説明

太陽電池用保護シート及びそれを用いた太陽電池

【課題】高ガスバリア性能、高紫外線カット性を有し、発電効率の低下が少なく、製造時の安定性に優れた、太陽電池用保護シートを提供することにある。
【解決手段】樹脂基材の一方の面上に、ガスバリア層を有し、該樹脂基材の他方の面上に、フッ素含有ポリマーおよび紫外線吸収能をもつ平均粒径0.01μm以上0.1μm以下の金属酸化物粒子を含有する紫外線吸収層を有することを特徴とする太陽電池用保護シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池用保護シート及びそれを用いた太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池用保護材料として、広くガラス板が使われているが、軽量化、曲面上への設置、丸めて移動が可能、ロールツーロールでの生産が可能であり大量生産が可能といった観点から、ガラス板に替わる材料としては、プラスチックフィルム、シート等の高分子材料が挙げられる。しかしながら、高分子材料はガラス等の無機材料と比較して、ガスバリア性が低いことや太陽光に直接さらされるなどといった環境では、耐候性に劣るといった欠点があった。
【0003】
太陽光による劣化は、紫外線によるプラスチック基材の劣化、太陽電池材料の劣化が主な原因であり、これらの劣化を防ぐ方法として、紫外線吸収剤を用いる方法が広く知られている。紫外線吸収剤を用いる場合、長期間の紫外線に対する耐候性を持たせるために、無機紫外線吸収剤と有機紫外線吸収剤を有する層を相互に積層した例(例えば、特許文献1参照。)や、耐候性に優れたフッ素樹脂フィルムと透明基材間の接着剤層に紫外線吸収剤層を設けるような工夫(例えば、特許文献2参照。)を行っているが、長期の使用による紫外線吸収能の低下、基材の劣化は否めなかった。
【0004】
また、ガスバリア性フィルムについては、プラスチックフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物の薄膜を形成して、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(EL)の各種デバイスの基板等で使用されている。この様なガスバリア性フィルムを形成する方法として、プラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、化学蒸着法)によりガスバリア層を形成する技術やポリシラザンを主成分とする塗布液を塗布し、表面処理をする技術等が知られている(例えば、特許文献3〜5参照。)。
【0005】
ガスバリア性を付与した保護シートにフッ素系樹脂層を設置した例として、太陽電池用バックシートが知られている(例えば、特許文献6参照。)が、太陽電池の裏面に存在し、かつ顔料等を含有した不透明シートである点で、直接太陽光にさらされる、太陽電池用表面保護シートとは異なっていた。
【0006】
これらのガスバリア性の付与や、紫外線吸収能を太陽電池用保護シートに付与した場合の課題は、発電効率の低下があった。特に、発電効率が低下することなく、プラスチック基材の耐候性を改善した太陽電池用保護シートが望まれていた。
【0007】
また、薄膜の金属酸化物からなるガスバリア層は、傷がつくと傷を起点にガスが浸透するためか、ガスバリア層設置後のガスバリアフィルムの保存安定性が悪くロール等で圧力がかかった状態で保存されるとガスバリア性が劣化するという問題がありその改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−326971号公報
【特許文献2】特開2009−137012号公報
【特許文献3】特開2004−66730号公報
【特許文献4】特開2007−237588号公報
【特許文献5】特表2009−503157号公報
【特許文献6】特開2010−45376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高ガスバリア性能、高紫外線カット性を有し、発電効率の低下が少なく、製造時の安定性に優れた、太陽電池用保護シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0011】
1.樹脂基材の一方の面上に、ガスバリア層を有し、該樹脂基材の他方の面上に、フッ素含有ポリマーおよび紫外線吸収能をもつ平均粒径0.01μm以上0.1μm以下の金属酸化物粒子を含有する紫外線吸収層を有することを特徴とする太陽電池用保護シート。
【0012】
2.前記樹脂基材上に形成された前記紫外線吸収層上に、更にフッ素含有ポリマーを含有する保護層を有することを特徴とする前記1に記載の太陽電池用保護シート。
【0013】
3.前記保護層の屈折率が1.2〜1.4であることを特徴とする前記1又は2に記載の太陽電池用保護シート。
【0014】
4.前記紫外線吸収層の屈折率が1.5〜2.0であることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【0015】
5.前記1〜4の何れか1項に記載の太陽電池用保護シートを基材とし、該基材上に太陽電池素子を積層したことを特徴とする太陽電池。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高ガスバリア性能、高紫外線カット性を有し、発電効率の低下が少なく、製造時の安定性に優れた、太陽電池用保護シートを提供することができた。また、それを用いた太陽電池を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に好ましく用いられるタンデム型太陽電池素子の断面構造を示す模式図である。
【図2】本発明で使用できるプラズマCVD装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
〈紫外線吸収層〉
本発明における紫外線吸収層は、フッ素含有ポリマー及び紫外線吸収能を有する金属酸化物粒子を含有することを特徴とする。
【0020】
〈紫外線吸収能を有する金属酸化物粒子〉
本発明において紫外線吸収能とは、波長340nm〜390nmのいずれか一部の帯域の光を吸収する作用を持つことを指す。紫外線の吸収が340nmよりも短波長側にある場合、基材樹脂フィルムの劣化を抑えることができなくなり、また、390nmを超える場合、可視光を吸収して着色が生じるため好ましくない。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0021】
本発明に用いられる紫外線吸収能を有する金属酸化物粒子としては、3.1eV付近にバンドギャップを持つ半導体の性質を有する金属酸化物が適しており、このような金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、三酸化タングステンチタン、およびチタン酸ストロンチウムなどが該当し、本発明では、これらを単独もしくは混合体で使用することが好ましい。これらの中でも、酸化亜鉛および酸化チタンなどが比較的安価であり好ましく用いられる。特に、酸化亜鉛は、酸化チタンと比べて紫外線の吸収端が380nmと高く、屈折率も小さいことから透明性に優れている。
【0022】
これらの金属酸化物粒子は、触媒活性により分解しない物質で粒子表面を被覆されていることが好ましく、触媒活性により分解しない物質の例として、Al、SiおよびZrなどの酸化物が挙げられる。このような表面の被覆により、金属酸化物粒子の触媒活性を抑制し、紫外線暴露によるチョーキング現象を低減化することができる。本発明における被覆とは、粒子表面の90%以上を触媒活性により分解しない物質で覆っている状態が好ましく、最も好ましくは、触媒活性により分解しない物質で完全に覆われていることである。
【0023】
本発明では、透明樹脂基材上の少なくとも片面に塗布される紫外線吸収層に含まれる金属酸化物粒子の量は、樹脂基材1mあたり5g以上20g以下であることが好ましい。金属酸化物粒子の量は、より好ましくは1mあたり7g以上20g以下であり、さらに好ましくは1mあたり10g以上20g以下である。金属酸化物粒子の量が、フィルム1mあたり5g以上であることにより、優れた紫外線遮蔽効果を示すようになり、一方、20g以下とすることにより、樹脂基材の柔軟性を保持することができ好ましい。
【0024】
また、透明な外観を得るためには、可視光領域の粒子の散乱を小さくすることが必要である。そのためには、可視光の波長より粒径を十分小さくすることが重要であり、本発明では、紫外線吸収能を有する金属酸化物粒子の平均粒径を0.1μm以下にすることが必要である。金属酸化物粒子の平均粒径は、より好ましくは0.05μm以下であり、さらに好ましくは0.03μm以下である。平均粒径を上記のように小さくできれば十分に透明な外観を得ることができ、また、粒径を細かくすることにより紫外線遮蔽効果も増大する。平均粒径の下限は、粒子の表面エネルギーの観点から、0.01μm未満の均一な分散体を得ることは困難となることから、工業的に得られる粒子の平均粒径は0.01μm以上である。平均粒径の測定法としては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物粒子を透過型電子顕微鏡により、観察、撮影された写真画像より算出するもので、顕微鏡の倍率を10000倍に設定して写真撮影を行い、写真画像上よりランダムに100個の金属酸化物粒子を抽出して算出する方法等を用いることができる。具体的には、金属酸化物粒子の電子顕微鏡観察から、円形、楕円形又は実質的に円形若しくは楕円形として観察できる金属酸化物粒子をランダムに100個以上観察し、各金属酸化物粒子の粒径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。ここで、本発明に係る平均粒径とは、円形、楕円形又は実質的に円形若しくは楕円形として観察できる金属酸化物粒子の外縁を2本の平行線で挟んだ距離の内最小の距離を指す。なお、平均粒径を測定する際、明らかに金属酸化物粒子の側面などを表しているものは測定しない。
【0025】
〈フッ素含有ポリマー〉
本発明に用いられる前記金属酸化物粒子(無機紫外線吸収剤とも言う。)のバインダーとしてフッ素含有ポリマーが用いられる。フッ素含有ポリマーとしては、フッ素樹脂および硬化性官能基を有するフッ素系ポリマーやモノマーなどから形成されたものが用いられる。
【0026】
本発明におけるフッ素含有ポリマーを含有する紫外線吸収層は、50%以上がフッ素含有ポリマーで構成されているものが好ましい。特に好ましくは70%以上である。紫外線吸収層の形成方法としては、樹脂基材上に、塗布により形成するものであっても、シート状に形成した後貼り合わせたものであっても良い。
【0027】
フッ素含有ポリマーとしては、特に限定されないが、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体〔ETFE〕、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕よりなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0028】
上記フルオロポリマーは、上記例示した各単量体のみならず、これら該各単量体と共重合可能な共単量体をも含む3元以上の共重合体であってもよい。上記FEPは、例えば、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等をも含み得る概念である。
【0029】
上記フッ素含有ポリマーは、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合等、従来公知の方法で調製することができる。各重合の条件は、調製するフッ素含有ポリマーの組成や量に応じて適宜選択することができる。
【0030】
このようにして作製されたフッ素含有ポリマー中に無機紫外線吸収剤を添加する方法、および基材への接着方法については、特に限定はないが、前記無機紫外線吸収剤を混合、混錬した後、再度延伸してできた、無機紫外線吸収剤を含有するシートを基材に圧着する方法が好ましく用いられる。
【0031】
また、硬化性官能基を有するフッ素含有ポリマーを用いることが好ましく、硬化性官能基を有するフッ素含有ポリマーとしては、たとえば次のものが例示できる。
【0032】
