説明

太陽光発電モジュール

【課題】 紫外線を発電に有効利用でき、しかも各部材の劣化を抑制して、発電寿命が長く維持コストの低い太陽光発電モジュールを提供する。
【解決手段】 太陽光が入射する前面側に配置される透明なガラス基板11の後面側に、接着ポリマー層12を介して層状の太陽電池セル13が接着され、ガラス基板11中に、紫外線−可視光変換物質としての光活性イオン15としてCe3+をドープした。ガラス基板11中の光活性イオン15で紫外線が吸収され可視光が出るため、接着ポリマー層12が紫外線に晒されず劣化を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽光発電モジュールに関し、さらに詳しくは、紫外光を発電に有効利用できると共に、紫外光による部材の劣化を抑制できる太陽光発電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電モジュールとしては、両面に電極を設けた複数の太陽電池素子(光電変換層)を直列に接続し、これら光電変換層をバックフィルムに貼り付け、前面側にガラス板を配置したものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このような太陽光発電モジュールの構造としては、スーパーストレート型、サブストレート型、ガラスパッケージ型が知られている(例えば、非特許文献2及び非特許文献3参照)。この他の太陽光発電モジュールとしては、色素増感太陽電池モジュール、有機半導体薄膜太陽電池モジュール等がある。
【0003】
しかしながら、上述した各種の太陽光発電モジュールでは、紫外線により劣化する部分が存在するため、その劣化を避けるために紫外線を除去する方策が考えられている。
【0004】
上記したスーパーストレート型の太陽光発電モジュールは、前面側から順に、カバーガラス/接着充填剤(接着ポリマー)層/太陽電池層/接着ポリマー層/アルミパッケージの構造となっている。接着充填剤としては、EVA(エチレンビニルアセテート)、PVB(ポリビニルブチラール)などが用いられる。これらの有機樹脂の分子内結合エネルギーは太陽光中に含まれる紫外線(波長が300〜400nm)よりも小さい。したがって、これらの有機樹脂は紫外線によって分子が分解したり、空気中の酸素もしくは水分と反応(光化学反応)した結果、可視光領域や赤外領域における透過度が低下(失透)して太陽光発電量の低下をもたらす。このような問題を解決するには、接着充填剤などを周期的に交換したり、紫外線を遮断する方策が講じられている。
【0005】
太陽電池材料としてほとんどを占めている多結晶シリコン、単結晶シリコンを用いた太陽光発電モジュールでは、シリコンの紫外線領域に対する屈折率が非常に大きく、接合面から遠い表面(キャリアが内部電場によってドリフトしない領域)近傍における吸収が大きいことから、表面反射損(40%以上)、表面再結合損失が非常に大きく、ほとんど太陽光発電には寄与しない。
【0006】
そこで、(イ)カバーガラス中に重金属イオン(セリウム(Ce))をドープして、Ce4+により、具体的には、酸素イオンとCe4+イオン間の電荷移動遷移(O2−(2p)Ce4+(4f))により紫外線のみを選択的に吸収して熱に変える方法、(ロ)接着ポリマー中に紫外線吸収剤の有機分子を混ぜて紫外線を吸収して熱に変える方法、(ハ)接着ポリマー中に酸化防止剤を入れて光化学反応を抑制するなどの方法が提案されている。
【0007】
しかし、上記(ロ)及び(ハ)の方法は、いずれも有機分子を入れる方法であるため、入れた有機分子と接着ポリマーとの光化学反応が進行し最終的には劣化が起こる。又、上記(イ)の方法では有効に紫外線を遮断できるが、紫外線を発電には利用せず熱となるだけである。
【0008】
