説明

太陽光利用の給電システム

【課題】 この発明は、太陽光発電におけるエネルギー貯蔵を合理化することを目的としたものである。
【解決手段】 この発明は、太陽光発電手段と、これにより生じた電気の貯蔵手段及び前記発電手段による電気を用いた水の電気分解手段と、該電気分解手段により生じた水素と酸素の貯蔵手段と、前記水素と酸素を用いた燃料電池手段と、該燃料電池手段の出力を交流に変換する交流変換手段とを組み合せたことを特徴とする太陽光利用の給電システムにより、目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽光を利用して、常時必要量の交流給電することができるようにした太陽光利用の給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来太陽光発電は実用に供せられると共に、その特性により利用度及び発電効率は年々改良され、向上している。
【0003】
また太陽光発電量の調節に蓄電池を用いることも一般的に行われており、太陽光発電のできない時のエネルギー蓄積手段として実用化され、成果をあげている。
【0004】
次に、燃料電池については幾多の研究があり、実用に供せられている。
【特許文献1】特開2001−13090
【特許文献2】特許第3294088号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の技術において、太陽光発電はクリーンであり、無限のエネルギー供給源が約束されている反面、光エネルギーを電気エネルギーに変える変換効率による電気エネルギーの単価の上昇があること、及び1日の稼働時間が少ない(例えば、長くとも1日の3分の1しか稼動できず、かつ曇天、降雨などの際の発電量の激減)問題点があって、安定した電力供給は困難とされていた。然して、前記変換効率の改善により実用化が進展したが、なお無変換時の対応が蓄電池だけに依存する問題点があった。
【0006】
前記特許文献1の発明は、水素エネルギーの供給装置であり、特許文献2の発明は燃料電池システムであって、前記問題点の一部を解消するものであって、太陽光発電とその利用システムを全面的に改善するものではない。
【0007】
前記従来の発明その他の技術は、一部を満足させることができても、太陽光発電の問題点を根本的に解決するものではないなどの問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、太陽光発電量を必要最大限とし、余剰電気を蓄電すると共に、余剰エネルギーを水素と酸素に変換して貯蔵し、この水素と酸素を必要時に燃料電池で発電させることにより、前記従来にない太陽光発電の効率のよい利用の画期的システムを完成した。
【0009】
即ちこの発明は、太陽光発電手段と、これにより生じた電気の貯蔵手段及び前記発電手段による電気を用いた水の電気分解手段と、該電気分解手段により生じた水素と酸素の貯蔵手段と、前記水素と酸素を用いた燃料電池手段と、該燃料電池手段の出力を交流に変換する交流変換手段とを組み合せたことを特徴とする太陽光利用の給電システムであり、電気の貯蔵手段は電池とし、太陽光発電により水の電気分解に要する電気量より多く発電した際、及び酸素量、水素量の貯蔵が飽和状態になった際、自動制御により電池貯蔵に切り換えるものである。また、燃料電池手段は、電気消費量に対応して燃料電池の出力を制御するものであり、水素と酸素の貯蔵手段は、水の電気分解により生じた水素と酸素から水分を分離すると共に、夫々水素容器及び酸素容器に貯蔵し、前記各容器が満杯になった場合に水の電気分解を中止して、水の電気分解に使用する電気を電池に充電することができるようにしたものである。
【0010】
前記における太陽光発電は、例えば光発電素子よりなる発電パネルを住宅の屋根その他に設置し、要すれば、発電パネル角度を調節容易にしたり、或いは野外に発電塔を建設し、これに効率よく太陽光を受けることができるように、発電パネルを可動的に設置する。太陽光発電用の発電素子の変換効率は逐年改善されている。また野外の集光施設から光を濃縮送光して、工場内で発電させるなどの画期的施設により、発電量を向上させることができる。
【0011】
この発明で採用する水の電気分解装置は、従来使用されている装置を使用することができると共に、新しい構想のもとに、効率のよい電気分解装置を利用する。例えば、供給すべき水に工夫を加える。
【0012】
