説明

太陽電池の製造方法

光起電装置のパターン化粒子層を製造する方法であって、流動化ユニットに乾燥粉末を供給する工程、前記粉末を流動化して流体流れを形成する工程、前記流体流れをノズルを印刷ユニットに搬送する工程を含む方法。印刷ユニットは、可変量の流れを基材に向け、流れの残りを流動化ユニットに戻す手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感太陽電池は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のグレッツェル(Gratzel)およびオリガン(O'Regan)により1991年に発明された比較的新しい部類の低コスト太陽電池である。グレッツェルにより記載されたようなこれらの色素増感太陽電池の従来の形態は、例えばITOガラスなどの透明導電性基材上に色素で被覆された二酸化チタンナノ粒子の焼結層(アノード)が存在するものから構成される。この層の細孔内又はこの層の上に、電子(又は正孔)移動剤としてヨウ化物/三ヨウ化物を通常含む正孔輸送電解質が配設される。電解質の上に、触媒としてしばしば白金を用いて作製される触媒作用のある導電性電極(カソード)を配設することによって、太陽電池のサンドイッチ構造が完成する。この電池に光を当てると、色素が励起されて、電子がチタン構造中に注入される。励起されて正の電荷を帯びた色素は、電解質中の還元形の酸化還元対をその酸化形に酸化する。すなわちヨウ化物は三ヨウ化物となる。すると酸化形のものは白金電極へ拡散することができる。電池を負荷に接続すると、アノードからの電子が負荷を通してカソードに流れ、カソードにおいて酸化形の酸化還元対が還元され(すなわち、三ヨウ化物はヨウ化物になる)、反応が完結する。
【0003】
メソポーラスナノ粒子層をパターン化する従来法としては、特に、押出コーティング、スクリーン印刷、グラビア印刷及びスプレー印刷が挙げられる。
【0004】
米国特許第7,186,911号明細書には、押出コーティング、スプレーコーティング、スクリーン印刷及びグラビア印刷などの適切な技術を使用して基材上に金属酸化物ナノ粒子の溶液を適用することにより堆積させることができる色素増感ナノ粒子材料が開示されている。
【0005】
米国特許第6,991,958号明細書には、電荷キャリヤ輸送チャネル層をテンプレートする方法が開示されている。これらの層は、まず、除去可能なテンプレートを、ナノ粒子、例えばポリスチレンナノ粒子の1つ又は複数の層を含みうる導電性基材上に堆積させることにより形成される。次に、例えばスピンコーティング、キャスティング、蒸発などの技術または基材上に材料を堆積させるための当該技術分野で知られている任意の技術を使用して、テンプレート上に第1の電荷キャリヤ輸送材料、例えばTiO2の層を堆積させる。次に、テンプレートが除去される。
【0006】
米国特許第6,713,389号明細書には、一連のカスタム流体の液滴を射出するために液滴付着技術及び連続インクジェットプリントヘッド(及び静電スプレーヘッド)を使用する方法が開示されている。カスタム流体の液滴は、特定の表面上で適切に乾燥/固化した場合に太陽電池(PV)装置の要素を形成する。このプロセスで使用される材料は例えばTiO2などの有機金属を含んでもよい。
【0007】
英国特許第2427963号明細書には、第1のパターン化透明導電性電極を含み、第2の電極層と金属酸化物色素増感層との交互セクションを有する色素増感太陽電池が記載されている。この出願では、パターン化透明電極層(例えばTiO2)は、例えばコンタクト印刷、リソグラフィーなどの技術を使用してパターン化される。第2の電極層(例えばPt)及び金属酸化物層(例えばTiO2)は両方ともマスクを使用してパターン化される。
【0008】
国際公開第2007/098366号明細書には、将来の分析のために微量の残留物を対象から集めるための微量収集システム及び方法が開示されている。一実施態様は、プリントヘッドを使用して印刷されるコンベヤーベルト上の対象物を含むことがある。一実施態様では、プリントヘッドにおいて使用されるインクは、非毒性粒子、例えば二酸化チタンなどを含むことがあり、粒子は対象物に静電的に不着してもよい。粒子は、乾燥した状態又は液体キャリヤ中に懸濁された形態で対象物に向けることができる。液体キャリヤは、次に、蒸発する。
【0009】
国際公開第2007/138348号公報には、光電極、対向電極、電荷キャリヤ材料、及び対向電極と電荷キャリヤ材料の間に配置された多孔質の電気絶縁性セパレーター材料を含む光起電電池が開示されている。この出願の一実施態様において、光電極は、マスクを通してのチタニア粉体の静電スプレーにより所望のチタニア領域を形成することにより作製される。
【0010】
