説明

天井走行台車の移載機位置決め装置

【課題】移載機の昇降中及び移載時に精度よく位置決めし、移載機の移載動作を良好にするとともに、コンベア近傍装置との接触を防止する。
【解決手段】筒状に形成し、内部にスプリング14を介してガイドピン15を摺動自在に挿入支持したガイドピン摺動支持部12をコンベア9の両側に一対立設するとともに、垂直位置決め用スタンド13をコンベア9の両側に一対立設し、ガイドピン15に雄コーン17を取り付けるとともに、移載機8にその昇降時及びワーク移載時に雄コーン17と嵌合して移載機8の水平位置を決定する雌コーン19を設け、かつ移載機8に移載機8が下降した際に垂直位置決め用スタンド13と当接して移載機8の垂直位置を決定するスタンド受け部20を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天井走行台車の移載機位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の天井走行台車としては、特許文献1,2に示されたものがあり、これらについて図4(a),(b)により説明する。図4(a),(b)は従来の天井走行台車の正面図及び側面図を示し、天井走行台車は台車本体1と移載機2とから主に構成されている。台車本体1は建屋の天井部に架設した走行レール3に沿って走行し、台車本体1の下部に備えた巻上機4からは4本のチェーン5が導出され、チェーン5の下端には移載機2が備えられる。巻上機4は4本のチェーン5を同期して繰り出し、巻き取りを行い、このチェーン5の繰り出し、巻き取りにより、移載機2を水平状態に保持したまま昇降移動する。又、移載機2には、係止部6が備えられており、この係止部6がワーク(部品や製品)Wを係止して保持する。
【0003】
上記構成において、天井走行台車をあるステーションにおいて移載機2を下降させ、係止部6によりワークWを係止して保持した後、移載機2を上昇させ、台車本体1を他のステーションまで走行レール3に沿って走行させ、この他のステーションにおいて移載機2を下降させ、ワークWを地上のコンベア上に移載ことにより、ワークWをあるステーションから他のステーションに搬送する。
【0004】
そして、搬送したワークWの積み卸し(移載)は、移載機2に組み込んだチャック機構である係止部6や駆動ローラ等のアクチュエータを用いる。あるいは、移載機2はアクチュエータを持たない単にワークWを載せるだけのかこ状のケージとし、このケージが地上のコンベア内にはまり込むことにより、ワークWが地上のコンベア上に乗り移り、この状態で地上コンベアを駆動してワークWを移載する。なお、吊り下げ材としてチェーン5を用いたが、チェーン5の代わりに、ベルト、ワイヤ、ロープ等を用いてもよい。
【特許文献1】特開平11−35282号公報
【特許文献2】特開平10−194116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の天井走行台車においては、移載機2はアクチュエータを有する場合も、有さない場合も、天井部に設置された走行レール3上を走行する台車本体1から吊り下げ材を介して吊り下げられているだけであるから、下降もしくは上昇途中に揺れが生じると、移載機2が周囲に接触することがあり、最悪の場合にはワークWを落下させる恐れがあった。
【0006】
又、移載機2の移載動作の反力により揺れが生じ、最悪の場合には移載不能になってしまう場合も生じた。又、仮に、移載動作中の反力に対抗するため、例えば移載機2の外周部をガイド等で拘束し、停止位置がずれないようにすることは可能であるが、高い精度が要求される場所の移載では使用することができなかった。即ち、移載機2の外周部をガイドする方式で位置決め精度を上げるには、移載機2とガイドとの隙間を極力小さくする必要があるが、隙間が小さくなればなるほど移載機2が揺れながら下降してきたとき等に、移載機2がガイドの位置決め部に入りきらなくなり、移載不良を起こし易くなる。