説明

太陽電池の製造方法及び太陽電池

【課題】光電変換効率の向上を図ることのできる太陽電池及び太陽電池の製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板2、表面電極層3、光吸収層6、及び裏面電極層9を備える太陽電池の製造方法であって、透明基板の一方の主面側に表面電極層3を形成する表面電極形成工程において、主面側にインジウムの酸化物にドープ元素XをドープしてなるIXO層を形成するIXO層形成工程と、IXO層上にZnO層を形成するZnO層形成工程と、ZnO層の光吸収層側にテクスチャ構造を形成するテクスチャ構造形成工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換効率の向上を図ることのできる太陽電池及び太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この分野に関する技術文献として特公平7−105166号公報等が知られている。この公報に記載されている薄膜シリコン太陽電池は、ガラス基板上に形成されたアルカリバリヤコート層と、その上に形成されたTCO膜(Transparency Conductive Oxide膜)ここでは、フッ素ドープ酸化錫膜による表面電極と、その上に形成された水酸化アモルファスシリコンからなる光電変換層と、その上に形成される第2導電膜(光反射膜、裏面電極とも呼ばれる)で構成されている。また、酸化錫膜の形成方法として、四塩化錫と水との反応を利用して酸化錫膜を常圧CVD法により形成する方法が知られている。
【0003】
この薄膜シリコン太陽電池では、ガラス基板側から入射した光を酸化錫膜を通していかに多くの光を光電変換層に取り込むかが重要であり、また酸化錫膜は電極として働くのでシート抵抗が小さいことも重要である。光を取り込むために酸化錫膜表面を凹凸を有する形状(テクスチャ構造)として光を散乱させることで光を斜めに進行させて光電変換層内における光の経路を長くしている。酸化錫膜は、シート抵抗が小さく、透過率が高く、かつ表面をテクスチャ構造としてヘイズ率が高く均一なものが望まれている。ここでヘイズ率とは拡散透過光量を全透過光量で除した値である(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−105166号公報
【特許文献2】特開2001−59175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の太陽電池の光電変換層として変換効率を改善するためアモルファスシリコンと微結晶シリコンの2層としたタンデム構造が、開発されている。アモルファスシリコンと微結晶シリコンでは、バンドキャップの違いにより吸収する光の波長領域が異なり、アモルファスシリコンのみの光電変換層の場合よりも長波長(900〜1200nm)の光も吸収することができ変換効率が改善される。このタンデム型の太陽電池用TCO膜には、350〜1200nm波長領域での透過率が高く、よりシート抵抗が小さく、ヘイズ率が30〜70%と高い膜が要求されてきており、従来のCVD法によるTCO膜(酸化錫膜)では、対応できなくなっている。
【0006】
そこで、本発明は、このタンデム型太陽電池に要求されるTCO膜を提供できる太陽電池及び太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透明基板、表面電極層、光吸収層、及び裏面電極層を備える太陽電池の製造方法であって、透明基板の一方の主面側に表面電極層を形成する表面電極形成工程において、主面側にインジウムの酸化物にドープ元素XをドープしてなるIXO層を形成するIXO層形成工程と、IXO層上にZnO層を形成するZnO層形成工程と、ZnO層の光吸収層側にテクスチャ構造を形成するテクスチャ構造形成工程と、を含むことを特徴とする。なお、IXO層は、インジウムの酸化物にドープ元素Xをドープした化合物からなる層である。ドープ元素Xとしては、Sn(スズ)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Si(シリコン)等の種々の成分が用いられる。このようなIXO層としては、例えばITO(Indium Tin Oxide)層がある。
【0008】
