説明

姿勢矯正装着具

【課題】肩ベルトの張力が調節でき、且つ張力調節時に装着状態が安定する姿勢矯正装着具を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の姿勢矯正装着具10は、胸部に巻き付ける胸ベルト20と、前記胸ベルト20の背面側23の中央の上部に設けられた背当て部30と、前記背当て部30の上部の左右から、前記胸ベルト20の胸部側21、22に伸びる一対の肩掛けベルト40と、前記一対の肩掛けベルト40の両方の背面側に結合された固定端50aと前記固定端50aから下向きに延びて前記胸ベルトに着脱自在に固定される自由端50bとを有する調節ベルト50と、を備え、前記調節ベルト50の自由端50bの固定位置を変更することにより、前記一対の肩掛けベルト40の背面側を前記胸ベルト20に向かって引っ張る力を調節可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸部から肩部に装着される姿勢矯正装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
猫背や前かがみの姿勢を矯正するための姿勢矯正装着具としては、背当て部と、一対の肩ベルトと、一対の腰バンドとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1)。この姿勢矯正装着具では、腰バンドの一端は背当て部の下方の両側縁部に結合されて、他端は互いに連結解除可能にされている。また、肩ベルトは、一端が背当て部上部の上縁の左右隅部に結合され、左右の腕を通すためのループ部を設け、背当て部の下部に設けたベルト挿通案内部に挿通され、そして他端が腰バンドに連結解除可能にされている。
この姿勢矯正装着具は、肩ベルトのループに腕を通し、背当て部を背中にあて、腰バンドを腹部に巻き付けて使用する。肩ベルトの他端の連結位置を変化させることにより、肩ベルトのループを締めて両肩を背面側に引っ張り、背筋を伸ばすことができる。
【0003】
また、別の姿勢矯正装着具としては、背当て部と、背当て部の両側上方にそれぞれ伸びる上肩部片と、背当て部の両方側部から横方に伸びて身体前部で掛け合わせる前合わせ部と、各前合せ部の上部にから伸びて、上記上肩部片の端部に着脱可能に係合する前肩部片と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献2)。この姿勢矯正装着具には、背当て部で交叉した背当て部側伸縮性帯片と、前合わせ部の側縁に伸びる前側伸縮帯片とが固定されている。姿勢矯正装着具を装着したとき、この背当て部側伸縮性帯片と前側伸縮帯片によって、背筋がまっすぐに伸びるように上肩部から腰部にかけて背中が締めつけられる。
【特許文献1】特開2001−248779号公報
【特許文献2】特開2003−144468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の姿勢矯正装着具は、肩ベルトの他端の連結位置を変化させている間に、他端を掴んでいる手から他端が離れてしまうと、肩ベルトが緩んで、背当て部の上側が背中から離れてしまう可能性がある。すなわち、肩ベルトの張力の調節時に、装着状態が不安定になりやすい。
特許文献2の姿勢矯正装着具は、背当て部側伸縮性帯片と前側伸縮帯片の張力が調節できない。そのため、姿勢矯正力が強すぎた場合、又は弱すぎた場合であっても、姿勢矯正力を調節することができない。
また、特許文献1及び2の姿勢矯正装着具は、肩部から腰部まで上半身全体を覆うので、薄着になった時に、背中全体を覆う背当て部が目立ちやすい。
【0005】
そこで、本発明は、肩ベルトの張力が調節でき、且つ張力調節時に装着状態が安定する姿勢矯正装着具を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、薄着になっても目立ちにくい姿勢矯正装着具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の姿勢矯正装着具は、胸部に巻き付ける胸ベルトと、前記胸ベルトの背面側中央の上部に設けられた背当て部と、前記背当て部の上部の左右から、前記胸ベルトの胸部側に伸びる一対の肩掛けベルトと、前記一対の肩掛けベルトの両方の背面側に結合された固定端と前記固定端から下向きに延びて前記胸ベルトに着脱自在に固定される自由端とを有する調節ベルトと、を備え、前記調節ベルトの自由端の固定位置を変更することにより、前記一対の肩掛けベルトの背面側を前記胸ベルトに向かって引っ張る力を調節可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明の姿勢矯正装着具は、肩掛けベルトを肩にかけ、背当て部を背中に当てて、胸ベルトを胸部に巻き付けて装着する。