説明

大麦玄米組成物およびそれを使用したパンまたは菓子

【課題】各種ミネラルおよび食物繊維に富み、しかもパン本来の風味と柔らかさ、あるいは菓子本来の風味を備えたパン、菓子用組成物、あるいはそれを用いたパン、菓子を提供すること。
【解決手段】大麦と玄米を含み、小麦粉を実質的に含まない組成物を調製する。特には、大麦粉と、玄米粉または玄米粒を含み、小麦グルテン以外の小麦由来成分を含まず、さらには、好ましくは卵成分、乳成分、および大麦または玄米由来の油脂成分以外の油脂成分をいずれも含まない大麦玄米組成物を調製し、このような組成物と液体から生地を調製し、さらに、生地を焼成等してパンや菓子を作る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大麦および玄米を必須成分とするパンあるいは焼き菓子およびその製造方法に関する。より詳細には、大麦粉および玄米粉または玄米粒を用いて、小麦粉を用いず、必要な場合にのみ小麦グルテンを含有させて調製する大麦玄米組成物、当該組成物を用いて製造された発酵生地または生地およびパンあるいは焼き菓子、ならびに当該パンあるいは焼き菓子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、発酵パンや焼き菓子の主原料として利用されているのは、小麦粉またはライ麦粉であり、小麦パンはふっくら膨らんだ食感が好まれている。小麦粉は、水を加えて練り合わせると、小麦粉中のタンパク質のグリアジンとグルテニンによってガム状の粘弾性を有するグルテンになり、発酵で生じる炭酸ガスを生地中に包蔵する機能が発揮され、発酵パンの容積拡大につながることが知られている。
【0003】
しかし、一般的なパンや焼菓子は、多くは、高カロリー、低ミネラル、および低繊維質であり、塩分量も多くなりがちである。この為、高脂血症、腎臓病、糖尿病などのいわゆる成人病患者を始め、そのような成人病に罹患する可能性の高い人々にとっては好ましくない食品ともなり得る。
【0004】
一方、小麦粉の価格の不安定さや将来予測される食料不足の問題に鑑みて、小麦に比べて単位面積当たりの収量が多く、栄養学的にもすぐれたバランス食品である米の用途を拡大し、消費量を増加させることも望まれている。
【0005】
発酵パンの主原料として、米粉を小麦粉の代替として利用する方法が提案されている。米粉を小麦粉の代替として利用するためには、例えば、ロール製粉機で粗粉砕した後、気流粉砕機で微粉砕して200メッシュの篩を通過する区分を90%以上にした米粉を製造する方法(例えば、特許文献1を参照)、ペクチナーゼを溶解した水溶液に米を浸漬処理した後、脱水、製粉、仮焼する方法(例えば、特許文献2を参照)、あるいは、有機酸水溶液(ペクチナーゼを含んでもよい)に米を浸漬した後、脱水、製粉する方法(例えば、特許文献3を参照)などが開示されている。
【0006】
さらに、煩雑な操作をせずに、パンや菓子などを作る原料として、米粉およびグルテンからなる穀粉と、マルトースとを一定の割合で含んでなるパン・菓子用大麦玄米組成物も開示されている(特許文献4)。
【特許文献1】特公平4−73979号公報
【特許文献2】特公平7−100002号公報
【特許文献3】特開2002−153215号公報
【特許文献4】特開2004−267194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の米粉組成物は、特殊な酵素処理を必要とするものであったり、あるいは乳成分、卵成分、もしくは油脂成分などを構成成分として一定の含有量以上入れることで、パンや菓子独特の柔らかな食感に類似する風味を生みだす必要があるなどの問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、外観、内相、および食味に優れたパンあるいは焼き菓子を製造することのできる大麦および玄米を含む組成物、当該組成物を用いて製造された生地および食品、ならびに当該食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、そのままではパンや菓子の原料としては使用されにくい大麦、およびパンや菓子に一定以上の量を含有させることが困難であった玄米を、主な構成成分として配合する、以下の構成を有する大麦玄米組成物および以下の工程を有する製造方法により上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、大麦粉と玄米粉または玄米粒を含有し、実質的に小麦粉を含まないパンまたは菓子用大麦玄米組成物、に関する。
【0011】
上記パンまたは菓子用大麦玄米組成物において、上記大麦粉を、乾燥重量で、30重量%以上85重量%以下、前記玄米粉を、乾燥重量で、15重量%以上40重量%以下の割合で含むことが好ましい。
【0012】
上記パンまたは菓子用大麦玄米組成物において、上記大麦粉を、乾燥重量で、30重量%以上85重量%以下、上記玄米粒を、乾燥重量で、15重量%以上60重量%以下の割合で含むことが好ましい。
【0013】
上記パンまたは菓子用大麦玄米組成物において、さらに、小麦グルテンを0重量%以上20重量%以下の割合で含むことが好ましい。
【0014】
上記パンまたは菓子用大麦玄米組成物において、乳成分および卵成分を実質的に含まず、さらに大麦あるいは玄米に由来する油脂以外の追加の油脂を実質的に含まないことが好ましい。
【0015】