欧州特許出願公開第1830430号公報には、透明支持体を含み、その上に多孔質フィルムが形成された光起電装置が開示されている。この多孔質フィルムは色素を吸着し、酸化アルミニウムをドープした二酸化チタン粒子と酸化アルミニウムをドープしていない二酸化チタン粒子とを含む。一実施態様において、多孔質フィルムは、スキージ法を使用して支持体上に二酸化チタンペースト(二酸化チタン粒子を酸性水溶液、増粘剤及び分散剤と混合することにより調製される)をコーティングすることにより作製される。
【0011】
米国特許第7019391号明細書には、チップからの熱を除去するためにチップと熱連通しているナノセラミック材料を含む半導体基板から熱を散逸させるシステム及び方法が開示されている。一実施態様において、プラズマスプレー法、サーマルスプレー法、粉体スプレー法又は静電促進粉体スプレー法から選ばれる方法によりナノ複合材料粉体がスプレーされる。
【0012】
一般的に、乾燥粉体は、ガンを通じての大面積スプレーによって、表面コーティングとして適用される。2つのタイプの粉体コーティングシステム、すなわちコロナガン及び摩擦帯電ガンが通常使用される。両方の場合に、ガス流、通常空気により多量の粉体を流動化させ、コーティングされるべき表面からある程度離して設置されたスプレーガンに送り込む。表面に付着しなかった粒子(オーバースプレーと呼ぶ)は、その後集められ、そして、それらがまだ適切な品質を有するものであることを確認した後に、当該システムに再導入される。
【0013】
コーティングされるべき表面に対して高い電位(約100kV以下)に電極を帯電させるために高電圧発生器を使用する。帯電した電極は、空気と絶縁され、帯電粒子のフラッドを生じ、粉体クラウドがガンを通過する際に粉体を効果的に帯電させ、反対極、すなわち接地面との電場を生成させる。ガンを出た帯電粉体粒子は、次に、接地面のより低い電位を探し求める。
【0014】
対照的に、摩擦ガン(Tribo gun)は、粉体と、電子を供与又は受容することができる当該ガンの内部表面との間の物理的接触により粉体に電荷を付与する。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又は「テフロン(登録商標)」)が一般的に使用される。周囲の湿度条件が帯電に影響を及ぼし、相対湿度が50%を超えず、圧縮空気の露点が35°F以下に保たれることがしばしば推奨される。様々な様式のもの、例えば米国特許第3,724,755号及び米国特許第4,388,945号明細書に示されているものが知られている。
【0015】
コロナガンが使用される場合に、物質輸送を方向付ける主な力は、電荷を帯びた粉体クラウドと接地面との間に形成された電場である。摩擦粉体コーティングシステムにおいて、主な物質輸送手段は、粉体を流動化させ表面に運ぶために使用される空気流である。さらに、摩擦ガンでは、粒子速度が高いほど、より良好な帯電をもたらす。スプレーされた粉体は、その後、例えばオーブン内で粉体を融解させることによって、表面に固定化される。
【0016】
一般的に、粗い粉体粒子は小さい粒子よりも有効に帯電する。この文脈では、平均粒径は通常40ミクロンである。このことは、粉体粒子の質量が大きいほどおよびモーメントが大きいほど、空気流により推進された場合に、帯電モジュールの壁により有効に衝突し、より小さいサイズの粒子よりも大きな摩擦効果を生じ、その結果、より良好に帯電すると仮定することができる。どんな場合でも、小さい粒子サイズをスプレーすることは、健康上及び安全上の配慮により制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第7,186,911号明細書
【特許文献2】米国特許第6,991,958号明細書
【特許文献3】米国特許第6,713,389号明細書
【特許文献4】英国特許第2427963号明細書
【特許文献5】国際公開第2007/098366号
【特許文献6】国際公開第2007/138348号
【特許文献7】欧州特許出願公開第1830430号明細書
【特許文献8】米国特許第7,019,391号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
Gratzel電池を製造する際の重要な工程は、二酸化チタンナノ粒子を含んで成るパターン化層(典型的には20〜60ミクロン厚)を形成することである。従って、支持体上に大面積のパターンを作製するには、比較的高いレイダウンの密なナノ粒子材料を均一な層として適用しなければならない。現在、これは、通常、3つの方法のうちの1つで行われている。粉体は、揮発性の「キャリヤ」液体又は「ビヒクル」を使用してコーティングされる。代わりに、粉体をインクに導入し、印刷することができる。第3に、粉体をスプレーすることができ、この場合には、揮発性の「キャリヤ」液体の使用は任意である。
