説明

媒体搬送装置及び液体噴射装置と記録装置

【課題】 被搬送媒体の媒体搬送方向と直交する方向の変形を抑えて被搬送媒体を精度良く搬送することができる被搬送媒体を搬送する媒体搬送装置及びその媒体搬送装置を備えた液体噴射装置と記録装置を提供すること。
【解決手段】 被搬送媒体を搬送する際に、媒体搬送方向と直交する方向に対向する力を加え、前記被搬送媒体を両側から押圧する押圧手段30a、30bを備える。これにより、被搬送媒体の媒体搬送方向と直交する方向の変形が押圧力により抑制されるので、被搬送媒体の搬送精度を高精度な状態に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送媒体を搬送する媒体搬送装置及びその媒体搬送装置を備えた液体噴射装置と記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の1つであるシリアル方式のインクジェット式プリンタは、記録媒体である記録用紙をプラテンへ搬送する紙送りローラ及びその従動ローラと、プラテン上にて記録用紙の搬送方向に直交する主走査方向に往復移動可能な記録ヘッドが搭載されたキャリッジと、記録用紙をスタッカに排紙する排紙ローラ及びその従動ローラを備えている。このようなインクジェット式プリンタは、紙送りローラとその従動ローラとにより記録用紙を挟持してプラテン上に搬送しつつキャリッジを往復移動させ、記録ヘッドからインク滴を吐出させることにより記録用紙に記録し、排紙ローラとその従動ローラとにより記録用紙を挟持してスタッカ上に排紙するようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−352416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したインクジェット式プリンタのローラのうち、特に紙送りローラの従動ローラや排紙ローラの従動ローラは、1本の長尺のローラではなく、回転軸に所定間隔を空けて並設される短尺のローラもしくは円盤で構成されている。従って、記録用紙は主走査方向では部分的に上記ローラにより厚さ方向に挟持されることになるので、記録用紙は波打つ現象、即ちコックリングにより凹凸が発生する場合がある。このような場合、記録用紙はプラテン上にて浮き上がるため、記録用紙が記録ヘッドに接触して汚染されるおそれがある。また、記録ヘッドのインク吐出面とプラテンの用紙搬送面とのギャップが不均一となるため、記録精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、被搬送媒体の媒体搬送方向と直交する方向の変形を抑えて被搬送媒体を精度良く搬送することができる被搬送媒体を搬送する媒体搬送装置及びその媒体搬送装置を備えた液体噴射装置と記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、本発明の媒体搬送装置では、被搬送媒体を搬送する際に、媒体搬送方向と直交する方向に対向する力を加え、前記被搬送媒体を両側から押圧する押圧手段を備えたことを特徴としている。これにより、被搬送媒体の媒体搬送方向と直交する方向の変形が押圧力により抑制されるので、被搬送媒体の搬送精度を高精度な状態に維持することができる。
【0007】
また、前記押圧手段は、前記被搬送媒体をアーチ状に撓ませることを特徴としている。これにより、被搬送媒体を常に均一な形状とすることができるので、被搬送媒体の搬送精度を高精度な状態に維持することができる。また、前記押圧手段は、前記被搬送媒体の両側が同時に通過可能であって、前記被搬送媒体の両側間の距離よりも小さい距離で離間した対向する一対の溝を備えていることを特徴としている。これにより、押圧手段を簡易に構成することができる。
【0008】
また、前記押圧手段は、前記被搬送媒体の両側が同時に通過可能であって、前記被搬送媒体の両側間の距離よりも小さい距離で離間した対向する一対の鼓状のローラを備えていることを特徴としている。これにより、押圧手段を簡易に構成することができると共に、押圧手段を被搬送媒体の搬送手段としても機能させることができる。また、アーチ状に撓んだ前記被搬送媒体は、搬送面から離間した状態で搬送されることを特徴としている。これにより、被搬送媒体の裏面の汚染を防止することができる。
【0009】
