太陽電池モジュール
【課題】 この発明は、装置の誤差を考慮し、太陽電池にかかる剪断応力を少なくして、配線部材の接続時のクラックの発生を抑制でき、歩留まりを向上させる太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】 表面側保護部材と、裏面側保護部材と、前記表面側保護部材と前記裏面側保護部材との間にタブによって互いに接続された複数の太陽電池とを備える太陽電池モジュールにおいて、太陽電池1は、受光面に配設され、タブと接続される複数の表面側フィンガー電極110と、裏面に配設され、タブと接続される複数の裏面側フィンガー電極120とを有し、表面側フィンガー電極110が存在する位置の裏面側のフィンガー電極120の相対する位置に、少なくともタブが接続される部分に表面側フィンガー電極に対して所定の角度を有する電極部分120bを備える。
【解決手段】 表面側保護部材と、裏面側保護部材と、前記表面側保護部材と前記裏面側保護部材との間にタブによって互いに接続された複数の太陽電池とを備える太陽電池モジュールにおいて、太陽電池1は、受光面に配設され、タブと接続される複数の表面側フィンガー電極110と、裏面に配設され、タブと接続される複数の裏面側フィンガー電極120とを有し、表面側フィンガー電極110が存在する位置の裏面側のフィンガー電極120の相対する位置に、少なくともタブが接続される部分に表面側フィンガー電極に対して所定の角度を有する電極部分120bを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池モジュールに関し、隣接する太陽電池の表面上に形成された電極を配線部材によって接続することにより互いに接続された複数の太陽電池を備える太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、複数の太陽電池がその表裏面の電極に電気的に接続された配線部材により直列及び/又は並列に接続された構造を有している。この太陽電池モジュールを作製する際に、太陽電池の電極と配線部材との接続には、従来、半田が用いられている。半田は、導通性、固着強度等の接続信頼性に優れ、安価で汎用性があることから広く用いられている。
【0003】
一方、環境保護の観点等から、太陽電池において半田を使用しない配線の接続方法も用いられている。例えば、樹脂接着剤を有する接着フィルムを用いて太陽電池と配線材とを接続する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
接着フィルムを用いた配線の接続は、まず、接着フィルムを太陽電池の電極上に貼り着け、この接着フィルム上に配線部材を載せて、配線部材を太陽電池方向に加圧しつつ加熱することにより、樹脂接着剤により配線部材を太陽電池の電極に接続させている。
【0005】
ところで、太陽電池の低コスト化、低資源化のためには、太陽電池を薄型化することが求められている。
【0006】
上記したように、配線部材の接続を樹脂接着剤で行う方法では、配線部材を太陽電池方向に加圧している。この時の圧力の一部は、電極を通じて太陽電池に伝わる。そして、特に、太陽電池の受光面に形成された電極と裏面に形成された電極との位置が一致していないと、太陽電池の基板に剪断応力がかかり、基板にクラックなどが発生して歩留まりが低下するという問題がある。このような問題は、配線部材をフィンガー電極に直接接続する場合に顕著であり、特に、太陽電池の薄型化に伴い剪断応力に対する対応が重要になってくる。
【0007】
上記した問題点を解決するために、本出願人より、受光面に配設され、配線部材と接続される複数の第1フィンガー電極と、裏面に配設され、配線部材と接続される複数の第2フィンガー電極とを有し、第1フィンガー電極と第2フィンガー電極とは、受光面と平行な投影面上において、互いに重なり合う位置に配置した太陽電池モジュールを提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−214533号公報
【特許文献2】特開2008−235354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2においては、図16に示すように、太陽電池1の受光面側に配設される第1フィンガー電極110と裏面側に配設される第2フィンガー電極120とが一致している場合が理想的である。第1フィンガー電極110と第2フィンガー電極120の位置が一致した状態で、配線部材20とフィンガー電極110、120との間に、それぞれ樹脂接着フィルム(図示せず)を配置し、図中矢印に示すように、配線部材20を太陽電池1の方向に加圧する。図16に示すように、第1フィンガー電極110と第2フィンガー電極120の位置が完全に一致している場合には、剪断力が太陽電池1に加わることが抑制され、太陽電池1のクラックの発生が抑制される。
【0010】
しかしながら、装置誤差を含めて考えたとき、第1フィンガー電極110と第2フィンガー電極120との位置がずれる場合がある。図17に示すように、第1フィンガー電極110と第2フィンガー電極120との位置がずれると、第1フィンガー電極110と第2フィンガー電極120との間に挟まれる太陽電池1に図中破線矢印で示すような剪断応力がかかる。この剪断応力により、最悪の場合にはクラックが発生し、歩留まりが低下するという難点がある。
【0011】
この発明は、上記した従来の事情に鑑みなされたものにして、装置の誤差を考慮し、太陽電池にかかる剪断応力を少なくして、配線部材の接続時のクラックの発生を抑制でき、歩留まりを向上させることができる太陽電池モジュールを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、表面側保護部材と、裏面側保護部材と、前記表面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に配線部材によって互いに接続された複数の太陽電池とを備える太陽電池モジュールにおいて、前記太陽電池は、受光面に配設され、前記配線部材と接続される複数の表面側フィンガー電極と、裏面に配設され、前記配線部材と接続される複数の裏面側フィンガー電極とを有し、前記表面側フィンガー電極が存在する位置の裏面側のフィンガー電極の相対する位置に、少なくとも配線部材が接続される部分に表面側フィンガー電極に対して所定の角度を有する電極部分を備えることを特徴とする。
【0013】
また、剪断応力分散領域は、フィンガー電極と沿った長さをb、タブの幅をa、機械的精度によるタブの貼り付け位置の誤差をxとすると、b=a+2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極で形成すればよい。
【0014】
さらに、この発明は、表面側保護部材と、裏面側保護部材と、前記表面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に配線部材によって互いに接続された複数の太陽電池とを備える太陽電池モジュールにおいて、前記太陽電池は、受光面に配設され、前記配線部材と接続される複数の表面側フィンガー電極と、裏面に配設され、前記配線部材と接続される複数の裏面側フィンガー電極とを有し、前記裏面側フィンガー電極が存在する位置の表面側のフィンガー電極の相対する位置に、少なくとも配線部材が接続される部分に裏面側フィンガー電極に対して所定の角度を有する電極部分を備えることを特徴とする。
【0015】
また、剪断応力分散領域は、フィンガー電極と沿った長さをb、タブの幅をa、機械的精度によるタブの貼り付け位置の誤差をxとすると、b=a−2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極で形成すればよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、装置の誤差を考慮し、表面側フィンガー電極と裏面側のフィンガー電極が相対する位置に、少なくとも配線部材が接続される部分に、フィンガー電極に対して所定の角度を有する電極部分を有するので、互いのフィンガー電極と相対する位置には電極部分が存在することになり、表裏の電極で応力を緩和し、太陽電池のクラックの発生を抑制でき、歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の平面図である。
【図2】図1のA−A‘線断面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態にかかる太陽電池モジュールを示し、(a)は図1のA−A’線断面の要部を拡大した断面図、(b)は図1のB−B’線断面の要部を拡大した断面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。
【図5】この発明の第1の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【図6】この発明の第1の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【図7】この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。
【図8】この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールを示し、(a)は図1のA−A’線断面の要部を拡大した断面図、(b)は図1のB−B’線断面の要部を拡大した断面図である。
