媒体積載装置及び画像形成装置
【課題】媒体積載部における媒体の積載性を十分に高くすることができ、整列性が低くなることがないようにする。
【解決手段】媒体を排出する搬送ローラ対22と、該搬送ローラ対22によって排出された媒体を積載するための媒体積載部と、前記媒体の排出方向における前記搬送ローラ対22より下流側に揺動自在に配設され、自重によって媒体を前記媒体積載部に向けて押さえるための押え部材とを有する。前記押え部材が、前記媒体の排出方向における搬送ローラ対22より下流側に揺動自在に配設され、自重によって媒体を媒体積載部に向けて押さえるので、媒体の潜込み及び背押しが発生するのを防止することができる。媒体押え圧が媒体の左右で等しくされるので、媒体が排出方向に対して傾斜して排出されることがない。
【解決手段】媒体を排出する搬送ローラ対22と、該搬送ローラ対22によって排出された媒体を積載するための媒体積載部と、前記媒体の排出方向における前記搬送ローラ対22より下流側に揺動自在に配設され、自重によって媒体を前記媒体積載部に向けて押さえるための押え部材とを有する。前記押え部材が、前記媒体の排出方向における搬送ローラ対22より下流側に揺動自在に配設され、自重によって媒体を媒体積載部に向けて押さえるので、媒体の潜込み及び背押しが発生するのを防止することができる。媒体押え圧が媒体の左右で等しくされるので、媒体が排出方向に対して傾斜して排出されることがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体積載装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式のプリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置、例えば、プリンタにおいては画像形成ユニットが配設され、該画像形成ユニットにおいて、LEDヘッドによって感光体ドラムの表面に静電潜像が形成され、現像ローラによって前記静電潜像にトナーが付着させられてトナー像が形成され、転写ローラによって前記トナー像が媒体としての用紙に転写されるようになっている。
【0003】
そして、該用紙は、用紙カセットから給紙され、レジストローラに送られ、該レジストローラによって用紙の斜行が矯正された後、画像形成ユニットと転写ローラとの間の転写部に送られる。該転写部において前記転写ローラによって前記トナー像が転写されると、用紙は、定着器に送られ、該定着器においてトナー像が用紙に定着させられた後、排出口から媒体積載部としての排紙トレイに排出される。
【0004】
ところで、前記定着器においては、トナー像を用紙に定着させるために、用紙が加熱され、加圧されるので、トナー像が定着させられた用紙にカールが発生することがある。
【0005】
その場合、カールが発生した用紙が排紙トレイに排出されて積載されると、例えば、用紙の後端が跳ね上がった状態になるので、次に排出される用紙、すなわち、次の用紙によって、直前に排紙トレイに排出されて積載された用紙、すなわち、前の用紙の後端が押され、前の用紙が排紙トレイから落下してしまい、排紙トレイにおける用紙の積載性が低くなってしまう。
【0006】
そこで、フィルムを前記排出口の上部に配設し、排出された用紙の後端を前記フィルムによって押さえることにより、排紙トレイにおける用紙の積載性を高くするようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−106524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のプリンタにおいては、用紙の後端を押さえる力、すなわち、押圧力が、フィルムが用紙に押されて撓むことによって発生させられるので、フィルムの取付け位置、フィルム自体の反り等にばらつきがあると、フィルムの撓み量が変わり、適切な押圧力を得ることができなくなる。
【0009】
その結果、用紙の積載性を十分に高くすることができなくなったり、押圧力が用紙の左右で異なり、用紙が排出方向に対して傾斜して排出され、排紙トレイにおける用紙の整列性が低くなったりしてしまう。
【0010】
本発明は、前記従来のプリンタの問題点を解決して、媒体積載部における媒体の積載性を十分に高くすることができ、整列性が低くなることがない媒体積載装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明の媒体積載装置においては、媒体を排出する搬送ローラ対と、該搬送ローラ対によって排出された媒体を積載するための媒体積載部と、前記媒体の排出方向における前記搬送ローラ対より下流側に揺動自在に配設され、自重によって媒体を前記媒体積載部に向けて押さえるための押え部材とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、媒体積載装置においては、媒体を排出する搬送ローラ対と、該搬送ローラ対によって排出された媒体を積載するための媒体積載部と、前記媒体の排出方向における前記搬送ローラ対より下流側に揺動自在に配設され、自重によって媒体を前記媒体積載部に向けて押さえるための押え部材とを有する。