上記パンまたは菓子用大麦玄米組成物において、上記玄米が、発芽玄米であることが好ましい。
【0016】
上記パンまたは菓子用大麦玄米組成物において、上記玄米粒が、生の玄米粒を加熱処理したものであることが好ましい。
【0017】
本発明はまた、上記大麦粉および玄米粉を含むパンまたは菓子用大麦玄米組成物を30分以上30時間以下の時間、水またはその他の液体に浸漬することによって得られるパンまたは菓子用生地、に関する。
【0018】
本発明はまた、上記のパンまたは菓子用大麦玄米組成物を30分以上30時間以下の時間吸水処理する工程;該吸水処理組成物をそのまま用いあるいはその他の成分と混合し生地を作る工程;および該生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む、パンまたは菓子の製造方法、に関する。
【0019】
本発明はまた、大麦粉および加熱処理した玄米粒を含むパンまたは菓子用大麦玄米組成物をそのまま用いあるいはその他の成分と混合し生地を作る工程;および該生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む、パンまたは菓子の製造方法、に関する。
【0020】
本発明はまた、玄米粉を30分以上30時間以下の時間吸水処理する工程および該吸水処理した玄米粉に大麦粉を混合し、該大麦粉が、乾燥重量で、30重量%以上85重量%以下、前記玄米粉または玄米粒が、乾燥重量で、15重量%以上40重量%以下の割合で含まれる、生地を調製する工程;および該生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む、パンまたは菓子の製造方法、に関する。
【0021】
本発明はまた、上記の方法により得られるパンまたは菓子に関する。
【0022】
上記菓子が、ホットケーキ、ケーキ、ロールケーキ、パイ、スコーン、またはマフィンであることが好ましい。
【0023】
上記パンまたは菓子は、乳成分および卵成分を実質的に含まず、さらに大麦あるいは玄米に由来する油脂以外の追加の油脂を実質的に含まないことが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のパンまたは菓子用大麦玄米組成物およびそれを用いた菓子の製造方法によれば、従来一定量以上含ませることが困難であった玄米を一定量以上含み、さらに大麦の成分と相俟って、ミネラルおよび食物繊維が豊富でありながら、風味および食感に優れたパンあるいは菓子の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のパンまたは菓子用大麦玄米組成物は、実質的に小麦粉を含まず、好ましくは、乾燥重量にして、大麦粉30重量%以上85重量%以下、玄米粉15重量%以上40重量%以下、あるいは玄米粒15重量%以上60重量%以下とを含み、さらに任意に小麦グルテン、糖類、塩などを含むことを特徴とする。大麦粉の割合は、さらに好ましくは、40重量%以上70重量%以下であり、最も好ましくは、50重量%以上60重量%以下である。一方、玄米粉または玄米粒の割合は、さらに好ましくは、20重量%以上40重量%以下あるいは玄米粒の場合には、25重量%以上60重量%以下である。
【0026】
本発明のパンまたは菓子用大麦玄米組成物に含まれる大麦とは、イネ科のHordeum vulgareのことを指し、二条大麦、四条大麦、六条大麦、裸大麦のいずれでもよい。好ましくは、二条大麦が使用される。
【0027】
前記大麦粉は、胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉、高速回転打撃製粉等の従来からの製粉方法により得られるものである。
【0028】
前記製粉方法は、脱穀した大麦を、洗浄し、または洗浄せずに、各製粉方法に応じた製粉装置を用いて粉砕し、篩にかけて得られる。大麦または大麦粉の乾燥は、製粉方法に応じて粉砕前または粉砕後に行われる。洗浄工程を省略した製粉方法の場合は、大麦粉の乾燥工程も省略することができる。
【0029】
製粉装置としては、例えば胴搗き製粉の場合は杵やスタンプミル、ロール製粉の場合はロール製粉機、石臼製粉の場合は各種石臼、気流粉砕製粉の場合は気流粉砕機、高速回転打撃製粉の場合はハンマーミルまたはピンミルがあげられる。石臼製粉は、各種石臼を用いて乾式製粉または水挽き製粉(湿式製粉)を行う。高速回転打撃製粉は、ハンマーミルまたはピンミルを用いて乾式製粉または湿式製粉を行う。
【0030】
また、各種製粉方法で粉砕した大麦粉は、篩にかけて大麦粉の粒度を整えることが好ましい。大麦玄米パンの出来上がりを良好にするためには、100〜140メッシュ程度の篩を通過させた大麦粉を用いることが好ましい。より好ましくは、120メッシュを通過する粒度である。
【0031】
前記大麦粉の水分率は、製粉方法により異なるが、通常7〜15%であり、14%以下がより好ましい。水分率は、加熱乾燥法により米粉を常圧下100℃で乾燥させ、恒量に達した後乾燥前後の重量を測定し、下記式:
(乾燥前の重量−乾燥後の重量)÷乾燥前の重量×100
により求める。水分率が前記範囲であれば固まりが生じにくく、本発明の生地を作製する際の作業性に優れる。
【0032】
前記の粒度および水分率の大麦粉は、通常の製粉技術で容易に入手でき、市販もされている。
【0033】