【図9】この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【図10】この発明の第3の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。
【図11】この発明の第4の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。
【図12】この発明の第3及び第4の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【図13】この発明の第5の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。
【図14】この発明の太陽電池モジュールの概略断面図である。
【図15】この発明の太陽電池モジュールのタブの接続工程を示す模式図である。
【図16】従来の太陽電池モジュールのタブの接続工程を示す模式図である。
【図17】従来の太陽電池モジュールのタブの接続工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0019】
この発明の第1の実施形態にかかる太陽電池モジュールにつき図1ないし図6を参照して説明する。
【0020】
この太陽電池モジュールは、複数の板状の太陽電池1を備えている。この太陽電池1は、例えば、厚みが0.15mm程度の単結晶シリコンや多結晶シリコンなどで構成される結晶系半導体からなり、1辺が125mm程度の略正方形を有するが、これに限るものではなく、他の太陽電池を用いても良い。
【0021】
この太陽電池1内には、例えば、n型領域とp型領域が形成され、n型領域とp型領域との界面部分でキャリア分離用の電界を形成するための接合部が形成されている。このn型領域とp型領域は、単結晶シリコンや多結晶シリコン等の結晶半導体、GaAsやInP等の化合物半導体、非晶質状態或いは微結晶状態を有する薄膜SiやCuInSe等の薄膜半導体等の太陽電池用に用いられる半導体を単独、或いは組み合わせて形成することができる。一例として互いに逆導電型を有する単結晶シリコンと非晶質シリコン層との間に薄膜の真性な非晶質シリコン層を介挿し、その界面での欠陥を低減し、ヘテロ接合界面の特性を改善した所謂HIT構造の太陽電池が用いられる。
【0022】
この太陽電池1の受光面(表面)側の表面部分には、表面電極11が形成されている。この表面電極11は、互いに並行に形成された複数のフィンガー電極110を含む。このフィンガー電極110は、例えば、電極幅100μm、ピッチ2mm、電極厚み50μmで55本程度形成される。フィンガー電極110に直交して配線部材としてのタブ20が接続される。
【0023】
図4及び図6に示すように、この表面電極11には、タブが接続される位置に合わせて折れ線状のバスバー電極111が設けられている。このバスバー電極111は次の条件に基づき設けられている。
【0024】
すなわち、機械的精度によるタブの貼り付け位置の誤差をx、タブ20の幅をa、バスバー電極111の折れ線状の幅間隔をbとすると、b=a+2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状のバスバー電極111が形成されている。例えば、タブ20の幅aが1.2mmの場合、機械精度によるタブの貼り付け位置の誤差とバスバー電極の位置精度誤差の合計が±0.2mmとして、その機械精度を考慮して、1.6mmの間隔(図中b)に、折れ線状にフィンガー電極110以上の幅でフィンガー電極110と同じ厚みのバスバー電極111が配置されるように形成されている。
【0025】
図4の1点鎖線で表示されているタブ20の機械的誤差を考慮した範囲内に、バスバー電極111が配置される。即ち、中心位置から図中左方向に斜めに延び0.8mm左側に達した点から右方向に斜めに折れ曲がって左端から右端まで1.6mmの位置まで延びる。そして、右端まで達すると左方向に折れ曲がるようにして折れ線状に、タブの貼り付け方向にバスバー電極111が形成されている。この実施形態では、3本のバスバー電極111が設けられている。
【0026】
このような表面電極11は、例えば、銀ペーストをスクリーン印刷して百数十度の温度で硬化させて形成したものである。
【0027】
また、太陽電池1の裏面側の表面部分には、裏面電極12が形成されている。この裏面電極12は、互いに並行に形成された複数のフィンガー電極120を含む。このフィンガー電極120は、例えば、電極幅100μm、ピッチ0.5mm、電極厚み10μmで217本程度形成される。
【0028】
この実施形態においては、図3、図4及び図6に示すように、表面電極11のフィンガー電極110の本数より、裏面電極12のフィンガー電極120の本数を多くしている。そして、少なくとも、表面のフィンガー電極110と相対する位置の裏面のフィンガー電極120には、タブ20が配置される箇所に剪断応力分散領域120bが設けられている。
【0029】
この剪断応力分散領域120bは、表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120とが平行した配置にならずに、且つ複数の電極部分が相対するように、表面側フィンガー電極110に対して所定の角度を有して折り曲げられた折れ線状の電極で構成されている。すなわち、タブ20が配置される箇所では、表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120の位置ズレが生じた場合においても表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120とが平行した配置にならず、そして、表面のフィンガー電極110が相対する位置においては、裏面のフィンガー電極120の剪断応力分散領域120bを構成する複数の電極部分が配置される。このように、タブ20が配置される箇所では、電極形成位置に誤差が生じても必ず、表面電極11のフィンガー電極110の相対する位置の裏面側には、裏面のフィンガー電極120に剪断応力分散領域120bを構成する複数の電極が存在する。
【0030】
図5及び図6に示すように、この実施形態では、折れ線状の電極からなる剪断応力分散領域120bは、その長さ(バスバー電極に沿った方向の長さ)をバスバー電極111と同様にタブ20の機械的誤差を考慮した範囲に設定している。すなわち、バスバー電極111の折れ線状の幅間隔と同じ長さになるように、剪断応力分散領域120bの折れ線状の電極が形成されている。この剪断応力分散領域120bも上述したb=a+2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極からなる剪断応力分散領域120bが形成されている。例えば、タブ20の幅aが1.2mmの場合、機械精度によるタブの貼り付け位置の誤差とバスバー電極の位置精度誤差xの合計が±0.2mmとして、その機械精度を考慮して、1.6mmの間隔(図中b)に剪断応力分散領域120bが形成されている。
【0031】
そして、表面側のフィンガー電極110と直交する方向の長さcは、電極形成位置に誤差が生じても必ず剪断応力分散領域120bの電極部分が相対するように、この実施形態ではフィンガー電極120の線幅の5倍程度の0.5mmとしている。このように、剪断応力分散領域120bは、図5の1点鎖線で表示されている電極形成位置の誤差を考慮し、中心位置から図中右方向に斜めに延び0.25mm右側に達した点から左方向に斜めに折れ曲がって右端から左端まで0.5mmの位置まで延びる。そして、右端まで達すると左方向に折れ曲がるようにして折れ線状に、タブの貼り付け箇所に形成されている。
【0032】
また、表面のフィンガー電極110が存在しない領域に位置する裏面のフィンガー電極120は、剪断応力分散領域120bは設けずに、この実施形態では、100μmの直線状の電極にしている。
【0033】
さらに、この裏面電極12にも表面電極11と同様にバスバー電極121が設けられている。このバスバー電極121は、表面のバスバー電極111と同様に折れ線状に形成されている。そして、表面電極11のバスバー電極111と裏面電極12のバスバー電極121とは、互いに重なり合う位置に形成されている。即ち、表面側のバスバー電極111が存在する太陽電池1の裏面側には裏面側のバスバー電極121が存在するように両バスバー電極111、121が設けられている。
【0034】
図6においては、上部に表面側の表面電極11、下側に裏面側の裏面電極12を表し、両者のフィンガー電極の関係を示している。図6に示すように、裏面側のフィンガー電極120の総本数は、表面側のフィンガー電極110の本数より多くしている。そして、この実施形態では、裏面側のフィンガー電極120の4本に対して1本の表面側のフィンガー電極110が相対するように互いのフィンガー電極が太陽電池1の表裏に形成されている。そして、表面のフィンガー電極110の相対する位置の裏面側フィンガー電極120には、タブ20が配置される箇所に折れ線状に電極を形成した剪断応力分散領域120bが設けられている。
【0035】
上記のように、この実施形態においては、表面電極11のフィンガー電極110の本数を、裏面電極12のフィンガー電極120の本数より少なくしている。このように、表面電極11の本数を少なくすることで、太陽電池1の表面に入射する光の量を増大できるので、太陽電池特性を向上させることができる。
【0036】
また、表面電極11のフィンガー電極110の厚みを、裏面電極12のフィンガー電極120の厚みより大きくすることで、表面電極11の抵抗を小さくすることができ、さらに太陽電池特性を向上させることができる。