現在は分解すべき水を電解質にし、磁化水とし、触媒を用い、又は遠赤外線を作用させるなどが考えられるけれども、電極の形状材質に特殊性を与え、特殊構造(同心円筒状、平板の高密度並列状など)にすることを妨げない。要するに、現在知られている最良の電気分解装置を使用する。
【0013】
前記電気分解により生じた水素ガスと、酸素ガスは、流動中に水分を分離し、加圧して容器内へ貯蔵する。例えば、定圧貯蔵タンクに供給し、一定圧(例えば、0.25MPa)とし、蓄積時には圧力を一定にして容量を増加し、消費時には圧力を一定にして容量を減少させる。
【0014】
前記定圧貯蔵タンクの最大容量になった場合には、センサーにより自動制御により水の電気分解装置への給電を自動停止し、蓄電池への蓄電に切り換える。蓄電池の容量が一杯になった場合には、予め契約している売電に切り換え、又は発電を中止する。当然のこと乍ら、前記操作は総て自動切り換えにより行うようにする。
【0015】
前記太陽光発電システムが個人住宅、工場或いは地域別に計画されている場合には、最大、最少の発電量が予測されるので、この予測に基づき蓄電池容量と、水素ガス及び酸素ガスの貯蔵容量を決めることができる。
【0016】
また買電、売電契約しておけば、不慮の事故を生じて給電又は発電不能になった場合でも、電力消費者に迷惑が掛るおそれはないようにすることができる。
【0017】
この発明における燃料電池は、従来使用されている装置を使用することができると共に、各電力使用者の規模、消費特性に合致する装置を開発して可及的かつ合理的システムの完成を期する。
【0018】
この発明で使用する直流−交流変換器は従来使用されている変換器から選定採用する。
【0019】
要するに、この発明は、太陽光利用の給電システムであって、太陽光エネルギーを水素ガスと酸素ガスに変えて蓄積し、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換し、そのまま蓄電と給電していた従来のシステムに改善を加え、エネルギー蓄積に水素ガス及び酸素ガス蓄積を加えることにより、太陽光発電の利用度及び自由度を拡大することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、太陽光発電により得た電気で水を電気分解し、酸素ガスと水素ガスにして容器に貯蔵するので、太陽光が当っている時に発生した多量の電気を水素ガスと酸素ガスに変換してエネルギーを貯蔵することができ、発電時間が短時間であっても、エネルギーを十分保存し、生成された電気の継続使用を可能にした効果がある。
【0021】
また水素ガスのエネルギーを全部電気に変換し、更に電気が必要なときには、蓄電池を使用することができるので、太陽光発電時間が短時間であっても、また発電量に変動があっても定量給電できる効果がある。
【0022】
次にこの発明によれば、太陽光、水、水素ガスと酸素ガスを使用するもので、有害物質の使用がないのみならず、システムが環状に完結される為に安定すると共に、使用物は総て自然物であり、規模の大小に関係なく、無害サイクルになる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明は、屋根などに配置した太陽電池に太陽光の照射によって発電したならば、その電気を利用して純水を電気分解して水素ガスと酸素ガスを発生させ、これを加圧してタンクへ貯蔵する。
【0024】
また水素ガスと酸素ガスを利用し、燃料電池により電気を発生させ、この電気を交流に変換して各種電気器具の電源として使用する。前記水素ガスを全部使用したならば、蓄電池を電源として使用し、太陽光発電ができるまで前記水素ガスの使用及び蓄電池の利用により、継続して送電できるように設計する。
【0025】
前記太陽光発電は、統計利用により年間日照時間を算定し、これによる発電量を計算すると共に、使用側の年間必要電気量を算定すれば、太陽電池の設置面積、蓄電池の容量及び水素ガスの貯蔵量等を算定することができるので、発電量及び必要電気量を予測することにより、前記太陽電池等の規模を定めることができる。
【0026】
実用上は、発電過剰時の売電と、不足時の買電契約をしておけば、予測が外れた場合であっても、電気使用に不測の事態を生じるおそれはない。
【実施例1】
【0027】
この発明の実施例を図1に基づいて説明すると、必要電気量を上廻る(例えば、50%以上)発電量の太陽電池を屋根その他に敷設する。屋根などの面積が不足する際には、発電建造物(例えば、塔など)を作ることも考えられる。次に、通常の使用量を上廻る水の電気分解装置と、蓄電池を設置する。
【0028】
前記水の電気分解装置と、蓄電池は、発電量不足又は発電しない間の給電の為である。