又、太陽電池材料として非晶質シリコン(α−Si:H)を用いた太陽光発電モジュールでは、ガラス板に対してα−Si:Hを接着ポリマーを介して貼り付けたスーパーストレート型と、ガラス板に直接α−Si:Hを堆積させたサブストレート型のものがある。スーパーストレート型太陽光発電モジュールでは、上述したように、接着充填剤の紫外線による劣化が問題になるため紫外線対策が必要になる。一方、光起電力効果で発電を行うα−Si:H(p-i-n構造)は、格子欠陥や非結合手が多く含まれるため電子デバイスと機能しにくいが、非結合手と水素(H)とが結合することによって相対的に欠陥密度が小さくなった結果、電子デバイスとして機能している。しかし、光誘起特性劣化現象(Staebler−Wronski効果)により、光が照射されるとSi−H間結合が引き離され、もとの非結合手(欠陥)の多いα−Siにもどる。その結果、太陽電池(電子デバイス)としては機能(発電)しなくなることが知られており、非晶質シリコン太陽光発電モジュールの信頼性や普及に対する大きな障壁となっている。特に、エネルギーの高い紫外線は、Si−H間の結合を十分引き離すエネルギーを持っていることから、サブストレート型太陽光発電モジュールにおいても紫外線対策は必要になる。
【0009】
上記色素増感太陽光発電モジュールは、次世代の太陽電池として、低コスト、形態の自由度の高さ等の観点から注目を集めている。その構造は、導電性の透明電極を堆積させたガラス基板の透明電極の上に、電子を収集する層として多孔質のTiOを堆積させ、多孔質のTiOの表面に太陽光の吸収を行う色素(ルテニウム錯体)を吸着させてから正孔を収集するためのヨウ素還元系を含む電解液を注入して裏面電極をつけたガラス基板ではさみ、電解液の漏れを防ぐためにポリマー類で封止した構造である。紫外線は増感用色素の分子内結合を十分解離させるエネルギーを持っているため、紫外線による色素の分解及び劣化されやすい。さらに、電子収集用として使われる光触媒機能を併せ持つTiOにバンドギャップエネルギー以上(3.2eV、波長380nm以下)の紫外線が照射されると有機物である増感色素(錯体)を分解させることも懸念される。その紫外線照射による劣化を防ぐために、ガラス基板に紫外線吸収イオンをドープさせて紫外線だけを吸収して遮断する方法や、透明電極が高反射率であることを利用して紫外線を反射させる方法などが考えられている。しかし、いずれの方法も紫外線を発電に利用せず侵入を遮断する方法である。
【0010】
上記有機半導体薄膜太陽光発電モジュールは、色素増感太陽光発電モジュールと同様に、次世代の太陽電池として、低コスト、形態の自由度の高さ等の観点から注目を集めている。この有機半導体薄膜太陽光発電モジュールの構造は、ガラス基板にITO(Indium Tin Oxide)膜を透明電極として堆積し、その上に太陽光を吸収し、キャリアの生成を行う有機半導体(フタロシアニン系)やC60をハイブリッド化した構造である。しかし、紫外線よりも結合エネルギーの小さい有機分子をキャリア生成、輸送層として用いるため、これらの層に紫外線が照射された場合、紫外線照射による劣化は避けられない。この有機半導体薄膜太陽光発電モジュールでは、ITO膜で紫外線をほとんど反射させているため、紫外線は有機半導体層までは届かないようになっている。
【0011】
上述の各種の太陽光発電モジュールでは、有機物や結合エネルギーの低い部分が紫外線により劣化することを避けるために、紫外線を発電には利用せずに除去することが行われている。
【0012】
しかしながら、上述の各種太陽光発電モジュールでは、紫外線を発電に利用していないため、単位モジュール当たりの発電量が低くく、所望の発電量を得るには例えば太陽光発電モジュールの数を増やしたり、受光面積を大きくする必要があった。
【0013】
この他の従来技術として、太陽電池表面に配置する太陽電池カバー用シートとして、透明樹脂シート中に波長変換機能を有する蛍光物質を配合したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、蛍光物質を配合するシートが樹脂製であるため、このシート自身が紫外線で劣化するという問題がある。
【非特許文献1】小長井誠編著、「薄膜太陽電池の基礎と応用」、株式会社オーム社、第1版、2001年3月20日、第41頁、図2−17
【非特許文献2】桑野幸徳著、「太陽エネルギー光学」、株式会社培風館、1997年9月20日、第229頁、図5.6
【非特許文献3】高橋清、浜川圭弘、後川昭雄 編著、森川出版株式会社、1980年2月20日、第322〜323頁、図11・1〜11・3
【特許文献1】特開2001−352091(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の目的は、紫外線を発電に有効利用できる太陽光発電モジュールを提供することにある。
【0015】
