説明

失語症練習支援装置

【課題】従来の音楽療法具は、自発的に所望する歌曲を演奏し、かつ歌うことで脳機能を回復させる療法であるため、失語症には効果的な療養とは言い難い問題があった。
【解決手段】本発明は、練習メニュー作成手段10で言語カードデータベース1の中から練習者に応じた練習者別言語カードデータを抽出して練習メニューデータを作成し、練習画面表示手段11で練習メニュー及び練習結果データベース2の中から抽出した練習メニューデータを表示させ、録音手段12で練習者別言語カードデータに基づく練習音声データを録音し、判定結果表示手段13で練習音声データと正しい音声データとを比較し、その判定結果の表示を行い、練習結果保存手段14で判定結果および前記練習経過情報を練習結果データとして練習者別言語カードデータに保存する失語症練習支援装置を提供することで解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、失語症の回復を支援する練習支援装置に関し、特に、練習支援装置に絵カードを表示し、その絵カードに応じた練習者の音声を録音し、その発音が正しくなされたかの合否を判定し、その判定結果を練習支援装置に表示させる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の脳機能障害を療養する装置には、歌曲の旋律の楽音や音声を発生して歌唱を促す音楽療法を用いたものがある。例えば音楽療法具は、歌曲の歌詞を表示する表示部と、該表示部に表示された歌詞にそれぞれ対応するスイッチ手段を有する操作部と、該操作部のスイッチ手段に接続した音階発生器とから構成される。要療養者は、自己の知っている楽曲が表示された表示部において、手、足の指その他の身体の一部若しくはマウス・スティックやCRT指示ペン等を用い、該表示部に示された歌詞の表示の近傍を押したり触れたりして順次指示する。これにより、スイッチ手段が作動して歌詞に対応する旋律を、音階発生器から楽音や音声で鳴らす。要療養者が過去に馴染んでいる歌詞を順次指示して行くだけで歌詞に対応する旋律を楽音や音声で鳴らせ、自発的に自ら所望する楽曲を演奏し、かつ歌うこともでき、機能を回復させることができる技術が、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平09−047510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如く従来の音楽療法具は、自発的に自ら所望する歌曲を演奏し、かつ歌うことで脳機能を回復させる療法であるため、大脳の言語機能に関与する部位に障害が生じ、言語に対しての理解あるいは言葉を出す機能が失われた状態である失語症には効果的な療養とは言い難い。失語症は、欠損した機能を、繰返し長期間の訓練を行うことで少しずつ良くなるため、言語聴覚士が症状や環境等に合わせたプログラムを作り、言語訓練を行う必要がある。しかし、言語聴覚士や言語訓練を実施している病院(あるいはリハビリテーションセンター)が少なかったり、言語訓練に通う病院が遠かったり、あるいは長期間にわたる言語訓練であるため、言語訓練を受けていない多数の在宅者が存在しているという問題がある。
【0004】
また、病院での言語訓練の時間は短く、言語訓練の不足を補うための自宅での練習が大部分を占める。言語訓練の不足を補う練習の一つに、磁気カードに録音された言葉を再生して聞き、真似して発音の練習を繰返すものがあるが、それでは発音を自己修正することは難しい。そのため、言語聴覚士の居ない環境であっても、言語聴覚士が居る環境と同様の言語訓練を行える練習支援装置の提供が望まれていた。
【0005】
更に、自宅での練習の成果が言語聴覚士には分かり難いため、練習成果が後から確認できる練習支援装置の提供も望まれていた。
【0006】
更に、失語症の種類や程度は千差万別であるため、練習者の症状や程度に合わせて、言語訓練の練習量や練習の難易度を調整できる練習支援装置の提供も望まれていた。
【0007】
更に、言語訓練の訓練計画に沿った練習メニューを作成するために、写真、音あるいは音声を用いて言語訓練の教材が新しく作成できる練習支援装置の提供も望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みて為されたものであり、少なくとも絵データ、正しい
