説明

媒体温度測定装置

本発明は、媒体、特に食品の温度を測定するための装置(1,1′)に関する。この装置は、温度センサ(3)を有する無線の伝送器(4)と、この伝送器(4)の外に設けられた受信兼評価手段(6)とを備えている。このような装置を普遍的に使用できるようにし、かつ温度の一層正確な測定を可能にするために、温度センサ(3)を有する伝送器(4)は媒体内または媒体上で温度を直接測定するための移動可能ユニット(2)として形成され、受信兼評価手段(6)は媒体の外に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載した種類の、媒体、特に食品の温度を測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は特許文献1によって知られている。公知の装置は食品の電子レンジ調理プロセスを制御する働きをする。装置は温度センサと、RFID−タグの形をした無線の伝送器を備えている。このRFID−タグはアンテナとRFID−受信兼評価装置とを備えている。温度センサとRFID−タグは容器状炊事用具の外側に、好ましくは容器状炊事用具の把手に収納されている。受信兼評価装置は例えばレンジ上に設けられている。しかしながら、容器状炊事用具の外側での温度測定は正確ではなく、信頼できない。なぜなら、特に比較的に大きな直径を有する容器状炊事用具の場合、容器状炊事用具の外側の温度が調理物質の内部の温度と大きく異なるからである。更に、容器状炊事用具が伝送器と温度センサを備えているときにのみ、この種の温度監視が可能である。これは、使用者がこの容器状炊事用具を使用できることを意味する。
【0003】
更に、いわゆる肉温度計が知られている。この肉温度計は例えば焼き串体によって媒体に差込み可能であり、かつ媒体内部の温度を測定することができる。しかしながら、この肉温度計は従来は読み取りのためにのみ構成されているかまたは特許文献2に記載されているように、電子レンジ室の内部のソケットと、場合によっては配線を必要とする。従って、使用分野がオーブンに限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/071131号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第A−1199528号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の根底をなす課題は、より広範な使用分野を有する、媒体の温度を測定するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1に記載された特徴によって解決される。
【0007】
少なくとも温度センサと伝送器を備えた移動可能ユニットの形成により、本発明に係る装置は、普遍的に使用可能であり、かつすべての容器状炊事用具のために使用可能である。更に、非常に有意義な温度測定が可能である。というのは、媒体内部の温度を直接測定することができるからである。
【0008】
本発明の有利な実施形は従属請求項に開示されている。
【0009】
移動可能ユニットは、温度測定がきわめて適切で有意義である場所で、特に温度センサを保持する適当な装置を備えることが可能である。これは例えば液状媒体の場合には浮動体によって達成される。この浮動体は液状媒体の中央で温度センサを保持し、そして例えば非常に高温である容器の底に温度センサが沈まないようにする。
【0010】
移動可能ユニットは更に、媒体に直接取付け可能である、例えば串として形成されたセンサボディを備えることが可能である。この串は媒体、例えば肉に差し込むことが可能である。
【0011】
伝送器は好ましくは、特に市販のRFID−システムの場合のような無線周波数技術を基礎とした非接触式データ検出用システムを備えている。RFIDは非非接触式データ検出を可能にし、データキャリア(キャリア−RFID−タグ内のチップとアンテナの各々)と、読み取り器(アンテナとデコーダからなる)とからなっている。データ伝送のために、磁場または電磁場が使用される。RFID−タグは、自らの給電部を有することなく、低周波数場の情報を送信することができる。この場合、低周波数場のためのエネルギーは読み取り器によって供給される。
【0012】
受信兼評価手段はいろいろな目的のために形成可能であり、例えば予め定めた限界値を超えるときにアラームを発することができ、検出された温度を表示することができ、使用者が例えば限界値を入力する手動式入力装置を設けることができ、タイマを設けることができ、そして媒体の加熱源を制御する制御装置を設けることができる。
【0013】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る装置の第1実施の形態の略図である。
【図2】本発明に係る装置の第2実施の形態の略図である。
【図3】RFID−タグのブロック線図である。
【図4】移動可能ユニットの第1実施の形態を示す図である。
【図5】移動可能ユニットの第2実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は媒体の温度を測定するための本発明に係る装置1を概略的なブロック線図で示す。本発明に係る装置は様々な用途のために使用可能であり、特に調理のために加熱される食品の温度を測定するために適している。装置1は耐熱性の移動可能ユニット2を備えている。この移動可能ユニットは図示した実施の形態では温度センサ3と伝送器4とを備えている。伝送器4は好ましくは、図3に詳しく示すように、RFID−タグ(tag)、すなわちアンテナ4bが設けられるチップ4aである。図示した実施の形態ではチップ4aは、それにとって普通である慣用の構成部材のほかに、一体化された温度センサ3と、場合によっては付加的に圧力センサ(図示せず)を備えている。この圧力センサによって例えば、移動可能ユニット2が媒体内に位置しているかどうかを検出することができる。
【0016】
本発明に係る装置は更に、受信兼評価装置6を備えている。この受信兼評価装置は移動可能ユニット2から分離して配置可能であり、かつ移動可能ユニット2に無線で接続される。受信兼評価装置6はRFID−タグ(RFIDトランスポンダ)のために通常必要である構成部材、例えばアンテナ7とRFID−読み取り装置8(RFIDリーダ)を備えている。このRFID−読み取り装置によって、例えばRFID−タグにエネルギーを供給し、RFID−タグを識別し、そして温度センサ3によって検出された温度を読み取ることができる。更に、受け取った信号を処理するための制御装置9が設けられている。この制御装置は手動式入力装置10、例えばキーボードに接続されている。使用者はこの手動式入力装置によって運転パラメータを設定することができる。更に、図示していないタイマと、関連したまたは選び出されたパラメータを表示するための表示装置11、例えばディスプレイとが設けられている。このパラメータは例えば移動可能ユニット2の識別、目標温度、現在温度、既に経過した時間または残りの時間、手動入力等である。更に、アラーム装置12が設けられている。予め定めた運転状況、例えば予め定めた温度を上回ったとき、予め定めた時間を経過したときまたは予め定めた時間において予め定めた温度を上回ったとき等の場合に、このアラーム装置によってアラームを発することができる。アラームは視覚的にまたは音響的に行うことができる。制御装置9は更に、タイマを備えている。