(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー:具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、またはTFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などとの共重合体、さらにはこれらと共重合可能な他の単量体との共重合体などがあげられる。
【0033】
共重合可能な他の単量体としては、たとえば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテンなど非フッ素系オレフィン類;ビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、フルオロビニルエーテルなどのフッ素系単量体などがあげられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0034】
これらのうち、TFEを主体とするTFE系ポリマーが、無機紫外線吸収剤の分散性や耐候性、共重合性、耐薬品性に優れている点で好ましい。
【0035】
具体的な硬化性官能基含有パーフルオロオレフィン系ポリマーとしては、たとえばTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられ、特にTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などが好ましい。
【0036】
TFE系の硬化性ポリマー塗布組成物としては、たとえばダイキン工業(株)製のゼッフルGKシリーズなどが例示できる。
【0037】
(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー:具体例としては、たとえばCTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられる。
【0038】
CTFE系の硬化性ポリマー塗布組成物としては、たとえば旭硝子(株)製のルミフロン、DIC(株)製のフルオネート、セントラル硝子(株)製のセフラルコート、東亞合成(株)製のザフロンなどが例示できる。
【0039】
(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー:具体例としては、たとえばVdF/TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられる。
【0040】
(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー:具体例としては、たとえばCFCF(CFCFCHCHOCOCH=CH(n=3と4の混合物)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルアクリレート共重合体などがあげられる。
【0041】
フルオロアルキル基含有ポリマーとしては、たとえばダイキン工業(株)製のユニダインやエフトーン、デュポン社製のゾニールなどが例示できる。
【0042】
これらのうち、耐候性、防湿性を考慮すると、パーフルオロオレフィン系ポリマーが好ましい。
【0043】
これらの硬化性官能基を有するフッ素含有ポリマーを塗膜形成成分とする塗布組成物は、溶剤型塗布組成物、水性型塗布組成物、粉体型塗布組成物の形態に、常法により調製することができる。なかでも成膜の容易さ、硬化性、乾燥性の良好さなどの点からは溶剤型塗布組成物が好ましい。
【0044】
また、硬化性官能基を有するフッ素含有ポリマー塗布組成物には、上記無機紫外線吸収剤を含有し、更に、要求特性に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤などがあげられる。
【0045】
硬化剤としては、硬化性ポリマーの官能基に応じて選択され、たとえば水酸基含有含フッ素ポリマーに対しては、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物などが好ましく例示できる。また、カルボキシル基含有含フッ素ポリマーに対してはアミノ系硬化剤やエポキシ系硬化剤が、アミノ基含有含フッ素ポリマーに対しカルボニル基含有硬化剤やエポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤を用いることができる。
【0046】
また、本発明に係る紫外線吸収層の厚みは、5〜500μmであることが好ましい。上記厚みが5μm以上とすることにより本発明の効果が得られやすく、500μm以下とすることがコスト的にも好ましい。より好ましくは10μm〜50μmである。
【0047】
本明細書において、紫外線吸収層等の各層の厚みは、例えば、マイクロゲージを用いて測定することができる。
【0048】
また、紫外線吸収層の屈折率は、1.4〜2.5であることが好ましい。特に好ましくは、1.5〜2.0である。屈折率の調整は、無機紫外線吸収剤とフッ素含有ポリマーの混合比で適宜選択することができる。
【0049】
〈フッ素含有ポリマーを含有する保護層〉
また、樹脂基材上に形成された前記紫外線吸収層上に、更に、無機紫外線吸収剤を含有せず、かつフッ素含有ポリマーを含有する保護層を設置することも本発明の好ましい態様である。本発明に好ましく用いられる保護層は、50%以上がフッ素含有ポリマーで構成されているものが好ましい。特に好ましくは70%以上である。フッ素含有ポリマーとしては紫外線吸収層の形成に用いたものと同様のものを用いることができる。保護層の形成方法としては、紫外線吸収層上に、塗布により形成するものであっても、シート状に形成した後貼り合わせたものであっても良い。
【0050】
保護層の好ましい屈折率は、1.2〜1.4である。これら範囲の屈折率において、最良の発電効率の効果がみられた。詳細なメカニズムについては検証を行っていないが、これらの屈折率の範囲において、光取り込み、光閉じ込め効果が発現し効率向上につながっているものと推定している。
【0051】
尚、本発明における屈折率の測定は、例えば、アッベ屈折率計−4T((株)アタゴ製)に多波長光源を用いて行うことができる。
【0052】
〔ガスバリア層〕
本発明においては、本発明に係る樹脂基材の前記紫外線吸収層を有する面と反対側の面上に、ガスバリア層を有している。本発明に係るガスバリア層は、主に水蒸気と酸素に対するガスバリア性の高い層をいう。このガスバリア層は特に高湿度に対する樹脂基材及び当該樹脂基材で保護される各種機能素子の劣化を防止するためのものである。
【0053】
ガスバリア層は、単層でも複数の同様な膜を積層してもよく、複数の層を積層することで、ガスバリア性をより向上させることもできる。
【0054】
本発明に係るガスバリア層に関しては、その形成方法において特に制約は無いが、無機酸化物膜のセラミック前駆体を塗布した後に、塗布膜を加熱及び/または紫外線照射により、無機酸化物膜を形成する方法が好ましく用いられ、当該セラミック前駆体としては、ゾル状の有機金属化合物またはポリシラザンが好ましい。有機金属化合物としては、加水分解が可能なものであればよく、特に限定されるものではないが、好ましい有機金属化合物としては、金属アルコキシドが挙げられる。
【0055】
本発明に係るガスバリア層としては、基材の少なくとも片面に、ポリシラザン含有液の塗布膜に改質処理を施して形成された二酸化珪素等の珪素酸化物または酸化窒化珪素化合物を有するガスバリア層であることが好ましい。
【0056】
珪素酸化物または酸化窒化珪素化合物のガスバリア層を形成するための珪素酸化物または酸化窒化珪素化合物の供給は、CVD法(ChemicalVaporDeposition:化学気相成長法)のようにガスとして供給されるよりも、バリアフィルム基材表面に塗布したほうがより均一で、平滑なガスバリア層を形成することができる。
【0057】
〈ポリシラザン含有液の塗布膜〉
ポリシラザン含有液の塗布膜は、基材上に少なくとも1層のポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布することが好ましい。
【0058】
塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗布厚さは、乾燥後の厚さが好ましくは1nm〜100μm程度、さらに好ましくは10nm〜10μm程度、最も好ましくは10nm〜1μm程度となるように設定され得る。
【0059】
本発明で用いられる「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
【0060】
フィルム基材を損なわないように塗布するためには、特開平8−112879号公報に記載されているように比較的低温でセラミック化してシリカに変性する下記一般式(1)で示される化合物を用いるのがよい。
【0061】
【化1】

【0062】
式中、R、R、及びRのそれぞれは、独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基などを表す。
【0063】
本発明では、得られるガスバリア膜としての緻密性の観点からは、R、R、及びRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
【0064】
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してもよく、混合して使用することもできる。
【0065】
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
【0066】
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記一般式1のポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
【0067】
ポリシラザンを含有する液体を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは好ましくない。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度、等目的にあわせて選択し、複数の溶剤を混合しても良い。
【0068】
ポリシラザン含有塗布液中のポリシラザン濃度は目的とするシリカ膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度である。
【0069】
有機ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。アルキル基、特にもっとも分子量の少ないメチル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。
【0070】
酸化珪素化合物への転化を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカNAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。
【0071】
〈ポリシラザン膜形成工程〉
ポリシラザン含有液の塗布膜は、改質処理前または処理中に水分が除去されていることが好ましい。そのために、ポリシラザン膜中の溶媒を取り除く目的の第一工程と、それに続くポリシラザン膜中の水分を取り除く目的の第二工程に分かれていることが好ましい。
【0072】
第一工程においては、主に溶媒を取り除くための乾燥条件を、熱処理などの方法で適宜決めることができるがこのときに水分が除去される条件にあってもよい。熱処理温度は迅速処理の観点から高い温度が好ましいが、樹脂基材への熱ダメージを考慮し温度と処理時間を決めることができる。たとえば樹脂基材にガラス転位温度(Tg)が70℃のPET基材を用いる場合には熱処理温度は200℃以下を設定することができる。処理時間は溶媒が除去され、かつ基材への熱ダメージがすくなくなるように短時間に設定することが好ましく、熱処理温度が200℃以下であれば30分以内に設定することができる。
【0073】