音声データ、単語データとから成る言語カードデータを管理する言語カードデータベースから各練習者に応じた練習者別言語カードデータを抽出して練習メニューデータを作成し、前記練習メニューデータ及び練習結果データを管理する練習メニュー及び練習結果データベースへ保存する練習メニュー作成手段と、前記練習メニュー及び練習結果データベースから所望の前記練習メニューデータを抽出して、前記練習者別言語カードデータの少なくとも前記絵データを表示する練習画面表示手段と、前記練習者別言語カードデータに基づく練習音声データを録音する録音手段と、前記練習音声データと前記正しい音声データとを比較して合否の判定をし、その判定結果の表示を行う判定結果表示手段と、前記判定結果と、前記練習者別言語カードデータが表示されてから前記合否の判定が行われる迄の練習経過情報とを練習結果データとして、前記練習メニュー及び練習結果データベースに保存する練習結果保存手段とを備え、前記練習メニュー作成手段で前記言語カードデータベースの中から前記練習者別言語カードデータを抽出して練習メニューデータを作成し、前記練習画面表示手段で前記練習メニュー及び練習結果データベースの中から抽出した所望の練習メニューデータを表示させ、前記録音手段で前記練習音声データを録音し、前記判定結果表示手段で前記練習音声データと前記正しい音声データとを比較した判定結果を表示し、前記練習結果保存手段で前記練習結果データを前記練習メニュー及び練習結果データベースに保存することで解決するものである。
【0009】
また、本発明では、練習者情報作成手段により入力された練習者に関するデータを、練習者毎に管理する練習者情報データベースへ保存することを特徴とする。
【0010】
更に、本発明では、言語カード作成手段により、絵情報データベースの絵データあるいは写真データを用いて新たに言語カードデータを作成し、前記言語カードデータベースへ追加保存されることを特徴とする。
【0011】
更に、本発明では、前記練習画面表示手段は、前記練習者別言語カードデータの前記絵データを表示し、前記練習経過情報の記録を開始し、前記絵データに基づく練習音声を入力し、前記録音手段に前記練習音声の録音及び練習音声の入力レベルメータの表示を行わせることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明では、前記練習画面表示手段により、前記練習者別言語カードデータの前記絵データを表示している間に、話速を変化させて前記正しい音声データを出力することを特徴とする。
【0013】
更に、本発明では、前記練習画面表示手段により、前記練習者別言語カードデータの前記絵データを表示している間に、前記単語データの語頭の音声データを出力することを特徴とする。
【0014】
更に、本発明では、前記練習画面表示手段により、前記練習者別言語カードデータの前記絵データを表示している間に、前記単語データを表示することを特徴とする。
【0015】
更に、本発明では、前記練習メニュー作成手段は、前記判定結果表示手段の合否判定の基準を各練習者に応じて設定することを特徴とする。
【0016】
更に、本発明では、前記言語カードデータベースは、前記絵データに対応した単語単位に管理されていることを特徴とする。
【0017】
更に、本発明では、前記練習メニュー及び練習結果データベースは、練習者毎に区分して前記練習メニューデータが管理されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上述したように、本発明の失語症練習支援装置は、練習メニュー作成手段で言語カードデータベースの中から練習者に応じた練習者別言語カードデータを抽出して練習メニューデータを作成する。練習画面表示手段で練習メニューデータを表示させ、録音手段で練習者別言語カードデータに基づく練習音声データを録音する。そして、判定結果表示手段で練習音声データと正しい音声データとを比較した判定結果の表示を行い、練習結果保存手段で判定結果および練習経過情報を練習結果データとして練習メニュー及び練習結果データベースへ保存することにより、言語聴覚士の居ない環境であっても、言語聴覚士による言語訓練と同様の練習を支援することができる。
【0019】
これにより、失語症の種類や程度に応じて1回の練習量、練習内容の難易度、あるいは合否判定の音素差の許容範囲を調整した練習メニューデータを作成したり、練習音声データの判定結果や録音された練習音声データを確認して、発音を正しく自己修正したり、自宅での練習成果を言語聴覚士が確認することができる。
【0020】
また、言語カード作成手段で練習者の症状や程度に適した言語カードデータを新たに作成して、単語単位で管理する言語カードデータベースへ追加保存することにより、追加した言語カードデータも含めてデータベース内のデータを並べ替えられる。これにより、練習者に適した言語カードデータを容易に抽出して練習メニューを作成できる。
【0021】
更に、練習画面表示手段で練習者別言語カードデータの絵データを表示している間に、話速を変えて正しい音声データを出力したり、単語データの語頭の音声データを出力したり、あるいは単語データを表示させたりすることにより、練習者に絵カードのヒントを与えることができる。これにより、絵データの単語が分からない場合には、状況に応じたヒントを取得し、単語が自然と認識できるようになるまで練習できる。
【0022】
