説明

太陽熱利用給湯装置

【課題】年間を通じた太陽熱の利用率を向上させる。
【解決手段】太陽熱を集熱する集熱板18と、集熱板の熱を伝熱する伝熱手段28,30,32と、伝熱手段を介して伝えられた熱により加温される水を貯留する貯湯タンク16と、貯湯タンクを内包するハウジング12とで太陽熱利用給湯装置10を構成する。そして、集熱板18を、ハウジング12の側面に、集熱板の上端部を軸として集熱板の板面とハウジングの側面とのなす角度を可変に取り付けることにより、季節ごとの太陽高度に対応可能となり、年間を通じた太陽熱の利用率を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱利用給湯装置に係り、特に、年間を通じた太陽熱の利用率を向上させた太陽熱利用給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱利用給湯装置は、例えば一戸建て用、或いは集合住宅用として屋根上やベランダなどの太陽光を受ける場所に設置され、太陽光による熱エネルギーを利用して加温対象となる例えば水などを加温し、利用者に提供するものである。
【0003】
具体的には、例えば、特許文献1に記載されているように、縦断面の形状が台形になっている本体ハウジングの台形斜辺に相当する面にソーラーパネルを一体的に取り付けるとともに、ソーラーパネルの集熱板の熱を、本体ハウジング内に設けられた給湯タンクの水に伝熱させることが知られている。
【0004】
集熱板から給湯タンクの水への伝熱は、集熱板に近接して設けられた熱交換器(蒸発器)と給湯タンク内に設けられた熱交換器(凝縮器)とを配管接続し、熱媒を循環通流させることにより行われる。つまり、集熱板の熱により蒸発して気化した熱媒が配管を通流して給湯タンクに至り、そこで水と熱交換して凝縮熱により水を加温するとともに液化し、集熱板へ戻るようになっている。
【0005】
また、本体ハウジング内にヒートポンプなどを利用した補助熱源装置を設け、太陽熱による加温が不充分な場合には、補助熱源装置を稼動させて補うことが行われている。
【0006】
【特許文献1】特開平3−194360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1の太陽熱利用給湯装置には、年間を通じた太陽熱の利用率を向上させることについて、改善の余地を残している。
【0008】
すなわち、太陽高度(水平線と太陽のなす角度)は、夏季は高角度、冬季は低角度となり通年で変化するにもかかわらず、特許文献1の太陽熱利用給湯装置では、集熱板をハウジングに一体に取り付けているので、季節ごとの太陽高度に対応できず、その結果、効率よく太陽光の受光がなされているとはいえない。
【0009】
そこで、本発明は、年間を通じた太陽熱の利用率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の太陽熱利用給湯装置は、太陽熱を集熱する集熱板と、集熱板の熱を伝熱する伝熱手段と、伝熱手段を介して伝えられた熱により加温される水を貯留する貯湯タンクと、貯湯タンクを内包するハウジングとを備えており、集熱板は、ハウジングの側面に、集熱板の上端部を軸として集熱板の板面とハウジングの側面とのなす角度を可変に取り付けられてなることを特徴とする。
【0011】
これによれば、季節ごとに異なる太陽高度に対応して、集熱板を、太陽光の受光量が最大となる角度に調整することが可能となる。したがって、年間を通して効率よく太陽光を受光することができ、その結果、年間を通じた太陽熱の利用率を向上することができる。
【0012】
ここで、年間を通じた太陽熱の利用率とは、集熱板の単位面積当たりの1年間に水に供給した熱エネルギー量のことである。したがって、集熱板の面積及び太陽熱のエネルギー変換効率、伝熱条件、日照条件、などが同一であれば、集熱板の角度を可変に構成することにより、年間の総供給熱エネルギー量は向上する。
【0013】
また、集熱板の上端部を軸として集熱板の板面とハウジングの側面とのなす角度を可変にするためには、例えば、集熱板、或いは集熱板を内包する集熱器の上部とハウジングの側面とを、蝶番式などの固定金具で固定すればよい。
【0014】
また、上述の太陽熱利用給湯装置において、伝熱手段を、集熱板の熱により蒸発するとともに水と熱交換して凝縮する熱媒、及び熱媒を循環する配管で構成するとともに、熱媒を配管の熱媒流路に設けられた熱媒循環ポンプにより循環し、そして、集熱板をハウジングの側面高さと同じ高さに形成することが好ましい。
【0015】
