説明

媒体搬送方向変換装置及び媒体処理装置並びにフラットケーブルの接続構造

【課題】回動体と媒体搬送方向変換装置本体との間を電気的に接続するケーブル接続構造の省スペース化と長寿命化を実現する。
【解決手段】カード状の媒体2の搬送路に設けられ、その搬送方向を変換する装置であって、媒体を停止保持可能な媒体搬送部61と、装置本体601に対して回動自在に支持された回動体602と、媒体の保持位置を検出する媒体センサと、該センサからの信号を装置本体の駆動制御回路に伝達するフラットケーブル611とを備える。該フラットケーブルは、回動体の回動中心軸603の周りに同心ロール状に弛みをもって巻回された巻回部612と、フラットケーブルの一端側で巻回部から装置本体に向けて折り返された第1の折り返し部613と、フラットケーブルの他端側で巻回部から回動体に向けて折り返された第2の折り返し部614とを備え、第1の折り返し部の先端側を装置本体に固定し、第2の折り返し部の先端側を回動体に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送方向変換装置及び媒体処理装置並びにフラットケーブルの接続構造に関し、さらに詳しくは、回動体とその回動体が装着された装置本体との間を電気的に接続するケーブル接続構造の省スペース化と長寿命化を実現した媒体搬送方向変換装置及び媒体処理装置並びにフラットケーブルの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気カードやICカード等の記録媒体が多方面で広く用いられており、商品やサービスの購入代金支払いの際に利用するための一定金額の価値を有するカード型の有価証券であるプリペイドカードが普及している。また、このような記録媒体には、繰り返し貨幣価値を追加(チャージ)して利用できるカードもある。その例としては、鉄道やバスなどの公共交通機関を利用する際に利用できる運賃、乗車回数、利用期間等を磁気カードやICカードなどに記録した各種の乗車カードがある。こうした中、各種の記録媒体を新規に発行する装置や、新しい媒体に更新することができる装置が検討されている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、多種のカードをカード毎の処理を行なうユニットに振り分けて搬送する手前の共通搬送路中に、搬送路切替ガイドを回動可能に設け、その搬送路切替ガイドの周囲に、前記各ユニットに連続するユニットガイドを放射状に配置した搬送路切替部を設け、搬送路切替部に一時保留したカードを前記各ユニットガイドに選択的に接続するようにしたカード発行装置が提案されている。
【0004】
下記特許文献1においては、搬送路切替部の回動支点と回動部の中心とを一致させ、切替角度を大きく取り搬送方向を切り替えたりカードを反転させたりできることが提案されているが、実施できる程度の記載はなされていない。従来の技術でそのような実施をする場合、次のような種々の問題がある。例えば、(1)搬送路切替部には、カードを搬送する搬送ローラやそれを駆動するモータ等が必要であり、搬送路切替部自体が大型化してしまうという問題、(2)大型の搬送路切替部を回動する駆動源が高出力化・大型化する必要があり、媒体処理装置内での自由な配置が困難であるという問題、(3)搬送路切替部を細かい正確な搬送角度に配置するためには、駆動制御手段が複雑になるという問題、(4)回動部が装置本体に対して回動するために、回動部に電力や信号を伝送する配線が繰り返し曲げにより疲労し、断線するという問題、等がある。
【0005】
特に上記の(4)に記載のように、固定体と往復回転体との間で電力や信号を伝送する必要がある箇所の配線が断線すると、カード発行装置の駆動が停止するという大きな問題になる。
【0006】
固定体と往復回転体との間の断線の問題に対しては、例えば下記特許文献2,3に記載の技術を挙げることができる。特許文献2に記載の配線部材は、フラットケーブルの中間部を2回折り曲げることにより、その折り曲げ部から一端側へ延びるフラットケーブルと他端側へ延びるフラットケーブルを幅方向にずらして幅方向に重ならないようにし、折り曲げ部から一端側へ延びるフラットケーブルを折り曲げ部のまわりに巻回したものである。この配線部材によれば、巻回部の巻き締まりと巻き弛みにより、往復回転体の往復回転を吸収するようにしている。また、特許文献3に記載の配線機構は、フラットケーブルを円弧部の中央部分でU字に湾曲させ、U字に湾曲した部分とU字に湾曲していない部分とが同一円弧で重なるように配置させ、円弧部の一端側と他端側の同一面側をパンハウジングとパンウォームギアの対向する位置に各々接合させたものである。この配線機構によれば、回動時に湾曲されたU字部が動くので、回動によってもフラットケーブルの復元力の影響を受けないようにしている。
【特許文献1】特開2005−242435号公報
【特許文献2】特開平11−265774号公報
【特許文献3】特開2002−152960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載の配線構造では、フラットケーブルを2度折り曲げている構造であるため、その幅がフラットケーブルの幅の2倍となって回動体の軸方向に大きなスペースが必要となり、小型化・薄型化が困難になるという問題がある。このことは、特に小型化や省スペース化が要求されるカード発行装置においては大きな問題となる。
【0008】
また、上記特許文献3に記載の配線機構は、U字に湾曲した部分とU字に湾曲していない部分とが同一円弧で重なるように配置させた構造であるため、回動軸に直交する方向の幅が少なくともフラットケーブルの幅以上となり、回動軸に直交する方向に大きなスペースが必要となり、小型化・薄型化が困難になるという問題がある。このことは、特に小型化や省スペース化が要求されるカード発行装置においては大きな問題となる。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、回動体とその回動体が装着された装置本体との間を電気的に接続するケーブル接続構造の省スペース化と長寿命化を実現した媒体搬送方向変換装置の提供、及び当該装置を備えた媒体処理装置の提供、並びにフラットケーブルの接続構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の媒体搬送方向変換装置は、カード状媒体を搬送する搬送路に設けられ、当該カード状媒体の搬送方向を変換する装置であって、前記搬送路の一部をなすと共に前記カード状媒体を停止保持可能な媒体搬送部と、当該媒体搬送部を有すると共に装置本体に対して回動自在に支持された回動体と、前記媒体搬送部における前記カード状媒体の保持位置を検出する媒体センサを含む媒体検出回路よりなるセンサ基板と、当該媒体検出回路からの信号を前記装置本体の駆動制御回路に伝達するフラットケーブルと、を備え、前記フラットケーブルは、前記回動体の回動中心軸の軸周りに同心ロール状に弛みをもって巻回された巻回部と、前記フラットケーブルの一端側で前記巻回部から前記装置本体に向けて折り返された第1の折り返し部と、前記フラットケーブルの他端側で前記巻回部から前記回動体に向けて折り返された第2の折り返し部と、を備え、前記第1の折り返し部の先端側を前記装置本体に固定し、前記第2の折り返し部の先端側を前記回動体に固定するように構成される。
【0011】
この発明によれば、フラットケーブルを、回動中心軸の軸周りに同心ロ一ル状に弛みをもって巻回した巻回部と、フラットケーブルの一端側で巻回部から装置本体に向けて折り返した第1の折り返し部と、フラットケーブルの他端側で巻回部から回動体に向けて折り返した第2の折り返し部とで構成し、その第1の折り返し部の先端側を装置本体に固定し、第2の折り返し部の先端側を回動体に固定したので、こうしたフラットケーブルを設けるのに必要な回動中心軸の軸方向の空間幅は、フラットケーブルの幅と同程度であればよく、また、回動中心軸の軸方向に直交する空間幅は、弛みをもって巻回された積層態様の幅程度であればよい。その結果、フラットケーブルを設けるのに必要な空間の省スペース化を図ることができ、媒体搬送方向変換装置の小型化・薄型化を実現できる。
【0012】
本発明の媒体搬送方向変換装置において、前記装置本体は、前記回動体と対向する側に第1のフレーム面を有し、前記回動体は、前記第1のフレーム面と平行に対向する第2のフレーム面と、当該第2のフレーム面に形成され、前記フラットケーブルを収容する収容部と、を備え、前記センサ基板は、前記第2のフレーム面と平行に前記収容部の底部に取り付けられ、前記フラットケーブルは、前記第1の折り返し部の先端側を前記第1のフレーム面に対して平行に立ち上げて形成された第1の立ち上げ部と、前記第2の折り返し部の先端側を前記第2のフレーム面に対して平行に立ち上げて形成された第2の立ち上げ部と、をさらに備え、前記第1の立ち上げ部を前記装置本体に固定し、前記第2の立ち上げ部を前記センサ基板に接続するように構成してもよい。
【0013】
