説明

姿勢保持機構付梯子及び、梯子の架け渡し固定化方法

【課題】柱状物1、1の外周面と、支持面g1との間に、梯子を傾斜状に掛け渡して固定化させる処理を簡便且つ効果的に実施できるようにする。
【解決手段】一対の支柱1.1と、複数の踏み桟3とを備えた梯子であって、支柱1、1の先端に最も近く配置された第1踏み桟3bに設けられたロープ止め具7と、これに分離可能に止着されるもので支柱1の長さに対応した長さとされたロープ8と、第1踏み桟3bに設けられロープ8の長さ途中を案内する第1ロープ案内具11とを備えた姿勢保持機構付梯子100である。該梯子100を柱状物c1の外周面と、支持面g1との間に傾斜状に掛け渡して固定化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、街灯などの支柱として使用される円柱が主たる対象である柱状物と、この柱状物を起立状に支持する支持面との間に梯子を傾斜状に掛け渡し固定化させる処理を簡便且つ効果的に行うことを可能とする姿勢保持機構付梯子及び、梯子の架け渡し固定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対の支柱を有し、これら支柱の長さ方向へ並列された複数の踏み桟により前記一対の支柱を結合した構造の梯子は広く知られている。
【0003】
また支持面上に起立した柱状物の高所で作業を行う場合、上記梯子が支持面と柱状物の外周面との間に傾斜状に掛け渡され、支持面と高所との間の移動のための経路として或いは高所作業中の作業者の足場として使用されることがある。このさい、梯子は左右一対の支柱の基端を支持面で支持され、最上位の踏み桟である第1踏み桟の外周面を柱状物の外周面に当接される。
【0004】
このような梯子の使用状態において、柱状物の径が梯子の踏み桟の長さに較べて小さければ小さいほど柱状物に対する第1踏み桟の水平方向の滑り移動が発生しやすくてその距離も大きくなり、また柱状物の断面形状が多角形から円形に近くなるにしたがって柱状物と第1踏み桟とはより小さい接触面積で当接するようになると同時に引っ掛かり難い状態となることから、柱状物と梯子の相対位置の固定化が困難となる。
【0005】
該固定化の不十分な状態の下で、作業者が梯子上を昇降するとき、或いは梯子上に足を掛けた状態で高所作業を行っているときなどに、作業者と梯子の相対位置や、作業者の動作に関連して、梯子に好ましくない外力が付与されることがある。その結果、梯子の上部が柱状物に対して踏み桟の長さ方向或いは柱状物から離れる方向へ位置ずれし、或いは梯子の下部が支持面に対して位置ずれすることが生じ得る。このような位置ずれに起因して、梯子上の作業者がバランスを崩し、支持面上に落下する事故が珍しくないほどに発生している。
【0006】
これに対処するには、梯子の上部を柱状物の外周面に固定させることが必要となるのであり、この必要に応じることのできる従来技術として、例えば特許文献1、2及び3に開示されたようなものがある。
【0007】
即ち、特許文献1に開示された技術は、柱状物の外周面のほぼ全周囲を左右一対の円弧状アームで抱き持つようにしたものである。この技術は安全性には優れるものの、機構が複雑に過ぎて製造コストが高くつくと共に、重量が大きくなって取扱性に劣るものとなる。
【0008】
また特許文献2に開示された技術は、梯子の一端に左右一対の挟持部材を備え、これら一対の挟持部材で柱状物の外周面の左右箇所を挟持する構造としており、また特許文献3に開示された技術は、左右一対の保持片に支持された半円状のベルト部材を備え、該ベルト部材で柱状物の外周面の周方向の一部を抱き持つ構造としている。これら特許文献2及び3の技術は柱状物に対する梯子の上部の固定化を促進するものではあるが、柱状物の外周面の周方向の一部を把持するのみで、柱状物の外周面の全周囲を抱き持つ状態とはならない。したがって、梯子は上部に柱状物から離れる方向の力を受けたとき、柱状物による支持力を完全に失って姿勢が大きく変更してしまうことが生じ得る。このような事態が発生すると、この梯子を使用している作業者が高所から落下し怪我をするなどの事故の発生する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−13376号公報