また、上記目的達成のため、本発明の液体噴射装置では、媒体搬送装置を備え、前記押圧手段により押圧された被噴射媒体に対し噴射ヘッドから液体を噴射することを特徴としている。これにより、上記作用効果を奏する液体噴射装置を提供することができる。また、前記噴射ヘッドは、媒体搬送方向と直交する方向に配設されたガイド軸に沿って移動自在であり、前記ガイド軸は、前記被噴射媒体の撓み量に基づいて曲げられていることを特徴としている。また、前記噴射ヘッドと前記被噴射媒体のギャップは、前記被噴射媒体の撓み量に基づいて調整されることを特徴としている。これにより、噴射ヘッドと被噴射媒体のギャップを常に同一にすることができるので、液体の噴射精度を高精度な状態で維持することができる。
【0010】
また、上記目的達成のため、本発明の記録装置では、液体を噴射する噴射ヘッドとしてインクを吐出する記録ヘッドを備えたことを特徴としている。これにより、上記作用効果を奏する記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外観構成の全体を斜め前方から見た斜視図、図2は、図1のインクジェット式プリンタの内部構成の全体を斜め前方から見た斜視図、図3は、図1のインクジェット式プリンタの内部構成の概略を示す断面側面図である。このインクジェット式プリンタ1は、比較的サイズの小さいハガキ、L判サイズ等の記録用紙への記録に適した小型サイズに構成されたものである。
【0013】
図1に示すように、インクジェット式プリンタ1は、ハウジング3によって外観が構成され、A4サイズの記録に好適であるインクジェット式プリンタと同様に、装置後部に記録用紙を傾斜姿勢で複数枚セット可能な給送装置2を備え、装置前部には記録の行われた記録用紙をスタックするスタッカ6を備えている。そして、装置内部の給送装置2とスタッカ6の間には、本発明の一実施の形態に係る媒体搬送装置である用紙搬送装置7(図3参照)が配設されている。
【0014】
更に、インクジェット式プリンタ1の装置上面中央には、電源ボタン、印刷設定ボタン等によって構成された操作部5と、記録設定内容や現在の動作ステータス等を表示する表示部4が配置され、装置前方右上には、画像データ等が記憶された半導体メモリ媒体を装着可能な図示しないカードスロットを覆う開閉自在なカバー3aが設けられている。即ち、インクジェット式プリンタ1は、外部のホストコンピュータと接続して記録データを受信するのみならず、画像データを記憶した半導体メモリから直接画像データを読み込み、そして記録用のデータを生成して自ら記録実行可能に構成されている。
【0015】
図2及び図3に示すように、給送装置2は、ホッパ10、可動ガイド9、固定ガイド8、給送ローラ11、アイドルローラ14、摩擦分離材13及び戻しレバー12と、更に例示したこれら以外の種々の構成要素を備えている。給送装置2は、ホッパ10を含むフレーム40を基体とするユニットが回動自在に設けられ、図3の実線で示す使用状態では後方に張り出すような傾斜姿勢となる。一方、図3の仮想線で示す収納状態においては、記録用紙を挿入する為の開口が塞がれて塵埃等の侵入を防止可能となっている。そして当該収納状態では、給送装置2は後方に張り出さず、コンパクト化を図ることができるようになっている。
【0016】
ホッパ10は、記録用紙を傾斜姿勢に支持するとともに、揺動支点10aを中心に図示しないカム機構によって揺動駆動され、給送ローラ11に記録用紙を圧接させる姿勢と、離間させる姿勢とを切換可能となっている。ホッパ10に設けられた固定ガイド8と可動ガイド9は、記録用紙の側端をガイドするとともに、可動ガイド9においては、記録用紙の各サイズに対応するように、記録用紙の幅方向にスライド可能に設けられている。
【0017】
給送ローラ11は、側面視略D形の形状を成し、給送ローラ軸11aと一体的に形成されたローラ本体部11b(鍔部を備えたドラム形状を成している)に、ゴム材11cが巻回されることによって構成されている。尚、ローラ本体部11bとゴム材11cの関係が、円弧部においてはゴム材11cが記録用紙と接触し、平坦部においてはローラ本体部11bが記録用紙と接触するように成されている。
【0018】
そして、給送ローラ11は、紙送りモータ39及び図示しないクラッチ機構によって用紙給送時にのみ選択的に回転駆動される。給送ローラ11は、用紙給送時には、その円弧部分によって給送ローラ11に圧接した記録用紙の最上位のものを下流側へ給送し、用紙給送が終了すると、下流側の搬送駆動ローラ21による用紙搬送動作の際に搬送負荷を生じさせないよう、側面視略D形の形状における平坦部が摩擦分離材13と対向するように駆動制御される。
【0019】