この発明によれば、装置本体に設けられた第1のフレーム面と回動体に設けられた第2のフレーム面のいずれか一方に回動体を収容する収容部を備えるので、その収容部にフラットケーブルが弛みをもって巻回される。その結果、フラットケーブルの接続構造を省スペースで収容することができる。
【0014】
本発明の媒体搬送方向変換装置において、前記収容部は、導電性の樹脂材料で前記回動体と一体に形成されているように構成してもよい。この発明によれば、収容部が導電性の樹脂材料で回動体と一体に形成されているので、回動体を軽量化することができる。その結果、回動動作が迅速で、省スペースな媒体搬送方向変換装置を構成できる。
【0015】
本発明の媒体搬送方向変換装置において、前記媒体センサは、前記搬送部のカード状媒体搬送方向の両端に配置され、前記センサ基板の前記第2のフレーム面とは反対側の面に取り付けられているように構成してもよい。
【0016】
本発明の媒体搬送方向変換装置において、前記媒体センサは、前記カード状媒体の搬送方向の端を検出する1対のフォトセンサであるように構成してもよい。
【0017】
本発明の媒体搬送方向変換装置において、前記回動体を駆動する駆動源と、前記搬送部を駆動する駆動源とは、それぞれ前記回動体の外部から前記回動体の回動中心に設けた各駆動伝達手段として別個に設けられているように構成してもよい。
【0018】
上記課題を解決するための本発明の媒体処理装置は、角度をなして屈折又は分岐してカード状媒体を搬送する搬送路と、前記搬送路上に配置されて、前記カード状媒体に対して情報の書き込み又は読み取る情報書き込み部と、前記搬送路に設けられ、前記角度に応じて前記カード状媒体の搬送方向を変換する上記本発明の媒体搬送方向変換装置と、を備えるように構成される。
【0019】
本発明は、上記本発明の媒体搬送方向変換装置を備えた媒体処理装置に適用したものである。この発明によれば、フラットケーブルの接続構造の省スペース化を実現した媒体搬送方向変換装置を有するので、媒体処理装置の小型化を実現できる。
【0020】
上記課題を解決するための本発明のフラットケーブルの接続構造は、第1の電気回路を有する固定体と、第2の電気回路を有すると共に前記固定体に対して回動自在に支持される回動体と、前記回動体の回動中心となる回動中心軸と、前記第1の電気回路と、前記第2の電気回路とを電気的に接続するフラットケーブルと、を備えた接続構造であって、前記フラットケーブルは、前記回動中心軸の軸周りに同心ロ一ル状に弛みをもって巻回された巻回部と、前記フラットケーブルの一端側で前記巻回部から前記固定体に向けて折り返された第1の折り返し部と、前記フラットケーブルの他端側で前記巻回部から前記回動体に向けて折り返された第2の折り返し部と、を備え、前記第1の折り返し部の先端側を前記固定体に固定し、前記第2の折り返し部の先端側を前記回動体に固定するように構成される。
【0021】
本発明のフラットケーブルの接続構造は、上述した本発明の媒体搬送方向変換装置の研究開発を行っている過程で創作されたものであって、上記本発明の媒体搬送方向変換装置以外の媒体搬送方向変換装置にも適用可能な発明である。この発明によれば、フラットケーブルを、回動中心軸の軸周りに同心ロ一ル状に弛みをもって巻回した巻回部と、フラットケーブルの一端側で巻回部から固定体に向けて折り返した第1の折り返し部と、フラットケーブルの他端側で巻回部から回動体に向けて折り返した第2の折り返し部とで構成し、その第1の折り返し部の先端側を固定体に固定し、第2の折り返し部の先端側を回動体に固定したので、こうしたフラットケーブルを設けるのに必要な回動中心軸の軸方向の空間幅は、フラットケーブルの幅と同程度であればよく、また、回動中心軸の軸方向に直交する空間幅は、弛みをもって巻回された積層態様の幅程度であればよい。その結果、フラットケーブルを設けるのに必要な空間の省スペース化を図ることができる。こうしたフラットケーブルの接続構造を固定体と回動体との間に適用すれば、固定体と回動体を有する装置の小型化・薄型化を実現できる。
【0022】
本発明のフラットケーブルの接続構造は、前記固定体の前記回動体と対向する側に設けられた第1のフレーム面と、前記回動体に設けられ、前記第1のフレーム面と平行に対向する第2のフレーム面と、前記第1の折り返し部の先端側を前記第1のフレーム面に対して平行に立ち上げて形成された第1の立ち上げ部と、前記第2の折り返し部の先端側を前記第2のフレーム面に対して平行に立ち上げて形成された第2の立ち上げ部と、をさらに備え、前記第1の立ち上げ部を前記固定体に固定し、前記第2の立ち上げ部を前記回動体に固定するように構成してもよい。
【0023】
本発明のフラットケーブルの接続構造は、前記第1のフレーム面及び前記第2のフレーム面のいずれか一方に、前記回動体を収容する収容部をさらに備えるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の媒体搬送方向変換装置及び媒体処理装置によれば、フラットケーブルを設けるのに必要な回動中心軸の軸方向の幅はフラットケーブルの幅と同程度であればよく、また、回動中心軸の軸方向に直交する幅は弛みをもって巻き回した積層態様の厚さ程度であればよいので、フラットケーブルを設けるのに必要な空間の省スペース化を図ることができる。本発明の媒体搬送方向変換装置及び媒体処理装置は、こうしたフラットケーブルの接続構造を適用したので、媒体搬送方向変換装置の小型化・薄型化を実現でき、その結果、媒体処理装置の小型化に寄与することができる。
【0025】
また、本発明によれば、フレキシビリティのあるフラットケーブルを用いたので、回動体を長期間回転させた場合であってもフラットケーブルの断線等の不具合が生じ難いので、使用寿命を長くすることができる。また、フラットケーブルを弛みをもってゼンマイ状に巻き回したので、ケーブルにストレスが加わらず、使用寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の媒体搬送方向変換装置及び媒体処理装置並びにフラットケーブルの接続構造について図面を参照しつつ説明する。本発明は、その技術的特徴を有する範囲において、以下の説明及び図面に限定されるものではない。
【0027】
以下においては、本発明の媒体処理装置の全体構成を説明するなかで、フラットケーブルの接続構造及びその接続構造を備える媒体搬送方向変換装置の詳細について詳しく説明する。なお、フラットケーブルの接続構造や媒体搬送方向変換装置の装着対象が以下に説明する媒体処理装置に限定されないことは言うまでもない。
【0028】
[媒体処理装置]
最初に、媒体処理装置について説明する。本発明の媒体処理装置は、角度をなして屈折又は分岐してカード状媒体を搬送する搬送路と、その搬送路上に配置されて、カード状記録媒体(単に「媒体」ということがある)に対して情報の書き込み又は読み取る情報書き込み部と、その搬送路に設けられ、前記角度に応じて媒体の搬送方向を変換する媒体搬送方向変換装置とを備える装置である。
【0029】
図1は、本発明の媒体搬送方向変換装置が好ましく装着される媒体処理装置の実施の形態を示す透視図である。本発明の媒体処理装置1は、例えば図1に示すように、装置奥側に配置され、媒体2を上方向に積層して収納するとともに、積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部21を有するホッパー20と、媒体2の積層方向に対して鋭角をなす方向へ向けて、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を搬送する傾斜搬送路30と、傾斜搬送路30の媒体繰り出し部21とは反対側の一端である手前側上方の対角位置に配置された、媒体2を排出する媒体排出口10とを備えている。そして、媒体排出口10と傾斜搬送路30との間には、媒体2を回動させてその搬送方向を切り替える第1の媒体搬送方向変換装置80が設けられ、また、媒体繰り出し部21と傾斜搬送路30との間には、媒体2を回動させてその搬送方向を切り替える第2の媒体搬送方向変換装置60が設けられている。
【0030】
さらに、図1に示す媒体処理装置1において、傾斜搬送路30上には、媒体2に対して所定情報の書き込みを行なう情報書き込み機構(例えば印字装置70等)が設けられ、また、媒体排出口10の内側下方には、廃棄媒体保管部50及び廃棄媒体搬送部90を有する媒体廃棄装置が設けられている。また、媒体排出口10の内側には、所定情報の読み取り、書込み又は書換えのために媒体2に対して非接触の通信処理を行なう非接触通信部100が設けられている。また、図1に示すように、第1の媒体搬送方向変換装置80の下には、第1の媒体搬送方向変換装置80から媒体2を受け取って磁気データの読み取り又は書込み行なう磁気媒体リーダライタ120が設けられていてもよいし、第2の媒体搬送方向変換装置60の下には、第2の媒体搬送方向変換装置60からリジェクトした媒体2を保管する廃棄媒体保管部53が設けられていてもよいし、第2の媒体搬送方向変換装置60の上方には、クリーニング媒体114を保持するクリーニング媒体保持部110が設けられていてもよい。
【0031】
