説明

太陽電池モジュール一体型屋根材

【課題】下側端部を下に向けて置いても太陽電池モジュールに影響のない太陽電池モジュール一体型屋根材を提供する。
【解決手段】ベース材10上に、固定部材20を介して太陽電池モジュール2を固定してなる太陽電池モジュール一体型屋根材1において、固定部材20の下側端部がベース材10の下側端部よりも0.1〜12mm内側に位置するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根面に敷設される屋根材に太陽電池モジュールを搭載した太陽電池モジュール一体型屋根材に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、建物の屋根や窓などに取り付けて利用され、業務用のみならず、一般住宅用にも需要が拡大してきている。一般住宅用としては、種々の太陽電池モジュール一体型の屋根材が開発され、太陽電池モジュールを屋根材に搭載する技術としては、例えば特許文献1に記載の方法が知られている。
【0003】
図8,図9に従来の太陽電池モジュール一体型屋根材の一例の平面図を示す。図8は平面図、図9は図8中のa−a’断面図である。図8,図9に示したように、太陽電池モジュール一体型の屋根材101では、太陽電池モジュール2が緩衝材30を介してコ字形の固定部材20に挟持され、該固定部材20はボルト23aをベース材10に向けた貫通孔18に挿通し、ナット23bを螺合することにより、太陽電池モジュール2がベース材10に一体的に固定されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−144440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図8,図9に示すように、従来の太陽電池モジュール一体型屋根材101は、下側端部(図8において紙面下側、図9において紙面左側)において、固定部材20の端部がベース材10の端部より突出しているため、仮置や運搬、荷揚げ等の作業時に当該屋根材101を下側端部を下にして立てて置いた場合、当該端部より突出した固定部材20に屋根材101の全重量がかかってしまう。その結果、当該重量が固定部材20にかかり、さらには固定部材20に挟持された太陽電池モジュール2にかかって固定部材20、太陽電池モジュール2を破損してしまう恐れがある。
【0006】
特に、ベース材10がセメント系の屋根材や粘土瓦でできている場合は、薄い金属板でできている場合に比べて、太陽電池モジュール一体型屋根材101全体の重量が大きく、上記のように太陽電池モジュール2に重量がかかるような置き方をした場合には、特にその影響が問題となる。
【0007】
本発明の課題は、太陽電池モジュール一体型屋根材において、下側端部を下に向けて置いた場合の、上記影響を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の太陽電池モジュール一体型屋根材は、太陽電池モジュールをベース材上に重ね、下側端部において、固定部材で太陽電池モジュールの端部を挟持し、ベース材に固定してなる太陽電池モジュール一体型屋根材であって、上記固定部材の下側端部が、ベース材の下側端部よりも0.1〜12mm内側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下側端部においてベース材の端部よりも固定部材の端部が内側にあるため、作業時に当該下側端部を下にして立てて置いた場合でも屋根材の重量が固定部材にかからないため、固定部材や太陽電池モジュールへの影響が防止される。また、固定部材の端部よりもベース材が突出していることから、固定部材端部が直接他の物品に接触する恐れが低減され、当該接触による固定部材や太陽電池モジュールへの影響も防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、本発明は本実施形態に限るものではない。
【0011】
図1は、本発明の太陽電池モジュール一体型屋根材の一実施形態を示す斜視図であり、図2は平面図、図3は図2のa−a’断面図である。また、図4は本例の太陽電池モジュール一体型屋根材を屋根面に施工した状態の斜視図である。
【0012】
図1〜図3に示すように、本例の太陽電池モジュール一体型屋根材1は、屋根材としてのベース材10上に、固定部材20を介して、光電変換装置である太陽電池モジュール2を一体的に固定したものである。
【0013】
本例の太陽電池モジュール2は薄型太陽電池モジュールであって、扁平な直方体状を呈しており、封止材により光電変換素子が密閉されている。
【0014】
太陽電池モジュール2を搭載するベース材10は、例えば、セメント系の屋根材、粘土瓦または金属瓦等により形成されている。このベース材10は、単純な平板形状であっても構わないが、外観を屋根材に似せるために、モジュール搭載部分11の板厚が薄く形成され、その下側端部において裏面側に突出した着座部12が形成されている。
【0015】