又、本発明の他の目的は、各部材の劣化を抑制して、発電寿命が長く維持コストの低い太陽光発電モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の特徴は、透明なガラス基板の後面側に、接着ポリマーを介して太陽電池セルが接着された太陽光発電モジュールであって、太陽電池セルの前面側に、紫外線を可視光に波長変換させる紫外線−可視光変換物質を配したことを要旨とする。
【0017】
この第1の特徴に係る発明では、紫外線−可視光変換物質が、ガラス基板中もしくは接着ポリマー中に含まれていることが好ましく、もしくはガラス基板の前面又は後面に膜状に形成されているが好ましい。
【0018】
本発明の第2の特徴は、透明なガラス基板の後面に太陽電池セルが接合された太陽光発電モジュールであって、ガラス基板中に、紫外線を可視光に波長変換させる紫外線−可視光変換物質が含まれていることを要旨とする。
【0019】
本発明の第3の特徴は、透明なガラス基板の後面に太陽電池セルが接合された太陽光発電モジュールであって、ガラス基板の前面もしくは後面に、紫外線−可視光変換物質が膜状に形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、紫外線を発電に有効利用して発電効率を高めることができる。
【0021】
又、本発明によれば、発電寿命が長く、維持コストの低い太陽光発電モジュールを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る太陽光発電モジュールの詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各材料層の厚みやその比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0023】
〔第1の実施の形態〕
図1を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る太陽光発電モジュール10について説明する。この太陽光発電モジュール10は、所謂スーパーストレート型のモジュールである。
【0024】
図1に示すように、太陽光発電モジュール10は、太陽光が入射する前面側に配置される透明なガラス基板11の後面側に、接着ポリマー層12を介して層状の太陽電池セル13が接着されて、大略構成されている。なお、太陽電池セル13には前後面に電極が設けられているが、図1では前面側の表面電極14のみを示す。
【0025】
接着ポリマー層12としては、EVA(エチレンビニルアセテート)、PVB(ポリビニルブチラール)等を用いる。なお、これらの有機樹脂の分子内結合エネルギーは太陽光中に含まれる紫外線よりも小さい。
【0026】
又、太陽電池セル13としては、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、非晶質シリコン太陽電池、色素増感太陽電池、有機半導体薄膜太陽電池、化合物半導体単結晶太陽電池、化合物半導体多結晶太陽電池等各種の太陽電池セルを適用できる。
【0027】
特に、本実施の形態では、ガラス基板11中に、紫外線−可視光変換物質としての光活性イオン15がドープされている。本実施の形態では、光活性イオン15としてCe3+がドープされている。なお、Ce3+を三価のイオンとして安定してガラス基板11中にドープするために、ホウケイ酸ガラスの組成中に、(Gd2O3−BaO:)を配合している。又、ガラス基板11としては、ホウケイ酸ガラスの他に、既存の酸化物ガラス、ソーダライムガラス等を用いることができる。
【0028】
Ce3+をドープしたガラス基板11(B−SiO−Gd−BaO:Ce3+)の特性は、下記の通りである。
【0029】
形態;ガラス
吸収波長λex;275〜450nm
ピーク波長;350nm
蛍光波長λem;400〜500nm
ピーク波長;450nm
上記B−SiO−Gd−BaO:Ce3+のほとんどの成分がカバーガラスとしてのガラス基板11の成分と同じであり、この光活性イオン15をドープしたものをガラス基板11として作製すれば、材料投資、エネルギー投資を少なくすることが可能である。
【0030】
本実施の形態に係る太陽光発電モジュール10においては、図1に示すように、発電に利用する可視光(波長帯域400〜700nm)と赤外領域(波長帯域700〜1200nm:太陽電池で発電が可能な領域)とが、通常のガラスと同様にガラス基板11を通過し、接着ポリマー層12を経て太陽電池セル13に入射する。一方、紫外線(波長帯域が300〜400nm)は、ガラス基板11中にドープされた光活性イオン15に吸収され、可視光に波長変換されてから接着ポリマー層12を通過して太陽電池セル13に入射する。
