説明

太陽光発電システム

【課題】 直流電源の発電電力を有効に利用し、確実に単独運転の検出を行う太陽光発電システムを提供することを目的とするものである。
【解決手段】 太陽電池と、該太陽電池が発電した直流電力を交流電力に変換し、且つ商用電力系統と負荷電力系統に接続して系統運転するとともに前記商用電力系統の異常を検出するための信号を前記商用電力系統へ送り、前記商用電力系統の異常を検出しえる電力変換装置を備えた太陽光発電装置を複数設置してなる太陽光発電システムであって、前記太陽光発電装置は他の太陽光発電装置に前記信号に関するタイミングデータを送信する送信部及び、他の太陽光発電装置からの前記信号に関するタイミングデータを受信する受信部とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池等の直流電源から得られる直流電力を交流電力に変換し、前記太陽電池を商用電力系統及び負荷系統に電気的に接続して連系運転を行う太陽光発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽光発電システムについて、図面を基に説明する。
【0003】
近年、太陽電池の出力をインバータにて交流に変換し、商用電力系統と連系する太陽光発電装置が実用化されている。この太陽光発電装置においては、図5に示すように、太陽電池102で発電した直流電力は、電力変換装置103にて例えば交流の200Vに変換され、電力変換装置103と商用電力系統104とは連系接続されている。
【0004】
従来の電力変換装置103は、太陽電池102で発電された直流電力を太陽電池102の電圧と異なる電圧に変換する直流電圧変換回路111と、直流電圧変換回路111にて変換された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路112とから構成されており、太陽電池102で発電された最大直流電力を交流電力出力に変換し、負荷105と商用電力系統104に接続して連系運転を行っている(最大出力追従制御)。
【0005】
ここで、電力変換装置103はリレー等の開閉器113を有し、停電等で商用電力系統104に異常がある場合には、安全かつ速やかに復旧作業が行えるように即座に電力変換を停止し開閉器113を遮断し、商用電力系統104と解列させる手段がとられている(単独運転検出機能)。
【0006】
このような単独運転を検出するための手段としては、受動的方式と能動的方式があり、検出精度を高めるためにこれらを組み合わせることが求められている。一般的に受動的方式には、系統の電圧位相の急変を検出する電圧位相跳躍検出方式、系統の3次高調波の急増を検出する3次高調波電圧歪検出方式、系統の周波数の急変を検出する周波数変化率検出方式等があり、能動的方式には、出力電圧に周波数バイアスを周期的に与える周波数シフト方式、出力の有効電力を周期的に変動させる有効電力変動方式、出力の無効電力を周期的に変動させる無効電力変動方式等がある。
【0007】
しかしながら、単独運転検出については個々の太陽光発電装置が各々の制御(タイミング)で検出を行っているものであり、複数の太陽光発電装置が近接している場合においては、例えば同一の能動的方式にて制御を行っているにもかかわらず、制御タイミングが合っていないためにお互いの変動効果が相殺されてしまい、単独運転の検出が困難になってしまうという問題がある。
【0008】
そこで従来においては、複数の太陽光発電装置に対し1台のメインコントローラにて通信による同期制御を行う方法や標準時報信号を利用して同期制御を行う方式等が提案されている。(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開平10−201105号公報
【特許文献2】特開2000−287361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の方式においては、例えば複数の太陽光発電装置に対して1台のメインコントローラにて同期制御を行う方法の場合、相互間の通信を行う必要があるためマスター機の設定やアドレス設定・通信プロトコルの複雑化が伴い、装置の大型化、煩雑化を招くともに、メインコントローラが故障等にて動作不能となった場合には複数の太陽光発電装置間の同期制御が行えないという問題がある。
【0010】
また、従来の方式においては専用の通信線や電力線を介した通信による同期制御が行われており、その場合においては外乱(ノイズ)の影響を受けやすく、通信距離に応じた信号波形の劣化や遅延が発生し、同期制御が正常に行えなくなるという問題がある。
【0011】
また、標準時報信号を利用して同期制御を行う場合においては、設備の保守点検のために長い場合には数日間もの標準時法信号の送信を停止する期間があるため、その間においては同期制御が行えないという問題があるものである。
【0012】
本発明は上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、直流電源の発電電力を有効に利用し、確実に商用電力系統の異常を検出する太陽光発電システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の太陽光発電システムは、太陽電池と、該太陽電池が発電した直流電力を交流電力に変換し、且つ商用電力系統と負荷電力系統に接続して系統運転するとともに前記商用電力系統の異常を検出するための信号を前記商用電力系統へ送り、前記商用電力系統の異常を検出しえる電力変換装置を備えた太陽光発電装置を複数設置してなる太陽光発電システムであって、前記太陽光発電装置は他の太陽光発電装置に前記信号に関するタイミングデータを送信する送信部及び、他の太陽光発電装置からの前記信号に関するタイミングデータを受信する受信部