太陽電池用リード線及びその製造方法並びにそれを用いた太陽電池
【課題】セル割れ抑制効果および接合信頼性が高く、変換効率の低下を抑えた太陽電池用リード線およびその製造方法並びにそれを用いた太陽電池を提供する。
【解決手段】帯板状導電材の表面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層13a、13bを形成した太陽電池用リード線10(又は20)において、横断面形状で隅部分が面取りされた帯板状導電材12(又は21)を形成し、該帯板状導電材12(又は21)の上下面に溶融はんだを供給すると共にその上下の溶融はんだめっき層13a、13b(又は22a、22b)を平坦に形成したものである。
【解決手段】帯板状導電材の表面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層13a、13bを形成した太陽電池用リード線10(又は20)において、横断面形状で隅部分が面取りされた帯板状導電材12(又は21)を形成し、該帯板状導電材12(又は21)の上下面に溶融はんだを供給すると共にその上下の溶融はんだめっき層13a、13b(又は22a、22b)を平坦に形成したものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用リード線に係り、特に、太陽電池セルとの接合性(強度、短時間接合、信頼性)に優れた太陽電池用リード線及びその製造方法並びにそれを用いた太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池には、半導体基板として多結晶及び単結晶のSiセルが用いられる。
【0003】
図8(a)、図8(b)に示されるように、太陽電池100は、半導体基板102の所定の領域、すなわち半導体基板102の表面に設けられた表面電極104と裏面に設けられた裏面電極105に、太陽電池用リード線103a、103bをはんだで接合して製造される。半導体基板102内で発電された電力を太陽電池用リード線103を通じて外部へ伝送する。
【0004】
図9(a)、図9(b)に示されるように、従来の太陽電池用リード線103a(又は103b)は、横断面形状が長方形の帯板状導電材112とその帯板状導電材112の上下面に形成された溶融はんだめっき層113とを備える。帯板状導電材112は、例えば、円形断面の導体を圧延加工して帯板状にしたものであり、平角導体、平角線とも呼ばれる。
【0005】
溶融はんだめっき層113は、帯板状導電材112の上下面に、溶融めっき法により溶融はんだを供給して形成したものである。
【0006】
溶融めっき法は、酸洗等により帯板状導電材112の上下面112a、112bを清浄化し、その帯板状導電材112を、溶融はんだ浴に通すことにより、帯板状導電材112の上下面112a、112bにはんだを積層していく方法である。溶融はんだめっき層113は、帯板状導電材112の上下面112a、112bに付着した溶融はんだが凝固する際に表面張力の作用によって、図9(b)に示されるように、幅方向側部から中央部にかけて膨らんだ形状、いわゆる山形に形成される。
【0007】
図9(a)、図9(b)に示した従来の太陽電池用リード線103a(又は103b)は、帯板状導電材112の上下面112a、112bに山形に膨らんだ溶融はんだめっき層113が形成される。この太陽電池用リード線103は溶融はんだめっき層113が山形に膨らんでいるため、ボビンに巻き取る際に安定した積層状態が得られ難く、巻き崩れが起こりやすい。また、巻き崩れによりリード線が絡まり、引き出されなくなることがある。
【0008】
この太陽電池用リード線103を所定の長さに切断し、エアで吸着して半導体基板102の表面電極104の上に移動し、半導体基板102の表面電極104にはんだ接合する。表面電極104には、表面電極104と導通する電極帯(図示せず)が、あらかじめ形成されている。この表面電極104に太陽電池用リード線103aの溶融はんだめっき層113を接触させ、その状態ではんだ付けし接合を行う。太陽電池用リード線103bを半導体基板102の裏面電極105に接合する場合も同様である。
【0009】
このとき、図9(a)、図9(b)の太陽電池用リード線103は、溶融はんだめっき層113が膨らみ偏肉化しているため、エア吸着治具との接触面積が小さく吸着力が不十分で、移動の際に落下する問題がある。また、表面電極104と溶融はんだめっき層113との接触面積が小さくなる。表面電極104と溶融はんだめっき層113との接触面積が小さいと、半導体基板102から溶融はんだめっき層113への熱伝導が不十分になり、はんだ付け不良が生じる。一般にはんだ付けではリード線端部(エッジ部)に形成されるはんだフィレットが接合信頼性に影響を及ぼすが、リード線の幅方向に山形を形成している従来技術によるリード線でははんだフィレット形成が不十分と成り得る。逆にフィレットを十分に形成させようとするとより接合時間を要することになる。さらにフィレット形成分だけ、接合面積は増加することになるため、半導体基板102の太陽光受光面積の減少に繋がり、発電効率が低下する懸念がある。
【0010】
また、表面電極104と溶融はんだめっき層113との接触面積が小さいことは、半導体基板102の表裏両面に太陽電池用リード線103a、103bを接合する場合に、表面電極104にはんだ付けする太陽電池用リード線103aと裏面電極105にはんだ付けする太陽電池用リード線103bとの間に位置ズレを生じさせ、その位置ズレが原因でセル割れ(半導体基板102が割れること)が発生する。半導体基板102は高価であるので、セル割れは好ましくない。
【0011】
表面電極104と太陽電池用リード線103とのはんだ付け性を向上させるために、帯板状導電材112に凹部を形成し、これを溶融めっきすることで凹部にはんだを充填させ、リード線幅方向にめっきの山形が形成されるのを防止し、太陽電池組み立て時の配線歩留を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また帯板状導電材112の太陽電池接合面を粗くし、高い接着力を得ようとした方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
図10に示されるように、特許文献1の太陽電池用リード線30は、帯板状導電材31に、ロールなどにより凹部を形成した後、溶融めっきを実施することにより成る。このような太陽電池用リード線30を半導体基板102の表面電極104又は裏面電極105に対して溶融はんだめっき層32をはんだ付けすると、リード線の位置ズレもなく高歩留での配線が可能となる。また、図11に示されるように特許文献2の太陽電池用リード線50では、帯板状導電材51の太陽電池接合面は研磨もしくはエッチングにより粗面が形成される。これにより実質的な接合面積は広くなるため、太陽電池用リード線50が半導体基板102に強固に接合されることになり、耐久性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開WO2004/105141号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2006/128203号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述のように、特許文献1の太陽電池用リード線30によれば、導電材断面に凹加工がされているため、幅方向側部から中央部にかけての溶融はんだめっき層32も平坦なため、電極に対する位置ズレも生じにくく、位置ズレによるセル割れは起こりにくい。しかし、導電材幅方向の中央部にはんだがより多く留まるため、導電材端部のはんだフィレット形成は小さく、接合信頼性上はリード線剥がれによる、モジュール出力が低下する問題が完全に解決されたわけではない。また、特許文献2の太陽電池用リード線50によれば帯板状導電材51に粗面加工がされているため、帯板状導電材51と、帯板状導電材51−太陽電池表面電極104、105間に存在するはんだなどのろう材との接合性の向上は期待できるが、フィレット形成に伴う太陽光受光面積の減少の問題は解決されていない。
【0015】
太陽電池のコストの大半を半導体基板102が占めるため、半導体基板102の薄型化が検討されているが、薄型化された半導体基板102は電極への太陽電池用リード線の接合時に反りやすく、割れやすい。例えば、半導体基板102の厚みが200μm以下になると反りによるセル割れや平角線の剥離が生じる割合が大きくなる。太陽電池用リード線が原因で半導体基板102にセル割れや平角線の剥離によるモジュール出力の低下が発生するようでは、半導体基板102の薄型化は望めない。
【0016】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、セル割れ抑制効果及び接合信頼性が高くかつセルの太陽光受光面積の減少を最小限に抑え、短時間で配線可能な太陽電池用リード線及びその製造方法並びにそれを用いた太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、帯板状導電材の表面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層を形成した太陽電池用リード線において、横断面形状で隅部分が面取りされた帯板状導電材を形成し、該帯板状導電材の上下面に溶融はんだを供給すると共にその上下の溶融はんだめっき層を平坦に形成した太陽電池用リード線である。
