説明

太陽電池間の導電性接着剤の調製方法

本発明は、太陽電池間の導電性接着剤を調製する方法に関する。ここで、導電性粒子を含む接着剤は、最初にレーザによりキャリアを照射することによりキャリアから基板に転送される。基板に転送された接着剤は、接着剤層を形成するために部分的に乾燥及び/又は硬化される。更なる工程で、接着剤は電気的接続子に接着される。そして、最終的に接着剤は硬化される。本発明は、更に工程を達成するための接着剤に関する。接着剤は、接着剤の固形成分の質量に対して、20から98質量%の導電性粒子、0.01から60質量%のマトリクス材料として使用する有機結合成分を含む。そして、接着剤中の導電性粒子の質量に対して0.005から20質量%の吸収剤、未乾燥及び未硬化の接着剤の総合質量に対して、0から50質量%の分散剤と1から20質量%の溶媒を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池間の導電性接着剤の調製方法、及び方法を実行する接着剤に関する。
【0002】
本発明による方法は、太陽電池の接点を製作するのに、又は太陽電池を他と接続するのに適切である。
【背景技術】
【0003】
太陽電池モジュールの構築において、個々の太陽電池は、現在専ら、はんだ付け工程により他と接続される。例えば、特許文献1に記載されている。しかし、そこで開示されている方法は、液体金属合金が正確に位置決めされ、及び計量されなければならないという不利な点がある。これらの合金を使用する場合、金属を液化するために膨大なエネルギを必要である。大部分の合金は、処理のために十分に低い溶融温度を達成するために鉛をも含んでいる。冷却過程で、はんだ付けした接点が縮む結果としてクラックが発生する恐れがある。
【0004】
更なる可能性は、導電性接着フィルムを使用することである。これは、同様に特許文献1に記載されている。しかし、太陽電池の接続とボンディングには、しばしば信頼性がない。更に、これらのフィルムは、製造するのに高価で不便であり、位置決めすることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP-A 2 058 868
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、電気的接続が液体金属はんだを使用しないで、及び、コンタクトサイトの正確な位置決めが可能な、太陽電池の電気的接続を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、以下の工程を有する太陽電池間の導電性接着剤の調製方法により達成される。
(a)導電性の粒子を含む接着剤を、キャリアから基板の導電層へ、レーザを照射することにより転送する工程、
(b)基板に転送された接着剤を、接着剤層を形成するために部分的に乾燥及び/又は硬化させる工程、
(c)電気的接続体に接着剤を接着する工程、
(d)基板に転送された接着剤を完全に硬化させる工程
【発明を実施するための形態】
【0008】
接着剤が塗布される適切な基板は、太陽電池の調製に適切な全ての固い又は柔軟な基板である。太陽電池の調製に適切な基板は、例えば、単結晶、多結晶、又はアモルファスシリコン、GaAs、GaSb、GalnP、GalnP/GaAs、GaAs/Ge等のIII−V族半導体、CdTe等のII−VI族半導体、例えば、CulnS2、CuGaSe2、又は一般式ABC2等のI−III−VI族半導体である。ここで、AはCu、Ag又はAu、BはAl、Ga又はIn、及びCはS、Se又はTeである。
【0009】
同様に、上述した半導体をコートした全ての固質の又は柔軟な基板、例えばガラスとポリマーフィルムも適切である。
【0010】
工程を実行するのに使用され得る適切な接着剤は、20から98質量%の導電性粒子、マトリクス剤として使用される0.01から60質量%の有機バインダ成分を含む。各々接着剤の固体成分に対してである。また、接着剤の導電性粒子に質量に対して0.005から20質量%の吸収剤、及びそれぞれ未乾燥で未交換の接着剤の総合質量に対して0から50質量%の分散剤と1から30質量%の溶媒を含む。
【0011】
電気的に接続するためのコンタクトは、一般に、半導体材料から成る基板上に搭載されている。例えば、コンタクトはバスバーの形である。コンタクトに適用されるものは、一般に、電気的導電材料、特に銀、銅、ニッケル、アルミニウム及びそれらの合金、及びコア−シェル分子から成る導体トラックである。
【0012】
太陽電池の電気的接続を可能にするため、半導体材料に搭載された接点に接着剤が塗布される。
【0013】