本発明のパンまたは菓子用大麦玄米組成物は、玄米粉または玄米粒を含有する。ここで、玄米とは、脱穀後精白工程を経ておらず、胚芽、ぬか層、胚乳を含む米を言う。また、玄米を水に浸けて発芽させて得た発芽玄米を用いることもできる。発芽玄米は、アミノ酸のギャバが多く含まれ、特に好ましい。また、精白の度合いを少なくし、全く精白しない玄米から最大で5割までぬかを取り除いた米までは、本明細書では玄米に含まれる。このような部分精白米には例えば、五分づき米や三分づき米が含まれる。このうち、特に好ましいのは、発芽玄米である。
【0034】
本発明で用いられる玄米粉または玄米粒は、粳米またはもち米の生米を指す。粳米の種類としてはジャポニカ米、インディカ米、ジャバニカ米等特に制限されるものではない。もち米の種類も、特に制限されるものではない。
【0035】
玄米により玄米粉とする場合には、胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉、高速回転打撃製粉等の従来からの製粉方法により得られる。
【0036】
前記製粉方法は、玄米、発芽玄米、最大5分まで精白した米を洗米し、または洗米せずに、各製粉方法に応じた製粉装置を用いて粉砕し、篩にかけて得られる。玄米または玄米粉の乾燥は、製粉方法に応じて粉砕前または粉砕後に行われる。洗米工程を省略した製粉方法の場合は、玄米粉の乾燥工程も省略することができる。あるいは玄米に含水処理を施し、玄米を加熱し部分α化処理などをしてもよい。
【0037】
製粉装置としては、例えば胴搗き製粉の場合は杵やスタンプミル、ロール製粉の場合はロール製粉機、石臼製粉の場合は各種石臼、気流粉砕製粉の場合は気流粉砕機、高速回転打撃製粉の場合はハンマーミルまたはピンミルがあげられる。石臼製粉は、各種石臼を用いて乾式製粉または水挽き製粉(湿式製粉)を行う。高速回転打撃製粉は、ハンマーミルまたはピンミルを用いて乾式製粉または湿式製粉を行う。
【0038】
また、各種製粉方法で粉砕した玄米粉は、篩にかけて玄米粉の粒度を整えることが好ましい。大麦玄米パンの出来上がりを良好にするためには、例えば限定はされないが、80〜170メッシュの篩を通過させた玄米粉を用いることが好ましく、より好ましくは、限定はされないが、80重量%程度が、150メッシュを通過するような粒度である。すなわち、140〜145のメッシュであることが最も好ましい。
【0039】
玄米粉の水分率は、原料の米の種類や製粉方法により異なるが、通常7〜15%であり、9.5±2.5%程度であることが好ましい。水分率が前記範囲であれば玄米粉の固まりが生じにくく、パン生地あるいは菓子を作製する際の作業性に優れる。水分率は、加熱乾燥法により玄米粉を常圧下100℃で乾燥させ、恒量に達した後乾燥前後の重量を測定し、式
水分率(重量%)=100×(乾燥前の重量−乾燥後の重量)/(乾燥前の重量)
により求める。
【0040】
本発明においては、さらに玄米粉に加えて、あるいは玄米粉に変えて、玄米の粒そのものを組成物に含ませることもできる。
【0041】
玄米を玄米粒のまま使用する場合には、吸水処理および/または加熱処理などを予め行うことが好ましい。吸水処理は、少なくとも30分以上30時間以下、好ましくは6時間以上24時間以内にて行う。加熱処理は蒸すことが好ましい。玄米粒の水分率は、玄米重量に対し、20重量%〜100重量%である。水分率は、加熱乾燥法により玄米粉を常圧下100℃で乾燥させ、恒量に達した後乾燥前後の重量を測定し、式
水分率(重量%)=100×(乾燥前の重量−乾燥後の重量)/(乾燥前の重量)
により求める。
【0042】
本発明で必須成分ではないが、パン製造時などの必要に応じて任意に用いられるグルテンは、活性グルテンが望ましい。従って、本発明において、「実質的に小麦粉を含まない」とは、小麦粉由来成分を全く含まない場合の他、小麦粉由来グルテンのみを含み、小麦粉そのもの、あるいはその他の小麦粉由来の成分を含まない、ということを意味する。
【0043】
本発明の大麦玄米組成物には、乾燥重量で、0重量%以上20重量%以下のグルテンが含まれ得る。グルテンは、好ましくは、5重量%〜15重量%以下の割合で含まれる。グルテンは、全く含まれなくても、本発明の組成物を調製することができる。
【0044】
本発明の大麦玄米組成物には、製造するパン・菓子の種類によって必要に応じ、糖類、食塩、ガム質、乳成分、卵成分、油脂、無機塩類およびビタミン類からなる群より選ばれる1種または2種以上をさらに配合することができる。しかしながら、このうち、乳成分、卵成分、油脂が実質的には含まれないことも好ましい。
【0045】
通常、小麦粉を使用したパン、あるいは米粉パンやホットケーキには、柔らかさや風味といった好ましい特性を出す為に、乳成分、卵成分、または油脂などが使用されるが、本発明の大麦玄米組成物は、これらの成分を含まない場合にも、できあがるパンや菓子に柔らかさや風味を生み出すことが可能である。本発明の大麦玄米組成物には、さらに白糠などを含ませることもできる。
【0046】
組成物は、乾燥状態の粉状、水分を含んだ半練り状、粉と粒の混合状態のいずれでもよい。
【0047】
前記糖類としては、ぶどう糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖、またはソルビト−ル、マルチトール、パラチニット、水添水飴などの糖アルコールがあげられる。糖類の含有割合は、組成物における乾燥重量にして、全体の0重量%〜10重量%であることが好ましい。糖類が含まれないことがより好ましく、含まれる場合においても、0.01重量%〜5重量%までくらいであることがより好ましい。