【特許文献2】特開2005−307720号公報
【特許文献3】特開2006−104858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記した背景に鑑みて創案されたものであり、その目的とするところは、樹木や電柱のような柱状物の外周面と、この柱状物を起立状に支持する支持面との間に、梯子を傾斜状に掛け渡して固定化させる処理を、簡便且つ効果的に実施できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため第1発明に係る姿勢保持機構付梯子は、左右一対の支柱と、これら支柱間を結合した複数の踏み桟とを備えた梯子であって、前記支柱の先端に最も近く配置された前記踏み桟である第1踏み桟の一端寄り箇所に設けられたロープ止め具と、前記支柱の長さに対応した長さとされ一端が該ロープ止め具に止着されるロープと、前記第1踏み桟の他端寄り箇所に設けられ前記ロープの長さ途中を曲がり状に且つ摺動変位可能に案内する第1ロープ案内具とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
この発明は次のように実施するのが好ましい。
即ち、前記ロープ止め具及び前記第1ロープ案内具が前記第1踏み桟の外周面から前記梯子の前方側へ所定長さだけ突出した状態に固定されている構成とする。
【0013】
前記ロープ止め具及び前記案内具の双方或いは何れか一方が、前記第1踏み桟の長さ方向上での固定位置を必要に応じて変更され得るように設けられている構成とする。
【0014】
前記ロープ止め具が、前記ロープの一端に結合されたフック具と、前記第1踏み桟に設けられ前記フック具の曲がり箇所を掛け止められる掛け止め具とを備えた構成とする。
【0015】
前記支柱の他端寄り箇所に、又は、該他端寄り箇所に存在した前記踏み桟に、少なくとも1つの第2ロープ案内具が設けられ、該第2ロープ案内具は前記第1ロープ案内具を介して前記支柱の先端側から基端側へ向けて導かれた前記ロープを曲がり状に且つ摺動可能に案内する構成とされている構成とする。
【0016】
前記第1踏み桟の外周面のうち、前記ロープ止め具と前記第1ロープ案内具との間であって前記梯子の前方側となる箇所に、ゴム又はスポンジのような摩擦部材を被着した構成とする。
【0017】
上記課題を達成するため第2発明に係る梯子の架け渡し固定化方法は、支持面上で起立している柱状物の外周面と前記支持面との間に梯子を傾斜状に架け渡す際、該梯子として請求項1〜7の何れか1項に記載の姿勢保持機構付梯子を用いることを特徴としている。
【0018】
上記課題を達成するため第3発明に係る梯子の架け渡し固定化方法は、支持面上で起立している柱状物の外周面と前記支持面との間に梯子を傾斜状に架け渡す際、複数の踏み桟のうち支柱の先端に最も近く配置されたものである第1踏み桟の一端寄り箇所にロープ止め具を、そして第1踏み桟の他端寄り箇所に第1ロープ案内具を設けておき、次に前記第1踏み桟を前記柱状物の下部に近づけて前記第1踏み桟の一端寄り箇所にロープの一端を止着させ且つ、該ロープの長さ途中を前記第1ロープ案内具により形成された内孔内に摺動可能に挿通させることにより、前記ロープ止め具から前記第1ロープ案内具に至る範囲のロープ部分が第1踏み桟と共に前記柱状物の外周面を取り囲む状態とし、次に前記支持面上から前記梯子を操作することにより、前記第1踏み桟を上方へ移動させて前記柱状物の上部の外周面に当接させ且つ前記左右の支柱の基端を前記支持面に支持させてなる架け渡し状態とし、次に該架け渡し状態にて前記第1ロープ案内具を経て下方へ導かれた範囲のロープ部分を前記梯子の下部に締結することを特徴としている。
