説明

天然羽毛を袋に入れた建物断熱材

【課題】 環境負荷の少なく、施工がしやすい自然素材の建物断熱材を提供する
【解決手段】 中性洗剤またはオゾンで洗浄された天然羽毛を、防虫・難燃化するためにホウ酸化合物と混ぜ、縫い代をタッカー留めに使用する形状の布等を袋状にしたものに詰め、建物の断熱材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物断熱材に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の断熱に使われている材料の使用割合は、2000年3月時点で非自然素材のもので98.5%(内訳:グラスウール64.2%とロックウールで9.4%、発泡プラスチック系が24.9%)であり、残り1.5%が自然素材系である。自然素材系の約半分となる0.7%をセルロースファイバーが占めている。(非特許文献1参照)
自然素材系といわれるものには、木質繊維、セルロースファイバー、植物繊維、炭化コルク、羊毛等がある(非特許文献2参照)。これらの自然素材系をより細かく、非特許文献3に示されている。また、インターネットで各種建材を扱う主なサイトとして、「archimap」「dbnet」がある。これらの文献や先の2つのサイトにおいて、2004年7月現在では、羽毛を用いた断熱材は掲載されていない。
先行出願されたものでは、「天然羽毛繊維断熱材」があり、羽毛の繊維を利用する断熱材を開発されている。(特許文献1参照)
【0003】
【非特許文献1】著作:西方里見 文献名:「外断熱」が危ない! 発行社:エックスナレッジ 2003年2月20日第3刷発行 P.157
【非特許文献2】著作:野池政宏 文献名:建築知識 2004年6月号 発行社:エックスナレッジ 2004年6月1日発行 P.168 記事名:自然素材断熱材の選び方
【非特許文献3】非特許文献1のP.171
【特許文献1】特許公開2002−054066
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
日本では、建物の断熱に非自然素材が98.5%使われており、環境に対する負荷が高い素材が主流である。
最も普及しているグラスウールを用いた充填断熱の内部結露の実験結果として、防湿フィルム付きグラスウールで内部結露を発生させており(非特許文献4参照)、素材そのものや工法に改良が必要な状況にある。
非自然系素材の建物断熱材は、室内側と室外側の湿度と気温の変化により結露発生させる。壁内結露を防ぐため、室内側には防湿シート、室外側には外壁通気層が必要となる。(非特許文献1P.50参照)。また、24時間換気をして室内側の湿度を強制的に制御する方法もある。施工中には防湿シートが破れないよう、隙間なく張る必要があり、施工に十分な注意を要する。
一方、自然素材は吸放湿性があり、素材そのものが結露しにくい(非特許文献2P.169参照)ため、高度の気密化は不要となり、施工の際、防湿シートが不要(非特許文献1 P.116参照)であり、環境負荷も少なく、優れた素材である。
最も自然素材として普及しているセルロースファイバーの現場吹き込み工法では、室内側に防水透湿シートが不要で、隙間なく充填できるなどのメリットは多いが、工法が特殊であり専門業者にて施工する必要があり、ほかの断熱材に比べ割高である(非特許文献3参照)。
本発明では、安価で精度の高い施工が容易な自然素材の断熱材を提供するものである。
【0005】
【非特許文献4】著作:藤本哲夫・黒木勝一 文献名:建材試験情報 2003年2月号 Vol.39号 発行:財団法人建材試験センター 2003年2月発行 P.10 記事名:木造軸組断熱工法における結露に関する実験的研究
【課題を解決するための手段】
【0006】
【請求項1】
洗浄された天然羽毛を、袋に詰めた建物の断熱材。
【請求項2】
洗浄された天然羽毛にホウ酸化合物を混ぜあわせた請求項1の建物の断熱材。
【請求項3】
生地を袋状にするときの縫い代を、現場での施工時に留めるために利用する形状を特徴とする請求項1の建物の断熱材。
【発明の効果】
【0007】
(イ) 食肉用に飼育されている鳥類の羽毛の多くは、廃棄されており、その羽毛を利用することで、廃棄物が減る。羽毛布団では、保温性能のほかに、軽さ、生地を通した肌触り等が製品開発の重要な側面であるが、建物用断熱材の場合、軽さや肌触りの考慮はほとんどなく、羽毛布団では使い物にならない素材を活用できる。
(ロ) 特殊な工法でなく、既存に普及している充填断熱工法(図7)とすることで、現在断熱を施工している大工や内装工で施工が可能になり、安価になる。自然素材の断熱材の普及し、環境負荷の軽減につながる。