【0048】
前記食塩としては、塩化ナトリウムが99%以上の精製塩、または天日塩もしくは粗塩等の粗製塩が制限なく用いられる。塩の含有割合は、組成物における乾燥重量にして、全体の0重量%〜3重量%程度であることが好ましい。塩は含まれないことがより好ましく、含まれる場合においても、0.01重量%〜1重量%までくらいであることがより好ましい。
【0049】
前記ガム質としては、玄米粉、グルテン、白糠、その他の原料のなじみをよくする作用を有するものであれば特に制限されないが、アルギン酸、キサンタンガム、デキストリン、セルロース等があげられる。
【0050】
本明細書において、乳成分とは、粉乳や脱脂粉乳、などを始め、脂肪分を含む通常の牛乳に由来する成分をいう。
【0051】
本明細書において、卵成分としては、卵黄、卵白、全卵その他の卵に由来する成分を指す。
【0052】
本明細書において、大麦や玄米に由来しない油脂としては、バター、マーガリン、ショートニング、ラード、オリーブ油等があげられる。
【0053】
前記無機塩類としては、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、焼成カルシウム、アンモニウムミョウバン等があげられる。
【0054】
前記ビタミン類としては、ビタミンC、ビタミンB1 、ビタミンB2 、ビタミンD、ビタミンE、カロチン等があげられる。
【0055】
また、本発明の大麦玄米組成物には、本発明の目的内で各種の食品または食品添加物を配合してもよく、例えば、五穀に属する他の穀物、植物の果実、種子もしくは枝葉、またはイーストフード、乳化剤などがあげられる。
【0056】
大麦玄米組成物中におけるこれら原料の含有量は、パン・菓子の種類に応じて適宜設定することができる。
【0057】
本発明の大麦玄米組成物は、プレミックス粉として業務用または家庭用に供され、工業的または家庭的に大麦玄米パン・菓子の(発酵)生地を好適に作ることができる。また、前記生地を調理して、大麦玄米パン・菓子を好適に作ることができる。
【0058】
本発明の第1の態様におけるパン・菓子用生地を製造する方法は、前記大麦玄米組成物を少なくとも30分以上30時間以下、好ましくは6時間以上24時間以下水またはその他の液体に浸漬し、ついで、そのまま酵母を混合して、あるいは水および酵母を混合して捏ね上げた後、実質的に第1発酵工程を経ずにあるいは発酵工程を経て生地を製造する工程を含む。水に浸漬する工程は、本発明の組成物において、予め含水加熱などの前処理した玄米粉あるいは玄米粒が使用される場合には、省略することができる。または、玄米粉のみを30分以上30時間以下、好ましくは6時間以上24時間以下の時間、先に吸水させ、その後、大麦粉と混合させることも可能である。前記大麦玄米組成物には、所望によりその他の原料を配合することができる。本発明では、玄米中に元々含まれる油脂により、水分が粉の粒子内に過剰に入ることなく、適度に吸水し生地が軽く仕上がる。浸漬に用いる水またはその他の液体の量は、大麦玄米組成物と水との重量比で、2:1から1:2の割合であることが好ましい。その他の液体とは、限定はされないが、牛乳や果汁ジュースあるいは果汁なしジュースなどを指す。
【0059】
酵母混合時に加える水は特に制限されるものではなく、牛乳などの液体であってもよいが、好ましくは水である。加水量は、浸漬処理時に吸水した水の量と合わせて、大麦玄米組成物の乾燥重量100重量部に対して、60〜110重量部であり、好ましくは、75〜100重量部である。加水量が60重量部未満であると製造したパン・菓子が粉っぽくなり、110重量部を越えると生地が粥状になり、作業性、機械適性に劣るようになる。なお、生地に牛乳や卵等の液体成分を混合する場合は、前記加水量にこれらの液体成分中の水分も加える。
【0060】
前記酵母は、パンや菓子の製造に通常用いられているサッカロミセス・セレビシエのパン酵母が制限なく用いられ、生酵母または乾燥酵母があげられる。生酵母の添加量は、酵母の種類により適宜設定することができる。乾燥酵母の添加量は、前記大麦玄米組成物乾燥重量にして100重量部に対して通常0.5〜2重量部程度である。その他の原料としては、前記大麦玄米組成物に配合する副原料があげられる。
【0061】
混合条件は、市販のミキサーを用い、製造するパン・菓子の種類に応じて当業者であれば適宜設定することができる。同様に、捏ね上げ温度も当業者であれば適宜設定することができ、通常20〜30℃であるが、25〜30℃が好ましい。
【0062】
本発明の第1の態様においては、実質的に第1発酵工程を経てもよいし、省略することも可能である。したがって、第1発酵工程の所要時間(フロアータイム)は0〜30分が好ましい。生酵母の場合は、フロアータイムは0分が好ましく、乾燥酵母の場合は、前記捏ね上げ温度と同温度で30分程度が好ましい。油脂を使用しないで生地を製造する場合は、乾燥酵母を用いることが好ましい。
【0063】
次に、得られた生地を成型する工程を行う。得られた生地を所望の重量に分割する。分割した生地を、目的のパン・菓子の形状に応じて成型する。ここで、成型前にベンチタイムを15〜25分設けることが好ましいが、省略することもできる。
【0064】
前記成型した生地は、最終発酵をする工程に供せられる。本発明では実質的に第1発酵工程を経ないので、最終発酵工程(ホイロタイム)を十分取る必要がある。ホイロタイムは、当業者であれば適宜設定することができるが、温度35〜38℃で湿度75〜80%の場合、通常30分以上、好ましくは40〜60分である。