本発明に係る太陽電池の製造方法によれば、透明基板側から入射した光をテクスチャ構造によって散乱させることで、光を斜めに進行させて光吸収層内の光の経路を長くすることができる。さらに、斜めに進行した光は光吸収層と裏面電極層との境界で反射され、その反射光がテクスチャ構造すなわち光吸収層と表面電極層との境界で再び反射されて光吸収層内に閉じ込められるので、効率良く光電変換を行うことができる。しかも、表面電極層として酸化錫(SnO2)層よりも電気抵抗の低いIXO層を採用することにより、より薄膜で低抵抗の膜を提供することが可能になるので、成膜装置で成膜する部分が少なくて済み成膜装置の価格を低くすることができる。また、成膜装置の装置スペースも小さくできる。さらに、IXO層上にZnO層を形成し、このZnO層上にエッチングによりテクスチャ構造を形成することで、従来のCVD法で形成する場合と比べてヘイズ率の調整も容易で、高いヘイズ率のテクスチャ構造の形成も可能である。従って、この太陽電池の製造方法によれば、光吸収層をアモルファスシリコンと微結晶シリコンからなるタンデム構造としたタンデム型太陽電池に要求されるTCO(Transparent Conductive Oxide)膜を提供できる。
【0009】
本発明に係る太陽電池の製造方法においては、テクスチャ構造形成工程では、エッチング処理によりZnO層にテクスチャ構造を形成することが好ましい。
エッチング処理によるテクスチャ構造の形成を採用することで、テクスチュアリング粒子やブラスト処理により形成する場合と比べてテクスチャ構造形成工程の簡素化及び短時間化が容易になる。
【0010】
また、本発明に係る太陽電池の製造方法においては、エッチング処理は、酸性のエッチング液によってウエットエッチングされることが好ましい。
この場合、エッチング液の濃度やエッチング時間の調整により、テクスチャ構造におけるヘイズ率の調整を容易に実現することが可能になるので、光吸収層の特性等に応じた所望のヘイズ率を得ることができる。このことは、太陽電池の光電変換効率の向上に寄与する。
【0011】
さらに、本発明に係る太陽電池の製造方法においては、エッチング処理において、エッチング液の濃度、エッチング時間、及びZnO層におけるドープ元素の量のうち少なくとも一つを変化させることで、ZnO層のテクスチャ構造におけるヘイズ率を調整することが好ましい。なお、ZnO層におけるドープ成分としてはGa(ガリウム)等がある。また、ドープ元素の太陽電池セル側への拡散による汚染が問題になる場合は、ドープなしのZnO層の場合もある。
【0012】
本発明に係る太陽電池は、透明基板と、透明基板の一方の主面側に形成された表面電極層と、表面電極層上に形成された光吸収層において、インジウムの酸化物にドープ元素XをドープしてなるITO層と、ITO層上に形成されたZnO層と、を有し、ZnO層の光吸収層側にはテクスチャ構造が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上述のタンデム型太陽電池に要求されるTCO膜を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る太陽電池の一実施形態を示す構成図である。
【図2】アモルファスシリコン層及び微結晶シリコン層の分光感度特性を示すグラフである。
【図3】テクスチャ構造形成工程を説明するための図である。
【図4】(a)は、濃度0.1%の塩酸によるエッチング時間とテクスチャ構造の凹凸の粗さとの関係を示す図であり、(b)は、濃度0.5%の塩酸によるエッチング時間とテクスチャ構造の凹凸の粗さとの関係を示す図である。
【図5】図4(a)に対応するエッチング時間、ヘイズ率、及びZnO層の厚さの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る太陽電池の製造方法及び太陽電池の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る太陽電池1は、白板ガラス基板(透明基板)2に、アルカリバリア層12、表面電極層3、光吸収層6、及び裏面電極層9をこの順番に積層して構成されている。この太陽電池1では、白板ガラス基板2側から入射した光が表面電極層3を透過して光吸収層6内に入り込むと、光起電力効果により光吸収層6内で電力に変換され、この電力が表面電極層3及び裏面電極層9を通じて外部に出力される。
【0017】
表面電極層3は、ITO(Indium Tin Oxide)層4及びZnO層5から構成されている。ITO層4は、白板ガラス基板2上に形成されている。ITO層4は、In(酸化インジウム)にSnO(酸化スズ)を添加した化合物から構成されており、SnO等の他の透明導電性素材と比べて低い電気抵抗と表面電極層3として十分な透過率とを有している。また、ITO層4は、外部に電力を出力するための外部電極と接続されている。このITO層4の厚さは、薄いほど透過率及びコストの面から有利であるが、表面電極層3として必要なシート抵抗との兼ね合いにより決定される。具体的には、表面電極層3として10Ω/□(ohm/square)のシート抵抗が必要とされる場合、150nm程度の厚さに形成される。