【0031】
上述のように、分子内結合エネルギーが紫外線よりも小さい接着ポリマー層12には紫外線が照射されず、可視光と赤外領域の光が透過するため、紫外線による劣化は抑制される。なお、有機樹脂類を構成するC,H,O間の結合解離エネルギーは、可視光(波長400以上)のエネルギーよりも大きいため、理論上、可視光による劣化は起こらない。
【0032】
上述のように本実施の形態では、接着ポリマー層12の劣化が抑制されるため、太陽光発電モジュール10の寿命を延ばすことができ、維持管理の負担を軽減することができる。
【0033】
本実施の形態に係る太陽光発電モジュール10では、紫外線を可視光に変換して発電に利用できるため、単位面積当たりの発電量を高めることができる。
【0034】
又、本実施の形態に係る太陽光発電モジュール10では、紫外線が光活性イオン15で波長変換されて発せられる可視光の一部(20%以下)がガラス基板11の前面から空気層へ放射されるため、外観的にもカラフルなモジュール構成が可能になる。上述のように光活性イオン15から発せられる可視光の一部が空気層へ放射されて太陽電池セル13へ入射する可視光量が減少するが、もともと従来の太陽光発電モジュールでは紫外線が接着ポリマー層12や太陽電池セル13へ入射することを阻止していたため、結果的には太陽電池セル13に入射する可視光の量は大幅に大きくなる。
【0035】
本実施の形態に係る太陽光発電モジュール10では、変換された可視光の太陽電池セル13への入射確率(蛍光収集率)は太陽光の入射角には大きく依存せず、一定の比率(83%以上)で太陽電池セル13に入射するので、太陽光の入射角が大きくなり、可視光や赤外線のほとんどが反射されるときに、紫外線を可視光に変換した相対的な効果は増大する。
【0036】
又、通常の太陽電池システムにおいては、太陽電池セルの前面に設けられた表面電極が入射する太陽光の一部を反射してしまうため、遮蔽損失となるが、本実施の形態に係る太陽光発電モジュール10では、光活性イオン15が紫外線を吸収して、可視光に変換して可視光を分散させるため、例えばITO等でなる表面電極14同士の間の領域を通過して太陽電池セル13に到達する光量が大きく、遮蔽損失をあまり受けない。
【0037】
本実施の形態に係る太陽光発電モジュール10では、地上よりも可視光や赤外線に対する紫外線の量が豊富な宇宙ではさらに紫外線−可視光変換効率が増大する。
【0038】
なお、本実施の形態では、光活性イオン15をドープしたガラス基板11としてB−SiO−Gd−BaO:Ce3+を用いたが、他の光活性イオンを選択することにより、紫外線のみに限定せず、太陽電池の分光感度の低い領域の光を分光感度の高い領域に変換して相対的に発電量を増やすなどの応用も可能である。
【0039】
〔第2の実施の形態〕
次に、図2を用いて本発明の第2の実施の形態に係る太陽光発電モジュール20について説明する。なお、本実施の形態において、上記第1の実施の形態の太陽光発電モジュール10と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
本実施の形態の太陽光発電モジュール20は、所謂スーパーストレート型のモジュールである。図2に示すように、本実施の形態に係る太陽光発電モジュール20は、太陽光が入射する前面側に配置される透明なガラス基板11の後面側に、接着ポリマー層12を介して層状の太陽電池セル13が接着されて、大略構成されている点で、上記第1の実施の形態の太陽光発電モジュール10とほぼ同様の構成である。
【0041】
なお、本実施の形態においても、太陽電池セル13の前後面に電極が設けられているが、図示省略する。又、太陽電池セル13としては、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、非晶質シリコン太陽電池、色素増感太陽電池、有機半導体薄膜太陽電池、化合物半導体単結晶太陽電池、化合物半導体多結晶太陽電池等の各種の太陽電池セルを適用できる。
【0042】
本実施の形態の太陽光発電モジュール20の特徴は、上記第1の実施の形態の太陽光発電モジュール10が紫外線−可視光変換物質として光活性イオンをドープしているのに対して、蛍光体微粒子16をガラス基板11中に混ぜている点である。