【0019】
これらの方法のそれぞれは幾つかの欠点を有する。コーティングは、例えばスロットダイコーティング、リバースローラーコーティング、ブレードコーティングなどの様々な確立された方法のうちの1つを使用して達成できるが、全ての場合において、乾燥が必要とされ、そのために層の亀裂発生が起こることがあり、パターン化層を作製するために何らかの形のテンプレートが必要とされる。層を印刷することによってパターンを生じさせることができるが、その場合にも乾燥が必要とされ、印刷プロセスにとって重要であるがしばしば電池性能に有害なことがある追加の添加剤をインクに導入しなくてはならず、追加の添加物は層中に残留する。最後に、ビヒクルを使用しない場合であっても、粉体スプレーは、テンプレートを使用しないでパターンを生成することはできず、層厚を制御することは困難である。そのため、廃棄物は増え、効率が低下する。これらの方法のいずれを使用しても可変パターニングは不可能である。
【0020】
より有効な方法は、必要なパターンを形成するために表面に乾燥粒子を直接適用することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によると、太陽電池を製造する方法であって、比較的高いレイダウンの密な粒子状材料を均一な層として直接適用して基材上にパターンを生成する方法が提供される。これは、確立されたスプレー、印刷又はコーティング法と異なる可変印刷方法によって達成される。当該可変印刷方法では、非常に低い濃度の乾燥粒子が低速度のガス流中に導入され、管を通じて印刷ユニットに流体として搬送される。印刷ユニットは、堆積に使われるべき流体流れの部分を小さなノズルに通して基材上に向ける。基材上に向けられなかった流体流れはこの系を通って再循環される。
【0022】
本発明によると、光起電装置の少なくとも1つのパターン化粒子層を製造する方法であって、流動化ユニット(fluidizing unit)に乾燥粉体を供給する工程、前記粉体を流動化して流体流れを形成する工程、可変量の前記流体流れをノズルを通じて基材に向ける手段を含む印刷ユニットに前記流体流れを搬送する工程、及び前記基材に向けられなかった流体流れを前記流動化ユニットに再循環させる工程を含み、前記流体流れが連続的に再循環される、方法が提供される。
【0023】
ノズルから出る流体速度は、正確な堆積が起こるようにノズルを基材に近接して配置させることを可能にするのに十分に低い。このやり方では、ノズルから出る流体ジェットは、概して、柱状の流体に収束されたままとなる。基材の表面を接地させる必要はない。
【0024】
これらの層の可変パターンは、1つ又は2つ以上のノズルを用いて書き込むことによって、又は基材が移動する場合にはノズルの静止アレイを使用することによって、あるいは、これらの両方によって、達成することができる。低い流体速度は、搬送される粉体の量を非常に低い濃度に制限し、その結果、摩擦帯電粒子の帯電を、流動化器から印刷ユニットへの搬送中に、印刷ユニットで、又は両方の状況で、引き起こすことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、密な粉体粒子から構成される層が、都合よく変えることができるパターンで基材上に形成される、太陽電池の製造を可能にする。これは、ロール・トゥー・ロール製造(roll to roll manufacturing)に特に適用可能である。この方法は、揮発性のキャリヤ液体、追加の添加物又は乾燥を必要としないということを可能にし、その結果、乾燥時にしばしば遭遇する層の亀裂発生が防止され、電池性能が改善される。層の全体的な構造、組成及び形態を必要に応じて変えることができる。必要であれば組成の異なる複数の層を堆積させることができる。パターンテンプレートを必要としないため、かかる装置を使用することに関連する廃棄物及び非効率性が避けられる。特別な処置なしで、著しいレベルの粒子の凝集及び接着が生じ、その結果、粒子が、堆積後かなりの時間にわたってそれらのパターン化形態で、互いに及び基材にしっかり固定される。
本発明を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の方法での使用に適する装置の概略図である。
【図2】図2は、対照電池の写真の写しである。
【図3】図3は、実験電池Aの写真の写しである。
【図4】図4は、実験電池Bの写真の写しである。
【図5】図5は、対照電池、電池A及び電池Bの性能を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明において記載した方法を使用して印刷された二酸化チタンパターン化粒子の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の方法を実施するために使用される装置の概略図である。粉体供給ユニット3は流動化器(fluidizer)1に接続されている。管3は流動化器を印刷ユニット4に接続している。印刷ユニットはノズル5を備える。管7は、印刷ユニットをもとの流動化器1に接続している。使用の際、当該装置は、基材8の上に設置される。