【0019】
上記課題を達成するため第4発明に係る梯子の架け渡し固定化方法は、支持面上で起立している柱状物の外周面と前記支持面との間に梯子を傾斜状に架け渡す際、複数の踏み桟のうち支柱の先端に最も近く配置されたものである第1踏み桟の一端寄り箇所にロープ止め具を設けると共に、該第1踏み桟の他端寄り箇所に第1ロープ案内具を、そして前記梯子の下部に第2ロープ案内具を設けておき、次に前記第1踏み桟を前記柱状物の下部に近づけて前記ロープ止め具にロープの一端を止着させ且つ、前記ロープの長さ途中を前記第1ロープ案内具により形成された内孔内に摺動可能に挿通させることにより、前記ロープ止め具から前記第1ロープ案内具に至る範囲のロープ部分が第1踏み桟と共に前記柱状物の外周面を取り囲む状態とし、次に前記ロープのうち前記第1ロープ案内具よりも自由端側であるロープ部分の長さ途中を前記第2ロープ案内具により形成された内孔内に上側から下側へ摺動可能に挿通させた状態にすると共に、前記梯子を前記支持面上から操作することにより、前記第1踏み桟を前記柱状物の上部の外周面に当接させ且つ前記左右の支柱の基端を前記支持面に支持させてなる架け渡し状態とし、次に該架け渡し状態にて前記ロープのうち前記第2ロープ案内具よりも自由端側となるロープ部分を前記柱状物の下部の外周面に掛け回した後、該ロープ部分を前記梯子の下部に締結することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、樹木や円柱のような柱状物の外周面と、この柱状物を起立状に支持する支持面との間に、梯子を傾斜状に掛け渡して固定化させる処理を既存の梯子に、ロープ及び、ロープの案内具を付加した簡易な手段により実施することができる。
【0021】
また上記処理の終了した状態ではロープ止め具から第1ロープ案内具までのロープ部分が第1踏み桟と共に柱状物の外周面を取り囲む状態となって、梯子の上部が柱状物に対し位置ずれするのを確実に阻止することができる。
【0022】
さらに作業者は上記処理を支持面に足が付いている状態で行うことができるのであり、したがって上記処理の終了していない段階において梯子を昇降するなどの危険行為を行う必要がなくなり、上記処理を迅速に実施することができる。
【0023】
これらの効用により、梯子を使用した高所作業において該梯子上の作業者が該梯子の不用意な姿勢変更に起因して高所から落下する事故を簡便且つ効果的に防止することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る姿勢保持機構付梯子の使用状態を示す斜視図である。
【図2】上記姿勢保持機構付梯子の不使用状態を示す斜視図である。
【図3】上記姿勢保持機構付梯子を柱状物とその支持面の間に架け渡し固定化させる際の準備段階を示す斜視説明図である。
【図4】上記姿勢保持機構付梯子の上部の使用状態を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は一実施例としての姿勢保持機構付梯子100の使用状態を示しており、図2は前記姿勢保持機構付梯子100の不使用状態を示している。
【0026】
本実施例の姿勢保持機構付梯子100は、左右一対の支柱1、1を有している。各支柱1、1は同一構造であって、径の相違した多数の円筒部材2a〜2mを備えており、これら円筒部材2a〜2mは径の大きいものの内方に径の小さいものを摺動可能に挿入することを繰り返すことにより伸縮可能な多重管構造としてある。
