説明

天窓用防虫装置

【課題】簡易な構成で低コストで取り付け可能なものでありながら、防虫ネットの天窓と窓枠との間からのはみ出しを確実に防止する。
【解決手段】はみ出し防止手段として、防虫ネット30の一端30aから他端30bに至るまでの間の中途に係合される係合部40aを備え、該防虫ネット30を係合位置から内方に引き込むように付勢するコイルスプリング40を有する。従って、天窓20を閉じていくと、防虫ネット30は、略中央部が内方に引っ張られた状態になっているため、天窓20の開口端縁20bが接近する他方の長手方向骨組み材11の内側に折りたたまれるように収容される。この結果、防虫ネット30は、天窓20と窓枠との隙間からはみ出ることなく収容されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室に設けられる天窓用防虫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、温室の天窓開口部に巻き取りロールを設け、この巻き取りロールに防虫ネットを巻き取り支持し、天窓の開閉動作に同期する巻き取りロール駆動手段を設けて、防虫ネットを天窓の開閉動作に合わせて巻き取り又は巻き戻しする装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−187578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の装置によれば、天窓を閉じる際には、巻き取りロールによって防虫ネットが巻き取られていくため、天窓を閉じた際に、天窓と窓枠との間から防虫ネットがはみ出た状態で閉じられてしまうようなことはない。しかしながら、かかる構成では、巻き取りロール、該巻き取りロールの駆動手段、天窓の開閉動作に同期させる手段等を設ける必要があり、構造が複雑で設置コストも高い。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、簡易な構成でかつ低コストで取り付け可能なものでありながら、防虫ネットの天窓と窓枠との間からのはみ出しを確実に防止できる温室の天窓用防虫装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、一端が温室の天窓の開口端縁付近に係合され、他端が該天窓の窓枠付近に係合されて配設され、天窓の開放動作に伴って展張される防虫ネットを備えた温室の天窓用防虫装置であって、
前記天窓を閉じる際に、前記防虫ネットが天窓と窓枠との隙間から外部にはみ出ることを防止するはみ出し防止手段を備えていることを特徴とする天窓用防虫装置を提供する。
請求項2記載の本発明では、前記はみ出し防止手段は、前記防虫ネットの一端から他端に至るまでの間の中途に係合される係合部を備え、常態において、該防虫ネットを天窓の開口端縁よりも内方に引き込むように付勢する弾性部材を有してなることを特徴とする請求項1記載の天窓用防虫装置を提供する。
請求項3記載の本発明では、前記弾性部材は、一端に前記係合部が設けられ、他端が、天窓の内側であって、天窓の開放動作の回転中心付近に位置する骨組み材に支持されてなるコイルスプリングから構成され、適宜間隔をおいて複数配設されていることを特徴とする請求項2記載の天窓用防虫装置を提供する。
請求項4記載の本発明では、前記防虫ネットの周囲に帯状部材が付設されており、前記弾性部材の係合部が該帯状部材に係合されていることを特徴とする請求項2又は3記載の天窓用防虫装置を提供する。
請求項5記載の本発明では、前記はみ出し防止手段は、一端が、前記防虫ネットの一端側が係合されている天窓の開口端縁付近に連結され、他端が、前記防虫ネットの他端側が係合されている位置よりも内方を通過して垂れ下げられた紐状部材を備えてなることを特徴とする請求項1記載の天窓用防虫装置を提供する。
請求項6記載の本発明では、前記紐状部材の他端が、前記防虫ネットの他端付近を貫通し、窓枠よりも内方に位置するように垂れ下げられていることを特徴とする請求項5記載の天窓用防虫装置を提供する。
