説明

太陽電池アレイ及び太陽電池アレイの施工方法

【課題】接地工事の作業を軽減した太陽電池アレイ及び太陽電池アレイの施工方法を提供する。
【解決手段】導電性材料によって形成される架台の取付桟に接地ネジ挿通孔を設け、太陽電池モジュールのフレームとこの取付桟とを接地ネジにより電気的に接続し、架台に接地装置を設けて接地する。接地ネジ挿通孔は取付桟とフレームとが重なる範囲である交差範囲に設けられる。接地ネジはドリルねじ、タッピングねじ、ボルトのいずれかを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地工事の作業を軽減した太陽電池アレイ及び太陽電池アレイの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムは地球温暖化防止の観点から急速に普及している。最近ではメガワット級の大規模発電所の建設がおこなわれるようになった。このような大規模太陽光発電施設においては、地上に設置した架台に数万枚規模の多数の太陽電池パネルを設置した太陽電池アレイが設けられる。
【0003】
この太陽電池アレイは、まず地上に架台を設置し、この架台に太陽電池モジュールが1枚ずつ取り付けられる。太陽電池モジュールの架台への取り付けは、ボルトとナットにより太陽電池モジュールを架台の取付桟に締結する作業と、太陽電池モジュールのアースを取る接地工事が必要となる。
【0004】
従来の接地工事は、太陽電池モジュールを固定するボルトにアース線を接続し、このアース線を導電性の架台に接続し、架台を接地していた。
【0005】
ここで、太陽電池モジュールのフレームは耐候性を上げるためにアルマイト処理などの絶縁被膜処理が施されている。従って、従来の工法では歯付座金を使用して絶縁被膜を破る必要があり、取付作業工数がかかるのみならず、材料費もかかり、太陽電池アレイの建設費用を押し上げるという問題点がある。
【0006】
この点に関し、タッピングネジを固定部材に固定し、この固定部材によって太陽電池モジュールを架台に取り付ける際に、タッピングネジの先端により太陽電池モジュールのフレームに施された絶縁被膜を傷つけることによって接地する技術が提案されている。
【0007】
しかし、この工法によっても、固定部材にタッピングネジを取り付ける作業が必要であり、固定部材の材料費もかかるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−364136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、接地工事の作業を軽減した太陽電池アレイ及び太陽電池アレイの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、絶縁物でコーティングされ、太陽電池パネルを固定するフレームを備える太陽電池モジュールと、絶縁物でコーティングされ、導電性材料によって形成され、フレームと重なる交差範囲に設けられる接地ネジ挿通孔を有する取付桟、導電性材料によって形成され、取付桟を導通可能に支持する架台支柱、及び架台支柱に電気的に接続され、接地される接地装置を備える架台と、フレームと取付桟とを締結するボルトとは別体に導電性材料によって形成され、軸部の外径以下の直径を有する接地ネジ挿通孔にねじ込まれることによりフレームのコーティングを破り、接地ネジ挿通孔と接触することにより、フレームと取付桟とを電気的に接続する接地ネジと、を備える太陽電池アレイを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接地工事の工数が削減できるとともに、材料費を削減することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの架台の取付桟への取付部位の側面図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュールの架台の取付桟への取付部位の底面図である。
【図3】本発明の架台に取り付けられた太陽電池モジュールを裏側から見た図である。
【図4】本発明の接地ネジの例を示す図である。
【図5】本発明のフレーム側接地ネジ挿通孔の直径を示す図である。
【図6】取付桟の断面図である。
【図7】接地ネジにボルトを使用した場合の取付部位の側面図である。
【図8】接地ネジにボルトを使用した場合の取付部位の底面図である。
【図9】架台を示す図である。
【図10】本発明の架台の端部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係る太陽電池アレイ及び太陽電池アレイの施工方法を、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の太陽電池モジュール100の架台の取付桟30への取付部位の側面図である。図2は、本発明の太陽電池モジュール100の架台の取付桟30への取付部位の底面図である。