(ハ) 自然素材そのものであり、結露が発生しにくく、結露防止のための室内側の防水透湿シートの施工が不要になる。(一晩でコップ1杯の程度の水分を排出していると言われている人間が羽毛布団を使用していても結露しない。)
(ニ) 密封性の高い梱包をし、空気を抜くことで、体積を減らせ、一般の断熱材に比べ輸送時のコストを減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の製造工程を示す。(図1参照)
(イ) 羽毛に含まれる油分については、撥水性を利用するためとらず、なるべく匂いと汚れだけを取るため、中性洗剤やオゾンなどで洗浄し、乾燥するステップ。
(ロ) 乾燥させた羽毛を選別するステップ。
(ハ) 羽毛にホウ酸やホウ酸化合物を混ぜ、防虫・難燃化するステップ。使用のされ方により、本工程が不要の場合もある。
(ニ) 綿などの生地を難燃化するステップ。使用のされ方により、本工程が不要の場合もある。
(ホ) 生地の縫い代(q)を2cm程度とし、一部を縫わず羽毛を入れる口とする部分を除き周囲を縫うステップ。縫い代を現場施工時に利用するため、袋の中側を裏がえさない。
(ヘ) 生地袋に防虫・難燃化した羽毛をつめ、生地袋の開口部を縫い、閉じるステップ。
【0009】
以下に本発明の形態について示す。
(ト) 大きさの一例として、幅30cm程度・長さ90cm程度・厚さ10cm程度する(図2参照)。長さ方向には30cm程度ごとに中の羽毛が移動しないよう生地と同素材の間仕切り(p)を設ける。
(チ) 素材そのものが軽量であり、羽根の心材(ファイバー)があることにより、隙間なく十分に充填することで沈下のための対策は不要となり、間仕切りを作らないこともある。
(リ) 縫い代(q)を使い、躯体などにタッカーや釘やテープや接着剤などで、所定の位置に断熱材を留め、施工中ずれることがなくなり、施工性を上げることができる。
(ヌ) 役物の大きさは幅10cm程度・長さ30cm程度・厚さ10cmとする。(図5参照)羽毛の断熱性能や建物の構造により、寸法を変える。
(ル) 天然羽毛を入れる布については、自然素材である綿が最も望ましいが、ポリエステルなのどの石油を原材料にするものであっても、布でなくメッシュ状態のものであっても、可能である。
【0010】
以下に本発明の使用例を示す。
(ヲ) 壁の施工例としては、間柱などの部材に本発明品の縫い代(q)を使い、所定の位置にタッカーなどで止める(図6・7参照)。その後、室内側の石膏ボード(h)、クロス(i)を順に仕上げる。
(ワ) 床の施工例として、根太などの部材に本発明品の縫い代(q)を使い、所定の位置にタッカーなどで止める(図8参照)。その後、室内側の合板(k)、フローリング(j)を順に仕上げる。
(カ) ちょうど羽毛布団の状態の断熱材であり、充填箇所に押し込めるため、採寸・切断などの加工が不要で、施工時間の短縮と施工精度が向上する。筋換えがある場合に特に有効となる。詰め込むことで、寸法の調整が済むため、一般の断熱材のように各種寸法の製品をそろえる必要がない。繊維系の断熱材の一部では、繊維方向に対して垂直方向には、圧縮可能で切断調整不要のものがあるが、本発明では、どの方向に対しても切断調整不要である。
(ヨ) サッシュ周りなどの、細かい箇所には、役物用の細く短いもの(図5)をつめればよく、採寸、切断の必要がなく、施工が早い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】製造工程フローチャート
【図2】本発明の斜視図
【図3】本発明のA−A断面図
【図4】本発明のB−B断面図
【図5】本発明の役物の斜視図
【図6】本発明の壁使用例説明図
【図7】本発明の壁使用例断面図
【図8】本発明の床使用例断面図
【符号の説明】
【0012】
a サイディング
b 竪胴縁
c 通気層
d 気密透湿合板
e 間柱
f 天然羽毛
g タッカー
h 石膏ボード
i クロス
j フローリング
k 合板
l 根太
m 大引
o 布袋
p 仕切り
q 縫い代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄された天然羽毛を、袋に詰めた建物の断熱材。
【請求項2】
洗浄された天然羽毛にホウ酸化合物を混ぜあわせた請求項1の建物の断熱材。
【請求項3】
袋状にするときの縫い代を、現場での施工時に留めるために利用する形状を特徴とする請求項1の建物の断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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