【0018】
ZnO層5は、Ga(ガリウム)やAl(アルニミウム)を添加したZnO(酸化亜鉛)及びドープ元素なしのZnOから形成されている。ZnO層5は、光吸収層6と接するように配置されており、ZnO層5の光吸収層6側の表面にはテクスチャ構造Tが形成されている。テクスチャ構造Tは、白板ガラス基板2側から入射した光を光吸収層6に閉じ込めるために形成される微細な凹凸構造であり、太陽電池1の仕様に応じて10%〜90%のヘイズ率を有するものである。なお、本実施形態におけるヘイズ率は、テクスチャ構造Tを通った全ての光に対するテクスチャ構造Tで散乱した光の割合として算出されている。ZnO層5は、必要とされるヘイズ率に応じて例えば200〜400nmの範囲の厚さに形成される。
【0019】
光吸収層6は、ZnO層5上に形成されたアモルファスシリコン層7と、アモルファスシリコン層7上に形成された微結晶シリコン層8と、から構成されている。図2に示すように、アモルファスシリコン層7と微結晶シリコン層8とは分光感度特性が異なっている。アモルファスシリコン層7は、太陽光のうち可視光領域を含む低波長成分を効率良く吸収し、微結晶シリコン層8は、赤外線領域に至る長波長成分を効率良く吸収する。
【0020】
図1に示すように、裏面電極層9は、微結晶シリコン層8上に形成されたZnO層10と、ZnO層10上に形成されたAg層11と、から構成される。ZnO層10は、表面電極層3の微結晶シリコン層8とAg層11との間の干渉を防ぐために設けられている。Ag層11は、太陽電池1の裏面を形成し、外部に電力を出力するための外部電極と接続されている。
【0021】
次に、以上説明した太陽電池1の製造方法について説明する。
【0022】
(表面電極層形成工程)
まず、白板ガラス基板2の一方の主面上にアルカリバリア層12であるSiO2層が形成される。その上に表面電極層3が形成される。この表面電極層形成工程は、ITO層形成工程、表面電極側ZnO層形成工程、及びテクスチャ構造形成工程からなる。なお、アルカリバリア層12の形成は必須ではなく不要の場合もある。
【0023】
ITO層形成工程では、アルカリバリア層12上にITO層4が形成される。このITO層4は、反応ガスのプラズマを利用して蒸発粒子と結合させ、化合物層を合成するRPD(Reactive Plasma Deposition,反応プラズマ蒸着)法によって形成される。その後、表面電極側ZnO層形成工程において、ITO層4上にGaやAlを添加したZnO層5が形成される。ZnO層5も、ITO層4と同様にRPD法によって形成される。このとき、ZnO層5形成時の温度を調整することでZnOの結晶粒のサイズを調整することができる。ZnOの結晶粒のサイズやGa、Alのドープ量は、テクスチャ構造Tで必要とされるヘイズ率及びドープ元素の太陽電池セルへの汚染問題に応じて調整される。なお、ITO層4及びZnO層5を形成する方法は、RPD法に限られず、例えばスパッタ法を用いても良い。
【0024】
図3は、テクスチャ構造形成工程を説明するための概略図である。図3に示すように、テクスチャ構造形成工程は、搬送ローラ13によってアルカリバリア層12上にITO層4及びZnO層5が形成された白板ガラス基板2を矢印F方向に搬送した状態で進められる。なお、白板ガラス基板2は、ZnO層5を上面として搬送ローラ13上に配置される。
【0025】
まず、基板表面の粗洗浄処理が行われる。粗洗浄処理では、洗浄ノズル14から噴射される洗浄水により白板ガラス基板2に付着したほこり等が洗い流される。その後、水切り用エアーノズル15から噴射される高圧空気により白板ガラス基板2の水切り処理が行われる。
【0026】
続いて、基板のZnO層5に対するエッチング処理が行われる。エッチング処理では、エッチング液として所定の濃度に調整された塩酸が用いられ、エッチング用噴射ノズル16からZnO層5に向けて塩酸を噴射することでウエットエッチングが行われる。塩酸を吹きかけられたZnO層5の表面(光吸収層6側)では、化学反応によって微細な凹凸すなわちテクスチャ構造Tが形成される。なお、エッチング液は、塩酸に限られず他の酸性液体を用いても良く、また適切にテクスチャ構造Tを形成可能なものであればアルカリ性の液体であっても良い。
【0027】