【0013】
この場合、前記押え部材が、前記媒体の排出方向における搬送ローラ対より下流側に揺動自在に配設され、自重によって媒体を媒体積載部に向けて押さえるので、媒体の潜込み及び背押しが発生するのを防止することができる。したがって、媒体積載部における媒体の積載性を十分に高くすることができる。
【0014】
また、媒体押え圧が媒体の左右で等しくされるので、媒体が排出方向に対して傾斜して排出されることがなく、媒体積載部における媒体の整列性が低くなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態における排出部の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの平面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における排出フラップの斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における用紙のカール状態の第1の例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における用紙のカール状態の第2の例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第1の図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第2の図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第3の図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第4の図である。
【図11】乾燥した環境下における用紙の排出状態を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における排出フラップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0017】
図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図、図3は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの平面図である。
【0018】
図に示されるように、プリンタ11の底部には、媒体としての用紙12を収容する媒体収容部としての用紙カセット13が着脱自在に装着される。前記用紙カセット13内の用紙12の上部には、用紙12を1枚ずつ繰り出すための繰出部材としてのピックアップローラ14が回転自在に配設され、該ピックアップローラ14の近傍に、用紙12を1枚ずつ給紙するための給紙部材としての給紙ローラ15及びリタードローラ16が互いに対向させて配設される。そして、用紙12の搬送方向における給紙ローラ15及びリタードローラ16より下流側に、第1の搬送部材としての搬送ローラ対17が配設され、該搬送ローラ対17より下流側に、画像形成ユニット40に用紙12を送るためのレジストローラ18が配設される。
【0019】
前記画像形成ユニット40は、現像剤としてのトナーを収容する現像剤収容部としての、かつ、現像剤カートリッジとしてのトナーカートリッジ41、像担持体としての感光体ドラム43、帯電装置としての図示されない帯電ローラ、現像装置としての図示されない現像器等を備え、露光装置としてのLEDヘッド42及び転写部材としての転写ローラ44と共に画像形成部を構成する。
【0020】
前記用紙12は、用紙カセット13から給紙され、レジストローラ18に送られ、該レジストローラ18によって用紙12の斜行が矯正された後、画像形成ユニット40と転写ローラ44との間の転写部に送られる。
【0021】
そして、前記画像形成ユニット40において、LEDヘッド42によって感光体ドラム43の表面に潜像としての静電潜像が形成され、現像器によって前記静電潜像にトナーが付着させられてトナー像が形成され、転写ローラ44によって前記トナー像が用紙12に転写される。
【0022】
また、用紙12の搬送方向における画像形成ユニット40より下流側には、定着装置としての定着器19が配設され、該定着器19は、加熱ローラ19a、及び該加熱ローラ19に圧接させられた加圧ローラ19bを備え、前記定着器19において、用紙12に転写されたトナー像が加熱され、加圧されて定着させられる。
【0023】
そして、用紙12の搬送方向における前記定着器19より下流側には、第2の搬送部材としての搬送ローラ対20が配設され、該搬送ローラ対20より更に下流側には、第3の搬送部材としての搬送ローラ対22が、プリンタ11の筐体の一部から成る排出部21に形成された排出口21aに臨ませて配設される。したがって、用紙12は、前記搬送ローラ対22を回転させることによって、プリンタ11の本体、すなわち、装置本体外に形成された媒体積載部としての排紙トレイ23に排出され、積載される。
【0024】