【0027】
そして左右の支柱1、1における同一径の円筒部材2a〜2mの先端同士を1つの踏み桟3及びこれの両端に配置された樹脂材からなる結合部材4、4を介して一体状に結合させている。また左右の支柱1、1における最も径の大きい円筒部材2a、2aについては、これらの先端同士のみならず、基端寄り箇所同士も1つの踏み桟3a及びこれの両端に配置された樹脂材からなる結合部材4、4を介して一体状に結合させている。
【0028】
そして最も径の大きい円筒部材2a、2aの基端には摩擦係数の大きいゴム質材料からなるキャップ部材5、5を止着させてあり、また最も径の小さい円筒部材2m、2mの先端に位置された結合部材4、4は図3に示すように該円筒部材2m、2mの上端開口を被う形態としている。
【0029】
この実施例の各支柱1、1における円筒部材2a〜2m及び踏み桟3の数は使用に支障のない範囲で任意に決定して差し支えないが、本例では、各支柱1、1における円筒部材2a〜2mの数は12個とし、踏み桟3(3a及び3bを含む。)の数はそれよりも1個多い13個としている。
【0030】
左右の支柱1、1の先端に最も近く配置された踏み桟3である第1踏み桟3bの外周面のうち各端部を除いた範囲の前方a1側の部位には摩擦係数及び弾性係数が共に一定程度以上であるゴム質材料(ブチルゴムなどのゴム材を含む。)からなる摩擦部材6を被着している。
【0031】
そして、第1踏み桟3bの一端寄り箇所で摩擦部材6の存在範囲内にはロープ止め具7が設けてある。ロープ止め具7はロープ8の一端を第1踏み桟3bに止着できるものであれば任意に形成して差し支えないが、本実施例ではフック具9と掛け止め具10からなるものとしてある。このさい、フック具9は市販品であって、掛け口b1の形成された曲がり形状体とされていて、掛け口b1にはこれを閉鎖するための閉鎖機構9aが付設されている。この閉鎖機構9aは一定支点回りへ揺動される揺動部材9a1とこれを閉鎖状態に保持し一定大きさ以上の外力の付与により開放変位可能とする図示しない弾力部材とを備えたものとしてある。一方、掛け止め具10は市販品により形成して差し支えないものであって、この実施例では第1踏み桟3bに固定されるネジ固定部10aと、このネジ固定部10aに一体状に形成されフック具9の曲がり箇所を掛け止められる掛け止め部10bとを備えたものとしている。このさい、掛け止め具10は第1踏み桟3bに対し、摩擦部材6よりも前方(左右の支柱1、1を含む平面に直交する一定方向)a1へ数cm程度突出するように設けるのが好ましいのであって、このようにすることにより柱状物c1に対する第1踏み桟長さ方向d1への第1踏み桟3bの変位が掛け止め具10で規制されるようになる。
【0032】
フック具9の基部に形成された透孔9cにはロープ8の先部を挿通させてあり、透孔9cよりも先端側となる先部を透孔9cよりも元側部位に編み込むことにより、フック具9とロープ8の先部を結合させている。ロープ8は支柱1の長さに関連した長さとしてあり、例えば最も長く伸長された状態の支柱1の長さよりも長くするのが姿勢保持機構付梯子100の汎用性を増大させる上で好ましい。ロープ8をネジ固定部材10aの位置に止着する必要のあるときはこのフック具9の掛け口9aに掛け止め部10bを位置させフック具9の曲がり部内に向け前記弾力部材の弾力に抗して押し込むのであり、これにより閉鎖機構9aが開放変位されて、掛け止め部10bがフック具9の曲がり部内に入った状態となる。この後、閉鎖機構9aは前記弾力部材の弾力に抗する外力を除去されることより自動的に閉鎖され、以後この閉鎖の状態が前記弾力部材の弾力で維持される。逆に、ロープ8を掛け止め部10bから離反させる必要のあるときは、閉鎖機構9aを前記弾力部材の弾力に抗して押し開いた状態としておき、この状態の下でフック具9を移動させ掛け止め部10bを、掛け口9aを通じてフック具9の外方に位置させるようにする。