請求項7記載の本発明では、前記紐状部材が金属製線材からなることを特徴とする請求項5又は6記載の天窓用防虫装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、はみ出し防止手段を備えているため、防虫ネットを巻き取りロールに巻き取り支持させる必要はなく、簡易な構成で、はみ出しを防止できる。特に、はみ出し防止手段として、防虫ネットの一端から他端に至るまでの間の中途に係合される係合部を備え、該防虫ネットを係合位置から内方に引き込むように付勢する弾性部材を用いることにより、簡易かつ低コストでありながら、確実に防虫ネットのはみ出しを防止できる。同様に、一端が天窓の開口端縁付近に連結され、他端が防虫ネットの他端側の係合位置よりも内方を通過して垂れ下げられる紐状部材を用いても、簡易かつ低コストで防虫ネットのはみ出しを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に示した実施の形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の一の実施形態に係る天窓用防虫装置を示す図である。図において、符号10は、温室の幅方向に沿ってアーチ形等に配設される骨組み材であり、符号11は、温室の長手方向に沿って配設され、上記骨組み材10に固定される長手方向骨組み材である。長手方向骨組み材11は、温室の幅方向に互いに略平行に複数本配設され、天井付近に配設された2本の長手方向骨組み材11間において、外被フィルムが設けられていない開口部12が形成されている。天窓20は、この開口部12を開閉するために設けられる。
【0008】
本実施形態においては、天窓20は、その基端部20aが、一方の長手方向骨組み材11にヒンジ機構15を介して連結支持されており、該基端部20aを中心として、反対側の端部(開口端縁)20bが他方の長手方向骨組み材11に離接可能になっている。従って、上記各長手方向骨組み材11は、天窓20の窓枠として機能する。また、温室の幅方向に沿ってアーチ形等に配設される骨組み材10も、天窓20の長手方向端部側においては、窓枠として機能する。
【0009】
天窓20の開口端縁20b付近であって、該開口端縁20bよりもやや内側寄りには、防虫ネット係合部材21が設けられており、該防虫ネット係合部材21に、防虫ネット30の一端(上端)30aが係合される。防虫ネット30の他端(下端)30bは、窓枠を構成する他方の長手方向骨組み材11に隣接して開口部12側に配設した防虫ネット係合部材13に係合される。防虫ネット30は、天窓20を最も開口させた状態で、2つの防虫ネット係合部材21,13間に掛け渡される長さ(幅)を備えたものであって、害虫の侵入を防ぐことができる網目を有するものであれば、どのようなものであってもよい。
【0010】
防虫ネット30の一端30aから他端30bまでの中途において、好ましくは、一端30aから他端30bまでの略中央部に、はみ出し防止手段としての弾性部材であるコイルスプリング40の一端に設けられた係合部40aが係合される。コイルスプリング40の他端40bは、一方の長手方向骨組み材11付近に連結されている。従って、コイルスプリング40の弾性力により、防虫ネット30の略中央部は、常態において内方に引き込まれる方向に付勢されている。コイルスプリング40は天窓20の長手方向に沿って所定間隔毎に複数配設される。なお、防虫ネット30は、天窓20を開放したときに、天窓20の長手方向端部と温室の幅方向に沿ってアーチ形等に配設された骨組み材10との間に生じる略三角形状の端面開口部も被覆し得るように配設される。従って、防虫ネット30のうち、この端面開口部を被覆している略三角形状部30aの中途にも、他のコイルスプリング(図示せず)などを配設してその係合部を係合させる構成とすることが好ましい(図3参照)。
【0011】
上記構成からなる本実施形態の天窓用防虫装置は、図1(b)の状態から図1(a)に示したように天窓20を開放動作させると、防虫ネット30の一端30aが天窓20に設けた防虫ネット係合部材21に連結されているため、一端30aが天窓20の開口端縁20bと共に上昇し、展張される。このとき、防虫ネット30の略中央部には、コイルスプリング40の係合部40aが係合されているため、該防虫ネット30は、略中央部から内方に引き込まれる方向に付勢されていることになる。一方、図1(a)の開放状態から図1(b)に示した方向に天窓20を閉じていくと、防虫ネット30は、略中央部が内方に引っ張られた状態になっているため、天窓20の開口端縁20bが接近する他方の長手方向骨組み材11の内側に折りたたまれるように収容される。具体的には、図2に示したように、長手方向骨組み材11と開口端縁20bよりも内方寄りに設けた防虫ネット係合部材21との間に形成される空間A内に折りたたまれるように収容されていく。この結果、防虫ネット30は、天窓20と窓枠(他方の長手方向骨組み材11等)との隙間からはみ出ることなく収容されることになる。