【0018】
請求項2の発明は、めっき温度を使用はんだの液相線温度+120℃以下にし、前記溶融はんだめっき層表面の酸化膜の厚さを7nm以下にした請求項1に記載の太陽電池用リード線である。
【0019】
請求項3の発明は、前記帯板状導電材は、体積抵抗率が50μΩ・mm以下の平角線である請求項1又は2に記載の太陽電池用リード線である。
【0020】
請求項4の発明は、引張試験における0.2%耐力値が90MPa以下である請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用リード線である。
【0021】
請求項5の発明は、前記帯板状導電材は、Cu、Al、Ag、Auのいずれかからなる請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用リード線である。
【0022】
請求項6の発明は、前記帯板状導電材は、タフピッチCu、低酸素Cu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、純度99.9999%以上の高純度Cuのいずれかからなる請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用リード線である。
【0023】
請求項7の発明は、前記溶融はんだめっき層は、Sn系はんだ、又は、第1成分としてSnを用い、第2成分としてPb、In、Bi、Sb、Ag、Zn、Ni、Cuから選択される少なくとも1つの元素を0.1mass%以上含むSn系はんだ合金からなる請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用リード線である。
【0024】
請求項8の発明は、素線を圧延もしくはダイス引き加工することにより横断面の隅が面取りされた形状の帯板状導電材を形成し、該帯板状導電材を連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備で熱処理し、その後、溶融はんだを供給して前記帯板状導電材に、はんだめっきすると共に、そのめっきした帯板状導電材をはんだ溶融状態において、平ロールで挟むことにより、溶融はんだめっき層に平坦部を形成する太陽電池用リード線の製造方法である。
【0025】
請求項9の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用リード線を、その溶融はんだめっき層のはんだによって半導体基板の表面電極及び裏面電極にはんだ付けした太陽電池である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、セル割れ抑制効果および接合信頼性が高くかつセルの太陽光受光面積の減少を最小限に抑え、短時間で配線可能な太陽電池用リード線を得ることができるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示す太陽電池用リード線の図であり、(a)は上面図、(b)はA−A線断面図である。
【図2】本発明において、帯板状導電材の製造に用いる圧延ロールの概略図である。
【図3】図1の太陽電池用リード線の材料となる帯板状導電材の図であり、(a)は上面図、(b)はB−B線断面図である。
【図4】本発明において、溶融はんだめっき層を形成する溶融めっき設備の概略図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す太陽電池用リード線の図であり、(a)は上面図、(b)はC−C線断面図である。
【図6】図5の太陽電池用リード線の材料となる帯板状導電材の図であり、(a)は上面図、(b)はD−D線断面図である。
【図7】本発明の太陽電池を示し、(a)は太陽電池の上面図、(b)は横断面図である。
【図8】従来の太陽電池を示し、(a)は太陽電池の上面図、(b)は横断面図である。
【図9】従来の太陽電池用リード線を示す図であり、(a)は上面図、(b)はE−E線断面図である。
【図10】従来の太陽電池用リード線の横断面図である。
【図11】従来の太陽電池用リード線の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0029】
図1(a)、図1(b)に示されるように、本発明に係る太陽電池用リード線10は、あらかじめ、素線を圧延もしくはダイス引き加工して、横断面形状で四隅部分が面取りされた帯板状導電材12を形成し、その帯板状導電材12の上下面に溶融はんだを供給し、はんだ浴出口でめっきした帯板状導電材12をはんだが溶融した状態で、平ロールではさみ、めっき厚を調整しつつ、上下の溶融はんだめっき層13a、13bに平面部を形成したものである。
【0030】
帯板状導電材12は、素線(断面円形状の線材)を例えば圧延加工することにより形成されるが、この時、導体横断面の四隅部が面取りされた形状を得るために、圧延ロールには例えば図2の形状の圧延ロール14が使用される。その後、形成(圧延)された導体を連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備で熱処理して形成される。
【0031】
図3(a)、図3(b)は、帯板状導電材12を示したもので、上面12aと下面12bとが平坦面にされ、側面12c、12dは斜面を形成し、横断面では丁度四隅部分が面取りされた形状となる。端面12eが適時の長さにカットされて形成される。
【0032】
図4は、溶融はんだめっき層13a、13bに平坦部を形成するための溶融めっき設備を示し、はんだ浴15内に帯板状導電材12を反転させて上方に向く反転ローラ16が設けられ、そのローラ16の上方に位置したはんだ浴15の上方に、上下一対のロール17a、17b、18a、18bを設け、その上方に引き上げローラ19を設けて構成される。全てのローラは平坦な表面形状を有している。
【0033】
横断面四隅部分が面取り形状とされた帯板状導電材12は、はんだ浴15に浸漬されることで上下面12a、12bにはんだが供給され、反転ローラ16で反転されて上方に向い、下部ロール17a、17bで、めっき層が挟まれて平坦部が形成される。上部ロール18a、18bで心材(Cu)の位置を調整することによって、図1(a)、図1(b)に示すように溶融はんだめっき層13a、13bに平坦部を形成し、且つ帯板状導電材の横断面四隅部分には平坦部よりはんだめっき量の多い太陽電池用リード線10が製造される。
【0034】
帯板状導電材12に平坦部を有する溶融はんだめっき層13a、13bを形成する為の上下のロール17a、17b、18a、18bは、めっき浴15の出口で帯板状導電材12の上下面を挟むように配置され、その上下のロール17a、17b、18a、18bの間隔を微調整することで、溶融はんだめっき層13a、13bのめっき厚およびその溶融はんだめっき層13a、13bの横断面形状を調整することができる。
【0035】
図5は、本発明に係る太陽電池用リード線の他の形状を示したものである。
【0036】
図5の太陽電池用リード線20は、素線の圧延加工の際、図6に示すように、横断面四隅部分にR形状がつくようなロールを用いて加工して帯板状導電材21を形成したのち、溶融はんだめっきを行って溶融めっきはんだ層22a、22bを形成したものである。
【0037】
これらの形状は、素線の圧延加工の際、圧延ロールの形状を変えることと溶融はんだめっきの量と上下のロール17a、17b、18a、18bの間隔とその位置を調整することで形成できる。
【0038】
すなわち、図4の溶融めっき設備で、帯板状導電材12(又は21)の上下面に溶融はんだめっき層13a、13b(又は22a、22b)が形成される際、帯板状導電材12(又は21)の上下に走行する経路は、反転ローラ16と引き上げローラ19とで決定され、その経路に対して上下の各ロール17a、17b、18a、18bの位置と間隔を微調整することで、上部溶融はんだめっき層13a(又は22a)の層厚と下部溶融はんだめっき層13b(又は22b)の層厚が調整できると共に全体の層厚が調整でき、また平坦部の層厚および横断面四隅部分の層厚は、下部のロール17a、17bの間隔で決定され、上部のロール18a、18bの間隔で心材である帯板状導電材12(又は21)の位置が決定される。
【0039】
はんだめっき炉に対するロールの高さは、はんだめっきが完全に凝固しない位置に固定しているので溶融状態ではんだめっきに平坦部を形成するため、心材である帯板状導電材12(又は21)は加工硬化せず、その0.2%耐力を低く維持できる。
【0040】
このように本発明に係る太陽電池用リード線10、20は、半導体基板の表面電極及び裏面電極への設置が容易となるよう、及び充分な接合性が確保されるように導体横断面四隅部分を面取り形状とし、当該部分の溶融はんだめっき量を積極的に確保したものである。さらに、はんだ溶融状態でめっき層13a、13b、22a、22bに平坦部を形成するため心材が加工硬化せず、低い0.2%耐力を維持でき、セルへの接続時にセル反りが生じにくい。セル反りが生じにくいため、セルが反った際のリード線の剥離が生じにくい。また、導体横断面四隅部分に溶融はんだが十分に存在するため、迅速なフィレット形成が可能となり、表面電極及び裏面電極に対して強固でかつ接合後の導体幅方向のはんだ広がりを抑えた接合(導体面取り部にフィレットを形成)を可能にする。