【0033】
第1踏み桟3bにおいてロープ止め具7の存在する側の反対側である他端寄り箇所のうち摩擦部材6の存在する範囲内には第1ロープ案内具11が設けてある。この第1ロープ案内具11は第1踏み桟3bにネジ固定されるネジ固定部材11aと、このネジ固定部材11aに保持される環状体11bとを備えている。環状体11bは本体の一部をネジ固定部材11aの前部に形成された踏み桟3b長さ方向d1に沿う透孔内に遊動可能に挿通されており、内孔e1内にロープ8を摺動可能に挿通されて該ロープ8を曲がり状に案内するものとしている。この第1ロープ案内具11も、掛け止め具10の場合と同様の理由から、第1踏み桟3bに固定された状態において摩擦部材6よりも数cm程度、前方a1側へ突出するように設けるのが好ましい。
【0034】
また支柱1、1の基端寄り位置に設けられた踏み桟3aの一端寄り箇所には、1つの第2ロープ案内具12が設けてある。この第2ロープ案内具12は踏み桟3aにネジ固定されるネジ固定部材12aと、このネジ固定部材12aに保持される環状体12bとを備え、第1ロープ案内具11に案内された状態のロープ8を環状体12bの内孔e2内に挿通される。このさい、ネジ固定部材12aは図2に示すように前部f1に踏み桟3a長さ方向に沿う透孔を形成され、該透孔内に環状体12bの本体の一部が遊動可能に挿通される。
【0035】
次に上記姿勢保持機構付梯子100を円形断面の柱状物c1の1つである電柱に対して使用する場合の使用例及び作用について説明する。
【0036】
作業者は図2に示すように短縮状態とされた姿勢保持機構付梯子100を自動車などに積載して作業現場まで搬送する。作業現場では、この姿勢保持機構付梯子100を短縮状態のまま柱状物の代表である円柱c1近くに持ち運び、図3に示すように円柱c1の支持面g1である地面上に置いて電柱c1に凭せ掛ける。
【0037】
このさい、左右の支柱1、1の基端を円柱c1の下部近傍の地面g1に支持させ、掛け止め具10と第1ロープ案内具11との間に存在した摩擦部材6部分を円柱c1の外周面に当接させる。
【0038】
次にロープ8が第1ロープ案内具11及び第2ロープ案内具12の内孔e1、e2内に挿通された状態の下で、フック具9を持ち、これを掛け止め部材11bから外した後にロープ8が第1踏み桟3bと共に円柱c1を取り巻く状態となる軌跡を経るように移動させ、再び、フック具9を掛け止め部材10bに掛け止める。これによりロープ8及び第1踏み桟3bが図4に示すように円柱c1の外周囲の周方向箇所の全体を取り囲んだ状態となる。
【0039】
このさいロープ止め具7がフック具9と掛け止め具10からなっていることは、ロープ8の先端を掛け止め具10から分離させて必要なロープ8の掛け回しを行い再びロープ8の先端を掛け止め具10に結合させるようにする一連の処理を迅速に行う上で寄与するものである。
【0040】
次にロープ8の自由端側部分を一線状に展開するなどして、ロープ8の使用可能長さを十分な大きさとする。そして、作業者は地上g1にて円筒部材2a〜2mのうちの必要なものを一対づつ支柱1、1の長さ方向へ変位させてはその位置をロックさせることを繰り返す。これにより左右の支柱1、1は例えば図1に示すように必要な長さまで伸長された状態となる。そして水平面に対する支柱1、1の角度θ1を姿勢保持機構付梯子100の安定化に適した大きさ(例えば75度程度)とする。このさい、ロープ8は第1ロープ案内具11及び第2ロープ案内具12の各内孔c1、c2内を自由に移動できる状態にしておくのであり、これによりロープ8が円柱c1や支柱1、1などの外周面に引っ掛かって支柱1、1の伸長を妨げるような事態の発生を回避することができる。
【0041】