【0037】
また、裏面側フィンガー電極120のタブ20が配置される箇所に折れ線状に電極を形成した剪断応力分散領域120bを設けているので、太陽電池1の表面に入射する光には影響を及ぼすことはない。そして、図3及び図5に示すように、タブ20が配置される箇所の表面電極11のフィンガー電極110の相対する位置の裏面側には、剪断応力分散領域120bを構成する複数の電極が存在する。タブ接続の際に加わる圧力が剪断応力分散領域120bを構成する複数の電極で受け止められることになる。この結果、剪断応力が分散され、太陽電池1のクラック等を防ぐことができる。
【0038】
この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールにつき図7ないし図9を参照して説明する。図7は、この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。図8は、この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールを示し、(a)は図1のA−A’線断面の要部を拡大した断面図、(b)は図1のB−B’線断面の要部を拡大した断面図、図9は、この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【0039】
第1の実施形態が剪断応力分散領域を裏面側のフィンガー電極120に設けているのに対し、この第2の実施形態では、表面側のフィンガー電極110に剪断応力分散領域110bを設けたものである。
【0040】
この第2の実施形態においても、図7及び図8に示すように、表面電極11のフィンガー電極110の本数より、裏面電極12のフィンガー電極120の本数を多くしている。そして、少なくとも、裏面のフィンガー電極120と相対する位置の表面のフィンガー電極110には、タブ20が配置される箇所に剪断応力分散領域120bが設けられている。
【0041】
この剪断応力分散領域110bは、表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120とが平行した配置にならずに、且つ複数の電極部分が相対するように、裏面側フィンガー電極120に対して所定の角度を有して折り曲げられた折れ線状の電極で構成されている。すなわち、タブ20が配置される箇所では、表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120の位置ズレが生じた場合においても表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120とが平行した配置にならず、そして、裏面のフィンガー電極120が相対する位置においては、表面のフィンガー電極110の剪断応力分散領域110bを構成する複数の電極部分が配置される。このように、タブ20が配置される箇所では、電極形成位置に誤差が生じても必ず裏面電極12のフィンガー電極120の相対する位置の表面側には、表面のフィンガー電極110に剪断応力分散領域110bを構成する複数の電極が存在する。
【0042】
図7及び図9に示すように、この実施形態では、折れ線状の電極からなる剪断応力分散領域110bは、タブ20の機械的誤差並びに表面側の光の入射を考慮した範囲に設定している。すなわち、タブ20を接続した時に、剪断応力分散領域110bの電極部分がタブ20から露出しないように形成される。剪断応力分散領域110bを構成する電極部分が光入射側に露出するとその分光の入射量が少なくなるので、剪断応力を分散する能力は若干劣るがタブ20から剪断応力分散領域110bの電極部分が露出しないように形成されている。
【0043】
このため、剪断応力分散領域110bは、b=a−2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極で形成されている。例えば、タブ20の幅aが1.2mmの場合、機械精度によるタブの貼り付け位置の誤差とバスバー電極の位置精度誤差xの合計が±0.2mmとして、その機械精度を考慮して、0.8mmの間隔(図中b)に剪断応力分散領域110bが形成されている。
【0044】
そして、裏面側のフィンガー電極120と直交する方向の長さcは、電極形成位置に誤差が生じても必ず剪断応力分散領域110bの電極部分が相対するように、この実施形態ではフィンガー電極110の線幅の9倍程度の0.9mmとしている。このように、剪断応力分散領域110bは、図7の1点鎖線で表示されている電極形成位置の誤差を考慮し、中心位置から図中右方向に斜めに延び0.45mm右側に達した点から左方向に斜めに折れ曲がって右端から左端まで0.9mmの位置まで延びる。そして、右端まで達すると左方向に折れ曲がるようにして折れ線状に、タブの貼り付け箇所に形成されている。
【0045】
また、裏面のフィンガー電極120が存在しない領域に位置する表面のフィンガー電極110は、剪断応力分散領域110bは設けずに、この実施形態では、100μmの直線状の電極にしている。
【0046】
この第2の実施形態においては、表面側フィンガー電極110のタブ20が配置される箇所に折れ線状に電極を形成した剪断応力分散領域110bを設けているので、裏面電極12のフィンガー電極120の相対する位置の表面側には、剪断応力分散領域110bを構成する複数の電極が存在する。タブ接続の際に加わる圧力が剪断応力分散領域110bを構成する複数の電極で受け止められることになる。この結果、剪断応力が分散され、太陽電池1のクラック等を防ぐことができる。
【0047】
この発明の第3の実施形態にかかる太陽電池モジュールにつき図10及び図12を参照して説明する。図10は、この発明の第3の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。図12は、この発明の第3の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【0048】
第1及び第2の実施形態は、剪断応力分散領域として折れ線状の電極で形成しているのに対し、この第3の実施形態では、剪断応力分散領域120b1として、フィンガー電極に所定の角度を有する電極片を複数個設けて構成している。この電極片はフィンガー電極と同じ線幅且つ厚さで、互いの電極片同士は接続されていない。
【0049】
この第3の実施形態においても、図10に示すように、表面電極11のフィンガー電極110の本数より、裏面電極12のフィンガー電極120の本数を多くしている。そして、少なくとも、表面のフィンガー電極110と相対する位置の裏面のフィンガー電極120には、タブ20が配置される箇所に剪断応力分散領域120b1が設けられている。
【0050】
この剪断応力分散領域120b1は、表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120とが平行した配置にならずに、且つ複数の電極片が相対するように、表面側フィンガー電極110に対して所定の角度を有して複数の電極片が互いに平行に設けられている。すなわち、タブ20が配置される箇所では、表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120の位置ズレが生じた場合においても表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120とが平行した配置にならず、そして、表面のフィンガー電極110が相対する位置においては、裏面のフィンガー電極120の剪断応力分散領域120b1を構成する複数の電極片が配置される。このように、タブ20が配置される箇所では、電極形成位置に誤差が生じても必ず表面電極11フィンガー電極110の相対する位置の表面側には、裏面のフィンガー電極120に剪断応力分散領域120b1を構成する複数の電極片が存在する。
【0051】
図10及び図12に示すように、この実施形態では、剪断応力分散領域120b1の電極片が互いに接続されていないので、タブ20の機械的誤差を考慮し、フィンガー電極120とタブ20とが確実に接続される範囲に設定している。
【0052】
このため、剪断応力分散領域120b1は、b=a−2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極で形成されている。例えば、タブ20の幅aが1.2mmの場合、機械精度によるタブの貼り付け位置の誤差とバスバー電極の位置精度誤差xの合計が±0.2mmとして、その機械精度を考慮して、0.8mmの間隔(図中b)に剪断応力分散領域120b1が形成されている。
【0053】
この第3の実施形態においては、裏面側フィンガー電極120のタブ20が配置される箇所に折れ線状に電極を形成した剪断応力分散領域120b1を設けているので、表面電極11のフィンガー電極110の相対する位置の裏面側には、剪断応力分散領域120b1を構成する複数の電極片が存在する。タブ接続の際に加わる圧力が剪断応力分散領域120b1を構成する複数の電極で受け止められることになる。この結果、剪断応力が分散され、太陽電池1のクラック等を防ぐことができる。
【0054】
この発明の第4の実施形態にかかる太陽電池モジュールにつき図11及び図12を参照して説明する。図11は、この発明の第4の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。図12は、この発明の第4の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【0055】