更に、練習メニュー及び練習結果データベースは、練習者毎に区分して練習メニューデータ及び練習結果データを管理するので、練習者毎に練習メニューあるいは練習結果の集計が容易にできる。これにより、失語症の回復状況の把握や今後の訓練計画の作成に役立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明における実施の形態について、図1乃至図5を参照にして詳細に説明する。
【0024】
まず、図1(A)は、本発明の一実施の形態における言語回復練習を行う処理のブロック図であり、図1(B)は、練習者情報の登録を行う処理のブロック図であり、図1(C)は、言語カードデータの登録を行う処理のブロック図である。
【0025】
図1(A)に示すごとく、失語症練習支援装置における言語回復練習を行う処理は、言語カードデータベース1、練習メニュー及び練習結果データベース2、練習メニュー作成手段10、練習画面表示手段11、録音手段12、判定結果表示手段13、練習結果保存手段14とから構成される。
【0026】
言語カードデータベース1とは、言語回復練習で利用される言語カードデータを単語単位に管理するデータベースである。言語カードデータとは、単語に応じて描画された絵、あるいは添付された写真からなる言語カードに、音情報や文書情報を付加して電子データ化したものである。
【0027】
具体的には、言語カードデータベース1は、言語カードデータ番号、絵データ、合格基準点データ、正しい音声データ、単語データ、応用文データ、カテゴリーデータ等の集合であり、絵データには写真データも含まれる。合格基準点データは、後述する判定結果表示手段13の合否判定において合格の基準となる点数であり、この基準点以下(あるいは、基準点以上)であれば合格となる。具体的には、言語聴覚士(言葉や聞こえなど、コミュニケーションに障害のある方や周囲の方々に対して、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・教育関係者・療育関係者などと連携をとりながら、相談・評価・訓練・指導などの専門的な援助を行う人)が、事前に練習者の音声を判定しておき、その結果の相関で合格の基準となる点数を決める。単語データは、絵データに応じた単語を平仮名、片仮名、あるいは漢字で表記したものである。応用文データは、絵データに応じた単語の説明文、あるいはその単語を用いた例文からなる。なお、既存のイラストなどをスキャナーで読込み電子データ化し、絵データとして利用してもよい。
【0028】
練習メニュー及び練習結果データベース2とは、練習者に応じて作成された練習メニューデータと、練習メニューデータに応じた練習結果データを管理するデータベースである。練習メニューデータとは、練習者の症状や程度に応じて抽出された練習者別言語カードデータの集合である。練習結果データとは、練習者別言語カードデータに応じた練習音声や、発音の合否判定結果、練習の経過情報等の集合である。具体的には、練習メニューデータは、練習メニューデータ番号、練習者氏名、練習メニューの作成日、選択された練習者別言語カードデータ等の集合である。練習結果データは、練習メニューデータ番号、練習日時、練習音声データ、判定結果、練習経過情報等の集合である。
【0029】
練習メニュー作成手段10とは、言語カードデータベース1から各練習者に応じた練習者別言語カードデータを抽出して練習メニューデータを作成し、作成した練習メニューデータを練習メニュー及び練習結果データベース2へ保存する手段である。
【0030】
また、後述の判定結果表示手段13における合否判定の基準を設定する手段でもある。合否判定の基準とは、練習音声データと正しい音声データの各音素が相違と判定される範囲を設定した値である。具体的には、合否判定の基準を20%と設定した場合、練習音声データと正しい音声データの各音素の相違度合が20%以上であれば、両者は相違の音素と判定される。一方、各音素の相違度合が20%未満であれば、両者は同じ音素と判定される。なお、ここでは、相違度合を用いて説明しているが、練習音声データと正しい音声データの各音素の類似度合を用いて、合否判定を行ってもよい。また、合否判定の基準は、練習者毎、あるいは練習者別言語カードデータ毎に設定されるが、合否判定の基準を設定しない場合は、デフォルト値が自動で設定されるようにしてもよい。
【0031】
練習画面表示手段11とは、練習メニュー及び練習結果データベース2から所望の練習メニューデータを抽出し、その練習メニューデータに含まれる練習者別言語カードデータの絵データをディスプレイ上の練習画面に表示し、練習経過情報の記録を開始する。そして、音声入力の指示を受けた後に、マイクを介して絵データに基づく練習音声データの入力を開始する手段である。具体的には、表示部のディスプレイはタッチパネルになっており、練習者はディスプレイ上の所望の個所を、指あるいは専用のペンといった入力部で触れて指示を出す。なお、表示部のディスプレイはタッチパネルでなくてもよく、その場合にはキーボード、タブレットあるいはマウスといった入力部を用いればよい。