以上のようにして円柱c1とその支持面g1との間における姿勢保持機構付梯子100の位置が確定した後は、作業者は地面g1上にてロープ8を元側へ引いて緊張させるのであり、これによりロープ8は図4に示すような配置状態となって円柱c1を第1踏み桟3bの摩擦部材6上に押圧した状態となる。次にロープのうち第2ロープ案内具12よりも自由端側の範囲であるロープ8部分を図1に示すように円柱c1へ向かうように導き、続いて円柱c1に掛け回した後、再び姿勢保持機構付梯子100の下部に導いて締結する。
この処理の後に必要に応じ姿勢保持機構付梯子100の位置を落ち着かせるように小さく移動させるなどしてその位置の微調整を行うことにより、ロープ8の一端から前記締結箇所までのロープ8部分に過度の弛みが生じない状態とする。これにより、姿勢保持機構付梯子100は円柱c1の外周面とその支持面g1との間に傾斜状に架け渡されると共にロープ8を介し移動し難い状態にされてなる通常使用状態となる。
【0042】
この後、作業者は該通常使用状態の姿勢保持機構付梯子100を使用して、円柱c1の上部と地面g1上との間を昇降移動し或いは姿勢保持機構付梯子100を足場として高所作業を行う。このさい、作業者の体重が姿勢保持機構付梯子100に作用することで次のような作用が生じる。即ち、左右の支柱1、1の基端が地面g1に押圧されて滑り移動し難い状態となる。また摩擦部材6は円柱c1の外周面に強く押圧されて凹み状に弾性変形されること、及び、その摩擦係数が大きいことにより、円柱c1に接した状態の下で、第1踏み桟3b長さ方向へ向かう第1踏み桟3bの滑り移動に対し強い抵抗力を生じさせるものとなる。これらの作用により、姿勢保持機構付梯子100の掛け渡し姿勢の安定性が増大され、該梯子100上における作業者の安定性が確保され易くなり、姿勢保持機構付梯子100上からの作業者の落下事故が防止される。
【0043】
上記通常使用状態にある姿勢保持機構付梯子100であっても次のような事態が生じ得る。即ち、地面g1が軟弱な状態或いは滑り易い状態であるときは支柱1、1の基端が円柱c1から離れる側へ移動しようとすることがある。この場合は、円柱c1と姿勢保持機構付梯子100の下部とに掛け渡されたロープ8が引張されてその緊張力が増大するようになる一方で、ロープ8の全長は過度に変化しない。したがって左右の支柱1、1の基端の移動はロープ8を介して効果的に阻止され、姿勢保持機構付梯子100の姿勢は過度には変化しない。これにより該梯子100の姿勢変化に起因した該梯子100上からの作業者の落下は防止される。また姿勢保持機構付梯子100の上部に作業者の足などから横方向(第1踏み桟3bの長さ方向d1)へ向かう外力、或いは、円柱c1から離れる方向へ向かう外力が付与されることがある。この場合、姿勢保持機構付梯子100の上部が前記横方向へ移動し或いは円柱c1から離れようとすることが生じ得るが、このようなときは円柱c1上部に掛け回された第1踏み桟3b周りのロープ8が円柱c1に対する第1踏み桟3bの変位を規制する。したがって姿勢保持機構付梯子100の上部が円柱c1から離れて外れるような事態は効果的に阻止される。なお仮に円柱c1に対し第1踏み桟3bがこれの長さ方向d1へ一定程度以上に移動するような事態が発生したとしても、ロープ止め具7の掛け止め具10の前部、或いは第1ロープ案内具11の前部が円柱c1に衝接して円柱c1に対する第1踏み桟3bのそれ以上の変位を規制する。したがって、作業者が姿勢保持機構付梯子100上を昇降するとき或いは該梯子100を足場として高所作業をしているときにこれらの事態が発生しても、姿勢保持機構付梯子100による支持作用が完全に失われるものとならず、高所から落下する事故を回避できるのである。
【0044】
円柱c1上部での作業が終了して姿勢保持機構付梯子100を片付けるときは、該梯子100の下部に結び付けたロープ8の締結箇所を解き、円柱c1への掛け回しを解放する。この後は姿勢保持機構付梯子100の掛け渡しのさいの処理を逆順に行う。