第3の実施形態は、裏面側のフィンガー電極に所定の角度を有する電極片を有する剪断応力分散領域120b1を設けているのに対して、この第4の実施形態は、表面側のフィンガー電極110に、フィンガー電極に所定の角度を有する電極片を複数個設けた剪断応力分散領域110b1を形成したものである。その他の構成は、第3の実施形態と同様である。
【0056】
この発明の第5の実施形態にかかる太陽電池モジュールにつき図13を参照して説明する。図13は、この発明の第5の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。
【0057】
上記した実施形態においては、タブ20が接着される箇所に剪断応力分散領域を設けているが、この第5の実施形態は、裏面側のフィンガー電極1201を剪断応力分散領域と同じ形状に全て折れ線状にして形成している。そして、相対する表面側のフィンガー電極110との間に位置ズレが生じたとしても折れ線状の電極部分が相対するように構成している。その他の構成は、他の実施形態と同様である。
【0058】
次に、上記した太陽電池1を用いて太陽電池モジュールを製造する方法につき説明する。太陽電池モジュールは、図1ないし図3に示すように、表面電極11、裏面電極12に配線部材としてのタブ20が電気的に接続される。このタブ20を表面電極11、裏面電極12に接続するために導電性接着フィルム5を用いる。まず、タブ20を接着する位置に導電性接着フィルム5を圧着する。この圧着する導電性接着フィルム5は、接続するタブ20の幅と同一若しくは少し幅の細いものが用いられる。例えば、タブ20の幅が、0.5mm〜3mmであれば、導電性接着フィルム5の幅もタブ20の幅に対応して0.5mm〜3mmにする。この実施形態においては、図1に示すように、幅1.2mmの3本のタブ20を用いている。このため、タブ20が接着される位置にタブ20の幅に対応した幅の3本の導電性接着フィルム5が太陽電池1のバスバー電極111、121上に貼り着けられている。
【0059】
タブ20は、銅薄板20aで構成され、このタブの表面には、錫や半田などのコーティングを施すと良い。この実施形態では、錫をメッキしたコーティング層20bを設けている。このコーティング層20bは、軟導体層を構成する。このコーティング層は、錫を用いると説明したが、フィンガー電極110、120より軟らかい導電材料であって,且つ導電性接着フィルム5の接着層が硬化する温度で軟化する材料が望ましい。融点を引き下げた共晶半田を含めて、軟らかい導電性金属を使用することができる。
【0060】
導電性接着フィルム5にタブ20を押圧し、押圧しながら加熱処理を施して導電性接着フィルム5の接着層を熱硬化してタブ20を表面電極11、裏面電極12に接続する。
【0061】
樹脂接着フィルム5として、例えば、導電性接着フィルムが用いられる。導電性接着フィルム5としては、樹脂接着成分とその中に分散した導電性粒子とを少なくとも含んで構成されている。この内部に導電性粒子が分散された樹脂接着成分がポリイミドなどからなる基材フィルム上に設けられている。樹脂接着成分は熱硬化性樹脂を含有する組成物からなり、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。これらの熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いるか2種以上を組み合わせて用いられ、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂が好ましい。
【0062】
導電性粒子としては、例えば、金粒子、銀粒子、銅粒子及びニッケル粒子などの金属粒子、或いは、金メッキ粒子、銅メッキ粒子及びニッケルメッキ粒子などの導電性又は絶縁性の核粒子の表面を金属層などの導電層で被覆してなる導電性粒子が用いられる。
【0063】
複数の太陽電池1の各々を互いに隣接する他の太陽電池1とタブ20によって電気的に接続するには、タブ20の一方端側が所定の太陽電池1の上面側の表面電極11に接続されるとともに、他方端側がその所定の太陽電池1に隣接する別の太陽電池の下面側の裏面電極12に接続するように、太陽電池1の表裏に貼り着けた導電性接着フィルム5にそれぞれタブ20を置く。
【0064】
図15に示すように、そして、例えば、ホットプレート上に載せられた太陽電池1を例えば、3MPa程度の圧力でヒータブロックを用いて押圧し、タブ20を太陽電池1側にそれぞれ押し付ける。尚、図15においては、導電性接着フィルムは、図示を省略している。そして、ヒータブロック、ホットプレートの温度を樹脂接着成分が熱硬化する温度での高温加熱、例えば、120℃以上200℃以下の温度に加熱してタブ20を圧着固定させ、タブ20を固定して太陽電池1を電気的に接続して配列する。
【0065】
なお、上記した実施形態では、樹脂フィルムとして導電性樹脂フィルムを用いているが、樹脂フィルムとしては導電性粒子を含まないものも用いることができる。導電性粒子を含まない樹脂接着剤を用いる場合には、裏面電極11、12の表面の一部をタブ20の表面に直接接触させることによって、電気的な接続を行う。この場合、タブ20として銅箔版等の導電体の表面に、錫(Sn)や半田等の集電極11、12より柔らかい導電膜を形成したものを用い、表面電極11、裏面電極12の一部を導電膜中にめり込ませるようにして接続することが好ましい。
【0066】
このようにして、タブ20により複数の太陽電池1を接続したものを、ガラスからなる表面部材41と耐侯性フィルム又はガラス、プラスチックのような部材からなる裏面部材42との間に、EVA等の透光性を有する封止材43で挟んで重ね合わせる。そして、ラミネート装置により、太陽電池1を表面部材41と裏面部材42との間に封止材シート43により封止することにより、図6に示す太陽電池モジュールが得られる。
【0067】
上記太陽電池モジュールは、必要に応じて外周にシール材を用いてアルミニウムなどからなる外枠に嵌め込まれる。この外枠は、アルミニウム、ステンレス又は鋼板ロールフォーミング材等で形成されている。必要に応じて端子ボックス(図示せず)が、例えば裏面部材42の表面に設けられる。
【0068】
図3(a)には、太陽電池のA−A‘線断面における要部が拡大して示されており、図15には、タブの接続を行う工程の概略図を示している。
【0069】
上記したこの発明の実施形態の太陽電池モジュールは、太陽電池1の表裏のフィンガー電極110、120が相対する箇所には、剪断応力分散領域120bが配置されている。このため、機械的誤差が生じても表面側のフィンガー電極110の相対する位置には、裏面側の剪断応力分散領域120bが位置することになる。この結果、圧着時にかかる圧力は表裏のフィンガー電極110と剪断応力分散領域120b部分で受けることができ、圧力は表裏で相殺され、剪断応力を緩和することができる。これにより、圧着時の太陽電池1のクラック等の発生により太陽電池モジュールの不具合を解消できる。
【0070】
尚、上記した実施形態においては、バスバー電極を表面電極11及び裏面電極12にそれぞれ設けているが、バスバー電極を設けていない太陽電池においてもこの発明は適用できる。また、バスバー電極を備えることにより、配線部材との接着性が高めることができるので、バスバー電極は備える方が好ましい。
【0071】
また、上記した実施形態においては、太陽電池1上に3本のタブ20を用いて接続する例について説明したが、タブ20は3本に限らず、2本以上のタブ20を用いる場合にもこの発明を適用することができる。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 太陽電池
110 フィンガー電極
110 剪断応力分散領域
120 フィンガー電極
120b 剪断応力分散領域
20 タブ
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池モジュールに関し、隣接する太陽電池の表面上に形成された電極を配線部材によって接続することにより互いに接続された複数の太陽電池を備える太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、複数の太陽電池がその表裏面の電極に電気的に接続された配線部材により直列及び/又は並列に接続された構造を有している。この太陽電池モジュールを作製する際に、太陽電池の電極と配線部材との接続には、従来、半田が用いられている。半田は、導通性、固着強度等の接続信頼性に優れ、安価で汎用性があることから広く用いられている。
【0003】
一方、環境保護の観点等から、太陽電池において半田を使用しない配線の接続方法も用いられている。例えば、樹脂接着剤を有する接着フィルムを用いて太陽電池と配線材とを接続する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
接着フィルムを用いた配線の接続は、まず、接着フィルムを太陽電池の電極上に貼り着け、この接着フィルム上に配線部材を載せて、配線部材を太陽電池方向に加圧しつつ加熱することにより、樹脂接着剤により配線部材を太陽電池の電極に接続させている。
【0005】
ところで、太陽電池の低コスト化、低資源化のためには、太陽電池を薄型化することが求められている。
【0006】