【0041】
また、溶融はんだめっき層13a、13b、22a、22bが平坦なためエア吸着治具との密着性が高く移動時の落下が起こりにくい。さらに、溶融はんだめっき層13a、13b、22a、22bが平坦なことでボビンに巻き取る際に安定した積層状態が得られ易く、巻き崩れが起こりにくい。よって、巻き崩れにより太陽電池用リード線が絡まって引き出されなくなる問題も解消される。
【0042】
帯板状導電材12、21には、例えば、体積抵抗率が50μΩ・mm以下の素線(断面円形状の線材)を用いる。この素線を圧延もしくはダイス引き加工することによって図3(b)、図6(b)のような横断面形状の帯板状導電材12、21を得ることができる。
【0043】
帯板状導電材12、21は、Cu、Al、Ag、Auのいずれか、あるいは、タフピッチCu、低酸素Cu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、純度99.9999%以上の高純度Cuのいずれかからなる。
【0044】
溶融はんだめっき層13a、13b、22a、22bとしては、Sn系はんだ(Sn系はんだ合金)を用いる。Sn系はんだは、成分重量が最も重い第1成分としてSnを用い、第2成分としてPb、In、Bi、Sb、Ag、Zn、Ni、Cuから選択される少なくとも1つの元素を0.1mass%以上含むものである。
【0045】
次に、本発明の作用を説明する。
【0046】
図1(a)、図1(b)に示した太陽電池用リード線10を、図7に示す半導体基板42の表面電極44及び裏面電極45に接合するに際し、太陽電池用リード線10や半導体基板42の加熱温度は、溶融はんだめっき層13a、13bのはんだの融点付近に制御される。その理由は、太陽電池用リード線10の帯板状導電材12(例えば、Cu)の熱膨張率と半導体基板(Si)の熱膨張率が大きく相違するためである。熱膨張率の相違によって半導体基板42に反り及びクラックを発生させる原因となる熱応力が生じる。この熱応力を小さくするには、リード線の0.2%耐力を小さくすればよい。これにより、接合の際に加熱されたリード線が冷却する際に、セルに生じる圧縮応力を下げられるためセルの反りが低減され、セル反りによって発生するリード線の剥離を防ぐことができる。よって、リード線の0.2%耐力は90MPa以下であることが望ましい。また、接合時の熱膨張歪みを小さくするため、接合温度は可能な限り低温で行うのがよい。よって、太陽電池用リード線10や半導体基板42の加熱温度は、溶融はんだめっき層13a、13bのはんだの融点付近の温度に制御される。
【0047】
上記接合時の加熱方法は、例えば、半導体基板42をホットプレート上に設置し、このホットプレートからの加熱と半導体基板42に設置された太陽電池用リード線10の上方からの加熱とを併用するものである。
【0048】
半導体基板42の表面電極44及び裏面電極45と太陽電池用リード線10との接合強度を上げるためには太陽電池用リード線10の横断面四隅部分を面取り形状とし、これにはんだめっきを施し、半導体基板42の表面電極44及び裏面電極45との接合時に、導体面取り部分に積極的にフィレット13cが形成できるようにするのが良い。そして、セル反りによるリード線の剥離を防ぐためには、太陽電池用リード線10の0.2%耐力が90MPa以下でなければならない。
【0049】
しかし、図10に示した従来の太陽電池用リード線30は、リード線横断面中央部にはんだが留まっているため、リード線端部のフィレット形成は充分ではなく、半導体基板42の表面電極44及び裏面電極45と太陽電池用リード線30との接合強度は十分に確保されているとは言い難いため、太陽電池用リード線30と半導体基板42との間で剥離が生じ、十分な導通が得られなくなり、モジュール出力が低下してしまう。一方、本発明の太陽電池用リード線10は半導体基板42の表面電極44及び裏面電極45と太陽電池用リード線10との接合強度を十分確保するため、リード線端部のはんだフィレット形成が迅速且つ十分に出来るようにリード線横断面四隅部分に面取りを施した形状となっている。
【0050】
本発明は、溶融めっきを高速で行う際に生ずるめっき層の偏肉化をロール17、18で溶融はんだを絞り落とすことによって抑制できるため、所定のめっき厚形成を従来よりも高速で行うことができ、量産性にも優れている。また、本方式でめっきを行うことによって導体四隅部分のめっき厚が厚く出来る。その結果、本発明は、セルの太陽光受光面積の減少を最小限に抑え、短時間で配線可能でセル割れ抑制および接続信頼性に最も効果を有する太陽電池用リード線10を提供することができる。ここでは、太陽電池用リード線10の効果について述べたが、太陽電池用リード線20も同様の効果を得られる。
【0051】
次に、本発明に用いる帯板状導電材12、21の材料の物性を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
帯板状導電材12、21は、体積抵抗率が比較的小さい材料であることが好ましい。表1のように、帯板状導電材12、21にはCu、Al、Ag、Auなどが用いられる。
【0054】
Cu、Al、Ag、Auのうち体積抵抗率が最も低いのはAgである。従って、帯板状導電材12、21としてAgを用いると、太陽電池用リード線10、20を用いた太陽電池の発電効率を最大限にすることができる。帯板状導電材12、21としてCuを用いると、太陽電池用リード線10、20を低コストにすることができる。帯板状導電材12、21としてAlを用いると、太陽電池用リード線10、20の軽量化を図ることができる。
【0055】
帯板状導電材12、21としてCuを用いる場合、そのCuには、タフピッチCu、低酸素Cu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、純度99.9999%以上の高純度Cuのいずれを用いてもよい。帯板状導電材12、21の0.2%耐力を最も小さくするためには、純度が高いCuを用いるのが有利である。よって、純度99.9999%以上の高純度Cuを用いると、帯板状導電材12、21の0.2%耐力を小さくすることができる。タフピッチCu又はリン脱酸Cuを用いると、太陽電池用リード線10、20を低コストにすることができる。
【0056】
溶融はんだめっき層13a、13bに用いるはんだとしては、Sn系はんだ、又は、第1成分としてSnを用い、第2成分としてPb、In、Bi、Sb、Ag、Zn、Ni、Cuから選択される少なくとも1つの元素を0.1mass%以上含むSn系はんだ合金が挙げられる。これらのはんだは、第3成分として1000ppm以下の微量元素を含んでいてもよい。
【0057】
次に、本発明の太陽電池用リード線10の製造方法を説明する。
【0058】
まず、原料の断面円形状の線材(図示せず)を図2に示す様な圧延ロール14を使用して圧延加工することにより、横断面四隅部分が面取り形状を持つ帯板状導電材12を形成する。この帯板状導電材12を連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備で熱処理する。その後、図4のような溶融めっき設備を用いて溶融はんだを供給して、溶融はんだめっき層13a、13bに平坦部を形成する。
【0059】
原料を帯板状導電材12に加工する加工方法としては、圧延加工、ダイス引き加工のいずれも適用可能である。圧延加工とは、丸線を圧延して所定の断面形状を得る方式である。圧延加工により帯板状導電材を形成すると、長尺で長手方向に断面形状が均一なものが形成できる。ダイス引き加工は丸線を所望断面形状のダイスに通す加工法であり、本加工法も長尺で長手方向に断面形状が均一なものが形成できる。いずれの加工法でも、帯板状導電材12の横断面四隅部分が面取り形状となるような圧延ロール、ダイスなどを用いて整形する。
【0060】
帯板状導電材12を熱処理することにより、帯板状導電材12の軟化特性を向上させることができる。帯板状導電材12の軟化特性を向上させることは、0.2%耐力を低減させるのに有効である。熱処理方法としては、連続通電加熱、連続式加熱、バッチ式加熱がある。連続して長尺にわたって熱処理するには、連続通電加熱、連続式加熱が好ましい。安定した熱処理が必要な場合には、バッチ式加熱が好ましい。酸化を防止する観点から、窒素などの不活性ガス雰囲気あるいは水素還元雰囲気の炉を用いるのが好ましい。
【0061】
不活性ガス雰囲気あるいは水素還元雰囲気の炉は、連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備により提供される。
【0062】
ここでは、太陽電池用リード線10の製造方法について述べたが、太陽電池用リード線20も横断面四隅部分がR形状となる圧延ロール、ダイスを用いる以外は同様の製造方法により得られる。
【0063】
次に、本発明の太陽電池について詳しく説明する。
【0064】
図7(a)及び図7(b)に示されるように、本発明の太陽電池40は、これまで説明した太陽電池用リード線10を溶融はんだめっき層13a、13bのはんだによって半導体基板42の表面電極44及び裏面電極45に接合したものである。ただし、はんだ接合の場合には、はんだめっき表面の酸化膜厚を7nm以下とすることが望ましい。一般に、酸化膜の厚さが7nmを超えると、セル上の電極44、45に太陽電池用リード線をはんだ接合する際、酸化膜の除去が難しくなり、電極44、45に対する太陽電池用リード線のはんだ付けが不十分になる。酸化膜の厚さは例えばオージェ分析によって得られるデプスプロファイルにおいて、スパッタレートをSiO2換算とし、酸素ピーク値が半減する時間で定義することができる。はんだめっき表面の酸化膜厚を7nm以下とする方法としては、めっき温度を使用はんだの液相線温度+120℃以下に設定して溶融めっきを行う方法がある。