【0043】
蛍光体微粒子16としては、下記(A)〜(G)の一般式で表される物質の微粒子を用いることができる。なお、(A)は上記第1の実施の形態に係る太陽光発電モジュール10のガラス基板11中にも含まれるが、本実施の形態では微粒子状の蛍光体微粒子16として混入されている。
【0044】
(A)B−SiO−Gd−BaO:Ce3+
形態;ガラス
吸収波長λex;275〜450nm
ピーク波長;350nm
蛍光波長λem;400〜500nm
ピーク波長;450nm
特徴;蛍光体のほとんどがガラス基板(カバーガラス)の成分と同じである。
【0045】
(B)CaF:Eu2+、もしくはSrF:Eu2+
形態;膜、微粒子、圧縮ガラス、ガラスとのコンポジット、ポリマーとのコンポジット等の形態をとり得る。
【0046】
吸収波長λex;300nm以下〜420nm
ピーク波長;335nm
蛍光波長λem;400〜500nm
ピーク波長;425nm
特徴;真空蒸着による薄膜堆積、微粒子の分散、コンポジット等の作製形態の自由度をもつ。光活性イオンであるEuはやや高価であるが、非常に高い吸収係数(強い吸収)をもっているため、少量でも紫外線吸収は可能になる(10−5mol以下/cm〜、0.5mg以下/cm)。
【0047】
(C)MgF:Eu2+
形態;膜、微粒子、圧縮ガラス、ガラスとのコンポジット、ポリマーとのコンポジット等の形態をとり得る。
【0048】
吸収波長λex;300nm〜400nm
ピーク波長;320nm
蛍光波長λem;400〜550nm
ピーク波長;440nm
特徴;真空蒸着による薄膜堆積、微粒子の分散、コンポジット等の作製形態の自由度をもつ。光活性イオンであるEuはやや高価であるが、非常に高い吸収係数(強い吸収)をもっているため、少量でも紫外線吸収は可能になる(10−5mol以下/cm〜、0.5mg以下/cm)。
【0049】
(D)SrO・Al:Eu2+
形態;セラミック
吸収波長λex;200nm〜450nm
ピーク波長;254nm
蛍光波長λem;450〜650nm
ピーク波長;516nm
特徴;ガラス基板(カバーガラス)作製中に分散が可能。主成分がほとんどの酸化物ガラス類を構成する成分であるため材料投資が少なくてよい。
【0050】
(E)1.29(Ba,Ca)O・6Al:Eu2+、もしくは0.82BaO・6Al:Eu2+
形態;セラミック
吸収波長λex;200nm〜400nm
ピーク波長;254nm
蛍光波長λem;400〜600nm
ピーク波長;440nm
特徴;ガラス基板(カバーガラス)作製中に分散が可能。主成分がほとんどの酸化物ガラス類を構成する成分であるため材料投資が少なくてよい。
【0051】
(F)BaAl:Eu2+
形態;セラミック
吸収波長λex;200nm〜400nm
ピーク波長;254nm
蛍光波長λem;400〜600nm
ピーク波長;440nm
特徴;ガラス基板(カバーガラス)作製中に分散が可能。主成分がほとんどの酸化物ガラス類を構成する成分であるため材料投資が少なくてよい。
【0052】
(G)MgF:Yb2+
形態;膜、微粒子、圧縮ガラス、ガラスとのコンポジット、ポリマーとのコンポジット等の形態をとり得る。
【0053】
吸収波長λex;200nm〜420nm
ピーク波長;335nm
蛍光波長λem;400〜600nm
ピーク波長;440nm
特徴;真空蒸着による薄膜堆積、微粒子の分散、コンポジット等の作製形態の自由度をもつ。光活性イオンであるYbはEuに比べるとかなり安価である。
【0054】
この第2の実施の形態に係る太陽光発電モジュール20においても、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を得ることができる。
【0055】
〔第3の実施の形態〕
次に、図3を用いて本発明の第3の実施の形態に係る太陽光発電モジュール30について説明する。なお、本実施の形態において、図1に示す上記第1の実施の形態の太陽光発電モジュール10と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施の形態に係る太陽光発電モジュール30は、所謂スーパーストレート型のモジュールである。図3に示すように、太陽光発電モジュール30は、太陽光が入射する透明なガラス基板11の前面側に無機蛍光膜17が形成され、ガラス基板11の後面側に、接着ポリマー層12を介して層状の太陽電池セル13が接着されて、大略構成されている。なお、図示しないが、本実施の形態においても、太陽電池セル13の前後面に電極が設けられている。又、太陽電池セル13としては、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、非晶質シリコン太陽電池、色素増感太陽電池、有機半導体薄膜太陽電池、化合物半導体単結晶太陽電池、化合物半導体多結晶太陽電池等の各種の太陽電池セルを適用できる。