【0012】
上記した説明では、コイルスプリング40の係合部40aを、防虫ネット30の略中央部に直接係合させているが、図3に示したように、防虫ネット30の略中央部において、防虫ネット30の周囲を取り囲むように帯状部材45を設け、この帯状部材45にコイルスプリング40の係合部40aを係合する構成とすることもできる。帯状部材45としては、紐部材、ゴム等を用いることができるが、このような帯状部材45を設けることにより、隣接して配置したコイルスプリング40間に位置する防虫ネット30の一部も弛ませることなくより確実に収容することができる。また、防虫ネット30のうち、天窓20を開放した際に生じる端面開口部を被覆している略三角形状部30aも、帯状部材45によって取り囲むことにより、略三角形状部30aを収納するための専用のコイルスプリングを設けることなく、略三角形状部30aのはみ出しを防止できる。
【0013】
なお、天窓20を開閉させる手段は任意である。図1及び図2では、ラック25を天窓20に連結させて開閉する手段を示しているが、これはあくまで一例であり、本発明にとって天窓20の開閉手段は何ら限定されるものではない。
【0014】
図4及び図5は本発明の他の実施形態を示す図である。天井部の頂部側に位置する一方の長手方向骨組み材11付近にヒンジ機構15を設け、天窓20の基端部20aを該ヒンジ機構15に支持させて、反対側の端部(開口端縁)20bが上下に開閉可能になっている点、並びに、天窓に設けた防虫ネット係合部材21に防虫ネット30の一端(上端)30aが係合され、窓枠を構成する他方の長手方向骨組み材11に隣接して設けた防虫ネット係合部材13に該防虫ネット30の他端(下端)30bが係合されている点は上記実施形態と同様であるが、はみ出し防止手段の構成が異なる。すなわち、本実施形態では、はみ出し防止手段として、針金等からなる紐状部材50を用いている。但し、紐状部材50は、防虫ネット30が外側にはみ出すことを抑える必要があるため、防虫ネット30に押されて外側に大きく撓んだりすることのない、ある程度の剛性がある針金等の金属製線材を用いることが好ましい。
【0015】
紐状部材50は、一端50aが略U字状に折り曲げられ(図5参照)、その他の部分は他端50bを含めてほぼ直線状に形成されている。略U字状に折り曲げられた一端50aは、防虫ネット30の一端30aと共に、天窓20の開口端縁20b付近にに設けた防虫ネット係合部材21内に係合され、他端50bは、防虫ネット30の他端30bが係合されている位置よりも内方を通過して垂れ下げられている。他端50bは、窓枠を形成する他方の長手方向骨組み材11よりも内方であって、開口部12内に垂れ下がるように配設することが好ましい。このように他端50bが自由端になっていることにより、紐状部材50は、天窓20の開閉位置に拘わらず、一端50aから他端50bに至るまでほぼ直線の形状を維持できる。防虫ネット30の他端30bは、他方の長手方向骨組み材11に隣接する防虫ネット係合部材13に連結されている。このため、紐状部材50の他端50bを他方の長手方向骨組み材11よりも内方に垂れ下げるには、図4に示したように、防虫ネット30の他端30b付近を貫通させて配設する。なお、該紐状部材50は、適宜間隔ごとに複数配設される。
【0016】