ここで、下流側の搬送駆動ローラ21による用紙搬送中に、給送ローラ11に接触すると搬送負荷が生じる他、記録面に搬送方向に延びるような接触痕が形成されてしまう虞がある。そこで、自由回転可能なアイドルローラ14を設け、これによって用紙搬送中における給送ローラ11への接触を防止して、搬送負荷や接触痕の発生を防止している。また、アイドルローラ14は、用紙幅方向においてほぼ均等に配置されていることから、これによって用紙幅方向における姿勢を均一化することができ、用紙搬送中(記録中)におけるスキュー等の発生を防止することが可能となる。
【0020】
給送ローラ11と対向する位置には、分離手段としての摩擦分離材13が設けられている。摩擦分離材13は、用紙給送時に給送ローラ11の円弧部分と圧接して圧接点を形成し、これにより給送されるべき最上位の記録用紙と、重送されようとする次位以降の記録用紙とを分離する。更に、給送ローラ11と対向する位置には、戻しレバー12が設けられている。戻しレバー12は、その回動範囲が給送ローラ11と摩擦分離材13との圧接点とオーバーラップするように、回動軸12aを中心に回動可能に設けられ、そして後述するカム機構によって駆動制御される。この戻しレバー12は、給送ローラ11の1回転動作中に、用紙給送経路から退避するように一旦倒れ、そして再び起き上がることにより、重送されようとした次位以降の記録用紙を上流側に戻す。
【0021】
給送装置2の下流側には、レバー15と検出部16とを備えて成る紙検出器17が設けられている。レバー15は揺動軸15aを中心に揺動可能に設けられ、且つ、揺動軸15aから上側部分が、給送される記録用紙と接触可能に構成されている。検出部16は光学センサであり、レバー15の揺動軸15aから下側部分が図示するように検出部16に入り込むことにより、発光部から受光部へ向かう光が遮断され、記録用紙の未通過状態が検出される。そして、レバー15が、記録用紙の通過に伴って揺動すると、レバー15の揺動軸15aから下側部分が検出部16から外れ、これにより、記録用紙先端の通過を検出することができるようになっている。また、記録用紙後端が通過すると、再びレバー15の下端部が検出部16に入り込み、これにより、記録用紙後端の通過を検出可能となる。
【0022】
紙検出器17の下流側には、用紙搬送装置7が設けられている。用紙搬送装置7は、搬送駆動ローラ21、搬送従動ローラ22、プラテン28、固定排紙ローラ29a、可動排紙ローラ29bと、本発明の特徴的な部分である固定押圧ガイド(押圧手段)30a、可動押圧ガイド(押圧手段)30b及びステップ31と、更に例示したこれら以外の種々の構成要素を備えている。
【0023】
搬送駆動ローラ21は、制御部50によって駆動制御される紙送りモータ39によって回転駆動され、搬送従動ローラ22は、搬送駆動ローラ21に圧接して従動回転する。そして、給送ローラ11によって給送された記録用紙は、搬送駆動ローラ21と搬送従動ローラ22にニップされプラテン28へと搬送される。また、排紙ローラ29a、29bも、制御部50によって駆動制御される紙送りモータ39によって回転駆動される。そして、搬送駆動ローラ21と搬送従動ローラ22によって搬送された記録用紙は、固定排紙ローラ29aと可動排紙ローラ29bにより挟持されてスタッカ6に排紙される。
【0024】
プラテン28は、記録用紙を下から支持することにより、上方に対向配置された記録ヘッド26と記録用紙との間のギャップを規定するが、記録ヘッド26に至る前の上面には、押圧ガイド30及びステップ31が取り付けられている。更に、記録ヘッド26と対向する上面には、凹部28aが形成されている。記録用紙の端部にインク滴を吐出する際に、記録用紙端部から外れた部分にもインク滴を吐出し、そして凹部28aへと打ち捨てることにより、所謂縁無し記録が実行される。凹部28aに打ち捨てられたインク滴は、図示しない排出孔から下部へ排出され、プラテン28の下部に設けられている廃液トレイ34の内部の廃液吸収材35に排出される。
【0025】
記録ヘッド26は、キャリッジ25の底部に設けられ、インク滴を記録用紙に向けて吐出することにより記録を実行する。キャリッジ25は主走査方向に延びるキャリッジガイド軸27によってガイドされながら、図示しないモータの動力を受けて主走査方向に往復駆動される。キャリッジ25は、インクカートリッジを搭載せず、インクジェット式プリンタ1の装置本体底部に固設される図示しないインクカートリッジから、インクチューブ43(図2参照)を介して記録ヘッド26へとインクが供給されるように構成されている。
