説明

天然のカルシウム素材の水性懸濁液及びその製造方法

【課題】 貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨のような天然のカルシウム素材の微粉末の水中における分散性が長期間にわたって安定に維持され、かつその微粉末の再分散性に優れた懸濁液及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 天然のカルシウム素材の水性懸濁液であって、微粉砕した天然のカルシウム素材、特に好ましくは未焼成の天然のカルシウム素材の微粉末とiotaカラギーナンとの混合物が水に添加・混合されてなるものである。
その好ましい製造方法は、平均粒径1〜60μmの粒度に微粉砕した天然のカルシウム素材とiotaカラギーナンとを5:3〜6の重量比で混合し、その混合物1.25〜1.875重量部に対し水100重量部を加えて、この混合物と水とをミキサーで攪拌混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然のカルシウム素材の水性懸濁液及びその製造方法に係り、より詳しくは、貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨のような天然のカルシウム素材の分散性が安定した水性懸濁液及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
健康食品又は一般の食品の材料として現在一般に使用されている、炭酸カルシウム又は燐酸水素カルシウムのような無機カルシウム化合物を主成分とする天然のカルシウム素材としては、ホタテ貝殻、牡蠣貝殻、あこや貝殻、鮑貝殻、ホッキ貝殻などの貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨などが未焼成カルシウムとして、また、焼成カルシウムとして利用されている。
【0003】
これらのカルシウム素材のうち、粉末状の未焼成カルシウム素材は、ドリンク用素材などとして健康食品又は一般食品へのカルシウム強化を目的として使用されている。
【0004】
しかしながら、上記のカルシウム素材を粉末の状態で利用する場合には、その粉末が水に不溶で、水中に懸濁させたその粒子が沈殿し易いことが最も大きな問題となっている。
【0005】
水に不溶な炭酸カルシウム又は各種の燐酸カルシウムなどを主成分とする天然のカルシウム素材としては、貝殻、卵殻、牛骨、珊瑚、乳清カルシウム、及び海草カルシウムなどがあるが、このような水に不溶なカルシウム素材では、カルシウムイオンが殆ど遊離のイオンにならない。また、このような無機のカルシウム化合物を主成分とする天然素材は全般的に比重が重く、食品中に分散させる場合には短期間で沈殿して、食品の美観と品質に悪影響を与えるため、その添加量は制限され、多量に使用できないという問題があった。
【0006】
上記のような水に不溶なカルシウム化合物を水に安定に懸濁させることが試みられてきており、例えば、炭酸カルシウムを親水性のエマルジョン化剤で処理する方法(特許文献1参照)、やや水溶性のカルシウム塩を酸素酸と共に攪拌して平均粒度1μmのカルシウム塩を製造し、ついで、生成したカルシウム塩に親水性のエマルジョンを加える方法(特許文献2参照)、及び高圧均質機で炭酸カルシウムをエマルジョン化剤で処理して、その混合物を水中に微分散させる方法(特許文献3参照)がある。特許文献2の方法によってやや水溶性のカルシウム塩が水中に微分散されるときには沈降速度は遅くなるけれども、この方法でもやはり、一定時間の放置後には沈殿が生じて、その沈殿を再び懸濁状態に戻すことは困難である。
【0007】
天然のカルシウム素材の水中分散性を改善する目的で、天然の乳清カルシウムを粉砕機で超微粉砕した後、表面コーティングすることによって、水を加温しなくても冷水に直ちに溶け、沈殿を起こさない乳清カルシウムの高分散性組成物の製造方法(特許文献4参照)が更に報告されている。また、1〜3重量%のクエン酸を含有する食酢に、貝殻を水洗して乾燥した後、粉砕して得た貝殻粉末を溶解することによって、ミネラル分を1.5重量%以上含有する貝殻溶解液を製造する方法(特許文献5参照)が提案されている。
【特許文献1】特公平2−31942号公報
【特許文献2】特開平8−10772号公報
【特許文献3】特開平8−205820号公報
【特許文献4】特開2004−55659号公報
【特許文献5】特許第3645545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような問題のない天然カルシウム素材の懸濁液及びその製造方法、すなわち水中で安定した分散性を示す天然カルシウム素材の懸濁液及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記のような課題に鑑みて種々研究を重ねた結果、
貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨のような天然のカルシウム素材の水性懸濁液を製造するに当たり、このような天然のカルシウム素材を微粉砕して、この微粉砕された微粉末と増粘多糖類のiota(ι)カラギーナンとを混合し、その混合物を水に添加・混合すると、長期間にわたって安定した分散性を示し、分散性を失って沈殿を生じた後でも、冷水においても攪拌によって分散性の高い懸濁液に容易に戻る優れた再分散性を発揮する水性懸濁液を生ずること、を見い出した。
特に、天然のカルシウム素材を平均粒径1〜60μmの粒度に微粉砕して、この微粉砕された微粉末と増粘多糖類のiotaカラギーナンとを5:3〜6の重量比で混合し、その混合物1.25〜1.875重量部に対し水100重量部を加えて、その両者をミキサーで攪拌混合することが好ましいこと、を見い出した。
【0010】
本発明は、このような知見に基づいて発明されたもので、下記天然のカルシウム素材の水性懸濁液及びその製造方法である。
(1) 天然のカルシウム素材の水性懸濁液であって、微粉砕した天然のカルシウム素材の微粉末とiotaカラギーナンとの混合物が水に添加・混合されてなることを特徴とする天然のカルシウム素材の水性懸濁液。
(2) 天然のカルシウム素材の水性懸濁液であって、平均粒径1〜60μmの粒度に微粉砕した天然のカルシウム素材の微粉末とiotaカラギーナンとが5:3〜6の重量比で混合され、その混合物1.25〜1.875重量部が水100重量部に添加・混合されてなることを特徴とする天然のカルシウム素材の水性懸濁液。
(3) 天然のカルシウム素材が貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨であることを特徴とする(1)〜(2)項のいずれか1項に記載の天然のカルシウム素材の水性懸濁液。
(4) 天然のカルシウム素材が未焼成のものであることを特徴とする(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の天然のカルシウム素材の水性懸濁液。
(5) 天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法であって、微粉砕した天然のカルシウム素材の微粉末とiotaカラギーナンとの混合物を水に添加・混合することを特徴とする天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法。
(6) 天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法であって、平均粒径1〜60μmの粒度に微粉砕した天然のカルシウム素材の微粉末とiotaカラギーナンとを5:3〜6の重量比で混合し、その混合物1.25〜1.875重量部に対し水100重量部を加えて、その両者をミキサーで攪拌混合することを特徴とする天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法。
(7) 天然のカルシウム素材として貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨を用いる(5)〜(6)項のいずれか1項に記載の天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法。
(8) 天然のカルシウム素材として未焼成のものを用いることを特徴とする(6)又は(7)項に記載の天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法。
(9) 獣、魚又は鳥の骨として焼成されたものを用いることを特徴とする(6)又は(7)項に記載の天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水中で、一般に3日間〜1週間に及ぶような長期間にわたって安定した分散性を示し、また冷水においても簡単な攪拌によって分散性の高い懸濁液に容易に戻る優れた再分散性を発揮し、しかも風味にも優れた、カルシウムを高濃度に含む、種々の食品や飲料に添加するのに適した水性懸濁液が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において使われる天然のカルシウム素材とは、一般に、いずれも焼成されていない(未焼成)か又は焼成された、ホタテ、牡蠣又はアコヤ貝などの貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻、牛又は豚などの獣、種々の魚もしくは鳥の骨など、天然に産する、炭酸カルシウム又は種々の燐酸カルシウムのような水に不溶性のカルシウム化合物に富んで、飲食品として摂取するのに差し支えない材料を指している。
【0013】
本発明において上記の天然カルシウム素材を微粉砕するには、それを洗浄、殺菌、乾燥、あるいは場合により焼成した後、カッターミル、ハンマーミル、ローラルミル又はクラッシャなどの粗砕機、100〜500μmに粉砕するロータリーカッタ.などの中砕機及びボールミル、ジェットミル又はサイクロンミルなどの微粉砕機が必要に応じて適宜の順で用いられる。
