説明

好ましくはポサコナゾールおよびHPMCASを含む固体分散物中の経口用薬学的組成物

本願は、ポサコナゾールおよびポリマーを含有する新規組成物を提供し、ここで、この組成物は、約110℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。本願はまた、約0.4mg/mLより高いかさ密度を有する、ポサコナゾールおよびポリマーを含有する組成物を記載する。本願はまた、絶食状態の患者に投与される場合に少なくとも約10,000ng・hr/mLの曝露(AUCtf)を提供する、ポサコナゾールおよびポリマーを含有する組成物を記載する。本願はまた、これらの組成物を調製する新規プロセスを記載する。好ましいポリマーは、HPMC−ASである。好ましくは、この組成物は、押し出された材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本出願は、ポサコナゾールを含有する新規固体組成物、およびこの固体組成物を含有する薬学的処方物を開示する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本出願のこの節または任意の節における任意の公報の特定は、そのような公報が本発明に対する先行技術であることを承認してはいない。
【0003】
ポサコナゾールは、抗真菌性を有するアゾール化合物である。この化合物およびその合成は、例えば、共にSaksenaらに対する特許文献1(1997年12月30日に発行された)および関連特許文献2(1997年8月26日に発行された)に記載される。ポサコナゾールの安定な結晶形態およびこの結晶形態を調製するためのプロセスは、Andrewsらに対して2005年10月25日に発行された特許文献3に記載される。この結晶形態の懸濁物を含有する薬学的処方物(Noxafil(登録商標)として市販される)、およびこの薬学的処方物を調製するための方法が、2002年4月1日に出願され2003年3月20日に公開された特許文献4に記載される。
【0004】
結晶形態のポサコナゾールを含有する懸濁物(40mg/mL)は、特に、米国およびヨーロッパ共同体において、侵襲性真菌感染の処置(例えば、口腔咽頭のカンジダ症(例えば、他のアゾール抗真菌剤による処置に対して耐性のある感染)の処置)における経口投与、ならびに、重度に免疫無防備状態であることに起因してこれらの感染を発現させる危険性の高い患者(例えば、移植片対宿主病(GVHD)を有する造血幹細胞移植(HSCT)受容者、もしくは化学療法に由来する長期好中球減少を伴う血液学的悪性疾患を有する患者)の真菌感染を予防するための予防処置としての経口投与のためのNoxafil(登録商標)として承認されている。Noxafil(登録商標)は、ポサコナゾールの適切な血漿中濃度の達成を確実にする目的で、食物、好ましくは、高脂肪食物と共に(または、食物の取り込みに対して耐性を有し得ない重度の好中球減少症患者において、栄養補助物の投与後)経口投与用と示される。PDRにおいて報告される通り、高脂肪食物を伴う患者へのNoxafil(登録商標)の投与は、絶食している患者(本明細書中では「絶食状態」とも称される)に当量のNoxafil(登録商標)の投与後に観察されるものに対して、4倍の薬物血漿濃度の増加を示し、ならびに、絶食している患者へNoxafil(登録商標)の投与後に観察されるものに対して、栄養補助物と一緒に患者に投与される場合の血漿濃度において3倍の増加を示す。食物または栄養補助物のいずれかを伴うポサコナゾール処方物の投与は、本明細書中では、集合的に、「摂食条件」下での投与ともまた称される。
【0005】
経口投与のための固体剤形を調製するのに適したポサコナゾールを含有する固体組成物の提供は、これまで、上記ポサコナゾール遊離塩基化合物の難溶解性および弱塩基性により妨げられてきている。ポサコナゾールは、低pHで可溶性である。例えば、胃の環境(約pH1)において、ポサコナゾール遊離塩基は、約0.8mg/mLの溶解度を有する。しかし、胃の分泌液中に溶解したポサコナゾールが腸の環境(代表的には約pH6.4より酸性ではない)に到達するとき、溶解したポサコナゾールのうちの相当な量が沈殿し、このことが腸での吸収を妨げる。pHが約pH6.4またはより塩基性である環境において、ポサコナゾール遊離塩基の溶解度は、約1マイクログラム/mL未満であることが決定されている。
【0006】
上記活性薬学的成分(API)が小腸で吸収されるが、小腸の環境で難溶解性または乏しい溶解性である場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体ポリマー(HPMC誘導体ポリマー)は、処方物において使用される場合に、改良されたバイオアベイラビリティを与える組成物を提供する手段として検討されている。Crewらに対して2007年6月26日に発行された特許文献5は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体ポリマー中のグリコーゲンホスホリラーゼ(phosphorlase)インヒビターを記載する。特許文献5に記載される組成物は、共通溶媒中に溶解させたホスホリラーゼインヒビターおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC−AS)を含有する溶液を噴霧乾燥することにより調製される。Hayesらに対して2005年4月19日に発行された特許文献6は、概して、アゾール抗真菌性化合物およびポリマーを含有する組成物を記載する。記載された組成物は、共通溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、エタノール、メタノール、イソプロパノール、エチルアセテート、もしくはアセトン、またはこれらのうちの2つ以上のものの混合物)中にアゾール化合物およびポリマーを溶解させ、この溶液を慣習的な噴霧乾燥装置を使用して噴霧乾燥することにより固体顆粒状組成物を形成することによって調製される。特許文献6に記載されるアゾール含有組成物の例は、活性薬学的成分(API)およびポリマーを含有する溶液を噴霧乾燥することにより調製される、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCフタレート)ポリマー誘導体を伴うイトラコナゾールである。これらの組成物は、イトラコナゾールのバイオアベイラビリティにおける改良、およびイトラコナゾールの投与と関連する食物効果の除去を示すことが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,703,079号明細書
【特許文献2】米国特許第5,661,151号明細書
【特許文献3】米国特許第6,958,337号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0055067号明細書
【特許文献5】米国特許第7,235,260号明細書
【特許文献6】米国特許第6,881,745号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の要旨)
バイオアベイラビリティにおいて患者間の変動性がより低い、ある患者の集団にポサコナゾールを提供する経口投与用処方物を有し、それによって、この処方物が投与される患者の集団全体にわたって一定のPKパラメータを提供すること(例えば、固定量の処方物が投与される患者の集団全体にわたる、Cmax値およびAUC値について観察されるより狭い範囲)が望ましい。さらに、以前の処方物から得られるよりも高いポサコナゾールのバイオアベイラビリティを提供する経口投与用処方物を有し、それによって、所定量のポサコナゾールが投与される患者から得られる血液から決定されるより高い血漿レベル(本明細書中では、簡便のため「血漿レベル」とも称される)を与えることが望ましい。加えて、絶食状態の患者に投与される場合にポサコナゾールの受容可能な血漿レベルを提供する経口投与用処方物を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
必要とされるものは、ポサコナゾール組成物、ならびに、絶食条件下の患者への経口投与に適したポサコナゾール組成物を含有する薬学的処方物であり、この薬学的処方物は、治療に役立つ血漿レベルおよび治療上の利益を与えるのに十分なポサコナゾールの曝露(AUC)を提供する。さらに、必要とされるものは、胃の環境を通り抜けるときには実質的に不溶性であるが、小腸の環境に入った際にポサコナゾールをすぐに放出する形態でポサコナゾールを提供する経口投与用薬学的処方物である。必要とされるものはまた、患者の代表例への投与の際、以前の処方物から得られるよりも、薬物動態パラメータ(PK)において患者間でより低い変動性を示す処方物である。
【0010】
これらの必要性ならびに他の目的および/または利点は、本発明により提供される。本発明は、一局面において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体ポリマー(HPMC誘導体ポリマー)中に溶解したかまたは分子分散したポサコナゾールを含有する新規組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記HPMC誘導体ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートポリマー(HPMC−AS)であることが好ましい。いくつかの実施形態において、少なくとも約1.2g/mLの固体密度を有する組成物を提供することが好ましい。いくつかの実施形態において、上記組成物の粒子形態を提供することが好ましく、ここで、約100mgのポサコナゾール遊離塩基に等しい量のポサコナゾールを含有する量の組成物が絶食状態の患者に投与される場合、上記粒子形態は、少なくとも約0.6g/mlのかさ密度を有し、かつ少なくとも約10,000hr.ng/mLのAUC(tf)、または、少なくとも約300ng/mLのCmaxを提供する。いくつかの実施形態において、約0.6g/mL〜約0.7g/mLのかさ密度を有する本発明の粉砕された組成物を提供することが好ましい。いくつかの実施形態において、粒子形態の上記組成物を提供することが好ましく、ここで、この組成物が、約80mg〜約500mgのポサコナゾール、好ましくは約100mg〜約400mgのポサコナゾールを含有する量で絶食条件下の患者へ投与される場合、この組成物は、少なくとも約300ng/mL、好ましくは少なくとも約335ng/mLのCmaxを与える。いくつかの実施形態において、医薬を製造するための米国FDA基準に従って、ポサコナゾールの所望量の約80%〜約125%を有する剤形を提供することが好ましい。
【0011】
本明細書中で使用される場合、用語「かさ密度」は、その慣習的な意味を有し、好ましくは、かさ密度は、ある測定された容量の、粒子形態の上記物質の重量を量ることにより決定される(本明細書中では「容積法」とも称される)。本明細書中で使用される場合、「固体密度」は、(重量)/(上記物質の試料により占有される固体容積)を称す。固体密度を決定する1つの方法は、重量が量られた上記物質の試料を、その固体より低い密度を有する液体(上記の固体はこの液体に不溶性である)の中に置き、それにより、上記物質の固体容積が上記固体により置き換えられた液体の量により決定されることを可能にし、上記試料の重量を上記試料の測定された容量で除算することである。少なくとも比較可能な正確さを与える、固体密度およびかさ密度を決定するための他の方法が使用され得ることが理解される。