媒体処理装置1の全体的な配置構成として、ホッパー20が備える媒体繰り出し部21と、媒体2を発行するための媒体排出口10とが、傾斜搬送路30を間に挟んで装置側面視で対角位置に配置される。こうした配置構成は、装置1全体の長さ(図1を平面視した場合の左右の長さ)を短縮して装置全体の大きさを小さくすることができ、さらには、装置外形を作製し易い矩形状とすることができる。
【0032】
以下、媒体処理装置1の構成等について簡単に説明する。図中、「S」は媒体2の有無を検知するセンサを表している。
【0033】
ホッパー20は、媒体カセット25と媒体送り出し機構22とより構成され、媒体カセット25と媒体送り出し機構22との間には媒体繰り出し部21が形成されている。
【0034】
媒体カセット25は、媒体2を積層収納する媒体収納容器で、媒体処理装置1の一部としてホッパー20から着脱可能にカセット式媒体収納容器として設けられている。この媒体カセット25内には、接触式又は非接触式のICカードや磁気カード等の媒体2が収納される。その媒体2は、後述する媒体排出口10と略等しい高さの最上位部27よりも下側に積層して収納されている。なお、そうした媒体2は、利用期限や貨幣価値等の各種情報が完全に記録されていない発行前ものである。また、エンボスの有無は問わない。媒体カセット25の下側には、図1に示すように、ゲート部23が設けられており、このゲート部23から、後述する媒体送り出し機構22によって最低位の媒体2aが一枚毎送り出される。このゲート部23は、最低位の媒体2aを一枚のみ送り出すことができる所定の隙間を設けるように、媒体カセット25の底板と媒体カセット25の側板をなす基準板との間に設けられている。なお、図1中、符号24はシャッタであり、符号26はおもりである。
【0035】
媒体送り出し機構22は、ホッパー20の底部に媒体カセット25と対向して配置され、媒体カセット25内に収容される複数の媒体2のうち最低位に載置された媒体2aを媒体カセット25(即ちホッパー20)の外に送り出す装置である。この媒体送り出し機構22は、媒体カセット25の最低位に載置されたカード状媒体2aをゲート部23を経由して媒体カセット25(即ちホッパー20)の外に押し出す押出部材221を備えている。この押出部材221には、カード状媒体2aの後端縁に係合してその媒体2aを押し出す爪部が形成されていることが好ましい。
【0036】
押出部材221は、例えば2つのスプロケット223,223間に掛け渡されたチェーン222に取り付けられている。このスプロケットは、例えば図1に示すように、ステッピングモータ等の駆動手段224により伝動ベルト225等を介して駆動制御することができ、これにより押出部材221は、カード状媒体2aを押し出すように駆動される。
【0037】
媒体排出口10は、媒体処理装置1から最終的に媒体2を排出するゲートであり、装置前面であり且つ装置上部に設けられている。上記のホッパー20の媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2は、ホッパー20と媒体排出口10との間に設けられた傾斜搬送路30を経由して、媒体排出口10に搬送される。なお、傾斜搬送路30は、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する搬送路である。この媒体排出口10は、図1においては媒体処理装置1の上部に設けられているので、その媒体排出口10の装置内側下方には広いスペースを確保することができる。そのスペースには、廃棄すべき使用済み媒体を保管する廃棄媒体保管部50が配置されている。
【0038】
この媒体排出口10は、媒体2を新規に発行する場合は文字通り媒体排出口となるが、更新発行や書き換え発行する場合は、所定情報を書き換えるべき使用中の媒体がこの媒体排出口10から挿入される媒体挿入口としても機能するとともに、所定情報の書き込み又は書き換えを完了した前記媒体を排出する媒体排出口としても機能する。従って、この媒体排出口10が媒体挿入口及び媒体排出口の両方の機能を有する場合、媒体排出口が媒体の取り込み口としても用いられるので、磁気カードやICカード等の新規発行のみならず、更新発行や書き換え発行用の媒体処理装置として用いられる。
【0039】
なお、媒体排出口10には、一般的な媒体排出口ないし挿入口に設けられている各種の機能を付加させてもよく、例えば、図1に示すように、シャッタ11とシャッタ用ソレノイド12とを有するシャッタ機構13を備えていてもよい。また、図示しないが、媒体排出口10には、挿入される媒体種の情報を予め読み取るプリヘッドを備えていてもよいし、また、挿入される媒体の幅寸法の適否を検査する幅センサ等が設けられていてもよい。
【0040】
傾斜搬送路30は、媒体排出口10とホッパー20との間に設けられ、ホッパー20の媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する搬送路である。傾斜搬送路30には、媒体2を上下から挟んで所定の方向に搬送する対向した搬送用のローラ(以下、対向ローラともいう)31,32,33が設けられている。上述したように、媒体排出口10は装置上部に設けられ、ホッパー20の媒体繰り出し部21は装置下方に設けられているので、その間に配置されて媒体2の搬送路となる傾斜搬送路30は、装置1の枠体の対角線状に設けられている。対角線状に設けられた傾斜搬送路30は、同じ長さの搬送路が必要な場合、搬送路を水平配置した場合に比してその長さを短くすることができるので、装置全体の大きさ(特に図1における左右方向の長さL)を小さくして省スペース化を図ることができる。
【0041】
情報書き込み機構は、傾斜搬送路30上に設けられて、媒体2に対して所定情報の書き込みを行なうものであり、図1に示すような印字装置70を例示できる。この情報書き込み機構は、所定の情報の書き込み及び書き換えが可能であることが好ましく、具体的には、図1中の印字装置70に示すように、印字ヘッド71や消去ヘッド72を有することが好ましい。
【0042】
情報書き込み機構である印字装置70は、ホッパー20側から媒体排出口10に向かって、媒体搬送用の対向ローラ31、消去ヘッド72、媒体搬送用の対向ローラ32、印字ヘッド71、媒体搬送用の対向ローラ33の順で配設されている。消去ヘッド72と印字ヘッド71は、それぞれがプラテンローラ34を対向配置し、そのプラテンローラ34との間に媒体2を挟むようにして、媒体2に印字された情報を消去し又は新たな情報を印字する。
【0043】
印字装置70には、媒体表面に対して消去ヘッド72を昇降させる消去ヘッド駆動モータ73が設けられ、また、媒体表面に対して印字ヘッド71を昇降させる印字ヘッド駆動モータ74が設けられていることが望ましい。こうした各ヘッドの駆動モータ73,74は、媒体2に情報を印字することが必要な際又は媒体2に印字された情報を消去することが必要な際にそれぞれ独立に動作し、プラテンローラ34上の媒体2に接触するまで、消去ヘッド72又は印字ヘッド71を降下させる。一方、上記の消去や印字が終了した場合は、プラテンローラ34上の媒体2から離れる方向に消去ヘッド72又は印字ヘッド71を上昇させる。消去や印字が必要でない場合は、各ヘッドの駆動モータ73,74は動作せず、消去ヘッド72及び印字ヘッド71は傾斜搬送路30から退避した位置に保持される。なお、駆動モータ73,74は、図示しないギアやカム等の昇降機構によって、消去ヘッド72及び印字ヘッド71を駆動する。なお、符号73a,73b,74a,74bは、消去ヘッド72と印字ヘッド71を上昇させたときの位置を検知するセンサである。
【0044】
[媒体搬送方向変換装置]
次に、本発明に係る媒体搬送方向変換装置について詳しく説明する。図2は、本発明に係る媒体搬送方向変換装置が有するフラットケーブルの接続構造の全体配置を表した正面図であり、図3は、図2に示すフラットケーブルの接続構造を覆う第1のフレーム面の正面図である。図4は、図2に示す媒体搬送方向変換装置の左側面図である。図5は、図2に示す媒体搬送方向変換装置が備える回動体を上方から見たときの図であり、図6は、図2に示す媒体搬送方向変換装置が備える回動体の、切り欠き部分を有する正面図である。また、図7は、図2に示す媒体搬送方向変換装置が有するフラットケーブルの接続構造の形成手順を示す説明図である。なお、図1に示した媒体処理装置1は、本発明に係る媒体搬送方向変換装置(60,80)を2つ配置しているが、両者は基本要素が同じであるので、図2以下の各図においては、第2の媒体搬送方向変換装置60(以下、単に「媒体搬送方向変換装置60」という。)を例にして構造上の特徴を説明する。
【0045】