【0032】
録音手段12とは、練習画面表示手段11で入力された練習音声データを録音し、その練習音声データに応じた入力音声のレベルメータを練習画面に表示する手段である。録音された練習音声データは、後述する練習結果保存手段14により、練習メニュー及び練習結果データベース2に練習結果データとして保存される。
【0033】
なお、録音手段12で録音された練習音声データは、練習音声データの再生の指示がなされた時に、スピーカを通して出力される。練習音声データの再生の指示については、図3で詳細に説明する。
【0034】
判定結果表示手段13とは、録音手段12で録音した練習音声データと、言語カードデータに含まれる正しい音声データとを比較し、練習音声データが正しい音声データと同じであるかを判定する。そして、同じと判定された場合には、練習画面に合格の表示を行い、不同と判定された場合には、練習画面に不合格の表示を行い、練習者に単語が正しく、かつ発音が正確に為されたかを知らせる手段である。
【0035】
具体的には、練習者別言語カードデータ(この場合は、「うし」とする)における練習音声データと正しい音声データの周波数スペクトルとレベルを、それぞれパラメータとした特徴ベクトルであらわし、各音素単位で特徴ベクトルを比較する。両者の相違度合が、合否判定の基準の値(この場合は、20%とする)未満であれば、同じ音素と判定し、相違度合を数値に換算する(この場合は、「う」の相違度合が5、「し」の相違度合が10とする)。そして、各音素の相違度合の合計値(この場合は、5+10=15)が言語カードデータに含まれる合格基準点データ(この場合は、20とする)の点数より低い場合には合格となり、高い場合には不合格と判定される(この場合は、15<20なので合格)。そして、合格の場合には「よくできました」と練習画面に表示し、不合格の場合には「もう少しがんばろう」と練習画面に表示する。また、何回目で合格できたかをスコアに換算し(この場合は、1回目で合格なら3点、2回目で合格なら2点、3回目以上で合格なら1点とする)、練習メニュー及び練習結果データベース2に練習結果データの一部として保存してもよい。
【0036】
練習結果保存手段14とは、録音手段12で録音された練習音声データと、判定結果表示手段13の練習結果データ等を練習メニュー及び練習結果データベース2に練習結果データとして保存する手段である。なお、練習結果データは既に説明しているので、ここでは省略する。
【0037】
図1(B)に示すごとく、練習者情報の登録を行う処理は、練習者情報データベース3と、練習者情報作成手段15とから構成される。
【0038】
練習者情報データベース3とは、言語回復練習を行う練習者の情報を管理するデータベースである。具体的には、練習者氏名、入院日、病名、練習開始日等のデータの集合である。
【0039】
練習者情報作成手段15とは、入力された言語回復練習を行う練習者情報を、練習者情報データベース3へ登録する手段である。
【0040】
図1(C)に示すごとく、言語カードの登録を行う処理は、言語カードデータベース1、絵情報データベース4、言語カード作成手段16とから構成される。なお、言語カードデータベース1は既に説明しているので、ここでは省略する。
【0041】
絵情報データベース4とは、絵データあるいは写真データが管理されているデータベースである。具体的には、デジタルカメラで撮影した写真やスキャナーで読込んだ絵などを電子データ化したものが保存されている。
【0042】
言語カード作成手段16とは、絵情報データベース4の絵データあるいは写真データを用いて新たに言語カードデータを作成し、言語カードデータベース1へ追加保存する手段である。具体的には、絵情報データベース4から練習者の症状や程度に適した絵データあるいは写真データを抽出し、それに応じた正しい音声データ、単語データ、応用文データ、カテゴリーデータ等を登録して言語カードデータを作成する。
【0043】
次に図2は、本発明の一実施の形態における練習メニュー作成画面の一例を表した図である。
【0044】
図2に示すごとく、練習メニュー作成画面100は、言語カード一覧表示エリア101、言語カード選択エリア102、練習メニュー表示エリア103とから構成される。
【0045】
言語カード一覧表示エリア101は、言語カードデータベース1内のデータを表示方法に従って一覧表示するエリアである。表示方法には、全リスト、50音順、カテゴリー別、あるいは基本順があり、これらはプルダウンメニューにより選択される。全リストは、管理されている全データを並び替えの作業を行わずに表示する方法である。50音順は、単語データの語頭を50音順に並び替えて一覧表示する方法である。カテゴリー別は、単語データをカテゴリー(具体的には、動物のカテゴリー、植物のカテゴリー、食べ物のカテゴリー等)別に並び替えて一覧表示する方法である。基本順は、単語データを言葉の難易度が易しいものから難しいもの順に並び替えて一覧表示する方法である。なお、ここでは表示方法を50音順にした場合が図示されている。