【0012】
いくつかの実施形態において、HPMC誘導体ポリマーを選択することが好ましく、ここで、遊離塩基形態のポサコナゾールはこのポリマーに可溶性であり、このポリマーは約120℃〜約137℃のガラス転移温度(T)を有する。いくつかの実施形態において、ポリマーを選択することが好ましく、ここで、遊離塩基形態のポサコナゾールはこのポリマーに可溶性であり、このポリマーは約120℃〜約135℃のTを有する。いくつかの実施形態において、上記HPMC誘導体ポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC−AS)、好ましくは、約120℃〜約130℃のガラス転移温度を有するHPMC−ASポリマーを選択することが好ましい。いくつかの実施形態において、あるポリマーを選択することが好ましく、ここで、ポサコナゾールはそのポリマーに可溶性であり、そのポリマー中へのポサコナゾールの溶解の際、そのポリマーは、ポサコナゾールの融点未満の融点を有する共融混合物としてふるまう。
【0013】
HPMC−ASを使用するいくつかの実施形態において、約70の重合度を有するポリマーを選択することが好ましい。いくつかの実施形態において、上記HPMC−ASポリマーとして、(i)平均8重量%のアセチル含有量および平均15重量%のスクシノイル含有量を有するHPMC−ASポリマー;(ii)平均9重量%のアセチル含有量および平均11重量%のスクシノイル含有量を有するHPMC−ASポリマー;または(iii)平均12重量%のアセチル含有量および平均6重量%のスクシノイル含有量を有するHPMC−ASポリマーのうちの少なくとも1つを選択することが好ましく、より好ましくは、約70の重合度を有し、かつ平均9重量%アセチル含有量および平均11重量%スクシノイル含有量を有するHPMC−ASポリマーを選択することが好ましい。
【0014】
いくつかの実施形態において、約110℃未満のガラス転移温度(T)、好ましくは約70℃〜約110℃のT、より好ましくは約80℃〜約95℃のTを有する本発明のHPMC−AS/ポサコナゾール組成物を与える量で、ある種のHPMC−ASポリマーを使用することが好ましい。HPMC−ASを使用するいくつかの実施形態において、約95重量%HPMC−AS:5重量%ポサコナゾール遊離塩基〜約50重量%HPMC−AS:50重量%ポサコナゾール遊離塩基に等しいHPMC−AS:ポサコナゾール遊離塩基の比を与える量のポサコナゾール遊離塩基を上記組成物中に含有することが好ましい。いくつかの実施形態において、約1:3(ポサコナゾール:HPMC−AS)のポサコナゾール遊離塩基とHPMC−ASとの重量比を有することが好ましい。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1つ以上の可塑剤(例えば、ビタミンE、ステアリン酸(steric acid)、またはTEC(クエン酸トリエチル));1つ以上の保存剤および/または抗酸化剤(例えば、ビタミンCまたは/およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT))をさらに含有する。
【0016】
本発明の別の局面は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体ポリマー中に分子分散したかまたは溶解したポサコナゾール遊離塩基を含有する組成物を調製するためのプロセスである。いくつかの実施形態において、以下の、(i)ポサコナゾールが上記ポリマー中に可溶性である;(ii)ポサコナゾールの融点未満の融点を有する共融混合物として作用する溶液または分散物をポサコナゾールが形成する;(iii)ポサコナゾールが選択されたポリマー(単数または複数)と混合されて加熱される場合、そのことが上記ポリマーを溶融させることを促進し、かつ上記ポリマー中へのポサコナゾールの溶解を促進する融剤として外見上作用するという特性を提供するHPMC誘導体ポリマーから本発明の組成物において使用されるポリマーを選択することが好ましい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物を調製するためのプロセスは:(i)ポサコナゾールと上記選択されたポリマーとの混和物を形成する工程;(ii)上記混和物を約60℃より高くかつ約169℃より低い温度で、必要に応じて溶融分散物を撹拌しながら加熱することにより溶融分散物を形成する工程;(iii)工程(ii)において提供される分散物を冷却し、固体を形成する工程;および(iv)必要に応じて、冷却工程(iii)の前か、同時かのいずれかで上記分散物からある形状の塊を形成する工程、を包含する。いくつかの実施形態において、上記HPMC誘導体ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC−AS)ポリマーであることが好ましい。上記選択されたポリマーがHPMC−ASであるいくつかの実施形態において、以下の工程を包含するプロセスにより上記組成物を調製することが好ましい:
(i)ポサコナゾール遊離塩基およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートポリマー(HPMC−AS)の顆粒または粒子の混合物を乾燥混合し、それによって混和物を形成する工程;
(ii)工程(i)由来の混和物を、ポサコナゾールのガラス転移温度(T)より高い温度(好ましくは約60℃より高い温度)であり、好ましくは、分散物中のポサコナゾールとHPMC−ASの比が工程(i)において提供される混和物中のポサコナゾールおよびHPMC−ASの比に等しい場合、HPMC−AS中にポサコナゾールを含有する分子分散物のTより高い温度であり、より好ましくは、工程(i)の混和物を調製するために使用されるHPMC−ASのTより高い温度であり、かつ、ポサコナゾール遊離塩基の融点(一般的には約169℃)未満である温度に加熱することにより、HPMC−ASポリマー中に溶解した上記ポサコナゾール遊離塩基の溶融分散物を形成する工程であって、好ましくは、上記溶融分散物は約80℃〜約160℃の温度で、より好ましくは約120℃〜約160℃の温度で形成され、そして、必要に応じて加熱しながら上記混和物を混合する、工程;
(iii)工程(ii)において形成された溶融分散物を冷却し、HPMC−ASポリマー中に分子分散したか、または溶解したポサコナゾール遊離塩基の固体組成物を提供する工程;
(iv)必要に応じて、冷却工程(iii)の前か、またはその間に、工程(ii)において調製された分散物を、ある形状の塊に成形する工程、好ましくは分散物を押し出し形材(extruded shape)に成形する工程;および、
(v)工程(iii)において提供される固体組成物を必要に応じて粉砕するか、または必要に応じて造粒し、粒子状生成物を形成する工程、あるいは、任意の工程(iv)が実行された場合、工程(iv)において提供される押し出し形材を必要に応じて粉砕するか、または必要に応じて造粒し、粒子状生成物を形成する工程。
【0017】
いくつかの実施形態において、ポサコナゾール遊離塩基/HPMC−ASポリマーの組成物を調製することが好ましく、ここで、HPMC−ASポリマーは、上記組成物のアリコートがpH1に等しい環境で保持される場合、1時間以内に約10モル%未満の溶解したポサコナゾールを放出し、かつ、約pH6.0〜約pH7.0のpHに等しい環境で保持される場合、上記アリコート中に存在する溶解したか、または分散したポサコナゾールを約20モル%より多く放出するように選択される。この溶解の様子は、pH1の環境については図1Aに、pH6.4の環境については図1Bに示される。いくつかの実施形態において、上記組成物のアリコートを溶解媒体(ここで、上記溶解媒体(約pH1.0のpHを有する)は、パドル型溶解装置(paddle dissolution apparatus)中に含まれるHCl水溶液を含有する)中に置くことによりポサコナゾールの溶解プロフィールを測定し、100RPMのパドル速度で約60分間継続する第一の撹拌期間の間、上記混合物を撹拌し、その間、上記溶解媒体のアリコートを抽出し、溶解したポサコナゾールについてそれらを分析することが好ましい。この方法を用いて実行される測定において、約6.4〜約6.8のpHを有する溶解媒体を作製するのに十分な量で第一リン酸ナトリウム塩および第二リン酸ナトリウム塩(NaHPOおよびNaHPO)の混合物を加えることによって、上記第一の撹拌期間の終わりに上記溶解媒体のpHを上げ、撹拌を継続し、その間、上記溶解溶媒のアリコートを抽出し、溶解したポサコナゾールについてそのアリコートを分析することが好ましい。いくつかの実施形態において、上記手順と組み合わせてUSP溶解装置II(パドル型溶解装置)を用いて溶解テストを実行することが好ましい。
【0018】
別の局面において、本発明は、HPMC誘導体ポリマーに溶解または分子分散したポサコナゾール遊離塩基を含有する組成物を含有する剤形を提供する。いくつかの実施形態において、調製されたままでこの組成物を剤形に直接組み込むこと(例えば、押し出し形材または粒子形態の本発明の組成物を、いずれのさらなる賦形剤もなしでカプセルに入れること)が好ましい。押し出し工程がプロセス中に包含されるプロセスのいくつかの実施形態において、融解分散物をさらなる賦形剤なしでカプセル内に直接押し出して、本発明の組成物を含有する剤形を提供することが好ましい。いくつかの実施形態において、固体形態の組成物を粉砕(例えば、押し出し形態の組成物を粉砕)して、粒子形態の組成物を提供することが好ましい。いくつかの実施形態において、顆粒形態の組成物を提供することが好ましい。いくつかの実施形態において、粉砕された粒子形態または顆粒形態の本発明の組成物を、1種以上の賦形剤と混合し、そしてこの混合物を錠剤剤形にプレスするか、またはこの混合物をカプセルに詰めることが好ましい。いくつかの実施形態において、粒子形態のHPMC−ASに溶解または分子分散したポサコナゾール遊離塩基を含有する組成物を形成し、そしてさらなる賦形剤なしで、ある量のこの粒子材料をカプセルに直接入れることが好ましい。
【0019】
本発明はまた、ある量の、本発明の組成物;本発明の組成物を含有する処方物;または本発明の組成物を含有する剤形を投与することによって、真菌感染を予防的または治療的に処置する方法を提供する。これらは、1日あたり約80mg〜約500mgのポサコナゾールを提供する量で、単一用量または分割用量のいずれかで、投与される。いくつかの実施形態において、単一用量または分割用量のいずれかで、ある量の、本発明の組成物;本発明の組成物を含有する処方物;または本発明の組成物を含有する剤形を毎日投与することが好ましい。これらは、約100mg〜約400mgのポサコナゾール、好ましくは、少なくとも約200mgのポサコナゾールを提供する。1日あたり約100mgのポサコナゾール〜約400mgのポサコナゾールを投与することにより処置を提供することが好ましいいくつかの実施形態において、処置を提供するために望ましいポサコナゾールの量の約80%〜約125%を提供する量の、本発明の組成物を含有する医薬を供給することが好ましい。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物を、投与される患者集団の少なくとも約75%において、少なくとも約319ng/mLの定常状態平均血漿中濃度(Cavg)を提供する量および間隔で投与することが好ましい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物、本発明の組成物を含有する処方物、または本発明の組成物を含有する剤形を、毎日約100mgのポサコナゾール〜約400mgのポサコナゾールを提供する量で、単一用量または分割用量(好ましくは、分割用量のBID)で、約5日間〜約10日間にわたって投与し、投与される患者集団の少なくとも約75%において、少なくとも約319ng/mLの定常状態平均血漿中濃度(Cavg)、または投与される患者集団の少なくとも約90%において、少なくとも約228g/mLの定常状態平均血漿中濃度(Cavg)を達成することが好ましい。