【0014】
本発明では増粘多糖類としてiotaカラギーナンが用いられるが、場合により、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、トラカントガム、キサンタンガム、プルラン、カシアガム、アラビノガラクタン、スクレロガム、iotaカラギーナン以外のカラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、タラガム、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸ソーダ又ははタマリントガム並びに結晶セルロースもしくはデキストリンのような炭水化物のような増粘多糖類、又はカゼインもしくはカゼインソーダなどのタンパク質、グリセリン脂肪酸エステルもしくはポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、レシチン又はプロピレングリコールアルギン酸エステル、あるいはこれらの1種又は2種以上の混合物を、前記のiotaカラギーナンと併せて添加して用いてもよい。
【0015】
本発明方法によって天然カルシウム素材の水性懸濁液を製造するに当たって、天然カルシウム素材とiotaカラギーナンとの最適の混合比、水100mlに加える天然カルシウム素材とiotaカラギーナンとの混合物の最適の割合を見い出すために次の実験を実施した。
【0016】
炭酸カルシウムを主成分とするホタテ貝殻を洗浄、殺菌、乾燥した後に、これをジェットミルで微粉砕することによって、平均粒径1.83μm(500メッシュパス95%以上の粒径)の微粉末とする。
【0017】
炭酸カルシウムを主成分とするホタテ貝殻を洗浄、殺菌、乾燥した後に、これをジェットミルで微粉砕することによって、ホタテ貝殻を平均粒径1.83μm(500メッシュパス95%以上の粒径)を有する未焼成の微粉末とする。
【0018】
同様に、炭酸カルシウムを主成分とする卵殻を洗浄、殺菌、乾燥した後に、これをジェットミルで微粉砕することによって、卵殻を平均粒径1.40μm(700メッシュパス95%以上の粒径)を有する未焼成の微粉末とする。
【0019】
同様に、炭酸カルシウムを主成分とするイシサンゴ目(Scleractinia)の造礁珊瑚を洗浄、殺菌、乾燥した後に、これをサイクロンミルで微粉砕することによって、珊瑚を平均粒度1.45μm(700メッシュパス95%以上の粒度)を有する未焼成の微粉末とする。
【0020】
同様に、燐酸水素カルシウムを主成分とするウグイスガイ科アコヤガイ(Pinctada fucata)のから真珠の核を除いて得られた真珠層を洗浄、殺菌、乾燥した後に、これをサイクロンミルで微粉砕することによって、真珠層を平均粒度1.49μm(700メッシュパス95%以上の粒度)を有する未焼成の微粉末とする。
【0021】
同様に、リン酸カルシウムを主成分とする魚骨を洗浄、殺菌、乾燥した後に、これをサイクロンミルで微粉砕することによって、平均粒度1.50μm(700メッシュパス95%以上の粒度)を有する魚骨の未焼成の微粉末とする。
【0022】
同様に、上記の魚骨微粉末.を洗浄、殺菌、乾燥して電気炉で焼成した後、これをジェットミルで微粉砕することによって、魚骨を平均粒径1.38μm(700メッシュパス95%以上の粒度)を有する焼成微粉末とする。
【0023】
以上のようにしてそれぞれ製造された未焼成のホタテ貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻及び魚骨並びに焼成した魚骨の各微粉末に対して天然増粘多糖類であるκ、δカラギーナンもしくはiotaカラギーナンのようなカラギーナンを5:3の重量混合比で混合し、その混合物10gに対し蒸留水100mlを加え、その両者を家庭用ミキサーで約2分間攪拌混合する。
【0024】
このようにして、冷水でも直ちに分散できる、天然カルシウム素材微粉末と増粘剤との混合物を製造することができたが、結晶セルロースを用いた場合よりも種々のカラギーナンを用いた場合の方が沈殿の起こり難い、すなわち分散安定性の高い懸濁液が得られ、なかでもiotaカラギーナンを用いた場合には特に高い分散安定性を有する懸濁液が得られることが判った。
【0025】
ホタテ貝殻を上記と同様にジェットミルで微粉砕することによって、平均粒度15μmを有する未焼成のホタテ貝殻微粉末を製造し、このようにして用意された微粉末5gに対しiotaカラギーナンをそれぞれ0g、0.5g、1.0g、2.0g、3.0g、4.0g、5.0g、6.0g及び10g混合して、その混合物に蒸留水500mlを加え、その両者を家庭用ミキサーで約2分間攪拌混合する。得られた懸濁液について観察した結果は下記の表1の通りであった。
【0026】
懸濁液を室温で24時間保存して、その間にカルシウム素材の微粉末が沈降分離する様子を調査した。また、各懸濁液を蒸留水で10倍に希釈したものについても8時間保存して同様に調査した。
【0027】
【表1】