第二工程は、ポリシラザン膜中の水分を取り除くための工程で、水分を除去する方法としては低湿度環境に維持される形態が好ましい。低湿度環境における湿度は、温度により変化するので温度と湿度の関係は露点温度の規定により好ましい形態が示される。好ましい露点温度は4度以下(温度25度/湿度25%)で、より好ましい露点温度は−8度(温度25度/湿度10%)以下、さらに好ましい露点温度は(温度25度/湿度1%)−31度以下であり、維持される時間はポリシラザン膜の膜厚によって適宜変わる。ポリシラザン膜厚1μ以下の条件においては、好ましい露点温度は−8度以下で、維持される時間は5分以上である。また、水分を取り除きやすくするために減圧乾燥してもよい。減圧乾燥における圧力は常圧〜0.1MPaを選ぶことができる。
【0074】
第一工程の条件に対する第二工程の好ましい条件としては、例えば第一工程で温度60〜150℃、処理時間1分〜30分間で溶媒を除去したときには、第二工程の露点は4度以下で処理時間は5分〜120分により水分を除去する条件を選ぶことができる。第一工程と第二工程の区分は露点の変化で区別することができ、工程環境の露点の差が10℃以上変わることで区分ができる。
【0075】
ポリシラザン膜は第二工程により水分が取り除かれた後も、その状態を維持されて改質処理されることが好ましい。
【0076】
〈ポリシラザン膜の含水量〉
ポリシラザン膜の含水率は以下の分析方法で検出できる。
【0077】
ヘッドスペース−ガスクロマトグラフ/質量分析法
装置:HP6890GC/HP5973MSD
オーブン:40℃(2min)、その後、10℃/minの速度で150℃まで昇温
カラム:DB−624(0.25mmid×30m)
注入口:230℃
検出器:SIMm/z=18
HS条件:190℃・30min
本発明におけるポリシラザン膜中の含水率は、上記の分析方法により得られる含水量からポリシラザン膜の体積で除した値と定義され、第二工程により水分が取り除かれた状態において、好ましくは0.1%以下である。さらに好ましい含水率は0.01%以下(検出限界以下)である。
【0078】
本発明のように改質処理前、または改質中に水分が除去されることでシラノールに転化したポリシラザン膜の脱水反応を促進するために好ましい形態である。
【0079】
(改質処理)
本発明において改質処理とは、セラミック前駆体無機ポリマーであるポリシラザン含有の塗布膜に紫外光などを照射して、二酸化珪素等の珪素酸化物または酸化窒化珪素化合物に転化する処理をいう。
【0080】
本発明における改質処理は、ポリシラザン膜の転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができる。シラザン化合物の置換反応による酸化ケイ素膜または酸化窒化珪素膜の作製には450℃以上の高温が必要であり、プラスチック等のフレキシブル基板においては適応が難しい。本発明においてはプラスチック基板への適応のためにより低温で転化反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。
【0081】
〈プラズマ処理〉
本発明において、改質処理としてのプラズマ処理は、公知の方法を用いることができるが、大気圧プラズマ処理が好ましい。大気圧プラズマ処理の場合は、放電ガスとしては窒素ガス及び/又は周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
【0082】
《異なる周波数の電界を二つ以上形成した大気圧プラズマ》
次に、前記大気圧プラズマについて好ましい形態を説明する。大気圧プラズマは、具体的には、国際公開第2007−026545号に記載される様に、放電空間に異なる周波数の電界を2つ以上形成したもので、第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳した電界を形成することが好ましい。
【0083】
前記第1の高周波電界の周波数ωより前記第2の高周波電界の周波数ωが高く、且つ、前記第1の高周波電界の強さVと、前記第2の高周波電界の強さVと、放電開始電界の強さIVとの関係が、
≧IV>V又はV>IV≧V
を満たし、前記第2の高周波電界の出力密度が、1W/cm以上である。
【0084】
この様な放電条件をとることにより、例えば窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持でき、高性能な薄膜形成を行うことができる。
【0085】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電界強度IV(1/2Vp−p)は3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の印加電界強度を、V≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0086】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることができる。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0087】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0088】
このような2つの電源から高周波電界を形成することは、第1の高周波電界によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の高周波電界の高い周波数及び高い出力密度によりプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成することができる。
【0089】
(紫外線照射処理)
本発明において、改質処理の方法として、紫外線照射による処理も好ましい。紫外線(紫外光と同義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しており、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸化ケイ素膜または酸化窒化珪素膜を作製することが可能である。
【0090】
この紫外線照射により、基材が加熱され、セラミックス化(シリカ転化)に寄与するOとHOや、紫外線吸収剤、ポリシラザン自身が励起、活性化されるため、ポリシラザンが励起し、ポリシラザンのセラミックス化が促進され、また得られるセラミックス膜が一層緻密になる。紫外線照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
【0091】
また、常用されているいずれの紫外線発生装置でも使用することが可能である。
【0092】
なお、本発明において、「紫外線」とは、一般には、10〜400nmの波長を有する電磁波をいうが、後述する真空紫外線(10〜200nm)処理以外の紫外線照射処理の場合は、好ましくは210〜350nmの紫外線を用いる。
【0093】
紫外線の照射は、照射される塗膜を担持している基材がダメージを受けない範囲で照射強度及び/又は照射時間を設定すべきである。
【0094】
基材としてプラスチックフィルムを用いた場合を例にとると、たとえば2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、基材表面の強度が20〜300mW/cm、好ましくは50〜200mW/cmになるように基材−ランプ間距離を設定し、0.1秒〜10分間の照射を行うことができる。
【0095】
一般に、紫外線照射処理時の基材温度が150℃以上になると、プラスチックフィルム等の場合には基材が変形したり、その強度が劣化するなど、基材が損なわれる。しかしながら、ポリイミド等の耐熱性の高いフィルムや、金属等の基板の場合にはより高温での処理が可能である。従って、この紫外線照射時の基材温度に一般的な上限はなく、基材の種類によって当業者が適宜設定することができる。また、紫外線照射雰囲気に特に制限はなく、空気中で実施すればよい。
【0096】
このような紫外線の発生方法としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機(株)製)、紫外光レーザー、等が挙げられるが、特に限定されない。また、発生させた紫外線をポリシラザン塗膜に照射する際には、効率の向上のため均一な照射を達成するためにも、発生源からの紫外線を反射板で反射させてから塗膜に当てることが望ましい。
【0097】
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、被塗布基材の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、ポリシラザン塗膜を表面に有する基材(例、シリコンウェハー)を上記のような紫外線発生源を具備した紫外線焼成炉で処理することができる。紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、アイグラフィクス(株)製を使用することができる。また、ポリシラザン塗膜を表面に有する基材が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することによりセラミックス化することができる。紫外線照射に要する時間は、塗布される基材やコーティング組成物の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分、好ましくは0.5秒〜3分である。
【0098】
〈真空紫外線照射処理;エキシマ照射処理〉
本発明において、さらに好ましい改質処理の方法として、真空紫外線照射による処理が挙げられる。真空紫外線照射による処理は、シラザン化合物内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光のエネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で、酸化シリコン膜の形成を行う方法である。
【0099】
これに必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
【0100】
エキシマ光とは、希ガスエキシマーまたはヘテロエキシマーを動作媒質とするレーザー光である。Xe,Kr,Ar,Neなどの希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電などによりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には、
e+Xe→e+Xe
Xe+2Xe+Xe→Xe+Xe
となり、励起されたエキシマ分子であるXeが基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。
【0101】
また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動・再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
【0102】
エキシマ発光を得るには誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。誘電体バリア放電とは両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる、雷に似た非常に細いmicrodischargeと呼ばれる放電で、microdischargeのストリーマが管壁(誘電体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、microdischargeは消滅する。このmicrodischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため肉眼でも分る光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
【0103】
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外に無電極電界放電でも可能である。
【0104】
容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極およびその配置は基本的には誘電体バリア放電と同じで良いが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキが無い長寿命のランプが得られる。
【0105】