媒体搬送方向変換装置60は、媒体2を搬送する搬送路に設けられ、その媒体2の搬送方向を変換する装置であって、例えば図1に示すように、媒体繰り出し部21と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体繰り出し部21又は傾斜搬送路30から接受した媒体2を一時保持した状態で回動させて媒体2の搬送方向を切替るように動作する。この媒体搬送方向変換装置60は、図2に示すように、搬送路の一部をなすと共に媒体2を停止保持可能な媒体搬送部61と、媒体搬送部61を有すると共に装置本体601に対して回動自在に支持された回動体602と、媒体搬送部61における媒体2の保持位置を検出する媒体センサS1,S2を含む媒体検出回路(図示しない)よりなるセンサ基板610と、その媒体検出回路からの信号を装置本体601の駆動制御回路(図示しない)に伝達するフラットケーブル611とを備えている。
【0046】
本発明に係る媒体搬送方向変換装置60は、このフラットケーブル611の接続構造に特徴があり、詳しくは、フラットケーブル611が、回動体602の回動中心軸603の軸周りに同心ロール状に弛みをもって巻回された巻回部612と、フラットケーブル611の一端側で巻回部612から装置本体601に向けて折り返された第1の折り返し部613と、フラットケーブル611の他端側で巻回部612から回動体602に向けて折り返された第2の折り返し部614とを備えている。そして、本発明に係るフラットケーブル611の接続構造は、第1の折り返し部613の先端側が装置本体601に固定され、第2の折り返し部614の先端側が回動体602に固定された接続構造である。以下においては、最初に媒体搬送方向変換装置を構成する各部材について説明した後に、フラットケーブルの接続構造について詳しく説明する。
【0047】
(装置本体)
図2等で例示した媒体搬送方向変換装置60は、回動体603を少なくとも有する装置本体601と、回動体603と対向する側にあって装置本体601のカバー部材としての第1のフレーム面604(図3参照)とを有している。装置本体601内には、回動体603と、回動体603内にあって媒体搬送路(媒体繰り出し部21又は傾斜搬送路30)から媒体2を接受して送り出すとともに媒体2を一時保持することができる媒体搬送部61と、回動体602を回動させる第1の駆動源である回動用モータ65と、媒体搬送部61内の搬送手段(搬送ローラ)を駆動するための第2の駆動源である搬送用モータ67とが少なくとも設けられている。
【0048】
装置本体601の構造は特に限定されないが、図2に示すように、少なくとも一面が開放した金属製の箱形構造を例示できる。装置本体601には、少なくとも媒体2の出入口605,606が設けられており、その出入口605等には必要に応じて媒体ガイド607が設けられていることが好ましい。また、装置本体601の下側にも媒体ガイド615が設けられていてもよい。この媒体ガイド615は、回動体603が回転して媒体搬送部61の方向が上下方向に向いた場合の媒体ガイドとして機能する。また、装置本体601の上側にも媒体ガイドが設けられていてもよいが、図2の例では、対向する回動用モータ65と搬送用モータ67の間の隙間616を媒体ガイドとして機能させることができる。
【0049】
こうした装置本体601は、装置本体601のカバー部材として機能する第1のフレーム面604を有している。この第1のフレーム面604は、図3に示すように、装置本体601にネジ608等により着脱可能に設けられており、本発明においては、その第1のフレーム面604に、フラットケーブル611の一端を固定する基板621がネジ626等により取り付けられている。この基板621には、例えば図3に示すように、フラットケーブル611を通すガイド穴622や、フラットケーブル611の一端を結線するコネクタ624や、検知信号を処理装置1の制御装置に伝送する多芯ケーブル625等が取り付けられている。また、その基板621には、フラットケーブル611で伝送される検知信号を変換する電気回路(図示しない)が実装されていてもよい。
【0050】
第1のフレーム面604には、回動体602に設けられたガイドピン609に対してスライドガイド及びストップガイドとして作用する円弧状のスリット628が形成されている。このスリット628の形状は、図3に示すように、略半円形であってもよいが、それに限定されない。また、図4に示すように、装置本体601の四隅には支柱617が設けられ、その支柱617には第1のフレーム面604がネジ608等で装着される。
【0051】
(回動体)
回動体602は、図2、図4〜図6に示すように、媒体搬送方向変換装置60の構成部材であり、装置本体601内に着脱可能に装着されている。回動体602は、媒体搬送部61を有し、装置本体601に対して回動中心軸603を軸として回動自在に支持されている。この回動体602において、装置本体601が備える第1のフレーム面604の側には、その第1のフレーム面604と対向する第2のフレーム面644を有している。この第2のフレーム面644には、フラットケーブル611を収容する収容部640が形成されている。
【0052】
収容部640は、図4〜図6の例では、回動体602の第2のフレーム面644に矩形状に形成されているが、装置本体601の第1のフレーム面604の側に設けられていてもよい。収容部640の底部は、対向するフレーム面(604又は644)と平行になるように形成されている。この収容部640には、媒体搬送部61を通過する媒体2を検出するためのセンサ基板610が設けられ、そのセンサ基板610には、媒体2の搬送方向の端を検出する1対のセンサ(例えばフォトセンサS1,S2)が設けられている。
【0053】
このセンサ基板610には、フラットケーブル611の接続端子618が実装されており、その接続端子618とフォトセンサS1,S2とを結線する銅配線パターン(図示しない)が形成されている。こうしたセンサ基板610は、ネジ645等によって、収容部640の底部に固定されている。フォトセンサS1,S2は、媒体2が存在する場合の遮光によって、媒体位置を検知する遮光式のセンサであり、媒体搬送部61の略両端部に配置されているので両方のセンサS1,S2が媒体2を検知しているとき媒体2の保持を検知することができる。従って、媒体搬送方向変換の動作途中にジャムが発生しないように媒体搬送部61の一時保持状態を維持制御することができる。なお、媒体を検知するためのセンサは、遮光式のフォトセンサS1,S2に限らず、メカニカルセンサでもよく、媒体搬送部61の両端に配置する構成に限らず中央部または、一端に設けてもよい。
【0054】
回動体602は、樹脂材料で成形されていることが好ましく、例えば図4及び図5に示すように、第1成形体602Aと第2成形体602Bとで構成できる。この第1成形体602Aと第2成形体602Bとは、雄雌形状の端面642で嵌合等により一体化させることができる。樹脂材料で形成した回動体602は、著しい軽量化を実現できるので、迅速な回動動作を実現できる。また、その樹脂材料に導電性材料を混ぜた導電性の樹脂材料で回動体を成形すれば、静電気の発生を防ぐことができ、さらに、フラットケーブル611の検知信号の伝送が、駆動モータ等の他の電気手段から発生するノイズにより妨害されることを防ぐことができるという効果がある。
【0055】
回動体602の第2のフレーム面644には、ガイドピン609が設けられている。このガイドピン609は、回動中心軸603から離れた部位に設けられ、第1のフレーム面604に形成された円弧状のスリット628に沿って移動する。なお、円弧状のスリット628は、ガイドピン609のスライドガイド及びストップガイドとして作用する。
【0056】
回動体602が2つの成形体で構成されている場合、図4及び図5に示すように、その内部は空洞641になっており、その空洞641内には、媒体搬送部61を構成する搬送ローラ等(図5及び図6においては図示しない)が設けられている。回動体602内には、図4に示すように、媒体2を媒体搬送部61に沿って移動させるスリットガイド643が設けられている。また、回動体602を上方から見たとき、図5に示すように、媒体搬送部61の出入口には、媒体2を媒体搬送部61に導きやすくするための導入ガイド646が設けられている。
【0057】
回動体602の回動動作は、回動用モータ65によって行われる。具体的には、図2及び図4に示すように、プーリ651、ベルト66及びプーリ653を経由して、回動用モータ65の動力が回転体602に伝動し、回転体602が回動する。なお、図4中の符号652は、回動体602の位置を手動で調整するツマミであり、そのツマミ652は、例えば回動体602を任意の位置に動かそうとする場合に利用する。
【0058】
(フラットケーブルの接続構造)
次に、図6及び図7を参照してフラットケーブル611の接続構造について説明する。本発明に係るフラットケーブル611の接続構造は、媒体処理装置1を構成する媒体搬送方向変換装置60の研究開発を行っている過程で創作されたものであって、回動体602の回動中心軸603の軸周りに同心ロール状に弛みをもって巻回された巻回部612を有するとともに、フラットケーブル611の一端側には、巻回部612から装置本体601に向けて折り返された第1の折り返し部613を有し、フラットケーブル611の他端側には、巻回部612から回動体602に向けて折り返された第2の折り返し部614を有している。そして、本発明に係るフラットケーブル611の接続構造は、その第1の折り返し部613の先端側が装置本体601に固定され、第2の折り返し部614の先端側が回動体602に固定されている。なお、こうした特徴を有する本発明のフラットケーブルの接続構造は、図2〜図6に例示した媒体搬送方向変換装置60以外の媒体搬送方向変換装置にも適用可能である。