なお、プリンタ11内における用紙12の位置を検出するために、用紙12の搬送方向におけるレジストローラ18より上流側の直前、該レジストローラ18と転写ローラ44との間、及び定着器19と搬送ローラ対20との間に、センサ29〜31が配設される。
【0025】
本実施の形態においては、用紙12に対して両面印刷を行うことができ、そのために、搬送ローラ対22は、用紙12を正方向及び逆方向に搬送することができるようになっている。そして、一方の印刷面に対して印刷が行われた用紙12を、搬送ローラ対22を正方向に回転させた後、逆方向に回転させることによって反転経路25に送り、他方の印刷面に対して印刷を行うことができる。前記反転経路25は、用紙カセット13の上方において着脱自在に配設された再搬送トレイ26内に水平な搬送路を備え、該搬送路に、第4、第5の搬送部材としての搬送ローラ対27、28が配設される。
【0026】
ところで、トナー像を用紙12に定着させるために、前記定着器19においては、用紙12が加熱され、加圧されるので、トナー像が定着させられた用紙12にカールが発生することがある。
【0027】
その場合、カールが発生した用紙12が排紙トレイ23に排出されて積載されると、例えば、用紙12の後端が跳ね上がった状態になるので、次の用紙12によって前の用紙12の後端が押され、前の用紙12が排紙トレイ23から落下してしまい、排紙トレイ23に積載された用紙12の積載性が低くなってしまう。
【0028】
そこで、本実施の形態においては、前記排出部21に、排紙トレイ23に排出された用紙12の後端を押さえるための押え部材としての一対の排出フラップ24が配設される。なお、図3に示されるように、搬送ローラ対22は、用紙12の幅方向において2箇所に配設され、各排出フラップ24は、用紙12の幅方向において、二つの搬送ローラ対22より外側で、用紙12の両端部に対応させて配設される。なお、搬送ローラ対22、排紙トレイ23、排出フラップ24等によって媒体排出装置が構成される。
【0029】
図1は本発明の第1の実施の形態における排出部の断面図、図4は本発明の第1の実施の形態における排出フラップの斜視図である。
【0030】
図に示されるように、排出フラップ24は、用紙12の排出方向における搬送ローラ対22より下流側において、揺動軸としての回転軸24aを揺動中心にして揺動自在に配設される。前記回転軸24aは、用紙12の排出方向における搬送ローラ対22より下流側において、かつ、搬送ローラ対22の各中心を結ぶ線に対して直角の方向(接線方向)に延びる用紙12の排出線gより上方において、前記排出部21に取り付けられた図示されない軸受けによって回転自在に支持される。
【0031】
前記排出フラップ24は、前記回転軸24aから用紙12の排出方向における下流側に向けて延び、排出される用紙12を案内する媒体案内部としての用紙案内部24c、及び該用紙案内部24cから上方に向けて延びる係止部としての一対のストッパ24dを備える。該ストッパ24dは、前記排出部21に形成された被係止部21bと係合することによって、排出フラップ24が自重で回転軸24aを中心として回動するのを阻止し、排出フラップ24を、用紙12の排出方向において前下方に向けて傾斜する傾斜位置に置く。また、前記用紙案内部24cは、本体部m1、及び該本体部m1から上方に向けて傾斜させて延在させられた傾斜部m2を備え、前記排出フラップ24が前記傾斜位置に置かれると、本体部m1と用紙12の排出線gとが交差させられる。この場合、用紙12の排出線gに対して本体部m1が成す角度を、排出される用紙12が用紙案内部24cに突入する角度、すなわち、突入角θ1としたとき、該突入角θ1は、43〔°〕以上、かつ、53〔°〕以下にされ、本実施の形態においては、48〔°〕にされる。
【0032】
ところで、用紙12に対して片面印刷が行われた場合、通常、カールが発生することはなく、用紙12は、搬送ローラ対22の回転に伴って、排紙トレイ23の上方を移動し、自重によって排紙トレイ23に落下するが、排紙トレイ23が、排出口21aに近いほど低く、排出口21aから離れるほど高くなるように傾斜させて形成されるので、落下した用紙12は、排出口21a側に移動し、後端をそろえた状態で積載される。
【0033】
これに対して、両面印刷が行われた場合は、カールが発生しやすく、カールの方向及び大きさは、用紙12の繊維の配列方向、吸湿状態、加熱ローラ19aの外径、定着器19において用紙12に供給された熱量等によって異なる。
【0034】
図5は本発明の第1の実施の形態における用紙のカール状態の第1の例を示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における用紙のカール状態の第2の例を示す図である。
【0035】
この場合、両面印刷が行われた用紙12が排出口21a(図1)から矢印方向に排出される。図5に示される第1の例においては、用紙12の左右の両縁が上方に反り、特に、後端の両縁、すなわち、後端両縁部12aが跳ね上がり、後端逆カールのカール状態となる。
【0036】
また、図6に示される第2の例においては、排紙トレイ23上の積載された用紙12は、前端及び後端が下方に反り、特に、前端の両縁、すなわち、前端両縁部12bが下方に湾曲し、前端正カールのカール状態となる。