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するために成されたものであり、移載機を昇降中あるいは移載時において精度よく位置決めすることができ、移載機の揺れを防止して移載動作を良好に行うことができるとともに、コンベア近傍装置との接触を防止することができる天井走行台車の移載機位置決め装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の請求項1に係る天井走行台車の移載機位置決め装置は、走行レールに沿って走行する台車本体と、台車本体から吊り下げ材を介して昇降自在に吊り下げられ、ワークを保持してコンベア上に移載する移載機とを備えた天井走行台車において、コンベアの近傍に一対立設されるとともに、筒状に形成され、内部にスプリングを介してガイドピンを摺動自在に挿入支持したガイドピン摺動支持部と、コンベアの近傍に一対立設された垂直位置決め用スタンドと、ガイドピンに取り付けられた雄コーンと、移載機に取り付けられ、移載機の昇降時及びワーク移載時に雄コーンと嵌合して移載機の水平位置を決定する雌コーンと、移載機に取り付けられ、移載機が下降した際に垂直位置決め用スタンドと当接して移載機の垂直位置を決定するスタンド受け部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のようにこの発明によれば、移載機の昇降時及びワーク移載時に移載機側の雌コーンとガイドピン側の雄コーンが嵌合するので、移載機は水平方向の位置決めが精度よく行われ、コンベア近傍装置との揺れによる接触を防止することができるとともに、ワーク移載時の移載動作をスムーズに行うことができる。又、移載機の下降により移載機側のスタンド受け部が垂直位置決め用スタンドと当接するので、移載機の垂直方向の位置決めも精度よく行うことができ、やはり移載動作を円滑に行うことができる。さらに、ワークの移載時においては、移載機はスプリングにより押し上げられたガイドピンに取り付けられた一対の雄コーン及び一対の垂直位置決め用スタンドに支持されるので、ワークの移載により揺れ等が発生することはなく、ワークのスムーズな移載を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面とともに説明する。図1はこの発明の実施最良形態による天井走行台車の移載機位置決め装置の正面図、図2(a),(b)は同じく移載機位置決め装置の側面図及びそのA矢視図を示し、図3は同じく移載機位置決め装置の要部正面図を示し、台車本体1は建屋の天井部に架設した走行レール3に沿って走行し、台車本体1の下部に備えた巻上機4からは吊り下げ材7を介して移載機8が昇降自在に吊り下げられる。9は地上に移動可能に設置されたコンベアであり、コンベア9は台10上に多数のローラ11が移動可能に接続して設けられている。コンベア9の両側にはそれぞれ一対ずつの筒状のガイドピン摺動支持部12及び垂直位置決め用スタンド13が立設される。
【0011】
筒状のガイドピン摺動支持部12内にはスプリング支持部22及びスプリング14を介して先端が尖ったガイドピン15が摺動自在に挿入支持され、ガイドピン摺動支持部12の上端にはガイドピン15が軸ぶれせずに摺動するようにフランジ付きリニアブッシュ16が設けられる。また、ガイドピン15には円錐台状の雄コーン17が取り付けられ、ガイドピン15における雄コーン17の下方には作動部18が取り付けられる。又、位置決め用スタンド13の上端には頭部(ラバーベースアジャスタ)13aが設けられる。一方、移載機8には雄コーン17と嵌合するテーパ孔状の雌コーン19を設けるとともに、スタンド13の頭部13aと当接するスタンド受け部20を設ける。また、ガイドピン摺動支持部12には、下降位置検知用の近接センサ21が設けられる。
【0012】
次に、上記構成の動作を説明する。巻上機4が吊り下げ材7を繰り出すと、移載機8は下降し、その雌コーン19がガイドピン15に挿入され、ラフな位置決めが行われる。そのまま移載機8の下降を続けると、雌コーン19は雄コーン17と嵌合し、移載機8の水平方向の位置決めが行われる。この状態から移載機8がさらに下降すると、コーン17,19が嵌合しているため、ガイドピン15はスプリング14を圧縮して移載機8と一体的に下降する。このため、台車本体1から吊り下げ材7を介して吊り下げられただけの移載機8は、水平方向の位置が精度よく出された状態で下降し、地上のコンベア9に対して、その近傍の装置に接触することなく、僅かな隙間があっても下降する。最後に、移載機8側のスタンド受け部20がスタンド13の頭部13aと当接し、垂直方向の位置決めが精度よく行われる。このスタンド受け部20とスタンド13の頭部13aとの当接状態においては、スプリング14が圧縮状態であるため、上方への一定の力が働いており、移載機8は一対の雄コーン17及び一対のスタンド13の頭部13aの4点で支えられることとなり、ワークWが水平方向に移載されても、揺れ等が発生することはなく、スムーズなワークWの移載が可能となる。