上記したように、配線部材の接続を樹脂接着剤で行う方法では、配線部材を太陽電池方向に加圧している。この時の圧力の一部は、電極を通じて太陽電池に伝わる。そして、特に、太陽電池の受光面に形成された電極と裏面に形成された電極との位置が一致していないと、太陽電池の基板に剪断応力がかかり、基板にクラックなどが発生して歩留まりが低下するという問題がある。このような問題は、配線部材をフィンガー電極に直接接続する場合に顕著であり、特に、太陽電池の薄型化に伴い剪断応力に対する対応が重要になってくる。
【0007】
上記した問題点を解決するために、本出願人より、受光面に配設され、配線部材と接続される複数の第1フィンガー電極と、裏面に配設され、配線部材と接続される複数の第2フィンガー電極とを有し、第1フィンガー電極と第2フィンガー電極とは、受光面と平行な投影面上において、互いに重なり合う位置に配置した太陽電池モジュールを提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−214533号公報
【特許文献2】特開2008−235354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2においては、図16に示すように、太陽電池1の受光面側に配設される第1フィンガー電極110と裏面側に配設される第2フィンガー電極120とが一致している場合が理想的である。第1フィンガー電極110と第2フィンガー電極120の位置が一致した状態で、配線部材20とフィンガー電極110、120との間に、それぞれ樹脂接着フィルム(図示せず)を配置し、図中矢印に示すように、配線部材20を太陽電池1の方向に加圧する。図16に示すように、第1フィンガー電極110と第2フィンガー電極120の位置が完全に一致している場合には、剪断力が太陽電池1に加わることが抑制され、太陽電池1のクラックの発生が抑制される。
【0010】
しかしながら、装置誤差を含めて考えたとき、第1フィンガー電極110と第2フィンガー電極120との位置がずれる場合がある。図17に示すように、第1フィンガー電極110と第2フィンガー電極120との位置がずれると、第1フィンガー電極110と第2フィンガー電極120との間に挟まれる太陽電池1に図中破線矢印で示すような剪断応力がかかる。この剪断応力により、最悪の場合にはクラックが発生し、歩留まりが低下するという難点がある。
【0011】
この発明は、上記した従来の事情に鑑みなされたものにして、装置の誤差を考慮し、太陽電池にかかる剪断応力を少なくして、配線部材の接続時のクラックの発生を抑制でき、歩留まりを向上させることができる太陽電池モジュールを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、表面側保護部材と、裏面側保護部材と、前記表面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に配線部材によって互いに接続された複数の太陽電池とを備える太陽電池モジュールにおいて、前記太陽電池は、受光面に配設され、前記配線部材と接続される複数の表面側フィンガー電極と、裏面に配設され、前記配線部材と接続される複数の裏面側フィンガー電極とを有し、前記表面側フィンガー電極が存在する位置の裏面側のフィンガー電極の相対する位置に、少なくとも配線部材が接続される部分に表面側フィンガー電極に対して所定の角度を有する電極部分を備えることを特徴とする。
【0013】
また、剪断応力分散領域は、フィンガー電極と沿った長さをb、タブの幅をa、機械的精度によるタブの貼り付け位置の誤差をxとすると、b=a+2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極で形成すればよい。
【0014】
さらに、この発明は、表面側保護部材と、裏面側保護部材と、前記表面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に配線部材によって互いに接続された複数の太陽電池とを備える太陽電池モジュールにおいて、前記太陽電池は、受光面に配設され、前記配線部材と接続される複数の表面側フィンガー電極と、裏面に配設され、前記配線部材と接続される複数の裏面側フィンガー電極とを有し、前記裏面側フィンガー電極が存在する位置の表面側のフィンガー電極の相対する位置に、少なくとも配線部材が接続される部分に裏面側フィンガー電極に対して所定の角度を有する電極部分を備えることを特徴とする。
【0015】
また、剪断応力分散領域は、フィンガー電極と沿った長さをb、タブの幅をa、機械的精度によるタブの貼り付け位置の誤差をxとすると、b=a−2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極で形成すればよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、装置の誤差を考慮し、表面側フィンガー電極と裏面側のフィンガー電極が相対する位置に、少なくとも配線部材が接続される部分に、フィンガー電極に対して所定の角度を有する電極部分を有するので、互いのフィンガー電極と相対する位置には電極部分が存在することになり、表裏の電極で応力を緩和し、太陽電池のクラックの発生を抑制でき、歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の平面図である。
【図2】図1のA−A‘線断面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態にかかる太陽電池モジュールを示し、(a)は図1のA−A’線断面の要部を拡大した断面図、(b)は図1のB−B’線断面の要部を拡大した断面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。
【図5】この発明の第1の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【図6】この発明の第1の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【図7】この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。
【図8】この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールを示し、(a)は図1のA−A’線断面の要部を拡大した断面図、(b)は図1のB−B’線断面の要部を拡大した断面図である。
【図9】この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【図10】この発明の第3の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。
【図11】この発明の第4の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。
【図12】この発明の第3及び第4の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【図13】この発明の第5の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。
【図14】この発明の太陽電池モジュールの概略断面図である。
【図15】この発明の太陽電池モジュールのタブの接続工程を示す模式図である。
【図16】従来の太陽電池モジュールのタブの接続工程を示す模式図である。
【図17】従来の太陽電池モジュールのタブの接続工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0019】
この発明の第1の実施形態にかかる太陽電池モジュールにつき図1ないし図6を参照して説明する。
【0020】
この太陽電池モジュールは、複数の板状の太陽電池1を備えている。この太陽電池1は、例えば、厚みが0.15mm程度の単結晶シリコンや多結晶シリコンなどで構成される結晶系半導体からなり、1辺が125mm程度の略正方形を有するが、これに限るものではなく、他の太陽電池を用いても良い。
【0021】
この太陽電池1内には、例えば、n型領域とp型領域が形成され、n型領域とp型領域との界面部分でキャリア分離用の電界を形成するための接合部が形成されている。このn型領域とp型領域は、単結晶シリコンや多結晶シリコン等の結晶半導体、GaAsやInP等の化合物半導体、非晶質状態或いは微結晶状態を有する薄膜SiやCuInSe等の薄膜半導体等の太陽電池用に用いられる半導体を単独、或いは組み合わせて形成することができる。一例として互いに逆導電型を有する単結晶シリコンと非晶質シリコン層との間に薄膜の真性な非晶質シリコン層を介挿し、その界面での欠陥を低減し、ヘテロ接合界面の特性を改善した所謂HIT構造の太陽電池が用いられる。
【0022】
この太陽電池1の受光面(表面)側の表面部分には、表面電極11が形成されている。この表面電極11は、互いに並行に形成された複数のフィンガー電極110を含む。このフィンガー電極110は、例えば、電極幅100μm、ピッチ2mm、電極厚み50μmで55本程度形成される。フィンガー電極110に直交して配線部材としてのタブ20が接続される。
【0023】
図4及び図6に示すように、この表面電極11には、タブが接続される位置に合わせて折れ線状のバスバー電極111が設けられている。このバスバー電極111は次の条件に基づき設けられている。
【0024】