誘電体バリア放電の場合はmicrodischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。このため細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾンなどにより損傷しやすい。
【0106】
これを防ぐためにはランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素などの不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。
【0107】
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。したがって仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば酸素雰囲気中の距離を一様に出来、一様な照度分布が得られる。
【0108】
無電極電界放電を用いた場合には外部電極を網状にする必要は無い。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリア放電の場合と同様に大きいため一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
【0109】
細管エキシマランプの最大の特徴は構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。したがって、非常に安価な光源を提供できる。
【0110】
二重円筒型ランプは内外管の両端を接続して閉じる加工をしているため、細管ランプに比べ取り扱いや輸送で破損しやすい。
【0111】
細管ランプの管の外径は6〜12mm程度で、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
【0112】
放電の形態は誘電体バリア放電でも無電極電界放電のいずれでも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であっても良いが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
【0113】
Xeエキシマランプは波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラディカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン膜の改質を実現できる。したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板などへの照射を可能としている。
【0114】
エキシマランプは光の発生効率が高いため低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で単一波長でエネルギーを照射するため、照射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
【0115】
ここで言う膜密度は、X線反射率測定法により、測定し、具体的には、X線発生源は銅をターゲッカットモノクロメーターにて単色化したX線を使用する。測定は、ソフトウェアATX−CrystalGuideVer.6.5.3.4を用い、半割、アライメント調整後、2θ/ω=0度から1度を0.002度/stepで0.05度/min.で走査する。上記の測定条件で反射率曲線を測定した後、株式会社リガク製GXRRVer.2.1.0.0解析ソフトウェアを用いて求めることができる。
【0116】
またさらに好ましい態様として、第1のバリア層と第2のバリア層からなり、第1のバリア層がCVD法からなり、第2のバリア層が前記ポリシラザン含有液の塗布膜に改質処理を施して形成された二酸化珪素等の珪素酸化物または酸化窒化珪素化合物からなるガスバリア層であることである。
【0117】
〔第1のバリア層〕
第1のバリア層の好ましい態様について説明する。本発明においては、第1のバリア層が化学蒸着法で形成されたことが好ましい。
【0118】
一般に、基材上に機能性薄膜を形成する方法としては、大別して、物理気相成長法及び化学気相成長法(化学蒸着法)が挙げられ、物理的気相成長法は、気相中で物質の表面に物理的手法により目的とする物質(例えば、炭素膜等)の薄膜を堆積する方法であり、これらの方法としては、蒸着(抵抗加熱法、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー)法、また、イオンプレーティング法、スパッタ法等がある。一方、化学気相成長法(化学蒸着法、Chemical Vapor Deposition)は、基材上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面或いは気相での化学反応により膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマなどを発生させる方法などがあり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法など公知のCVD方式等が挙げられるが、本発明においては、いずれも有利に用いることができる。特に限定されるものではないが、製膜速度や処理面積の観点からプラズマCVD法が好ましい。
【0119】
以下、プラズマCVD法について具体的に説明する。
【0120】
図2の符号101は、本発明で使用できるプラズマCVD装置の一例を示している。
【0121】
このプラズマCVD装置101は、真空槽102を有しており、真空槽102の内部の底面側には、サセプタ105が配置されている。
【0122】
真空槽102の内部の天井側には、サセプタ105と対向する位置にカソード電極103が配置されている。
【0123】
真空槽102の外部には、熱媒体循環系106と、真空排気系107と、ガス導入系108と、高周波電源109が配置されている。
【0124】
熱媒体循環系106内には熱媒体が配置されている。
【0125】
熱媒体循環系106には、熱媒体を移動させるポンプと、熱媒体を加熱する加熱装置と、冷却する冷却装置と、熱媒体の温度を測定する温度センサと、熱媒体の設定温度を記憶する記憶装置とを有する加熱冷却装置160が設けられている。
【0126】
加熱冷却装置160は、熱媒体の温度を測定し、熱媒体を記憶された設定温度まで加熱又は冷却し、サセプタ105に供給するように構成されている。供給された熱媒体はサセプタ105の内部を流れ、サセプタ105を加熱又は冷却して加熱冷却装置160に戻る。このとき、熱媒体の温度は、設定温度よりも高温又は低温になっており、加熱冷却装置160は熱媒体を設定温度まで加熱又は冷却し、サセプタ105に供給する。かくて冷却媒体はサセプタと加熱冷却装置160の間を循環し、サセプタ105は、供給された設定温度の熱媒体によって加熱又は冷却される。
【0127】
真空槽102は真空排気系107に接続されており、このプラズマCVD装置101によって成膜処理を開始する前に、予め真空槽102の内部を真空排気すると共に、熱媒体を加熱して室温から設定温度まで昇温させておき、設定温度の熱媒体をサセプタ105に供給する。サセプタ105は使用開始時には室温であり、設定温度の熱媒体が供給されると、サセプタ105は昇温される。
【0128】
一定時間、設定温度の熱媒体を循環させた後、真空槽102内の真空雰囲気を維持しながら真空槽102内に成膜対象の基板110を搬入し、サセプタ105上に配置する。
【0129】
カソード電極103のサセプタ105に対面する面には多数のノズル(孔)が形成されている。
【0130】
カソード電極103はガス導入系108に接続されており、ガス導入系108からカソード電極103にCVDガスを導入すると、カソード電極103のノズルから真空雰囲気の真空槽102内にCVDガスが噴出される。
【0131】
カソード電極103は高周波電源109に接続されており、サセプタ105と真空槽102を接地電位に接続されている。
【0132】
ガス導入系108から真空槽102内にCVDガスを供給し、加熱冷却装置160から一定温度の熱媒体をサセプタ105に供給しながら高周波電源109を起動し、カソード電極103に高周波電圧を印加すると、導入されたCVDガスのプラズマが形成される。
【0133】
プラズマ中で活性化されたCVDガスがサセプタ105上の基板110の表面に到達すると、基板110の表面に薄膜が成長する。
【0134】
薄膜成長中は、加熱冷却装置160から一定温度の熱媒体がサセプタ105に供給されており、サセプタ105は、熱媒体によって加熱又は冷却され、一定温度に維持された状態で薄膜が形成される。一般に、薄膜を形成する際の成長温度の下限温度は、薄膜の膜質から決まっており、上限温度は基板110上に既に形成されている薄膜のダメージの許容範囲で決まっている。
【0135】
下限温度や上限温度は形成する薄膜の材質や、既に形成されている薄膜の材質等によって異なるが、ハイバリアフィルム等に用いられるSiN膜やSiON膜を形成する場合は、膜質を確保するために下限温度が50℃であり、上限温度は基材の耐熱温度以下である。
【0136】
プラズマCVD方法で形成される薄膜の膜質と成膜温度の相関関係と、成膜対象物(基板110)が受けるダメージと成膜温度の相関関係とは予め求めておく。例えば、プラズマCVDプロセス中の基板110の下限温度は50℃、上限温度は250℃。
【0137】
更に、カソード電極103に13.56MHz以上の高周波電圧を印加してプラズマを形成した場合の、サセプタ105に供給する熱媒体の温度と基板110温度の関係が予め測定されており、プラズマCVDプロセス中に基板110温度を、下限温度以上、上限温度以下に維持するために、サセプタ105に供給する熱媒体の温度が求められている。
【0138】
例えば、下限温度が(ここでは50℃)が記憶され、下限温度以上の温度に温度制御された熱媒体がサセプタ105に供給されるように設定されている。サセプタ105から還流された熱媒体は、加熱又は冷却され、50℃の設定温度の熱媒体がサセプタ105に供給される。例えば、CVDガスとして、シランガスとアンモニアガスと窒素ガスの混合ガスが供給され、基板110が、下限温度以上、上限温度以下の温度に維持された状態でSiN膜が形成される。
【0139】
プラズマCVD装置101の起動直後は、サセプタ105は室温であり、サセプタ105から加熱冷却装置160に還流された熱媒体の温度は設定温度よりも低い。従って、起動直後は、加熱冷却装置160は還流された熱媒体を加熱して設定温度に昇温させ、サセプタ105に供給することになる。この場合、サセプタ105及び基板110は熱媒体によって加熱、昇温され、基板110は下限温度以上、上限温度以下の範囲に維持される。
【0140】
複数枚の基板110に連続して薄膜を形成すると、プラズマから流入する熱によってサセプタ105が昇温する。この場合、サセプタ105から加熱冷却装置160に還流される熱媒体は下限温度(50℃)よりも高温になっているため、加熱冷却装置160は熱媒体を冷却し、設定温度の熱媒体をサセプタ105に供給する。これにより、基板110を下限温度以上、上限温度以下の範囲に維持しながら薄膜を形成することができる。
【0141】
このように、加熱冷却装置160は、還流された熱媒体の温度が設定温度よりも低温の場合には熱媒体を加熱し、設定温度よりも高温の場合は熱媒体を冷却し、いずれの場合も設定温度の熱媒体をサセプタに供給しており、その結果、基板110は下限温度以上、上限温度以下の温度範囲が維持される。
【0142】
薄膜が所定膜厚に形成されたら、基板110を真空槽102の外部に搬出し、未成膜の基板110を真空槽102内に搬入し、上記と同様に、設定温度の熱媒体を供給しながら薄膜を形成する。
【0143】
以上、真空プラズマCVD法による第1のバリア層の形成方法について一例を挙げたが、第1のバリア層の形成方法としては、真空を必要としないプラズマCVD法が好ましく、大気圧プラズマCVD法がさらに好ましい。
【0144】
大気圧近傍でのプラズマCVD処理を行う大気圧プラズマCVD法は、真空下のプラズマCVD法に比べ、減圧にする必要がなく生産性が高いだけでなく、プラズマ密度が高密度であるために成膜速度が速く、更には通常のCVD法の条件に比較して、大気圧下という高圧力条件では、ガスの平均自由工程が非常に短いため、極めて均質の膜が得られる。
【0145】
大気圧プラズマ処理の場合は、放電ガスとしては窒素ガスまたは周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
【0146】
〈異なる周波数の電界を二つ以上形成した大気圧プラズマ処理〉
次に、大気圧プラズマ処理について好ましい形態を説明する。大気圧プラズマ処理は、具体的には、国際公開第2007/026545号明細書に記載されるように、放電空間に異なる周波数の電界を2つ以上形成したもので、第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳した電界を形成する方式を用いることが好ましい。
【0147】
具体的には、第1の高周波電界の周波数ωより第2の高周波電界の周波数ωが高く、かつ、第1の高周波電界の強さVと、第2の高周波電界の強さVと、放電開始電界の強さIVとの関係が、
≧IV>V または V>IV≧V
を満たし、第2の高周波電界の出力密度が、1W/cm以上であることが好ましい。
【0148】
このような放電条件を採用することにより、例えば、窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持でき、高性能な薄膜形成を行うことができる。
【0149】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電界強度IV(1/2Vp−p)は3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の印加電界強度を、V≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0150】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることができる。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0151】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0152】
このような2つの電源から高周波電界を形成することは、第1の高周波電界によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の高周波電界の高い周波数及び高い出力密度によりプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成することができる。
【0153】
本発明でいう大気圧もしくはその近傍の圧力とは、20kPa〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0154】
また、本発明でいう励起したガスとは、エネルギーを得ることによって、ガス中の分子の少なくとも一部が、今ある状態からより高い状態へ移ることをいい、励起ガス分子、ラジカル化したガス分子、イオン化したガス分子を含むガスがこれに該当する。
【0155】
本発明に係る第1のバリア層は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で、高周波電界を発生させた放電空間に、珪素を含有する原料ガスを含有するガスを、励起した放電ガスと混合して二次励起ガスを形成し、基材をこの二次励起ガスに晒すことにより無機膜を形成する方法である。
【0156】
すなわち、第1ステップとして、対向電極間(放電空間)を、大気圧もしくはその近傍の圧力とし、放電ガスを対向電極間に導入し、高周波電圧を対向電極間に印加して、放電ガスをプラズマ状態とし、続いてプラズマ状態になった放電ガスと原料ガスとを、放電空間外で混合させて、この混合ガス(二次励起ガス)に基材を晒して、基材上に第1のバリア層を形成する。
【0157】
本発明における化学蒸着法により形成される第1のバリア層は、透過性の観点から金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、またはその複合化合物から選ぶことができる。また。第1のバリア層は実質的にもしくは完全に無機層として形成されているのが望ましい。中でも、第1のバリア層としては、酸化珪素または酸窒化珪素または窒化珪素を有することが好ましい。
【0158】
〈表面粗さ:平滑性〉
ガスバリア層の改質処理側の表面の表面粗さ(Ra)は、2nm以下が好ましく、さらに好ましくは1nm以下である。表面粗さが、上記範囲にあることで有機素子デバイス用の樹脂基材として使用する際に、凹凸が少ない平滑な膜面により光透過効率の向上と、電極間リーク電流の低減によりエネルギー変換効率が向上するので好ましい。ガスバリア層の表面粗さ(Ra)は以下の方法で測定することができる。
【0159】
表面粗さ測定の方法;AFM測定:
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)、例えば、DigitalInstruments社製DI3100で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
【0160】
〔樹脂基材〕
本発明では、樹脂基材を使用する。具体的には、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂基材、更には前記樹脂基材を2層以上積層して成る樹脂基材等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。
【0161】
また火災に対する燃え広がりを防止するために難燃性基材を用いることが好ましい。本発明に用いられる難燃性基材とは、難燃性高分子材料からなるフィルム、難燃剤を練りこんだフィルム、難燃性接着剤で貼り合わせたフィルム等が挙げられる。
【0162】
難燃性高分子材料からなるフィルムとしての樹脂材料としては、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE、PCTFE、FEP)、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリアラミド、ポリサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。これらを単独でフィルム成形して使用しても、難燃性を有しない樹脂材料と積層フィルムにして使用しても、難燃性を有しない樹脂材料と混練してフィルム成形して使用しても、難燃性が確保できていればいずれの方法でも良い。
【0163】
難燃剤を練りこんだフィルムとしては、難燃性がない基材に難燃剤をフィルム製膜時の樹脂へマスターバッチとして添加・混練することにより添加することができる。難燃剤として、リン系、リン+ハロゲン系、塩素系、ブロム系、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、アンチモン系、グアニジン系、ジルコニウム系、ホウ酸亜鉛、シリコーン系、窒素系、低融点ガラス系、ナノコンポジット系等があり、これらの1種あるいは2種以上を任意に用いることができる。また難燃性のない基材としては、例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。
【0164】
難燃性接着剤で貼り合わせたフィルム等としては、上記の難燃性のない基材に、上記難燃剤を添加した接着剤で熱や真空等のラミネーターで貼り合わせて作製することができる。接着剤としては、アクリル系、ウレタン系、オレフィン系、セルロース系、エチレン−酢ビ系、エポキシ系、塩ビ系、シリコーン系、イソシアネート系、シアノアクリレート系、フェノール系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリブチラール系、メラミン樹脂系等が挙げられ、これらに上記難燃剤を添加することで使用することができる。
【0165】
支持体の厚さは5〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25〜250μmである。
【0166】
また、本発明に係る樹脂基材は透明であることが好ましい。樹脂基材が透明であり、樹脂基材上に形成する層も透明であることにより、透明な太陽電池用保護シートとすることが可能となるからである。
【0167】
また、上記に挙げた樹脂等を用いた樹脂基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
【0168】
本発明に用いられる支持体は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、又は支持体の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0169】
また本発明に用いられる支持体は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、またはテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された支持体は、下記のオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、更に寸法安定性が良好になる。オフライン熱処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、複数のロール群によるロール搬送方法、空気をフィルムに吹き付けて浮揚させるエアー搬送などにより搬送させる方法(複数のスリットから加熱空気をフィルム面の片面あるいは両面に吹き付ける方法)、赤外線ヒーターなどによる輻射熱を利用する方法、フィルムを自重で垂れ下がらせ、下方で巻き等搬送方法等を挙げることが出来る。
【0170】
熱処理の搬送張力は、出来るだけ低くして熱収縮を促進することで、良好な寸法安定性の支持体となる。処理温度としてはTg+50〜Tg+150℃の温度範囲が好ましい。
【0171】
本発明の支持体は、製膜過程で片面または両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明において、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等を挙げることが出来、何れも好ましく用いることが出来る。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0172】
また本発明の支持体は、屋外で使用することから、耐加水分解性を有するフィルムを使用することができる。例えば、特開2007−70430号公報のフィルムの固有粘度を上げる技術や、特開2007−204538号公報のフィルム中のポリエステルの末端カルボン酸を抑える技術等を使用して、耐加水分解性を向上することができる。
【0173】
〔表面エンボス加工〕
本発明において、光取り出し/光取り込み効率を向上するために、最表面になる紫外線吸収層または保護層の表面に微細な凹凸を設けることができる。表面に微細な凹凸を設ける方法としては、型等で均一なエンボス加工を施すことが光散乱効率を向上するので好ましい。例えば、塗布形成する際においては、凹凸を有する型付け用フィルムで塗膜を被覆したまま固化させるか、形成された塗膜に型付け用ロール等の型付け手段を、必要に応じて加熱しつつ押し付けて行うか、あるいは、剥離面に凹凸を有する剥離性基材上に紫外線吸収層または保護層を塗布形成して転写シートを作製し、その転写シートを用いて転写する方法等が挙げられる。好ましくは、金属製等で、紫外線吸収層または保護層を形成する際に、エンボス板、もしくはエンボスロールを用いて行うことが生産効率の点でも、均一な凹凸を形成する点でも好ましい。
【0174】
凹凸の形状は、山型、半月型等のいずれでも良く、2種以上の山型を組み合わせても、形状を制御することができる。表面凹凸の程度は、表面粗さが0.01〜1.60μmが好ましく、特に好ましくは0.1〜0.5μmである。
【0175】
本発明の好ましい態様としてガスバリア層上に太陽電池素子を設置することが好ましい態様である。
【0176】
〔太陽電池素子の構成〕
本発明の太陽電池素子の好ましい形態について図1を用いて説明するが、これに限定されるものではない。
【0177】
図1は本発明の好ましく用いられるタンデム型太陽電池素子の断面構造を示す模式図である。
【0178】