【0021】
本発明の他の局面および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面から明らかになる。
【0022】
本発明は、以下の詳細な説明および添付の図面に、より完全に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】図1Aは、100RPMのパドル速度を用いてUSP Apparatus IIを使用して決定される場合の、本発明の3つの異なる組成物を使用して調製された剤形についての、pH1(0.1N HCl)における溶解プロフィールのグラフ表現を示す。
【図1B】図1Bは、100RPMのパドル速度を用いてUSP Apparatus IIを使用して決定される場合の、本発明の3つの異なる組成物を使用して調製された剤形についての、pH6.4(50mMリン酸緩衝液)における溶解プロフィールのグラフ表現を示す。
【図2】図2は、1:3の重量比のポサコナゾール:HPMC−AS(M等級)を含有する本発明の組成物から得られた、示差走査熱量測定(DSC)データのグラフ表現を示す。
【図3】図3は、強度対回折角(2θ(°)として表される)としてプロットされた、異なる重量比(1:1、1:2、1:3、および1:4)のポサコナゾール:HPMC−AS(M等級)を含有する本発明の組成物のX線粉末回折スペクトルのグラフ表現を示す。
【図4A】図4Aは、(i)ポサコナゾール懸濁物(Noxafil(登録商標));(ii)カプセルに含まれた、本発明の粉砕した顆粒状ポサコナゾール/HPMC−ASポリマー組成物;および(iii)2つの異なる処方物に組み込まれて錠剤にプレスされた、本発明の粉砕された顆粒状ポサコナゾール/HPMC−ASポリマー組成物の「摂食条件」で、ヒト被験体に100mgの用量を投与した後に観察された、血漿レベルのグラフ表現を示す。
【図4B】図4Bは、(i)ポサコナゾール懸濁物(Noxafil(登録商標));(ii)カプセルに含まれた、本発明の粉砕した顆粒状ポサコナゾール/HPMC−ASポリマー組成物;および(iii)2つの異なる処方物に組み込まれて錠剤にプレスされた、本発明の粉砕された顆粒状ポサコナゾール/HPMC−ASポリマー組成物の「絶食条件」で、ヒト被験体に100mgの用量を投与した後に観察された、血漿レベルのグラフ表現を示す。
【図5】図5は、ポサコナゾールが次第に上昇する温度のポリマー融解物中に存在する場合の、それぞれの温度における一定時間について次第に増大するポサコナゾール分解の割合(分解生成物のHPLCシグナルの増加の%)のグラフ表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
上記のように、1つの局面において、本発明は、ポサコナゾールおよびポリマーを含有する組成物であり、ここでこの組成物は、約1.2g/mLより高い固体密度を有する。理論により束縛されることを望まないが、本発明の組成物において、ポサコナゾールは、このポリマーに溶解したかまたは分子分散したかのいずれかで存在すると考えられる。理論により束縛されることを望まないが、本発明の組成物は、非常に低い程度の長距離秩序を有するにもかかわらず固溶体形態を示すか、または本発明の組成物は、本質的に非晶質であり、従って、ガラス材料の形態を有すると考えられる。これらの形態のうちの任意の全てのものが、本明細書中で、用語「溶解」、「分子分散」、「分子分散物」、「融解分散物」、および「分散物」により想定され、これらの用語は、本明細書中で、種々の調製段階および種々の温度における本発明の組成物を記載する簡便さのために使用される。
【0025】
本発明の組成物の形態は、部分的には、図2を参照しながらよりよく理解される。図2は、3:1の重量比のHPMC−ASポリマー:ポサコナゾール遊離塩基を有する本発明の組成物のサンプルを使用して得られた、示差走査熱量測定(DSC)の結果を示す。図2は、これらのサンプルが、約90℃を中心とする1つの吸熱を示すことを示し、この吸熱は、単一の相を有する材料(例えば、固溶体またはガラス材料)の融点(mp)またはガラス転移温度(T)と一致する。本発明者らは、約4:1のポリマー:ポサコナゾール〜約1:1のポリマー:ポサコナゾールの重量比のHPMC−ASポリマー:ポサコナゾール遊離塩基を含有する本発明の組成物のサンプルを使用して、類似のDSC挙動を見出した。
【0026】
本発明の組成物に結晶性が存在しないことは、図3を参照するとよりよく理解され得る。図3は、本発明の2つの異なる組成物の各々から得られたXRD粉末パターンの対を示す。従って、図3に示されるスペクトルA(a)およびA(b)は、3:1の重量比のHPMC−ASポリマー:ポサコナゾール遊離塩基を含有する本発明の組成物を使用して得られたXRDデータを示す。スペクトルA(a)は、室温で3ヶ月間熟成させた組成物のサンプルを使用して得られたデータを示し、そしてスペクトルA(b)は、50℃の貯蔵温度で3ヶ月間熟成させた組成物のサンプルを使用して得られたデータを示す。図3に示されるスペクトルB(a)およびB(b)は、1:1の重量比のHPMC−ASポリマー:ポサコナゾール遊離塩基を含有する本発明の組成物を使用して得られたXRDデータを示す。スペクトルB(a)は、室温で3ヶ月間熟成させた組成物のサンプルから得られたデータを示し、そしてスペクトルB(b)は、50℃の貯蔵温度で3ヶ月間熟成させた組成物のサンプルを使用して得られたデータを示す。図3はまた、この図の最も下のトレースとして、異なる等級のHPMC−ASポリマー(等級L)(ポサコナゾールに対して3:1の比で存在する)を用いて作製された本発明の組成物のサンプルから得られた回折パターンを含む。
【0027】
図3のスペクトルは、加熱条件下での貯蔵後でさえも、結晶性ポサコナゾールがいずれのサンプルにおいても検出されなかったことを示す。使用したXRD技術は、サンプルの約3重量%の結晶相の検出限界を有するので、これらのデータは、本発明の組成物がいずれかの結晶性ポサコナゾールを含有する場合、その存在量は、試験されるサンプルの約3重量%未満であることを示す。図3のXRDデータおよび図2のDSCデータは、一緒になって、本発明の組成物が単一相を有し、そして長距離秩序をほとんどまたは全く有さないことを示す。従って、図2からのDSCデータおよび図3からのXRDデータは、非常に低い結晶性秩序を有する固溶体、または非晶質形態を有するガラスのいずれかと一致する。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本発明の組成物;本発明の組成物を含有する処方物;または本発明の組成物を含有する剤形が、ヒト患者に、約100mgのポサコナゾール遊離塩基に等価な量を含有する量で、絶食条件下で投与される場合に、少なくとも約10,000hr・ng/mLの曝露(AUC(tf))を提供する。いくつかの実施形態において、固体組成物を粉砕すること、好ましくは、測定された体積の粒子材料の重量計測による測定により決定される場合に、固体組成物を約0.6g/mLより大きいかさ密度を有する粒子形態、より好ましくは、約0.6g/mL〜約0.7g/mLのかさ密度を有する粒子形態に粉砕することによって、粒子形態で本発明の組成物を提供することが好ましい。いくつかの実施形態において、約200mgのポサコナゾール遊離塩基に等価な量を含有する量の本発明の組成物の、ヒト患者への、絶食条件下での経口投与の際に、この組成物は、少なくとも約670ng/mLのCmax血漿レベルを提供する。いくつかの実施形態において、絶食条件下の患者に約80mgのポサコナゾール遊離塩基〜約500mgのポサコナゾール遊離塩基、好ましくは、約160mg〜約250mgのポサコナゾール遊離塩基に等価な量を提供する量で投与される本発明の組成物は、この組成物が投与される患者において、少なくとも約335ng/mLのCmaxを提供する。
【0029】
本発明の別の局面において、真菌感染の治療的処置または予防的処置が、患者に、本発明の組成物;本発明の組成物を含有する処方物;または本発明の組成物を含有する剤形を、投与される患者において少なくとも約335ng/mLのCmaxを提供する量で経口投与することにより提供される。いくつかの実施形態において、真菌感染の治療的処置または予防的処置が、これらの処置を必要とする患者に、本発明の組成物;本発明の組成物を含有する処方物;または本発明の組成物を含有する剤形を、約80mg〜約500mgのポサコナゾール遊離塩基、好ましくは、約160mg〜約250mgのポサコナゾール遊離塩基に等価な量を提供する量で、この患者に経口投与することにより、提供される。いくつかの実施形態において、本発明の組成物;本発明の組成物を含有する処方物;または本発明の組成物を含有する剤形の、約80mgのポサコナゾール遊離塩基〜約500mgのポサコナゾール遊離塩基、好ましくは、約160mg〜約250mgのポサコナゾール遊離塩基に等価な量を提供する量での毎日の経口投与は、単一用量または分割用量として提供され、そして投与される患者集団の少なくとも約75%において、少なくとも約319ng/mLの定常状態Cavg血漿レベルを目標とする期間、または投与される患者集団の少なくとも約90%において少なくとも約228ng/mLのCavgを目標とする期間にわたって、繰り返される。
【0030】
いくつかの実施形態において、含有されるポサコナゾールの量が、医薬の製造に関するFDA指針に従って、所望量のポサコナゾール遊離塩基当量の約80%〜約125%を構成する、患者に投与するための剤形を提供することが好ましい。
【0031】
背景において記載されたように、ポサコナゾールのバイオアベイラビリティは、強い食物効果を示す。Noxafil(登録商標)(分散性である媒体中に存在する結晶性ポサコナゾールを含有するポサコナゾールの市販形態(例えば、Physicians Desk Referenc(PDR)のNoxafil(登録商標)についての項目を参照のこと。これは、本明細書中に完全に記載されているかのように、その全体が本参考として援用される))についてのラベルは、ポサコナゾールを摂食条件下にある患者に経口投与することができない場合は、別の方法を使用して処置することを考慮するべきであることを示唆する。
【0032】
好中球減少症患者(例えば、化学療法による長期の好中球減少症を患う患者)はしばしば、食物または栄養補給物を摂取する能力に乏しい。この身体障害は、ポサコナゾールの効果的な経口投与を問題があるものにする。本発明者らは、本発明の組成物を含有する処方物の経口投与が、驚くべきことに、食物効果を排除すること、すなわち、本発明の組成物を含有する処方物の経口投与が、この処方物が摂食条件下で投与されるか絶食条件下で投与されるかにかかわらず、患者集団全体にわたる実質的に同じポサコナゾール曝露、およびバイオアベイラビリディの少ない変動を提供することを見出した。さらに、本発明の組成物を含有する処方物の経口投与の結果が、摂食条件下または絶食条件下のいずれかで、市販の処方物(Noxafil(登録商標))の形態の等価な量のポサコナゾールの投与後に得られる結果と比較される場合、本発明の組成物は、驚くべきほど増加したバイオアベイラビリティを与え、被験体の集団全体にわたるバイオアベイラビリディの変動はより低く、そして本発明の組成物が投与される健常なボランティアにおいて、より高い曝露レベル(AUC)を与える。さらに、類似の結果が、本発明の組成物を含有する処方物が投与される患者において達成されると考えられる。