【0057】
上記無機蛍光膜17は、上記第2の実施の形態において列挙した(A)〜(G)、すなわち、(A)B−SiO−Gd−BaO:Ce3+、(B)CaF:Eu2+もしくはSrF:Eu2+、(C)MgF:Eu2+、(D)SrO・Al:Eu2+、(E)1.29(Ba,Ca)O・6Al:Eu2+もしくは0.82BaO・6Al:Eu2+、(F)BaAl:Eu2+、(G)MgF:Yb2+等で形成できる。
【0058】
なお、無機蛍光膜17は、ガラス基板11の屈折率と同程度の屈折率をもつものを選択することにより、ガラス基板11と同体とみなすことができ、両者の界面での不要な反射を防止することができる。
【0059】
本実施の形態に係る太陽光発電モジュール30では、図3に示すように、入射する太陽光のうち紫外線(波長:300〜400nm)成分を無機蛍光膜17が吸収して可視光(波長:400〜700nm)に変換して出射する。無機蛍光膜17から出射された可視光は、ガラス基板11、接着ポリマー層12を経て太陽電池セル13に入射して発電エネルギーとして用いられる。
【0060】
無機蛍光膜17から出射された可視光のうち前面側へ向かう光は、空気層への入射角に応じて無機蛍光膜17の前面と空気層との界面で反射されて太陽電池セル13側へ向かう光と、界面を通過して空気層側へ出射される光とがある。この界面で反射されて戻る光を含めると無機蛍光膜17に入射した紫外線の多くは、太陽電池セル13に入射することができる。なお、上記界面から空気層側へ出射された光は、可視光であるため、太陽光発電モジュール30の表面をカラフルな色として観察される。このため、従来の太陽光発電モジュールの表面ように黒系統の色ではなく、外観の美しい太陽光発電モジュール30とすることができる。
【0061】
上述の太陽光発電モジュール30では、無機蛍光膜17が高密度な蛍光体であるため、紫外線−可視光変換効率を高めることができる。又、本実施の形態では、無機蛍光膜17をガラス基板11の前面に形成すればよいため、既存の太陽光発電モジュールにそのまま応用できるという利点がある。
【0062】
なお、本実施の形態に係る太陽光発電モジュール30の他の作用・効果は、上記した第1の実施の形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0063】
〔第4の実施の形態〕
次に、図4を用いて本発明の第4の実施の形態に係る太陽光発電モジュール40について説明する。なお、本実施の形態においても、図1に示す上記第1の実施の形態の太陽光発電モジュール10と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
本実施の形態の太陽光発電モジュール40は、所謂スーパーストレート型のモジュールである。図4に示すように、本実施の形態に係る太陽光発電モジュール40は、太陽光が入射する透明なガラス基板11の後面側に無機蛍光膜18が形成され、この無機蛍光膜18の後面側に、接着ポリマー層12を介して層状の太陽電池セル13が接着されている。なお、図示しないが、本実施の形態においても、太陽電池セル13の前後面に電極が設けられている。又、太陽電池セル13としては、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、非晶質シリコン太陽電池、色素増感太陽電池、有機半導体薄膜太陽電池、化合物半導体単結晶太陽電池、化合物半導体多結晶太陽電池等の各種の太陽電池セルを適用できる。
【0065】
本実施の形態の無機蛍光膜18は、上記第2の実施の形態において列挙した(A)〜(G)、すなわち、(A)B−SiO−Gd−BaO:Ce3+、(B)CaF:Eu2+もしくはSrF:Eu2+、(C)MgF:Eu2+、(D)SrO・Al:Eu2+、(E)1.29(Ba,Ca)O・6Al:Eu2+もしくは0.82BaO・6Al:Eu2+、(F)BaAl:Eu2+、(G)MgF:Yb2+等で形成できる。