【0037】
次に、後端逆カールのカール状態となった用紙12を排出する際の排出フラップ24の動作について説明する。
【0038】
図7は本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第1の図、図8は本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第2の図、図9は本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第3の図である。
【0039】
図7に示されるように、搬送ローラ対22が矢印方向に回転させられ、用紙12が排出され、該用紙12の前端が排出フラップ24の用紙案内部24cに当たると、用紙12の搬送力を受けた排出フラップ24は、回転軸24aを中心に矢印方向に回転させられて上方に押されるが、直ちに自重で矢印方向に対して反対方向に回転させられ、用紙12を排紙トレイ23に向けて押さえる。
【0040】
続いて、図8に示されるように、用紙12の後端が搬送ローラ対22を通過すると、用紙12の後端部は、排出フラップ24の本体部m1と傾斜部m2との間の曲折部に形成された押圧部24eによって下方(矢印方向)に向けて押され、後端両縁部12aが用紙12の排出線gより下方に位置させられる。
【0041】
そして、前の用紙12が、排紙トレイ23に排出され、積載された後に、次の用紙12が排出口21aから排出されると、次の用紙12の前端が排出フラップ24の本体部m1に当たる。このとき、前の用紙12の後端両縁部12aは排出線gより下方に位置させられるので、次の用紙12の前端は、前の用紙12の後端両縁部12aより上方に位置させられて、排出フラップ24の本体部m1に当たる。したがって、次の用紙12は前の用紙12の上面を通過して排出トレイ23に排出される。
【0042】
ところが、排出フラップ24の重量が小さく、図9に示されるように、前の用紙12の後端両縁部12aが排出線gより上方に位置すると、前の用紙12の下に次の用紙12が潜り込む潜込みが発生したり、次の用紙12が前の用紙12の後端を押し、前の用紙12を排紙トレイ23から落下させたりしてしまう。
【0043】
そこで、本実施の形態においては、プリンタ11において使用される各種の用紙12の後端が搬送ローラ対22を通過したときに、前の用紙12の後端両縁部12aが排出線gより下方に位置するように、排出フラップ24の重量が設定される。
【0044】
次に、前端正カールのカール状態となった用紙12を排出する際の排出フラップ24の動作について説明する。
【0045】
図10は本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第4の図である。
【0046】
前述されたように、搬送ローラ対22によって用紙12が排出され、該用紙12の前端が排出フラップ24の用紙案内部24cに当たると、用紙12の搬送力を受けた排出フラップ24は、回転軸24aを中心に矢印方向に回転させられて上方に押されるが、直ちに自重で反対方向に回転させられ、用紙12を排紙トレイ23に向けて押さえる。
【0047】
このとき、用紙12が前端正カールのカール状態になっていると、次の用紙12が前の用紙12に対して突入する角度を突入角θ2としたとき、該突入角θ2は、用紙12が前端正カールのカール状態になっていないときより大きくなり、次の用紙12の前端と前の用紙12との間に大きな摩擦が発生し、前の用紙12によって大きな抵抗力が発生させられる。
【0048】
その結果、次の用紙12が排出されるのに伴って、前記抵抗力に応じた力で前の用紙12を押す現象である背押しが発生し、前の用紙12が排紙トレイ23から落下してしまう。
【0049】
ところが、本実施の形態においては、前の用紙12が排出されたときに、排出フラップ24の押圧部24eによって前の用紙12が排紙トレイ23に向けて押さえられるので、突入角θ2を小さくすることができ、背押しが発生するのを防止することができる。
【0050】
次に、排出フラップ24が用紙12を押さえる力、すなわち、媒体押え圧としての用紙押え圧、排出フラップ24の重量及び用紙12の積載性の関係について説明する。
【0051】
【表1】
【0052】
この場合、後端逆カールが発生しやすい連量の用紙12、及び先端正カールが発生しやすい連量の用紙12に対して印刷を行い、用紙12について積載性を判定した。そして、表1は、用紙押え圧P、排出フラップ24の重量M、並びに潜込み及び背押しが発生したかどうかによる積載性の判定結果を表す。なお、○は潜込み及び背押しが発生しないことを、×は潜込み及び背押しが発生したことを表す。また、一般的に、用紙12が薄い場合に後端逆カールが、用紙12が厚い場合に先端正カールが発生しやすい。
【0053】
なお、実験条件は、気温が26.5〔℃〕、湿度が46〔%〕の環境下とし、用紙12の排出速度を162〔mm/sec〕に、紙間を45〔mm〕に、搬送ローラ対22による用紙12の搬送力を192〔g〕に設定した。また、搬送ローラ対22の搬送力は100〔g〕以上、かつ、220〔g〕以下の範囲にされ、用紙押え圧Pは、排出フラップ24の押圧部24eが用紙12を垂直方向(図8における矢印方向)に押さえる力とした。そして、用紙押え圧Pが排出フラップ24の重量Mに対して比例し、