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の他の太陽光発電システムは、前記太陽光発電装置は、起動時または一定期間毎に他の太陽光発電装置からの前記信号に関するタイミングデータの受信確認を行い、他の太陽光発電装置からの前記信号に関するタイミングデータを受信していればそのタイミングに合わせて前記信号を前記商用電力系統に送り、他の太陽光発電装置からの前記信号に関するタイミングデータが受信されなければ前記太陽光発電装置の前記信号に関するタイミングデータを前記送信部より他の太陽光発電装置に送信するようにしたことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の他の太陽光発電システムは、前記送信部及び受信部は、無線による送受信を行うようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の太陽光発電システムによれば、太陽電池と、該太陽電池が発電した直流電力を交流電力に変換し、且つ商用電力系統と負荷電力系統に接続して系統運転するとともに前記商用電力系統の異常を検出するための信号を前記商用電力系統へ送り、前記商用電力系統の異常を検出しえる電力変換装置を備えた太陽光発電装置を複数設置してなる太陽光発電システムであって、前記太陽光発電装置は他の太陽光発電装置に前記信号に関するタイミングデータを送信する送信部及び、他の太陽光発電装置からの前記信号に関するタイミングデータを受信する受信部とを備えたことで、商用電力系統の異常を検出するための信号に関するタイミングデータを他機へ送信する送信部及び、他機からの前記能動開始タイミングデータを受信する受信部とを備えているために複数の太陽光発電装置間の前記信号を同期させることが可能となり、停電等の系統の異常を安定的に検出することが可能となるものである。
【0017】
また、本発明の他の太陽光発電システムによれば、前記太陽光発電装置は、起動時または一定期間毎に他の太陽光発電装置からの前記信号に関するタイミングデータの受信確認を行い、他の太陽光発電装置からの前記信号に関するタイミングデータを受信していればそのタイミングに合わせて前記信号を前記商用電力系統に送り、他の太陽光発電装置からの前記信号に関するタイミングデータが受信されなければ前記太陽光発電装置の前記信号に関するタイミングデータを前記送信部より他の太陽光発電装置に送信するようにしたことで、複雑な通信処理や装置を必要とせず、容易に複数の太陽光発電装置を同期させることが可能となるものである。また、前記信号タイミングの基準となるマスター機の設定も不要となり、前記信号に関するタイミングデータが停止することもない。
【0018】
さらに、本発明の他の太陽光発電システムによれば、前記送信部及び受信部は、無線による送受信を行うようにしたことを特徴とすることで、通信のための専用線を敷設する必要がなく、また信号劣化や遅延がなく信頼性の高い同期制御を行うことが可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明本発明の請求項1および請求項2に係る太陽光発電システムの実施形態について、模式的に図示した図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明に係る太陽光発電システムの実施形態を模式的に説明するための単一の太陽光発電装置の概略装置構成図である。
【0021】
図1に示すように、太陽電池2とこの太陽電池2の発電した直流電力を交流電力に変換し、太陽電池2を商用電力系統もしくは負荷系統に電気的に接続して連系運転を行うための電力変換装置3が商用電力系統4や家庭用負荷5に接続されて、系統連系運転を行う太陽光発電装置1においては、上記太陽電池2と電力変換装置3のほかに他機に対して信号を送信する送信部14と他機からの信号を受信する受信部15とを有する。
【0022】
ここで電力変換装置3は、太陽電池2で発電された直流電力を太陽電池2の直流電圧と異なる直流電圧に変換する直流電圧変換回路11と、直流電圧変換回路11にて変換された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路12とから構成されるものであり、また送信部14及び受信部15は、電力変換装置3内に設置されてもよいが、電力変換装置3とは違うところに設置してもかまわない。
【0023】
また、太陽電池2は太陽電池モジュールもしくは太陽電池モジュールが複数集まった太陽電池アレイであり、太陽電池2で発電された直流電力は電力変換装置3に入力される。
【0024】
また、太陽電池2としては、多結晶シリコン太陽電池、単結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン等の薄膜太陽電池などが好適に使用され、複数枚の太陽電池セルを集めた太陽電池モジュールをさらに直並列に並べて太陽電池アレイとしたものが一般的である。
【0025】
太陽電池2の出力は電力変換装置3に入力されており、この電力変換装置3では入力された直流電力をPWM制御技術等を用いて交流電力に直交変換し、商用電力系統4に逆潮流あるいは家庭用負荷5へ電力供給を行なっている。
【0026】
ここで電力変換装置3においては、商用電力系統4の状態を監視しており、停電等の異常が発生した場合には直ちにインバータ回路12の動作を停止させるとともに開閉器13をオフとして商用電力系統4からの解列処理を行うように働く。
【0027】
この停電等の異常を検出するためには、先述の能動的な単独運転の検出方法を行うものであり、ここでは周波数シフト方式を例に挙げると、図2に示すように電力変換装置3においては系統電圧波形に対して+α(若しくは−α)分の周波数バイアスを加えた交流出力を信号として商用電力系統に送る。この周波数バイアスは図3のように周期的に+α、−αと交互に印加され、系統電圧波形の周波数に変化があった場合には商用電力系統4に異常があったものと判断し、インバータ回路12の動作を停止させるとともに開閉器13をオフとして商用電力系統4からの解列処理を行う。