【0066】
なお、無機蛍光膜18は、接着ポリマー層12と屈折率が同等のものを選択することにより、接着ポリマー層12と同体とみなすことができ、両者の界面での不要な反射を防止することができる。
【0067】
この太陽光発電モジュール40では、ガラス基板11の後面側に無機蛍光膜18を形成したことにより、ガラス基板11を通過して無機蛍光膜18に入射した紫外線は可視光に変換されて太陽電池セル13に入射する。無機蛍光膜18で紫外線から変換された可視光は、多くは太陽電池セル13に入射する。また、無機蛍光膜18からガラス基板11側へ向かう可視光もあるが、無機蛍光膜18とガラス基板11との界面で反射して太陽電池セル13側へ反射する可視光や、ガラス基板11と空気層との界面で反射して太陽電池セル13側へ向かう可視光も存在する。このため、本実施の形態に係る太陽光発電モジュール40は、無機蛍光膜18で変換された可視光の発電利用効率が高い。
【0068】
本実施の形態における他の作用・効果は、上記第1の実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0069】
〔第5の実施の形態〕
次に、図5を用いて本発明の第5の実施の形態に係る太陽光発電モジュール50について説明する。なお、本実施の形態においても、図1に示す上記第1の実施の形態の太陽光発電モジュール10と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
本実施の形態の太陽光発電モジュール50は、所謂スーパーストレート型のモジュールである。図5に示すように、本実施の形態に係る太陽光発電モジュール50は、太陽光が入射する透明なガラス基板11の後面に、接着ポリマー層12を介して層状の太陽電池セル13が接着されている。なお、図示しないが、本実施の形態においても、太陽電池セル13の前後面に電極が設けられている。又、太陽電池セル13としては、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、非晶質シリコン太陽電池、化合物半導体単結晶太陽電池等の各種の太陽電池セルを適用できる。
【0071】
そして、接着ポリマー層12には、蛍光体微粒子19が分散して配置されている。本実施の形態の蛍光体微粒子19は、上記第2の実施の形態において列挙した(A)〜(G)、すなわち、(A)B−SiO−Gd−BaO:Ce3+、(B)CaF:Eu2+もしくはSrF:Eu2+、(C)MgF:Eu2+、(D)SrO・Al:Eu2+、(E)1.29(Ba,Ca)O・6Al:Eu2+もしくは0.82BaO・6Al:Eu2+、(F)BaAl:Eu2+、(G)MgF:Yb2+等で形成できる。
【0072】
なお、蛍光体微粒子19としては、接着ポリマー層12の屈折率と同程度の屈折率を材料を選択することが好ましい。
【0073】
本実施の形態に係る太陽光発電モジュール50における作用・効果は、上記第1の実施の形態とほぼ同様である。
【0074】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0075】
例えば、上述した第1〜第5の実施の形態では、スーパーストレート型の太陽光発電モジュールに本発明を適用した例であるが、図6〜図8に示すような、所謂サブストレート型の太陽光発電モジュールに本発明を適用してもよい。
【0076】
図6に示す太陽光発電モジュール60は、ガラス基板11の後面に直接、太陽電池セル13を形成したものであり、ガラス基板11中に上記した第2の実施の形態と同様の蛍光体微粒子16が分散された構成である。
【0077】
図7に示す太陽光発電モジュール70は、ガラス基板11の前面側に、無機蛍光膜17を形成し、ガラス基板11の後面に直接、太陽電池セル13を形成した構成である。
【0078】
図8に示す太陽光発電モジュール80は、ガラス基板11の後面に無機蛍光膜18を形成し、無機蛍光膜18の後面に太陽電池セル13を形成した構成である。
【0079】
図6〜図8に示すようなサブストレート型の太陽光発電モジュール60,70,80においては、接着ポリマー層が存在しないため、接着ポリマー層の劣化を防止するという効果はないが、紫外線−可視光変換物質としての蛍光体微粒子16や無機蛍光膜17,18の紫外線−可視光変換作用により、発電効率を向上するという効果を奏する。