【0065】
太陽電池用リード線10と表面電極44との接合面となる溶融はんだめっき層13a、13bに平坦部が形成されているため、半導体基板42の電極44、45上において太陽電池用リード線10の位置が安定し、位置ズレが防止されている。また、太陽電池用リード線10の端部には帯板状導電材12の横断面四隅部分が面取り形状となっているため、はんだが十分にあり、十分なフィレット13cをリード幅に対して大きく広がることなく形成することができ、接合強度の確保とリード線接合面積増大の抑制には有利である。これに加え、太陽電池用リード線10の0.2%耐力を小さくしているため、接合時に半導体基板42が反りにくく、反りによるリード線の剥離も起こりにくい。
【0066】
本発明の太陽電池40によれば、太陽電池用リード線10と半導体基板42との接合強度確保と接合面積の増大抑制が可能となり、かつ、接合時のセル割れを抑制することができるので、太陽電池の出力の向上(変換効率向上)および歩留ならびに接合信頼性の向上を図ることができる。ここでは、太陽電池用リード線10を用いた太陽電池40について述べたが、太陽電池用リード線20を用いた太陽電池でも同様の効果が得られる。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
原料導電材であるCu材料を圧延加工して幅1.0mm、厚さ0.2mm、横断面四隅各部の面取り幅0.1mmの平角線状の帯板状導電材12を形成した。この帯板状導電材12を連続式加熱炉で熱処理し、さらに、この帯板状導電材12の周囲に図4に示す溶融めっき設備でSn−3%Ag−0.5%Cuはんだめっきを施して帯板状導電材12の上下面に平坦部を有する溶融はんだめっき層13a、13bを形成した(導体は熱処理Cu)。以上により、図1(a)、図1(b)の太陽電池用リード線10を得た。引張速度100mm/minの引張試験で得られたS−S曲線から0.2%耐力点荷重を求め、心材(Cu)の断面積で除して0.2%耐力を求めると60MPaであった。
【0068】
(実施例2、比較例1、2、3)
実施例2は実施例1の太陽電池用リード線10の横断面四隅部分がR面取り形状の帯板状導電材21、比較例1は横断面中央部分は凹形状となるロールを用いて圧延したもの、比較例2は帯板状導電材をそのままの断面形状のもの、そして比較例3は帯板状導電材の上下面に研磨により粗面加工したものを連続式加熱炉で熱処理し(実施例2と比較例1、2、3は実施例1と同じ温度で熱処理)、さらに、この帯板状導電材の周囲に図4に示す溶融めっき設備でSn−3%Ag−0.5%Cuはんだめっきを実施例2と比較例1、3は実施例1と同じ平坦加工ロールを使用し、比較例2はロールをまったく使用せずにはんだめっきを施し、帯板状導電材の上下面に、溶融はんだめっき層(実施例1、2の四隅部分および比較例1の凹部、比較例2中央部、比較例3の端部及び中央部のめっき厚40μm)を形成した(導体は熱処理Cu)。以上により、実施例1は図1、実施例2は図5、比較例1は図10、比較例2は図9、比較例3は図11に示した太陽電池用リード線を得た。0.2%耐力は、何れも60MPaであった。
【0069】
これら実施例1、2及び比較例1、2、3の太陽電池用リード線にロジン系フラックスを適量塗布し、それぞれの太陽電池用リード線を縦150mm×横150mm×厚さ180μmの半導体基板(Siセル)の上面の電極部位に設置して、10gの錘を載せた状態でホットプレート加熱(260℃で30秒間保持)し、はんだ付けした。これらの接合の際に生じるセル反りの影響で発生するリード線の剥離状況、リード線搬送状況及びはんだの濡れ広がり状況を調べた。
【0070】
実施例1、2及び比較例1、2、3の評価結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2の「導電材横断面形状」の欄は、帯板状導電材のはんだめっき前の横断面形状を示す。「断面形状」の欄は、どの図に示した断面形状であったかを示す。「はんだ濡れ広がり性」の欄は、はんだ付け完了時のリード線幅に対するはんだの広がり幅の比率を示しており1.1未満を○、1.1以上を×として示した。「導電材搬送性」の欄は、リード線を定尺に切断後、一定数のリード線を真空ピンセットで吸着し、一定距離を搬送した際の成功率(落下せずに搬送)を実施例1を100とした場合の割合を示し、95%以上を○、95%未満を×として示した。「接合強度」の欄は、リード線とセルを接合後、ピール試験を実施し、実施例1の強度を100とした場合、90%以上を〇、90%未満を×とした。「量産コスト」の欄は、従来の溶融めっきにかかるコストを1.0とし、製造コストが1.2未満の場合を〇、1.5を超える場合を×とした。
【0073】
表2に示されるように、実施例1、2の太陽電池用リード線10、20は、0.2%耐力が低く、セル反りが少ないことが確認された。また、導電材横断面で四隅が面取り形状となっているため、半導体基板(Siセル)の上面の電極部位との接合状態も良好でありかつはんだの濡れ広がりも抑えられていることが確認できた。導電材の製造においても圧延時のロール形状を変更するだけで良いため、量産コストが従来のはんだめっき線とほぼ同等であり、工業的に優れた方法である。
【0074】
これに対し、実施例1、2と同様のめっきプロセスであっても、導電材横断面形状の異なる比較例1では、導電材搬送性は良好であっても、接合強度が劣る結果となった。比較例2では、断面形状が中央部が凸形状であるため、導電材搬送性、接合強度が実施例1と比較し劣る。また、はんだの濡れ広がりも他の例と比較し大きい。比較例3では接合強度は十分確保できたが、はんだの濡れ広がりが大きくなってしまった。
【0075】
以上のように、実施例1、2及び比較例1、2、3の評価結果から、本発明の太陽電池用リード線10、20はセルとの接合占有面積を抑えつつ接合信頼性が大きく向上することが確認された。なお、実施例では導電材の横断面において4隅を面取りした形状を用いているが、これに限定されるものではなく、いわゆるバックコンタクトタイプの太陽電池セルに用いられる裏面配線に適用する場合には、導電材の横断面の4隅のうち、太陽電池セルの電極から離れて位置する2つの隅部を面取りすることなく、太陽電池セルの電極に対向する2つの隅部を長手方向に面取りすることで十分に本発明の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0076】
10、20 太陽電池用リード線
12、21 帯板状導電材
13a、13b、22a、22b 溶融はんだめっき層
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用リード線に係り、特に、太陽電池セルとの接合性(強度、短時間接合、信頼性)に優れた太陽電池用リード線及びその製造方法並びにそれを用いた太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池には、半導体基板として多結晶及び単結晶のSiセルが用いられる。
【0003】
図8(a)、図8(b)に示されるように、太陽電池100は、半導体基板102の所定の領域、すなわち半導体基板102の表面に設けられた表面電極104と裏面に設けられた裏面電極105に、太陽電池用リード線103a、103bをはんだで接合して製造される。半導体基板102内で発電された電力を太陽電池用リード線103を通じて外部へ伝送する。
【0004】
図9(a)、図9(b)に示されるように、従来の太陽電池用リード線103a(又は103b)は、横断面形状が長方形の帯板状導電材112とその帯板状導電材112の上下面に形成された溶融はんだめっき層113とを備える。帯板状導電材112は、例えば、円形断面の導体を圧延加工して帯板状にしたものであり、平角導体、平角線とも呼ばれる。
【0005】
溶融はんだめっき層113は、帯板状導電材112の上下面に、溶融めっき法により溶融はんだを供給して形成したものである。
【0006】
溶融めっき法は、酸洗等により帯板状導電材112の上下面112a、112bを清浄化し、その帯板状導電材112を、溶融はんだ浴に通すことにより、帯板状導電材112の上下面112a、112bにはんだを積層していく方法である。溶融はんだめっき層113は、帯板状導電材112の上下面112a、112bに付着した溶融はんだが凝固する際に表面張力の作用によって、図9(b)に示されるように、幅方向側部から中央部にかけて膨らんだ形状、いわゆる山形に形成される。
【0007】
図9(a)、図9(b)に示した従来の太陽電池用リード線103a(又は103b)は、帯板状導電材112の上下面112a、112bに山形に膨らんだ溶融はんだめっき層113が形成される。この太陽電池用リード線103は溶融はんだめっき層113が山形に膨らんでいるため、ボビンに巻き取る際に安定した積層状態が得られ難く、巻き崩れが起こりやすい。また、巻き崩れによりリード線が絡まり、引き出されなくなることがある。
【0008】