【0015】
図1に示すように、太陽電池モジュール100はアルマイト処理などの絶縁物でコーティングされたアルミニウム合金によって形成されるフレーム101に、太陽電池セル103が強化ガラス102とバックカバー104により挟み込まれた太陽電池パネルが固定されている。
【0016】
このフレーム101にはフレーム側ボルト穴101Bが設けられ、取付桟30には取付桟側ボルト穴30Bが設けられる。
【0017】
フレーム101の太陽電池パネルと対向する面が架台の取付桟30に合わせられ、ボルト10がフレーム側ボルト穴101B及び取付桟側ボルト穴30Bに挿通される。太陽電池モジュール100は取付桟30に、このボルト10、及びナット12とワッシャ11によって締結される。
【0018】
取付桟30には、さらに接地ネジ挿通孔30Aが設けられる。接地ネジ挿通孔30Aは、斜線にて示す取付桟30とフレーム101とが重なる範囲である交差範囲Aに設けられる。接地ネジ挿通孔30Aの内側は絶縁されていない。フレーム101にはフレーム側接地ネジ挿通孔101Aが設けられていてもよい。
【0019】
図3は、架台に取り付けられた太陽電池モジュール100を裏側から見た図である。図3に示すように、接地ネジ挿通孔30Aは、1枚の太陽電池モジュール100につき少なくとも1つ設けられる。
【0020】
図4は、接地ネジ1の例を示す図である。図4に示すように、接地ネジ1はボルト10とは別体に形成される。接地ネジ1はドリルねじを用いることができる。ドリルねじは、ドライバを嵌め込む頭部1Aと、ネジ山を有する軸部1Bと、軸部1Bの先端に切り刃先1Aと、を備える。
【0021】
ドリルねじを接地ネジ1として使用する場合にはフレーム側接地ネジ挿通孔101Aを設けなくともよい。
【0022】
接地ネジ1は、いわゆるタッピングねじを用いることもできる。接地ネジ1にタッピングねじを用いる場合には、フレーム側接地ネジ挿通孔101Aを設けることが望ましい。
【0023】
接地ネジ1は導電性の物質によって形成される。接地ネジ1は接地ネジ挿通孔30Aに挿通され、フレーム101を穿つことにより、取付桟30とフレーム101とを電気的に接続する。すなわち、接地ネジ1はフレーム側接地ネジ挿通孔101Aにねじ込まれることによりフレーム101のコーティングを破り、接地ネジ挿通孔30Aの内側と接触することにより、フレーム101と取付桟30とを電気的に接続する。
【0024】
図5は、フレーム側接地ネジ挿通孔101Aの直径を示す一例の図である。図5に示すように、フレーム側接地ネジ挿通孔101Aの直径は、接地ネジ1の呼び、すなわち呼び径(mm)と、フレーム101の厚さ(mm)によって定まる。フレーム側接地ネジ挿通孔101Aは軸部の外径以下の直径を有する。
【0025】
接地ネジ1の呼びは2.9以上4.8以下が望ましい。これより小さいと作業がしづらく、これより大きいと材料費が高くなる。中でも呼び3.5が最も望ましい。
【0026】
接地ネジ1の呼びが3.5であるとき、フレーム側接地ネジ挿通孔101Aの直径は2.5mm以上3.2mm以下であることが望ましい。
【0027】
これより小さいと、接地ネジ1がねじ込まれたときにフレーム101が変形する可能性があり、これより大きいと接地がとれない場合がある。
【0028】
図6は、取付桟30の断面図である。図6に示すように、取付桟30には、図6(A)に示すL型、図6(B)に示すC型、図6(C)に示すZ型などがある。いずれの場合も、接地ネジ挿通孔30A及び取付桟側ボルト穴30Bはフレーム101に接する面に設けられる。
【0029】
図7は、接地ネジ1に接地用ボルト2を使用した場合の取付部位の側面図である。図8は、接地ネジ1に接地用ボルト2を使用した場合の取付部位の底面図である。図7及び図8に示すように、接地ネジ1に接地用ボルト2を使用する場合、フレーム側接地ネジ挿通孔101及びA接地ネジ挿通孔30Aの直径は、接地ネジ1の軸の外径、すなわち呼び径と等しい。フレーム側接地ネジ挿通孔101及び接地側は絶縁されていない。
【0030】
接地用ボルト2は、ナット3によって締結される。フレーム101とナット3との間には、いわゆる歯付座金4が締結される。この歯付座金4は、歯が付いているため、締結するとフレーム101の絶縁層を傷つけて剥がす。
【0031】
接地用ボルト2、ナット3、歯付座金4は導電性材料によって形成される。接地用ボルト2は、フレーム101と取付桟30とを電気的に接続する。
【0032】
図9は、架台400を示す図である。架台400には太陽電池モジュール100が接地され、太陽電池アレイが形成される。