【0046】
言語カード選択エリア102は、言語カードデータベース1から選択した練習者別言語カードデータを練習メニューへ移動したり、練習メニューから選択した練習者別言語カードデータを言語カードデータベース1へ戻したりするエリアである。選択した練習者別言語カードデータの絵データは、それぞれ図中の四角枠の中に表示される。
【0047】
練習メニュー表示エリア103は、作成した練習メニューデータの内容を表示するエリアである。具体的には、練習者名、練習メニューの作成日、練習者別言語カードデータの言語カード番号等が表示される。
【0048】
次に、図3(A)は、本発明の一実施の形態における練習画面の一例を表した図であり、図3(B)は、練習画面の単語データに関するヒントを表示する画面の一例であり、図3(C)は、練習画面の応用文データに関するヒントを表示する画面の一例ある。なお、ここではタッチパネルの表示部に練習画面が表示されており、練習者が複数ある練習者別言語カードデータから「牛」を選択した場合を例に説明する。
【0049】
図3(A)に示すごとく、練習画面110は、入力及び確認エリア111、ヒント取得エリア112、言語カードデータ選択エリア113、絵データ表示エリア114、終了ボタン、ST判定ボタンとから構成される。
【0050】
入力及び確認エリア111は、練習画面表示手段11に練習音声データの入力を指示したり、録音手段12に入力された練習音声データの入力レベルメータの表示を指示したり、録音手段12に録音された練習音声データの再生を指示したりするエリアである。具体的には、話すボタン111a、レベルメータ表示欄111b、確認ボタン111cを有する。話すボタン111aの押下により、練習画面表示手段11の練習音声データの入力が指示され、マイクより練習音声データが入力される。そして、録音手段12で練習音声データに応じた入力レベルメータをレベルメータ表示欄111bに表示する。そして、確認ボタン111cの押下により、録音手段12で録音された練習音声データがスピーカーより再生される。これにより、練習者は自分の発音を確認することができる。
【0051】
なお、絵データが表示された後、あるいは後述のヒント取得をした後に、話すボタン111aを押下しなくても、自動的に練習画面表示手段11の練習音声データの入力指示が開始されるようにしてもよい。
【0052】
ヒント取得エリア112は、単語の語頭の音声データを出力したり、単語データを表示したり、単語の正しい音声データを出力して、練習者にヒントを与えるエリアである。また、絵データの単語の説明文や、絵データの単語を用いた例文などの応用文を音声出力するエリアでもある。なお、正しい音声データの出力において、練習者が聴取し難い場合は、その近傍にあるボタン(この場合は、ゆっくりボタン、あるいは速くボタン)の押下により、音程、音質を変えずに発音速度を変えられる。
【0053】
具体的には、語頭ボタン112a、文字ボタン112b、聞くボタン112c、応用ボタン112dを有し、各ボタンに応じたヒントが取得できる。一番効果的な練習方法としては、語頭ボタン112a→文字ボタン112b→聞くボタン112cの順にヒントを取得する方法である。
【0054】
語頭ボタン112aは、練習者別言語カードデータに応じた単語データの語頭の音声データ(この場合は、「う」の音声データ)をスピーカーより出力するボタンである。
【0055】
文字ボタン112bは、練習者別言語カードデータに応じた単語データを表示するボタンである。なお、この文字ボタンによる変化の詳細については、後で説明する。
【0056】
聞くボタン112cは、練習者別言語カードデータに応じた正しい音声データ(この場合は、「うし」の音声データ)を出力するボタンである。
【0057】
応用ボタン112dは、練習者別言語カードデータに応じた説明文や例文の一覧を表示するボタンである。なお、この応用ボタンによる一覧の詳細については、後で説明する。
【0058】
言語カードデータ選択エリア113は、練習メニューデータの練習者別言語カードデータの一覧を表示するエリアである。具体的には、練習メニューデータの練習者別言語カードデータに1から順に番号を付しておき、その番号の一覧を表示する。なお、練習者別言語カードデータが多くある場合には、図中に示したように、番号の上方に前後へ移動させるボタンを配置し、番号の一覧をスクロールできるようにしてもよい。
【0059】