ここで、図4(a)は、濃度0.1%の塩酸によるエッチング時間とテクスチャ構造Tの凹凸の粗さとの関係を示す図であり、図4(b)は、濃度0.5%の塩酸によるエッチング時間とテクスチャ構造Tの凹凸の粗さとの関係を示す図である。また、図5は、図4(a)に対応するエッチング時間、ヘイズ率、及びZnO層の厚さの関係を示すグラフである。
【0028】
図4及び図5に示すように、ZnO層5に形成されるテクスチャ構造Tは、エッチング時間が長くなるにつれて凹凸の粗さが粗く(凹凸の差が大きく)なり、ヘイズ率が高くなる傾向にある。また、エッチング液である塩酸の濃度が高いほど、短時間でテクスチャ構造Tの凹凸が粗くなる。このため、塩酸の濃度及びエッチング処理の時間を適切に設定することで、テクスチャ構造Tのヘイズ率を調整することが可能となる。さらに、成膜時の温度やZnOにGa等をドープする量を変化させても、ヘイズ率を変化させることができる。表1に、ZnOに対するGaのドープ量や成膜温度等を変化させた時のテクスチャ構造Tのヘイズ率を示す。表1に示すように、塩酸濃度、エッチング時間、Gaのドープ量、及び成膜温度を変化させることでテクスチャ構造Tのヘイズ率を10〜70%の範囲で調整することが可能である。
【表1】

【0029】
その後、白板ガラス基板2に対する液切り処理が行われる。液切り処理では、液切り用エアーノズル17から噴射される高圧空気により白板ガラス基板2の表面の塩酸が吹き飛ばされる。続いて、リンス用噴射ノズル18から噴射されるエッチングリンス液により白板ガラス基板2に付着した塩酸の除去するリンス処理が行われる。そして、最後に水切り用エアーノズル19から噴射される高圧空気により白板ガラス基板2に付いたエッチングリンス液を水切りする水切り処理が行われ、テクスチャ構造形成工程が終了する。
【0030】
(光吸収層形成工程)
次に、テクスチャ構造Tが形成されたZnO層5上に光吸収層6が形成される。光吸収層形成工程は、アモルファスシリコン層形成工程及び微結晶シリコン層形成工程からなる。
【0031】
アモルファスシリコン層形成工程では、白板ガラス基板2上にアルカリバリア層12を形成し、その上のZnO層5上にアモルファスシリコン層7を形成する。アモルファスシリコン層7は、プラズマCVD法により形成される。その後、微結晶シリコン層形成工程において、アモルファスシリコン層7上に微結晶シリコン層8が形成される。微結晶シリコン層8も、プラズマCVD法により形成される。なお、アモルファスシリコン層7及び微結晶シリコン層8の形成方法は、上記の方法に限定されない。
【0032】
(裏面電極層形成工程)
続いて、微結晶シリコン層8上に裏面電極層9が形成される。裏面電極層形成工程は、裏面電極側ZnO層形成工程及びAg層形成工程からなる。裏面電極側ZnO層形成工程では、スパッタ法により微結晶シリコン層8上にZnO層10が形成される。その後、Ag層形成工程において、ZnO層10と同じくスパッタ法によりZnO層10上にAg層11が形成される。なお、ZnO層10及びAg層11の形成方法は、スパッタ法に限定されない。
【0033】
以上説明した太陽電池1の製造方法及び太陽電池1によれば、光吸収層6にアモルファスシリコン層7及び微結晶シリコン層8の積層構造を採用することで、どちらか一方を用いる場合と比べて吸収される太陽光の波長領域が著しく拡大される。さらに、表面電極層3としてITO層4及びZnO層5の積層構造を採用することで、従来のSnO2(酸化スズ)層を用いる場合と比べて、低抵抗でかつ900〜1200nmまでの長波長の光も透過率を改善することができる。その結果、アモルファスシリコン層7及び微結晶シリコン層8からなる光吸収層6の性能を十分に活用することが可能となり、光電変換効率の大幅な向上を図ることができる。
【0034】
また、この太陽電池1の製造方法及び太陽電池1によれば、白板ガラス基板2側から入射した光をテクスチャ構造Tによって散乱させることで、光を斜めに進行させて光吸収層6内の光の経路を長くすることができる。さらに、斜めに進行した光は光吸収層6と裏面電極層9との境界で反射され、その反射光がテクスチャ構造Tすなわち光吸収層6と表面電極層3との境界で再び反射されて光吸収層6内に閉じ込められるので、効率良く光電変換を行うことができる。しかも、表面電極層3として酸化錫(SnO2)層よりも電気抵抗の低いITO層4を採用することにより、より薄膜で低抵抗の膜を提供することが可能になるので、成膜装置で成膜する部分が少なくて済むので成膜装置の価格を低くすることができる。また、成膜装置の装置スペースも小さくできる。さらに、ITO層4上にZnO層5を形成し、このZnO層5上にエッチングによりテクスチャ構造を形成することで、従来のCVD法で形成する場合と比べてヘイズ率の調整も容易で、高いヘイズ率のテクスチャ構造の形成も可能である。従って、この太陽電池1の製造方法及び太陽電池1によれば、光吸収層6がアモルファスシリコン層7及び微結晶シリコン層8からなるタンデム型太陽電池に要求されるTCO(Transparent Conductive Oxide)膜を提供できる。