【0059】
フラットケーブルの接続構造を形成する一例として、図7の例を挙げることができる。先ず、フラットケーブル611の一端を所定の長さを残して90°折り返し、第2の折り返し部614を形成する。そして、その第2の折り返し部614を基板610に形成されたブリッジ部623にくぐらせ、図7(A)に示すように、その端部を接続端子618に接続し、その結果、フラットケーブル611は回動体602に固定される。
【0060】
次に、その第2の折り返し部614をさらに90°折って第2の立ち上げ部614Aを形成した後、図7(B)に示すように、フラットケーブル611の長尺部を回動中心軸603の軸周りに同心ロール状に弛みをもって巻回して巻回部612を形成する。この第2の立ち上げ部614Aは、第2のフレーム面644に対して平行に立ち上げて形成されている。なお、上記では、第2の立ち上げ部614Aを形成する前に、第2の折り返し部614をブリッジ部623にくぐらせているが、第2の折り返し部614と第2の立ち上げ部614Aを形成した後にその第2の立ち上げ部614Aをブリッジ部623にくぐらせ、接続端子618に接続してもよい。
【0061】
次に、図7(C)に示すように、フラットケーブル611のもう一端を所定の長さを残して90°折り返し、第1の折り返し部613を形成する。そして、その第1の折り返し部613をさらに90°折って第1の立ち上げ部613Aを形成し、その第1の立ち上げ部613Aを、図7(D)に示すように、第1のフレーム面604に形成されたガイド穴619を通し、引き続いて基板621に形成されたガイド穴622を通し、その後、その端部を接続端子624に接続し、その結果、フラットケーブル611は装置本体601に固定される。この第1の立ち上げ部613Aは、第1のフレーム面604に対して平行に立ち上げて形成されている。
【0062】
こうして構成されたフラットケーブル611の接続構造は、図6に示すように、フラットケーブル611を設けるのに必要な回動中心軸603の軸方向の空間幅W1が、フラットケーブル611の幅W2と同程度であればよく、また、回動中心軸603の軸方向に直交する空間幅W3は、弛みをもって巻回された積層態様の幅W4程度であればよい。その結果、フラットケーブル611を設けるのに必要な空間の省スペース化を図ることができる。特に本発明においては、こうしたフラットケーブルの接続構造が媒体処理装置1の媒体搬送方向変換装置60に適用されているので、媒体搬送方向変換装置60の小型化・薄型化を実現できる。
【0063】
また、本発明によれば、フレキシビリティのあるフラットケーブル611を用いたので、回動体602を長期間回転させた場合であってもフラットケーブル611の断線等の不具合が生じ難いので、使用寿命を長くすることができる。また、フラットケーブル611を弛みをもってゼンマイ状に巻き回したので、ケーブルにストレスが加わらず、使用寿命を長くすることができる。
【0064】
また、本発明のフラットケーブルの接続構造によれば、フラットケーブル611の両端は通常、フラットケーブル用コネクタ618,624に抜き差し可能であるので、そのフラットケーブルの接続構造を装着する回動体602を交換することがあっても、その交換を容易に行うことができる。また、本発明のフラットケーブルの接続構造は収容部640に収容されるので、他の構成部材からの干渉を防ぐことができ、使用寿命を長くすることができる。また、本発明のフラットケーブルの接続構造によれば、フラットケーブル611を複数回ゼンマイ状に巻き回し、回動中心軸603近傍から装置本体の第1のフレーム面604に出し、その第1のフレーム面604に装着されたコネクタ部材618,624に固定したので、ケーブルに過度のストレスが加わらない。その結果、回動体602を長期間回転させた場合であってもフラットケーブル611の断線等の不具合が生じ難いので、使用寿命を長くすることができる。また、本発明のフラットケーブルの接続構造によれば、フラットケーブル611がゼンマイ状に巻き回しているので、回動中心軸603近傍から装置本体の第1のフレーム面604に出す場合、第1のフレーム面604に設ける取り出し用のガイド穴619がいずれの位置にあっても、容易に取り出すことができる。また、本発明のフラットケーブルの接続構造を有する媒体搬送方向変換装置60によれば、フラットケーブルの接続構造を装着したセンサ基板610を、回動体602の駆動機構部の反対側に配置したので、駆動機構部の干渉がなく、配線が容易で保守も容易である。
【0065】
(媒体搬送機構)
次に、媒体搬送機構について説明する。図8は、図2に示す媒体搬送方向変換装置の媒体搬送部を表した正面図である。媒体搬送方向変換装置60において、回動体602は、上述したように、回動用モータ65の動力がベルト66を経由して回動体602のプーリ653に伝わり回動する。その回動体602には、媒体2を保持及び搬送する搬送部61と、搬送部61の一方の側の端部近傍に設けられた対向する一対のローラ657,661と、搬送部61の他方の側の端部近傍に設けられた対向する一対のローラ658,662とを有している。さらに、この媒体搬送部61は、ベルト68と搬送駆動プーリ655を介した搬送用モータ67からの駆動力により、前記の各対向ローラが駆動して媒体2を接受し又は一時保持するように動作する。
【0066】
媒体搬送部61は、媒体2を上下から挟んで所定の方向に搬送するが、その搬送は、図8に示すように、媒体搬送部61の一方側の端部近傍に設けられた対向する一対のローラ657,661と、媒体搬送部61の他方側の端部近傍に設けられた対向する一対のローラ658,662とで構成される。この媒体搬送部61は、搬送用モータ67からの駆動力が伝達されることにより駆動する。対向ローラのうち、図8を正面視した場合の下側に位置するローラ657,658は駆動源に直結した搬送用ローラであり、上側に位置するローラ661,662は駆動源に直結しないパッドローラである。
【0067】
搬送用ローラ657,658は、プーリとベルトを介し、同期回転するように連動する。なお、本実施形態の搬送用ローラ657,658はプーリを兼ねており、搬送用ローラ657,658である各プーリに掛け渡されたベルト659の背面で媒体2の搬送が行われる。具体的には、搬送用モータ67からの駆動力がベルト68によって搬送駆動プーリ655に伝わり、その搬送駆動プーリ655からベルト656を介して搬送用ローラ657に伝わる。また、搬送用ローラ658には、搬送用ローラ657との間に掛け渡されたベルト659を介して駆動力が伝わる。なお、符号660はアイドラーであり、各ローラ657,658,661,662の軸は、回動体602に軸受けされている。
【0068】
なお、上記の媒体搬送路61による媒体2の駆動機構は図示の例に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で種々の形態を採用することができる。また、搬送用モータ67からの駆動力の伝達は、図示のようにプーリとベルトで行っているが、ギアを用いても構わない。
【0069】
以上説明した本発明の媒体搬送方向変換装置60において、搬送路61の方向を、傾斜搬送路30と一致接続させるように回動させたり、媒体繰り出し部21と同じ水平方向に回動させたりすることができる。また、後述するように、クリーニング媒体保持部110がこの第2の媒体搬送方向変換装置60の上側に設けられる場合には、そのクリーニング媒体保持部110の搬送路111と一致させるように回動させクリーニング媒体114を受け取り、傾斜搬送路30の印字装置へ送り出す向きへ再び回動することができる。また、下方に設けられた廃棄媒体保管部53に排出させるように回動させることもできる。
【0070】
第2の媒体搬送方向変換装置60を所定の角度回動させるための回動制御は各種の方法で行なうことができる。例えばステッピングモータとロータリーエンコーダとで回動制御してもよいし、光電センサ(遮光式センサ)と所定形状に作製した位置検知スリット(遮光板)とで回動制御してもよい。いずれの場合であっても、傾斜搬送路30と一致させる角度と、媒体繰り出し部21と同じ水平方向の、少なくとも2つの角度に精度良く回動させる。また、さらに他の角度に制御する場合には、その角度に精度良く回動させる。第2の媒体搬送方向変換装置60は、右回りに回転させることもできるし左回りに回転させることもできるので、現在の位置から次に回転移動する位置への回転角度が最も小さくなる方向に回転させることが好ましい。そうした回転動作により、媒体2の搬送時間を短縮することができる。
【0071】