【0065】
本発明の第2の態様においては、発酵生地は、前記大麦玄米組成物を少なくとも30分以上30時間以下、好ましくは6時間以上24時間以下水またはその他の液体に浸漬し、ついで、酵母あるいは水および酵母を加え、所望によりその他の原料を加え、混合し、所定の時間発酵させることにより得られる。水に浸漬する工程は、本発明の組成物において、予め含水加熱などの前処理した玄米粉あるいは玄米粒が使用される場合には、省略することができる。または、玄米粉のみを30分以上30時間以下、好ましくは6時間以上24時間以下の時間、先に吸水させ、その後、大麦粉と混合させることも可能である。加える水は特に制限されるものではなく、牛乳などの液体であってもよいが、水が好ましい。浸漬に用いる水またはその他の液体の量は、大麦玄米組成物と水との重量比で、2:1から1:2の割合であることが好ましい。
【0066】
前記加水量は、浸漬処理時に吸水した水の量と合わせて、大麦玄米組成物の乾燥重量100重量部に対して、60〜110重量部であり、好ましくは、75〜100重量部である。加水量が60重量部未満であると製造したパン・菓子が粉っぽくなり、110重量部を越えると生地が粥状になり、作業性、機械適性に劣るようになる。なお、生地に牛乳や卵等の液体成分を混合する場合は、前記加水量にこれらの液体成分中の水分も加える。
【0067】
本発明の第3の態様における生地は、酵母を使用しない菓子用の生地であり、前記大麦玄米組成物を少なくとも30分以上30時間以下、好ましくは6時間以上24時間以下水またはその他の液体に浸漬し、ついで、必要な場合にはさらに液体を加え、所望によりその他の原料を加え、混合することにより得られる。加える液体は、水、牛乳、卵などがあげられる。その他の原料は、前記大麦玄米組成物に記載したものと同様である。浸漬に用いる水またはその他の液体の量は、大麦玄米組成物と水との重量比で、2:1から1:2の割合であることが好ましい。水に浸漬する工程は、本発明の組成物において、予め含水加熱などの前処理した玄米粉あるいは玄米粒が使用される場合には、省略することができる。または、玄米粉のみを30分以上30時間以下、好ましくは6時間以上24時間以下の時間、先に吸水させ、その後、大麦粉と混合させることも可能である。混合条件は、製造するパン・菓子の種類に応じて当業者であれば適宜設定することができる。目的に応じて、適宜生地をねかせてもよい。また生地製造時の水分量は、目的とする製品により様々であり、特に限定はされない。
【0068】
このようにして得られた本発明の生地は、捏ね上げ後成型前の生地、成型した生地、成型した生地を最終発酵させた生地のいずれの段階の生地をも含む。本発明の生地は、続けて下記のパン・菓子の製造方法に供してもよく、一旦冷蔵または冷凍保存してもよい。冷蔵または冷凍保存した生地は、そのまま、または解凍した後、下記調理工程に供することができる。
【0069】
本発明の第1の態様の大麦玄米パン・菓子を製造する方法は、前記生地を製造する工程の後には、前記生地を成型する工程、成型した生地を最終発酵する工程ならびに最終発酵した生地を焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む。
【0070】
生地の製造工程、生地の成型工程および生地の最終発酵工程は、前記した通りである。
【0071】
生地を調理する方法は、焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱などの公知の方法が適宜採用できる。焼成方法としては、例えば、上面及び/又は下面から加熱するオーブン、または、前もって加熱された炉面などに直接接触させて加熱するなどの方法を用いることができる。フライ方法としては、例えば、食用油を使って加熱する調理法、いわゆる妙める、揚げるなどの方法を用いることができる。蒸煮方法としては、例えば、火炎上で加熱することにより蒸気を発生させて加熱する蒸し器、または、ボイラーを用いて予め作られた蒸気を容器内に送り込んで加熱するなどの方法を用いることができる。マイクロ波による方法としては、例えば、マイクロ波を発生、照射することのできる機能を備えた機器、装置を用いて加熱するなどの方法を用いることができる。加圧加熱方法としては、例えば、高温高圧条件で加熱することのできる圧力鍋、装置を用いて加圧加熱する方法を用いることができる。
【0072】
前記生地を成型する際に、アン、カレー、各種惣菜などの具材料を包み込んでアンパン、カレーパン、惣菜パンや中華饅頭等に仕上げることも有利に実施できる。あるいは、生地を加熱した後に生クリーム、カスタードクリーム等を加えることにより、低カロリーで高繊維質の菓子に仕上げることも可能である。
【0073】
第1の態様のパン・菓子の製造方法は、ベンチタイム(15〜25分)も含めた全製造工程の所要時間が約60〜150分で外観、内相、食味に優れた高品質の大麦玄米パンに仕上げることができる。これは、小麦粉を用いたパン製造の所要時間の半分以下の時間であり、本発明の製造方法は、作業性の点からも優れた方法である。
【0074】
本発明の第2の態様の大麦玄米パン・菓子の製造方法は、発酵生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む。この第2の態様の場合、ベンチタイムなしでの工程が実施可能であり、発酵時間も従来より短い時間ですますことができる。