絵データ表示エリア114は、練習者別言語カードデータに応じた絵データを表示するエリアである。具体的には、図示したように「牛」の絵が表示される。なお、絵データ表示エリア114内をマウスあるいは専用のペン等でクリックすると、表示されていた絵データが非表示の状態になり、再度クリックすると絵データが表示の状態になるようにしてもよい。これにより絵データが非表示の状態で、上述の文字ボタン112bを押下して表示された単語データから「牛」の絵データを想像させたり、あるいは上述の聞くボタン112cを押下して出力された正しい音声データから「牛」の絵データを想像させる練習も可能となる。
【0060】
終了ボタンは、言語回復練習を終了するボタンである。
【0061】
ST(Speech Language Healing Therapist(言語聴覚士)の略)判定ボタンは、言語聴覚士が録音手段12により録音された練習音声データを聞いて、合否を判定するボタンである。具体的には、言語聴覚士が、入力及び確認エリア111の確認ボタン111cを押下して練習音声データを聞き、その合否を判定して結果を保存するボタンである。これにより、判定結果表示手段13では不合格であっても、言語聴覚士による判定では合格とすることができる。その言語聴覚士による判定結果(この場合は、合格)は、練習メニュー及び練習結果データベース2内に保存することもできる。なお、この言語聴覚士による判定結果は、判定結果表示手段13による判定結果(この場合は、不合格)を上書きして保存してもよい。
【0062】
図3(B)に示すごとく、練習画面110のヒント取得エリア112の文字ボタン112bを押下すると、練習者別言語カードデータの単語データが文字ボタンの右側に位置する四角枠のエリアに表示される。具体的には、文字ボタン112bを1回押下すると漢字あるいは片仮名表記(この場合は、牛)で表示され、更に1回押下すると平仮名表記(この場合は、うし)で表示される。なお、文字ボタンを押下する度に、漢字表記と平仮名表記は繰返される。
【0063】
図3(C)に示すごとく、練習画面110のヒント取得エリア112の応用ボタン112dを押下すると、練習者別言語カードデータの応用文データの一覧を表示する画面が展開される。練習者はその一覧より所望の応用文を選択し、説明文あるいは例文の音声データを聞くことができる。具体的には、応用文(この場合は、説明文)が記載されたボタンを押下すると、そこに記載された内容(この場合は、「モウとなく、四足の動物」)が音声データで出力され、練習者は単語データに関連づけて覚えることができる。応用文データの一覧表示画面を消す場合には、該画面にある終了ボタンを押下すればよい。
【0064】
次に、図4は本発明の一実施の形態における言語回復練習の処理フロー図である。
【0065】
まず、練習メニュー作成手段10により、言語カードデータベース1の中から練習者に適した練習者別言語カードデータを抽出し、練習メニューデータを作成する(ステップS1)。そして、その練習メニューデータを練習メニュー及び練習結果データベース2へ保存する(ステップS2)。
【0066】
次に、練習開始の指示が為されたか否かの判断が行われる(ステップS3)。練習開始が指示された場合は(ステップS3のYes)、後述のステップS4の処理が実行される。なお、練習開始が指示されない場合には(ステップS3のNo)、言語回復練習に関する全ての処理が終了となる。
【0067】
次に、練習画面表示手段11により練習メニュー及び練習結果データベース2の中から所望の練習メニューデータが選択される(ステップS4)。そして、練習画面110が表示され(図3(A)参照)、言語カードデータ選択エリア113に表示された練習者別言語カードデータの一覧から所望の練習者別言語カードデータが選択される(ステップS5)。練習画面110の絵データ表示エリア114には、練習者別言語カードデータに応じた絵データが表示され、練習経過情報の記録が開始される(ステップS6)。
【0068】
次に、練習画面110上の各ボタンの押下に応じて、以下の処理が行われる。
【0069】
〔SW=ヒント取得処理の場合〕
ヒント取得エリア112内の所望のボタンが押下されると、ボタンに応じたヒント処理が行われる(ステップS7)。具体的には、語頭ボタン112aを押下した場合には、練習者別言語カードデータに応じた言語データの語頭の音声データが再生される。文字ボタン112bを押下した場合には、練習者別言語カードデータの言語データが、漢字表記あるいは平仮名表記で表示される。聞くボタン112cを押下した場合には、練習者別言語カードデータに応じた正しい音声データが出力される。正しい音声データの話速は聴取能力に応じて速めたり、遅くしたりできる。
【0070】
なお、これらのヒントを取得した後、処理はステップS6の直前へと戻り、練習画面110が表示される。絵データの単語が認識できるまで、ヒントを取得し続けてもよい。
【0071】
〔SW=応用文取得処理の場合〕