【0028】
以上の結果から、未焼成のホタテ貝殻微粉末ホタテ貝殻5gに対して3〜6gの割合でiotaカラギーナンを混合すれば、長時間沈殿を起こさないで安定した懸濁液が得られることが判る。
【0029】
アルカリ性を示す魚骨を電気炉で焼成した後、ジェットミルで微粉砕することによって平均粒度2.02μmを有する魚骨の焼成微粉末を製造し、このようにして用意された微粉末5gに対しiotaカラギーナンをそれぞれ0g、0.2g、0.5g、1.0g、2.0g、3.0g、4.0g、5.0g及び6.0g混合して、その混合物に蒸留水500mlを加え、その両者を家庭用ミキサーで約2分間攪拌混合する。得られた懸濁液について観察した結果は下記の表2の通りであった。
【0030】
懸濁液を室温で24時間保存して、その間にカルシウム素材の微粉末が沈降分離する様子を調査した。また、各懸濁液を蒸留水で10倍に希釈したものについても8時間保存して同様に調査した。
【0031】
【表2】

【0032】
以上の結果から、焼成した魚骨微粉末5gに対してiotaカラギーナンを3.0混合すれば流動性のある液体となり、また、iotaカラギーナンを4.0混合すれば水よりも僅かに流動性のない液体となり、iotaカラギーナンを5.0混合すれば遙に流動性のない液体となり、そしてiotaカラギーナンを6.0混合すれば全く流動性のないゲルとなって、いずれも微粉末の沈降分離を起こさない安定した懸濁液が得られることが判った。
【0033】
また、以上の結果から、焼成した魚骨微粉末のようなpHが11程度のアルカリ性が高い微粉末でも上記のような割合でiotaカラギーナンを配合すれば、安定した懸濁液が得られることも判った。
以上の結果に基づいて、本発明では、天然のカルシウム素材微粉末とiotaカラギーナンとの重量に基づく混合比を5:3〜6と定めた。
【0034】
また、本発明において天然のカルシウム素材の微粉末の粒度が1μm未満になると、粉砕工程における収量が低くなり、一方その粒度が60μmを超えると、水に対する懸濁性が不良.となり、沈降し易くなることから、本発明では、天然のカルシウム素材微粉末の粒度を1〜60μmと定めた。
【実施例】
【0035】
ついで、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明は勿論これらの実施例に限定されない。
【0036】
実施例1:
ホタテ貝殻をジェットミルで微粉砕することによって、平均粒度15μmを有する未焼成のホタテ貝殻微粉末を製造し、このようにして用意された微粉末100重量部とiotaカラギーナン60重量部とを均一に混合した。その混合物5.0g、7.5g、10.0g、15.0g及び20.0gを採取し、その各々に蒸留水500mlを加え、その両者を家庭用ミキサーで約2分間攪拌混合した。得られた懸濁液を室温で24時間放置して、その分散状態を前記と同様に調査したところ、次の表3に示されるような結果が得られた。
【0037】
【表3】

【0038】
以上の本発明懸濁液1及び2の結果に基づいて、本発明では、天然カルシウム素材微粉末とiotaカラギーナンとの混合物の水100mlに対する混合割合を1.25〜1.875gと定めた。
【0039】
実施例2:
ホタテ貝殻をジェットミルで微粉砕することによって、平均粒度25μmを有する未焼成のホタテ貝殻微粉末を製造し、このようにして用意された微粉末100重量部とiotaカラギーナン60重量部とを均一に混合した。その混合物5.0g、7.5g、10.0g、15.0g及び20.0gを採取し、その各々に蒸留水500mlを加え、その両者を家庭用ミキサーで約2分間攪拌混合した。得られた懸濁液を室温で24時間放置して、その分散状態を前記と同様に調査したところ、次の表4に示されるような結果が得られた。
【0040】
【表4】

【0041】
実施例3:
牡蠣殻(ボレイ)をジェットミルで微粉砕することによって、平均粒度25μmを有する未焼成の牡蠣殻微粉末を製造し、このようにして用意された微粉末100重量部とiotaカラギーナン60重量部とを均一に混合した。その混合物5.0g、7.5g、10.0g、15.0g及び20.0gを採取し、その各々に蒸留水500mlを加え、その両者を家庭用ミキサーで約2分間攪拌混合した。得られた懸濁液を室温で24時間放置して、その分散状態を前記と同様に調査したところ、次の表5に示されるような結果が得られた。
【0042】
【表5】

【0043】
実施例4:
真珠層をジェットミルで微粉砕することによって、平均粒度1.8μmを有する未焼成の真珠層微粉末を製造し、このようにして用意された微粉末100重量部とiotaカラギーナン60重量部とを均一に混合した。その混合物5.0g、7.5g、10.0g及び15.0gを採取し、その各々に蒸留水500mlを加え、その両者を家庭用ミキサーで約2分間攪拌混合した。得られた懸濁液を室温で24時間放置して、その分散状態を前記と同様に調査したところ、次の表6に示されるような結果が得られた。
【0044】
【表6】

