説明

太陽光集熱装置

【課題】隣接する集熱管同士を連結する場合の内管の熱膨張(線膨張)を吸収しながら、集熱管を支持することができるようにした太陽光集熱装置を提供する。
【解決手段】集光機構1によって集光された太陽光を受光し、内部を流通する熱媒体にエネルギを伝達する金属製の内管と、この内管の外周を断熱空間を形成して覆うガラス製の外管とからなり、内管の両端部に、内管の接続部を突出させた状態で、外管の両端部を固着するようにした集熱管を備えた太陽光集熱装置において、隣接する集熱管同士を、これらの集熱管の内管の接続部にねじを形成し、両端にねじを形成した接続部材23によって非伸縮状態に接続することにより連結するとともに、この連結した箇所の近傍の内管の表面から水平方向に突設した支軸24を、集熱管支持部材3a1〜3a4、3b1〜3b3に形成した水平方向の長孔31に摺動可能に嵌挿する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光集熱装置に関し、特に、集光機構によって集光された太陽光を受光し、内部を流通する熱媒体にエネルギを伝達する内管と、該内管の外周を断熱空間を形成して覆う外管とからなる集熱管を備えた太陽光集熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集光機構としての断面が放物線形状をなすトラフ型の反射鏡によって太陽光を集熱管に向けて集光し、集熱管の内部を流通する熱媒体にエネルギを伝達するようにした太陽光集熱装置が提案されており(例えば、特許文献1参照。)、また、これに集熱管についても、集光された太陽光を受光し、内部を流通する熱媒体にエネルギを伝達する内管と、該内管の外周を断熱空間を形成して覆う外管とからなるものが提案されている(例えば、特許文献2及び3参照。)。
【0003】
このように、従来、太陽光集熱装置については、太陽光の集光効率を上げるために、また、集熱管自体について、種々の提案がなされており、特に、特許文献3には、集熱管について、内部を流通する熱媒体にエネルギを伝達する金属製の内管と、該内管の外周を断熱空間を形成して覆うガラス製の外管とからなり、前記内管の両端部に、内管の接続部を突出させた状態で、前記外管の両端部を、内管と外管の熱膨張(線膨張)の差を吸収する膨張差吸収機構を介して固着するようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第96/29745号
【特許文献2】特開2004−239603号公報
【特許文献3】特開2004−251612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の太陽光集熱装置において、隣接する集熱管同士を連結する場合の内管の熱膨張(線膨張)を吸収する方法については、例えば、フレキシブル管を用いる程度で、特段の技術的な配慮はなされていなかった。
【0006】
また、内管は集光により高温となるため、内管に固着するようにした外管の端部の温度を可能な限り常温に保ち、ガラス製の外管への伝導伝熱を小さくするために、外管の端部を周辺の空気の自然対流で冷却させる必要があった。
【0007】
本発明は、上記従来の太陽光集熱装置の実情に鑑み、隣接する集熱管同士を連結する場合の内管の熱膨張(線膨張)を吸収しながら、集熱管を支持することができるようにした太陽光集熱装置を提供することを第1の目的とする。
【0008】
また、本発明は、ガラス製の外管への伝導伝熱を小さくできるようにした太陽光集熱装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するため、本発明の太陽光集熱装置は、集光機構によって集光された太陽光を受光し、内部を流通する熱媒体にエネルギを伝達する金属製の内管と、該内管の外周を断熱空間を形成して覆うガラス製の外管とからなり、前記内管の両端部に、内管の接続部を突出させた状態で、前記外管の両端部を固着するようにした集熱管を備えた太陽光集熱装置において、隣接する集熱管同士を、該集熱管の内管の接続部にねじを形成し、両端にねじを形成した接続部材によって非伸縮状態に接続することにより連結するとともに、該連結した箇所の近傍の内管の表面から水平方向に突設した支軸を、集熱管支持部材に形成した水平方向の長孔に摺動可能に嵌挿してなることを特徴とする。
【0010】
さらに、上記第2の目的を達成するため、本発明の太陽光集熱装置は、集熱管支持部材が、内管に固着するようにした外管の端部に集光機構から照射される太陽光を遮断するとともに、通気可能な空間を備えた溝状構造からなることを特徴とする。
【0011】
この場合において、前記集光機構が、断面が放物線形状をなすトラフ型の反射鏡からなり、該反射鏡に前記集熱管支持部材を固設し、反射鏡及び集熱管を共通の揺動軸を介して基台に揺動可能に設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の太陽光集熱装置によれば、集光機構によって集光された太陽光を受光し、内部を流通する熱媒体にエネルギを伝達する金属製の内管と、該内管の外周を断熱空間を形成して覆うガラス製の外管とからなり、前記内管の両端部に、内管の接続部を突出させた状態で、前記外管の両端部を固着するようにした集熱管を備えた太陽光集熱装置において、隣接する集熱管同士を、該集熱管の内管の接続部にねじを形成し、両端にねじを形成した接続部材によって非伸縮状態に接続することにより連結するとともに、該連結した箇所の近傍の内管の表面から水平方向に突設した支軸を、集熱管支持部材に形成した水平方向の長孔に摺動可能に嵌挿してなるようにすることにより、隣接する集熱管同士を、集熱管の内管同士を接続部材によって非伸縮状態にねじ接続することによって、簡易かつ強固に連結するとともに、連結した箇所の近傍を、集熱管支持部材によって、内管の熱膨張(線膨張)を吸収しながら、支持することができる。