最初の工程で、導電性粒子を含む接着剤は、キャリアから基板に転送される。この転送は、キャリア上の接着剤をレーザにより照射することにより為される。
【0014】
一つの実施の形態では、ここで示されている導電性粒子を含む接着剤は、基板に転送される前、キャリアの全領域に好ましく塗布されている。代替的に接着剤はキャリアに構造化された方法で塗布することも勿論可能である。しかし、全領域に塗布するのが好ましい。
【0015】
更なる実施の形態では、既に接着剤がコートされているキャリアが使用される。この目的のため、例えば、接着剤がコートされたフィルム状のもので、フィルム供給部に捲かれているキャリアを使用することが可能である。接着剤を転送した後、フィルムは回収され、そして廃棄又は再利用される。
【0016】
適切なキャリアは、特定のレーザ照射に対して透明な全ての材料、例えば、プラスチック又はガラスである。例えば、IRレーザを使用する場合、ポリオレフィンフィルム、PETフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、PENフィルム、ポリスチレンフィルム又はガラスを使用することが可能である。ポリアミドフィルムが好ましい。
【0017】
キャリアは、リジッド又は柔軟なものでも良い。加えて、キャリアは環状又は連続体フィルムの形、又はスリーブ、又は平形キャリアの形であっても良い。
【0018】
レーザビームを生成するための適切なレーザビームは、商業的に利用可能である。原理的に全てのレーザビーム源を利用することが可能である。そのようなレーザビーム源は、例えば、パルス又は連続気体、ファイバ、固体、ダイオード又はエキシマレーザである。特定のキャリアがレーザ照射に対して透明ならばそれぞれが使用できる。そして、導電性分子を含み、キャリアに塗布された接着剤は、光エネルギが熱エネルギに変換される結果として、接着剤層内でキャビテーション気泡を生成するのに十分なレーザ照射を吸収する。
【0019】
レーザが生成するレーザビームの波長は、好ましくは150から10600nmの範囲内、特には600から10600nmの範囲内である。
【0020】
レーザ源、パルス又は連続(cw)IRレーザとして、例えば、Nd:YAGレーザ、ファイバレーザ又はダイオードレーザを使用することが好ましい。これらは高価ではなく高出力で利用できる。連続(cw)IRレーザが特に好ましい。導電性粒子を含む接着剤の吸収特性に依存して、可視領域の波長を持つ又はUV周波数領域の波長を持つレーザを使用することも可能である。この目的のための適切な例は、Arレーザ、HeNeレーザ、周波数逓倍IR固体レーザ、又はArFレーザ、KrFレーザ、XeClレーザ又はXeFレーザ等のエキシマレーザである。レーザビーム源、レーザ出力及び使用したレンズシステムとモジュレータに依存して、レーザビームの焦点直径は1μmから100μmである。表面の構造を生成するためレーザのビーム路にマスクを配列しても良い。又は当業者に周知の可視化処理を採用しても良い。
【0021】
好ましい実施の形態では、キャリアに塗布した接着剤の所望の部分が、接着剤に焦点を当てられたレーザにより、基板に転送される。
【0022】
本発明の工程を実行するため、レーザビーム及び/又はキャリア及び/又は基板が移動可能である。レーザビームは、例えば、当業者に周知のレンズシステムにより及び回転ミラーを含むことにより移動可能である。キャリアは、例えば、導電性粒子を含む接着剤が連続的にコートされた回転連続フィルムの形状であっても良い。基板は、例えば、XYテーブルを用いて、又は巻き戻し及び巻き取り装置と共に連続フィルムとして移動可能である。
【0023】
キャリアから基板へ転送される接着剤は、マトリクス材料に導電性粒子を含む。粒子は、所望の幾何学であり、そして所望の導電性材料、異なる導電性材料の混合物、導電性材料と非導電性材料の混合物から成る。適切な導電性材料は、例えば、カーボンブラック、グラファイト、グラフェンやカーボンナノチューブ等のカーボン又は金属である。好ましい金属は、ニッケル、錫、亜鉛、銅、銀、金、アルミニウム、チタン、パラジウム、プラチナ及びそれらの合金の合金、又はこれらの金属の少なくとも一種を含む金属混合物である。導電性粒子として特に好ましい材料は、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、錫、亜鉛及びカーボン、及びそれらの混合物である。
【0024】