この第2の媒体搬送方向変換装置60は、(A)媒体繰り出し部21から搬送された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合には、第2の媒体搬送方向変換装置60の媒体搬送路61を媒体繰り出し部21と同じ水平にし、媒体繰り出し部21から搬送された媒体2を対向ローラ657,658,661,662(以下、「対向ローラ657等」という。)により一旦保持し、次いで所定角度回転して傾斜搬送路30と同じ角度にし、次いで第2の媒体搬送方向変換装置60から対向ローラ657等により媒体2を傾斜搬送路30に送り出す。また、(B)傾斜搬送路30から搬送された媒体2を再び傾斜搬送路30に搬送して媒体2に印字したり印字消去したりする場合には、第2の媒体搬送方向変換装置60の媒体搬送路61を傾斜搬送路30の角度と一致させておき、傾斜搬送路30から搬送された媒体2を対向ローラ657等により一旦保持し、第2の媒体搬送方向変換装置60を回動させることなく再び傾斜搬送路30に送り出す。さらに、(C)クリーニング媒体114による傾斜搬送路30(印字装置の搬送路)クリーニングする場合は、媒体搬送路61をクリーニング媒体保持部110の搬送路111に一致する角度に回動し、クリーニング媒体114を受け取り一旦保持し、傾斜搬送路30と同じ角度に回動し、そこへクリーニング媒体114を送り出す。さらに、(D)廃棄媒体保管部53に媒体2を廃棄する場合は、媒体搬送路61を廃棄媒体保管部53に一致する角度に回動し、その廃棄媒体保管部53内に媒体2を送り出す。
【0072】
なお、対向ローラ657等の駆動源は、第2の媒体搬送方向変換装置60を駆動する回動用モータ65とは独立に設けられた搬送用モータ67であり、その回動用モータ65と搬送用モータ67とは独立に駆動されるので、第2の媒体搬送方向変換装置60の回動動作と対向ローラ657等による媒体2の送り動作は、相互に干渉することがなく独立制御が可能である。このような構成によれば、いわゆる連れ回り現象をキャンセルすることができるので、ジャムを防止し、第2の媒体搬送方向変換装置60による媒体搬送方向の切替制御を簡易且つ確実に行なうことができる。
【0073】
なお、第1の媒体搬送方向変換装置80についても原理的には上記の第2の媒体搬送方向変換装置60と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0074】
(回動体の回動制御)
次に、回動体602を所定の角度回動させるための回動制御について説明する。図9は、回動体602の回動角位置決め用スリットとセンサとの位置関係を示す説明図であり、光電センサ(遮光式センサ)と所定形状に作製した位置検知スリット(遮光板)とで回動制御する場合の例である。
【0075】
具体的には、搬送方向に対応した複数(図9では2箇所)の位置に設けられた回転位置決め用スリット631A,631Bと、その回転位置決め用スリット631A,631Bによる遮光状態を検知する複数(図9では3つ)の位置検知センサ(PS)630A,630B,630Cとを有している。こうしたスリット631A,631Bと、そのスリット631A,631Bに対応して回転位置を検知するセンサ630A,630B,630Cとにより、回動体602を所定の方向に精度よく回動させることができる。
【0076】
図9において、回転位置決め用スリット631A,631Bは、媒体搬送部61と一体に回動するように設けられていればよく、例えば媒体搬送の邪魔にならないように回動体602に設けられていることが好ましい。一方、回転位置決め用スリット631A,631Bに対応した位置検知センサ(PS)630A,630B,630Cは、媒体処理装置1の所定の位置に必要に応じて取付部材を介して固定される。
【0077】
次にこのような第2の媒体搬送方向変換装置60の動作の概略を説明する。図9において、媒体搬送路61が水平位置にある場合を初期状態とすれば、この状態は、第1の回転位置決め用スリット631Aが第1の位置検知センサ630Aに検知されているときである。次に、上位からの制御指示により、第2の媒体搬送方向変換装置60の媒体搬送路61を水平位置から傾斜搬送路30と同じ角度にする場合には、上位からの指示により図9で左回りに回動するとともに、第1の位置検知センサ630Aが第2の回動角位置決め用スリット631Bを検知した場合に停止する。これにより、媒体搬送部61は所定の角度だけ左回りに回動して傾斜搬送路30と同じ角度になり、その傾斜搬送路30との間で媒体2の接受を行なうことができる。一方、上位からの制御指示により、第2の媒体搬送方向変換装置60の媒体搬送路61を水平位置からクリーニング媒体保持部110と同じ角度にする場合には、上位からの指示により左回りに回動するとともに、第1の位置検知センサ630Bが第2の位置決め用スリット631Aを検知した場合に停止する。これにより、媒体搬送部671は90°だけ左回りに回動してクリーニング媒体保持部110と同じ角度になり、そのクリーニング媒体保持部110との間で媒体の接受を行なうことができる。このように、所望の搬送方向に応じた変換角度に回転位置決め用スリット631A,631Bを配置することにより第2の媒体搬送方向変換装置60の正確な回転位置の設定と同時に回動位置の保証(位置確認とステッピングモータ等の駆動源の動作確認)が可能となる。このように、本発明の媒体搬送方向変換装置は、反転又は一回転という広い角度での回動が可能であるとともに、省スペースで回動させることができるとともに、回動角度の自由な調整を容易に行なうことができる。
【0078】
[媒体処理装置を構成する他の構成部材]
次に、媒体処理装置1を構成する他の構成部材について説明する。媒体処理装置1には、廃棄媒体保管部50や廃棄媒体搬送部90を設けることができる。廃棄媒体保管部50は、図1においては媒体排出口10の内側下方に設けられ、廃棄すべき使用済み媒体を保管するカセット部材であり、「廃棄媒体保管カセット」ということもできる。なお、図1中、符号51は廃棄媒体保管部50の底面であり、符号52はセンサである。
【0079】
廃棄媒体搬送部90は、第1の媒体搬送方向変換装置80と廃棄媒体保管部50との間に設けられ、第1の媒体搬送方向変換装置80から使用済みの媒体を受け取って、廃棄媒体保管部50に搬送するための部材である。なお、図1中、符号91は搬送路であり、符号92は対向ローラであり、符号93は除電ブラシであり、符号94は電磁クラッチであり、符号95,96はセンサである。
【0080】
非接触通信部100は、媒体排出口10の内側に設けられ、所定情報の読み取り、書き込み又は書換えのために媒体2に対して非接触の通信処理を行なう部材である。非接触通信部100が設けられていることにより、非接触ICカードに対しても適用することができる。なお、図1中、符号101は搬送路であり、符号102,103は対向ローラであり、符号104はアンテナ部であり、符号105はセンサである。
【0081】
磁気媒体リーダライタ120は、第1の媒体搬送方向変換装置80の下に設けられていてもよい。この磁気媒体リーダライタ120は、媒体2が有する所定情報が磁気データである場合に、第1の媒体搬送方向変換装置80から媒体2を受け取って磁気データの読み取り又は書き込み行なう。また、この磁気媒体リーダライタ120を第1の媒体搬送方向変換装置80の下に設ける代わりに、第2の媒体搬送方向変換装置60の上に設けてもよい。磁気媒体リーダライタ120は、第1の媒体搬送方向変換装置80又は第2の媒体搬送方向変換装置60から媒体2を受け取る搬送路121と、磁気データを媒体2から読み取る磁気ヘッド122を有している。さらに、その磁気媒体リーダライタ120には、媒体2を搬送する対向ローラ123が設けられている。対向ローラ123は、後述するA駆動モータ140により駆動される。その駆動力の伝達は、対向ローラ123の一方のローラに設けた電磁クラッチ124により駆動切断及び接続がなされる。
【0082】
クリーニング媒体保持部110は、図1に示すように、第2の媒体搬送方向変換装置60の上方に設けられていてもよい。クリーニング媒体保持部110は、情報書き込み装置が有する印字ヘッド71や消去ヘッド72をクリーニングするためのクリーニング媒体114を収容し、そのクリーニング媒体114を第2の媒体搬送方向変換装置60との間で授受可能に保持する。そして、クリーニング媒体114は、第2の媒体搬送方向変換装置60から情報書き込み装置70へ搬送され、印字ヘッド71や消去ヘッド72のクリーニングを行なう。なお、符号111は搬送路であり、符号112は対向ローラであり、符号113は電磁クラッチである。
【0083】
電源部130は、図1に示すように、第1の媒体搬送方向変換装置80の下方及び情報書き込み装置70の下方のスペースに設けることができる。この電源部130は、ユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体処理装置1に取り付けられていることが好ましい。
【0084】
(駆動システム)
媒体処理装置1は、図1に示すように、上述した回動用モータ65と搬送用モータ67の他、2つの駆動モータ(A駆動モータ140とB駆動モータ150)により駆動される。
【0085】