【0045】
実施例5:
珊瑚をジェットミルで微粉砕することによって、平均粒度2.5μmを有する未焼成の珊瑚微粉末を製造し、このようにして用意された微粉末100重量部とiotaカラギーナン60重量部とを均一に混合した。その混合物5.0g、7.5g、10.0g、15.0g及び20.0gを採取し、その各々に蒸留水500mlを加え、その両者を家庭用ミキサーで約2分間攪拌混合した。得られた懸濁液を室温で24時間放置して、その分散状態を前記と同様に調査したところ、次の表7に示されるような結果が得られた。
【0046】
【表7】

【0047】
実施例6:
卵殻をジェットミルで微粉砕することによって、平均粒度1.38μmを有する未焼成の卵殻微粉末を製造し、このようにして用意された微粉末100重量部とiotaカラギーナン60重量部とを均一に混合した。その混合物5.0g、7.5g、10.0g、15.0g及び20.0gを採取し、その各々に蒸留水500mlを加え、その両者を家庭用ミキサーで約2分間攪拌混合した。得られた懸濁液を室温で24時間放置して、その分散状態を前記と同様に調査したところ、次の表8に示されるような結果が得られた。
【0048】
【表8】

【0049】
実施例7:
魚骨を電気炉で焼成した後ジェットミルで微粉砕することによって、平均粒度2.02μmを有する焼成済の魚骨微粉末を製造し、このようにして用意された微粉末100重量部とiotaカラギーナン60重量部とを均一に混合した。その混合物5.0g、7.5g、10.0g、15.0g及び20.0gを採取し、その各々に蒸留水500mlを加え、その両者を家庭用ミキサーで約2分間攪拌混合した。得られた懸濁液を室温で24時間放置して、その分散状態を前記と同様に調査したところ、次の表9に示されるような結果が得られた。
なお、貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻の焼成物を本願発明に適用して試験したところ、未焼成のものに比べて、水性懸濁液の安定性が劣っていることが判った。
しかし、獣、及び鳥の骨の焼成物を本願発明に適用して試験したところ、上記魚の骨の焼成物の場合と同様に、それらの未焼成物の水性懸濁液の安定性は良好であることが判った。
【0050】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本願発明により得られた天然カルシウム素材微粉末の水性懸濁液は、長期間にわたって分散性が安定に維持され、また、分散性が失われてカルシウム素材微粉末の分離が起きた後でも、軽度の攪拌によって元の分散性を容易に取り戻すことができるため同水性懸濁液は、様々な食品にカルシウムを強化するために広範囲に、かつ有利に利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然のカルシウム素材の水性懸濁液であって、微粉砕した天然のカルシウム素材の微粉末とiotaカラギーナンとの混合物が水に添加・混合されてなることを特徴とする天然のカルシウム素材の水性懸濁液。
【請求項2】
天然のカルシウム素材の水性懸濁液であって、平均粒径1〜60μmの粒度に微粉砕した天然のカルシウム素材の微粉末とiotaカラギーナンとが5:3〜6の重量比で混合され、その混合物1.25〜1.875重量部が水100重量部に添加・混合されてなることを特徴とする天然のカルシウム素材の水性懸濁液。
【請求項3】
天然のカルシウム素材が貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の天然のカルシウム素材の水性懸濁液。
【請求項4】
天然のカルシウム素材が未焼成のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の天然のカルシウム素材の水性懸濁液。
【請求項5】
天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法であって、微粉砕した天然のカルシウム素材の微粉末とiotaカラギーナンとの混合物を水に添加・混合することを特徴とする天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法。
【請求項6】
天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法であって、平均粒径1〜60μmの粒度に微粉砕した天然のカルシウム素材の微粉末とiotaカラギーナンとを5:3〜6の重量比で混合し、その混合物1.25〜1.875重量部に対し水100重量部を加えて、その両者をミキサーで攪拌混合することを特徴とする天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法。
【請求項7】
天然のカルシウム素材として貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨を用いる請求項5〜6のいずれか1項に記載の天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法。
【請求項8】
天然のカルシウム素材として未焼成のものを用いることを特徴とする請求項6又は7に記載の天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法。
【請求項9】
天然のカルシウム素材として獣、魚又は鳥の骨の焼成されたものを用いることを特徴とする請求項6又は7に記載の天然のカルシウム素材の水性懸濁液の製造方法。