【0075】
第2の態様において、第1発酵時間(フロアータイム)は30〜50分が好ましい。捏ね上げ温度が前記20〜30℃の範囲を大きく逸脱しない限り、フロアータイムを前記範囲に制御するだけで良好な第1発酵状態が得られる。次に、ベンチタイムを15〜20分設けることが好ましい。
【0076】
本発明の大麦玄米パン・菓子の製造方法は、前記発酵生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む。発酵生地は、成形した後調理する前に、ホイロタイムを設けることが好ましい。
【0077】
前記工程のなかで、フロアータイムおよびホイロタイムは、良好な発酵状態が得られるためにはそれぞれ30分以上が好ましく、40〜50分がより好ましい。本発明の大麦玄米組成物を用いた場合、ベンチタイム(15〜20分)も含めた全製造工程の所要時間が約120〜150分で外観、内相、食味に優れた高品質の大麦玄米パンに仕上げることができる。これは、小麦粉を用いたパン製造の所要時間の約半分の時間であり、本発明の製造方法は、作業性の点からも優れた方法である。
【0078】
また、本発明の第3の態様の大麦玄米パン・菓子の製造方法は、前記生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む。
【0079】
前記発酵生地または生地を成形する際に、アン、カレー、各種惣菜などの具材料を包み込んでアンパン、カレーパン、惣菜パンや中華饅頭等に仕上げることもできる。あるいは、生地を加熱した後に生クリーム、カスタードクリーム等を加えることにより、低カロリーで高繊維質のケーキ、シュークリーム等に仕上げることも可能である。
【0080】
本発明の製造方法により得られたパン・菓子は、食パン、コッペパン、ロールパン、揚げパン、菓子パン、フランスパン、ドイツパン、ベーグル、デニッシュパン、中華饅頭、イーストドーナツ、プレッツェル、ピザもしくはナン等の発酵により得られるパン・菓子、またはケーキ、パイ、スコーン、マフィンもしくはシュークリームなどの発酵せずに得られるパン・菓子など多種多様に及ぶが、本発明の大麦玄米組成物を用いて、本発明の製造方法により得られるものであればこれらに限定されるものではない。
【0081】
このようにして得られたパン・菓子は、風味および外観が良好で、日持ちがよく、冷蔵または冷凍保存することも容易であり、必要に応じて加温、解凍して喫食し、その食味を楽しむこともできる。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0083】
実施例1
(ホットケーキの調製)
発芽玄米粉(ファンケル製、ファンケル発芽玄米)40重量部および二条麦粉(石橋工業株式会社製、二条大麦粉)60重量部、還元麦芽糖(株式会社 林原商事、マビット)6重量部、冷凍用ベーキングパウダー7重量部を混合し、大麦玄米組成物を調製した。このミックス粉を、125重量部の水またはその他の液体に浸漬し、一晩静置した。
【0084】
次に得られた生地を、通常のホットケーキの焼成と同様の方法でフライパン上において熱し、大麦玄米ホットケーキを得た。
【0085】
実施例2
(モーニングロールの調製)
340重量部の発芽玄米粉(ファンケル製、ファンケル発芽玄米)を、680重量部の水に24時間浸漬しておいた。次に二条麦粉(石橋工業株式会社製、二条大麦粉)530重量部、水またはその他の液体に浸漬処理した発芽玄米をそのままの状態で1020重量部、食塩5重量部、還元麦芽糖(株式会社林原商事販売、マビット)12重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品株式会社製、A-グルCC)130重量部をミキサーを用いて混合し、プレミックス粉を調製した。このプレミックス粉に、酵母(S.I.Lesaffre社製、サフセミドライイースト レッド)12重量部およびお湯(38℃)50重量部、及び水210重量部を加え、ミキサー(関東ミキサー、縦型ミキサー50コート)で、低速4分、中速4分、高中速4分、高速1分の条件で、25℃にて混捏し、生地を作製した。
【0086】
次いで、発酵時間を30分とり、生地を50gまたは100gに分割して丸めを行い、ベンチタイムを取らずに、ロールパンに成形を行い、38℃、湿度80%のホイロにて50分間の発酵を行った。発酵終了後、オーブンにて200℃程度で16分焼成し、ロールパンを調製した。
【0087】
本実施例で調製した生地は付着性なく、操作性、機械適性良好で、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイム工程およびホイロ工程での発酵時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性は良好であった。また、できあがったロールパンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、断面のきめも程良く、食味も良かった。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後のパンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性もよかった。
【0088】
実施例3
(バーガーまたはホットドック用パンの調製)
【0089】