【0033】
さらに、本発明の組成物を含有する剤形の経口投与は、同じ量のポサコナゾールおよび同じポリマーを含有するが噴霧乾燥技術により調製された比較組成物の経口投与と比較される場合に、顕著かつ予測不可能な血漿レベルの増加を生じ、かつこの剤形が投与される患者集団全体にわたるバイオアベイラビリディのより小さい変動を示す。本発明者らは、本発明の組成物が、1.2g/mLを超える固体密度を有することに注目した。本発明者らはまた、粉砕される場合に、本発明の組成物が、測定された体積の粒子材料が重量計測により測定される場合に、0.6g/mLを超えるかさ密度を有する粒子を与えることを見出した。それと比較して、本発明者らは、本発明の組成物と同じ比のポサコナゾールとポリマーとを有し、そして本発明の組成物と同じポリマーを使用して調製された、噴霧乾燥された組成物が、約0.3g/mL未満のかさ密度を示すことに注目した。
【0034】
臨床研究において、本発明者らはまた、驚くべきことに、本発明の組成物の、摂食条件下または絶食条件下のいずれかでの経口投与が、水性ポサコナゾール懸濁剤の静脈内(IV)投与により達成されるPK結果と実質的に同じPK結果を提供することを見出した。以下の表Iは、上記情報の全てを要約する研究結果を示す。
【0035】
市販のポサコナゾール懸濁剤の投与について公知であるように、ポサコナゾールのバイオアベイラビリティは、一般に、「摂食条件」下でのNoxafil(登録商標)の投与により最適化される。このことは、上の表に示される研究に反映される。表Iのデータはまた、本発明の組成物を含有する処方物が、「摂食条件」下で投与される経口投与のために市販されている水性懸濁物の投与により達成される結果と比較して、「摂食条件」下または「絶食条件」下のいずれかで投与される場合に、顕著かつ予測不可能に改善されたPKパラメータを与えることを示す。
【0036】
【表1】

カプセル剤ならびに錠剤Iおよび錠剤IIを、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC−AS、M等級)およびポサコナゾール遊離塩基を含有する、本発明の組成物の粒子形態から調製した。この粒子を、押し出した組成物を粉砕することにより調製した。錠剤を、粒子形態の組成物をアスコルビン酸、HPMCAS(M等級)、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ならびに(i)微結晶性セルロースおよび低置換ヒドロキシプロピルセルロース(錠剤I);または(ii)ポビドンおよびクロスカルメロースナトリウム(錠剤II)のいずれかと混合し、続いてこの混合物を直接圧縮により錠剤化することにより調製した。
カプセル剤を、粉砕した粒子形態の組成物をアスコルビン酸およびHPMC−AS(M等級)と混合し、そしてこの混合物をゼラチンカプセルに入れることにより調製した。
IV懸濁剤を、本明細書中の比較例2に記載されるように調製した。
報告される値は、研究した群についての平均である。
AUC(tf)、サンプルが定量可能な最小量のポサコナゾール(LLOQ、定量の下限、引き出した被験体の血液から得られた血漿サンプル中に存在するポサコナゾールを定量するために液体クロマトグラフィー−タンデム型質量分析法を使用して5.00ng/mL)を含む時点で決定した値の終点。
報告された値は、観察されたAUC(tf)値に基づいて計算された無限値である。
AUC(I)値から計算された見かけのクリアランス。
【0037】
さらに、これらのデータは、他の経口処方物を使用して観察された食物効果(「絶食条件」下での投与と比較した「摂食条件」下での剤形の投与間で観察された曝露の差)が、本発明の組成物を含有する処方物が経口投与される場合に実質的に排除されることを示す。表Iはさらに、本発明の組成物の経口投与が、「摂食条件」下の患者への、ポサコナゾール懸濁剤の静脈内投与(IV)から得られるPKパラメータと実質的に同じPKパラメータを与えることを示す。従って、曝露の顕著かつ予測不可能な改善に加えて、本発明の組成物を含有する経口投与用処方物はまた、懸濁剤の経口投与において観察される食物効果を排除する。これらの印象的な結果は、投与される剤形が、本発明の組成物を、ゼラチンカプセルに封入された粉砕された粒子の形態で含有しようと、粉砕された粒子と種々の錠剤化賦形剤との混和物の直接の圧縮により調製された錠剤の形態であろうと、本発明の組成物から得られる(本発明の組成物で満たされたカプセル剤と比較した錠剤Iおよび錠剤IIについての表Iの結果を参照のこと)。
【0038】
表IIに示されるものは、表Iに示されるデータを得るために研究された被験体集団全体にわたって観察された測定値における、表Iにおいて報告された平均Cmax値および平均AUC値からの変動である。この変動の範囲は、報告される平均値に対するデータの1標準偏差の比の百分率として表される。
【0039】
表IIに報告されるデータは、絶食被験体の間で、経口懸濁剤が、個々の被験体間で広範な変動を示したことを示す。しかし、本発明の組成物を含有する投薬物(dosage)を受けた絶食被験体は、予測不可能なことに、研究された被験体の間で有意に低い百分率の変動を有する。
【0040】
【表2】

Noxafil(登録商標)(ポサコナゾールの経口懸濁剤)が投与された被験体の間での、測定されたPKパラメータの変動は、表IIIのデータによりさらに説明される。表IIIは、200mgのNoxafil(登録商標)水性懸濁剤を1日に3回(TID)、急性骨髄性白血病(AML)を患う194人の患者に投与することにより得られた、定常状態PK結果を報告する。表IIIは、研究された群の99%が1920ng・hr/mL未満のCavg値を有し、50%が486ng・hr/mL未満のCavg値を有し、そして5%が170ng・hr/mL未満のCavg値を有したことを示す。200mgのNoxafil(登録商標)(TID)の投与後のこの患者集団における平均Cavgは、582ng/mLであり、偏差の百分率は64%であった。バイオアベイラビリティの広範な変動性に起因して、200mg TIDは安全かつ有効な用量であり、患者集団の90%に対して治療レベル(228ng/mL以上のCavg値)を提供するとみなされた。この研究は、Noxafil(登録商標)が投与された患者集団全体にわたるバイオアベイラビリティの変動性が、健常なヒトボランティアにおいて観察される変動性と少なくとも同程度に高いことを示す。本発明の組成物を含有する投薬物が投与された健常な被験体における変動性の予測不可能な有意な低下は、本発明の組成物を含有する投薬物が投与される患者集団の間での変動性の有意な低下に反映されると考えられる。
【0041】
【表3】

本発明の組成物を含有する投薬物を投与する際に観察される変動性の驚くべき低下および食物効果の排除に基づいて、本発明の組成物が、ポサコナゾール治療を必要とする患者に、1日あたり約80mgのポサコナゾール〜約500mgのポサコナゾール、好ましくは、約100mgのポサコナゾール〜約400mgのポサコナゾールの量で、単一用量または分割用量のいずれかで経口投与される場合、安全かつ有効な治療血漿レベルのポサコナゾールが提供されると考えられる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物が投与される患者の75%において少なくとも約319ng/mlの定常状態Cavgを提供する量および間隔で、本発明の組成物を提供することが好ましい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物が投与される患者の90%において少なくとも約228ng/mlの定常状態Cavgを提供する量および間隔で、本発明の組成物を提供することが好ましい。1つの実施形態において、単一用量または分割用量で、本発明の組成物を、必要とする患者に、少なくとも約160mgのポサコナゾール〜少なくとも約250mgのポサコナゾール、より好ましくは、約200mgのポサコナゾールを提供する量で、毎日投与することが特に好ましい。
【0042】
以下の表IVは、示された用量(ポサコナゾール遊離塩基の当量のmg数/被験体の体重のKg数)を絶食条件下でカニクイザルに投与することにより得られたPK結果を示す。表IVは、種々の処方物の投与後に観察されたPK結果を、市販のNoxafil(登録商標)ポサコナゾール処方物の投与後に観察されたPK結果と比較する。
【0043】
表IVは、重量を調整された基準で、示されるデータがこの研究において使用されたサルに投与されたポサコナゾールの量に差について補正される場合に、噴霧乾燥技術により調製された材料と比較して、予測不可能なことに、本発明の組成物を含有するカプセル剤と錠剤との両方が、この研究において使用された他の剤形に含まれる当量のポサコナゾールの経口投与後に観察されるものよりも有意に高いCmaxレベルおよび曝露(AUC)を提供したことを示す。
【0044】
【表4】

ホットメルト押し出し技術を使用して製造した押し出し物を粉砕することにより調製された粒子、粒子をふるい分けして、分級した材料(約75ミクロン〜約300ミクロンの粒径範囲を提供し、250ミクロンの中央粒径を有する)でカプセルを満たすことにより調製されたカプセル剤。
カプセル調製において使用された粒子形態のHPMC−AS/ポサコナゾール組成物をアスコルビン酸、HPMCAS(M等級)、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、微結晶性セルロースおよび低置換ヒドロキシプロピルセルロースと混合し、引き続いてこの混合物を直接圧縮を使用して錠剤化することにより調製された錠剤I。
カプセル調製において使用された粒子形態のHPMC−AS/ポサコナゾール組成物をアスコルビン酸、HPMCAS(M等級)、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ポビドンおよびクロスカルメロースナトリウムと混合し、引き続いてこの混合物を直接圧縮を使用して錠剤化することにより調製された錠剤II。
本明細書中の比較例1に記載されるように、ポサコナゾール遊離塩基およびポリマーを含有する溶液を噴霧乾燥させることにより調製されたカプセル剤。
排除された被験体により証明された遅い吸収に起因して、研究群の半分からのデータを、t1/2を計算する際に排除した。
【0045】
表IVは、本明細書中に記載される比較例1に従って調製された噴霧乾燥された組成物を含有する投薬物をサルに投与した後に得られたデータを含む。表IVに示されるように、一般に、噴霧乾燥により提供された組成物は、高い曝露レベルを提供しない。例えば、表IVに示されるように、本発明の組成物がより低い、重量を調整された投薬レベル(本発明の組成物についての10mg/kg〜13mg/kgと、噴霧乾燥された組成物についての16mg/kgとを比較のこと)で投与される場合でさえも、観察されるAUC(tf)値は、噴霧乾燥された組成物を投与する場合に観察されるものよりも有意に高い。
【0046】