すなわち、機械的精度によるタブの貼り付け位置の誤差をx、タブ20の幅をa、バスバー電極111の折れ線状の幅間隔をbとすると、b=a+2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状のバスバー電極111が形成されている。例えば、タブ20の幅aが1.2mmの場合、機械精度によるタブの貼り付け位置の誤差とバスバー電極の位置精度誤差の合計が±0.2mmとして、その機械精度を考慮して、1.6mmの間隔(図中b)に、折れ線状にフィンガー電極110以上の幅でフィンガー電極110と同じ厚みのバスバー電極111が配置されるように形成されている。
【0025】
図4の1点鎖線で表示されているタブ20の機械的誤差を考慮した範囲内に、バスバー電極111が配置される。即ち、中心位置から図中左方向に斜めに延び0.8mm左側に達した点から右方向に斜めに折れ曲がって左端から右端まで1.6mmの位置まで延びる。そして、右端まで達すると左方向に折れ曲がるようにして折れ線状に、タブの貼り付け方向にバスバー電極111が形成されている。この実施形態では、3本のバスバー電極111が設けられている。
【0026】
このような表面電極11は、例えば、銀ペーストをスクリーン印刷して百数十度の温度で硬化させて形成したものである。
【0027】
また、太陽電池1の裏面側の表面部分には、裏面電極12が形成されている。この裏面電極12は、互いに並行に形成された複数のフィンガー電極120を含む。このフィンガー電極120は、例えば、電極幅100μm、ピッチ0.5mm、電極厚み10μmで217本程度形成される。
【0028】
この実施形態においては、図3、図4及び図6に示すように、表面電極11のフィンガー電極110の本数より、裏面電極12のフィンガー電極120の本数を多くしている。そして、少なくとも、表面のフィンガー電極110と相対する位置の裏面のフィンガー電極120には、タブ20が配置される箇所に剪断応力分散領域120bが設けられている。
【0029】
この剪断応力分散領域120bは、表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120とが平行した配置にならずに、且つ複数の電極部分が相対するように、表面側フィンガー電極110に対して所定の角度を有して折り曲げられた折れ線状の電極で構成されている。すなわち、タブ20が配置される箇所では、表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120の位置ズレが生じた場合においても表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120とが平行した配置にならず、そして、表面のフィンガー電極110が相対する位置においては、裏面のフィンガー電極120の剪断応力分散領域120bを構成する複数の電極部分が配置される。このように、タブ20が配置される箇所では、電極形成位置に誤差が生じても必ず、表面電極11のフィンガー電極110の相対する位置の裏面側には、裏面のフィンガー電極120に剪断応力分散領域120bを構成する複数の電極が存在する。
【0030】
図5及び図6に示すように、この実施形態では、折れ線状の電極からなる剪断応力分散領域120bは、その長さ(バスバー電極に沿った方向の長さ)をバスバー電極111と同様にタブ20の機械的誤差を考慮した範囲に設定している。すなわち、バスバー電極111の折れ線状の幅間隔と同じ長さになるように、剪断応力分散領域120bの折れ線状の電極が形成されている。この剪断応力分散領域120bも上述したb=a+2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極からなる剪断応力分散領域120bが形成されている。例えば、タブ20の幅aが1.2mmの場合、機械精度によるタブの貼り付け位置の誤差とバスバー電極の位置精度誤差xの合計が±0.2mmとして、その機械精度を考慮して、1.6mmの間隔(図中b)に剪断応力分散領域120bが形成されている。
【0031】
そして、表面側のフィンガー電極110と直交する方向の長さcは、電極形成位置に誤差が生じても必ず剪断応力分散領域120bの電極部分が相対するように、この実施形態ではフィンガー電極120の線幅の5倍程度の0.5mmとしている。このように、剪断応力分散領域120bは、図5の1点鎖線で表示されている電極形成位置の誤差を考慮し、中心位置から図中右方向に斜めに延び0.25mm右側に達した点から左方向に斜めに折れ曲がって右端から左端まで0.5mmの位置まで延びる。そして、右端まで達すると左方向に折れ曲がるようにして折れ線状に、タブの貼り付け箇所に形成されている。
【0032】
また、表面のフィンガー電極110が存在しない領域に位置する裏面のフィンガー電極120は、剪断応力分散領域120bは設けずに、この実施形態では、100μmの直線状の電極にしている。
【0033】
さらに、この裏面電極12にも表面電極11と同様にバスバー電極121が設けられている。このバスバー電極121は、表面のバスバー電極111と同様に折れ線状に形成されている。そして、表面電極11のバスバー電極111と裏面電極12のバスバー電極121とは、互いに重なり合う位置に形成されている。即ち、表面側のバスバー電極111が存在する太陽電池1の裏面側には裏面側のバスバー電極121が存在するように両バスバー電極111、121が設けられている。
【0034】
図6においては、上部に表面側の表面電極11、下側に裏面側の裏面電極12を表し、両者のフィンガー電極の関係を示している。図6に示すように、裏面側のフィンガー電極120の総本数は、表面側のフィンガー電極110の本数より多くしている。そして、この実施形態では、裏面側のフィンガー電極120の4本に対して1本の表面側のフィンガー電極110が相対するように互いのフィンガー電極が太陽電池1の表裏に形成されている。そして、表面のフィンガー電極110の相対する位置の裏面側フィンガー電極120には、タブ20が配置される箇所に折れ線状に電極を形成した剪断応力分散領域120bが設けられている。
【0035】
上記のように、この実施形態においては、表面電極11のフィンガー電極110の本数を、裏面電極12のフィンガー電極120の本数より少なくしている。このように、表面電極11の本数を少なくすることで、太陽電池1の表面に入射する光の量を増大できるので、太陽電池特性を向上させることができる。
【0036】
また、表面電極11のフィンガー電極110の厚みを、裏面電極12のフィンガー電極120の厚みより大きくすることで、表面電極11の抵抗を小さくすることができ、さらに太陽電池特性を向上させることができる。
【0037】
また、裏面側フィンガー電極120のタブ20が配置される箇所に折れ線状に電極を形成した剪断応力分散領域120bを設けているので、太陽電池1の表面に入射する光には影響を及ぼすことはない。そして、図3及び図5に示すように、タブ20が配置される箇所の表面電極11のフィンガー電極110の相対する位置の裏面側には、剪断応力分散領域120bを構成する複数の電極が存在する。タブ接続の際に加わる圧力が剪断応力分散領域120bを構成する複数の電極で受け止められることになる。この結果、剪断応力が分散され、太陽電池1のクラック等を防ぐことができる。
【0038】
この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールにつき図7ないし図9を参照して説明する。図7は、この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。図8は、この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールを示し、(a)は図1のA−A’線断面の要部を拡大した断面図、(b)は図1のB−B’線断面の要部を拡大した断面図、図9は、この発明の第2の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【0039】
第1の実施形態が剪断応力分散領域を裏面側のフィンガー電極120に設けているのに対し、この第2の実施形態では、表面側のフィンガー電極110に剪断応力分散領域110bを設けたものである。
【0040】
この第2の実施形態においても、図7及び図8に示すように、表面電極11のフィンガー電極110の本数より、裏面電極12のフィンガー電極120の本数を多くしている。そして、少なくとも、裏面のフィンガー電極120と相対する位置の表面のフィンガー電極110には、タブ20が配置される箇所に剪断応力分散領域120bが設けられている。
【0041】
この剪断応力分散領域110bは、表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120とが平行した配置にならずに、且つ複数の電極部分が相対するように、裏面側フィンガー電極120に対して所定の角度を有して折り曲げられた折れ線状の電極で構成されている。すなわち、タブ20が配置される箇所では、表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120の位置ズレが生じた場合においても表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120とが平行した配置にならず、そして、裏面のフィンガー電極120が相対する位置においては、表面のフィンガー電極110の剪断応力分散領域110bを構成する複数の電極部分が配置される。このように、タブ20が配置される箇所では、電極形成位置に誤差が生じても必ず裏面電極12のフィンガー電極120の相対する位置の表面側には、表面のフィンガー電極110に剪断応力分散領域110bを構成する複数の電極が存在する。