そして、調節ベルトの自由端の固定位置を変更することにより、肩掛けベルトを胸ベルトの方向(すなわち下向き)に引っ張る張力を調節することができる。調節ベルトの自由端を適切な位置に固定すると、肩掛けベルトの背面側が下向きに引っ張られ、それにより肩が背中方向に引っ張られて背筋が伸び、姿勢が矯正される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の姿勢矯正装着具は、調節ベルトによって肩掛けベルトの張力が調節できるので、姿勢矯正力を調節することができる。また、本発明の姿勢矯正装着具は、胸ベルト、背当て部及び肩掛けベルトによって装着されるので、調節ベルトによって張力を調節している間も、装着状態が安定している。また、本発明の姿勢矯正装着具は、胸部より上側のみを覆うので、背当て部が背中の上半分のみを覆うため、薄着になっても目立ちにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及び、それらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
【0010】
図1〜図3に図示した姿勢矯正装着具10は、胴体の胸部周囲に巻き付けられる胸ベルト20と、胸ベルト20の背面側23の中央の上部に設けられた背当て部30と、背当て部30の上部の左右から、胸ベルト20の胸部側21、22に伸びる一対の肩掛けベルト40と、を備えている。姿勢矯正装着具10の背面側には、別体の調節ベルト50が備えられている。
【0011】
胸ベルト20は、背中から左右の脇下を通って胸部に巻き付けられる(図4〜図6)。胸ベルト20の胸部側片21、22の端部を互いに係止することにより、胸ベルト20は胸部にしっかり固定される。
【0012】
肩掛けベルト40は、右肩に掛けられる右肩掛けベルト41と、左肩に掛けられる左肩掛けベルト42とから成る。また、図1〜図3のように、各肩掛けベルト40は、腕を挿通するループ状の空間を形成する。姿勢矯正装着具10を装着する際には、このループ状の空間に左右の腕をそれぞれ挿通する。
【0013】
背当て部30は、背中の中心線に沿って配置され、胸ベルト20と肩掛けベルト40との間を接続している。
【0014】
調節ベルト50は、図1に示すように、一対の肩掛けベルト40の両方の背面側に結合された固定端50aと、下向きに伸びた自由端50bとを有している。調節ベルト50の自由端50bを胸ベルト20側に近づけると、背面側における肩掛けベルト40と胸ベルト20との間隔が狭くなる。装着時に、胸ベルト20は、ずれ上がらないように胸部周囲にしっかり巻き付けられるので、肩掛けベルト40と胸ベルト20との間隔が狭くなると、結果として、肩掛けベルト40が背面側下向きに引っ張られる。そして、肩掛けベルト40によって、肩も背面側下向きに引っ張られるため、背筋が伸びて姿勢が矯正される。
このように、調節ベルト50の自由端50bの固定位置(実質的には、胸ベルト20に対する固定位置)を変化させることにより、肩掛けベルト40の張力を調節して、姿勢強制力を調節することができる。
【0015】
調節ベルト50の自由端50bは、胸ベルトに対して、直接的又は間接的に固定することができる。
直接的な固定としては、例えば、着脱自在な固定手段(例えば、面テープ)により、調節ベルト50の自由端50bを胸ベルト20に直接固定する形態がある。
間接的な固定としては、調節ベルト50の自由端50bと胸ベルト20との間に、固定用部材を介在させる形態がある。
【0016】
以下に、間接的な固定の形態について、図を参照しながら詳述する。
図1〜3に示す姿勢矯正装着具10では、調節ベルト50の自由端50bと胸ベルト20との間に、延長ベルト51、52を介在させている。
延長ベルト51、52は、調節ベルト50の自由端50bから左右に伸びている。延長ベルト51、52の自由端51b、52bは、例えば面テープのような固定手段により、胸ベルト20の表面に着脱可能に固定できる。
延長ベルト51、52の自由端51b、52bを胸ベルト20に固定するとき、その固定位置を変更すれば、調節ベルト50の位置も変更できる。その結果、肩掛けベルト40の張力を調節でき、姿勢矯正力を調節できる。