表IVにおいて、AUCtfは、投与から定量可能な最後のサンプルの時点(サンプルが定量可能な最低レベルのポサコナゾールを含む時点)までの間隔にわたるAUCを表し、そしてAUC(I)は、観察されたAUCtfから得られた値に基づく無限時点における曝露の計算された投影である。表IVのデータは、本発明の組成物を含有する剤形の、絶食条件下での経口投与が、噴霧乾燥技術により調製された組成物で満たされたカプセル剤に含まれる当量のポサコナゾールの絶食条件下での投与と比較される場合に、Cmaxおよび曝露の予測不可能な増加を示すことを示す。
【0047】
表I〜表IVは一緒になって、被験体に絶食条件下で投与されようと摂食条件下で投与されようと、本発明の組成物を含有する処方物の経口投与が、他の剤形と比較して、ポサコナゾールの血漿レベルおよびポサコナゾール曝露の予測不可能な改善を提供し、投与される患者集団の間で観察されるPK値の変動性がより低いことを説明する。さらに、これらのデータは、他の経口投与されたポサコナゾール含有処方物において見られる食物効果が、本発明の組成物を含有する処方物を使用して実質的に排除されることを説明する。
【0048】
上記のように、理論により束縛されることを望まないが、本発明の組成物において、ポサコナゾール活性薬学的成分(API、これらの処方物において、ポサコナゾール遊離塩基)は、ポリマーマトリックスに溶解または分子分散していると考えられる。これらの組成物は、ガラス形態または固溶体形態を有すると考えられる。本発明において使用するために、適切なポリマーまたはポリマー混合物は、ポサコナゾールのための溶媒として働くものである。適切なポリマーのクラスの1つの例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体ポリマーである。さらに、本発明の組成物において使用するために適切なポリマーは、ポサコナゾールAPI自体の融点より低いガラス転移温度または融点を有し、そしてヒトの腸内に存在する環境でインビボで溶解し得る、ポサコナゾールを含む組成物を与える。いくつかの実施形態において、ポサコナゾールの熱分解点より低い融点を有するポサコナゾールAPI/ポリマー組成物を形成するポリマーを、本発明の組成物において使用することが好ましい。いくつかの実施形態において、pH約2.0の値より酸性が高いpH値を有する水性環境において乏しい溶解度を示し、そして約6.4〜約6.8のpH値、好ましくは、pH約6.8より酸性が低い水性環境において良好な溶解度を示す組成物のために、ポリマーまたはポリマー混合物を選択することが好ましい。
【0049】
本発明の組成物において使用するために適切な、このpH感受性溶解パラメータに合うポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体ポリマー(HPMC誘導体ポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)ポリマー(以下に式Iのポリマーとして図示される)は、「n」が1より大きい整数であり、そして「R」が、各存在について独立して、水素、−CHまたは−CH−CH(OH)−CHであり、そして各「R」部分が所定のポリマー鎖内に少なくとも1回存在する、セルロースポリマーである。
【0050】
【化1】

従って、HPMC誘導体ポリマーとは、ポリマー鎖中の「R」基のうちの少なくとも1つ以上がメチルまたはヒドロキシプロピル以外の炭化水素部分(例えば、フタレート、アセテート、およびスクシネート)である、HPMCポリマーである。さらに、HPMC誘導体ポリマーはさらに、ヒドロキシプロピル部分のヒドロキシル基に置換を含み得る(例えば、このヒドロキシル基の、有機酸から誘導される置換基(例えば、フタレート置換基、アセテート置換基またはスクシネート置換基)でのエステル化による)。本発明の組成物を調製する際に使用するために適切なHPMC誘導体ポリマーの例としては、ヒドロキシプロピルアセテートスクシネート(HPMC−AS)ポリマーが挙げられるが、これに限定されない。HPMC−ASポリマーは、「R」が各存在について独立して、H、−CH、−CH−CH(OH)−CH(2−ヒドロキシプロピル)、−C(O)−CH(アセテート)、−C(O)−(CH−C(O)−OH(スクシネート)、−CH−CH(CH)−OC(O)CH(2−アセトキシプロピル。2−ヒドロキシル部分がアセテートで置換されている2−ヒドロキシプロピル置換基から誘導される)、または−CH−CH(CH)−OC(O)−(CH−C(O)−OH(2−スクシニル−プロピル。2−ヒドロキシル部分がスクシネートで置換されている2−ヒドロキシプロピル置換基から誘導される)である、式Iの構造を有する。
【0051】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の組成物において使用するためのHPMC−ASポリマーのいずれかの等級を選択する際に、この組成物は、この組成物において使用されるポサコナゾールの分解がほとんどまたは全くなしで調製され得ることを見出した。従って、組成物においてHPMC−ASポリマーを使用するいくつかの実施形態において、約80℃〜約145℃、好ましくは、約100℃〜約145℃、そしてより好ましくは、約120℃〜約135℃のガラス転移温度を有するHPMC−ASポリマーの等級を利用して組成物を調製することが好ましい。この基準に合う適切なHPMC−ASポリマーとしては、約70の重合度(数平均として表される)を有するHPMC−ASポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。適切なポリマーは、市販されている。例えば、SEC−MALLSを用いて(製造業者の仕様に従って)測定される場合に約70の数平均を有する市販のAQOAT(登録商標)(Shin Etsu,Japan)材料である。より高い数平均またはより低い数平均を有するいくつかの化合物もまた使用され得ることが、理解される。
【0052】
HPMC−ASポリマーを使用するいくつかの実施形態において、重量%で約8重量%〜約12重量%でポリマー中に存在するアセチル部分、および重量%で約6重量〜約15重量%でポリマー中に存在するスクシノイル部分を有するHPMC−ASポリマーを使用することが好ましい。本発明において使用するために適切なHPMC−ASポリマーは、市販されており、例えば、ShinEtsuによりそのHPMC−ASポリマーのAQOAT(登録商標)系列で供給されるHPMC−AS(例えば、AQOAT(登録商標)HPMC−ASのL等級、M等級、およびH等級)であるが、これらに限定されない。他の等級のHPMC−AS(異なる重合度ならびに異なる百分率のスクシノイル置換およびアセチル置換を有するものを含む)が、本発明の組成物の範囲から逸脱することなく、代替的にかまたは追加でのいずれかで使用され得ることが理解される。
【0053】
いくつかの実施形態において、好ましくは、組成物において使用されるポサコナゾール(遊離塩基形態の重量に換算して表される)およびポリマーの量は、約5重量%のポサコナゾール遊離塩基当量〜約50重量%のポサコナゾール遊離塩基当量を含有する組成物を提供するように選択される。いくつかの実施形態において、使用されるポサコナゾール遊離塩基およびポリマーが、HPMC−ASポリマーであり、この組成物が、約1:1〜約1:4の重量比のポサコナゾール遊離塩基対HPMC−ASポリマーを含む、組成物を調製することが好ましい。いくつかの実施形態において、重量で約1:2〜重量で約1:3のポサコナゾール遊離塩基:HPMC−ASである組成物を与えるポサコナゾール遊離塩基対HPMC−ASの重量比の量を使用することが好ましい。より好ましくは、この組成物は、重量で約1:3のポサコナゾール遊離塩基:HPMC−ASポリマーである。
【0054】
図5は、ポサコナゾール遊離塩基が約10秒間〜約1.5分間の加熱時間で融解ポリマーに溶解される場合の、次第に増加する加工温度において観察されるポサコナゾール分解の次第に増加する量を図示する。図5から、融解温度のわずかな増加が、ポサコナゾール遊離塩基の分解の量を劇的に増加させることがわかる。重要なことには、この増加は、ポサコナゾール遊離塩基の融点より10℃高い温度において最大である。本発明者らは、驚くべきことに、ポサコナゾール遊離塩基およびHPMC誘導体ポリマーを含有する混和物が、加熱中には共晶であるかのように挙動することを見出した。理論により束縛されることを望まないが、ポサコナゾール遊離塩基は、HPMC誘導体ポリマー(例えば、HPMC−AS)との混和物中で融剤として働き、このポリマーの局所的融解およびこのポリマーへのポサコナゾール遊離塩基の溶解を促進すると考えられる。従って、驚くべきことに、本発明の組成物は、この組成物のポリマーマトリックスを構成するように選択された固体の粒子形態の1つ以上のポリマーを、固体の粒子形態のポサコナゾール遊離塩基と混和し、この混和物をその溶融温度以上まで加熱してそのポサコナゾール遊離塩基が溶解した融解物が形成されるようにし、そしてこの融解物を冷却して固体を提供することにより、調製され得る。好ましくは、加熱は、この混和物の溶融温度以下の温度を提供するように制限され、そして融解物を冷却して固体を提供する前にこの組成物の均質性を保証するために必要である時間以下で維持される。
【0055】
従って、HPMC−ASをマトリックスポリマーとして使用するいくつかの実施形態において、ポサコナゾール遊離塩基およびHPMC−ASポリマーを含有する組成物を、以下を包含するプロセスにより調製することが好ましい:(i)ポサコナゾール遊離塩基の顆粒と選択されたヒドロキシプロピルメチルセルロールアセテートスクシネートポリマー(HPMC−AS)の顆粒とを含有する混合物を乾式ブレンドする工程であって、好ましくは、このポサコナゾールは、約1ミクロン〜約1ミリメートルの粒径を有する粒子材料として提供され、そしてこのポリマーは、約0.2ミクロン〜約1ミクロンの粒径を有する粉末形態で提供され、これによって、ポリマーとポサコナゾール遊離塩基との中間混合物を形成する、工程;(ii)この混合物を、使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートポリマーのガラス転位温度(Tg)より高く、ポサコナゾール遊離塩基の融点(約169℃)より低い温度まで加熱し、必要に応じて、この加熱された混合物をブレンドする工程であって、これによって、HPMC−ASに溶解したポサコナゾール遊離塩基の融解分散物を形成する工程;および(iii)工程(ii)において形成された分散物を冷却して、HPMC−AS中のポサコナゾール遊離塩基の組成物を提供する工程。いくつかの実施形態において、必要に応じて工程(ii)の後に、形成された分散物が押し出され、その後、冷却工程(iii)が実施される。遊離塩基以外の何らかの形態のポサコナゾール(例えば、ポサコナゾールの塩またはプロドラッグ)が、この同じプロセスにおいて使用され得、類似の結果を生じ、そして本発明の範囲から逸脱しないことが理解される。ただし、選択されるポサコナゾールの形態は、本発明の組成物を調製する際に使用するために選択されたポリマーとの混和物中に存在する場合に、類似の「溶融」挙動を起こす。本明細書中に記載されるように、ポサコナゾールが可溶性であり、そして類似の融解挙動を有する他のポリマーが、HPMC−ASポリマーの代わりにかまたはHPMC−ASポリマーに加えて使用され得、そして依然として、本発明の範囲内である。
【0056】