【0028】
本発明によると、太陽電池を製造するために、乾燥粉体が下記の方式で印刷される。粉体は、管3を通って印刷ユニット4に搬送される前に、非常に低い濃度で非常に低い速度のガス流でまず流動化される。印刷ユニット4は、堆積に使われるべき流体流れの部分を小さなノズル5に通し、そして基材8上に向けるバルブを含む。基材上に向けられなかった流体流れの部分は流動化器1へ戻される。
【0029】
粉体の粒子サイズは1ミクロン未満である。このサイズは、好ましくは500nm未満であり、よりこのましくは100nm未満である。
【0030】
ノズル5は、基材8の近くに設置され、印刷は、所望のパターンを生成させるために、基材上でノズルを移動させることによって、ノズルの下方で基材を移動させることによって、又はこれらの両方によって達成される。これは、ロール・トゥー・ロール製造方法に向いている。ノズルと基材との間の距離は1mm〜40mm、より好ましくは2mm〜30mm、最も好ましくは3mm〜20mmである。
【0031】
ノズルから出るガス速度は0.1〜2m・s-1、より好ましくは0.2〜1.5m・s-1、最も好ましくは0.3〜1m・s-1である。ノズルの直径は、ノズルから出る流体流れのレイノルズ数により特徴付けられる乱流が1〜100、より好ましくは2〜50、最もこのましくは3〜25であるようなものである。ここで、
レイノルズ数Re=vDn
(式中、v=流体速度、Dn =ノズル内径、及びμ=ガスの動的速度である)、すなわち、慣性力と粘性力の比である。ノズル直径についてのさらなる制約は、ノズルの幅が可能な最低印刷ライン幅にほぼ近いため、フィーチャーを印刷するのに必要とされる正確さであろう。
【0032】
流動化された粉体を印刷ユニットに及び印刷ユニットから搬送するのに使用される管3及び7(図1参照)の直径がノズル直径よりも大きいことが望ましい。これは、粉体搬送中の管閉塞及び粒子の凝集を避けることを助ける。しかしながら、より幅広い管であるほど、管内での流体速度がノズル内での流体速度よりも比例的に低いことを必要とする。正確な管直径は、ガス速度が管直径の二乗に反比例するという知識から推定される。例えば、管直径がノズル直径の十倍の大きさである場合には、管内の流体速度はノズル内の流体速度の100分の1の大きさである。本発明の一実施態様において、内径0.5mmのノズルから射出される粉体ジェットの速度は1m・s-1であると推定され、そのため、内径5mmの管内の粉体の速度は非常に低く、たった0.01m・s-1である。管を通して輸送できる粉体の量は管内のガス速度に比例するため、ごく少量の粉体が搬送される。
【0033】
空気搬送系は、管路内の平均粒子濃度によって分類される(Pneumatic conveying of solids, Klinzing, G.E., Marcus, R.D., Rizk, F.及びLeung, L.S., 第2版, Chapman and Hall, 1997参照)。本発明ではごく少量の粉体が搬送されるため、この系は「希釈相(dilute phase)」として分類されるであろう。「希釈相」系の定義は、質量流量比(μ)、すなわち固体の質量流量比(G)とガスの質量流量比(Q)が15以下であるものである。希釈系の場合に、
【0034】
【数1】

【0035】
である(G及びQはkg・s-1単位))。おそらく、希釈相系のより分かり易い心象図は、所与の管体積内の粒子の周りの空間の量を記述する「空隙率」、ε、を考察することにより得られる。
【0036】
【数2】

【0037】
(式中、V及びVは、それぞれ、総管体積及びその中に閉じ込められた固体の体積である)。密度が1300kg・m-3である物質の場合には、15の質量流量比は0.98の空隙率又は98体積%と等価である。そのため、ガス流は当該物質をほぼ離散粒子として運ぶ。これは、粒子速度が「躍動(saltation)」(すなわち、粒子が急増する不安定な状態で流れるという状況、本発明において、これは搬送される粉体の量を制限する)を避けるのに十分である限り起こる。
【0038】
「躍動」速度、すなわち、特定の質量流量比の流体流れの場合の躍動を避けるのに必要な最低流体速度を決定することは、躍動速度が管内で搬送できる粉体の量をその管内の流体速度に関連付けるために重要である。現在のところ、これは、経験式を使用することによってのみ行うことができる。例えば、Matsumoto他(Matsumoto, S., Kikuta, M及びMaeda, S.(1977), J. Chem. Eng. Japan, 10, No.2, 273)による式は、