【0013】
また、移載機8の下部は、小さいワークWを搬送するコンベアのようにローラ11の径が小さく、かつローラ11のピッチが狭い場合でも、精度よくローラ11間に入り込むことが可能となっており、移載機8のワークWを載せている部分がコンベア9のローラ11間に入り込むと、ワークWはローラ11上に載ることになるため、コンベア9を駆動すると、ワークWはコンベア9上を移動し、移載可能となる。又、移載機8とコンベア9との隙間を極力小さくすることができるので、小さなワークWの移載もスムーズに行うことができる。さらに、移載機8とガイドピン15とが一体的に下降する際に、作動部18が近接センサ21に近接すると、近接センサ21が作動し、移載機8が所定位置まで下降したことを検知する。
【0014】
上記した実施最良形態においては、移載機8が下降する際に移載機8側の雌コーン19とガイドピン15側の雄コーン17とが嵌合した状態で下降するため、吊り下げ材7を介して吊り下げられているだけの移載機8は水平方向の位置が精度よく出された状態で下降し、コンベア9の近傍装置との隙間が僅かであっても、揺れにより接触することなく下降する。このことは、移載機8の上昇時及びワーク移載時においても同様である。従って、移載機8の昇降時及びワーク移載時に移載機8がコンベア9の近傍装置と接触することがなく、ワークWの移載もスムーズに行われる。又、移載機8側のスタンド受け部20が垂直位置決め用スタンド13と当接することにより、移載機8の垂直方向の位置決めも精度よく行われ、これによってもワークWの移載がスムーズに行われる。さらに、移載機8はワーク移載時に一対の雄コーン17及び一対の垂直位置決め用スタンド13の4点で支持され、ワークWが水平方向に移載されても、揺れ等が発生することはなく、ワークWのスムーズな移載が可能となり、小さなワークWの移載も可能となる。
【0015】
なお、上記実施最良形態においては、移載機8の下部がローラ11間に入り込む例を示したが、移載機8がベルトコンベアの場合、移載機8と地上のコンベア9との載り移り部分の隙間を極力小さくすることができ、ワークWの移載をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施最良形態による天井走行台車の移載機位置決め装置の正面図である。
【図2】この発明の実施最良形態による天井走行台車の移載機位置決め装置の側面図及びそのA矢視図である。
【図3】この発明の実施最良形態による天井走行台車の移載機位置決め装置の要部正面図である。
【図4】従来の天井走行台車の正面図及び側面図である。
【符号の説明】
【0017】
1…台車本体
3…走行レール
7…吊り下げ材
8…移載機
9…コンベア
12…ガイドピン摺動支持部
13…垂直位置決め用スタンド
14…スプリング
15…ガイドピン
17…雄コーン
19…雌コーン
20…スタンド受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レールに沿って走行する台車本体と、台車本体から吊り下げ材を介して昇降自在に吊り下げられ、ワークを保持してコンベア上に移載する移載機とを備えた天井走行台車において、コンベアの近傍に一対立設されるとともに、筒状に形成され、内部にスプリングを介してガイドピンを摺動自在に挿入支持したガイドピン摺動支持部と、コンベアの近傍に一対立設された垂直位置決め用スタンドと、ガイドピンに取り付けられた雄コーンと、移載機に取り付けられ、移載機の昇降時及びワーク移載時に雄コーンと嵌合して移載機の水平位置を決定する雌コーンと、移載機に取り付けられ、移載機が下降した際に垂直位置決め用スタンドと当接して移載機の垂直位置を決定するスタンド受け部とを備えたことを特徴とする天井走行台車の移載機位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−62770(P2008−62770A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242228(P2006−242228)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】