【0045】
上記実施例は本発明の効用の得られる範囲において次のように変形することができる。
即ち、各支柱1は単一の筒部材からなるものとしてよい。このさい、踏み桟3(3a及び3bを含む。)はこれら筒部材1、1を結合したものとする。そして、これら筒部材1、1を脚立のように2つ折りとし、或いは3つ以上の複数折りとして伸縮可能にすることも差し支えない。
【0046】
ロープ止め具7はロープ8を第1踏み桟3の一定位置に止着することを可能とするものであれば単一部材として任意に形成して差し支えない。また第1ロープ案内具11及び第2ロープ案内具12はロープ8を摺動可能なように挿通させることのできる内孔e2が形成されるものであれば単一部材としてもよいのであり、例えばU字形部材を踏み桟3aに止着するなどして任意に形成して差し支えない。
【0047】
ロープ止め具7及び第1ロープ案内具11は第1踏み桟3bの長さ方向d1へ位置変更可能に固定できる構成とするのが好ましいのであり、これにより異なる径の柱状物c1に対する姿勢保持機構付梯子100の汎用性を向上させることができる。
【0048】
また第2ロープ案内具12は姿勢保持機構付梯子100の支柱1、1の下部に設けてもよく、またその数も任意に決定して差し支えない。
【0049】
さらには第2ロープ案内具12を省略し、その分、ロープ8を短くすることも可能である。この場合、第1ロープ案内具11を経て姿勢保持機構付梯子100の下部に導かれたロープ8は該梯子100の下部の踏み桟3aなどに締結する。このさいロープ8の一端からその締結箇所までは弛みのない状態に保持される。これにより該梯子100の上部はロープ8のうちロープ止め具7から第1ロープ案内具11までの範囲内にあるロープ8部分を介して円柱c1などの柱状物に固定された状態となる。これにより姿勢保持機構付梯子100の上部は柱状物c1に対する変位を効果的に阻止される。しかし、ロープ8は各支柱1の基端が柱状物c1から離れる側へ変位するのを阻止する上では効果的に作用するものとならない。したがって、この変形例では梯子の使用中において各支柱1の基端が地面g1上で過度に滑らないように支持されていることが本発明の効果を得る上で前提となる。
【符号の説明】
【0050】
1 支柱
3 踏み桟
3a 踏み桟
3b 第1踏み桟
6 摩擦部材
7 ロープ止め具
8 ロープ
9 フック具
10 掛け止め具
11 第1ロープ案内具
12 第2ロープ案内具
100 姿勢保持機構付梯子
e1 内孔
e2 内孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の支柱と、これら支柱間を結合した複数の踏み桟とを備えた梯子であって、前記支柱の先端に最も近く配置された前記踏み桟である第1踏み桟の一端寄り箇所に設けられたロープ止め具と、前記支柱の長さに対応した長さとされ一端が該ロープ止め具に止着されるロープと、前記第1踏み桟の他端寄り箇所に設けられ前記ロープの長さ途中を曲がり状に且つ摺動変位可能に案内する第1ロープ案内具とを備えたことを特徴とする姿勢保持機構付梯子。
【請求項2】
前記ロープ止め具及び前記第1ロープ案内具が前記第1踏み桟の外周面から前記梯子の前方側へ所定長さだけ突出した状態に固定されていることを特徴とする請求項1記載の姿勢保持機構付梯子。
【請求項3】
前記ロープ止め具及び前記案内具の双方或いは何れか一方が、前記第1踏み桟の長さ方向上での固定位置を必要に応じて変更され得るように設けられていることを特徴とする請求項1記載の姿勢保持機構付梯子。
【請求項4】
前記ロープ止め具が、前記ロープの一端に結合されたフック具と、前記第1踏み桟に設けられ前記フック具の曲がり箇所を掛け止められる掛け止め具とを備えてなることを特徴とする請求項1記載の姿勢保持機構付梯子。