【0039】
【数3】

【0040】
(式中、d=ミリメートル単位での粒子直径、D=ミリメートル単位での管直径、及びFsは躍動速度でのフルード数(Froude number)である)であり、
【0041】
【数4】

【0042】
(式中、v=流体速度、D=管の内径、及びg=重力定数である)、慣性力と重力の比である。
【0043】
本発明の一実施態様において、20nmの二酸化チタン粒子を流動化させ、最終的には、1m・s-1の速度で内径0.5mmのノズルから噴出させる。粒子は内径5mmの管を通じて速度0.01m・s-1で印刷ユニットに搬送され、ひいてはノズルに搬送される。これらの条件のもとで、上記式(1)に従うと、最大質量流量比はおよそ0.1程度であり、この値は体積百分率で0.05%未満の粉体を含む流体流れに相当する。このような推定には大きな誤差が生じやすいが、本発明が機能する原理を例示することに役立つ。これらの条件のもとではごく少量の乾燥粉体を搬送できるが、乾燥粉末は、非常に小さな領域、すなわちおよそノズルの断面積、この場合には0.2mm2に堆積される。本発明において使用できる別の金属酸化物粒子としては、酸化錫(SnO2)、酸化タングステン(WO3)酸化亜鉛(ZnO)酸化ニオブ(Nb25)及び酸化アンチモン(Sb25)が挙げられ、これらの粒子の粒径は1ミクロン未満であることができる。
【0044】
摩擦帯電効果を得ようとする手の込んだ取り組みはなされないが、この印刷法の性質からそれらが用いられてもよい。ごく少量の粉体が搬送されるため、例えば、適切なポリマー、例えばPTFEなどで作られた又はライニングされた粉体が管に沿って搬送される際に帯電が起こる。同様に、帯電は印刷ユニット内でも起こる。印刷後、かなりの接着力および凝集力が粒子を、堆積後長時間にわたって、それらのパターン化形態で互いに固定し合う及び表面に固定する機能を果たす(図6参照)。これらは、パターン化層を激しく移動させる又は適度な空気流に曝す場合でも十分である。しかしながら、これらの効果の強さ及び持続時間は並外れて大きい。
【0045】
印刷後、標準的な方法を使用して層を処理して色素増感太陽電池を作製した。
【実施例】
【0046】
例1:対照電池
二酸化チタンを、使用前に、90℃のオーブン内で一晩乾燥させた。この二酸化チタンは、平均粒子サイズが21nmである二酸化チタン試料(Degussa Aeroxide P25、比表面積(BET)=50+/−15m2/g)であった。可撓性の色素増感太陽電池を以下のように作製した。
【0047】
約30μm厚のメソポーラスTiO2フィルムの複数の層を、以下の量で乾燥メチルエチルケトンと酢酸エチルの混合物中に乾燥TiO2を分散させることによって、パターン化13Ω/平方ITO−PEN上に堆積させた。
Degussa P25 TiO2(21nm粒子) 1.35g
メチルエチルケトン 45g
酢酸エチル 5g
【0048】
得られた混合物を、1mmノズルを備えたSATAminijet 3 HVLPスプレーガン及び2バールの窒素キャリヤガスを使用して約25cmの距離から導電性プラスチック基材の全域にスプレーする前に、15分間超音波処理した。層を、2枚のテフロン(登録商標)シートの間に入れて、2つの研磨ステンレススチルボルスターの間に挟み、3.75トン/cm2の圧力で圧縮する前に、90℃のオーブン内で1時間乾燥させた。焼成された層を、次に90℃でさらに1時間乾燥させた。
【0049】
試料を、次に、ルテニウムcis−ビス−イソチオシアナトビス(2,2’ビピリジル−4,4’ジカルボン酸)の3×10-4mol・dm-3溶液中に一晩入れることにより増感させた。この試料を、次に、色素増感太陽電池を組み立てるのに使用した。
白金被覆ステンレススチール箔電極を真空下でのスパッタ堆積により作製した。
色素増感TiO2層及び白金対向電極を、イオン性液体電解質が間に入るサンドイッチ型構成で配置した。この電解質は、
0.1M LiI
0.6M DMPII(ヨウ化1,2ジメチル-3-プロピル-イミダゾリウム)
0.05M I2
0.5M N−メチルベンゾイミダゾール
溶剤=MPN(メトキシプロピオニトリル)
から構成された。
この例は、対照電池とした。図2は完成した電池を示す。
【0050】
例2:実験電池A