【0035】
さらに、この太陽電池1の製造方法によれば、エッチング処理によるテクスチャ構造の形成を採用することで、従来の常圧CVD法によりテクスチャ構造を形成する場合と比べてウエットエッチングによるエッチング処理を行うことで、エッチング液の濃度やエッチング時間の調整によるヘイズ率の調整を容易に実現することが可能になるので、光吸収層6の特性等に応じた所望のヘイズ率を得ることができる。このことは、太陽電池1の光電変換効率の向上に寄与する。
【0036】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、Sn(スズ)をドープ元素としたITO層4に代えて、ドープ元素をW(タングステン)、Mo(モリブデン)、Si(シリコン)等とした層を採用しても良い。
【0038】
また、テクスチャ構造Tは、ウエットエッチングではなく、ドライエッチングにより形成されても良く、その他ブラスト処理等によって形成されても良い。また、テクスチャ構造Tの形成は、ZnO層5の形成環境を制御することによるZnOの結晶粒のサイズの調整によって実現される態様であっても良い。
【0039】
また、光吸収層6は、アモルファスシリコン層7及び微結晶シリコン層8からなる積層構造のものに限られず、アモルファスシリコン層7又は微結晶シリコン層8のどちらか一方のみから構成されていても良い。
【0040】
さらに、本発明はシリコン系の太陽電池以外にも適用可能であり、例えばCdTe(テルル化カドミウム)−CdS(硫化カドミウム)系の太陽電池に対しても好適に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1…太陽電池、2…白板ガラス基板(透明基板)、3…表面電極層、4…ITO層、5…ZnO層、6…光吸収層、7…アモルファスシリコン層、8…微結晶シリコン層、9…裏面電極層、10…ZnO層、11…Ag層、12…アルカリバリア層(SiO2層)、T…テクスチャ構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板、表面電極層、光吸収層、及び裏面電極層を備える太陽電池の製造方法であって、
前記透明基板の一方の主面側に前記表面電極層を形成する表面電極形成工程において、前記主面側にインジウムの酸化物にドープ元素XをドープしてなるIXO層を形成するIXO層形成工程と、前記IXO層上にZnO層を形成するZnO層形成工程と、前記ZnO層の前記光吸収層側にテクスチャ構造を形成するテクスチャ構造形成工程と、を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記テクスチャ構造形成工程では、エッチング処理により前記ZnO層に前記テクスチャ構造を形成することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記エッチング処理は、酸性のエッチング液によってウエットエッチングされることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記エッチング処理において、前記エッチング液の濃度、エッチング時間、及び前記ZnO層におけるドープ元素の量のうち少なくとも一つを変化させることで、前記ZnO層の前記テクスチャ構造におけるヘイズ率を調整する請求項3に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
透明基板と、
前記透明基板の一方の主面側に形成された表面電極層において、インジウムの酸化物にドープ元素XをドープしてなるIXO層と、前記IXO層上に形成されたZnO層と、を有し、
前記ZnO層の前記光吸収層側にはテクスチャ構造が形成されていることを特徴とする太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−166016(P2011−166016A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29036(P2010−29036)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】