【請求項5】
前記支柱の他端寄り箇所に、又は、該他端寄り箇所に存在した前記踏み桟に、少なくとも1つの第2ロープ案内具が設けられ、該第2ロープ案内具は前記第1ロープ案内具を介して前記支柱の先端側から基端側へ向けて導かれた前記ロープを曲がり状に且つ摺動可能に案内する構成とされていることを特徴とする請求項1記載の姿勢保持機構付梯子。
【請求項6】
前記第1踏み桟の外周面のうち、前記ロープ止め具と前記第1ロープ案内具との間であって前記梯子の前方側となる箇所に、ゴム又はスポンジのような摩擦部材を被着したことを特徴とする請求項2記載の姿勢保持機構付梯子。
【請求項7】
支持面上で起立している柱状物の外周面と前記支持面との間に梯子を傾斜状に架け渡す際、該梯子として請求項1〜6の何れか1項に記載の姿勢保持機構付梯子を用いることを特徴とする梯子の架け渡し固定化方法。
【請求項8】
支持面上で起立している柱状物の外周面と前記支持面との間に梯子を傾斜状に架け渡す際、複数の踏み桟のうち支柱の先端に最も近く配置されたものである第1踏み桟の一端寄り箇所にロープ止め具を、そして第1踏み桟の他端寄り箇所に第1ロープ案内具を設けておき、次に前記第1踏み桟を前記柱状物の下部に近づけて前記第1踏み桟の一端寄り箇所にロープの一端を止着させ且つ、該ロープの長さ途中を前記第1ロープ案内具により形成された内孔内に摺動可能に挿通させることにより、前記ロープ止め具から前記第1ロープ案内具に至る範囲のロープ部分が第1踏み桟と共に前記柱状物の外周面を取り囲む状態とし、次に前記支持面上から前記梯子を操作することにより、前記第1踏み桟を上方へ移動させて前記柱状物の上部の外周面に当接させ且つ前記左右の支柱の基端を前記支持面に支持させてなる架け渡し状態とし、次に該架け渡し状態にて前記第1ロープ案内具を経て下方へ導かれた範囲のロープ部分を前記梯子の下部に締結することを特徴とする梯子の架け渡し固定化方法。
【請求項9】
支持面上で起立している柱状物の外周面と前記支持面との間に梯子を傾斜状に架け渡す際、複数の踏み桟のうち支柱の先端に最も近く配置されたものである第1踏み桟の一端寄り箇所にロープ止め具を設けると共に、該第1踏み桟の他端寄り箇所に第1ロープ案内具を、そして前記梯子の下部に第2ロープ案内具を設けておき、次に前記第1踏み桟を前記柱状物の下部に近づけて前記ロープ止め具にロープの一端を止着させ且つ、前記ロープの長さ途中を前記第1ロープ案内具により形成された内孔内に摺動可能に挿通させることにより、前記ロープ止め具から前記第1ロープ案内具に至る範囲のロープ部分が第1踏み桟と共に前記柱状物の外周面を取り囲む状態とし、次に前記ロープのうち前記第1ロープ案内具よりも自由端側であるロープ部分の長さ途中を前記第2ロープ案内具により形成された内孔内に上側から下側へ摺動可能に挿通させた状態にすると共に、前記梯子を前記支持面上から操作することにより、前記第1踏み桟を前記柱状物の上部の外周面に当接させ且つ前記左右の支柱の基端を前記支持面に支持させてなる架け渡し状態とし、次に該架け渡し状態にて前記ロープのうち前記第2ロープ案内具よりも自由端側となるロープ部分を前記柱状物の下部の外周面に掛け回した後、該ロープ部分を前記梯子の下部に締結することを特徴とする梯子の架け渡し固定化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−44225(P2013−44225A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199978(P2011−199978)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(511224014)
【Fターム(参考)】