【0013】
また、集熱管支持部材を、内管に固着するようにした外管の端部に集光機構から照射される太陽光を遮断するとともに、通気可能な空間を備えた溝状構造とすることにより、ガラス製の外管への伝導伝熱を小さくすることができる。
【0014】
また、前記集光機構が、断面が放物線形状をなすトラフ型の反射鏡からなり、該反射鏡に前記集熱管支持部材を固設し、反射鏡及び集熱管を共通の揺動軸を介して基台に揺動可能に設けることにより、反射鏡及び集熱管を一体構造の揺動体として構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の太陽光集熱装置の一実施例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】同太陽光集熱装置の集熱管の連結、支持構造を示す説明図である。
【図3】同太陽光集熱装置の集熱管の説明図で、(a)は正面断面図、(b)は(a)のX−X端面図、(c)は(a)のY−Y及びZ−Z端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の太陽光集熱装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図3に、太陽光集熱装置の一実施例を示す。
この太陽光集熱装置は、集光機構としての断面が放物線形状をなすトラフ型の反射鏡1によって集光された太陽光を受光し、内部を流通する熱媒体にエネルギを伝達する金属製の内管21と、この内管21の外周を断熱空間を形成して覆うガラス製の外管22とからなり、内管21の両端部に、内管21の接続部21aを突出させた状態で、外管22の両端部を固着するようにした集熱管2を備えるようにしている。
【0018】
この場合において、反射鏡1及び集熱管2は、基台4に、反射鏡1及び集熱管2の中心軸L1が南北軸に沿うように、かつ、集熱管2及び反射鏡1を共通の揺動軸5を介して揺動可能に設置するようにする。
そして、反射鏡1及び集熱管2の二等分線L2を含む面の延長方向が常に太陽の方向を指向するように、太陽の動きに従って揺動軸5を回動させる太陽追尾機構6を設けるようにする。
【0019】
これにより、太陽光Sbが、常に反射鏡1の二等分線L2を含む面と平行に反射鏡1に入射し、反射光が、反射鏡1の焦点の位置に架設された集熱管2の中心軸L1に集光されるようにする。
【0020】
なお、本実施例においては、反射鏡1を、支持材となるアルミニウム製の板材と鏡となる高反射率のアルミニウム製の板材とを重ね合わせたものを、アルミニウム製の押出成形材からなる枠部材に嵌め込んで構成するようにしたが、湾曲可能な薄板からなるガラス製の鏡を用いることもできる。
【0021】
また、本実施例において、集光機構として、断面が放物線形状をなすトラフ型の反射鏡1を用いるようにしたが、複数の長尺の平面分割鏡からなるフレネルミラー型の反射鏡のほか、リニアフレネルレンズ等の公知の集光機構を用いることができる。
【0022】
また、集熱管2は、図3に示すように、集光機構としての反射鏡1によって集光された太陽光を受光し、内部を流通する熱媒体にエネルギを伝達する内管21と、この内管21の外周を断熱空間を形成して覆う外管22とからなるものを用いるようにしている。
【0023】
より具体的には、内管21の表面に太陽光熱吸収膜として、酸化クロムメッキ層21bを施すようにしている。
太陽光熱吸収膜としての酸化クロムメッキ層21bは、酸洗いした鋼管からなる内管21の表面に酸化クロムメッキ処理を施すことにより、比較的低コストで形成することができる。
なお、太陽光熱吸収膜11aの材質や形成方法は、これに限定されず、材質としては、酸化クロムのほか、ニッケル系等の材料を用いたり、形成方法としては、メッキ処理のほか、溶射処理、物理蒸着(PVD)、塗装等によって太陽光熱の吸収を高めるために表面を黒色に着色したり、適宜の選択吸収膜を施すようにする等、従来、公知のものを採用することができる。
【0024】
なお、内管21には、鋼管の外、ステンレススチール管等の金属管を、また、外管22は、コバールガラス管等の硼珪酸ガラス管を用いることができる。
【0025】
また、断熱空間は、通常、内管21と外管22の間を真空にすることにより、断熱を行うようにする。
【0026】
また、内管21の内部を流通する熱媒体には、数百℃、例えば、400℃程度の温度まで加熱されて熱媒体として機能を発揮する水、熱媒油、溶融塩等の熱媒体を用いることができる。
【0027】
そして、外管22の両端部を、外管22の端部に接合した金属リング25a及びベローズ25bからなる内管21と外管22の熱膨張(線膨張)の差を吸収する膨張差吸収機構25を介して固着するようにしている。