400重量部の処理済み発芽玄米(株式会社カネカ製、ベラガ発芽玄米アロゲン)をそのまま、二条麦粉850重量部、食塩5重量部、還元麦芽糖(株式会社林原商事販売、マビット)12重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品株式会社製、A-グルCC)150重量部とともに、ミキサーを用いて混合し、プレミックス粉を調製した。このプレミックス粉に、酵母(S.I.Lesaffre社製、サフセミドライイースト レッド)12重量部を混合し、830重量部の水またはその他の液体に浸漬し、12時間静置した。得られた組成物をミキサー(関東ミキサー、縦型ミキサー50コート)で、低速4分、中速4分、高中速4分、高速1分の条件で、25℃にて混捏し、生地を作製した。
【0090】
次いで、発酵時間を30分とり、生地を100gに分割して丸めを行い、ベンチタイムを省略して、ホットドック用パンに成形を行い、38℃、湿度80%のホイロにて30分間の発酵を行った。発酵終了後、オーブンにて200℃前後の温度で、16分焼成し、パンを調製した。
【0091】
本実施例で調製した生地は付着性なく、操作性、機械適性良好で、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイム工程およびホイロ工程での発酵時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性は良好であった。また、できあがったロールパンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、断面のきめも程良く、食味も良かった。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後のパンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性もよかった。
【0092】
実施例4
(ロールケーキの調製)
卵900重量部およびグラニュー糖600重量部を泡立て、吸水処理した発芽玄米粉(ファンケル製、ファンケル発芽玄米)(乾燥重量で)320重量部および二条麦粉(石橋工業株式会社製、二条大麦粉)250重量部、ベーキングパウダー5重量部、コーンスターチ80重量部、バター180重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品株式会社製、A-グルCC)30重量部を混合し、180℃のオーブンで15分焼成して、ロールケーキを得た。
【0093】
実施例5
(スコーンの調製)
発芽玄米粉(ファンケル製、ファンケル発芽玄米)93重量部および二条麦粉(石橋工業株式会社製、二条大麦粉)109重量部、還元麦芽糖(株式会社林原商事販売、マビット)15重量部、冷凍用ベーキングパウダー10重量部、小麦グルテン(グリコ栄養食品株式会社製、A-グルCC)15重量部を混合し、粉末油脂75重量部、オーガニックリッチ250重量部、ドライおから180重量部、アロゲン100重量部およびファイングルNX(グリコ栄養食品株式会社製)5重量部を1180重量部の牛乳および卵と混合し、12時間5℃の状態でおいた。
【0094】
次に得られた生地を、分割して丸めて、50分160℃にてオーブンで焼き、スコーンを得た。
【0095】
比較例1
米粉パン
実施例2において、発芽玄米および大麦粉の代わりに上新粉を用いた以外は実施例2と同様にして、生地を作製し、同様の処理を行って米粉パンを得た。
【0096】
上記実施例で得られたホットケーキ用あるいはパン用ミックス粉を日本食品分析センターで成分分析した結果を表1に示す。
【表1】

上記実施例5で得られた焼成済みスコーンを日本食品分析センターで成分分析した結果を表2に示す。
【表2】

【0097】
(評価試験1)
実施例1で得られたホットケーキおよび実施例2および3で得られた大麦玄米パンおよび比較例1で得られた米粉パンの外観、内相および食味についてパネラーによる官能試験を行い、以下の項目について評価した。
評価項目:(1)外観については、へこみ、膨らみ、色調
(2)内相については、切り口のきめ、色調、触感
(3)食味については、味、香を中心とした風味、口当たりを中心とした食感。
【0098】
この結果、油脂、乳成分、および卵成分を入れなくとも、本発明の大麦玄米パンは、膨らみ、色調が、油脂、乳成分、および卵成分を入れない米粉パンに比べ、良好であり、小麦粉パンに見られるような焼成後のへこみもなかった。大麦玄米パンの内相は、図1に示すように、きめ、色調および触感も程良く、通常のパンと遜色ないものであったが、油脂、乳成分、および卵成分の入らない米粉パンは、パサパサ感があった。小麦玄米パンの食味は、口溶けがよく、しっとりとして米粉と大麦独特のほのかな香りもあり、非常によい評価が得られた。
【0099】
また、実施例1で得られたホットケーキは、油脂、乳成分、および卵成分を入れなくとも、色調が良好で、風味、口どけもよく、非常によい評価が得られた。また、実施例4および5で得られたロールケーキおよびスコーンも、通常のロールケーキやスコーン以上の風味があり、よい評価が得られた。
【0100】
(評価試験2)
パンの冷凍による食味の影響
実施例2および3で得られた大麦玄米パン生地および比較例1で得られた米粉パン生地を−20℃で冷凍保存し、30日後に室温で解凍した。実施例2と同様にして、ホイロタイムをとり、オーブンにて焼成し、大麦玄米パン、米粉パンおよび小麦粉パンを得た。得られたパンの食味について官能試験を行ったところ、大麦玄米パンは冷凍後もしっとりとして食味がほとんど変化しなかったのに対し、比較例1の油脂も乳成分も入れていない米粉パンはぱさつき、冷凍による食味の低下が感じられた。