【0017】
運転中、移動可能ユニット2は媒体、例えば容器状炊事用具内の調理物質に挿入され、受信兼評価装置6は媒体の外の適当な個所、例えばレンジ上に配置されている。受信兼評価装置によって、低周波場を周期的にまたは要求されるときにのみ発生することができる。この低周波場は、伝送器4のアイデンティティと、センサ3によって検出された温度と、場合によっては圧力センサによって検出された圧力に関する情報を、伝送器に送信させる。これらの信号は制御装置9によって所望な方法で処理される。例えば温度だけを表示し、そして場合によっては入力装置10を介して手動で入力された温度を上回るときにアラームを発することができ、このアラームは、選択的に、直ちに或いは予め定められた時間を経過した後に、発せられることが可能である。
【0018】
移動可能ユニット2と、アラーム装置12を備えたまたは備えていない受信兼評価装置6は、図2に示すように、制御ユニット13と組み合わせて装置1′を形成することができる。この装置は媒体を加熱するための加熱源14を制御することにより、温度プロフィールに対して積極的に作用することができる。そのために、制御ユニット13は制御装置9に接続されている。この場合、所望の温度プロフィールが前もって制御装置に記憶されていなかったときには、この所望の温度プロフィールが入力装置10を介して入力される。
【0019】
移動可能ユニット2は、媒体温度の最適な検出を保証するために、媒体上または媒体内に直接配置および使用され、かついろいろな方法で形成可能である。そのために、移動可能ユニット2は例えばセンサボディを備えることができる。このセンサボディは温度センサ3を有し、かつ例えばクランプ等のような適当な固定手段によって固体に取付けられる。移動可能ユニット2は更に、図4に示すように、固体に差し込むために、いわゆる肉温度計14として形成可能である。そのために、肉温度計14は温度センサ3を収納した焼き串体15と、伝送器4のチップ4aとアンテナ4bを有するヘッド16とを備えている。ヘッド16は好ましくは、伝送器4の過熱を防止するように形成されている。
【0020】
本発明に係る移動可能ユニット2は更に、流動性媒体または液状媒体のために、フロート17の形に形成可能である。このフロートは浮かぶことができる材料、例えば耐熱性発泡材料からなる浮動体17aを備えている。この浮動体内には、アンテナ4bとチップ4aが熱に対して保護されて埋め込まれている。温度センサ3は好ましくは浮動体17の表面で露出しており、それによって温度測定が妨害されることがない。
【0021】
移動可能ユニット2は更に、肉温度計とフロートの組み合わせとして形成可能である。それによって、移動可能ユニットは液状媒体、すなわち浮動体を浮かばせることができる媒体と、固体、すなわち差し込んだ焼き串体15またはクランプ等を保持する媒体の両方で使用可能である。
【0022】
本発明は、調理装置だけでな、他の使用目的のためにも使用可能であり、例えば実験室やプロセスの技術や、あらゆる種類の温度監視、すなわち加熱と冷却の両方における温度監視に使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサ(3)が設けられる無線の伝送器(4)と、この伝送器(4)の外に設けられる受信兼評価手段(6)とを備え、温度センサ(3)が設けられる伝送器(4)は、媒体内または媒体上で温度を直接測定する移動可能ユニット(2)として形成され、受信兼評価手段(6)は、媒体の外に配置されることを特徴とする媒体、特に食品、の温度を測定する装置(1,1′)。
【請求項2】
移動可能ユニット(2)は、浮動体(17a)を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
移動可能ユニット(2)は、媒体に取付け可能なセンサボディ(15)を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
センサボディ(15)は、媒体に差し込み可能な串として形成されていることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
伝送器(4)はRFID−タグであり、受信兼評価手段(6)は、給電部と一体化したRFID−読み取り兼評価装置(8)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
受信兼評価手段(6)はアラーム装置(12)を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
受信兼評価手段(6)は表示装置(11)を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
受信兼評価手段(6)は手動式入力装置(10)を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の装置。
【請求項9】
受信兼評価手段(6)はタイマを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
受信兼評価手段(6)は、媒体用加熱源(14)を制御する制御ユニット(13)を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
串体(15)と温度センサ(3)とRFID−タグ(4)とを備える肉温度計(14)。
【請求項12】
温度センサ(3)とRFID−タグ(4)とを備えるフロート(17)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−544005(P2009−544005A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518733(P2009−518733)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005186
【国際公開番号】WO2008/006433
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(502241800)ヴェーエムエフ ヴュルテンベルギッシェ メタルヴァーレンファブリーク アクチエンゲゼルシャフト (18)
【氏名又は名称原語表記】WMF Wuerttembergische Metallwarenfabrik AG
【住所又は居所原語表記】Eberhardstrasse, 73309 Geislingen/Steige, Die Bundesrepublik Deutschland
【Fターム(参考)】