【0080】
なお、図6〜図8に示す太陽光発電モジュール60,70,80の太陽電池セル13としては、非晶質シリコン太陽電池、有機半導体薄膜太陽電池等の各種の太陽電池セルを適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスーパーストレート型の太陽光発電モジュールの断面説明図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るスーパーストレート型の太陽光発電モジュールの断面説明図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係るスーパーストレート型の太陽光発電モジュールの断面説明図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係るスーパーストレート型の太陽光発電モジュールの断面説明図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係るスーパーストレート型の太陽光発電モジュールの断面説明図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係るサブストレート型の太陽光発電モジュールの断面説明図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係るサブストレート型の太陽光発電モジュールの断面説明図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係るサブストレート型の太陽光発電モジュールの断面説明図である。
【符号の説明】
【0082】
10 太陽光発電モジュール
11 ガラス基板
12 接着ポリマー層
13 太陽電池セル
14 表面電極
15 光活性イオン
16 蛍光体微粒子
17 無機蛍光膜
18 無機蛍光膜
19 蛍光体微粒子
20,30,40,50,60,70,80 太陽光発電モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なガラス基板の後面側に、接着ポリマーを介して太陽電池セルが接着された太陽光発電モジュールであって、
前記太陽電池セルの前面側に、紫外線を可視光に波長変換させる紫外線−可視光変換物質を配したことを特徴とする太陽光発電モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の太陽光発電モジュールであって、
前記紫外線−可視光変換物質は、前記ガラス基板中に含まれることを特徴とする太陽光発電モジュール。
【請求項3】
請求項1記載の太陽光発電モジュールであって、
前記紫外線−可視光変換物質は、前記接着ポリマー中に含まれることを特徴とする太陽光発電モジュール。
【請求項4】
請求項1記載の太陽光発電モジュールであって、
前記紫外線−可視光変換物質は、前記ガラス基板の前面又は後面に膜状に形成されていることを特徴とする太陽光発電モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュールであって、
前記紫外線−可視光変換物質は、三価のセリウムイオン(Ce3+)であることを特徴とする太陽光発電モジュール。
【請求項6】
透明なガラス基板の後面に太陽電池セルが接合された太陽光発電モジュールであって、
前記ガラス基板中に、紫外線を可視光に波長変換させる紫外線−可視光変換物質が含まれていることを特徴とする太陽光発電モジュール。
【請求項7】
透明なガラス基板の後面に太陽電池セルが接合された太陽光発電モジュールであって、
前記ガラス基板の前面もしくは後面に、紫外線−可視光変換物質が膜状に形成されていることを特徴とする太陽光発電モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−27271(P2007−27271A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204673(P2005−204673)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(504133110)国立大学法人 電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】