【0026】
図4は、上記用紙搬送装置7の概略を示す斜視図、図5は、その正面図である。固定押圧ガイド30aと可動押圧ガイド30bは、プラテン28の上面にて搬送されてくる記録用紙Pを両側から挟み込むことが可能なように対向して配設されている。そして、固定押圧ガイド30aは、プラテン28の上面に固定され、可動押圧ガイド30bは、記録用紙Pの各サイズに対応するように、プラテン28の上面にて記録用紙Pの幅方向にスライド可能に設けられている。また、ステップ31は、楔状に形成されて先鋭側がプラテン28の上面にて搬送上流側を向き、固定押圧ガイド30aと可動押圧ガイド30bの中間に常に位置するようにプラテン28の上面にて記録用紙Pの幅方向にスライド可能に設けられている。
【0027】
そして、固定押圧ガイド30aと可動押圧ガイド30bの対向面と、プラテン28の上面との境界部分は、搬送上流側は平行となるような溝に形成されているが、搬送下流側に向かうに従って徐徐に狭まるような溝に形成されている。このような形状の固定押圧ガイド30aと可動押圧ガイド30bによれば、搬送されてくる記録用紙Pの両側は、当初は固定押圧ガイド30aと可動押圧ガイド30bの対向面と、プラテン28の上面との境界部分の溝に接触しているのみであるが、搬送されるに従って徐徐に搬送直行方向に対向する力が加わって押圧され、記録用紙Pの略中央部が浮き上がってステップ31に乗り上がる。
【0028】
そして、更に搬送されるに従って記録用紙Pの両側に掛かる押圧力が増加すると共に記録用紙Pの略中央部が持ち上がり、記録ヘッド26に至るときにはアーチ状に撓むことになる。このように、記録用紙Pは両側から搬送直行方向に対向する力が加わって押圧されるので、例えばコックリング等の変形を抑えることができ、また、常に均一なアーチ形状とすることができるので、高精度な搬送を行うことができる。
【0029】
そして、図5に示すように、キャリッジガイド軸27も記録用紙Pの撓み量に基づいてアーチ状に曲げられている。これにより、アーチ状に撓んだ状態の記録用紙Pと記録ヘッド26とのギャップを略一定に保つことができるので、アーチ状に撓んだ状態の記録用紙Pに高精度に記録することができる。更に、固定排紙ローラ29aと可動排紙ローラ29bは、搬送されてくるアーチ状に撓んだ状態の記録用紙Pを両側から挟み込むことが可能なようにローラ面が対向し、かつ軸上部が外側に傾斜して配設されている。そして、固定排紙ローラ29aは固定され、可動排紙ローラ29bは、記録用紙の各サイズに対応するように記録用紙Pの幅方向にスライド可能に設けられている。これにより、アーチ状に撓んだ状態の記録用紙Pをそのままの形態で排紙することができる。また、従来のギザローラが不要となるので、記録用紙Pの表面の傷付けを無くすことができる。
【0030】
図6は、上記用紙搬送装置7の別例の概略を図5に対応させて示す斜視図、図7は、それを図6に対応させて示す正面図であり、図5及び図6と同一構成箇所は同一番号を付して説明を省略する。この用紙搬送装置7は、固定押圧ガイド30aと可動押圧ガイド30bの代わりに固定押圧ローラ32aと可動押圧ローラ32bを備えている。固定押圧ローラ32aと可動押圧ローラ32bは、それぞれ鼓状に形成されており、プラテン28の上面にて搬送されてくる記録用紙Pを両側から挟み込んでアーチ状に撓ませることが可能なようにローラ面が対向し、かつ軸上部が外側に傾斜して配設されている。そして、固定押圧ローラ32aは、プラテン28の上面に固定され、可動押圧ローラ32bは、記録用紙Pの各サイズに対応するように、プラテン28の上面にて記録用紙Pの幅方向にスライド可能に設けられている。
【0031】
このような形状の固定押圧ローラ32aと可動押圧ローラ32bによれば、搬送されてくる記録用紙Pの両側は、搬送されるに従って徐徐に搬送直行方向に対向する力が加わって押圧され、記録用紙Pの略中央部が浮き上がってステップ31に乗り上がる。そして、更に搬送されるに従って記録用紙Pの両側に掛かる押圧力が増加すると共に記録用紙Pの略中央部が持ち上がり、記録ヘッド26に至るときにはアーチ状に撓むことになる。このように、記録用紙Pは両側から搬送直行方向に対向する力が加わって押圧されるので、例えばコックリング等の変形を抑えることができ、また、常に均一なアーチ形状とすることができるので、高精度な搬送を行うことができる。
【0032】