本発明者らは、驚くべきことに、上記プロセスに従って製造された組成物が、より高温で融解するポリマー、またはポサコナゾールが上記溶融特性を示さないポサコナゾールとポリマーとの混合物を利用するプロセスと比較される場合、あるいはポリマーが融解されて他の成分がこの融解ポリマーに溶解されるプロセスが利用される場合、ポサコナゾール分散物の調製中に、ポサコナゾール遊離塩基の熱分解および酸化を最小にするかまたは排除することを見出した。従って、本発明者らは、驚くべきことに、このプロセスを使用することにより、本発明の組成物が有意に低い温度で調製され得、その結果として、この組成物を調製するために、最初に適切なポリマーを融解し、次いでその組成物の他の成分をこの融解したポリマー成分内に混合することにより使用される熱エネルギーよりもかなり低い熱エネルギーを使用することを見出した。さらに、混和物中に存在するポサコナゾールは、見かけ上、ポリマーの融解を促進する融剤として働くので、この組成物の成分が均一な組成物を提供するための温度を維持しなければならない時間が最小にされ得る。熱エネルギー、融解温度、および融解物が均質性を保証するための温度に維持されなければならない時間量を最小にする能力の結果として、他の成分が溶解される融解ポリマーマトリックスを提供することに依存する従来のホットメルトプロセスと比較して、本発明の組成物の形成中に分解するAPIの量の驚くべき低下となる。
【0057】
調製プロセスの上記議論を続ける際に、融解物は、任意の従来の装置において調製され得、この装置内で、ポサコナゾールとポリマーとの混和物が加熱され得、そして必要に応じて撹拌され得る。固化は、単に、好都合な任意の手段によって、好都合な任意の容器内で、この融解物を冷却することにより実施され得る。一旦、固体が得られたら、この固体はさらに機械加工されて、医薬(例えば、錠剤またはカプセル剤)への組み込みのために好都合な形態を提供し得る。
【0058】
融解物を調製し、これを固化させ、そしてこの固体を好都合なサイズの粒子に形成する、他の方法が、本発明の範囲から逸脱することなく利用され得ることが理解される。例えば、好都合には、本発明の組成物は、押し出し機を使用して調製され得る。本発明の組成物を調製するために押し出し機が使用される場合、好都合には、材料は、溶融前状態(すなわち、乾式混和物として)または溶融状態(すなわち、APIをポリマーに溶解させるために充分な熱をこの混和物に付与した後に達成される、融解状態、可塑性状態もしくは半固体状態)のいずれかで、押し出し機に導入され得る。必要に応じて、溶融充填物が調製される場合、ブレンドは、溶融材料の均一性を促進するために、加熱中に使用され得る。
【0059】
材料が溶融状態で押し出し機に導入される場合、この押し出し機内での滞留時間は、この組成物の均質性を保証するためにちょうど充分であるように選択され、そしてその温度は、好ましくは、押し出し機中で、材料がその可塑性を維持して好都合な形状の押し出し物に押し出され得ることを保証するためにちょうど充分なレベルに維持される。この材料が前溶融状態で押し出し機に導入される場合、この押し出し機の構成要素(例えば、この装置に存在するバレルおよび任意の混合チャンバ)は、この混和物の溶融を促進するために充分な温度に維持される。組成物を加工する際に使用するために選択される温度はまた、この押し出し装置内(例えば、バレルの混合セクション)で起こるブレンドもまた、混合物内で加熱を誘導する剪断応力を付与することにより、この混和物の局所的溶融に寄与することを考慮する。さらに、装置の温度および滞留時間は、押し出し機に入れられる混和物が加熱条件下および/または剪断応力条件下に置かれる時間量を最小にして、上で議論されたように、組成物の形成中に分解するAPIの量を最小にするように選択されることが理解される。一般に、押し出される材料に熱が付与される押し出しプロセスは、「ホットメルト/押し出しプロセス」と称される。
【0060】
本発明の組成物が押し出し装置を使用して調製される場合、このように提供される押し出し物は、任意の好都合な形状(例えば、ヌードル、円筒、棒など)であり得る。所望であれば、この押し出し物は、(例えば粉砕により)さらに加工されて、粒子形態の組成物を提供し得る。
【0061】
本発明者らはまた、驚くべきことに、ポサコナゾールおよびポリマーの混和物を融解することにより調製される組成物が、ポリマーに溶解または分子分散したポサコナゾールを含有し、そして約1.2g/mLより高い固体密度を有する組成物を生成することを見出した。約75ミクロン〜約300ミクロンの粒径範囲(これは、本明細書中に記載される噴霧乾燥技術により調製される顆粒材料のサイズ範囲と等価である)を有する粒子材料を得るために粉砕された後でさえも、固体分散物の粉砕された粒子は、驚くべきことに、本発明の組成物のサンプルを粉砕することにより製造された、測定された体積の粒子材料を秤量することにより決定される場合に、約0.6g/mLより高いかさ密度、代表的には、約0.6g/mL〜約0.7g/mLのかさ密度を有する。これとは異なり、噴霧乾燥されて粉砕された粒子組成物(ポサコナゾールおよび本発明の組成物を提供する際に使用されたものと同じHPMC誘導体ポリマーを含有する溶液を噴霧乾燥することにより調製された)は、同じ粒径範囲に粉砕される場合に、同じ技術を使用してかさ密度が決定される場合、代表的に約0.4g/mL未満、代表的には約0.3g/mL未満のかさ密度を有する。
【0062】
本発明の組成物は、この組成物が製造された形態(例えば、粒子、小球状、または押し出し形材)で患者に投与され得るか、あるいは固体分散物が、さらなる加工によって剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤形)に組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、粒子形態の組成物は、1種以上の賦形剤(例えば、特殊粒子(extra−particle)ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体(例えば、HPMC−AS)(希釈剤としてもまた働き得る結合剤)、ポビドン(結合剤)、ヒドロキシプロピルセルロース(結合剤)、微結晶性セルロース(希釈剤)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(崩壊剤)、クロスカルメロースナトリウム(崩壊剤)、二酸化ケイ素(グライダント)およびステアリン酸マグネシウム(magnesium state)(滑沢剤))とさらに混和され得る。所望の賦形剤と混和した後に、この混和物は、標準的な錠剤化プレス機を使用して、錠剤に圧縮され得る。あるいは、粉砕された組成物が、カプセル(例えば、ゼラチンカプセル)に充填することにより直接使用され得る。好都合な剤形が、カプセルを本発明の組成物を含有する融解物で、液体形態または半固体形態のいずれかで直接充填し、そしてこの融解物をこのカプセル内で固化させることにより調製され得ることもまた理解される。これらの手段のうちのいずれか1つを使用して、本発明は、表I〜表IVにおいて上で説明されたように、噴霧乾燥により調製された組成物を含有する剤形または他の剤形から得られるよりもバイオアベイラビリティが約3倍〜約19倍高い形態の、経口投与用のポサコナゾール含有剤形を提供する。
【0063】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の組成物(HPMC誘導体ポリマー(例えば、HPMC−ASポリマー)に溶解または分子分散したポサコナゾール遊離塩基)が、pH約1のpHを有する水性溶解媒体を使用する溶解試験に供される場合に、この組成物(およびこの組成物を含有する剤形)は、1時間にわたって、この組成物中に存在するポサコナゾールのうちの約20w/w未満を放出すること、ならびに同じ組成物(またはこの組成物を含有する剤形)のアリコートが、pH約6.4〜pH約6.8のpHを有する溶解媒体を提供するために充分な量のNaHPOおよびNaHPOを含有する50mMリン酸緩衝水溶液に入れられる場合に、この組成物(またはこの組成物を含有する剤形)が、約20分以内で、この酸性が低い溶解媒体中に存在するポサコナゾールの約20w/wより多くを放出することを見出した。本発明者らは、類似の溶解結果が、U.S.P.Paddle Dissolution Apparatus IIにおいて実施される第二の決定(ここで、試験の開始時の溶解媒体は、0.1NのHCl水溶液であった)において得られることを見出した。この後者の試験において、本発明の組成物(または本発明の組成物を含有する剤形)のアリコートは、溶解媒体に入れられ、そして約1時間撹拌され、この間に、溶解媒体のアリコートを取り出し、そしてこれらのアリコートをポサコナゾール含有量について分析評価した。1時間後、この溶解媒体の酸性度を、適切な量のNaHPOとNaHPOとの混合物の添加により、pH約6.4〜pH約6.8のpHに調整し、これによって、記載されるpH範囲の50mMリン酸緩衝溶液を含有する溶解媒体を提供した。撹拌を、継続した規則的なサンプリング、およびポサコナゾール含有量についての溶解媒体のアリコートの分析評価と共に継続した。この後者の試験は、より酸性が高い媒体において、サンプル中に含まれるポサコナゾールの約20w/w未満が1時間で放出され、そしてこの溶解媒体のpHが変更された後に、このサンプル中に含まれるポサコナゾールの約20w/wより多くが、より酸性が低い環境に置かれた約20分以内で放出されたという、同じ結果を示した。これらの溶解試験を行ういずれの方法においても、決定は、50rpmまたは100rpmのパドル速度を使用して、溶解溶媒を37℃に維持して実施された。本発明者らはまた、驚くべきことに、これらの溶解特性が、異なる等級のHPMC−ASポリマーについて、ならびに同じ等級のHPMC−ASポリマーおよび異なる比のポリマーとポサコナゾールとを使用する組成物において、維持されることを見出した。図1Aを参照すると、図1Aは、1:1の比のHPMC−AS MF等級(菱形の追跡)、3:1の比のHPMC−AS MF等級:ポサコナゾール(三角形の追跡)および3:1の比のHPMC−AS LF等級:ポサコナゾール(塗りつぶした円形の追跡)を含有する組成物の、pH1環境における溶解プロフィールを示し、各組成物に含まれるほんの少量のポサコナゾールが、上記試験条件下で溶解したことが理解され得る。図1Bを参照すると、図1Bは、1:1の比のHPMC−AS MF等級(塗りつぶした円形の追跡)、3:1の比のHPMC−AS MF等級:ポサコナゾール(菱形の追跡)および3:1の比のHPMC−AS LF等級:ポサコナゾール(四角形の追跡)を含有する組成物の、pH6.4環境(リン酸緩衝液)中での溶解プロフィールを示し、各組成物に含まれるかなりの量のポサコナゾールが、図1Bに記載される試験条件下で溶解したことが理解され得る。従って、図1Aおよび図1Bは、本発明の組成物が、酸性環境(例えば、ヒトの胃において見出される環境)におけるポサコナゾールの溶解を防止し、そして酸性が低い環境(例えば、ヒトの腸において見出される環境)におけるポサコナゾールの溶解を促進することを説明する。
【0064】
以下に、本発明の説明であって本発明を限定しない、非限定的な実施例が提供される。以下の実施例において、本発明のバルク固体組成物からの粒子材料の調製は、ハンマーミルを使用して例示されるが、本発明の固体分散物は、任意の手段(例えば、固体分散物を粉砕、小球化、または他の様式で機械加工して粒子形態を与えること)を使用して、顆粒状粒子形態に変換され得ることが理解される。
【実施例】
【0065】