ヒント取得エリア112内の応用ボタン112dが押下されると、応用文データの一覧表示画面(図3(C)参照)が表示される。一覧より所望の応用文が選択されると、応用文に応じた音声データが出力される。終了の指示が為されるまで、応用文データの選択及び音声データの出力は繰返される。
【0072】
なお、終了の指示が為された後、処理はステップS6の直前へと戻り、練習画面110が表示される。
【0073】
〔SW=話す処理の場合〕
入力及び確認エリア111内の話すボタン111aが押下されると、絵データに基づく練習音声データの入力が開始され、録音手段12が起動し、絵データに応じた練習音声データの録音、及び練習音声データの入力レベルメータの表示が実行される(ステップS9)。そして、判定結果表示手段13により、練習音声データと正しい音声データが比較して合否を判定し、その判定結果が画面に表示される(ステップS10)。そして、練習結果保存手段14により、練習結果データが練習メニュー及び練習結果データベース2に保存される(ステップS11)。練習結果データとは、ステップS9の録音された練習音声データと、ステップS10の判定結果と、ステップS6からステップS10の合否判定処理の間に行われた練習経過情報である。
【0074】
そして、練習画面110に次の練習者別言語カードデータを表示するか否かの判断が行われる(ステップS12)。次の練習者別言語カードデータを表示する場合は(ステップS12のYes)、処理はステップS5の直前へと戻り、言語回復練習は続けられる。一方、次の練習者別言語カードデータを表示しない場合は(ステップS12のNo)、更に、練習画面110の終了ボタンの押下が為されたか否かの判断が行われる(ステップS13)。終了ボタンが押下されない場合は(ステップS13のNo)、ステップS5の直前へ戻り、引き続き言語回復練習が行われる。一方、終了ボタンを押下した場合は(ステップS13のYes)、言語回復練習に関する全ての処理が終了する。
【0075】
最後に、図5(A)は、本発明の一実施の形態における練習者情報の登録の処理を説明するフロー図であり、図5(B)は、言語カードデータの登録の処理を説明するフロー図である。
【0076】
図5(A)に示すごとく、まず、練習者情報作成手段15により、練習者の名前や発病時期等の練習者情報を入力する(ステップS21)。そして、練習者情報を登録して良いか否かの判断が為される(ステップS22)。修正個所がある場合には(ステップS22のNo)、ステップS21の前へ処理は戻りデータの修正を行う。一方、登録をする場合には(ステップS22のYes)、練習者情報作成手段15により、練習者情報は練習者情報データベース3へ保存される(ステップS23)。
【0077】
なお、図示はしないが、練習者情報データベースに登録済みの練習者情報の修正、あるいは削除の処理も、練習者情報作成手段15に行わせるようにしてもよい。
【0078】
図5(B)に示すごとく、まず、言語カード作成手段16により、絵情報データベース4から所望の絵データを選択する(ステップS31)。そして、単語データ、正しい音声データなどの設定を行う(ステップS32)。そして、言語カードデータを登録して良いか否かの判断が為される(ステップS33)。修正個所がある場合には(ステップS33のNo)、ステップS32の前へ処理は戻りデータの修正を行う。一方、登録をする場合には(ステップS33のYes)、言語カード作成手段16により、言語カードデータが言語カードデータベース1へ言語カードデータを保存される(ステップS34)。
【0079】
上述の失語症練習支援装置は、上述した手段を搭載した専用装置、あるいは上述した手段を有するアプリケーションがインストールされたパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと省略する)により提供される。
【0080】
専用装置あるいはパソコンは、少なくとも、第1の入力部、第2の入力部、表示部、記憶部、演算部、出力部とを有する。第1の入力部は、キーボード、タブレット、マウス、指、専用のペン等である。第2の入力部は、音声を電気信号に変える装置であり、具体的にはマイクである。表示部は、ディスプレイあるいはタッチパネルである。記憶部は、コンピュータ内のデータやプログラムを記憶する装置である。演算部は、コンピュータの中で、各装置や各手段の制御、データの計算や加工を行う中枢部である。また、演算部は、記憶部のプログラムを実行する装置でもあり、第1の入力部や記憶部からデータを受け取り、演算や加工をした上で、出力部や表示部に出力をする。出力部は、電気信号を音に変える装置であり、具体的にはスピーカーである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】(A)〜(C)は、本発明の一実施の形態における失語症練習支援装置の各処理を行うブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態における練習メニュー作成画面の一例を表した図である。