つまり、従来技術のように、熱媒の蒸発及び凝縮による自然循環を利用する場合、気化した熱媒を凝縮する熱交換部位(凝縮部位)の高さ位置に起因して、集熱板の設置高さ位置が制限されることがある。つまり、凝縮部位よりも低い位置から蒸発した熱媒が通流されるように配管を設置する必要があるところ、凝縮部位が低ければ、その分集熱板の設置位置も低くしなければならず、これにより集熱板サイズが制限される場合がある。
【0016】
この点、熱媒を熱媒循環ポンプによって強制循環することにより、凝縮部位の高さ位置に関わらず、例えば凝縮部位よりも高い位置から気相の熱媒を送るように構成しても、熱媒の循環は円滑に行われるので、集熱板をハウジングの側面高さと同じ高さに形成することができる。これによれば、集熱板の面積を大きくすることができるので、その分太陽光を多く受光することができ、供給熱エネルギー量を向上することができる。
【0017】
また、集熱板の板面とハウジングの側面とのなす角度を設定する制御手段と、制御手段からの指令に基づいて集熱板を駆動する駆動手段とを設けて、制御手段を、現在の日付と、記憶手段に格納された日付に対応させて予め設定された角度テーブルとに基づいて、集熱板の板面とハウジングの側面とのなす角度を設定するように構成してもよい。
【0018】
例えば、集熱板を駆動する駆動手段としては、ワイヤとワイヤを牽引する電動モータなどで構成することができる。つまり集熱板、或いは集熱板を内包する集熱器にワイヤを取り付けるとともに、ワイヤの牽引量を電動モータなどで制御することにより集熱板の板面とハウジングの側面とのなす角度を調整することができる。
【0019】
また、その角度の設定は、内蔵された日付タイマーなどによる現在の日付と、記憶手段に格納されている、日付に対応づけられた角度テーブルとにより行われる。角度テーブルは、例えば夏季は太陽高度が高いのでそれに対応させて角度を大きく設定し、一方冬季の低い太陽高度に対応させて角度を小さく設定すればよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、年間を通じた太陽熱の利用率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を適用してなる太陽熱利用給湯装置の実施例を説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の太陽熱利用給湯装置の第1実施例の全体構成を示す概略図である。図1に示すように、太陽熱利用給湯装置10は、ハウジング12と、ハウジング12内の下部に設けられ、例えばヒートポンプ回路を備えた補助熱源装置14と、補助熱源装置14の上部に設けられ、加温対象となる水を貯留する貯湯タンク16と、貯湯タンク16の水を加温する熱を太陽光から集熱する集熱板18が内包された集熱器20などを備えて構成されている。集熱器20の太陽光を受光する側の外表面はガラスパネルで覆われており、集熱板18は、熱伝導性のよい例えばアルミニウム合金などで形成されている。
【0023】
また、貯湯タンク16の上部に設けられた補助熱凝縮器22に、補助熱源装置14の図示していない圧縮機で圧縮された熱媒を通流する補助熱凝縮器入口配管24と、補助熱凝縮器22で水と熱交換して凝縮した液熱媒を補助熱源装置14に戻す補助熱凝縮器出口配管26が接続されている。
【0024】
また、貯湯タンク16の下部に設けられた太陽熱凝縮器28に、集熱板18の熱により気化した熱媒を通流する太陽熱凝縮器入口配管30と、太陽熱凝縮器28で水と熱交換して凝縮した液熱媒を集熱板に戻す太陽熱凝縮器出口配管32が接続されている。そして、集熱器のガラスパネルと集熱板との間の中空部に蛇行して熱交換用の配管(蒸発用配管)が設けられており、この配管の上部と太陽熱凝縮器入口配管30が接続され、下部と太陽熱凝縮器出口配管32が接続されている。つまり、熱媒、集熱板18に近接して設けられた蒸発用配管、熱媒を通流する太陽熱凝縮器入口配管30、太陽熱凝縮器28、太陽熱凝縮器出口配管32などによって、集熱板18の熱を伝達する伝熱手段が構成されている。
【0025】
さらに、貯湯タンク16には、その最下部から加温対象となる水を流入する流入配管34と、その最上部から加温された湯を利用者に供給する供給配管36が接続されている。なお、補助熱源装置14、及び太陽熱の伝達で使用される熱媒は、例えばフレオンなどを用いることができる。
【0026】
続いて、本実施例の太陽熱利用給湯装置10の基本動作を説明する。太陽熱利用給湯装置10は屋根上やベランダなどの日射を受ける場所に設置されており、日中の日射がある場合には、太陽光が、集熱器20のガラスパネルを通過して集熱板18に入射し、集熱板18が熱せられる。すると、集熱板18に近接して設けられている配管内の熱媒が熱せられて蒸発する。