HPMC−ASポリマーに分散されたポサコナゾールを含有する本発明の組成物を調製する実施例、本発明の固体組成物を薬学的処方物および種々の剤形に変換する実施例、ならびにヒト被験体への処方物の投与から得られるPK結果が、以下に提供される。
【0066】
(実施例1:本発明の押し出し組成物の調製)
(実施例1A−小パイロットプラント規模押し出し調製)
Bohleビン(bin)低剪断ブレンダーにおいて、7.5kgのHPMC−AS(M等級、Shin−Etsu AQOAT、製造業者から受け取った状態で、約5ミクロン〜約1ミリメートルの粒径範囲を有する)および2.5kgのポサコナゾール遊離塩基と等価な量であると分析評価された量の、ポサコナゾール遊離塩基含有材料(分析評価25%活性、総重量10.0kgの材料、製造業者であるSchering−Plough corporationから受け取った状態で微粉化した)を一緒にブレンドすることにより、ポサコナゾール遊離塩基とHPMC−ASポリマーとの混和物を調製した。均質な混和物が調製されるまで、この充填物をブレンドした。
【0067】
上で調製された混和物のアリコートを、18mmの直径、450mm長の同時回転スクリューを有するLeistrits ZSE二軸スクリュー押し出し機に、本発明の組成物を含有する10Kgの押し出し物が調製されるまで通した。押し出し物の調製中に、混和物をこの押し出し機に、1:1減速機および2枚刃撹拌機を備えるKCL−KT20重量計測フィーダーにより供給した。この押し出し機の出口に、4mmの直径の「ヌードル」を製造するダイプレートを備え付け、このヌードルを、この出口において、1mm〜4mmの長さを有する無作為な長さのペレットに切断した。別の実施において、このダイプレートを、1つの4mmの円形開口部を有するダイプレート、または2つの4mmの円形開口部を有するダイプレートから選択した。そのスループット割合は、ダイプレートの選択によって影響を受けなかった。押し出し中に、このフィーダーの撹拌機を、押し出し機の出口において1.4kg/h〜4.0kg/hの組成物の押し出し速度を提供するために充分な速度で運転した。押し出し機のスクリューを押し出しプロセス中に140RPMで運転した。この速度で、この押し出し機内への材料の供給速度に依存して、混和物およびこの混和物から形成される組成物は、45秒以下、代表的には15秒〜45秒の、押し出し機内での滞留時間を経験する。従って、混和物およびこの混和物から形成される融解物は、この押し出し機内で、この押し出しプロセス中に、1分未満の時間にわたって高温にさらされた。
【0068】
この押し出しプロセス中に、この混和物がこの押し出し機を通過する間に、この押し出し機のバレルに沿って固定された加熱ブロックから、熱エネルギーをこの混和物に供給した。この加熱ブロックへの電力を、押し出し機バレルの内側に設置した熱電対により測定される場合に120℃〜135℃の押し出し機バレルの温度を維持するように設定した。押し出し物がこの押し出し機から出た後に、この押し出し物を、コンベアベルトを介してペレッタイザーに送達し、切断し、そして得られたペレットを放置し、室内空気の周囲温度までさらに冷却した。コンベアベルト上での輸送中に、この押し出し物を扇風機で冷却した。
【0069】
前述のプロセスから得られた冷却されたペレットを、2つの異なるスクリーンサイズ(第一の粉砕工程において0.065インチ;および第二の粉砕工程において0.020インチ)を有するFitzmillハンマーミルで粉砕した。この粉砕した粒子を、機械スクリーンふるいの別々の50メッシュスクリーンおよび200メッシュスクリーンに通して分級して、約75ミクロン〜約300ミクロンの範囲の粒径を有する約4.0kgの粒子材料を単離した。300ミクロンを超える粒子を粉砕プロセスにおいて再利用した。選択された75ミクロン〜300ミクロンの粒子画分を、引き続いて、カプセル剤形および錠剤の剤形の調製において使用した。
【0070】
(実施例1B 大パイロットプラント規模押し出し機調製)
ドラムブレンダーに、15.0kgのHPMC−AS(M等級、Shin−Etsu AQOAT、顆粒、受け取ったままで使用した)および5.0kgのポサコナゾール遊離塩基に等価な量であると分析評価された量のポサコナゾール遊離塩基含有材料(分析評価25%活性、製造業者から受け取ったままで使用した総重量20.0kgの微粉化材料)を充填することにより、ポサコナゾール遊離塩基とHPMC−ASポリマーとの混和物を調製した。均質な混和物が調製されるまで、この充填物をブレンドした。
【0071】
押し出し物を、この混和物から、25mm直径、700mm長の同時回転スクリューを有するBerstorff二軸スクリュー押し出し機を使用して調製した。この押し出し機に、1:1減速機および2枚刃撹拌器を備えるKCL−KT40重量計測フィーダーにより供給した。このフィーダーを、押し出し機出口において6.0kg/h〜10.0kg/hの押し出し速度を維持するために充分な速度で運転した。この押し出し機のスクリューを140RPMで運転して、押し出される材料に、この押し出し機内での15秒〜55秒の滞留時間を与え、その結果、この混和物は、1分未満にわたって高温に維持された。この押し出し機に、バレルに沿って加熱ブロックを備え付け、これらの加熱ブロックを、この押し出し機内に設置された熱電対により測定される場合に120℃〜135℃の温度を維持するように設定した。先に調製した混和物を、合計20.0Kgの混和物がこの押し出し機を通して加工されるまで、このホッパーに入れた。
【0072】
この押し出し機の出口に、2つの4mm円形開口部を有するダイプレートを備え付け、押し出し物を2つの4mmの直径の「ヌードル」に形成し、これらのヌードルを、この出口において、1mm〜4mmの長さを有する無作為な長さのペレットに切断した。これらのペレットを、室内空気中で冷却した。
【0073】
前述のプロセスから得られた乾燥ペレットを、第一の粉砕工程において0.065インチのスクリーン;および第二の粉砕工程において0.020インチのスクリーンを使用して、Fitzmillハンマーミルで粉砕した。この粉砕した生成物を収集し、そして機械スクリーンふるい分け操作において、別々の50メッシュスクリーンおよび200メッシュスクリーンに通して分級した。これによって、約75ミクロン〜約300ミクロンの粒径範囲を有する約20.0kgカットされた粒子材料を単離した。得られた300ミクロンを超える粒子を粉砕プロセスにおいて再利用した。75ミクロン〜300ミクロンの粒子画分を、引き続いて、カプセル剤形および錠剤の剤形の調製において使用した。
【0074】
(実施例2:本発明の組成物を含有する錠剤の調製)
(「錠剤I」と指定される錠剤の調製)
ブレンダーであるBohleビンブレンダーに、前述の実施例において調製された4kgのポサコナゾール含有粒子材料、0.385KgのHPMC−AS(M等級、Shin−Etsu AQOAT、微粉化、受け取った状態で使用した)、0.5kgの微結晶性セルロース(Avicel PH102、NF等級、受け取った状態で使用した)、0.4kgの低置換ヒドロキシプロピルセルロース(LH−B1、Shin−Etsu、受け取った状態で使用した)を入れ、そしてこの充填物を、均質な粉末混和物が得られるまでブレンドした。この混和物に、0.11kgの二酸化ケイ素を入れ、そしてこのブレンド工程を繰り返した。均質な粉末混和物が再度得られた後に、この混合物に、0.025kgのステアリン酸マグネシウムを入れ、そしてこの混和物を均質になるまで再度ブレンドした。
【0075】
前述の工程において調製された、550mgの重量のブレンドされた均質な混和物のアリコートを、楕円形状錠剤ダイまたはカプセル形状錠剤ダイを備え付けたHata−18錠剤化プレス機に入れ、そして型「錠剤I」と指定される錠剤に直接圧縮することにより、プレスした。
【0076】
(「錠剤II」と指定される錠剤の調製)
ブレンダーであるBohleビンブレンダーに、実施例Iにおいて調製された4kgのポサコナゾール含有粒子材料、0.385kgのHPMC−AS(M等級、Shin−Etsu AQOAT、微粉化、受け取った状態で使用した)、0.4kgのポビドン,USP(USP Technologies、USP等級、受け取った状態で使用した)、0.5kgのクロスカルメロースナトリウム(FMC、NF等級、受け取った状態で使用した)を入れ、そしてこの充填物を、均質な粉末混和物が得られるまでブレンドした。この混和物に、0.11kgの二酸化ケイ素を入れ、そしてこの混和物が再度均質になるまで、このブレンド工程を繰り返した。前述のブレンド操作から得られた均質な混和物に、0.025kgのステアリン酸マグネシウムを入れ、そしてこの混和物を均質になるまで再度ブレンドした。
【0077】
最後のブレンド操作において調製された、550mgの重量の均質な混和物のアリコートを、円形錠剤ダイを備え付けたHata−18錠剤化プレス機に入れ、そして型「錠剤II」と指定される錠剤に直接圧縮することにより、プレスした。
【0078】
(実施例3:本発明の組成物を含有するカプセル剤の調製)
サイズ00の硬ゼラチンカプセル(Swedish、橙色)に、実施例Iにおいて調製された408mgのポサコナゾール含有粒子材料(これは、75ミクロン〜300ミクロンの範囲の粒径を有した)を入れた。このように調製したカプセル剤を被験体に投与し、これらの被験体から、本明細書中で議論された、表I、表II、および表IVに示されるデータを得た。
【0079】
(比較例1−噴霧乾燥された分散物)
溶媒としてアセトン/エタノール(2:1v/v比)(500mL)、ポサコナゾール(75mgの遊離塩基当量)および225mgのHPMC−AS(本発明の試験組成物において使用されたものと同じポリマー)を含有する溶液を噴霧乾燥させることにより、噴霧乾燥された組成物を調製した。この溶液を、Nitro噴霧乾燥装置中で、85℃の温度および80LPMの気流を使用して加工した。固体が得られた後に、単離された顆粒を、55℃に加熱しながら所内減圧機(25インチHg)を使用して一晩排気することにより、残留溶媒をこの固体顆粒から除去した。一旦、この様式で残留溶媒が満足なレベルまで減少したら、Mesh−50スクリーン(300ミクロン)を通過する材料を残し、そしてMesh−200(75ミクロン)スクリーンを通過する材料の画分を廃棄することにより、その粒子材料を分級した。従って、残された材料は、75ミクロン〜300ミクロンの範囲の粒径を有し、そしてPKデータを得る際に使用するためのカプセル剤を調製する際に利用した。
【0080】
得られた乾燥組成物の400mgのアリコートをサイズ00のカプセルに詰めることにより、カプセル剤を調製した。これらのカプセル剤を、本明細書中の表I、表II、および表IVに記載される研究において使用した。
【0081】
(比較例2−IV懸濁剤)
IV投与のために適切な組成物を、米国特許出願公開第2006/0160823号(2006年7月20日公開)の実施例7(この部分は、本明細書中に完全に記載されるかのように、参考として明白に援用される)に従って調製した。ただし、それに従って調製した処方物は、以下の表Vに示される量の成分を利用した:
【0082】
【表5】

この組成物を、本明細書中の表Iに記載される研究において、IV投与のために使用した。
【0083】
(実施例4:実施例1〜3および比較例において調製された剤形を使用するPK研究)