この太陽電池用リード線103を所定の長さに切断し、エアで吸着して半導体基板102の表面電極104の上に移動し、半導体基板102の表面電極104にはんだ接合する。表面電極104には、表面電極104と導通する電極帯(図示せず)が、あらかじめ形成されている。この表面電極104に太陽電池用リード線103aの溶融はんだめっき層113を接触させ、その状態ではんだ付けし接合を行う。太陽電池用リード線103bを半導体基板102の裏面電極105に接合する場合も同様である。
【0009】
このとき、図9(a)、図9(b)の太陽電池用リード線103は、溶融はんだめっき層113が膨らみ偏肉化しているため、エア吸着治具との接触面積が小さく吸着力が不十分で、移動の際に落下する問題がある。また、表面電極104と溶融はんだめっき層113との接触面積が小さくなる。表面電極104と溶融はんだめっき層113との接触面積が小さいと、半導体基板102から溶融はんだめっき層113への熱伝導が不十分になり、はんだ付け不良が生じる。一般にはんだ付けではリード線端部(エッジ部)に形成されるはんだフィレットが接合信頼性に影響を及ぼすが、リード線の幅方向に山形を形成している従来技術によるリード線でははんだフィレット形成が不十分と成り得る。逆にフィレットを十分に形成させようとするとより接合時間を要することになる。さらにフィレット形成分だけ、接合面積は増加することになるため、半導体基板102の太陽光受光面積の減少に繋がり、発電効率が低下する懸念がある。
【0010】
また、表面電極104と溶融はんだめっき層113との接触面積が小さいことは、半導体基板102の表裏両面に太陽電池用リード線103a、103bを接合する場合に、表面電極104にはんだ付けする太陽電池用リード線103aと裏面電極105にはんだ付けする太陽電池用リード線103bとの間に位置ズレを生じさせ、その位置ズレが原因でセル割れ(半導体基板102が割れること)が発生する。半導体基板102は高価であるので、セル割れは好ましくない。
【0011】
表面電極104と太陽電池用リード線103とのはんだ付け性を向上させるために、帯板状導電材112に凹部を形成し、これを溶融めっきすることで凹部にはんだを充填させ、リード線幅方向にめっきの山形が形成されるのを防止し、太陽電池組み立て時の配線歩留を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また帯板状導電材112の太陽電池接合面を粗くし、高い接着力を得ようとした方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
図10に示されるように、特許文献1の太陽電池用リード線30は、帯板状導電材31に、ロールなどにより凹部を形成した後、溶融めっきを実施することにより成る。このような太陽電池用リード線30を半導体基板102の表面電極104又は裏面電極105に対して溶融はんだめっき層32をはんだ付けすると、リード線の位置ズレもなく高歩留での配線が可能となる。また、図11に示されるように特許文献2の太陽電池用リード線50では、帯板状導電材51の太陽電池接合面は研磨もしくはエッチングにより粗面が形成される。これにより実質的な接合面積は広くなるため、太陽電池用リード線50が半導体基板102に強固に接合されることになり、耐久性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開WO2004/105141号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2006/128203号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述のように、特許文献1の太陽電池用リード線30によれば、導電材断面に凹加工がされているため、幅方向側部から中央部にかけての溶融はんだめっき層32も平坦なため、電極に対する位置ズレも生じにくく、位置ズレによるセル割れは起こりにくい。しかし、導電材幅方向の中央部にはんだがより多く留まるため、導電材端部のはんだフィレット形成は小さく、接合信頼性上はリード線剥がれによる、モジュール出力が低下する問題が完全に解決されたわけではない。また、特許文献2の太陽電池用リード線50によれば帯板状導電材51に粗面加工がされているため、帯板状導電材51と、帯板状導電材51−太陽電池表面電極104、105間に存在するはんだなどのろう材との接合性の向上は期待できるが、フィレット形成に伴う太陽光受光面積の減少の問題は解決されていない。
【0015】
太陽電池のコストの大半を半導体基板102が占めるため、半導体基板102の薄型化が検討されているが、薄型化された半導体基板102は電極への太陽電池用リード線の接合時に反りやすく、割れやすい。例えば、半導体基板102の厚みが200μm以下になると反りによるセル割れや平角線の剥離が生じる割合が大きくなる。太陽電池用リード線が原因で半導体基板102にセル割れや平角線の剥離によるモジュール出力の低下が発生するようでは、半導体基板102の薄型化は望めない。
【0016】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、セル割れ抑制効果及び接合信頼性が高くかつセルの太陽光受光面積の減少を最小限に抑え、短時間で配線可能な太陽電池用リード線及びその製造方法並びにそれを用いた太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、帯板状導電材の表面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層を形成した太陽電池用リード線において、横断面形状で隅部分が面取りされた帯板状導電材を形成し、該帯板状導電材の上下面に溶融はんだを供給すると共にその上下の溶融はんだめっき層を平坦に形成した太陽電池用リード線である。
【0018】
請求項2の発明は、めっき温度を使用はんだの液相線温度+120℃以下にし、前記溶融はんだめっき層表面の酸化膜の厚さを7nm以下にした請求項1に記載の太陽電池用リード線である。
【0019】
請求項3の発明は、前記帯板状導電材は、体積抵抗率が50μΩ・mm以下の平角線である請求項1又は2に記載の太陽電池用リード線である。
【0020】
請求項4の発明は、引張試験における0.2%耐力値が90MPa以下である請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用リード線である。
【0021】
請求項5の発明は、前記帯板状導電材は、Cu、Al、Ag、Auのいずれかからなる請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用リード線である。
【0022】
請求項6の発明は、前記帯板状導電材は、タフピッチCu、低酸素Cu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、純度99.9999%以上の高純度Cuのいずれかからなる請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用リード線である。
【0023】
請求項7の発明は、前記溶融はんだめっき層は、Sn系はんだ、又は、第1成分としてSnを用い、第2成分としてPb、In、Bi、Sb、Ag、Zn、Ni、Cuから選択される少なくとも1つの元素を0.1mass%以上含むSn系はんだ合金からなる請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用リード線である。
【0024】
請求項8の発明は、素線を圧延もしくはダイス引き加工することにより横断面の隅が面取りされた形状の帯板状導電材を形成し、該帯板状導電材を連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備で熱処理し、その後、溶融はんだを供給して前記帯板状導電材に、はんだめっきすると共に、そのめっきした帯板状導電材をはんだ溶融状態において、平ロールで挟むことにより、溶融はんだめっき層に平坦部を形成する太陽電池用リード線の製造方法である。
【0025】
請求項9の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用リード線を、その溶融はんだめっき層のはんだによって半導体基板の表面電極及び裏面電極にはんだ付けした太陽電池である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、セル割れ抑制効果および接合信頼性が高くかつセルの太陽光受光面積の減少を最小限に抑え、短時間で配線可能な太陽電池用リード線を得ることができるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示す太陽電池用リード線の図であり、(a)は上面図、(b)はA−A線断面図である。
【図2】本発明において、帯板状導電材の製造に用いる圧延ロールの概略図である。
【図3】図1の太陽電池用リード線の材料となる帯板状導電材の図であり、(a)は上面図、(b)はB−B線断面図である。
【図4】本発明において、溶融はんだめっき層を形成する溶融めっき設備の概略図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す太陽電池用リード線の図であり、(a)は上面図、(b)はC−C線断面図である。