導電性粒子は、0.001から100μm、好ましくは0.002から80μm及び特に好ましくは0.005から50μmの平均粒子径を有する。平均粒子径は、レーザ回折測定器、例えば Microtrac X100 インスツルメントで測定することができる。粒子径の分布は、それらの製造方法に依存する。一般に、径分布はいくつかの最大値も可能ではあるが、ただ一つの最大値を持つ。特別にタイトなパッキングを達成するために、異なる粒子径を用いるのが好ましい。例えば、1μm以上の平均粒子径を持つ粒子が、100nm以下の平均粒子径を持つナノ粒子と混ぜることが可能である。
【0025】
粒子は、代替的に第1の金属と第2の金属を含んでも良い。ここで、第2の金属は、第1の金属又は1種以上の他の金属との合金の形である。粒子は2種の異なる合金を含んでも良い。
【0026】
粒子の選択に加えて、粒子の形状もコーティング後の接着剤の特性に影響を及ぼす。形状に関しては、当業者に周知の様々な変化が可能である。粒子の形状は、例えば、針状、円筒状、小板状又は球状である。これらの粒子形状は理想的な形状を構成する。そして、例えば、製造の結果として実際の形状はそれらの形状から多かれ少なかれ変化する。例えば、本発明の明細書中では、滴状の粒子は理想的な球状から実際に変位している。
【0027】
異なる粒子形状の適切な粒子は商業上入手できる。
【0028】
粒子の混合物を使用する場合、個々の混合パートナーは異なる形状及び/又は粒子径を有する。異なる粒子径及び/又は粒子形状のただ一種の粒子の混合物を用いることも可能である。異なる粒子形状及び/又は粒子径の場合、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、錫、亜鉛及びカーボン、及びこれらの混合物が好ましい。
【0029】
粒子形状の混合物を使用する場合、球状の粒子と小板状の粒子の混合物が好ましい。一つの実施の形態では、例えば、球状の銀の粒子が、小板状の銀の粒子及び/又は他の形状のカーボン粒子と共に使用される。他の実施の形態では、球状の銀の粒子が小板状のアルミニウム粒子と混合される。
【0030】
導電性粒子は、接着剤が塗布される半導体材料上の接点として、好ましくは同一の材料から成る又は含む。
【0031】
乾燥した被膜の総合質量に対して、導電性粒子の割合は、20から100質量%の範囲内である。粒子の割合の好ましい範囲は、乾燥した接着剤の総合質量に対して50から95質量%である。
【0032】
適切なマトリクス材料は、例えば、天然及び合成ポリマ及びそれらの誘導体、天然樹脂及び合成樹脂及びそれらの誘導体、天然ゴム及び合成ゴム等である。これらは、化学的又は物理的に、例えば空気硬化、照射硬化又は温度硬化され得るが、される必要はない。
【0033】
マトリクス材料は好ましくは、ポリマ又はポリマ混合物である。
【0034】
マトリクス材料として好ましいポリマは、アクリレート樹脂;アルキルビニルアセテート;アルキル−ビニルアセテートコポリマ、特にメチレン−ビニルアセテート、エチレン−ビニルアセテート、ブチレン−ビニルアセテート;アルキレン−ビニル塩化コポリマ;アミノ樹脂;アルデヒド樹脂及びケトン樹脂;エポキシアクリレート;エポキシ樹脂;変性エポキシ樹脂、例えば、二官能性又は多官能性ビスフェノールA又はビスフェノールF樹脂、エポキシ−ノボラック樹脂、ビニルエーテル、エチレン−アクリル酸コポリマ;炭化水素樹脂;MABS(アクリレート単位を含む透明ABS);メラミン樹脂、無水マレイン酸コポリマ;メタクリレート;天然ゴム;合成ゴム;塩化ゴム;天然[樹脂;フェノール樹脂;フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド;ポリイミド;ポリブチレンテレフタレート(PBT);ポリカーボネート(例えば、Bayer AG の Makrolon(登録商標));ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリフェニレンオキシド(PPO);ポリビニル化合物、特にポリビニルクロライド(PVC)PVCコポリマ、PVdC、ポリビニルアセテート及びそれらのコポリマ、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルエーテル、ポリビニルアクリレート及び溶液中の及び分散液としてのポリビニルメタクリレート、及びそれらのコポリマ、ポリアクリレート及びポリスチレンコポリマ;イソシアネートと未架橋の又は架橋したポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;1−及び2−成分シリコン樹脂及びシリコンゴム、スチレン−アクリルコポリマ;スチレン−ブタジエンブロックコポリマ(例えば、BASF AG の Styroflex(登録商標)又はStyrolux(登録商標)、CPC の K-Resin(登録商標));SIS;トリアジン樹脂、ビスマレインイミド−トリアジン樹脂(BT)、シアネートエステル樹脂(CE)である。2種以上のポリマの混合物もマトリクス材料を形成し得る。
【0035】
マトリクス材料として特に好ましいポリマは、アクリレート、アクリレート樹脂、メタクリレート、メタクリレート樹脂、メラミン及びアミノ樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリビニルエーテル、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリスチレンコポリマ、ポリスチレンアクリレート、スチレン−ブタジエンブロックコポリマ、スチレン−イソプレンブロックコポリマ、合成ゴム、フェノキシ樹脂、アルキレン−ビニルアセテート及びビニル塩化コポリマ、ポリアミド、及びそれらのコポリマ、及びシリコンゴム及びシリコン樹脂である。
【0036】
乾燥接着剤の総合質量に対して、マトリクス材料として使用する有機バインダ成分の比率は、0.01から60質量%である。好ましくは、0.1から45質量%、より好ましくは0.5から35質量%である。
【0037】
導電性粒子とマトリクス材料を含む接着剤をキャリアに塗布できるようにするため、溶媒又は溶媒混合物が付加的に接着剤に加えられる。特定の塗布工程で接着剤の粘度を適切にするためである。適切な溶媒は、例えば、脂肪族及び芳香族炭化水素(例えば、n−オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチルブタノールアミルアルコール)、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール、アルキルエステル(例えば、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、イソプロピルアセテート)、アルコキシアルコール(例えば、メトキシプロパノール、メトキシブタノール、エトキシプロパノール)、アルキルベンゼン(例えば、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン)、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、アルキルグリコールアセテート(例えば、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)、ジアセトンアルコール、ジグリコールジアルキルエーテル、ジグリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジグリコールアルキルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジオキサン、ジプロピレングリコール及びエーテル、ジエチレングリコール及びエーテル、DBE(二塩基酸エステル)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、エチレンクロライド、エチレングリコール、エチレングリコールアセテート、エチレングリコールジメチルエステル、クレゾール、ラクトン(例えば、ブチロラクトン)、ケントン(例えば、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK))、メチルジグリコール、メチレンクロライド、メチレングリコール、メチルグリコールアセテート、メチルフェノール(オルソ−、メタ−、パラ−クレゾール)、ピロリドン(例えば、N−メチル−2−ピロリドン)、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、カーボンテトラクロライド、トルエン、トリメチロールプロパン(TMP)、芳香族炭化水素及び混合物、脂肪族炭化水素及び混合物、モノテルペンアルコール(例えば、テルピネオール)、ミス及びこれらの溶媒の二種以上の混合物である。
【0038】
好ましい溶媒は、アルコール(例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール)、アルコキシアルコール(例えば、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール)、ブチロラクトン、ジグリコールジアルキルエーテル、ジグリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、エステル(例えば、エチルアセテート、ブチルアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、ジグリコールアルキルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、DBE、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、ハイドロカーボン(例えば、シクロヘキサン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン)、N−メチル−2−ピロリドン、水及びこれらの混合物である。
【0039】
液体のマトリクス材料の場合、塗布工程中の温度、又は溶媒と温度の組み合わせにより特定の粘度を代替的に確立することができる。
【0040】
接着剤中の溶媒の比率は、未乾燥及び未硬化の接着剤の総合質量に対して、1から50質量%、好ましくは2から20質量%、特別には5から15質量%の範囲内である。
【0041】
接着剤は更に分散剤成分を含んでも良い。これは一種以上の分散剤から成る。
【0042】
原則として、分散で使用するために当業者に周知で従来技術に述べられている全ての分散剤は適切である。好ましい分散剤は、界面活性剤又は界面活性剤混合物であり、例えば、アニオン性の、カチオン性の、両極性の又は非イオン性の界面活性剤である。カチオン性の及びアニオン性の界面活性剤は、例えば、“Encyclopedia of Polymer Science and Technology”, J. Wiley & Sons (1966), volume 5, pages 816 -818 、“Emulsion Polymerisation and Emulsion Polymers”, editors: P. Lovell and M. El-Asser, Verlag Wiley & Sons (1977), pages 224-226 に述べられている。しかし、分散剤として、顔料親和性のアンカー基を有し当業者に周知のポリマを使用することも可能である。
【0043】
分散剤は、未乾燥及び未硬化の接着剤の総合質量に対して、0から50質量%の範囲で使用することができる。比率は好ましくは、0.1から25質量%、より好ましくは0.2から10質量%である。
【0044】
もし、キャリア上の接着剤中の導電性粒子自身が、例えばレーザのエネルギ源のエネルギを十分に吸収しない場合は、接着剤に吸収剤を加えても良い。使用するレーザビーム源により、レーザ照射を効率良く吸収する種々の吸収剤又は他の吸収剤の混合物を選択する必要がある。吸収剤は、接着剤に添加しても良く、又はキャリアと接着剤との間に吸収剤を含む分離した吸収層を付加的に塗布しても良い。後者の場合、エネルギは吸収層で局所的に吸収され、そして熱伝導により接着剤に移動する。
【0045】
レーザ照射に関する適切な吸収剤は、レーザの波長領域で高い吸収率を有する。近赤外及び電磁気スペクトルの長波VIS領域で高い吸収率を有することが特別に好ましい。そのような吸収剤は、例えばNd:YAGレーザ等の高出力固体レーザからの照射、及びIRダイオードレーザからの照射を吸収するのに特に適切である。レーザ照射の適切な吸収剤の例は、赤外スペクトル領域で強力に吸収する色素である。例えば、フタロシアニン、ナフタロシアニン、シアニン、キノン、ジチオレン等の金属錯体色素、又はフォトクロミック色素である。
【0046】
加えて、適切な吸収剤は、無機顔料、特に、酸化クロム、酸化鉄、鉄酸化物水和物等の集中的に着色された無機顔料、又は例えばカーボンブラック、グラファイト、グラフェン、又はカーボンナノチューブの形態のカーボンである。
【0047】
前述の吸収剤に加えて、吸収剤としてナノ粒子、特に、金属ナノ粒子を使用することも可能である。
【0048】
本発明の明細書中でナノ粒子は、粒子サイズが1から800nmの範囲内の粒子を意味するものと解される。吸収剤として使用されるナノ粒子は、一般に3から800nmの範囲内の粒子サイズを持つ。
【0049】
レーザ照射の吸収剤として使用され得るナノ粒子は、特に、銀、金、プラチナ、パラジウム、タングステン、ニッケル、錫、鉄、インジウム錫酸化物、タングステン酸化物、炭化チタン又は窒化チタンのナノ粒子である。
【0050】
銀、金、プラチナ、パラジウム、タングステン、ニッケル、錫、鉄、インジウム錫酸化物又は炭化チタンを使用する一つの利点は、それらの材料は導電性であることである。ナノ粒子はこのように付加的に導電性粒子として作用し、非導電性の吸収剤を含む接着剤に比べて接着剤の導電性が向上する。
【0051】
ナノ粒子として特に好ましい材料は銀である。
【0052】
一つの実施の形態では、ナノ粒子は球状粒子である。本発明の明細書中で球状粒子は、粒子は基本的に球状形状であるが実際の粒子は理想的な球状形状から変位を有していても良いことを意味する。例えば、実際の粒子は、切り捨てられた形状又は敵状であっても良い。製造の結果生じる理想的な球状形状からの他の変位であっても構わない。
【0053】
ナノ粒子が球状粒子である場合、それらは好ましくは2から100nmの範囲の直径を有する。赤外レーザ、特に波長1050nmのレーザを使用する場合、2から50nmの粒子径を持つ球状ナノ粒子は特別に適することが分かっている。球状粒子の直径は、より好ましくは6nmの領域である。
【0054】
ナノ粒子が球状粒子の形態で使用された場合、接着剤中のナノ粒子の比率は、接着剤中の導電性粒子の質量に対して特別には0.5から12質量%の範囲である。
【0055】
他の実施の形態では、ナノ粒子はエッジ長が15から1000nm、高さが3から100nmのプリズムである。プリズムの形状は変えることができる。例えば、形状は、他の要因の中で、使用するレーザ照射に依存する。プリズムの基本は、例えば、三角形又は5角形等の何れかの多角形の形状であっても良い。ナノ粒子として使用するプリズムは、使用するレーザの波長に一致する吸収特性を持つプラズモン共振器である。レーザの波長へのマッチングは、例えば、プリズムのエッジ長及び断面積により為される。異なる断面積及び異なるエッジ長は、異なる吸収特性をそれぞれ有する。プリズムの高さも吸収特性に影響を及ぼす。
【0056】
ナノ粒子としてプリズムが使用された場合、接着剤中にプリズムの形態で存在するナノ粒子の比率は、接着剤中の導電性粒子の質量に対して、3から10質量%の範囲が好ましい。
【0057】
レーザ照射に吸収剤として球状粒子又はプリズムを使用することに加えて、球状粒子とプリズムの両方を使用することも代替的に可能である。プリズムに対して球状粒子のどんな所望の比率でも可能である。プリズムの形態のナノ粒子の比率を大きくすると、接着剤中のナノ粒子の比率が低くなる。
【0058】
ナノ粒子は、製造工程中に、特に、適切な添加剤により転送のために安定化される。接着剤の調製中に、添加剤は取り除かれない。それ故、それらは接着剤中に存在する。一般に、安定化のための添加剤の比率は、ナノ粒子の質量に対して15質量%以下である。ナノ粒子を安定化するために使用する添加剤は、例えば、ドデシルアミン等の長鎖アミンである。ナノ粒子を安定化させるための適切な更なる添加剤は、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、オレイン酸及びポリエチレンイミンである。
【0059】
レーザ照射の特別に適切な吸収剤は、細かく分割したカーボンタイプ及び細かく分割したランタン六ホウ化物(LaB6)及び金属ナノ粒子である。
【0060】
一般に、接着剤中の導電性粒子の質量に対して0.005から20質量%の吸収剤が使用される。好ましくは、接着剤中の導電性粒子の質量に対して0.01から15質量%、特に好ましくは0.1から12質量%である。
【0061】
添加する吸収剤の量は、各々の場合、所望する接着剤層の特性に応じて、当業者により選択される。これに関連して、当業者は、添加する吸収剤はレーザによる接着剤の転送速度及び効率に影響を及ぼすだけでなく、他の特性、例えばキャリ上での接着剤の接着、硬化、又は導電率に影響を及ぼすことを考慮に入れるべきである。
【0062】
粒子を含む接着剤を転送するのに必要なエネルギは、使用するレーザ及び/又は接着剤の上に塗布又は接着剤の反対側に塗布され、製造されるキャリアの材料に依存する。必要ならば、2つの方法の違いを組み合わせて使用することも可能である。
【0063】
キャリアから基板への接着剤の一部の転送は、片側又は両側で実行できる。この場合、転送は接着剤がコートされた両側を連続的に含んでも良い。例えば、2つのレーザ源と接着剤が塗布された2つのキャリアを用いて両側から同時に転送することができる。
【0064】
生産性を向上するため、1つ以上のレーザ源を使用することができる。
【0065】
本発明の方法の好ましい実施の形態では、キャリアから基板への接着剤の転送は、キャリアに接着剤を塗布した後に行われる。塗布は当業者に周知の塗布方法により行われる。そのような塗布方法は、例えば、カーテンキャスティング等のキャスティング、ローラー塗り、拡散、ナイフコーティング、ブラッシング、噴霧、浸漬等である。代替的に、粒子を含む接着剤は、所望の印刷方法によりキャリアに印刷される。接着剤が印刷される印刷方法は、例えば、ローラー又はアーク印刷方法である。例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソグラフィック印刷、凸版印刷、パッド印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等である。更に、当業者に周知の印刷方法も有用である。
【0066】
好ましい実施の形態では、接着剤は、キャリア上で未乾燥及び/又は完全に硬化していない。しかし、基板上にウエット状態で転送される。これにより、例えば、キャリア上の接着剤が定期的に新しくされる連続プリンティングユニットの使用を可能にする。この方法は、非常に高い生産性を達成する。連続的にインクを補充する印刷ユニットは、当業者に周知であり、例えば、DE-A 37 02 643 に記載されている。粒子が接着剤から出て沈降するのを防ぐため、接着剤は、キャリに塗布する前に、貯留槽容器内で撹拌させる及び/又は循環させることが好ましい。加えて、接着剤の粘度を確立するために、接着剤が入っている貯留槽容器の温度を制御することが好ましい。
【0067】
好ましい実施の形態では、キャリアは連続ベルトとして構成されている。それは特定のレーザ照射に関しては透明であり、例えば内部輸送ローラーにより動くようになっている。代替的に、キャリアはシリンダとして設計されても良い。シリンダは、内部輸送ローラーにより動くことが可能であり、又はシリンダは直接にドライブされる。キャリアは、粒子を含む接茶s九剤が塗布される。塗布は、当業者に周知の方法、例えば、内部に接着剤が入っている貯留槽容器からローラー又はローラーシステムによって為される。ローラー又はローラーシステムの回転によりキャリアに塗布される接着剤が取り上げられる。コーティングローラーを通過するキャリアの動きにより、キャリアに全領域接着層が塗布される。接着剤を基板に転送するため、レーザビーム源が連続ベルト又はシリンダの内部に配置される。接着剤を転送するため、レーザビームは、接着剤層に焦点が絞られ、レーザビームに対して透明なキャリアを通して、接着剤に当てられる。そして、レーザビームが当てられた部分の接着剤が基板に転送される。そのような印刷ユニットは、例えば、DE-A 37 02 643 に記載されている。接着剤は、少なくとも一部分の接着剤の溶媒を揮発させるレーザビームのエネルギにより、及び接着剤の転送を形成する気体バブルにより転送される。キャリアから基板に転送されなかった接着剤は次のコーティング工程で最利用可能である。
【0068】
レーザによる転送手段により基板に転送される接着剤層の厚さは、0.01と50μmの間、更に好ましくは0.05から30μmの間、特に好ましくは0.1から20μmの間で変えられる。接着剤層は、全表面に亘り、又は構造化された方法で塗布することが可能である。
【0069】
キャリアへの接着剤の構造化された塗布は、特定の構造を数多く製造する場合に有利であり、構造化された塗布はキャリアへ塗布すべき接着剤の量を減らすことできる。これにより、より安く製造することが可能である。
【0070】
基板上に機械的に安定した、構造化された又は全領域の接着層を得るために、構造化された又は全領域の接着層に塗布される接着剤は、物理的に乾燥している又は塗布の後に硬化されることが望ましい。マトリクス材料に依存して、乾燥又は硬化は、例えば、熱、光(UV/可視)及び/又は例えば、赤外線照射等の照射、電子ビーム、γ線照射、X線照射、マイクロ波等の作用により実行される。硬化作用を誘導するため、適切な活性剤の添加が必要となる場合がある。硬化は、様々な工程との結合、例えば、UV照射と加熱を組み合わせること等により達成することも可能である。硬化工程の組み合わせは、同時に又は逐次達成することができる。例えば、形成される構造がもはや流れ出ないように、UV又はIR照射は最初、単に層の部分的な硬化又は部分的な乾燥に使用することができる。その後、層は熱作用により更に硬化又は乾燥させることができる。
【0071】
基板への導電性接着剤の構造化された塗布に関する本発明の方法は、連続で、半連続で、又はバッチ式モードで実行することが可能である。方法の個々の工程を連続で、他の工程をバッチ式で行うことも可能である。
【0072】
構造化された表面の製造に加えて、本発明の方法により基板に多数の層を逐次塗布することも可能である。例えば、第1の導電性表面を製造する工程の後に、第2の構造化された又は全領域導電性表面、例えば、導電性粒子の他の組成を塗布するのに上述した印刷工程を実施することができる。
【0073】
第3の工程で、接着剤は電気的接続体に接着される。電気的接続体は、光起電力モジュールを形成するために多数の太陽電池を接続する役割を果たす。電気的接続体は、例えば、接続ワイヤである。一般に、太陽電池の前面側の接点は、各々隣接する太陽電池の背面側の接点に接続されている。しかし、太陽電池の接続に適切な他のどんな電気的接続体も可能である。
【0074】
電気的接続子に接着剤を接着した後、接着剤は十分に硬化される。これにより、電気的接続子の太陽電池との安定且つ恒久的な結合が達成される。完全な硬化は、前述したように、例えば光、熱又は照射の作用により為される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むことを特徴とする太陽電池間の導電性接着剤の調製方法。
(a)導電性粒子を含む接着剤を、レーザをキャリアに照射することによりキャリアから基板に転送する工程、
(b)基板に転送された接着剤を、接着剤層を形成するために部分的に乾燥及び/又は硬化する工程、
(c)電気的接続体に接着剤を接着する工程、
(d)接着剤層を硬化する工程。
【請求項2】
工程a)の転送の前に接着剤はキャリアに塗布されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
接着剤は被覆工程によりキャリアに塗布されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
被覆工程は、印刷、キャスティング、ローリング又はスプレー工程であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
レーザは、150から10600nmの範囲の波長を有するレーザビームを発生することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
レーザは、固体レーザ、ファイバレーザ、ダイオードレーザ、気体レーザ又はエキシマレーザであることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
接着剤は、接着剤層を形成するために基板の上面と底面に塗布されることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
キャリアは、使用するレーザ照射に対して透明である、固質又は柔軟なプラスチック又はガラスであることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載に方法を達成すための接着剤であって、接着剤の固形成分の質量に対して、20から98質量%の導電性粒子、0.01から60質量%のマトリクス材料として使用する有機結合成分、接着剤中の導電性粒子の質量に対して0.005から20質量%の吸収剤、未乾燥及び未硬化の接着剤の総合質量に対して、0から50質量%の分散剤、1から20質量%の溶媒を含むことを特徴とする接着剤。
【請求項10】
導電性粒子は、少なくとも1種の金属及び/又は炭素を含むことを特徴とする請求項9に記載の接着剤。
【請求項11】
金属は、銀、金、アルミニウム、銅、亜鉛、錫、プラチナ、パラジウム、ニッケル及びチタンから成る群から選ばれることを特徴とする請求項10に記載の接着剤。
【請求項12】
導電性粒子は、異なる粒子形状を有することを特徴とする請求項9から11の何れか1項に記載の接着剤。
【請求項13】
吸収剤は、炭素、ランタン、六ホウ化物及び/又は銀、金、プラチナ、パラジウム、タングステン、ニッケル、錫、鉄、インジウムスズ酸化物、酸化タングステン、炭化チタン又は窒化チタンのナノ粒子から選ばれることを特徴とする請求項9から12の何れか1項に記載の接着剤。
【請求項14】
ナノ粒子は、球状粒子又はプリズム形状であることを特徴とする請求項13に記載の接着剤。
【請求項15】
カーボンは、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン又はカーボンナノチューブの形状であることを特徴とする請求項13又は14に記載の接着剤。

【公表番号】特表2013−519782(P2013−519782A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553429(P2012−553429)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050641
【国際公開番号】WO2011/101788
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】