【0028】
そして、このように構成した隣接する集熱管2同士を、これらの集熱管2の内管21の接続部21aにねじを形成し、両端にねじを形成した接続部材23によって非伸縮状態に接続することにより連結するとともに、この連結した箇所の近傍の内管21の表面から水平方向に突設した支軸24を、集熱管支持部材3a1〜3a4、3b1〜3b3に形成した水平方向の長孔31に摺動可能に嵌挿するようにしている。
この場合、長孔31の一端側又は一端側の近傍に、上方に開口する切欠部32を連続して形成することにより、支軸24の長孔31への嵌挿を、切欠部32を介して円滑に行うことができる。
【0029】
これにより、隣接する集熱管2同士を、集熱管2の内管21同士を接続部材23によって非伸縮状態にねじ接続することによって、簡易かつ強固に連結するとともに、連結した箇所の近傍を、集熱管支持部材3a1〜3a4、3b1〜3b3によって、内管21の熱膨張(線膨張)を吸収しながら、支持することができる。
【0030】
なお、このようにして連結した集熱管2の集熱管2と連結しない端部は、自由端として構成し、例えば、集熱管2の内管21にフレキシブル管26を接続することにより、内管21の熱膨張(線膨張)を吸収することができる。
【0031】
また、本実施例においては、集光機構としての断面が放物線形状をなすトラフ型の反射鏡1に集熱管支持部材3a1〜3a4、3b1〜3b3を固設し、反射鏡1及び集熱管2を共通の揺動軸5を介して基台4に揺動可能に設けることにより、反射鏡1及び集熱管2を一体構造の揺動体として構成するようにしている。
【0032】
そして、集熱管支持部材3a1〜3a4、3b1〜3b3は、集熱管2、具体的には、内管21の熱膨張(線膨張)を吸収しながら、支持する機能に加え、内管21に固着するようにした外管22の端部、具体的には、外管22の端部に接合した金属リング25a及びベローズ25bからなる膨張差吸収機構25に集光機構としての反射鏡1から照射される太陽光を遮断するとともに、外気対流による放熱を可能にするための通気可能な空間を備える上向きに開口した溝状構造とするようにしている。
これにより、外管22の端部に接合した金属リング25a及びベローズ25bからなる膨張差吸収機構25を介しての外管22への伝導伝熱を小さくすることができる。
【0033】
以上、本発明の太陽光集熱装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の太陽光集熱装置は、隣接する集熱管同士を連結する場合の内管の熱膨張(線膨張)を吸収しながら、集熱管を支持することができる特性を有していることから、特に、集熱管を流通する熱媒体が高温になり、集熱管の内管の熱膨張(線膨張)が大きくなる太陽光集熱装置の用途に好適に用いることができる。
また、ガラス製の外管への伝導伝熱を小さくできることから、集光機構を備えた太陽光集熱装置太陽光集熱装置の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 反射鏡(集光機構)
2 集熱管
21 内管
21a 接続部
22 外管
23 接続部材
24 支軸
25 膨張差吸収機構
25a 金属リング
25b ベローズ
3a1〜3a4、3b1〜3b3 集熱管支持部材
31 長孔
32 切欠部
Sb 太陽光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集光機構によって集光された太陽光を受光し、内部を流通する熱媒体にエネルギを伝達する金属製の内管と、該内管の外周を断熱空間を形成して覆うガラス製の外管とからなり、前記内管の両端部に、内管の接続部を突出させた状態で、前記外管の両端部を固着するようにした集熱管を備えた太陽光集熱装置において、隣接する集熱管同士を、該集熱管の内管の接続部にねじを形成し、両端にねじを形成した接続部材によって非伸縮状態に接続することにより連結するとともに、該連結した箇所の近傍の内管の表面から水平方向に突設した支軸を、集熱管支持部材に形成した水平方向の長孔に摺動可能に嵌挿してなることを特徴とする太陽光集熱装置。
【請求項2】
集熱管支持部材が、内管に固着するようにした外管の端部に集光機構から照射される太陽光を遮断するとともに、通気可能な空間を備えた溝状構造からなることを特徴とする請求項1記載の太陽光集熱装置。
【請求項3】
前記集光機構が、断面が放物線形状をなすトラフ型の反射鏡からなり、該反射鏡に前記集熱管支持部材を固設し、反射鏡及び集熱管を共通の揺動軸を介して基台に揺動可能に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の太陽光集熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−117771(P2012−117771A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269191(P2010−269191)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【出願人】(504005781)株式会社日立プラントメカニクス (16)