【図6】図5の太陽電池用リード線の材料となる帯板状導電材の図であり、(a)は上面図、(b)はD−D線断面図である。
【図7】本発明の太陽電池を示し、(a)は太陽電池の上面図、(b)は横断面図である。
【図8】従来の太陽電池を示し、(a)は太陽電池の上面図、(b)は横断面図である。
【図9】従来の太陽電池用リード線を示す図であり、(a)は上面図、(b)はE−E線断面図である。
【図10】従来の太陽電池用リード線の横断面図である。
【図11】従来の太陽電池用リード線の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0029】
図1(a)、図1(b)に示されるように、本発明に係る太陽電池用リード線10は、あらかじめ、素線を圧延もしくはダイス引き加工して、横断面形状で四隅部分が面取りされた帯板状導電材12を形成し、その帯板状導電材12の上下面に溶融はんだを供給し、はんだ浴出口でめっきした帯板状導電材12をはんだが溶融した状態で、平ロールではさみ、めっき厚を調整しつつ、上下の溶融はんだめっき層13a、13bに平面部を形成したものである。
【0030】
帯板状導電材12は、素線(断面円形状の線材)を例えば圧延加工することにより形成されるが、この時、導体横断面の四隅部が面取りされた形状を得るために、圧延ロールには例えば図2の形状の圧延ロール14が使用される。その後、形成(圧延)された導体を連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備で熱処理して形成される。
【0031】
図3(a)、図3(b)は、帯板状導電材12を示したもので、上面12aと下面12bとが平坦面にされ、側面12c、12dは斜面を形成し、横断面では丁度四隅部分が面取りされた形状となる。端面12eが適時の長さにカットされて形成される。
【0032】
図4は、溶融はんだめっき層13a、13bに平坦部を形成するための溶融めっき設備を示し、はんだ浴15内に帯板状導電材12を反転させて上方に向く反転ローラ16が設けられ、そのローラ16の上方に位置したはんだ浴15の上方に、上下一対のロール17a、17b、18a、18bを設け、その上方に引き上げローラ19を設けて構成される。全てのローラは平坦な表面形状を有している。
【0033】
横断面四隅部分が面取り形状とされた帯板状導電材12は、はんだ浴15に浸漬されることで上下面12a、12bにはんだが供給され、反転ローラ16で反転されて上方に向い、下部ロール17a、17bで、めっき層が挟まれて平坦部が形成される。上部ロール18a、18bで心材(Cu)の位置を調整することによって、図1(a)、図1(b)に示すように溶融はんだめっき層13a、13bに平坦部を形成し、且つ帯板状導電材の横断面四隅部分には平坦部よりはんだめっき量の多い太陽電池用リード線10が製造される。
【0034】
帯板状導電材12に平坦部を有する溶融はんだめっき層13a、13bを形成する為の上下のロール17a、17b、18a、18bは、めっき浴15の出口で帯板状導電材12の上下面を挟むように配置され、その上下のロール17a、17b、18a、18bの間隔を微調整することで、溶融はんだめっき層13a、13bのめっき厚およびその溶融はんだめっき層13a、13bの横断面形状を調整することができる。
【0035】
図5は、本発明に係る太陽電池用リード線の他の形状を示したものである。
【0036】
図5の太陽電池用リード線20は、素線の圧延加工の際、図6に示すように、横断面四隅部分にR形状がつくようなロールを用いて加工して帯板状導電材21を形成したのち、溶融はんだめっきを行って溶融めっきはんだ層22a、22bを形成したものである。
【0037】
これらの形状は、素線の圧延加工の際、圧延ロールの形状を変えることと溶融はんだめっきの量と上下のロール17a、17b、18a、18bの間隔とその位置を調整することで形成できる。
【0038】
すなわち、図4の溶融めっき設備で、帯板状導電材12(又は21)の上下面に溶融はんだめっき層13a、13b(又は22a、22b)が形成される際、帯板状導電材12(又は21)の上下に走行する経路は、反転ローラ16と引き上げローラ19とで決定され、その経路に対して上下の各ロール17a、17b、18a、18bの位置と間隔を微調整することで、上部溶融はんだめっき層13a(又は22a)の層厚と下部溶融はんだめっき層13b(又は22b)の層厚が調整できると共に全体の層厚が調整でき、また平坦部の層厚および横断面四隅部分の層厚は、下部のロール17a、17bの間隔で決定され、上部のロール18a、18bの間隔で心材である帯板状導電材12(又は21)の位置が決定される。
【0039】
はんだめっき炉に対するロールの高さは、はんだめっきが完全に凝固しない位置に固定しているので溶融状態ではんだめっきに平坦部を形成するため、心材である帯板状導電材12(又は21)は加工硬化せず、その0.2%耐力を低く維持できる。
【0040】
このように本発明に係る太陽電池用リード線10、20は、半導体基板の表面電極及び裏面電極への設置が容易となるよう、及び充分な接合性が確保されるように導体横断面四隅部分を面取り形状とし、当該部分の溶融はんだめっき量を積極的に確保したものである。さらに、はんだ溶融状態でめっき層13a、13b、22a、22bに平坦部を形成するため心材が加工硬化せず、低い0.2%耐力を維持でき、セルへの接続時にセル反りが生じにくい。セル反りが生じにくいため、セルが反った際のリード線の剥離が生じにくい。また、導体横断面四隅部分に溶融はんだが十分に存在するため、迅速なフィレット形成が可能となり、表面電極及び裏面電極に対して強固でかつ接合後の導体幅方向のはんだ広がりを抑えた接合(導体面取り部にフィレットを形成)を可能にする。
【0041】
また、溶融はんだめっき層13a、13b、22a、22bが平坦なためエア吸着治具との密着性が高く移動時の落下が起こりにくい。さらに、溶融はんだめっき層13a、13b、22a、22bが平坦なことでボビンに巻き取る際に安定した積層状態が得られ易く、巻き崩れが起こりにくい。よって、巻き崩れにより太陽電池用リード線が絡まって引き出されなくなる問題も解消される。
【0042】
帯板状導電材12、21には、例えば、体積抵抗率が50μΩ・mm以下の素線(断面円形状の線材)を用いる。この素線を圧延もしくはダイス引き加工することによって図3(b)、図6(b)のような横断面形状の帯板状導電材12、21を得ることができる。
【0043】
帯板状導電材12、21は、Cu、Al、Ag、Auのいずれか、あるいは、タフピッチCu、低酸素Cu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、純度99.9999%以上の高純度Cuのいずれかからなる。
【0044】
溶融はんだめっき層13a、13b、22a、22bとしては、Sn系はんだ(Sn系はんだ合金)を用いる。Sn系はんだは、成分重量が最も重い第1成分としてSnを用い、第2成分としてPb、In、Bi、Sb、Ag、Zn、Ni、Cuから選択される少なくとも1つの元素を0.1mass%以上含むものである。
【0045】
次に、本発明の作用を説明する。
【0046】
図1(a)、図1(b)に示した太陽電池用リード線10を、図7に示す半導体基板42の表面電極44及び裏面電極45に接合するに際し、太陽電池用リード線10や半導体基板42の加熱温度は、溶融はんだめっき層13a、13bのはんだの融点付近に制御される。その理由は、太陽電池用リード線10の帯板状導電材12(例えば、Cu)の熱膨張率と半導体基板(Si)の熱膨張率が大きく相違するためである。熱膨張率の相違によって半導体基板42に反り及びクラックを発生させる原因となる熱応力が生じる。この熱応力を小さくするには、リード線の0.2%耐力を小さくすればよい。これにより、接合の際に加熱されたリード線が冷却する際に、セルに生じる圧縮応力を下げられるためセルの反りが低減され、セル反りによって発生するリード線の剥離を防ぐことができる。よって、リード線の0.2%耐力は90MPa以下であることが望ましい。また、接合時の熱膨張歪みを小さくするため、接合温度は可能な限り低温で行うのがよい。よって、太陽電池用リード線10や半導体基板42の加熱温度は、溶融はんだめっき層13a、13bのはんだの融点付近の温度に制御される。
【0047】
上記接合時の加熱方法は、例えば、半導体基板42をホットプレート上に設置し、このホットプレートからの加熱と半導体基板42に設置された太陽電池用リード線10の上方からの加熱とを併用するものである。
【0048】
半導体基板42の表面電極44及び裏面電極45と太陽電池用リード線10との接合強度を上げるためには太陽電池用リード線10の横断面四隅部分を面取り形状とし、これにはんだめっきを施し、半導体基板42の表面電極44及び裏面電極45との接合時に、導体面取り部分に積極的にフィレット13cが形成できるようにするのが良い。そして、セル反りによるリード線の剥離を防ぐためには、太陽電池用リード線10の0.2%耐力が90MPa以下でなければならない。
【0049】
しかし、図10に示した従来の太陽電池用リード線30は、リード線横断面中央部にはんだが留まっているため、リード線端部のフィレット形成は充分ではなく、半導体基板42の表面電極44及び裏面電極45と太陽電池用リード線30との接合強度は十分に確保されているとは言い難いため、太陽電池用リード線30と半導体基板42との間で剥離が生じ、十分な導通が得られなくなり、モジュール出力が低下してしまう。一方、本発明の太陽電池用リード線10は半導体基板42の表面電極44及び裏面電極45と太陽電池用リード線10との接合強度を十分確保するため、リード線端部のはんだフィレット形成が迅速且つ十分に出来るようにリード線横断面四隅部分に面取りを施した形状となっている。