P=0.565×M
になるように、排出線gに対する用紙案内部24cの角度を設定した。
【0054】
表1に示されるように、用紙12に潜込み及び背押しが発生しないためには、用紙押え圧Pを、1.8〔g〕以上、かつ、2.7〔g〕以下に、排出フラップ24の重量Mを、3.2〔g〕以上、かつ、4.8〔g〕以下にすることが好ましい。なお、この範囲での用紙12の積載量は130〔枚〕以上であった。
【0055】
このように、本実施の形態においては、用紙12の排出方向における搬送ローラ対22より下流側に排出フラップ24が揺動自在に配設され、排出フラップ24が、自重によって用紙12を排紙トレイ23に向けて押さえるので、用紙12の潜込み及び背押しが発生するのを防止することができる。したがって、排紙トレイ23における用紙12の積載性を十分に高くすることができる。また、排出フラップ24による用紙押え圧Pが用紙12の左右で異なることがないので、用紙12が排出方向に対して傾斜して排出されることがなく、排紙トレイ23における用紙12の整列性が低くなることがない。
【0056】
ところで、乾燥した環境下で印刷を行うと、用紙12が静電気を帯び、用紙12の積載性が低くなってしまう。
【0057】
図11は乾燥した環境下における用紙の排出状態を示す図である。
【0058】
湿度が低く、乾燥した環境下においては、用紙12が、画像形成ユニット40(図2)又は定着器19を通過する際に静電気を帯び、静電気を帯びた状態のまま排紙トレイ23に排出されることがあり、特に、用紙12がOHPシート等のフィルム材によって形成される場合には、常湿の環境下でも静電気を帯びやすい。
【0059】
この場合、搬送ローラ対22から排出された次の用紙12と、前の用紙12との帯電極性が互いに吸着する関係にあると、次の用紙12の前端部12fと前の用紙12とが吸着し、次の用紙12の中央部12gが、用紙12の排出方向に移動することができず、矢印方向に移動し、排紙トレイ23の上方に向けて撓んでしまう。また、次の用紙12の中央部12gより排出口21a側の部分12hが、排出フラップ24の下方に向けて湾曲してしまう。
【0060】
そこで、用紙12が静電気を帯びたときでも、用紙12を安定させて排紙トレイ23に排出し、積載性を高くすることができるようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0061】
図12は本発明の第2の実施の形態における排出フラップの斜視図である。
【0062】
図に示されるように、押え部材としての一対の排出フラップ50は、導電性を有する材料、すなわち、導電体から成る板金によって形成され、排出部21に形成された所定の図示されない支持部に固定され、導電体から成る揺動軸としてのシャフト51を揺動中心にして揺動自在に支持される。そのために、各排出フラップ50には、一対のアームk1、k2が立ち上げて形成され、該アームk1、k2に、前記シャフト51を貫通させるための回転支持穴50aが形成される。
【0063】
前記排出フラップ50は、前記シャフト51から媒体としての用紙12の排出方向における下流側に向けて延び、排出される用紙12を案内する媒体案内部としての用紙案内部50c、及び該用紙案内部50cから上方に延びる係止部としてのストッパ50bを備える。該ストッパ50bは、前記排出部21(図1)に形成された被係止部21bと係合することによって、排出フラップ50が自重でシャフト51を中心として回動するのを阻止し、排出フラップ50を、用紙12の排出方向において前下方に向けて傾斜する傾斜位置に置く。また、前記用紙案内部50cは、本体部m1、及び該本体部m1から上方に向けて傾斜させて延在させられた傾斜部m2を備え、前記排出フラップ50が前記傾斜位置に置かれると、本体部m1と用紙12の排出線gとが交差させられる。なお、前記本体部m1と傾斜部m2との間の曲折部に押圧部50eが形成される。
【0064】
前記シャフト51は導電体である金属によって形成され、シャフト51の一方の端部に、導電体である金属によって形成された接地用のFGプレート52が圧接される。該FGプレート52は、画像形成装置としてのプリンタ11における電源グラウンド(GND)に接続された筐体の一部から成る板金に固定され、排出フラップ50が、前記シャフト51、FGプレート52、図示されないACコード等を介して電気的に接地させられる。
【0065】
本実施の形態においては、画像形成ユニット40又は定着装置としての定着器19を通過する際に静電気を帯び、第3の搬送部材としての搬送ローラ対22によって排出される用紙12の前端が、排出フラップ50の用紙案内部50cに当たると、用紙12の後端が搬送ローラ対22を通過するまでの間、用紙12は用紙案内部50cに接触し続ける。したがって、用紙12の静電気は、排出フラップ50、シャフト51、FGプレート52、ACコード等を介して除去される。
【0066】
