてベータラーゼ1500ELに代えてハイマルトシンGL(エイチビィアイ製、小麦由来β−アミラーゼ)を10000U用いた他は、実施例1と同様にして、大麦水飴を得た。
〔比較例2〕
糖化工程において、反応温度を45℃とした他は、実施例1と同様にして、大麦水飴を得た。
〔比較例3〕
糖化工程において、反応温度を65℃とした他は、実施例1と同様にして、大麦水飴を得た。
〔比較例4〕
タンパク質分解工程において、反応温度を45℃とした他は、実施例1と同様にして、大麦水飴を得た。
〔比較例5〕
タンパク質分解工程において、反応温度を65℃とした他は、実施例1と同様にして、大麦水飴を得た。
〔比較例6〕
タンパク質分解工程において、AアマノGに代えてパパインW−40を50000U用い、反応温度を55℃とした他は、実施例1と同様にして、大麦水飴を得た。
【0020】
実施例1〜3の糖化工程における温度使用した酵素、タンパク質分解工程における温度と使用した酵素、濃縮後の水飴のpHと、得られた大麦水飴中のアミノ酸濃度を表1に示す。また、比較例1〜6の糖化工程における温度と使用した酵素、タンパク質分解工程における温度と使用した酵素、濃縮後の水飴のpHと、得られた大麦水飴中のアミノ酸濃度を表2に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
表1と表2から、糖化工程とタンパク質分解工程とを、共に50〜60℃の温度とすることにより、水飴中のアミノ酸量が著しく増加することがわかる。また、表2の比較例1から、糖化工程において麦芽または麦芽酵素を用いないと、反応温度が適切であっても、充分なアミノ酸量が得られないことがわかる。
【0024】
〔実施例4〕パンの作製
ボウルに砂糖10g、実施例1で調製した大麦水飴6.7g(水分1.7gを含む)と食塩7gを入れ、118.3mlの水を入れてよく溶かした。次に、強力粉400g、卵25g、水120mlを入れよく混ぜ、次にイーストを振り入れて生地を粉が一塊になるようまとめた。これをテーブル台の上で捏ねて生地が滑らかになった後、バター20gを混ぜてさらに捏ねた。生地を丸めてコーン油を薄く塗っておいたボウルに入れラップをし、30℃恒温器に50分静置し、一次発酵させた。テーブル台の上に生地を取り出し16個にナイフで切り分けた。切り分けた生地を丸め、ふきんとビニールを掛け10分間静置した。さらにオーブンの天板に油を軽くぬって生地を乗せ、ふきんとビニールをかけ、30℃恒温器で40分間仕上げ発酵させた。表面にナイフで一文字に切り目を入れ、180℃のオーブンで12分焼いた。
【0025】
〔比較例7〕パンの作製
ボウルに砂糖15gと食塩7gを入れ、120mlの水を入れてよく溶かした。次に、強力粉400g、卵25g、水120mlを入れよく混ぜ、次にイーストを振り入れて生地を粉が一塊になるようまとめた。その後の操作は実施例4と同じに行った。
【0026】
〔比較例8〕パンの作製
実施例1で調製した大麦水飴6.7gに代えて、比較例1で調製した大麦水飴6.7g(水分1.7gを含む)を用いた他は実施例4と同じに行った。
【0027】
〔比較例9〕パンの作製
ボウルに比較例1で調製した大麦水飴20g(水分5gを含む)と食塩7gを入れ、115mlの水を入れてよく溶かした。次に、強力粉400g、卵25g、水120mlを入れよく混ぜ、次にイーストを振り入れて生地を粉が一塊になるようまとめた。その後の操作は実施例4と同じに行った。
【0028】
実施例4と比較例7〜9の仕込み配合比を表3に、官能評価の結果を表4に示す。
【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
比較例7と比較例8との比較から、大麦水飴を用いても、そのアミノ酸の含有量が1質量%程度の場合、発酵食品の風味を改善する効果が低い。また、比較例9に示すように、、アミノ酸の含有量が1質量%程度の大麦水飴を大量に用いて、アミノ酸量を確保しようとすると、かえって風味を損なう。
実施例4に示すように、アミノ酸の含有量が2.5質量%以上である大麦水飴を発酵原料として用いることにより、充分な発酵改善効果が見られ、香味にすぐれた発酵食品が製造できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のアミノ酸の含有量が2.5質量%以上である大麦水飴は、発酵食品の風味を損なうことなく発酵を促進する食品素材として好適に使用できる。例えば、みりん、酢、清酒、ビール、発泡酒、パンなどの穀類を原料とする発酵食品、焼酎などのいもを原料とする発酵食品、ヨーグルト、チーズ、バターなどの乳製品由来の発酵食品、味噌、醤油などのダイズ由来の発酵食品等、様々な発酵食品に幅広く利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦もしくはその粉砕物を原料とし、アミノ酸の含有量が2.5質量%以上であることを特徴とする大麦水飴。
【請求項2】
大麦もしくはその粉砕物を液化して液化液を得る液化工程と、
液化液に麦芽または麦芽酵素を添加して50〜60℃の温度条件下で反応させて糖化液を得る糖化工程と、
液化液又は糖化液にカビ由来プロテアーゼを添加して50〜60℃の温度条件下で反応させるタンパク質分解工程とを備える大麦水飴の製造方法。


【公開番号】特開2006−262839(P2006−262839A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88829(P2005−88829)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000165000)群栄化学工業株式会社 (108)
【出願人】(303040183)サッポロビール株式会社 (150)
【Fターム(参考)】