図1(1)において、太陽電池素子10は基板30上に、第1電極(透明電極、カソード)31、第1電子輸送層32、第1光電変換層33、第1正孔輸送層34、再結合層35、第2電子輸送層36、第2光電変換層37、第2正孔輸送層38、第2電極(アノード)39を積層した構造を示している。
【0179】
図1(2)において、太陽電池素子20は基板30上に、第1電極(透明電極、アノード)41、第1正孔輸送層34、第1光電変換層33、第1電子輸送層32、再結合層35、第2正孔輸送層38、第2光電変換層37、第2電子輸送層36、第2電極(カソード)49を積層した構造を示している。
【0180】
〔光電変換層〕
本発明に係る光電変換層は、p型半導体材料及びn型半導体材料を用いるバルクヘテロジャンクション型の光電変換層が好ましい。
【0181】
(p型半導体材料)
本発明に係る光電変換層に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマーが挙げられる。
【0182】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0183】
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基を持ったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol.127,No.14,p4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123,p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008),No.9,p2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
【0184】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008000664に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv.Mater.,2007,p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.,vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0185】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0186】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。また、光電変換層上に電子輸送層を塗布で製膜する場合、電子輸送層溶液が光電変換層を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いてもよい。
【0187】
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号明細書、及び特開2008−16834号公報等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料等を挙げることができる。
【0188】
〈n型半導体材料〉
本発明に係る光電変換層に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0189】
しかし、チオフェン含有縮合環を有する材料をp型半導体材料として用いる場合、効率的な電荷分離を行えるフラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0190】
中でも[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7329709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0191】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0192】
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものがあり、主として有機物からなり、塗布で容易に設置可能であることが本発明の態様である。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0193】
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0194】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters,80(2002),p.139)に記載されているような所謂、p型正孔輸送材料を用いることもできる。
【0195】
また、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0196】
これらの材料は塗布で積層可能とするために、塗膜形成後、化学結合、物理的な接着により塗膜を形成するものが好ましく、化学的物理的な接着を促進するために、反応性基、架橋基の導入。反応性化合物の導入。熱処理による融着等の接着促進策をとることができる。
【0197】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層主として有機物からなり、塗布で容易に設置可能であることが本発明の態様である。
【0198】
その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0199】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。
【0200】
また、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0201】
具体例としては、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1′−ビフェニル)−4,4′−ジアミン(TPD)や4,4′−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物やその誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4′,4″−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポルフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体等を用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体等を好ましく用いることができる。
【0202】
これらの材料は塗布で積層可能とするために、塗膜形成後、化学結合、物理的な接着により塗膜を形成するものが好ましく、化学的物理的な接着を促進するために、反応性基、架橋基の導入。反応性化合物の導入。熱処理による融着等の接着促進策をとることができる。
【0203】
〔その他の機能層〕
本発明に用いられる太陽電池素子は、エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、UV吸収層、光反射層、波長変換層、平滑化層、タンデム素子を形成する少なくとも2つ光電変換層の間に再結合層等を挙げることができる。
【0204】
〔電極〕
(透明電極)
本発明に係る透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、通常陽極として用いることが一般的である。なお本発明において陽極とは、正孔を取り出す電極のことを意味する。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、金属グリッドを用いることができる。
【0205】
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
【0206】
(対電極)
本発明に係る対電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、通常陰極として用いることが一般的である。なお本発明において陰極とは、電子を取り出す電極のことを意味する。例えば、陰極として用いる場合、対電極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。対電極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
【0207】
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。対電極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0208】
対電極の導電材として金属材料を用いれば対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0209】
また、対電極は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体グリッド構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により形成でき好ましい。
【0210】
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
【0211】
〔基板〕
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
【0212】
本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0213】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0214】
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0215】
〔その他の光学機能層〕
本発明に用いられる太陽電池素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてよい。光学機能層としては、たとえば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度光電変換層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
【0216】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0217】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0218】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0219】
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
【0220】
本発明の太陽電池素子の層構成は、前記金属微粒子の集合体構造を有する電極が陽極を構成し、陽極、高導電性層、正孔輸送層の層構成であることが好ましい。
【0221】
また、前記金属微粒子の集合体構造を有する電極が陰極を構成し、陰極、高導電性層、電子輸送層の層構成であることが好ましい。
【0222】
さらに、少なくとも、陽極、高導電性層、正孔輸送層、光電変換層、電子輸送層、高導電性層、陰極をこの順で基板上に有する太陽電池素子が好ましい。
【0223】
(製膜方法・表面処理方法)
電子受容体と電子供与体とが混合された光電変換層、及び輸送層・電極の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、光電変換層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
【0224】
この際に使用する塗布方法に制限はないが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。さらには、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
【0225】