【0029】
即ち太陽光発電中(日照中)は、その発生した電気をそのまま電気器具の入力電源として使用する。従って、通常の日照状態においては、発電量が電気使用量より大きくしてある。そこで余剰電気は蓄電し、又は水を電気分解する電源として使用する。即ち、電気エネルギーを水素ガス、酸素ガスに変換して貯蔵することになる。
【0030】
前記のようにして、1日終了したならば(太陽光が届かなくなる)、まず水素ガスと酸素ガスによる燃料電池で電気を生成し、交流変換してからこの電気を必要な電気器具に送電する。
【0031】
このようにして水素ガスと酸素ガスが無くなったならば、蓄電池を電源とし、交流変換して電気器具に送電する。
【0032】
即ち通常の日照が得られるときの発電量は、必要な電気器具への送電量と、蓄電池への蓄積又は水の電気分解装置への送電ができる量となる。
【0033】
また蓄電池の容量と、水素ガスタンク及び酸素タンクの容量とは、元来太陽光発電ができない場合における電気量を賄うことができる量でなければならない。
【0034】
そこで実施例としては、太陽光発電量は、予測される消費電気量の3倍以上を想定する。前記燃料電池の電気は直流である為に、通常の電気器具の使用電流である交流に変換して使用する。
【0035】
この発明においては、蓄電池の他に、水素ガスと酸素ガスを貯蔵し、電気が不足した場合に前記水素ガスと酸素ガスを燃料電池に用いて発電する。
【0036】
前記のように蓄電池のみならず、水素ガスを貯蔵することによって、エネルギーの蓄積量を飛躍的に増大し、太陽光発電が困難な場合に支障なく送電できるようにしてある。元来蓄電すれば、エネルギー形態を変えなくてもよいので合理的であるが、必要量の蓄電には膨大な電池が必要になるからである。
【0037】
これに対し、水素ガスと酸素ガスの貯蔵と、燃料電池の利用は手軽かつ効率よく達成できるからである。
【0038】
次に図2(a)は、太陽電池の説明図であって、N型シリコン1と、P型シリコン2に太陽光が矢示3のように照射されると、N型シリコン1側が−極4、P型シリコン2側が+極4aとなり、電流は矢示5の方向へ流れるので、外部負荷6で消費される。前記外部負荷に代えて電池を置けば蓄電され、電解質内の電極にすれば、電気分解される。
【0039】
また図2(b)により、燃料電池の原理を図によって説明すると、電池槽7内へ−極8と、+極9とを並列設置し、−極側の入口11から、水素ガスを矢示10のように吹き込み、+極側の入口12から酸素ガスを矢示13のように吹き込み、生成物HOを連続的に除去することにより、前記−極から+極へ電流が流れ、発電する。従って、この電流を交流に変換して一般電気器具の電源として使用する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施例のブロック図。
【図2】(a)同じく太陽電池の説明図、(b)同じく燃料電池の説明図。
【符号の説明】
【0041】
1 N型シリコン
2 P型シリコン
6 外部負荷
7 電池槽
8 −極
9 +極
11、12 入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電手段と、これにより生じた電気の貯蔵手段及び前記発電手段による電気を用いた水の電気分解手段と、該電気分解手段により生じた水素と酸素の貯蔵手段と、前記水素と酸素を用いた燃料電池手段と、該燃料電池手段の出力を交流に変換する交流変換手段とを組み合せたことを特徴とする太陽光利用の給電システム。
【請求項2】
電気の貯蔵手段は電池とし、太陽光発電により水の電気分解に要する電気量より多く発電した際、及び酸素量、水素量の貯蔵が飽和状態になった際、自動制御により電池貯蔵に切り換えることができるようにした請求項1記載の太陽光利用の給電システム。
【請求項3】
燃料電池手段は、電気消費量に対応して燃料電池の出力を制御することを特徴とした請求項1記載の太陽光利用の給電システム。
【請求項4】
水素と酸素の貯蔵手段は、水の電気分解により生じた水素と酸素から水分を分離すると共に、夫々水素容器及び酸素容器に貯蔵し、前記各容器が満杯になった場合に水の電気分解を中止して、水の電気分解に使用する電気を電池に充電することができるようにしたことを特徴とする請求項1記載の太陽光利用の給電システム。

【図1】
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【図2】
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