A駆動モータ140は、複数のベルトや適宜のプーリ、ギアが組み合わされて、一時保留部である廃棄媒体搬送部90、第1の媒体搬送方向変換装置80、及び非接触通信部100の各搬送用の対向ローラを駆動して、媒体の搬送を行なう。
【0086】
廃棄媒体搬送部90における媒体2の搬送を行なうA駆動モータ140の駆動力は、ベルトを介して適宜のプーリに伝わり、さらに、プーリの回転駆動が、それに連接された適宜のギアにより廃棄媒体搬送部90の対向ローラ92に伝達されこれを駆動させる。そして、対向ローラ92への駆動力伝達が電磁クラッチ94によって接続(電磁クラッチ94がON状態)又は切断(電磁クラッチ94がOFF状態)されることにより、廃棄すべき媒体を一時的に保持する一時保留部である廃棄媒体搬送部90における媒体の保持、第1の媒体搬送方向変換装置80への媒体の戻し、又は、廃棄媒体保管部50への媒体の送り等が行われる。
【0087】
また、A駆動モータ140の駆動力は、適宜のプーリを他のベルトにかけ、このベルトを介して、第1の媒体搬送方向変換装置80の回動軸84と同軸に回転自在に適宜取り付けられた搬送駆動プーリと非接触通信部100の搬送用の対向ローラ103と同軸配置したプーリにより、非接触通信部100の対向ローラ103及び対向ローラ103とベルトにより連結されて同期回転する対向ローラ102に伝達される。非接触通信部100は、対向ローラ102及び103によって媒体2を第1の媒体搬送方向変換装置80側に搬送したり、媒体排出口10側に搬送したりする。
【0088】
また、第1の媒体搬送方向変換装置80は、A駆動モータ140の駆動力を適宜のプーリにかけられたベルトにより第1の媒体搬送方向変換装置80の搬送駆動プーリに伝達され、第1の媒体搬送方向変換装置80における媒体2の搬送を行なう。このように第1の媒体搬送方向変換装置80は、A駆動モータ140の駆動力によって、媒体2を第1の媒体搬送方向変換装置80内に保持したり、印字装置70、非接触通信部100及び廃棄媒体保管部50との間で媒体の搬送等を行なう。なお、A駆動モータ140の駆動力の伝達方式は、上述のような方式に限るものではなく、ベルト及びプーリ、ギアを適宜組替えることも自在である。
【0089】
さらに、第1の媒体搬送方向変換装置80の回動は、その回動軸84にベルト86を介して駆動力を送る回動用モータ85により行われる。この場合、A駆動モータ140と回動用モータ85とをステップ角の等しいステッピングモータとし、搬送駆動プーリ145と回動軸84のステップあたりの回転角を一致させることが好ましい。
【0090】
B駆動モータ150もA駆動モータ140と同様、複数のベルトやプーリが組み合わされて、印字装置70の搬送用の対向ローラを駆動して、媒体の搬送を行なう。具体的には、B駆動モータ150の駆動力は、ベルト153を介してプーリ151,152に伝わり、そのプーリ151,152に同軸状に連接したプラテンローラ34,34を回転させるとともに、そのプラテンローラ34,34からベルトを介して媒体搬送用の対向ローラ31,32,33を回転させる。こうした回転により、印字装置70内での媒体の搬送等が行われる。
【0091】
次に、新規発行の動作について説明する。媒体2の新規発行は、ホッパー20内に積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを押出部材221の爪部にて繰り出して、第2の媒体搬送方向変換装置60内に搬送した後、第2の媒体搬送方向変換装置60を傾斜搬送路30と同じ角度に回動させて媒体の搬送方向を切替る。次に、第2の媒体搬送方向変換装置60から傾斜搬送路30上に配置された印字装置70内に搬送し、印字装置70が備える印字ヘッド71により媒体表面に所定の情報が印字される。このときの印字ヘッド71は、印字ヘッド駆動モータ74により媒体表面に接触するまで下降し、媒体表面に接触した状態で印字する。印字が終了した後は、印字ヘッド駆動モータ74により印字ヘッド71を元の位置に上昇する。その後、媒体2は、傾斜搬送路30と同じ角度に回動した状態で待機している第1の媒体搬送方向変換装置80に搬送される。媒体2を受け取った第1の媒体搬送方向変換装置80は、媒体2を非接触通信部100に搬送するために水平方向になるまで回動し、その後、非接触通信部100に搬送する。この非接触通信部100においては、アンテナ部104と媒体2との間の非接触通信によって媒体2に内蔵されているICに所定の情報が格納記憶され、最後に、媒体排出口10に媒体2が送られて利用者の手に渡る。なお、必要により、非接触通信部100による処理の前に、第1の媒体搬送方向変換装置80から一端分岐して、磁気媒体リーダライタ120による磁気データの記録処理が行なわれてもよい。
【0092】
次に、書き換え発行の動作について説明する。書き換え発行は、媒体排出口10に使用中の媒体2が挿入されると、媒体排出口10が備える幅センサ(図示しない)がカード状媒体2を検知し、シャッタ11を開けて非接触通信部100に搬送される。非接触通信部100では、媒体2に内蔵されているICとの間で所定の情報の読み取り及び書き込みが非接触通信により実行され、その後非接触通信部100と同じ水平に保持された第1の媒体搬送方向変換装置80に搬送される。媒体2を受け取った第1の媒体搬送方向変換装置80は、傾斜搬送路30と同じ角度まで回動した後、印字装置70内に媒体2を搬送し、その後、傾斜搬送路30と同じ角度まで回動させておいた第2の媒体搬送方向変換装置60まで媒体2を搬送する。その第2の媒体搬送方向変換装置60から、装置上位からの指示で再度印字装置70内に搬送し、先ず、消去ヘッド72で今までの印字データを消去し、引き続いて、印字ヘッド71で新しい情報を印字する。印字した後は、第1の媒体搬送方向変換装置80、非接触通信部100を経由して、媒体排出口10から利用者の手に返却される。なお、この場合も、必要により、非接触通信部100による処理の後に、磁気媒体リーダライタ120による磁気データの記録処理が行なわれてもよい。
【0093】
次に、更新発行の動作について説明する。更新発行(使用可能期限となった媒体を廃棄し、新たに媒体を発行することをいう)は、媒体排出口10に使用中の媒体2が挿入されると、媒体排出口10が備える幅センサがカード状媒体2を検知し、シャッタ11を開けて非接触通信部100に搬送される。非接触通信部100では、媒体2に対する非接触通信による所定の情報の読み取りみが実行され、この通信結果に基づき更新発行とすることが決定されると、更新のため読み取られた所定の情報は上位装置等に一時保存される。そして、更新される媒体2は非接触通信部100と同じ水平に保持された第1の媒体搬送方向変換装置80に搬送される。第1の媒体搬送方向変換装置80に取り込まれた媒体2は、傾斜搬送路30には搬送されず、第1の媒体搬送方向変換装置80を逆回転により、斜め下方に配置された一時保留部としての廃棄媒体搬送部90に搬送され、廃棄処理待ちの媒体として保持される。次に、上記の新規発行と同じ手順で新しい媒体2が発行される。この新しい媒体2が第1の媒体搬送方向変換装置80を経由して、非接触通信部100に搬送されそこで、上位装置等に一時保存された情報が新しい媒体2に対して書き込まれる。そして、この書き込みが確認され、又は媒体排出口10から利用者の手に新たな媒体2が渡ったことが確認された時点で、一時保留部である廃棄媒体搬送部90に保持された廃棄処理待ちの使用済み媒体2は、更にその斜め下方の廃棄媒体保管部50に除電ブラシ93で除電されて投入される。
【0094】
次に、媒体廃棄の動作について説明する。廃棄媒体保管部50への媒体2の投入(廃棄)は、廃棄媒体搬送部90を経由して行われる。媒体排出口10から投入された媒体2は、すぐ後ろ(装置1の内部側)に配置された非接触通信部100により、又は、第1の媒体搬送方向変換装置80を経由して送られた磁気媒体リーダライタ120により、情報が読み取られて廃棄媒体であるかが判断される。非接触通信部100により廃棄媒体であることが読み取られた場合、その廃棄媒体は、第1の媒体搬送方向変換装置80に搬送され、そこで保持されつつ廃棄媒体搬送部90の角度と同じになるまで第1の媒体搬送方向変換装置80が回転する。次いで、第1の媒体搬送方向変換装置80から廃棄媒体搬送部90に廃棄媒体が搬送される。一方、磁気媒体リーダライタ100により廃棄媒体であることが読み取られた場合、その廃棄媒体は、第1の媒体搬送方向変換装置80に戻され、そこで保持されつつ廃棄媒体搬送部90の角度と同じになるまで第1の媒体搬送方向変換装置80が回転する。次いで、第1の媒体搬送方向変換装置80から廃棄媒体搬送部90に廃棄媒体が搬送される。
【0095】
このとき、廃棄媒体搬送部90に搬送された廃棄媒体は、そこで保持されずに廃棄媒体保管部50に投入されてもよいが、好ましくは新規の媒体を発行するまで、すなわち新規媒体がホッパー20から発行され、印字装置70で印字され、非接触通信部100で情報通信が完了したのを確認するまで保持(一時保留)されることが好ましい。そして、新規媒体への情報通信が完了したのを確認し、新規媒体2が発行されてから、廃棄媒体を、一時保留部としての廃棄媒体搬送部90から廃棄媒体保管部50に投入することが好ましい。こうした方式をとることにより、新規媒体2を更新発行する場合に、情報書き込み等を確実に行ったのを確認した後に今までの非接触ICカードを廃棄することができ、その結果、非接触ICカードの更新発行においても、迅速且つ確実な処理を行なうことができる。