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、光電変換層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、光電変換層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0226】
光電変換層は、p型半導体とn型半導体とが混在された層で構成してもよいが、それぞれ混合比が膜厚方向で異なる複数層または混合比のグラデーション構成でもよい。
【0227】
(パターニング)
本発明に係る電極、光電変換層、正孔輸送層、電子輸送層、再結合層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0228】
光電変換層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、製膜後に炭酸レーザー等を用いてアブレーションする方法、スクライバで直接削り取る方法等でパターニングしてもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷、グラビア印刷等の各種印刷方法を使用して直接パターニングしてもよい。
【0229】
電極材料等の不溶性の材料の場合は、真空蒸着法や真空スパッタ法、プラズマCVD法、電極材料の微粒子を分散させたインキを用いたスクリーン印刷法やグラビア印刷法、インクジェット法等の各種印刷方法、蒸着膜に対しエッチングまたはリフトオフする等の公知の方法、また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
【0230】
(封止)
作製した太陽電池素子が大気中の酸素、水分等で劣化しないために、公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと太陽電池素子上を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【0231】
さらに本発明においては、エネルギー変換効率と素子寿命向上の観点から、素子全体を2枚のバリア付き基板で封止した構成でもよく、好ましくは、水分ゲッター、酸素ゲッター等を同封した構成であることが本発明においてより好ましい。
【実施例】
【0232】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0233】
実施例1
下記の様にして保護シートPS−101〜113を作製した。
【0234】
〈PS−101〉
(樹脂基材)
両面に易接着加工された100μmの厚さのポリエステルフィルム、帝人デュポンフィルム株式会社製、KDL86W−100μを樹脂基材として用いた。
【0235】
(紫外線吸収層の形成)
紫外線吸収層:一次粒子の平均粒径0.02μmの酸化亜鉛粒子100質量部、硬化性TFE系共重合体(ダイキン工業(株)製のゼッフルGK570、固形分65質量%、水酸基価65mgKOH/g)200質量部中で分散を行い、硬化剤(日本ポリウレタン(株)製のコロネートHX)10質量部、シランカップリング剤(OCN−C−Si(OCH)3質量部を添加し、酢酸ブチルで希釈し、塗布液を作製した。乾燥膜厚25μmになるように塗設した。この塗膜の屈折率は、1.7であった。
【0236】
(ガスバリア層の形成)
紫外線吸収層の反対側に、CHC(クリアハードコート)層、ガスバリア層を以下に示す条件で作製した。
【0237】
(CHC層)
上記樹脂基材の片面に、JSR株式会社製紫外線硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTARZ7535を塗布、乾燥後の(平均)膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;1.0J/cm空気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行った。
【0238】
(バリア層1の形成)
ガスバリア層塗布液としてパーヒドロポリシラザン(PHPS)の20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカNN320)を用い、ワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)膜厚が、0.30μmとなるように塗布し、塗布試料を得た。
【0239】
(第一工程;乾燥処理)
得られた塗布試料を温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分処理し、乾燥試料を得た。
【0240】
(第二工程;除湿処理)
乾燥試料をさらに温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行った。
【0241】
(改質処理A)
除湿処理を行った試料を下記の条件で改質処理を行い、ガスバリア層を形成した。改質処理時の露点温度は−8℃で実施した。
【0242】
(改質処理装置)
株式会社エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200、波長172nm、ランプ封入ガスXe稼動ステージ上に固定した試料を以下の条件で改質処理を行った。
【0243】
(改質処理条件)
エキシマ光強度130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離1mm
ステージ加熱温度70℃
照射装置内の酸素濃度1%
エキシマ照射時間3秒
(バリア層2の形成)
下記の2層構成及び条件で、プラズマ放電を行って、厚さ約0.3μmのバリア層2を形成した。
【0244】
(第一のセラミック層の形成)
〈第一のセラミック層混合ガス組成物〉
放電ガス:窒素ガス94.9体積%
薄膜形成ガス:テトラエトキシシラン0.5体積%
添加ガス:酸素ガス5.0体積%
〈成膜条件〉
第1電極側電源種類:応用電機製80kHz
周波数80kHz
出力密度8W/cm
電極温度120℃
第2電極側電源種類:パール工業製13.56MHzCF−5000−13M
周波数13.56MHz
出力密度10W/cm
電極温度90℃
(第二のセラミック層の形成)
〈第二のセラミック層混合ガス組成物〉
放電ガス:窒素ガス94.9体積%
薄膜形成ガス:テトラエトキシシラン0.1体積%
添加ガス:酸素ガス5.0体積%
〈第二セラミック層成膜条件〉
第1電極側電源種類:ハイデン研究所100kHz(連続モード)PHF−6k
周波数100kHz
出力密度10W/cm
電極温度120℃
第2電極側電源種類:パール工業13.56MHzCF−5000−13M
周波数13.56MHz
出力密度10W/cm
電極温度90℃
〈PS−102〉
(樹脂基材)
PS−101と同様の樹脂基材を用いた。
【0245】
(紫外線吸収層の形成)
PS−101と同様にして紫外線吸収層を形成した。
【0246】
(保護層の設置)
関東電化工業エフクリアKD200を塗布、乾燥後の(平均)膜厚が20μmになるように上記支持体にワイヤーバーで塗布した。その後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥を行い、さらに、塗布面にクロム性で表面に微細凹凸を有するエンボス版を、その微細凹凸面側に接するようにして重ね、フッ素樹脂層を紫外線吸収層の上に設置した。この塗膜の屈折率は1.35であった。
【0247】
更に、裏面はPS−101と同様に、CHC層、ガスバリア層を設置した。
【0248】
〈PS−103〉
PS−101の紫外線吸収層を以下に変更した他、PS−101と同様の方法でPS−103を作製した。
【0249】
紫外線吸収層:一次粒子の平均粒形0.02μmの酸化亜鉛粒子100質量部、三菱レイヨン製ダイヤナール(アクリル樹脂)を130質量部中で分散を行い、塗布液を作製し、乾燥膜厚25μmになるように塗設。空気雰囲気下で、高圧水銀ランプ、硬化条件;400mJ/cm硬化を行い、その後乾燥条件;80℃、3分で乾燥して紫外線吸収層を作製した。この塗膜の屈折率は、1.8であった。
【0250】
〈PS−104〉
PS−102の紫外線吸収層をPS−103の紫外線吸収層に変更した他、PS−102と同様の方法でPS−104を作製した。
【0251】
〈PS−105〉
PS−101で使った樹脂基材上に特開2006−326971号公報実施例1記載の紫外線吸収層(平均粒径0.05μmの酸化亜鉛とアクリル系樹脂層の上にベンツトリアゾール系紫外線吸収剤層)を塗設した。樹脂基材の反対側にPS−101と同様にCHC層、ガスバリア層を塗設した。
【0252】
〈PS−106〉
PS−101で使った樹脂基材上に特開2009−137012号公報実施例1記載の方法で紫外線吸収層(ソーラーエバ)および保護層(ETFEフィルム)を張り合わせ、さらに樹脂基材の反対側にPS−101と同様にCHC層、ガスバリア層を塗設した。
【0253】
〈PS−107〉
PS−101の紫外線吸収層の無機微粒子を、一次粒子の平均粒形0.15μmの酸化亜鉛粒子を使った他はPS−101と同様の方法で、PS−107を作製した。
【0254】
〈PS−108〉
PS−101の紫外線吸収層の無機微粒子を、一次粒子の平均粒形0.09μmの酸化亜鉛粒子を使った他はPS−101と同様の方法で、PS−108を作製した。
【0255】
〈PS−109〉
PS−101の紫外線吸収層の無機微粒子を、一次粒子の平均粒形0.04μmの酸化亜鉛粒子を使った他はPS−101と同様の方法で、PS−109を作製した。
【0256】
〈PS−110〉
PS−101の紫外線吸収層の無機微粒子を、一次粒子の平均粒形0.01μmの酸化亜鉛粒子を使った他はPS−101と同様の方法で、PS−110を作製した。
【0257】
〈PS−111〉
PS−101の紫外線吸収層の無機微粒子を、一次粒子の平均粒形0.005μmの酸化亜鉛粒子を使った他はPS−101と同様の方法で、PS−111を作製した。
【0258】
〈PS−112〉
PS−101の紫外線吸収層の無機微粒子を、一次粒子の平均粒形0.2μmのTiO(ルチル体)顔料を使った他はPS−101と同様の方法で、PS−112を作製した。
【0259】
〈PS−113〉
PS−101の紫外線吸収層の無機微粒子を、一次粒子の平均粒形0.02μmのTiO(ルチル体)を使った他はPS−101と同様の方法で、PS−113を作製した。
【0260】
(性能評価)
〈ガスバリア性(水蒸気透過度)〉
以下の測定方法により評価した。
【0261】
〔装置〕
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:YamatoHumidicChamberIG47M
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
〈水蒸気バリア性評価用セルの作製〉
表1で示される試料のガスバリア層側に、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリアフィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
【0262】
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
【0263】
なお、ガスバリアフィルム面から以外の水蒸気の透過が無いことを確認するために、比較試料としてガスバリアフィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
【0264】
得られた水分量から以下の5段階に評価した。
【0265】
A:1×10−5g/m/day未満
B:1×10−5g/m/day以上、1×10−4g/m/day未満
C:1×10−4g/m/day以上、1×10−3g/m/day未満
D:1×10−3g/m/day以上、1×10−2g/m/day未満
E:1×10−2g/m/day以上
表1にガスバリア性として評価結果を示した。
【0266】
〈保護シート保存性試験〉
製造時の保護シートの加圧下での保存安定性を確認するために、PS−101〜113のA4サイズ5枚を紫外線吸収層面とガスバリア面が重なる様に重ね、9.8×10MPa(1kg/m)の圧力をかけた状態で、30℃50%下で72hr放置したものを上記の方法でバスバリア性を評価した。表1に保存後ガスバリア性として評価結果を示した。
【0267】
〔太陽電池素子の作製〕