【0050】
本発明は、溶融めっきを高速で行う際に生ずるめっき層の偏肉化をロール17、18で溶融はんだを絞り落とすことによって抑制できるため、所定のめっき厚形成を従来よりも高速で行うことができ、量産性にも優れている。また、本方式でめっきを行うことによって導体四隅部分のめっき厚が厚く出来る。その結果、本発明は、セルの太陽光受光面積の減少を最小限に抑え、短時間で配線可能でセル割れ抑制および接続信頼性に最も効果を有する太陽電池用リード線10を提供することができる。ここでは、太陽電池用リード線10の効果について述べたが、太陽電池用リード線20も同様の効果を得られる。
【0051】
次に、本発明に用いる帯板状導電材12、21の材料の物性を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
帯板状導電材12、21は、体積抵抗率が比較的小さい材料であることが好ましい。表1のように、帯板状導電材12、21にはCu、Al、Ag、Auなどが用いられる。
【0054】
Cu、Al、Ag、Auのうち体積抵抗率が最も低いのはAgである。従って、帯板状導電材12、21としてAgを用いると、太陽電池用リード線10、20を用いた太陽電池の発電効率を最大限にすることができる。帯板状導電材12、21としてCuを用いると、太陽電池用リード線10、20を低コストにすることができる。帯板状導電材12、21としてAlを用いると、太陽電池用リード線10、20の軽量化を図ることができる。
【0055】
帯板状導電材12、21としてCuを用いる場合、そのCuには、タフピッチCu、低酸素Cu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、純度99.9999%以上の高純度Cuのいずれを用いてもよい。帯板状導電材12、21の0.2%耐力を最も小さくするためには、純度が高いCuを用いるのが有利である。よって、純度99.9999%以上の高純度Cuを用いると、帯板状導電材12、21の0.2%耐力を小さくすることができる。タフピッチCu又はリン脱酸Cuを用いると、太陽電池用リード線10、20を低コストにすることができる。
【0056】
溶融はんだめっき層13a、13bに用いるはんだとしては、Sn系はんだ、又は、第1成分としてSnを用い、第2成分としてPb、In、Bi、Sb、Ag、Zn、Ni、Cuから選択される少なくとも1つの元素を0.1mass%以上含むSn系はんだ合金が挙げられる。これらのはんだは、第3成分として1000ppm以下の微量元素を含んでいてもよい。
【0057】
次に、本発明の太陽電池用リード線10の製造方法を説明する。
【0058】
まず、原料の断面円形状の線材(図示せず)を図2に示す様な圧延ロール14を使用して圧延加工することにより、横断面四隅部分が面取り形状を持つ帯板状導電材12を形成する。この帯板状導電材12を連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備で熱処理する。その後、図4のような溶融めっき設備を用いて溶融はんだを供給して、溶融はんだめっき層13a、13bに平坦部を形成する。
【0059】
原料を帯板状導電材12に加工する加工方法としては、圧延加工、ダイス引き加工のいずれも適用可能である。圧延加工とは、丸線を圧延して所定の断面形状を得る方式である。圧延加工により帯板状導電材を形成すると、長尺で長手方向に断面形状が均一なものが形成できる。ダイス引き加工は丸線を所望断面形状のダイスに通す加工法であり、本加工法も長尺で長手方向に断面形状が均一なものが形成できる。いずれの加工法でも、帯板状導電材12の横断面四隅部分が面取り形状となるような圧延ロール、ダイスなどを用いて整形する。
【0060】
帯板状導電材12を熱処理することにより、帯板状導電材12の軟化特性を向上させることができる。帯板状導電材12の軟化特性を向上させることは、0.2%耐力を低減させるのに有効である。熱処理方法としては、連続通電加熱、連続式加熱、バッチ式加熱がある。連続して長尺にわたって熱処理するには、連続通電加熱、連続式加熱が好ましい。安定した熱処理が必要な場合には、バッチ式加熱が好ましい。酸化を防止する観点から、窒素などの不活性ガス雰囲気あるいは水素還元雰囲気の炉を用いるのが好ましい。
【0061】
不活性ガス雰囲気あるいは水素還元雰囲気の炉は、連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備により提供される。
【0062】
ここでは、太陽電池用リード線10の製造方法について述べたが、太陽電池用リード線20も横断面四隅部分がR形状となる圧延ロール、ダイスを用いる以外は同様の製造方法により得られる。
【0063】
次に、本発明の太陽電池について詳しく説明する。
【0064】
図7(a)及び図7(b)に示されるように、本発明の太陽電池40は、これまで説明した太陽電池用リード線10を溶融はんだめっき層13a、13bのはんだによって半導体基板42の表面電極44及び裏面電極45に接合したものである。ただし、はんだ接合の場合には、はんだめっき表面の酸化膜厚を7nm以下とすることが望ましい。一般に、酸化膜の厚さが7nmを超えると、セル上の電極44、45に太陽電池用リード線をはんだ接合する際、酸化膜の除去が難しくなり、電極44、45に対する太陽電池用リード線のはんだ付けが不十分になる。酸化膜の厚さは例えばオージェ分析によって得られるデプスプロファイルにおいて、スパッタレートをSiO2換算とし、酸素ピーク値が半減する時間で定義することができる。はんだめっき表面の酸化膜厚を7nm以下とする方法としては、めっき温度を使用はんだの液相線温度+120℃以下に設定して溶融めっきを行う方法がある。
【0065】
太陽電池用リード線10と表面電極44との接合面となる溶融はんだめっき層13a、13bに平坦部が形成されているため、半導体基板42の電極44、45上において太陽電池用リード線10の位置が安定し、位置ズレが防止されている。また、太陽電池用リード線10の端部には帯板状導電材12の横断面四隅部分が面取り形状となっているため、はんだが十分にあり、十分なフィレット13cをリード幅に対して大きく広がることなく形成することができ、接合強度の確保とリード線接合面積増大の抑制には有利である。これに加え、太陽電池用リード線10の0.2%耐力を小さくしているため、接合時に半導体基板42が反りにくく、反りによるリード線の剥離も起こりにくい。
【0066】
本発明の太陽電池40によれば、太陽電池用リード線10と半導体基板42との接合強度確保と接合面積の増大抑制が可能となり、かつ、接合時のセル割れを抑制することができるので、太陽電池の出力の向上(変換効率向上)および歩留ならびに接合信頼性の向上を図ることができる。ここでは、太陽電池用リード線10を用いた太陽電池40について述べたが、太陽電池用リード線20を用いた太陽電池でも同様の効果が得られる。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
原料導電材であるCu材料を圧延加工して幅1.0mm、厚さ0.2mm、横断面四隅各部の面取り幅0.1mmの平角線状の帯板状導電材12を形成した。この帯板状導電材12を連続式加熱炉で熱処理し、さらに、この帯板状導電材12の周囲に図4に示す溶融めっき設備でSn−3%Ag−0.5%Cuはんだめっきを施して帯板状導電材12の上下面に平坦部を有する溶融はんだめっき層13a、13bを形成した(導体は熱処理Cu)。以上により、図1(a)、図1(b)の太陽電池用リード線10を得た。引張速度100mm/minの引張試験で得られたS−S曲線から0.2%耐力点荷重を求め、心材(Cu)の断面積で除して0.2%耐力を求めると60MPaであった。
【0068】
(実施例2、比較例1、2、3)
実施例2は実施例1の太陽電池用リード線10の横断面四隅部分がR面取り形状の帯板状導電材21、比較例1は横断面中央部分は凹形状となるロールを用いて圧延したもの、比較例2は帯板状導電材をそのままの断面形状のもの、そして比較例3は帯板状導電材の上下面に研磨により粗面加工したものを連続式加熱炉で熱処理し(実施例2と比較例1、2、3は実施例1と同じ温度で熱処理)、さらに、この帯板状導電材の周囲に図4に示す溶融めっき設備でSn−3%Ag−0.5%Cuはんだめっきを実施例2と比較例1、3は実施例1と同じ平坦加工ロールを使用し、比較例2はロールをまったく使用せずにはんだめっきを施し、帯板状導電材の上下面に、溶融はんだめっき層(実施例1、2の四隅部分および比較例1の凹部、比較例2中央部、比較例3の端部及び中央部のめっき厚40μm)を形成した(導体は熱処理Cu)。以上により、実施例1は図1、実施例2は図5、比較例1は図10、比較例2は図9、比較例3は図11に示した太陽電池用リード線を得た。0.2%耐力は、何れも60MPaであった。
【0069】