また、ベース材10の上側端部の裏面側には、野地板に当接する断面逆台形状の脚部13が形成されており、その表面側には上側に隣接するベース材10の着座部12が着座する縦方向ラップ部14が延設されている。縦方向ラップ部14は、上記モジュール搭載部分11よりも板厚を増大させて突設され、モジュール搭載部分11に太陽電池モジュール2を配置した際に、太陽電池モジュール2の上面と縦方向ラップ部14の上面とが略同一平面となるように形成されている。この縦方向ラップ部14には、釘やビス等で固定する止着孔17が開設されている。
【0016】
さらに、流れ方向に直交する方向(横方向)の一端部には、隣接するベース材10を上側に重ねる横方向ラップ部15が延設されている。横方向ラップ部15は、上記屈曲した着座部12によってベース材10の他端部に区画される下部空間16に配置される。尚、本例では、横方向ラップ部15が紙面上ベース材10の左端部に延設されているが、これに限るものではなく、ベース材10の右端部に延設してもよい。
【0017】
太陽電池モジュール一体型屋根材1は、野地板等の屋根面上に沿って、瓦等の屋根材を縦横に敷設するように施工される。即ち、野地板上に太陽電池モジュール一体型屋根材1を配置し、縦方向ラップ部14の止着孔17に不図示の釘やビス等を止着して固定する。横方向における太陽電池モジュール一体型屋根材1の配置は、図4に示すように、横方向ラップ部15上に左隣りの太陽電池モジュール一体型屋根材1の右端部が重なるように施工される。流れ方向における太陽電池モジュール一体型屋根材1の配置は、図4に示すように、下側の太陽電池モジュール一体型屋根材1の縦方向ラップ部14上に上側の太陽電池モジュール一体型屋根材1の着座部12が着座して重なるように施工される。野地板上には防水性のルーフ材が敷設される場合もあるが、本例の太陽電池モジュール一体型屋根材1の施工法は基本的に変わらない。
【0018】
このようにして屋根面上に縦横に敷設された複数の太陽電池モジュール2は、不図示の接続ケーブルによって直列または/及び並列に電気的に接続される。
【0019】
また、本例の固定部材20は側断面形状がコ字形を呈しており、太陽電池モジュール2の端部を表裏面側から挟持し、裏面側の設置片にベース材10に固定するボルト23a及びナット23bとを備えている。本例では、太陽電池モジュール2の幅方向両端部を左右両側において2対の固定部材20で保持している。
【0020】
ボルト23aは、ベース材10に向けて立設されており、ベース材10を貫通するように起立している。従って、図3に示すように、このボルト23aをベース材10の貫通孔18に挿通させて、ベース材10の裏面側に突き出したボルト23aにナット23bを締結することにより、屋根材としてのベース材10と太陽電池モジュール2とが固定部材20を介して一体的に固定される。
【0021】
固定部材20の材質としては、例えば、鉄、鋼、ステンレス鋼、アルミ合金、その他の金属または合成樹脂等が挙げられる。
【0022】
ベース材10に開設した貫通孔18から漏水するのを防止するために、固定部材20の設置片22とベース材10との間に定形または不定形のシーリング材を介設したり、貫通孔18内にシーリング材を充填してもよい。
【0023】
また、ナット23bは、ボルト23aに適合していればよいが、締結固定を確実にするために、セレートを備えたフランジ付き六角ナットを用いることが好ましい。
【0024】
尚、固定部材20で太陽電池モジュール2の端部を挟持する際、太陽電池モジュール2の破損を防止するため、保持部21と太陽電池モジュール2との間に緩衝材30を介在させることが好ましい。緩衝材30は、弾力性を有するものであればよく、例えば、ゴム、エラストマーまたは合成樹脂が挙げられる。
【0025】
本発明においては、図2,図3に示すように、固定部材20の下側端部がベース材10の下側端部よりも内側に位置し、該端部同士の距離Aが0.1〜12mmである。当該構成により、本発明の屋根材1は、下側端部を下にして立てて置いた場合に、固定部材20が置いた面に接触しないため固定部材20や太陽電池モジュール2への影響が回避される。
【0026】
本発明にかかる寸法Aについて説明する。寸法Aをむやみに大きくすると、屋根面積に対する発電面積が少なくなるため好ましくない。本発明の太陽電池モジュール一体型屋根材1は、作業時に一時的に立てて置く際、置き場所の面に対して治具を用いて垂直に立てる場合もあれば、治具を用いずに斜めに立てかける場合もある。斜めに立てかける場合でも、その角度は鉛直方向に対して45°までである。従って、図5に示すように、本発明の屋根材1を垂直に立てた状態から太陽電池モジュール2側に45°倒した状態で、固定部材20が当該屋根材1を置いた面に接しない距離がAの最大寸法である。即ち、Aの最大寸法は、ベース材10のモジュール搭載部11の上面から固定部材20の上面までの高さDであり、通常、Dは12mm程度であるため、Aの最大寸法は12mmである。
【0027】
また、図10に示すように、太陽電池モジュール2の横方向端部とモジュール搭載部11の横方向端部とが一致する場合、施工時に太陽電池モジュール2の横方向端部同士がぶつかり合い破損する恐れがある。また、施工後に太陽電池モジュール2の熱膨張が生じた場合には、該熱膨張によって互いに横方向に押し合うことになり、破損する恐れがある。また、横方向ラップ部15を持たない側(図8においては右側)の端部を下に向けて当該屋根材101を置いた場合には、太陽電池モジュール2の端部が、該屋根材101を置いた面に接触し、屋根材101の重量がかかってしまう。さらに、この状態で太陽電池モジュール2側に屋根材101が傾いた場合には、太陽電池モジュール2にかかる重量が更に増加して影響が大きくなってしまう。