上記で作製した保護シートPS−101〜PS−113のガスバリア面上に、太陽電池素子を以下の手順で作製した。なお、これらの操作は、特に断りがない限り窒素雰囲気下で実施した。
【0268】
(透明電極層)
銀ナノ粒子ペースト1(M−DotSLP三ツ星ベルト製)をRKPrintCoatInstrumentsLtd製グラビア印刷試験機K303MULTICOATERを用いて、線幅50μm、高さ0.8μm、間隔1.0mmの細線格子を印刷した後、110℃、5分の乾燥処理を行い、補助電極を作製した。補助電極を設けた基板上に、下記組成の透明電極層塗布液をウェット膜厚10μmになるように塗布し、90℃、1分間乾燥した。その後、電気炉を用いて120℃で30分の加熱処理を行い、透明電極層を形成した。
【0269】
透明電極層塗布液
導電性ポリマー分散液(CleviosTH510;H.C.Starck社製、固形分1.7質量%) 17.6g
下記水溶性バインダーWP−1水溶液(数平均分子量33700、分子量分布2.4、固形分20質量%) 3.5g
ジメチルスルホキシド 1.0g
【0270】
【化2】

【0271】
(第1電子輸送層)
この透明電極上に、イソプロパノールに溶解したポリエチレンイミンと、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテルの混合溶液を塗布し、ホットプレート上で120℃、10分間乾燥し、厚さ5nmの第1電子輸送層を形成した。
【0272】
(第1光電変換層)
クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン、HOMO:−5.5eV、LUMO:−3.4eV)とPC60BM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル、HOMO:−6.1eV、LUMO:−4.3eV)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルターでろ過し、乾燥膜厚が約200nmになるように塗布乾燥し、第1光電変換層を形成した。
【0273】
(第1正孔輸送層)
導電性高分子及びポリアニオンからなるPEDOT−PSS(CLEVIOS(登録商標)PVPAI4083、エイチ・シー・スタルク株式会社製、導電率1×10−3S/cm)、イソプロパノールを含む液を調製し、第1光電変換層上に、乾燥膜厚が約100nmになるように塗布乾燥した。その後、120℃で10分間加熱処理し第1正孔輸送層を形成した。
【0274】
(再結合層)
導電性高分子及びポリアニオンからなるPEDOT−PSS(CLEVIOS(登録商標)PH500、エイチ・シー・スタルク株式会社製に5質量%のDMSOを添加し(導電率500S/cm))、イソプロパノールを含む液を調製し、第1正孔輸送層上に乾燥膜厚が約100nmになるように塗布乾燥した。その後、120℃で10分間加熱処理し再結合層を形成した。
【0275】
(第2電子輸送層)
下記ET−1をブタノールに溶解し再結合層上に塗布した後、365nmの紫外光を3J/cmの照射エネルギーで3分間照射を行った。その後ホットプレート上で80℃10分間加熱し、厚さ5nmの第2電子輸送層を形成した。
【0276】
【化3】

【0277】
(第2光電変換層)
光電変換層ポリマーとして下記PCPDTBTとPC70BM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C71−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:1.5で混合した液を調製し、フィルターでろ過し第2電子輸送層上に、乾燥膜厚が約100nmになるように塗布乾燥し、第2光電変換層を形成した。
【0278】
【化4】

【0279】
(第2正孔輸送層)
導電性高分子及びポリアニオンからなるPEDOT−PSS(CLEVIOS(登録商標)PVPAI4083、エイチ・シー・スタルク株式会社製、導電率1×10−3S/cm)、イソプロパノールを含む液を調製し、第2光電変換層上に、乾燥膜厚が約100nmになるように塗布乾燥した。その後、120℃で10分間加熱処理し第2正孔輸送層を形成した。
【0280】
(電極)
この後、蒸着機にて銀を50nm蒸着後100nmのアルミニウムを蒸着し電極を形成した。紫外線硬化性エポキシ樹脂接着剤を30μmの厚さで塗布し、この上に100μmPETフィルムに厚さ30nmのアルミニウムを貼合したバックシートのPET面側を接着させて、太陽電池素子を作製した。
【0281】
《太陽電池素子の評価》
上記作製した太陽電池素子について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を1cmにしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)及びフィルファクターFFを、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定した。次に、Jsc、Voc、FFそれぞれの平均値から式1に従って光電変換効率η(%)を求めた。
【0282】
式1 η(%)=Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)
〔紫外線照射テスト〕
ここで作製した太陽電池素子を、メタルハライドランプ方式の耐候性試験機(ダイプラ・ウィンテス社製)を使用し、試料面放射強度:2.16MJ/m以下、ブラックパネル温度63℃、相対湿度:50%、照射時間500時間の条件で試験を行い、外観の確認および発電効率を測定した。
【0283】
外観テストは、以下の基準で実施した。
【0284】
○:外観上変化はない
△:変化はあるが気にならないレベル
×:明らかに劣化していることが分かる
【0285】
【表1】

【0286】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明の保護シートPS−101、102は、比較例のPS−103〜106に較べ、保存後のバリア性に優れ、かつ初期の発電効率が高く、紫外線線照射の耐久性にも優れることが分る。
【0287】
また無機微粒子の粒形は、本発明の範囲よりも大きい場合は、発電効率、ガスバリア性、紫外線照射耐性が劣り、本発明の範囲よりも小さい場合は、発電効率、紫外性照射耐性が劣ることがわかる。
【0288】
これらの効果の発生メカニズムについて、詳細な検討はされていないが、ナノ粒子サイズの無機微粒子が、安定に担持されるバインダー構成および非常に傷付きやすいガスバリア層と無機微粒子の相互作用により効果が発現しているものと見ている。
【0289】
実施例2
以下のようにして厚さ100μmの難燃性ポリエステルフィルムを作製した。
【0290】
ジメチルテレフタレート及びエチレングリコールを1:2の当量比で混合し、酢酸カルシウム一水和物(エステル交換反応触媒)を該ジメチルテレフタレートの質量を基準に0.05質量%添加して200℃で180分間反応させた。エステル交換反応の完了後、2−カルボキシエチルメチルホスフィン酸を反応混合物にジメチルテレフタレートを基準に0.2当量の量で添加した後、トリメチルホスフェート(安定化剤)及び三酸化アンチモン(重合触媒)を各々前記ジメチルテレフタレートの質量を基準に0.05質量%及び0.04質量%の量で反応混合物に添加した。混合物を280℃で180分間反応させ、極限粘度0.640dl/gのポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂100質量部に対してポリテトラフルオロエチレン(PTFE;難燃性向上剤)5質量部を添加し、回転速度300rpmのコンパウンダースクリューを用いて285℃で混合して、マスタチップを製造した。
【0291】
前記ポリエステル樹脂とマスタチップとを4:1の質量比で混合した。混合物を通常のT−ダイによって280℃で溶融押出し、25℃のキャスティングローラーで冷却して、シートを製造した。シートを縦方向に90℃で3.5の延伸比で、また横方向に120℃で3.5の延伸比で延伸してから220℃で熱固定し、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの両面にオフラインで東洋紡株式会社製、K1531の易接着層を乾燥膜厚で0.1μmとなるようにコーティングしたものを支持体2とした。
【0292】
(紫外線吸収層の形成)
紫外線吸収層:一次粒子の平均粒径0.02μmの酸化チタン粒子(ルチル体)、硬化性TFE系共重合体(ダイキン工業(株)製のゼッフルGK570,固形分65質量%、水酸基価65mgKOH/g)で分散を行い、硬化剤(日本ポリウレタン(株)製のコロネートHX)10質量部、シランカップリング剤(OCN−C−Si(OCH)3質量部を添加し、酢酸ブチルで希釈し、塗布液を作製した。乾燥膜厚25μmになるように塗設した。この際、酸化チタンの量を変化させ表2に示す屈折率の塗膜を得た。
【0293】
(保護層の設置)
(フッ素樹脂層の形成)
三菱レイヨン製ダイヤナール(アクリル樹脂)および硬化性TFE系共重合体(ダイキン工業(株)製のゼッフルGK570,固形分65質量%、水酸基価65mgKOH/g)の比率を変えた混合物200質量部に、硬化剤(日本ポリウレタン(株)製のコロネートHX)10質量部添加し、酢酸ブチルで希釈し、塗布組成物を作製した。乾燥膜厚15μmになるように塗設した。ダイヤナールとゼッフルGK570比率を変化させて、表2に示す屈折率の塗膜を得た。
【0294】
CHC層、ガスバリア層は、実施例1のPS−101と同様の方法で設置した。
【0295】
これらの保護シートに実施例1と同様の方法で太陽電池素子を作製し、実施例1と同様の方法で初期の発電効率を測定した。
【0296】
【表2】

【0297】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明の保護シートを用いて作製した太陽電池素子201〜206から、紫外線吸収層と保護層の好ましい屈折率の範囲がわかる。この効果が発現する機構については、詳細はあきらかではないが、基材、紫外線吸収層、保護層での反射、屈折の関係から光取り込み、光閉じ込めの効果によるものと推定している。
【符号の説明】
【0298】
10、20 太陽電池素子
30 基板
31 第1電極(透明電極、カソード)
32 第1電子輸送層
33 第1光電変換層
34 第1正孔輸送層
35 再結合層
36 第2電子輸送層
37 第2光電変換層
38 第2正孔輸送層
39 第2電極(アノード)
41 第1電極(透明電極、アノード)
49 第2電極(カソード)
101 本発明で使用できるプラズマCVD装置
102 真空槽
103 カソード電極
105 サセプタ
106 熱媒体循環系
107 真空排気系
108 ガス導入系
109 高周波電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材の一方の面上に、ガスバリア層を有し、該樹脂基材の他方の面上に、フッ素含有ポリマーおよび紫外線吸収能をもつ平均粒径0.01μm以上0.1μm以下の金属酸化物粒子を含有する紫外線吸収層を有することを特徴とする太陽電池用保護シート。
【請求項2】
前記樹脂基材上に形成された前記紫外線吸収層上に、更にフッ素含有ポリマーを含有する保護層を有することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項3】
前記保護層の屈折率が1.2〜1.4であることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項4】
前記紫外線吸収層の屈折率が1.5〜2.0であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の太陽電池用保護シートを基材とし、該基材上に太陽電池素子を積層したことを特徴とする太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−164687(P2012−164687A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21460(P2011−21460)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】