更に、固定押圧ローラ32aと可動押圧ローラ32b自体が記録用紙Pに搬送力を与えることができるので、図4に示すような搬送従動ローラ22よりも小型の図6に示すような搬送従動ローラ22とすることができ、省電力化や省コスト化を図ることができる。また、搬送駆動ローラ21及び搬送従動ローラ22や固定排紙ローラ29a及び可動排紙ローラ29bを省略して固定押圧ローラ32a及び可動押圧ローラ32bのみとすることも可能であり、更に省電力化や省コスト化を図ることができる。
【0033】
以上の各実施形態では、キャリッジガイド軸27を記録用紙Pの撓み量に基づいてアーチ状に曲げるようにして、アーチ状に撓んだ状態の記録用紙Pと記録ヘッド26とのギャップを略一定に保つようにしたが、キャリッジガイド軸は従来のように直線状のままで、記録ヘッド26を記録用紙Pの撓み量に基づいてギャップ自動調整部によりアーチ状に変位させてアーチ状に撓んだ状態の記録用紙Pと記録ヘッド26とのギャップを略一定に保つようにしても良い。
【0034】
図8及び図9は、ギャップ自動調整部の設置部位周辺の関連部材のみを示す斜視図である。このギャップ自動調整部180は、ギャップ調整モータ181と、始端側駆動伝達手段182と、同期駆動伝達手段183を備えている。ここで、ハウジング101内の両側部には左サイドフレーム106と右サイドフレーム107が起立状態で対向配置されており、両サイドフレーム106、107間には2本のキャリッジガイド軸(主ガイド軸167、副ガイド軸168)が平行に架け渡されている。主ガイド軸167と副ガイド軸168は、キャリッジ161を挟むようにキャリッジ161の後面側と前面側にそれぞれ設けられている。
【0035】
そして、ギャップ調整モータ181と始端側駆動伝達手段182は、左サイドフレーム106に設けられ、同期駆動伝達手段183は、右サイドフレーム107に設けられている。始端側駆動伝達手段182は、ギャップ調整モータ181の回転を主ガイド軸167に伝達するようになっている。同期駆動伝達手段183は、主ガイド軸167の回転を副ガイド軸168に同期を採った状態で伝達するようになっている。
【0036】
図10は、上記始端側駆動伝達手段182を示す斜視図、図11は、上記同期駆動伝達手段183を右サイドフレーム107に取り付けた状態を示す斜視図、図12は、上記同期駆動伝達手段183を右サイドフレーム107から取り外した状態を示す斜視図である。ギャップ調整モータ181の出力軸の回転は、図8に示すように、歯車輪列によって構成される始端側駆動伝達手段182によって主ガイド軸167に伝達される。この歯車輪列の途中には、フラグ182aと呼ばれる検出羽根を有する複合歯車が設けられており、図示しないロータリーエンコーダ等の回転角度検出手段によってフラグ182aを検出することで、主ガイド軸167の回転角度を制御している。尚、図示は省略するが、副ガイド軸168の回転角度も、図示しないロータリーエンコーダ等によって検出され制御されている。
【0037】
主ガイド軸167は、図8に示すキャリッジ161の後面側の軸受部161aと摺接し、キャリッジ161の往復動を直接案内する案内軸部167aと、その両端に設けられる回転軸部167bとが同一の軸中心を通るように配設された同心軸構造を有している。また、副ガイド軸168も、図8に示すキャリッジ161の前面側の軸受部161bと摺接し、キャリッジ161の往復動を直接案内する案内軸部168aと、その両端に設けられる回転軸部168bとが同一の軸中心を通るように配設された同心軸構造を有している。
【0038】
主ガイド軸167における案内軸部167aの両端部には、入力側に伝達歯車182b、出力側に伝達歯車182cがそれぞれ一体に設けられている。伝達歯車182bは、始端側駆動伝達手段182の終端に位置する歯車であり、伝達歯車182cは同期駆動伝達手段183の始端に位置する歯車である。また、副ガイド軸168における案内軸部168aの入力側にも伝達歯車182dが設けられており、この伝達歯車182dは同期駆動伝達手段183の終端に位置する歯車である。
【0039】
また、主ガイド軸167及び副ガイド軸168における案内軸部167a、168aの両端部には、シフトカム169aが一体に設けられている。また、シフトカム169aの下方には、カムフォロワ169bが設けられている。尚、カムフォロワ169bは両サイドフレーム106、107に対して、アジャスタ169cを介して固定状態で設けられている。アジャスタ169cは、リング状のカムフォロワ169bと一体に回動し、両サイドフレーム106、107に対する取付角度を可変することによってカムフォロワ169bの高さを微調整するようになっている。