【0096】
以上説明したように、媒体搬送方向変換装置を備えた媒体処理装置によれば、媒体の搬送方向を容易かつ精度よく変換させることができる。また、装置全体として省スペース化を実現できるとともに、余裕のある空間に他の処理装置を配置することができるので、そうした処理装置の方向に容易且つ精度よく搬送方向を回動位置決め変換させることができ、結果として、磁気カードやICカード等の新規発行や更新発行、さらには書き換え発行を行なうことができる、省スペース対応の媒体処理装置とすることができる。
【0097】
なお、上述の実施の形態の媒体搬送方向変換装置においては、支持軸に設けた回動部材にベルトにより駆動して側板及び媒体搬送部を回動させたが、これに代え、側板を円板形又はギア形状に形成して、その外周から直接に側板に回転駆動力を伝達する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の媒体処理装置及び、駆動方式の一例を示す透視図である。
【図2】本発明に係る媒体搬送方向変換装置が有するフラットケーブルの接続構造の全体配置の一例を表した正面図である。
【図3】図2に示すフラットケーブルの接続構造を覆う第1のフレーム面の正面図である。
【図4】図2に示す媒体搬送方向変換装置の左側面図である。
【図5】図2に示す媒体搬送方向変換装置が備える回動体を上方から見たときの図である。
【図6】図2に示す媒体搬送方向変換装置が備える回動体の、切り欠き部分を有する正面図である。
【図7】図2に示す媒体搬送方向変換装置が有するフラットケーブルの接続構造の形成手順を示す説明図である。
【図8】図2に示す媒体搬送方向変換装置の媒体搬送路を表した正面図である。
【図9】回動体の回動角位置決め用スリットとセンサとの位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0099】
1…媒体処理装置
2,2a…媒体
10…媒体排出口
30…傾斜搬送路
31,32,33…対向ローラ
60…第2の媒体搬送方向変換装置
61…媒体搬送路
62,63…対向ローラ
64…回動軸
65…回動用モータ
66…ベルト
67…搬送用モータ
70…印字装置
80…第1の媒体搬送方向変換装置
81…搬送路
82,83…対向ローラ
84…回動軸
85…回動用モータ
86…ベルト
100…非接触通信部
101…搬送路
120…磁気媒体リーダライタ
121…搬送路
140…A駆動モータ
150…B駆動モータ
601…装置本体、602…回動体、602A…第1成形体、602B…第2成形体、603…回動中心軸、604…第1のフレーム面、605,606…出入口、607…媒体ガイド
610…センサ基板、611…フラットケーブル、612…巻回部、613…第1の折り返し部、613A…第1の立ち上げ部、614…第2の折り返し部、614A…第2の立ち上げ部、618…接続端子、619…ガイド穴
621…基板、622…ガイド穴、623…ブリッジ部、624…コネクタ、625…多芯ケーブル、628…スリット
630A,630B,630C…位置検知センサ、631A,631B…回転位置決め用スリット
640…収容部、641…空洞、642…雄雌形状の端面、643…スリットガイド、644…第2のフレーム面
655…搬送駆動プーリ、656…ベルト、657,658…搬送用ローラ、659…搬送用ベルト
660…アイドラー、661,662…対向ローラ
S,S1,S2…フォトセンサ
W1…回動中心軸の軸方向の空間幅
W2…フラットケーブルの幅
W3…回動中心軸の軸方向に直交する空間幅
W4…巻回された積層態様の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状媒体を搬送する搬送路に設けられ、当該カード状媒体の搬送方向を変換する媒体搬送方向変換装置であって、
前記搬送路の一部をなすと共に前記カード状媒体を停止保持可能な媒体搬送部と、当該媒体搬送部を有すると共に装置本体に対して回動自在に支持された回動体と、前記媒体搬送部における前記カード状媒体の保持位置を検出する媒体センサを含む媒体検出回路よりなるセンサ基板と、当該媒体検出回路からの信号を前記装置本体の駆動制御回路に伝達するフラットケーブルと、を備え、
前記フラットケーブルは、前記回動体の回動中心軸の軸周りに同心ロール状に弛みをもって巻回された巻回部と、前記フラットケーブルの一端側で前記巻回部から前記装置本体に向けて折り返された第1の折り返し部と、前記フラットケーブルの他端側で前記巻回部から前記回動体に向けて折り返された第2の折り返し部と、を備え、
前記第1の折り返し部の先端側を前記装置本体に固定し、前記第2の折り返し部の先端側を前記回動体に固定した、媒体搬送方向変換装置。
【請求項2】
前記装置本体は、前記回動体と対向する側に第1のフレーム面を有し、
前記回動体は、前記第1のフレーム面と平行に対向する第2のフレーム面と、当該第2のフレーム面に形成され、前記フラットケーブルを収容する収容部と、を備え、
前記センサ基板は、前記第2のフレーム面と平行に前記収容部の底部に取り付けられ、
前記フラットケーブルは、前記第1の折り返し部の先端側を前記第1のフレーム面に対して平行に立ち上げて形成された第1の立ち上げ部と、前記第2の折り返し部の先端側を前記第2のフレーム面に対して平行に立ち上げて形成された第2の立ち上げ部と、をさらに備え、
前記第1の立ち上げ部を前記装置本体に固定し、前記第2の立ち上げ部を前記センサ基板に接続した、請求項1に記載の媒体搬送方向変換装置。
【請求項3】
前記収容部は、導電性の樹脂材料で前記回動体と一体に形成されている、請求項2に記載の媒体搬送方向変換装置。
【請求項4】
前記媒体センサは、前記搬送部のカード状媒体搬送方向の両端に配置され、前記センサ基板の前記第2のフレーム面とは反対側の面に取り付けられている、請求項1から3のいずれかに記載の媒体搬送方向変換装置。
【請求項5】
前記媒体センサは、前記カード状媒体の搬送方向の端を検出する1対のフォトセンサである、請求項1から4のいずれかに記載の媒体搬送方向変換装置。
【請求項6】
前記回動体を駆動する駆動源と、前記搬送部を駆動する駆動源とは、それぞれ前記回動体の外部から前記回動体の回動中心に設けた各駆動伝達手段として別個に設けられている、請求項1から5のいずれかに記載の媒体搬送方向変換装置。
【請求項7】
角度をなして屈折又は分岐してカード状媒体を搬送する搬送路と、前記搬送路上に配置されて、前記カード状媒体に対して情報の書き込み又は読み取る情報書き込み部と、前記搬送路に設けられ、前記角度に応じて前記カード状媒体の搬送方向を変換する請求項1から6のいずれかに記載の媒体搬送方向変換装置と、を備えることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項8】
第1の電気回路を有する固定体と、第2の電気回路を有すると共に前記固定体に対して回動自在に支持される回動体と、前記回動体の回動中心となる回動中心軸と、前記第1の電気回路と前記第2の電気回路とを電気的に接続するフラットケーブルと、を備え、
前記フラットケーブルは、前記回動中心軸の軸周りに同心ロ一ル状に弛みをもって巻回された巻回部と、前記フラットケーブルの一端側で前記巻回部から前記固定体に向けて折り返された第1の折り返し部と、前記フラットケーブルの他端側で前記巻回部から前記回動体に向けて折り返された第2の折り返し部と、を備え、
前記第1の折り返し部の先端側を前記固定体に固定し、前記第2の折り返し部の先端側を前記回動体に固定した、フラットケーブルの接続構造。
【請求項9】
前記固定体の前記回動体と対向する側に設けられた第1のフレーム面と、前記回動体に設けられ、前記第1のフレーム面と平行に対向する第2のフレーム面と、前記第1の折り返し部の先端側を前記第1のフレーム面に対して平行に立ち上げて形成された第1の立ち上げ部と、前記第2の折り返し部の先端側を前記第2のフレーム面に対して平行に立ち上げて形成された第2の立ち上げ部と、をさらに備え、
前記第1の立ち上げ部を前記固定体に固定し、前記第2の立ち上げ部を前記回動体に固定した、請求項8に記載のフラットケーブルの接続構造。
【請求項10】
前記第1のフレーム面及び前記第2のフレーム面のいずれか一方に、前記回動体を収容する収容部をさらに備える、請求項9に記載のフラットケーブルの接続構造。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−123926(P2008−123926A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308629(P2006−308629)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】