【0033】
図10は、架台400の端部を示す図である。図10に示すように、導電性材料によって形成される架台支柱30Cには接地装置31が設けられる。接地装置31は、アース線31Aが架台支柱30Cに電気的に接続され、先端には接地具31Bが設けられる。接地具31Bは地中に埋設されることにより接地する。
【0034】
架台400は、導電性材料により形成される。取付桟30と架台支柱30Cと導通可能に接続される。
【0035】
以上述べたように、本実施形態の太陽電池アレイ及び太陽電池アレイの施工方法は、導電性材料によって形成される架台400の取付桟30に接地ネジ挿通孔30Aを設け、太陽電池モジュール100のフレーム101とこの取付桟30とを接地ネジ1により電気的に接続し、架台400に接地装置31を設けて接地する。接地ネジ挿通孔30Aは取付桟30とフレーム101とが重なる範囲である交差範囲Aに設けられる。太陽電池モジュール100は接地ネジ1により架台400に接地される。
【0036】
従って、接地工事の工数が、配線工事の工数分、或いは固定部材へのタッピングネジの取り付け工数分削減できるとともに、配線部材の材料費、乃至固定部材の材料費を削減することができる、という効果がある。
【符号の説明】
【0037】
1:接地ネジ、
2:接地用ボルト、
4:歯付座金、
30:取付桟、
31:接地装置、
30A:接地ネジ挿通孔、
101:フレーム、
101A:フレーム側接地ネジ挿通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁物でコーティングされ、太陽電池パネルを固定するフレームを備える太陽電池モジュールと、
導電性材料によって形成され、前記フレームと重なる交差範囲に設けられる接地ネジ挿通孔を有する取付桟、導電性材料によって形成され、前記取付桟を導通可能に支持する架台支柱、及び前記架台支柱に電気的に接続され、接地される接地装置を備える架台と、
前記フレームと前記取付桟とを締結するボルトとは別体に導電性材料によって形成され、前記接地ネジ挿通孔にねじ込まれることにより、前記フレームと前記取付桟とを電気的に接続する接地ネジと、
を備える太陽電池アレイ。
【請求項2】
前記接地ネジは、
ドリルねじであり、
前記フレームを穿つことにより前記フレームと前記取付桟とを電気的に接続する
ことを特徴とする請求項1記載の太陽電池アレイ。
【請求項3】
前記接地ネジは、
タッピングねじであり、
前記フレームを穿つことにより前記フレームと前記取付桟とを電気的に接続する
ことを特徴とする請求項1記載の太陽電池アレイ。
【請求項4】
前記フレームは、
前記接地ネジを挿通する、前記接地ネジの軸部の外径以下の直径を有するフレーム側接地ネジ挿通孔を有することを特徴とする請求項1記載の太陽電池アレイ。
【請求項5】
前記接地ネジは、
導電性材料によって形成されるボルトであり、
前記ボルトに挿通され、前記フレームと前記ボルトに締結されるナットの間に歯付座金をさらに有する
ことを特徴とする請求項1記載の太陽電池アレイ。
【請求項6】
絶縁物でコーティングされ、太陽電池モジュールの太陽電池パネルを固定するフレームと、導電性材料によって形成され、前記フレームと重なる交差範囲に設けられる接地ネジ挿通孔を有する取付桟、導電性材料によって形成され、前記取付桟を導通可能に支持する架台支柱、及び前記架台支柱に電気的に接続され、接地される接地装置を備える架台と、を前記フレームと前記取付桟とを締結するボルトとは別体に導電性材料によって形成される接地ネジを前記接地ネジ挿通孔にねじ込むことにより、前記フレームと前記取付桟とを電気的に接続することを特徴とする太陽電池アレイの施工方法。
【請求項7】
前記接地ネジは、
ドリルねじであり、
前記フレームを穿つことにより前記フレームと前記取付桟とを電気的に接続する
ことを特徴とする請求項6記載の太陽電池アレイの施工方法。
【請求項8】
前記接地ネジは、
タッピングねじであり、
前記フレームを穿つことにより前記フレームと前記取付桟とを電気的に接続する
ことを特徴とする請求項6記載の太陽電池アレイの施工方法。
【請求項9】
前記フレームは、
前記接地ネジを挿通するフレーム側接地ネジ挿通孔を有することを特徴とする請求項6記載の太陽電池アレイの施工方法。
【請求項10】
前記接地ネジは、
導電性材料によって形成されるボルトであり、
前記ボルトに挿通され、前記フレームと前記ボルトに締結されるナットの間に歯付座金をさらに有する
ことを特徴とする請求項6記載の太陽電池アレイの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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