【0027】
気化した熱媒は配管内を上昇して、太陽熱凝縮器入口配管30を介して貯湯タンク16に至り、そこで貯湯タンク16に貯えられている水と熱交換して凝縮熱により水を加温するとともに液化する。凝縮液化した熱媒は、重力により下降して太陽熱凝縮器出口配管32を介して再び集熱板18に近接する蒸発配管の下部へ戻る。
【0028】
このようにして、貯湯タンク16内の水は加温された後供給配管36を介して利用者に供給される。ここで、太陽熱による加温が不充分な場合は、補助熱源装置14が稼動する。つまり、補助熱源装置14の圧縮機が作動して熱媒を圧縮し、高温高圧になった気相の熱媒が補助熱凝縮器入口配管24を介して貯湯タンク16に至る。ここで熱媒は水と熱交換して凝縮熱により水を加温するとともに液化して補助熱凝縮器出口配管26を介して補助熱源装置14に戻る。そして、減圧された後に熱交換により蒸発して気相となり、再び圧縮機に流入する。
【0029】
次に、本実施例の特徴部である集熱器の取り付け態様について説明する。本実施例では、集熱板18を内包する集熱器20の上部と、ハウジング12の側面とが、蝶番式の固定金具38で固定されている。これにより、集熱板18の上端部を軸として集熱板18の板面とハウジング12の側面とのなす角度(θ)を可変にすることができる。
【0030】
また、集熱板18の板面とハウジング12の側面とのなす角度を変更するために、集熱板18を駆動する必要があるが、この駆動手段は、ワイヤとワイヤを牽引する電動モータなどで構成することができる。つまり集熱器20の下端にワイヤの一端を取り付けるとともに、ワイヤの他端を電動モータで牽引して集熱器20を持ち上げて角度θを大きくし、逆にワイヤを送り出して角度θを小さくするように構成し、牽引量、送り量を制御することにより集熱板の板面とハウジングの側面とのなす角度を調整することができる。
【0031】
そして、角度θに相関する牽引量、及び送り量は、ソフトウェアによって実現される制御手段によって設定されるようになっている。まず、太陽熱利用給湯装置10内に設けられている記憶手段に、予め日付に対応付けられて設定された角度テーブルが格納されている。また、日付タイマーなどの機能により現在の日付が得られ、現在の日付に対応する角度を角度テーブルから読み出して角度が設定される。そして、設定角度に対応したワイヤの牽引位置が求められ、現在の牽引位置との対比により牽引量、或いは送り量が算出され、算出された牽引量、或いは送り量に基づく制御指令が電動モータに出力される。
【0032】
角度テーブルは、例えば、最も太陽高度が高い場合(夏至)と低い場合(冬至)の太陽高度を、代表的な位置の緯度、及び地軸の傾きなどから算出して、これに基づいて最も太陽光の受光量が多くなる角度(太陽光に対して集熱板が直交する角度)をそれぞれ求め、その他の日については、例えば1月ごと、半月ごとなどのように、段階的に角度をずらせて設定することができる。
【0033】
このように、本実施例では、季節ごとに異なる太陽高度に対応して、集熱板18を、太陽光の受光量が最大となる角度に調整することが可能となる。したがって、年間を通して効率よく太陽光を受光することができ、その結果、年間を通じた太陽熱の利用率を向上することができる。また、これにより、年間を通して安定した給湯を実現することができる。さらに、補助熱源装置14の稼動機会を低減することができるので、省エネルギー効果を得ることもできる。
【0034】
なお、本実施例では、集熱板18及び集熱器20の角度調整を日付に応じて自動制御する例を示したが、それ以外にも、例えば、一端をハウジング12に固定した棒状のダンパーにより、集熱器20をつっかえ棒のように支えて角度θを調整してもよい。
【実施例2】
【0035】
図2は、本発明の太陽熱利用給湯装置の第2実施例の全体構成を示す概略図である。図2に示すように、本実施例は、熱媒の循環に熱媒循環ポンプを用いている点、及び集熱板18、集熱器20の高さ方向のサイズが大きくなっている点、などが第1実施例と異なるものである。したがって、第1実施例と同様の構成については説明を省略する。
【0036】
本実施例では、太陽熱凝縮器出口配管32の流路に、熱媒循環ポンプ40が設けられている。つまり、本実施例では、第1実施例のような熱媒の気化による上昇、凝縮による下降などを利用した自然循環ではなく、熱媒を強制的に循環することになる。
【0037】
これによれば、貯湯タンク16内での太陽熱凝縮器28の高さ位置に関わらず、太陽熱凝縮器28よりも高い位置から気相の熱媒を送るように構成しても、熱媒の循環は円滑に行われる。したがって、図2に示すように、集熱器20及び集熱板18をハウジング12の側面高さと同じ高さに形成することができる。その結果、集熱板18の面積を大きくすることができるので、その分太陽光を多く受光することができ、供給熱エネルギー量を向上することができる。