【0042】
図7及び図9に示すように、この実施形態では、折れ線状の電極からなる剪断応力分散領域110bは、タブ20の機械的誤差並びに表面側の光の入射を考慮した範囲に設定している。すなわち、タブ20を接続した時に、剪断応力分散領域110bの電極部分がタブ20から露出しないように形成される。剪断応力分散領域110bを構成する電極部分が光入射側に露出するとその分光の入射量が少なくなるので、剪断応力を分散する能力は若干劣るがタブ20から剪断応力分散領域110bの電極部分が露出しないように形成されている。
【0043】
このため、剪断応力分散領域110bは、b=a−2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極で形成されている。例えば、タブ20の幅aが1.2mmの場合、機械精度によるタブの貼り付け位置の誤差とバスバー電極の位置精度誤差xの合計が±0.2mmとして、その機械精度を考慮して、0.8mmの間隔(図中b)に剪断応力分散領域110bが形成されている。
【0044】
そして、裏面側のフィンガー電極120と直交する方向の長さcは、電極形成位置に誤差が生じても必ず剪断応力分散領域110bの電極部分が相対するように、この実施形態ではフィンガー電極110の線幅の9倍程度の0.9mmとしている。このように、剪断応力分散領域110bは、図7の1点鎖線で表示されている電極形成位置の誤差を考慮し、中心位置から図中右方向に斜めに延び0.45mm右側に達した点から左方向に斜めに折れ曲がって右端から左端まで0.9mmの位置まで延びる。そして、右端まで達すると左方向に折れ曲がるようにして折れ線状に、タブの貼り付け箇所に形成されている。
【0045】
また、裏面のフィンガー電極120が存在しない領域に位置する表面のフィンガー電極110は、剪断応力分散領域110bは設けずに、この実施形態では、100μmの直線状の電極にしている。
【0046】
この第2の実施形態においては、表面側フィンガー電極110のタブ20が配置される箇所に折れ線状に電極を形成した剪断応力分散領域110bを設けているので、裏面電極12のフィンガー電極120の相対する位置の表面側には、剪断応力分散領域110bを構成する複数の電極が存在する。タブ接続の際に加わる圧力が剪断応力分散領域110bを構成する複数の電極で受け止められることになる。この結果、剪断応力が分散され、太陽電池1のクラック等を防ぐことができる。
【0047】
この発明の第3の実施形態にかかる太陽電池モジュールにつき図10及び図12を参照して説明する。図10は、この発明の第3の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。図12は、この発明の第3の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【0048】
第1及び第2の実施形態は、剪断応力分散領域として折れ線状の電極で形成しているのに対し、この第3の実施形態では、剪断応力分散領域120b1として、フィンガー電極に所定の角度を有する電極片を複数個設けて構成している。この電極片はフィンガー電極と同じ線幅且つ厚さで、互いの電極片同士は接続されていない。
【0049】
この第3の実施形態においても、図10に示すように、表面電極11のフィンガー電極110の本数より、裏面電極12のフィンガー電極120の本数を多くしている。そして、少なくとも、表面のフィンガー電極110と相対する位置の裏面のフィンガー電極120には、タブ20が配置される箇所に剪断応力分散領域120b1が設けられている。
【0050】
この剪断応力分散領域120b1は、表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120とが平行した配置にならずに、且つ複数の電極片が相対するように、表面側フィンガー電極110に対して所定の角度を有して複数の電極片が互いに平行に設けられている。すなわち、タブ20が配置される箇所では、表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120の位置ズレが生じた場合においても表面のフィンガー電極110と裏面のフィンガー電極120とが平行した配置にならず、そして、表面のフィンガー電極110が相対する位置においては、裏面のフィンガー電極120の剪断応力分散領域120b1を構成する複数の電極片が配置される。このように、タブ20が配置される箇所では、電極形成位置に誤差が生じても必ず表面電極11フィンガー電極110の相対する位置の表面側には、裏面のフィンガー電極120に剪断応力分散領域120b1を構成する複数の電極片が存在する。
【0051】
図10及び図12に示すように、この実施形態では、剪断応力分散領域120b1の電極片が互いに接続されていないので、タブ20の機械的誤差を考慮し、フィンガー電極120とタブ20とが確実に接続される範囲に設定している。
【0052】
このため、剪断応力分散領域120b1は、b=a−2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極で形成されている。例えば、タブ20の幅aが1.2mmの場合、機械精度によるタブの貼り付け位置の誤差とバスバー電極の位置精度誤差xの合計が±0.2mmとして、その機械精度を考慮して、0.8mmの間隔(図中b)に剪断応力分散領域120b1が形成されている。
【0053】
この第3の実施形態においては、裏面側フィンガー電極120のタブ20が配置される箇所に折れ線状に電極を形成した剪断応力分散領域120b1を設けているので、表面電極11のフィンガー電極110の相対する位置の裏面側には、剪断応力分散領域120b1を構成する複数の電極片が存在する。タブ接続の際に加わる圧力が剪断応力分散領域120b1を構成する複数の電極で受け止められることになる。この結果、剪断応力が分散され、太陽電池1のクラック等を防ぐことができる。
【0054】
この発明の第4の実施形態にかかる太陽電池モジュールにつき図11及び図12を参照して説明する。図11は、この発明の第4の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。図12は、この発明の第4の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池の要部を示す平面図である。
【0055】
第3の実施形態は、裏面側のフィンガー電極に所定の角度を有する電極片を有する剪断応力分散領域120b1を設けているのに対して、この第4の実施形態は、表面側のフィンガー電極110に、フィンガー電極に所定の角度を有する電極片を複数個設けた剪断応力分散領域110b1を形成したものである。その他の構成は、第3の実施形態と同様である。
【0056】
この発明の第5の実施形態にかかる太陽電池モジュールにつき図13を参照して説明する。図13は、この発明の第5の実施形態にかかる太陽電池モジュールにおける太陽電池を示す平面図であり、(a)は受光面(表面)側、(b)は裏面側から見たものである。
【0057】
上記した実施形態においては、タブ20が接着される箇所に剪断応力分散領域を設けているが、この第5の実施形態は、裏面側のフィンガー電極1201を剪断応力分散領域と同じ形状に全て折れ線状にして形成している。そして、相対する表面側のフィンガー電極110との間に位置ズレが生じたとしても折れ線状の電極部分が相対するように構成している。その他の構成は、他の実施形態と同様である。
【0058】
次に、上記した太陽電池1を用いて太陽電池モジュールを製造する方法につき説明する。太陽電池モジュールは、図1ないし図3に示すように、表面電極11、裏面電極12に配線部材としてのタブ20が電気的に接続される。このタブ20を表面電極11、裏面電極12に接続するために導電性接着フィルム5を用いる。まず、タブ20を接着する位置に導電性接着フィルム5を圧着する。この圧着する導電性接着フィルム5は、接続するタブ20の幅と同一若しくは少し幅の細いものが用いられる。例えば、タブ20の幅が、0.5mm〜3mmであれば、導電性接着フィルム5の幅もタブ20の幅に対応して0.5mm〜3mmにする。この実施形態においては、図1に示すように、幅1.2mmの3本のタブ20を用いている。このため、タブ20が接着される位置にタブ20の幅に対応した幅の3本の導電性接着フィルム5が太陽電池1のバスバー電極111、121上に貼り着けられている。
【0059】
タブ20は、銅薄板20aで構成され、このタブの表面には、錫や半田などのコーティングを施すと良い。この実施形態では、錫をメッキしたコーティング層20bを設けている。このコーティング層20bは、軟導体層を構成する。このコーティング層は、錫を用いると説明したが、フィンガー電極110、120より軟らかい導電材料であって,且つ導電性接着フィルム5の接着層が硬化する温度で軟化する材料が望ましい。融点を引き下げた共晶半田を含めて、軟らかい導電性金属を使用することができる。
【0060】
導電性接着フィルム5にタブ20を押圧し、押圧しながら加熱処理を施して導電性接着フィルム5の接着層を熱硬化してタブ20を表面電極11、裏面電極12に接続する。
【0061】