【0028】
本発明における太陽光発電装置の電力変換装置3においては、周波数バイアスを加える周期(タイミング)に応じて送信部14から商用電力系統の異常を検出する信号に関するタイミングデータを送信する機能を有するものである。
【0029】
ただし、動作としては図4に示すフローの通り、太陽電池2の直流電源が確立し、起動を行う際に、受信部15にて他機からの異常検出信号に関するタイミングデータの受信がないかの確認を行う。ここで他機からのデータの受信があれば、そのタイミングを自機の異常検出信号に関するタイミングとして、連系運転時の単独運転検出をおこなうものであり、一方他機からのデータの受信がなければ、前述の通り異常検出信号に関するタイミングデータを送信するものである。
【0030】
すなわち、複数の太陽光発電装置間において、一番先に起動し、運転可能な装置が仮のマスター機となり異常検出信号に関するタイミングデータを送信するものであり、残りの装置においては運転可能な状態になった装置より順次、この送信されたデータのタイミングにあわせて能動的単独運転を行うこととなる。
【0031】
そのため、マスター機の設定を行うことなく、また、複雑な双方向通信処理を必要とせずに、複数の太陽光発電システム間の単独運転開始タイミングを同期させることが可能となり、停電等の系統の異常を安定的に検出することが可能な太陽光発電システムを提供することができるものである。
【0032】
尚、ここでは起動の際に送信の判断を行っているが、これに限定されるものではなく、定期的に送信の判断を行う処理としてもよい。その場合においては仮のマスター機が何らかの要因にて停止してしまった場合や、夕方等で先に運転を停止してしまった場合においても残りの太陽光発電装置間の中で先に能動開始タイミングデータを送信したものが次のマスター機となって同期運転を継続してくことが可能となり、同期が取れない期間ができることを回避することが可能となるものである。
【0033】
また、本発明の請求項3に係る太陽光発電システムの実施形態については、前述通りであるが、送信部14及び受信部15においては無線による送受信を行うものとしている。そのため、通信のための専用線を特別に敷設する必要がなく、また通信距離が遠くなった場合にも信号劣化や遅延の影響がなく、信頼性の高い同期制御を行うことが可能となるものである。
【0034】
なお、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る太陽光発電システムの実施形態を模式的に説明するための太陽光発電装置の概略装置構成図である。
【図2】本発明に係る太陽光発電システムの実施形態を模式的に説明するための単独運転検出における概略波形図である。
【図3】本発明に係る太陽光発電システムの実施形態を模式的に説明するための概略波形図である。
【図4】本発明に係る太陽光発電システムの実施形態を模式的に説明するための概略フロー図である。
【図5】従来の太陽光発電システムにおける概略システム構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1:太陽光発電システム
2:太陽電池
3:電力変換装置
4:商用電力系統
5:家庭用負荷
11:直流電圧変換回路
12:インバータ回路
13:開閉器
14:送信部
15:受信部
102:太陽光発電装置
102:太陽電池
103:電力変換装置
104:商用電力系統
105:家庭用負荷
111:直流電圧変換回路
112:インバータ回路
113:開閉器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池と、該太陽電池が発電した直流電力を交流電力に変換し、且つ商用電力系統と負荷電力系統に接続して系統運転するとともに前記商用電力系統の異常を検出するための異常検出信号を前記商用電力系統へ送り、前記商用電力系統の異常を検出しえる電力変換装置を備えた太陽光発電装置を複数設置してなる太陽光発電システムであって、前記太陽光発電装置は他の太陽光発電装置に前記異常検出信号に関するタイミングデータを送信する送信部及び、他の太陽光発電装置からの前記異常検出信号に関するタイミングデータを受信する受信部とを備えたことを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
前記太陽光発電装置は、起動時または一定期間毎に他の太陽光発電装置からの前記異常検出信号に関するタイミングデータの受信確認を行い、他の太陽光発電装置からの前記異常検出信号に関するタイミングデータを受信していればそのタイミングに合わせて前記異常検出信号を前記商用電力系統に送り、他の太陽光発電装置からの前記異常検出信号に関するタイミングデータが受信されなければ前記太陽光発電装置の前記異常検出信号に関するタイミングデータを前記送信部より他の太陽光発電装置に送信するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記送信部及び受信部は、無線による送受信を行うようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽光発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−278712(P2006−278712A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95406(P2005−95406)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】