【図3】(A)〜(C)は、本発明の一実施の形態における練習画面の一例を表した図である。
【図4】本発明の一実施の形態における言語回復練習を行う処理のフロー図である。
【図5】(A)〜(B)は、本発明の一実施の形態における失語症練習支援装置の各処理のフロー図である。
【符号の説明】
【0082】
1 言語カードデータベース
2 練習メニュー及び練習結果データベース
3 練習者情報データベース
4 絵情報データベース
10 練習メニュー作成手段
11 練習画面表示手段
12 録音手段
13 判定結果表示手段
14 練習結果保存手段
15 練習者情報作成手段
16 言語カード作成手段
100 練習メニュー作成画面
110 練習画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも絵データ、正しい音声データ、単語データとから成る言語カードデータを管理する言語カードデータベースから各練習者に応じた練習者別言語カードデータを抽出して練習メニューデータを作成し、前記練習メニューデータ及び練習結果データを管理する練習メニュー及び練習結果データベースへ保存する練習メニュー作成手段と、
前記練習メニュー及び練習結果データベースから所望の前記練習メニューデータを抽出して、前記練習者別言語カードデータの少なくとも前記絵データを表示する練習画面表示手段と、
前記練習者別言語カードデータに基づく練習音声データを録音する録音手段と、
前記練習音声データと前記正しい音声データとを比較して合否の判定をし、その判定結果の表示を行う判定結果表示手段と、
前記判定結果と、前記練習者別言語カードデータが表示されてから前記合否の判定が行われる迄の練習経過情報とを練習結果データとして、前記練習メニュー及び練習結果データベースに保存する練習結果保存手段とを備え、
前記練習メニュー作成手段で前記言語カードデータベースの中から前記練習者別言語カードデータを抽出して練習メニューデータを作成し、前記練習画面表示手段で前記練習メニュー及び練習結果データベースの中から抽出した所望の練習メニューデータの前記絵データを表示させ、前記録音手段で前記練習音声データを録音し、前記判定結果表示手段で前記練習音声データと前記正しい音声データとを比較して判定結果を表示し、前記練習結果保存手段で前記練習結果データを前記練習メニュー及び練習結果データベースに保存することを特徴とする失語症練習支援装置。
【請求項2】
練習者情報作成手段により入力された練習者に関するデータを、練習者毎に管理する練習者情報データベースへ保存することを特徴とする請求項1に記載の失語症練習支援装置。
【請求項3】
言語カード作成手段により絵情報データベースの絵データあるいは写真データを用いて新たに言語カードデータを作成し、前記言語カードデータベースへ追加保存されることを特徴とする請求項1に記載の失語症練習支援装置。
【請求項4】
前記練習画面表示手段は、前記練習者別言語カードデータの前記絵データを表示し、前記練習経過情報の記録を開始し、前記絵データに基づく練習音声を入力し、前記録音手段に前記練習音声の録音及び練習音声の入力レベルメータの表示を行わせることを特徴とする請求項1に記載の失語症練習支援装置。
【請求項5】
前記練習画面表示手段により、前記練習者別言語カードデータの前記絵データを表示している間に、話速を変化させて前記正しい音声データを出力することを特徴とする請求項1に記載の失語症練習支援装置。
【請求項6】
前記練習画面表示手段により、前記練習者別言語カードデータの前記絵データを表示している間に、前記単語データの語頭の音声データを出力することを特徴とする請求項1に記載の失語症練習支援装置。
【請求項7】
前記練習画面表示手段により、前記練習者別言語カードデータの前記絵データを表示している間に、前記単語データを表示することを特徴とする請求項1に記載の失語症練習支援装置。
【請求項8】
前記練習メニュー作成手段は、前記判定結果表示手段の合否判定の基準を各練習者に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載の失語症練習支援装置。
【請求項9】
前記言語カードデータベースは、前記絵データに対応した単語単位に管理されていることを特徴とする請求項1に記載の失語症練習支援装置。
【請求項10】
前記練習メニュー及び練習結果データベースは、練習者毎に区分して前記練習メニューデータが管理されていることを特徴とする請求項1に記載の失語症練習支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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