これら実施例1、2及び比較例1、2、3の太陽電池用リード線にロジン系フラックスを適量塗布し、それぞれの太陽電池用リード線を縦150mm×横150mm×厚さ180μmの半導体基板(Siセル)の上面の電極部位に設置して、10gの錘を載せた状態でホットプレート加熱(260℃で30秒間保持)し、はんだ付けした。これらの接合の際に生じるセル反りの影響で発生するリード線の剥離状況、リード線搬送状況及びはんだの濡れ広がり状況を調べた。
【0070】
実施例1、2及び比較例1、2、3の評価結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2の「導電材横断面形状」の欄は、帯板状導電材のはんだめっき前の横断面形状を示す。「断面形状」の欄は、どの図に示した断面形状であったかを示す。「はんだ濡れ広がり性」の欄は、はんだ付け完了時のリード線幅に対するはんだの広がり幅の比率を示しており1.1未満を○、1.1以上を×として示した。「導電材搬送性」の欄は、リード線を定尺に切断後、一定数のリード線を真空ピンセットで吸着し、一定距離を搬送した際の成功率(落下せずに搬送)を実施例1を100とした場合の割合を示し、95%以上を○、95%未満を×として示した。「接合強度」の欄は、リード線とセルを接合後、ピール試験を実施し、実施例1の強度を100とした場合、90%以上を〇、90%未満を×とした。「量産コスト」の欄は、従来の溶融めっきにかかるコストを1.0とし、製造コストが1.2未満の場合を〇、1.5を超える場合を×とした。
【0073】
表2に示されるように、実施例1、2の太陽電池用リード線10、20は、0.2%耐力が低く、セル反りが少ないことが確認された。また、導電材横断面で四隅が面取り形状となっているため、半導体基板(Siセル)の上面の電極部位との接合状態も良好でありかつはんだの濡れ広がりも抑えられていることが確認できた。導電材の製造においても圧延時のロール形状を変更するだけで良いため、量産コストが従来のはんだめっき線とほぼ同等であり、工業的に優れた方法である。
【0074】
これに対し、実施例1、2と同様のめっきプロセスであっても、導電材横断面形状の異なる比較例1では、導電材搬送性は良好であっても、接合強度が劣る結果となった。比較例2では、断面形状が中央部が凸形状であるため、導電材搬送性、接合強度が実施例1と比較し劣る。また、はんだの濡れ広がりも他の例と比較し大きい。比較例3では接合強度は十分確保できたが、はんだの濡れ広がりが大きくなってしまった。
【0075】
以上のように、実施例1、2及び比較例1、2、3の評価結果から、本発明の太陽電池用リード線10、20はセルとの接合占有面積を抑えつつ接合信頼性が大きく向上することが確認された。なお、実施例では導電材の横断面において4隅を面取りした形状を用いているが、これに限定されるものではなく、いわゆるバックコンタクトタイプの太陽電池セルに用いられる裏面配線に適用する場合には、導電材の横断面の4隅のうち、太陽電池セルの電極から離れて位置する2つの隅部を面取りすることなく、太陽電池セルの電極に対向する2つの隅部を長手方向に面取りすることで十分に本発明の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0076】
10、20 太陽電池用リード線
12、21 帯板状導電材
13a、13b、22a、22b 溶融はんだめっき層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯板状導電材の表面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層を形成した太陽電池用リード線において、横断面形状で隅部分が面取りされた帯板状導電材を形成し、該帯板状導電材の上下面に溶融はんだを供給すると共にその上下の溶融はんだめっき層を平坦に形成したことを特徴とする太陽電池用リード線。
【請求項2】
めっき温度を使用はんだの液相線温度+120℃以下にし、前記溶融はんだめっき層表面の酸化膜の厚さを7nm以下にした請求項1に記載の太陽電池用リード線。
【請求項3】
前記帯板状導電材は、体積抵抗率が50μΩ・mm以下の平角線である請求項1又は2に記載の太陽電池用リード線。
【請求項4】
引張試験における0.2%耐力値が90MPa以下である請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用リード線。
【請求項5】
前記帯板状導電材は、Cu、Al、Ag、Auのいずれかからなる請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用リード線。
【請求項6】
前記帯板状導電材は、タフピッチCu、低酸素Cu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、純度99.9999%以上の高純度Cuのいずれかからなる請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用リード線。
【請求項7】
前記溶融はんだめっき層は、Sn系はんだ、又は、第1成分としてSnを用い、第2成分としてPb、In、Bi、Sb、Ag、Zn、Ni、Cuから選択される少なくとも1つの元素を0.1mass%以上含むSn系はんだ合金からなる請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用リード線。
【請求項8】
素線を圧延もしくはダイス引き加工することにより横断面の隅が面取りされた形状の帯板状導電材を形成し、該帯板状導電材を連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備で熱処理し、その後、溶融はんだを供給して前記帯板状導電材に、はんだめっきすると共に、そのめっきした帯板状導電材をはんだ溶融状態において、平ロールで挟むことにより、溶融はんだめっき層に平坦部を形成することを特徴とする太陽電池用リード線の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用リード線を、その溶融はんだめっき層のはんだによって半導体基板の表面電極及び裏面電極にはんだ付けしたことを特徴とする太陽電池。
【請求項1】
帯板状導電材の表面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層を形成した太陽電池用リード線において、横断面形状で隅部分が面取りされた帯板状導電材を形成し、該帯板状導電材の上下面に溶融はんだを供給すると共にその上下の溶融はんだめっき層を平坦に形成したことを特徴とする太陽電池用リード線。
【請求項2】
めっき温度を使用はんだの液相線温度+120℃以下にし、前記溶融はんだめっき層表面の酸化膜の厚さを7nm以下にした請求項1に記載の太陽電池用リード線。
【請求項3】
前記帯板状導電材は、体積抵抗率が50μΩ・mm以下の平角線である請求項1又は2に記載の太陽電池用リード線。
【請求項4】
引張試験における0.2%耐力値が90MPa以下である請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用リード線。
【請求項5】
前記帯板状導電材は、Cu、Al、Ag、Auのいずれかからなる請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用リード線。
【請求項6】
前記帯板状導電材は、タフピッチCu、低酸素Cu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、純度99.9999%以上の高純度Cuのいずれかからなる請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用リード線。
【請求項7】
前記溶融はんだめっき層は、Sn系はんだ、又は、第1成分としてSnを用い、第2成分としてPb、In、Bi、Sb、Ag、Zn、Ni、Cuから選択される少なくとも1つの元素を0.1mass%以上含むSn系はんだ合金からなる請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用リード線。
【請求項8】
素線を圧延もしくはダイス引き加工することにより横断面の隅が面取りされた形状の帯板状導電材を形成し、該帯板状導電材を連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備で熱処理し、その後、溶融はんだを供給して前記帯板状導電材に、はんだめっきすると共に、そのめっきした帯板状導電材をはんだ溶融状態において、平ロールで挟むことにより、溶融はんだめっき層に平坦部を形成することを特徴とする太陽電池用リード線の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用リード線を、その溶融はんだめっき層のはんだによって半導体基板の表面電極及び裏面電極にはんだ付けしたことを特徴とする太陽電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−283138(P2010−283138A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135131(P2009−135131)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】
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