【0101】
<血糖値低下作用>
測定方法
二型糖尿病と診断され、6年間インスリン投与(朝夕食前)を受けている被験者(50歳、男性)において、副食内容を変えずに、主食の精白米、うどんの代わりに、3食共、実施例2で得られたモーニングロール50gを各食事時に1個(朝食)および2個(夕食)ずつ食した。その結果、血糖値と血糖値を表す指標値である空腹時のHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、実験開始時には、165mg/dl、7.7%であったのに対し、1ヶ月後には165mg/dl、264mg/dl、7.6%(但し、インスリン投与量は減少)、2ヶ月後には、166mg/dl、6.7%、3ヶ月後には99mg/dl、5.5%、4ヶ月後には106mg/dl、5.1%、5ヶ月後には、100mg/dl、4.5%になった。その後も、この主食を続けることにより、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、4.5%から4.7%程度を維持し、その後、上昇しても最大5.6を維持することに成功した。なお、インスリン投与は、実験開始後3ヶ月までに少しずつ減らして、その後は全く投与しなくなった。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】大麦玄米パンの断面図である。(実施例2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦粉と玄米粉または玄米粒を含有し、実質的に小麦粉を含有しない、パンまたは菓子用大麦玄米組成物。
【請求項2】
前記大麦粉を、乾燥重量で、30重量%以上85重量%以下、前記玄米粉を、乾燥重量で、15重量%以上40重量%以下の割合で含む、請求項1に記載のパンまたは菓子用大麦玄米組成物。
【請求項3】
前記大麦粉を、乾燥重量で、30重量%以上85重量%以下、前記玄米粒を、乾燥重量で、15重量%以上60重量%以下の割合で含む、請求項1に記載のパンまたは菓子用大麦玄米組成物。
【請求項4】
さらに、小麦グルテンを0重量%以上20重量%以下の割合で含む、請求項1から3までのいずれかに記載のパンまたは菓子用大麦玄米組成物。
【請求項5】
乳成分および卵成分を実質的に含まず、さらに大麦あるいは玄米に由来する油脂以外の追加の油脂を実質的に含まない、請求項1から4までのいずれかに記載のパンまたは菓子用大麦玄米組成物。
【請求項6】
前記玄米が、発芽玄米である、請求項1から5までのいずれかに記載のパンまたは菓子用大麦玄米組成物。
【請求項7】
前記玄米粒が、生の玄米粒を加熱処理したものである、請求項1または3に記載のパンまたは菓子用大麦玄米組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載のパンまたは菓子用大麦玄米組成物を30分以上30時間以下の時間、水またはその他の液体に浸漬することによって得られるパンまたは菓子用生地。
【請求項9】
請求項1または2に記載のパンまたは菓子用大麦玄米組成物を30分以上30時間以下の時間吸水処理する工程;該吸水処理組成物をそのまま用いあるいはその他の成分と混合し生地を作る工程;および該生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む、パンまたは菓子の製造方法。
【請求項10】
請求項3に記載のパンまたは菓子用大麦玄米組成物をそのまま用いあるいはその他の成分と混合し生地を作る工程;および該生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む、パンまたは菓子の製造方法。
【請求項11】
玄米粉を30分以上30時間以下の時間吸水処理する工程および該吸水処理した玄米粉に大麦粉を混合し、該大麦粉が、乾燥重量で、30重量%以上85重量%以下、前記玄米粉または玄米粒が、乾燥重量で、15重量%以上40重量%以下の割合で含まれる、生地を調製する工程;および該生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む、パンまたは菓子の製造方法。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれかの方法により得られるパンまたは菓子。
【請求項13】
前記菓子が、ホットケーキ、ケーキ、ロールケーキ、パイ、スコーン、またはマフィンである請求項12に記載の菓子。
【請求項14】
乳成分および卵成分を実質的に含まず、さらに大麦あるいは玄米に由来する油脂以外の追加の油脂を実質的に含まない、請求項12または13に記載のパンまたは菓子。

【図1】
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【公開番号】特開2010−22271(P2010−22271A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187430(P2008−187430)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(503067502)株式会社福盛ドゥ (13)
【Fターム(参考)】