【0038】
また、図2に示すように、太陽熱凝縮器28において熱媒を下方から上方に通流することもできるので、熱交換効率などを考慮して、熱媒の通流方向を適宜選択することが可能となる。また、本実施例においても、季節ごとに異なる太陽高度に対応して、集熱板18を、太陽光の受光量が最大となる角度に調整することは可能であるので、実施例1と同様に、年間を通じた太陽熱の利用率を向上することができる。
【実施例3】
【0039】
図3は、本発明の太陽熱利用給湯装置の第3実施例の全体構成を示す概略図である。図3に示すように、本実施例は、集熱器20及び集熱板18をハウジング12に対して脱着可能としている点が第2実施例と異なるものである。したがって、第2実施例と同様の構成については説明を省略する。
【0040】
本実施例では、集熱器20及び集熱板18は、ハウジング12の設置場所と分離した設置場所に設けられている。そして、集熱板18の下端部を軸として集熱板の板面と設置面42とのなす角度(θ)が、角度調整付き架台44により調整可能となっている。
【0041】
これによれば、例えば、ハウジング12の設置場所に日射を遮る障害物があるなどの制約がある場合に、集熱器20及び集熱板18を、ハウジング12と分離して日射条件の良い場所に設置することができる。また、実施例1,2などと同様に、季節ごとに異なる太陽高度に対応して、集熱板18を、太陽光の受光量が最大となる角度に調整することは可能であるので、実施例1,2と同様に、年間を通じた太陽熱の利用率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の太陽熱利用給湯装置の第1実施例の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の太陽熱利用給湯装置の第2実施例の全体構成を示す概略図である。
【図3】本発明の太陽熱利用給湯装置の第3実施例の全体構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
10 太陽熱利用給湯装置
12 ハウジング
14 補助熱源装置
16 貯湯タンク
18 集熱板
20 集熱器
22 補助熱凝縮器
24 補助熱凝縮器入口配管
26 補助熱凝縮器出口配管
28 太陽熱凝縮器
30 太陽熱凝縮器入口配管
32 太陽熱凝縮器出口配管
34 流入配管
36 供給配管
38 固定金具
40 熱媒循環ポンプ
42 設置面
44 角度調整付き架台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱を集熱する集熱板と、該集熱板の熱を伝熱する伝熱手段と、該伝熱手段を介して伝えられた熱により加温される水を貯留する貯湯タンクと、該貯湯タンクを内包するハウジングとを備えた太陽熱利用給湯装置であって、
前記集熱板は、前記ハウジングの側面に、集熱板の上端部を軸として集熱板の板面と前記ハウジングの側面とのなす角度を可変に取り付けられてなる太陽熱利用給湯装置。
【請求項2】
前記伝熱手段は、前記集熱板の熱により蒸発するとともに前記水と熱交換して凝縮する熱媒、及び該熱媒を循環する配管であり、前記熱媒は、前記配管の熱媒流路に設けられた熱媒循環ポンプにより循環され、前記集熱板は、前記ハウジングの側面高さと同じ高さに形成された請求項1の太陽熱利用給湯装置。
【請求項3】
前記集熱板の板面と前記ハウジングの側面とのなす角度を設定する制御手段と、該制御手段からの指令に基づいて前記集熱板を駆動する駆動手段とを備え、
前記制御手段は、現在の日付と、記憶手段に格納された日付に対応させて予め設定された角度テーブルとに基づいて、前記集熱板の板面と前記ハウジングの側面とのなす角度を設定する請求項1の太陽熱利用給湯装置。
【請求項4】
太陽熱を集熱する集熱板と、該集熱板の熱により蒸発するとともに加温対象の水と熱交換して凝縮する熱媒を循環する配管と、該配管の熱媒流路に設けられ前記熱媒を循環させる熱媒循環ポンプと、前記配管を通流する熱媒により加温される水を貯留する貯湯タンクと、該貯湯タンクを内包するハウジングとを備えた太陽熱利用給湯装置であって、
前記集熱板は、前記ハウジングの設置場所と分離した設置場所に、集熱板の下端部を軸として集熱板の板面と設置面とのなす角度を可変に設置されてなる太陽熱利用給湯装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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