2つのパート(摂食および絶食)を含む4方向交叉研究において、ポサコナゾールを16人の健常なヒトボランティアに投与した後に、PKデータを得た。第一のパート(絶食条件)において、これらのボランティアに、100mgの経口懸濁剤(Noxafil(登録商標))を、10時間の一晩の絶食後に投与した。被験体は、投与後4時間にわたって絶食を続け、その後、計画された標準化された食事(類似の内容および割合)を受けた。洗い出し期間後に、これらのボランティアを2つの群に無作為化し、そして上記実施例2において調製した錠剤Iまたは錠剤IIのいずれかを含有する100mgの用量を投与した。2回目の洗い出し期間後に、16人のヒトボランティアに、上記実施例4において調製したカプセル剤を含有する100mgの用量を投与した。
【0084】
この研究の第二のパート(摂食条件)において、被験体に研究薬物を、標準化された高脂肪朝食(20分で消費された)と一緒に、同じ順序で与えた。研究薬物を、食事の開始の約10分後(食事の半分が消費された後)に投与し、そして食事の後半は、残りの10分間で消費された。両方のパートについて、ポサコナゾールの血漿中薬物速度論的濃度の決定のための血液サンプルを、投与前、ならびに投与後0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、および168時間において収集した。
【0085】
AUCtfおよびCmax、ならびにTmaxを、ポサコナゾールの血漿中濃度から決定した(AUCtfとは、時刻0から定量可能な最後のサンプルの時点(本明細書中で上で定義された)までの、血漿中濃度−時間曲線の下の面積である;Cmaxとは、観察された最大血漿中濃度である;Tmaxとは、観察された最大血漿中濃度までの時間である)。AUC(I)、CL/F、およびT1/2を計算した(AUC(I)とは、時刻0から観察されたAUC(tf)を超える無限時間まで外挿されたAUCである;CL/Fとは、見かけの経口クリアランスである;T1/2とは、末期半減期である)。
【0086】
これらの2つの研究からの結果を、表VIに示す。CmaxおよびAUCtfについて報告される値は、全ボランティアの平均である。懸濁剤について、摂食条件と絶食条件とのCmax値の幾何平均比は、2.89(摂食/絶食)であり、そして本発明の組成物を含有する錠剤A、錠剤B、およびカプセル剤について、その比は、それぞれ0.85、0.97、および0.99(摂食/絶食)である。懸濁剤について、摂食条件と絶食条件とのAUCtf値の幾何平均比は、2.85(摂食/絶食)であり、そして本発明の組成物を含有する錠剤A、錠剤B、およびカプセル剤について、その比は、それぞれ1.03、1.1、および1.13(摂食/絶食)である。
【0087】
【表6】

これらのデータは、本発明の組成物が食物によって顕著には影響を受けないことを示す。本発明の組成物の投与後に観察されたPKデータを経口懸濁剤の投与後に観察されたPK値と比較する場合、経口懸濁剤を使用して観察された食物効果は、本発明の組成物を含有する剤形を利用する場合に実質的に排除される。さらに、表VIに示される結果を上記表Iに与えられる結果と比較すると、本発明の組成物は、絶食条件下で投与された他のポサコナゾール処方物(噴霧乾燥技術により調製された、ポサコナゾールおよびポリマーを含有する組成物を含む)を用いて観察されたものに対する、予測不可能な曝露の増加、およびバイオアベイラビリティの少ない変動を提供することが確認される。
【0088】
これらの研究から、本発明の組成物は、患者集団の少なくとも約75%において、少なくとも約319ng/mLの定常状態Cavg血漿レベル、または患者集団の少なくとも約90%において、少なくとも約228ng/mLの定常状態Cavg血漿レベルを提供するために充分な量でこの組成物が経口投与される場合、摂食状態であれ絶食状態であれ、この組成物が投与される患者において、治療レベルのポサコナゾールを提供する際に有用であることが予測される。単一用量または分割用量で毎日少なくとも約80mg、好ましくは、単一用量または分割用量で毎日約80mg〜約500mg、より好ましくは、単一用量または分割用量で毎日約100mg〜約400mgの、少なくとも約5日間にわたる経口投与は、所望の定常状態Cavg血漿レベルを提供すると予測される。
【0089】
本願は、2009年4月3日に出願された、米国仮出願番号61/166,487の優先権を主張する。この出願は、その全体が本明細書中に完全に記載されるかのように、参考として援用される。
【0090】
本明細書中に記載された実施形態における種々の変更または改変が、当業者に想到し得る。これらの変更は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなくなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロピルメチル−セルロース誘導体ポリマーに溶解または分子分散したポサコナゾールを含有する組成物であって、少なくとも約100mgのポサコナゾールを含有する量の該組成物が絶食条件下のヒトに経口投与される場合、少なくとも約300ng/mLのCmax;または少なくとも約10,000hr・ng/mLのAUC(tf)のうちの少なくとも1つのPK中央パラメータが観察される、組成物。
【請求項2】
前記HPMC誘導体ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロース−アセテートスクシネートポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約300ミクロン〜約70ミクロンの粒径範囲を有する粒子に粉砕される場合に、測定された体積の重量計測決定により測定される場合に少なくとも約0.4g/cmのかさ密度を有する、請求項1または請求項2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
約0.4g/cm〜約0.7g/cmのかさ密度を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
約1.2g/mLより高い固体密度を有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
押し出された材料として調製されている、請求項1、4、または5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
pH6.8の緩衝化媒体中に溶解される場合に、USP Apparatus IIにおいて100rpmのパドル速度で37℃において、図1Bに示される即時放出溶解プロフィールを有する、請求項1または請求項2のいずれかに記載の組成物を含有する薬学的処方物。
【請求項8】
pH1.0の緩衝化媒体中に溶解される場合に、USP Apparatus IIにおいて100rpmのパドル速度で37℃において、図1Aに示される溶解プロフィールをさらに有する、請求項7に記載の剤形。
【請求項9】
ポサコナゾールおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートを含有する組成物を調製するプロセスであって、
(a)HPMC−ASとポサコナゾールとを、約1:1(HPMC−AS:ポサコナゾール)〜約4:1(HPMC−AS:ポサコナゾール)の比で乾式ブレンドして、均質な混和物を形成する工程;
(b)工程「a」において調製された該混和物を、該混合物中に存在するHPMC−ASのガラス転位温度より低く該混合物の溶融温度より高い温度まで加熱する工程であって、これによって、融解物を形成し、必要に応じて同時に、該混和物をブレンドする、工程;および
(c)工程「b」において形成された該融解物を冷却する工程であって、これによって、HPMC−ASに溶解または分子分散したポサコナゾールを含有する固体組成物を提供する、工程、
を包含する、プロセス。
【請求項10】
工程「b」と工程「c」との間で、前記融解物が押し出されて、所望の断面形状の押し出し物を提供する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記プロセスにより提供された前記固体組成物が、約1.2g/mLより高い固体密度を有する、請求項9または請求項10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
前記固体組成物が、pH6.8の緩衝化媒体中に溶解される場合に、USP Apparatus IIにおいて100rpmのパドル速度で37℃において、図1Bに示される溶解プロフィールと実質的に類似の溶解プロフィールを有する、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記組成物が、粉砕されて約70ミクロン〜約350ミクロンの粒径を有する顆粒組成物を形成し、そして該顆粒組成物が、測定された体積の粒子材料を秤量することにより決定される場合に、約0.4g/mLより高いかさ密度を有する、請求項9〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
真菌感染の処置を必要とする患者において真菌感染を処置する方法であって、該患者に、少なくとも5日間にわたって、患者集団の少なくとも約75%において少なくとも約319ng/mLの定常状態Cavg血漿レベル、または患者集団の少なくとも約90%において少なくとも約228ng/mLのCavgを目標とするために充分な量の請求項1に記載の組成物を含有する薬学的処方物または剤形を投与する工程を包含する、方法。
【請求項15】
前記投与される組成物の量が、約100mg〜約400mgのポサコナゾールを含有し、そして毎日の単一用量または分割用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記投与される組成物が、約80mgのポサコナゾール〜約500mgのポサコナゾールを含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が好中球減少症である、請求項15または16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
組成物を含有する薬学的剤形であって、該組成物が、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース誘導体ポリマーに溶解または分子分散したポサコナゾールを含有し、少なくとも約100mgのポサコナゾールを含有する量の該組成物が絶食条件下のヒトに経口投与される場合、約300ng/mLを超えるCmax;または少なくとも約10,000hr・ng/mLのAUC(tf)のうちの少なくとも1つのPK中央パラメータが観察される、剤形。
【請求項19】
前記ヒドロキシプロピルメチル−セルロース誘導体ポリマーがヒドロキシプロピルメチル−セルロース−アセテートスクシネートである、請求項18に記載の剤形。
【請求項20】
請求項18または請求項19のいずれかに従う錠剤剤形。
【請求項21】
請求項18または請求項19のいずれかに従うカプセル剤形。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−516612(P2011−516612A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505163(P2011−505163)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/040652
【国際公開番号】WO2009/129300
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】