【0017】
延長ベルト51、52の長さは任意であるので、延長ベルト51、52の自由端51b、52bが手で把持しやすい位置(例えば体側や胸部の位置)に来るように長さを調節するのが好ましい。これにより、体側や胸部側で、調節ベルト50の固定位置を調節することができる。
すなわち、延長ベルト51、52を備えることにより、装着者の手が容易に届く範囲で、調節ベルト50の固定位置を変更することができるようになる。よって、姿勢矯正装着具10の装着時には、簡単に適切な姿勢矯正力に設定できるので、短時間で装着することができる。また、姿勢矯正装着具10の使用中に肩掛けベルト40の張力が強すぎる又は弱すぎると感じたら、すぐに張力を調節することができる。
【0018】
本発明の姿勢矯正装着具10は、装着したときに胸ベルト20より上側のみが覆われるデザインになっている。そのため、衣服から姿勢矯正装着具10が透けて見える薄手の衣服の下に装着しても、装着しているのが目立たない。また、姿勢矯正装着具10がウエストまで達しないので、ウエスト周りを絞ったデザインの衣服の下にも、衣服のラインを崩すことなく装着することができる。
【0019】
なお、夏用の姿勢矯正装着具10では、背当て部30に開口33が形成されているのが好ましい。汗をかいたときに開口33から発散されるため、涼しい装着感が得られる。
【0020】
本実施の形態の姿勢矯正装着具10の装着手順を説明する。
背当て部30が内側に、調節ベルト50が外側になるように姿勢矯正装着具10を持つ(図3)。そして、右肩掛けベルト41のループに右腕を、左肩掛けベルト42のループに左腕を挿入し、背当て部30を背中の中心に当てる。胸ベルト20の胸部側片21、22を胸部の前まで延ばし、互いに係止する(図5)。図5の例では、右胸部片22の端部の裏面側にフック側の面テープを設け、左胸部片21の表面21aにループ側の面テープを設けている。そして、右胸部片22の端部を、左胸部片21の表面21aの任意の位置に固定している。
【0021】
その後、調節ベルト50の延長ベルト51、52の自由端51b、52bをそれぞれ手に持ち、前方に引っ張る(図5)。そして、胸ベルト20(図では、胸部側片21、22)の表面21a、22aに、延長ベルト51、52の自由端51b、52bを固定する(図4)。これにより、調節ベルト50を下方向に引き延ばして、肩掛けベルト40を下向きに引っ張ることができる(図6)。なお、自由端51b、52bを固定する位置を下のほうに移動させれば、調節ベルト50を、より下方向に引き延ばすことができる。
【0022】
自由端51b、52bを固定するための固定手段としては、面テープ、ホック等があるが、特に、任意の位置に固定できる面テープが好ましい。図2及び図5の例では、自由端51b、52bの裏面側にフック側の面テープを設け、胸ベルト20(図では胸部側片21、22)の表面(図では、胸部側片21、22の表面21a、22a)にループ側の面テープを設けている。これにより、自由端51b、52bは胸ベルト20の表面の任意の位置に固定できる。特に、胸ベルト20に設けるループ側の面テープの面積を、自由端51b、52bに設けるフック側の面テープよりも格段に広くすることにより、自由端51b、52bをさまざまな位置に固定することを可能にしている。すなわち、胸ベルト20に設けるループ側の面テープの面積を広くすることにより、調節ベルト50を引っ張る力を幅広くコントロールできる。
【0023】
次いで、姿勢矯正装着具10を構成する各構成部材について詳述する。
(胸ベルト20)
胸ベルト20は、伸縮性の軟質部材から形成される。姿勢矯正装着具10を胸部に保持するために、胸ベルト20は胸回りにしっかりと巻き付けられるが、伸縮性のある部材から形成するので、呼吸を阻害することがない。裏面にすべり止めを設けると、姿勢矯正装着具10を安定して保持できるので好ましい。
胸ベルト20の表面(例えば、胸部側片21、22の表面21a、22a)には、胸部側片21、22を互いに係止し、そして調節ベルト50を固定するために、面テープを備えることができる。
【0024】
(背当て部30)
背当て部30は、伸縮性の軟質部材から形成される。背当て部30は、胸ベルト20から連続する一体成形としてもよく(図2、図3)、又は別体で準備して胸ベルト20に縫合してもよい。図6のように、背当て部30の横幅を肩甲骨の間に収まる程度にすると、衣服の外から目立ちにくく、またh、腕の動きを阻害しにくいので好ましい。