【0040】
図13は、上記シフトカム169aと上記カムフォロワ169bのカム作用を示す説明図、図14は、ギャップとキャリッジガイド軸167、168の回転角度との関係を示すカム線図である。シフトカム169aは、図13、図14に示すように、カム高さの変化特性が異なる変移領域を3つ有している。これらの変移領域をカム高さの低い順に第1変移領域91、第2変移領域92、第3変移領域93とする。
【0041】
図14では、主ガイド軸167と副ガイド軸168に分けて、ギャップPGと各軸の回転角度の関係を示している。尚、図から明らかなように、主ガイド軸167と副ガイド軸168は、極めて似通った特性を有しており、2本の軸が同期して回転する様子が分かる。このうち主ガイド軸167を例に採って説明すると、第1変移領域ではギャップPGが約1.0mmから約2.3mmまでを回転角度130度で変移する。また、第2変移領域ではギャップPGが約2.3mmから約4.3mmまでを回転角度53度で変移する。また、第3変移領域ではギャップPGが約4.3から4.6までを回転角度40度で変移する。
【0042】
従って、凹凸量に応じてギャップ調整モータ181を駆動しギャップが常に一定となるよう制御を行う場合、ギャップPGとキャリッジガイド軸167、168の回転角度が線形的に対応しているので、ギャップ調整モータ181のステップ数をキャリッジガイド軸167、168の回転角度として補正することができる。
【0043】
なお、ここで挙げたインクジェット式プリンタ100の場合、所望のギャップPGを4つ有しており、ギャップPGの狭い順に1.2mm、1.7mm、2.1mm、4.5mmである。このうち1.2mm、1.7mm、2.1mmのギャップPG調整を第1変移領域にて、4.5mmのギャップPG調整を第3変移領域にて行い、第2変移領域は2.1mmから4.5mmへの設定変更用として用いられるようになっている。
【0044】
図11及び図12に示すように、キャリッジガイド軸167、168と共に昇降動し得る昇降フレーム184が右サイドフレーム107に設けられている。昇降フレーム184には、図12に示すように、キャリッジガイド軸167、168における回転軸部167b、168bを受け入れることができる嵌合穴184aが穿設されていると共に、歯車を取り付けるための複数本の取付軸184bが外方に向って突設されている。そして、図11に示すように、嵌合穴184aから突出する回転軸部167b、168bと取付軸184bを利用して、同期駆動伝達手段183としての歯車輪列が設けられている。
【0045】
同期駆動伝達手段183としての歯車輪列は、伝達歯車182cと伝達歯車182dとの間に3枚の中間歯車183aを配設することによって構成されており、主ガイド軸167の回転を同一方向、同一速度、同一タイミングで副ガイド軸168に伝達し得るようになっている。また、両サイドフレーム106、107には、昇降案内手段185が設けられている。キャリッジガイド軸167、168における回転軸部167b、168bと係合するU字状の4つのガイド溝を両サイドフレーム106、107に対して形成することによって昇降案内手段185が構成されている。
【0046】
また、昇降フレーム184側に鉤状に折り曲げられた抜止め片107aが右サイドフレーム107に設けられている。一方、この抜止め片107aと係合する凹字状ないし鉤状の係合溝184cが昇降フレーム184に設けられていて、昇降フレーム184が上方に移動する時、係合溝184cの下端辺が抜止め片107aに当接することで、昇降フレーム184の右サイドフレーム107からの脱落が防止されている。このようなギャップ自動調整部180によっても、アーチ状に撓んだ状態の記録用紙Pと記録ヘッド26とのギャップを略一定に保つことができるので、アーチ状に撓んだ状態の記録用紙Pに高精度に記録することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
インクに代えてその用途に対応する液体を液体噴射ヘッドから被噴射媒体に噴射して液体を被噴射媒体に付着させる液体噴射装置の意味として、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等を備えた装置にも適用可能である。また、液体噴射装置を備えた記録装置であれば、例えばファクシミリ装置、コピー装置等であっても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外観構成の全体を斜め前方から見た斜視図である。