【0028】
そのため、本発明においては、図2に示すように、敷設時に流れ方向に直交する方向(横方向)に隣り合う部分において、太陽電池モジュール2の端部がベース材10の端部(即ち、モジュール搭載部11の端部)より内側に位置することが好ましい。この場合、端部同士の距離B,Cはそれぞれ0.1〜9mmが好ましい。このように、横方向において太陽電池モジュール2をモジュール搭載部11の端部よりも内側に位置するように構成することにより、図6に示すように、屋根面上に敷設した際に、横方向において隣接する太陽電池モジュール2間でB+Cの間隙が生じ、施工時に互いにぶつかる恐れがなく、また、熱膨張による破損も防止される。また、横方向ラップ部15を持たない側(図2においては紙面右側)の端部を下に向けて当該屋根材1を置いた場合にも、太陽電池モジュール2の端部が置いた面に接触しないため、太陽電池モジュール2に屋根材1の重量がかかる恐れがない。係る寸法B,Cについては、寸法Aの場合と同様に、図7に示すように、横方向端部を下に向けて当該屋根材1を垂直に立てて置いた状態から太陽電池モジュール2側に45°傾けた場合に、太陽電池モジュール2が当該屋根材1を置いた面に接しない距離を最大寸法とする。即ちB、Cの最大寸法は、ベース材10のモジュール搭載部11の上面から太陽電池モジュール2の上面までの高さEであり、通常、Eは9mm程度であるため、B,Cの最大寸法は9mmである。
【0029】
図6に示すように、施工後に横方向に隣り合う太陽電池モジュール2間の間隙は寸法BとCの合計となる。よって、B,Cをむやみに大きくすると、当該間隔が大きくなり過ぎ、横方向への太陽電池モジュール2の意匠的な連続性が失われる。また、B,Cをむやみに大きくすると、屋根面積に対する発電面積が少なくなる。よって、寸法B,Cについては最大9mmの範囲で構成するのが望ましい。
【0030】
また、温度上昇による太陽電池モジュール2の寸法変化(伸び量)は、(温度による線膨張率)×(太陽電池モジュールの長さ)×(上昇温度)で表される。例えば、太陽電池モジュール2の透光性表面材がガラスであって、伸び量がほぼ透光性表面材の伸びに依存する場合、太陽電池モジュール2の線膨張率は、ガラスと同じ約9×10-6となり、太陽電池モジュール2の横方向の長さを910mm、温度上昇を80Kとすると、伸び量は約0.6552mmとなる。即ち、寸法Bと寸法Cの合計を、伸び量の0.6552mm以上としておけば、太陽電池モジュール2同士が熱膨張によってぶつかる恐れがない。
【0031】
伸び量は、透光性表面材の種類によって決まる線膨張率、太陽電池モジュールの長さ、上昇温度によって変わるので、必要となる寸法Bと寸法Cの合計も前記条件によって変わる。例えば、線膨張率を約9×10-6、太陽電池モジュールの横方向の長さを455mm、温度上昇を40Kとした場合の伸び量は約0.1638mmであり、必要となる寸法Bと寸法Cの合計は約0.1638mm以上が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の太陽電池モジュール一体型屋根材の好ましい実施形態の斜視図である。
【図2】図1の太陽電池モジュール一体型屋根材の平面図である。
【図3】図2の太陽電池モジュール一体型屋根材のa−a’断面図である。
【図4】図1の太陽電池モジュール一体型屋根材を屋根上に敷設した状態の斜視図である。
【図5】図2に示される寸法Aの最大寸法の説明図である。
【図6】図1の太陽電池モジュール一体型屋根材を横方向に並べた状態での境界部分を示す部分平面図である。
【図7】図2に示される寸法Bの最大寸法の説明図である。
【図8】従来の太陽電池モジュール一体型屋根材の一例の平面図である。
【図9】図8の太陽電池モジュール一体型屋根材のa−a’断面図である。
【図10】図8の太陽電池モジュール一体型屋根材を横方向に並べた状態での境界部分を示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 太陽電池モジュール一体型屋根材
2 太陽電池モジュール
10 ベース材
11 モジュール搭載部分
12 着座部
13 脚部
14 縦方向ラップ部
15 横方向ラップ部
16 下部空間
17 止着孔
18 貫通孔
20 固定部材
23a ボルト
23b ナット
30 緩衝材
101 太陽電池モジュール一体型屋根材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールをベース材上に重ね、下側端部において、固定部材で太陽電池モジュールの端部を挟持し、ベース材に固定してなる太陽電池モジュール一体型屋根材であって、
上記固定部材の下側端部が、ベース材の下側端部よりも0.1〜12mm内側に位置することを特徴とする太陽電池モジュール一体型屋根材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate