説明

太陽電池電極用導体ペースト

本発明の目的は、電極内で直列抵抗などの優れた電気特性を得ることのできる導体ペーストを提供することにある。本発明の一態様は、導電性粉末と;ガラスフリットの重量パーセント(wt%)に基づいて、8〜26wt%のSiO2と、0.1〜5wt%のAl23と、73〜90wt%の鉛化合物(なおフッ化鉛は、鉛化合物の総重量に基づいて5〜28wt%の範囲で含まれている)とを含むガラスフリットと;有機媒質と、を含む導体ペーストに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、太陽電池デバイス用の導体において使用するための導体ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン太陽電池の電極には一般に、太陽電池の電気特性を促進するために低い電気抵抗が求められる。
【0003】
米国特許公開第2006/0102228号明細書は、混合物から作製された太陽電池接点において、混合物が固体部分と有機部分とを含み、固体部分が約85〜約99wt%の銀および約1〜15wt%のガラスを含み、このガラス成分が約15〜約75mol%のPbO、約5〜約50mol%のSiO2を含み、好ましくはB23を全く含んでいない、太陽電池接点を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、太陽電池内に形成された電極に対し優れた電気特性、例えば電極内の直列抵抗を付与することのできる導体ペーストを提供すること、そしてこの導体ペーストから形成された電極を有する太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、太陽電池電極用導体ペーストにおいて、導電性粉末と;ガラスフリットの重量パーセント(wt%)に基づいて、8〜26wt%のSiO2と、0.1〜5wt%のAl23と、73〜90wt%の鉛化合物(なお鉛化合物はその総重量に基づいて5〜28wt%のフッ化鉛を含んでいる)とを含むガラスフリットと;有機媒質と、を含む導体ペーストに関する。
【0006】
本発明の別の態様は、太陽電池電極の製造方法において、半導体基板を用意(提供)するステップと;半導体基板上に導体ペーストを適用(塗布)するステップであって、導体ペーストが、導電性粉末と;ガラスフリットの重量パーセント(wt%)に基づいて、8〜26wt%のSiO2と、0.1〜5wt%のAl23と、73〜90wt%の鉛化合物(なお鉛化合物はその総重量に基づいて5〜28wt%のフッ化鉛を含んでいる)とを含む1つ以上のガラスフリットと;有機媒質とを含んでいるステップと;導体ペーストを焼成するステップと、を含む製造方法に関する。本発明の一態様は、この方法によって作製された太陽電池電極に関する。本発明の一態様は、焼成に先立ち太陽電池電極が導体ペーストを含んでいる、太陽電池電極を含む太陽電池電極に関する。
【0007】
本発明の一態様は、太陽電池電極用導体ペーストにおいて:導電性粉末と;ガラスフリットの重量パーセント(wt%)に基づいて、8〜26wt%のSiO2と、0.1〜5wt%のAl23と、1〜5元素wt%のフッ素とを含むガラスフリットと;有機媒質と、を含む導体ペーストに関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の太陽電池電極用導体ペーストは、導電性粉末、ガラスフリットおよび有機媒質を含む。導体ペーストについて、この導体ペーストで作られた太陽電池電極の製造方法と共に以下で記述する。
【0009】
ガラスフリット
本明細書中で記述されるペースト中で使用されるガラスフリットは、導電性粉末の焼結を促進し、同様に基板に対する電極の結合を容易にする。
【0010】
ガラスフリットとも呼ばれるガラス組成物は、本明細書中で、いくつかの成分(元素成分とも呼ばれる)の百分率を含むものとして記述されている。具体的には、この百分率は、本明細書で記述されているようにその後加工されてガラス組成物を形成した出発物質中に使用された成分の百分率である。このような用語は当業者にとって慣習的なものである。換言すると、組成物はいくつかの成分を含み、これらの成分の百分率は、対応する酸化物形態の百分率として表現される。ガラス化学の当業者により認識されている通り、揮発性種の一部分は、ガラス製造プロセス中に放出されるかもしれない。揮発性種の一例は酸素である。
【0011】
焼成ガラスから出発する場合、当業者は、本明細書中で記述されている出発成分(元素成分)の百分率を、誘導結合プラズマ発光分析(ICPES)、誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP−AES)などを含む(ただしこれらに限定されない)当業者にとって公知の方法を用いて計算してよい。さらに、以下の例示的技術を使用してよい:すなわち、X線蛍光分光法(XRF);核磁気共鳴分光法(NMR);電子常磁性共鳴分光法(EPR);メスバウアー分光法;電子マイクロプローブエネルギー分散分光法(EDS);電子マイクロプローブ波長分散分光法(WDS);カソードルミネッセンス(CL)。
【0012】
本明細書中に記述されているガラス組成物は、表1に列挙されているものも含めて非限定的なものである。ガラス化学の当業者であれば、ガラス組成物の所望の特性を実質的に変化させずに追加の材料によるわずかな置換を行うことができる、ということが企図されている。例えば、重量%でP250〜3、GeO20〜3、V250〜3などのガラス形成剤の置換を個別にまたは組合せた形のいずれかで使用して類似の性能を達成してよい。例えば1つ以上の中間酸化物、例えばTiO2、Ta25、Nb25、ZrO2、CeO2およびSnO2をガラス組成物中に存在するその他の中間酸化物(すなわちAl23、CeO2、SnO2)に置換してもよい。
【0013】
一つの態様は、フッ素塩、フッ化物、金属酸フッ化物化合物などを含めた(ただしこれらに限定されない)1つ以上のフッ素含有成分を含むガラスフリット組成物に関する。このようなフッ素含有成分としてはBiF3、AlF3、NaF、LiF、KF、CsF、ZrF4および/またはTiF4が含まれるがこれらに限定されない。
【0014】
一実施形態において、本明細書中で記述されているガラスフリットは、ガラスフリットの総重量に基づいて8〜26wt%の二酸化ケイ素(SnO2)、0.1〜5wt%の酸化アルミニウム(Al23)そして73〜90wt%の鉛(Pb)化合物を含む。鉛化合物は、その総重量に基づいて5〜28wt%のフッ化鉛を含む。一実施形態において、SiO2は10〜25wt%であり、さらなる一実施形態において、SiO2は12〜20wt%である。一実施形態において、Al23は0.1〜3wt%であり、さらなる実施形態において、Al23は0.2〜2wt%である。
【0015】
本明細書中で使用されている「鉛化合物」とは、鉛を含む化合物を意味する。非限定的な実施形態において、鉛化合物は鉛および別の元素、例えば酸素またはフッ素を含む。
【0016】
非限定的な実施形態において、鉛化合物は、他のガラス形成成分との混合物中で800〜1400℃のピーク温度で加熱することによって溶融してもよい。一実施形態において、鉛化合物は、酸化鉛(PbO)、二酸化鉛(PbO2)、酸化鉛(IV)(PbO4)、四酸化鉛(Pb34)、フッ化鉛(I)(PbF)、フッ化鉛(II)(PbF2)、フッ化鉛(IV)(PbF4)、臭化鉛(II)、塩化鉛(PbCl2)、臭化鉛(II)(PbBr2)、硝酸鉛(II)(Pb(NO32、硝酸鉛(IV)(Pb(NO34、炭酸鉛(PbCO3)およびそれらの混合物を含む(ただしこれらに限定されない)群から選択されてもよい。一実施形態において、鉛化合物は、PbOおよびPbF2を含む群から選択されてもよい。一実施形態において、鉛化合物は、ガラスフリットの少なくとも73wt%であってよく、さらなる実施形態において、鉛化合物は、ガラスフリットの少なくとも78wt%であってもよい。一実施形態において、鉛化合物は、ガラスフリットの88wt%未満であってよく、さらなる実施形態において、鉛化合物は、ガラスフリットの85%未満であってもよい。一実施形態において、鉛化合物を含むガラスフリットは、表3に示される通り、比較的高いTsを有してもよい。
【0017】
本明細書中で記述されている「フッ化鉛」は、鉛とフッ素を含む化合物を意味する。非限定的な実施形態において、フッ化鉛は、他のガラス形成成分との混合物中で800〜1400℃のピーク温度で加熱することによって溶融してもよい。一実施形態において、フッ化鉛は、PbF、PbF2、PbF4およびその混合物を含む(但しこれらに限定されない)群から選択されてもよい。一実施形態において、フッ化鉛はPbF2であってもよい。一実施形態において、フッ化鉛は鉛化合物の少なくとも7wt%であってよく、さらなる実施形態において、フッ化鉛は鉛化合物の少なくとも10wt%であってもよい。一実施形態において、フッ化鉛は鉛化合物の20wt%未満であってよく、さらなる実施形態において、フッ化鉛は鉛化合物の18wt%未満であってもよい。
【0018】
本明細書中で記述されているガラス組成物について実施された実験において、鉛化合物に基づいて約15wt%のフッ化鉛を含むガラスフリットの多くが、0〜800℃での焼成時点で非晶質(amorphous)ガラスの安定性を示すこと(結晶性の不在)が発見された。
【0019】
別の実施形態において、本明細書中の1つまたは複数のガラスフリット組成物は、B23、Na23、Li2O、ZrO2、CuO、TiO2およびBi23からなる群から選択された第2の成分セットを1つ以上含んでいてもよい。一実施形態において、1つまたは複数のガラスフリット組成物は、B23およびZrO2のうちの1つ以上を含んでいてもよい。一実施形態において、B23は、ガラスフリットの0.5〜5.0wt%;1.0〜3.0wt%;または1.2〜2.5wt%であってもよい。一実施形態において、ZrO2はガラスフリットの0.1〜5.0wt%;0.2〜2.0wt%;または0.2〜1.0wt%であってもよい。
【0020】
本明細書中で使用されているガラス組成物が、表1中に合計ガラス組成物重量パーセントで示されている。別段の明記のないかぎり、本明細書中で使用されているwt%は、ガラス組成物のwt%のみを意味する。酸化物およびフッ化物塩ベースで記載された鉛化合物含有ガラスの試料が表1に示されている。
【0021】
【表1】

【0022】
ガラス組成物は、代替的に、表2に見られるように、ガラス組成物の元素のwt%単位で記載することができる。一実施形態では、ガラスは、一部には以下の通りであってもよい:
ケイ素:1〜15元素wt%、1〜10元素wt%、または5〜9元素wt%、
アルミニウム:0.1〜1.0元素wt%、0.1〜0.75元素wt%、または0.2〜0.55元素wt%、
フッ素:0〜5元素wt%、1〜5元素wt%、または1.5〜3.5元素wt%、
鉛:45〜85元素wt%、60〜80元素wt%、または70〜80元素wt%、
ビスマス:0〜10元素wt%、1〜9元素wt%、5〜7元素wt%、
ジルコニウム:0〜1元素wt%、0〜0.5元素wt%、または0.25〜0.35元素wt%、
ホウ素:0〜3元素wt%、0〜1元素wt%、または0.25〜0.75元素wt%、
チタン:0〜4元素wt%、0.5〜4元素wt%、または1〜3元素wt%、
リチウム:0〜0.25元素wt%、0.01〜0.1元素wt%、または0.05〜0.1元素wt%、
ナトリウム:0〜0.25元素wt%、0.01〜0.1元素wt%、または0.05〜0.1元素wt%、または
カリウム:0〜0.25元素wt%、0.01〜0.1元素wt%、または0.05〜0.1元素wt%。
【0023】
この実施形態において、アルカリ元素(Na、LiおよびKを含むがこれらに限定されない)の合計量は、0〜0.25元素wt%、0.01〜0.1元素wt%または0.05〜0.111元素wt%であってもよい。
【0024】
元素ベースで記載された鉛化合物含有ガラスの試料が、表2に示されている。
【0025】
【表2】

【0026】
別の実施形態において、ガラスフリットは300〜450℃の範囲にある軟化点を有していてもよい。ガラスフリットは、435℃未満または400℃未満の軟化点を有していてもよい。本明細書では、「軟化点」は示差熱分析(DTA)により決定される。DTAによりガラス軟化点を決定するためには、試料ガラスを磨砕し、基準材料と共に炉内に導入して毎分5〜20℃の恒常な速度で加熱する。2つの間の温度差を検出して、材料からの発熱および熱吸収を調査する。一般に、最初の発熱ピークはガラス転移温度(Tg)上にあり、第2の発熱ピークはガラス軟化点(Ts)上にあり、第3の発熱ピークは結晶点上にある。ガラスフリットが非結晶(noncrystalline)ガラスである場合、DTAにおいて結晶点は出現しないと考えられる。
【0027】
別の実施形態では、ガラスフリットは0〜800℃での焼成時点で非結晶ガラスであってもよい。本明細書中、「非結晶ガラス」は、上述の通り、DTAにより決定される。第3の発熱ピークは、非結晶ガラスのDTAにおいて0〜800℃での焼成時点で出現しないと考えられる。
【0028】
本明細書中で記述されているガラスフリットは、従来のガラス製造技術により製造可能である。以下の手順は一例である。材料は秤量され、次に所望の割合で混合され、炉内で加熱されて白金合金坩堝内でメルトを形成する。当該技術分野において周知であるように、加熱はピーク温度(800〜1400℃)まで、そしてメルトが完全に液体かつ均質になるような時間行われる。溶融ガラスは次に、逆転ステンレス鋼ローラ間で急冷されて厚み10〜15ミルのガラス小板を形成する。得られたガラス小板は次に、その50%体積分布が所望の目標値間(例えば0.8〜1.5μm)にある粉末を形成するように設定されて微粉砕される。ガラスフリット生産の当業者であれば、粉砕形態のガラスを製造するに適した水砕、ゾルゲル法、噴霧熱分解その他などの(ただしこれらに限定されない)代替的な合成技術を利用してもよい。本明細書中で記述されているガラスフリットの製造において有用なガラスの製造方法を開示する米国特許出願番号、米国特許出願公開第2006/231803号明細書および米国特許出願公開第2006/231800号明細書は、その全体が参照により本明細書に援用されている。
【0029】
当業者であれば、原料の選択によって、加工中にガラス中に取込まれるかもしれない不純物が意図的ではなく封入される可能性があるということを認識するであろう。例えば、不純物は数百〜数千ppmの範囲で存在するかもしれない。
【0030】
不純物の存在が、ガラス、厚いフィルム組成物または焼成されたデバイスの特性を改変することはないと考えられる。例えば、厚いフィルム組成物を含む太陽電池は、たとえその厚いフィルム組成物が不純物を封入している場合でも、本明細書中で記述されている効率性を有するかもしれない。
【0031】
導電性粉末
導体ペーストは、組成物を形成する機能相のための担体として作用する有機媒質内に分散した電気的機能性を有する粉末を含む。組成物は、有機相を焼失させ、無機結合剤相を活性化し、電気的機能特性を付与する目的で、焼成される。
【0032】
一実施形態において、導電性粉末は銀(Ag)を含んでいてもよい。別の実施形態において、導電性粉末は銀およびアルミニウム(Al)を含んでいてもよい。別の実施形態において、導電性粉末は、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Al、Pdのうちの1つ以上を含んでいてもよい。一実施形態において、導電性粉末は以下のもののうちの1つ以上を含んでいてもよい:(1)Cu、Au、Ag、Pd、Pt、AlおよびPd、(2)Cu、Au、Ag、Pd、Pt、AlおよびPdの合金、および(3)その混合物。
【0033】
一実施形態において、導電性粉末は、導電性を有しコーティングが施されたまたは施されていない銀粒子であってもよい。銀粒子にコーティングが施されている実施形態において、これらの銀粒子は少なくとも部分的に界面活性剤でコーティングされている。一実施形態において、この界面活性剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の塩、パルミチン酸の塩、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸およびリノレイン酸、ならびにその混合物からなる群から選択された1つ以上を含んでいてもよい。界面活性剤の対イオンは、水素、アンモニア、ナトリウム、カリウムおよびその混合物であってよいが、これらに限定されない。
【0034】
一実施形態において、平均粒子サイズは10ミクロン未満であってもよい。一実施形態において、平均粒子サイズは5ミクロン未満であってもよい。平均粒子サイズは、例えば0.1〜5ミクロンであってもよい。平均粒子サイズは、例えばMicrotrac S3500を用いてレーザー回折により測定されてもよい。
【0035】
導電性粉末は、導体ペーストの40〜90wt%であってもよい。銀は、組成物中の固体の90〜99wt%であってもよい(すなわち有機ビヒクルを除く)。
【0036】
有機媒質
一実施形態において、本明細書中で記述されている導体ペーストは、有機媒質を含んでいてもよい。例えば機械的混合により有機媒質と無機成分を混合して、印刷に適した稠度およびレオロジーを有する「ペースト」と呼ばれる粘性組成物を形成してもよい。
【0037】
有機媒質としては、多様な不活性粘性材料を使用することができる。有機媒質は、無機成分が適度の安定性を伴って分散可能である有機媒質であってもよい。媒質のレオロジー特性は、固体の安定した分散、スクリーン印刷のための適切な粘度およびチキソトロピー、基板及びペースト固体の適切な濡れ性、優れた乾燥速度および優れた焼成特性を含めた一部の適用特性を組成物に付与するかもしれない。本発明の導体ペースト中で使用される有機ビヒクルは、非水性不活性液体であってもよい。増粘剤、安定剤および/または他の一般的な添加剤を含んでいてもいなくてもよいさまざまな有機ビヒクルの使用が企図されている。有機媒質は、1つまたは複数の溶媒中の1つまたは複数のポリマーの溶液であってもよい。有機媒質は、同様に、界面活性剤などの1つ以上の成分を含んでいてもよい。ポリマーはエチルセルロースであってもよい。他の例示的ポリマーとしては、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、エチルセルロースとフェノール樹脂の混合物、低級アルコールのポリメタクリレートおよび、エチレングリコールモノアセテートのモノブチルエーテルまたはそれらの混合物が含まれる。本明細書中で記述されている導体ペースト中で有用である溶媒には、エステルアルコール類およびテルペン類例えばアルファまたはベータテルピネオールまたはそれらと他の溶媒、例えばケロシン、ジブチルフタレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ヘキシレングリコールおよび高沸点アルコール類およびアルコールエステル類との混合物が含まれる。さらなる実施形態において、有機媒質は、基板上への適用後の急速な硬化を促進するために揮発性液体を含んでいてもよい。
【0038】
一実施形態において、ポリマーは、有機媒質中に例えばこの有機媒質の8wt%〜11wt%の範囲で存在してもよい。本発明の導体ペーストは、有機媒質で、規定のスクリーン印刷可能な粘度に調整されてもよい。
【0039】
一実施形態において、導体ペースト中の有機媒質対分散中の無機成分の比率は、当業者により決定されるペーストの適用方法および使用される有機媒質の種類により左右されるかもしれない。一実施形態において、分散は、良好な濡れを得るために70〜95wt%の無機成分および5〜30wt%の有機媒質(ビヒクル)を含んでいてもよい。
【0040】
半導体デバイスの製造方法の説明
本発明の一実施形態は、太陽電池電極の製造において使用してよい導体ペーストに関する。半導体デバイスは、接合坦持半導体基板とその主表面上に形成された窒化ケイ素絶縁フィルムで構成された構造要素から、以下の方法によって製造されてもよい。
【0041】
太陽電池電極の製造方法には、半導体基板上に導体ペーストを適用するステップ(例えばコーティングおよび印刷)と、焼成ステップとが含まれる。半導体基板は、シリコン基板であってよい。半導体基板は絶縁フィルムを有していてよい。上述の通りの導体ペーストは、本発明の太陽電池電極の方法において使用されると考えられる。
【0042】
焼成ステップにおいて、ペーストはIR加熱タイプのベルト炉内で焼成されてもよい。焼成時間は、焼成温度およびベルト速度によって左右される。しかしながら、炉の入口と出口との間(IN−OUT)で計測される焼成時間は、40秒超、5分未満、あるいは3分未満であってもよい。半導体基板を5分超の間焼成すると、損傷が発生する場合がある。一実施形態において、焼成温度は、930℃未満、910℃未満または890℃未満であってもよい。930℃超の焼成温度は、半導体基板に対する損傷という結果をもたらすかもしれない。一実施形態において、導体ペーストは溶融し、絶縁フィルムに浸透し、焼結して、半導体基板との電気的接触をもたらす。
【0043】
一実施形態において、太陽電池電極の製造方法は同様に、接合坦持半導体基板とその主表面上に形成された絶縁フィルムで構成される構造要素から半導体デバイスを製造することを特徴としていてもよく、ここでこの絶縁層は酸化チタン窒化ケイ素、SiNx:H、酸化ケイ素、および酸化ケイ素/酸化チタンフィルムから選択され、この方法には、絶縁フィルム上に既定の形状および既定の位置で、絶縁フィルムと反応しその中に浸透してシリコン基板と電気的接点を形成する能力を有する金属ペースト材料を形成するステップが含まれる。酸化チタンフィルムは、半導体基板上にチタン含有有機液体材料をコーティングし焼成することによってかまたは熱CVDによって形成されてもよい。窒化ケイ素フィルムは典型的にPECVD(プラズマ化学気相成長法)によって形成される。本発明の一実施形態は、以上で記述した方法によって製造された太陽電池電極に関する。
【0044】
一実施形態において、本発明の1つまたは複数の導体ペーストから形成された電極は、酸素と窒素の混合気体で構成された雰囲気内で焼成されてもよい。この焼成プロセスは、有機媒質を除去し、導体ペースト中のAg粉末とガラスフリットを焼結させる。半導体基板は、例えば単結晶または多結晶シリコンであってもよい。
【0045】
本明細書中で記述されている導体ペーストと共に利用してもよい追加の基板、デバイス、製造方法は、その全体が参照により本明細書に援用されている米国特許出願番号、米国特許出願公開第2006/0231801号明細書、米国特許出願公開第2006/0231804号明細書、米国特許出願公開第2006/0231800号明細書中に記載されている。
【実施例】
【0046】
本発明は、以下の実施例により例証されるが、これらに限定されるわけではない。
【0047】
ガラス特性測定
本明細書中において以上で説明した通りDTAにより軟化点および結晶化度を決定するために、表1から選択された表3中のガラスフリットを特徴づけした。各ガラスフリットについてのTsを表3に示す。
【0048】
ペースト調製
ペースト調製は、以下の手順を用いて達成した:すなわち、適量の有機媒質、Ag粉末およびガラスフリットを秤量した。本明細書中で記述したガラスフリットを有機媒質に添加し、15分間混合した。Ag粉末は本発明の固体の主要部分であったことから、これをガラスフリットおよび有機媒質の混合物に増分的に添加して、より良好な濡れを確保した。充分に混合した時点でペーストを0〜400psiの漸増圧力で3本ロール練り機に繰り返し通した。ロールのギャップを1ミルに調整した。分散度を、練磨度(FOG)によって測定した。典型的なFOG値は一般に、導体について20/10以下であった。
【0049】
試験片の製造
上述の方法により得られた導体ペーストをSiウェハー(38mm×38mm)上に印刷した。ウェハー上に印刷した導体ペーストを対流オーブン内で5分間150℃で乾燥させた。その後IR加熱タイプのベルト炉内で焼結して電極を得た。焼結中のベルト速度は550cpmであった。IN−OUT焼結時間は60秒であった。焼結温度は、900℃未満であり、15秒間400〜600℃、6秒間600℃超であった。
【0050】
実験手順−効率
上述の方法にしたがって構築した太陽電池電極を、直列抵抗(Rs)について試験した。Rsを、以下の方法で試験した。本明細書中で記述されている方法にしたがって構築された太陽電池を、電気的特性を測定するために市販のIVテスター(ST−1000)内に置いた。IVテスター内のキセノン(Xe)アーク灯が、公知の強度で日光をシミュレートし、電池の正面に放射した。テスターは、およそ400の負荷抵抗設定値で電流(I)および電圧(V)を測定するために4接点方法を使用して、電池のI−V曲線を決定した。I−V曲線からRsを計算した。基準として従来の導体ペーストと接触させた電池で得た対応する値に、Rsを正規化した。表3中の「相対的Rs」を、(実施例のRs−基準のRs)/基準のRs×100によって計算した。
【0051】
結果
実施例1〜5において、太陽電池電極は比較的低いRsを得、一方比較例は比較的高いRsを得た。比較例4〜9中のガラスフリットは高いRsを太陽電池電極に与えている。81.53wt%のPbOとPbF(この81.53wt%のうち15.3wt%がPbF)を含む実施例2中のガラスフリットは、最低のRsを得た。実施例1〜5中の太陽電池電極の全てがより優れたRsを得、したがって、本発明で形成された電極を有する太陽電池はより優れた電気的特性を得ることができた。
【0052】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池電極用導体ペーストにおいて:
導電性粉末と;
ガラスフリットの重量パーセント(wt%)に基づいて、
8〜26wt%のSiO2と、
0.1〜5wt%のAl23と、
73〜90wt%の鉛化合物と、を含むガラスフリットであって、前記鉛化合物が、前記鉛化合物の総重量に基づいて5〜28wt%のフッ化鉛を含む、ガラスフリットと;
有機媒質と;
を含む太陽電池電極用導体ペースト。
【請求項2】
前記鉛化合物が酸化鉛およびフッ化鉛を含む、請求項1に記載の太陽電池電極用導体ペースト。
【請求項3】
前記フッ化鉛が、PbF、PbF2、PbF4およびその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の太陽電池電極用導体ペースト。
【請求項4】
前記ガラスフリットが、前記ガラスフリットの重量に基づいて9.45〜24.79wt%のPbF2を含む、請求項3に記載の導体ペースト。
【請求項5】
前記ガラスフリットが、前記ガラスフリットの重量に基づいて0.5〜5wt%のB23をさらに含む、請求項1に記載の太陽電池電極用導体ペースト。
【請求項6】
前記ガラスフリットが、前記ガラスフリットの重量に基づいて0.1〜5wt%のZrO2をさらに含む、請求項1に記載の太陽電池電極用導体ペースト。
【請求項7】
前記ガラスフリットが、300〜450℃の範囲にある軟化点を有する、請求項1に記載の太陽電池電極用導体ペースト。
【請求項8】
前記導電性粉末が前記導体ペーストの40〜90wt%である、請求項1に記載の太陽電池電極用導体ペースト。
【請求項9】
前記ガラスフリットが、前記導体ペーストの0.5〜8wt%である、請求項1に記載の太陽電池電極用導体ペースト。
【請求項10】
太陽電池電極の製造方法において、
半導体基板を用意するステップと;
前記半導体基板上に導体ペーストを適用するステップであって、前記導体ペーストが、
導電性粉末と;
ガラスフリットの重量パーセント(wt%)に基づいて、
8〜26wt%のSiO2と、
0.1〜5wt%のAl23と、
73〜90wt%の鉛化合物と、を含むガラスフリットであって、前記鉛化合物が、前記鉛化合物の総重量に基づいて5〜28wt%の鉛を含む、ガラスフリットと;
有機媒質と、
を含むステップと;
前記導体ペーストを焼成するステップと;
を含む太陽電池電極の製造方法。
【請求項11】
前記導体ペーストが930℃未満の温度で焼成される、請求項10に記載の太陽電池電極の製造方法。
【請求項12】
前記導体ペーストが、2〜5分間焼成される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法によって製造された太陽電池電極。
【請求項14】
請求項13に記載の太陽電池電極を含む太陽電池。
【請求項15】
焼成に先立ち前記電極が請求項1に記載の導体ペーストを含んでいる、太陽電池電極を含む太陽電池。
【請求項16】
太陽電池電極用導体ペーストにおいて:
導電性粉末と;
ガラスフリットの重量パーセント(wt%)に基づいて、
8〜26wt%のSiO2と、
0.1〜5wt%のAl23と、
1〜5元素wt%のフッ素と、を含むガラスフリットと;
有機媒質と;
を含む太陽電池電極用導体ペースト。

【公表番号】特表2012−521100(P2012−521100A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500961(P2012−500961)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/027804
【国際公開番号】WO2010/107996
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】