【図2】図1のプリンタの内部構成の全体を斜め前方から見た斜視図である。
【図3】図1のプリンタの内部構成の概略を示す断面側面図である。
【図4】図1のプリンタの用紙搬送装置の概略を示す斜視図である。
【図5】図5の用紙搬送装置の正面図である。
【図6】図1のプリンタの用紙搬送装置の別例の概略を示す斜視図である。
【図7】図6の用紙搬送装置の正面図である。
【図8】プリンタのギャップ自動調整部の設置部位周辺の関連部材のみを示す第1の斜視図である。
【図9】プリンタのギャップ自動調整部の設置部位周辺の関連部材のみを示す第2の斜視図である。
【図10】図9のギャップ自動調整部の始端側駆動伝達手段を示す斜視図である。
【図11】図9のギャップ自動調整部の同期駆動伝達手段を右サイドフレームに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図12】図9のギャップ自動調整部の同期駆動伝達手段を右サイドフレームから取り外した状態を示す斜視図である。
【図13】図9のギャップ自動調整部のシフトカムとカムフォロワのカム作用を示す説明図である。
【図14】図9のギャップ自動調整部のギャップとキャリッジガイド軸の回転角度との関係を示すカム線図である。
【符号の説明】
【0049】
1、100 インクジェット式プリンタ、7 用紙搬送装置、21 搬送駆動ローラ、22 搬送従動ローラ、25 キャリッジ、26 記録ヘッド、27 キャリッジガイド軸、28 プラテン、29a 固定排紙ローラ、29b 可動排紙ローラ、30a 固定押圧ガイド、30b 可動押圧ガイド、31 ステップ、32a 固定押圧ローラ、32b 可動押圧ローラ、180 ギャップ自動調整部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送媒体を搬送する際に、媒体搬送方向と直交する方向に対向する力を加え、前記被搬送媒体を両側から押圧する押圧手段を備えたことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記押圧手段は、前記被搬送媒体をアーチ状に撓ませることを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記押圧手段は、前記被搬送媒体の両側が同時に通過可能であって、前記被搬送媒体の両側間の距離よりも小さい距離で離間した対向する一対の溝を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記押圧手段は、前記被搬送媒体の両側が同時に通過可能であって、前記被搬送媒体の両側間の距離よりも小さい距離で離間した対向する一対の鼓状のローラを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
アーチ状に撓んだ前記被搬送媒体は、搬送面から離間した状態で搬送されることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の媒体搬送装置を備え、前記押圧手段により押圧された被噴射媒体に対し噴射ヘッドから液体を噴射することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項7】
前記噴射ヘッドは、媒体搬送方向と直交する方向に配設されたガイド軸に沿って移動自在であり、前記ガイド軸は、前記被噴射媒体の撓み量に基づいて曲げられていることを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記噴射ヘッドと前記被噴射媒体のギャップは、前記被噴射媒体の撓み量に基づいて調整されることを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
請求項6〜8の何れか一項に記載の液体を噴射する噴射ヘッドとしてインクを吐出する記録ヘッドを備えたことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−70042(P2007−70042A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258699(P2005−258699)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】