【0025】
(肩掛けベルト40)
肩掛けベルト40は、伸縮性の軟質部材から形成される。肩掛けベルト40は、背当て部30又は胸ベルト20から連続する一体成形としてもよく(図3)、又は別体で準備して背当て部30及び胸ベルト20に縫合してもよい。
肩掛けベルト40は、姿勢矯正装着具10を装着したときに、背中の中心から、両肩の付け根を通って、胸部の両脇側に伸びているのが好ましい(図4〜図6)。肩掛けベルト40が背面側の中心を通ることにより、肩を背中の中心方向に引き寄せる効果が得られる。肩掛けベルト40が両肩の付け根を通ることにより、胸を張った姿勢を保持し易くなるので好ましい。肩掛けベルト40が胸部の両脇側を通ることにより、特に女性の場合には、バストを圧迫しないので好ましい。
【0026】
(調節ベルト50)
調節ベルト50は、伸縮性の軟質部材から形成される。調節ベルト50は、肩掛けベルト40とは別体で準備されて肩掛けベルト40の背面側に縫合される(図1)。
調節ベルトの横幅は特に限定されないが、背当て部30の横幅と同程度又はそれ以下にするのが好ましい。
【0027】
延長ベルト51、52は、伸縮性の軟質部材から形成される。延長ベルト51、52は、調節ベルト50から連続する一体成形としてもよく(図1、図2)、又は別体で準備して調節ベルト50に縫合してもよい。
延長ベルト51、52の自由端51b、52bの裏面側には、胸ベルト20の表面に係合するために面テープを備えられている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る姿勢矯正装着具10の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る姿勢矯正装着具10の正面図であり、調節ベルトを部分的に折り返している。
【図3】本発明の実施の形態に係る姿勢矯正装着具10の裏面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る姿勢矯正装着具10を装着した状態を示す正面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る姿勢矯正装着具10の装着方法を説明するための正面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る姿勢矯正装着具10を装着した状態を示す背面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 姿勢矯正装着具
20 胸ベルト
21、22 胸ベルトの胸部側片
23 胸ベルトの背面側
30 背当て部
33 開口
40 肩掛けベルト
50 調節ベルト
50a 調節ベルトの固定端
50b 調節ベルトの自由端
51、52 延長ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸部に巻き付ける胸ベルトと、
前記胸ベルトの背面側中央の上部に設けられた背当て部と、
前記背当て部の上部の左右から、前記胸ベルトの胸部側に伸びる一対の肩掛けベルトと、
前記一対の肩掛けベルトの両方の背面側に結合された固定端と、前記固定端から下向きに延びて前記胸ベルトに着脱自在に固定される自由端とを有する調節ベルトと、を備え、
前記調節ベルトの自由端の固定位置を変更することにより、前記一対の肩掛けベルトの背面側を前記胸ベルトに向かって引っ張る力を調節可能であることを特徴とする姿勢矯正装着具。
【請求項2】
さらに、前記調節ベルトの他端から左右両側に伸びる2本の延長ベルトを備え、前記延長ベルトの自由端が、前記胸ベルトと着脱自在に固定可能であることを特徴とする請求項1に記載の姿勢矯正装着具。
【請求項3】
前記背当て部に開口が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の姿勢矯正装着具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−94328(P2010−94328A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268283(P2008−268283)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(592074289)株式会社京都繊維工業 (6)
【Fターム(参考)】