本実施形態によれば、紐状部材50は、図4(a)に示したように、天窓20の開放状態では、他端50b付近を除いた部分が、防虫ネット30よりも外側に位置する。従って、図4(a)に示した状態から、天窓20を閉じていくと、防虫ネット30が外方に撓んだとしても、紐状部材50に当接して撓みが抑えられる。また、この際、紐状部材50は、他端50bが他方の長手方向骨組み材11よりも内方において固定されずに垂れ下げられており、天窓20を閉じていくと、該他端50bはそのまま下方に移動するため、紐状部材50自体が外方に撓むこともない。この結果、図4(b)及び図5に示したように、天窓20を閉じた状態においては、防虫ネット30は、紐状部材50の内側に折りたたまれるように収納され、外側へのはみ出しが防止される。なお、図4及び図5においては、紐状部材50の一端50aを、防虫ネット30の一端30a付近を貫通させずに、防虫ネット係合部材21に支持させているが、図6に示したように、紐状部材50の一端50aを、防虫ネット30の一端30a付近を貫通させて天窓20に連結することもできる。この場合にも、紐状部材50の一端50a及び他端50b付近を除いた部分が、防虫ネット30よりも外側に位置するため、図4及び図5に示した態様と同様に防虫ネット30のはみ出しを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態にかかる天窓用防虫装置を示す図であって、(a)は天窓開放時の状態を、(b)は天窓閉鎖時の状態を示す図である。
【図2】図2は、天窓閉鎖時の要部を示す図である。
【図3】図3は、防虫ネットの周囲を取り囲むように帯状部材を設けた態様を示す図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態にかかる天窓用防虫装置の要部を示す図であって、(a)は天窓開放時の状態を、(b)は天窓閉鎖時の状態を示す図である。
【図5】図5は、天窓閉鎖時の要部を示す図である。
【図6】図6は、紐状部材の取りつけ方の他の例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0018】
10 骨組み材
11 長手方向骨組み材
12 開口部
20 天窓
20b 開口端縁
30 防虫ネット
50 紐状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が温室の天窓の開口端縁付近に係合され、他端が該天窓の窓枠付近に係合されて配設され、天窓の開放動作に伴って展張される防虫ネットを備えた温室の天窓用防虫装置であって、
前記天窓を閉じる際に、前記防虫ネットが天窓と窓枠との隙間から外部にはみ出ることを防止するはみ出し防止手段を備えていることを特徴とする天窓用防虫装置。
【請求項2】
前記はみ出し防止手段は、前記防虫ネットの一端から他端に至るまでの間の中途に係合される係合部を備え、常態において、該防虫ネットを天窓の開口端縁よりも内方に引き込むように付勢する弾性部材を有してなることを特徴とする請求項1記載の天窓用防虫装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、一端に前記係合部が設けられ、他端が、天窓の内側であって、天窓の開放動作の回転中心付近に位置する骨組み材に支持されてなるコイルスプリングから構成され、適宜間隔をおいて複数配設されていることを特徴とする請求項2記載の天窓用防虫装置。
【請求項4】
前記防虫ネットの周囲に帯状部材が付設されており、前記弾性部材の係合部が該帯状部材に係合されていることを特徴とする請求項2又は3記載の天窓用防虫装置。
【請求項5】
前記はみ出し防止手段は、一端が、前記防虫ネットの一端側が係合されている天窓の開口端縁付近に連結され、他端が、前記防虫ネットの他端側が係合されている位置よりも内方を通過して垂れ下げられた紐状部材を備えてなることを特徴とする請求項1記載の天窓用防虫装置。
【請求項6】
前記紐状部材の他端が、前記防虫ネットの他端付近を貫通し、窓枠よりも内方に位置するように垂れ下げられていることを特徴とする請求項5記載の天窓用防虫装置。
【請求項7】
前記紐状部材が金属製線材からなることを特徴とする請求項5又は6記載の天窓用防虫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−111041(P2007−111041A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253685(P2006−253685)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(390010814)株式会社誠和 (31)
【Fターム(参考)】