樹脂接着フィルム5として、例えば、導電性接着フィルムが用いられる。導電性接着フィルム5としては、樹脂接着成分とその中に分散した導電性粒子とを少なくとも含んで構成されている。この内部に導電性粒子が分散された樹脂接着成分がポリイミドなどからなる基材フィルム上に設けられている。樹脂接着成分は熱硬化性樹脂を含有する組成物からなり、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。これらの熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いるか2種以上を組み合わせて用いられ、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂が好ましい。
【0062】
導電性粒子としては、例えば、金粒子、銀粒子、銅粒子及びニッケル粒子などの金属粒子、或いは、金メッキ粒子、銅メッキ粒子及びニッケルメッキ粒子などの導電性又は絶縁性の核粒子の表面を金属層などの導電層で被覆してなる導電性粒子が用いられる。
【0063】
複数の太陽電池1の各々を互いに隣接する他の太陽電池1とタブ20によって電気的に接続するには、タブ20の一方端側が所定の太陽電池1の上面側の表面電極11に接続されるとともに、他方端側がその所定の太陽電池1に隣接する別の太陽電池の下面側の裏面電極12に接続するように、太陽電池1の表裏に貼り着けた導電性接着フィルム5にそれぞれタブ20を置く。
【0064】
図15に示すように、そして、例えば、ホットプレート上に載せられた太陽電池1を例えば、3MPa程度の圧力でヒータブロックを用いて押圧し、タブ20を太陽電池1側にそれぞれ押し付ける。尚、図15においては、導電性接着フィルムは、図示を省略している。そして、ヒータブロック、ホットプレートの温度を樹脂接着成分が熱硬化する温度での高温加熱、例えば、120℃以上200℃以下の温度に加熱してタブ20を圧着固定させ、タブ20を固定して太陽電池1を電気的に接続して配列する。
【0065】
なお、上記した実施形態では、樹脂フィルムとして導電性樹脂フィルムを用いているが、樹脂フィルムとしては導電性粒子を含まないものも用いることができる。導電性粒子を含まない樹脂接着剤を用いる場合には、裏面電極11、12の表面の一部をタブ20の表面に直接接触させることによって、電気的な接続を行う。この場合、タブ20として銅箔版等の導電体の表面に、錫(Sn)や半田等の集電極11、12より柔らかい導電膜を形成したものを用い、表面電極11、裏面電極12の一部を導電膜中にめり込ませるようにして接続することが好ましい。
【0066】
このようにして、タブ20により複数の太陽電池1を接続したものを、ガラスからなる表面部材41と耐侯性フィルム又はガラス、プラスチックのような部材からなる裏面部材42との間に、EVA等の透光性を有する封止材43で挟んで重ね合わせる。そして、ラミネート装置により、太陽電池1を表面部材41と裏面部材42との間に封止材シート43により封止することにより、図6に示す太陽電池モジュールが得られる。
【0067】
上記太陽電池モジュールは、必要に応じて外周にシール材を用いてアルミニウムなどからなる外枠に嵌め込まれる。この外枠は、アルミニウム、ステンレス又は鋼板ロールフォーミング材等で形成されている。必要に応じて端子ボックス(図示せず)が、例えば裏面部材42の表面に設けられる。
【0068】
図3(a)には、太陽電池のA−A‘線断面における要部が拡大して示されており、図15には、タブの接続を行う工程の概略図を示している。
【0069】
上記したこの発明の実施形態の太陽電池モジュールは、太陽電池1の表裏のフィンガー電極110、120が相対する箇所には、剪断応力分散領域120bが配置されている。このため、機械的誤差が生じても表面側のフィンガー電極110の相対する位置には、裏面側の剪断応力分散領域120bが位置することになる。この結果、圧着時にかかる圧力は表裏のフィンガー電極110と剪断応力分散領域120b部分で受けることができ、圧力は表裏で相殺され、剪断応力を緩和することができる。これにより、圧着時の太陽電池1のクラック等の発生により太陽電池モジュールの不具合を解消できる。
【0070】
尚、上記した実施形態においては、バスバー電極を表面電極11及び裏面電極12にそれぞれ設けているが、バスバー電極を設けていない太陽電池においてもこの発明は適用できる。また、バスバー電極を備えることにより、配線部材との接着性が高めることができるので、バスバー電極は備える方が好ましい。
【0071】
また、上記した実施形態においては、太陽電池1上に3本のタブ20を用いて接続する例について説明したが、タブ20は3本に限らず、2本以上のタブ20を用いる場合にもこの発明を適用することができる。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 太陽電池
110 フィンガー電極
110 剪断応力分散領域
120 フィンガー電極
120b 剪断応力分散領域
20 タブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側保護部材と、裏面側保護部材と、前記表面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に配線部材によって互いに接続された複数の太陽電池とを備える太陽電池モジュールにおいて、
前記太陽電池は、受光面に配設され、前記配線部材と接続される複数の表面側フィンガー電極と、裏面に配設され、前記配線部材と接続される複数の裏面側フィンガー電極とを有し、
前記表面側フィンガー電極が存在する位置の裏面側のフィンガー電極の相対する位置に、少なくとも配線部材が接続される部分に表面側フィンガー電極に対して所定の角度を有する電極部分を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
剪断応力分散領域は、フィンガー電極と沿った長さをb、タブの幅をa、機械的精度によるタブの貼り付け位置の誤差をxとすると、b=a+2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
表面側保護部材と、裏面側保護部材と、前記表面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に配線部材によって互いに接続された複数の太陽電池とを備える太陽電池モジュールにおいて、
前記太陽電池は、受光面に配設され、前記配線部材と接続される複数の表面側フィンガー電極と、裏面に配設され、前記配線部材と接続される複数の裏面側フィンガー電極とを有し、
前記裏面側フィンガー電極が存在する位置の表面側のフィンガー電極の相対する位置に、少なくとも配線部材が接続される部分に裏面側フィンガー電極に対して所定の角度を有する電極部分を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項4】
剪断応力分散領域は、フィンガー電極と沿った長さをb、タブの幅をa、機械的精度によるタブの貼り付け位置の誤差をxとすると、b=a−2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項1】
表面側保護部材と、裏面側保護部材と、前記表面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に配線部材によって互いに接続された複数の太陽電池とを備える太陽電池モジュールにおいて、
前記太陽電池は、受光面に配設され、前記配線部材と接続される複数の表面側フィンガー電極と、裏面に配設され、前記配線部材と接続される複数の裏面側フィンガー電極とを有し、
前記表面側フィンガー電極が存在する位置の裏面側のフィンガー電極の相対する位置に、少なくとも配線部材が接続される部分に表面側フィンガー電極に対して所定の角度を有する電極部分を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
剪断応力分散領域は、フィンガー電極と沿った長さをb、タブの幅をa、機械的精度によるタブの貼り付け位置の誤差をxとすると、b=a+2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
表面側保護部材と、裏面側保護部材と、前記表面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に配線部材によって互いに接続された複数の太陽電池とを備える太陽電池モジュールにおいて、
前記太陽電池は、受光面に配設され、前記配線部材と接続される複数の表面側フィンガー電極と、裏面に配設され、前記配線部材と接続される複数の裏面側フィンガー電極とを有し、
前記裏面側フィンガー電極が存在する位置の表面側のフィンガー電極の相対する位置に、少なくとも配線部材が接続される部分に裏面側フィンガー電極に対して所定の角度を有する電極部分を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項4】
剪断応力分散領域は、フィンガー電極と沿った長さをb、タブの幅をa、機械的精度によるタブの貼り付け位置の誤差をxとすると、b=a−2×|x|の関係を満足するようにして折れ線状の電極で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−108985(P2011−108985A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264799(P2009−264799)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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