DegussaによりAeroxide P−25として供給された実施例1で使用した材料、すなわちアナタース:ルチル比が約80:20であり平均一次粒子サイズが21nmである二酸化チタンナノ粒子を、本発明に従う上記方法を使用して印刷した。この例では、ナノ粒子状粉体を空気中で流動化させ、最終的には、内径0.5mmのノズルから約1m・s-1の速度で噴出させた。このノズルは印刷ユニットの一部を構成していた。粒子は、内径5mmのシリコン管を通じて印刷ユニットに搬送され、ひいてはノズルに搬送される。管内の流体流れ中の粉体の濃度は0.05体積%未満であると推定された。この例では、上により実質的なパターン化総を印刷する前に、パターン化された薄い粉体層がITO被覆フィルム上に最初に印刷した。この方法で適用された二酸化チタンの総レイダウンは、上記例1におけるスプレーによるものとほぼ等しかった。図3は、完成した電池を示す。
この方法で印刷されたパターン化層を、次に、上記例1に記載した手順を使用して太陽電池に仕立てた。
【0051】
例3:実験電池B
この例(実験電池Bの呼び名を付けた)を作製するためにほぼ半分の量の材料を堆積させたことを除いて、例2に記載した方法および手順を繰り返した。従って、この方法で適用された二酸化チタンの総レイダウンは上記例1におけるスプレーによるものとほぼ等しかった。図4は、完成した電池を示す。
【0052】
作製後、例1、2及び3に記載の色素増感太陽電池を、可視領域の太陽スペクトルを人工的に再現して太陽光の0.10倍の照度を与える光源のもとに置くことにより、それらを特性評価した。得られたデータは、図5に示されており、上記の方法を使用して作製された電池が適切な結果をもたらしたこと、すなわち、良好な電流及び電圧が達成されたことを示した。上記の印刷電池を、通常のスプレー方法を使用して作製された対照電池と比較し、その性能が等しいレイダウンの場合に等価であることが判った。
【0053】
乾燥粉末印刷電池の性能が予測されたとおりであることが判ったとともに、本発明の並外れた特徴は印刷パターンのロバスト性であった。粒子が印刷されると、それらは、噴出プロセス中に生じた凝集力及び接着力によるだけで適切な位置に保持される。試料の激しい移動や、適度な方向付けられた空気流に層を曝すことさえも、パターンを乱すには不十分である。印刷され、次に1か月貯蔵された試料は、デリケートであったものの、無傷であった(図6参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電装置の少なくとも1つのパターン化粒子層を製造する方法であって、
a.流動化ユニットに乾燥粉体を供給する工程、
b.前記粉体を流動化して流体流れを形成する工程、
c.可変量の前記流体流れをノズルを通じて基材に向ける手段を含む印刷ユニットに前記流体流れを搬送する工程、及び
d.前記基材に向けられなかった流体流れを前記流動化ユニットに再循環させる工程、を含み、前記流体流れが連続的に再循環される、方法。
【請求項2】
前記ノズルと前記基材との間の距離が1mm〜40mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ノズルから出る流体速度が0.1〜2m・s-1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ノズルの直径が、ノズルから出る流体流れのレイノルズ数により特徴付けられる乱流が1〜100であるようなものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
それぞれ少なくとも1つのノズルを有する複数の印刷ユニットを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
印刷ユニットもしくは基材またはこれらの両方が移動して基材上に粉末パターンを印刷する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
印刷される粉末の粒子サイズが1ミクロン未満、より好ましくは500nm未満、最も好ましくは100nm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ロール・トゥー・ロール製造方法の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法により製造された光起電装置において使用するためのパターン化粒子層。
【請求項10】
請求項1に記載の方法により製造された色素増感太陽電池において使用するためのパターン化粒子層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−530142(P2011−530142A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521104(P2011−521104)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/004212
【国際公開番号】WO2010/016863
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】