このように、静電気を帯びた用紙12であっても、媒体積載部としての排紙トレイ23に安定させて排出することができ、用紙12の積載性を高くすることができる。
【0067】
本実施の形態において、排出フラップ50は用紙12の幅方向において2箇所に配設され、二つの排出フラップ50のうちの一方が、シャフト51、FGプレート52、ACコード等を介して電気的に接地させられるようになっているが、二つの排出フラップ50を、シャフト51、FGプレート52、ACコード等を介して電気的に接地させることができる。また、二つの排出フラップ50を共通の導電性を有するシャフトによって支持し、該シャフトの一方の端部に接地用のFGプレートを圧接させることができる。
【0068】
本実施の形態においては、画像形成装置としてプリンタを例に説明したが、本発明を、複写機、ファクシミリ、複合機等に適用することができる。
【0069】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0070】
12 用紙
22 搬送ローラ対
23 排紙トレイ
24、50 排出フラップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体積載装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式のプリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置、例えば、プリンタにおいては画像形成ユニットが配設され、該画像形成ユニットにおいて、LEDヘッドによって感光体ドラムの表面に静電潜像が形成され、現像ローラによって前記静電潜像にトナーが付着させられてトナー像が形成され、転写ローラによって前記トナー像が媒体としての用紙に転写されるようになっている。
【0003】
そして、該用紙は、用紙カセットから給紙され、レジストローラに送られ、該レジストローラによって用紙の斜行が矯正された後、画像形成ユニットと転写ローラとの間の転写部に送られる。該転写部において前記転写ローラによって前記トナー像が転写されると、用紙は、定着器に送られ、該定着器においてトナー像が用紙に定着させられた後、排出口から媒体積載部としての排紙トレイに排出される。
【0004】
ところで、前記定着器においては、トナー像を用紙に定着させるために、用紙が加熱され、加圧されるので、トナー像が定着させられた用紙にカールが発生することがある。
【0005】
その場合、カールが発生した用紙が排紙トレイに排出されて積載されると、例えば、用紙の後端が跳ね上がった状態になるので、次に排出される用紙、すなわち、次の用紙によって、直前に排紙トレイに排出されて積載された用紙、すなわち、前の用紙の後端が押され、前の用紙が排紙トレイから落下してしまい、排紙トレイにおける用紙の積載性が低くなってしまう。
【0006】
そこで、フィルムを前記排出口の上部に配設し、排出された用紙の後端を前記フィルムによって押さえることにより、排紙トレイにおける用紙の積載性を高くするようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−106524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のプリンタにおいては、用紙の後端を押さえる力、すなわち、押圧力が、フィルムが用紙に押されて撓むことによって発生させられるので、フィルムの取付け位置、フィルム自体の反り等にばらつきがあると、フィルムの撓み量が変わり、適切な押圧力を得ることができなくなる。
【0009】
その結果、用紙の積載性を十分に高くすることができなくなったり、押圧力が用紙の左右で異なり、用紙が排出方向に対して傾斜して排出され、排紙トレイにおける用紙の整列性が低くなったりしてしまう。
【0010】
本発明は、前記従来のプリンタの問題点を解決して、媒体積載部における媒体の積載性を十分に高くすることができ、整列性が低くなることがない媒体積載装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明の媒体積載装置においては、媒体を排出する搬送ローラ対と、該搬送ローラ対によって排出された媒体を積載するための媒体積載部と、前記媒体の排出方向における前記搬送ローラ対より下流側に揺動自在に配設され、自重によって媒体を前記媒体積載部に向けて押さえるための押え部材とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、媒体積載装置においては、媒体を排出する搬送ローラ対と、該搬送ローラ対によって排出された媒体を積載するための媒体積載部と、前記媒体の排出方向における前記搬送ローラ対より下流側に揺動自在に配設され、自重によって媒体を前記媒体積載部に向けて押さえるための押え部材とを有する。
【0013】
この場合、前記押え部材が、前記媒体の排出方向における搬送ローラ対より下流側に揺動自在に配設され、自重によって媒体を媒体積載部に向けて押さえるので、媒体の潜込み及び背押しが発生するのを防止することができる。したがって、媒体積載部における媒体の積載性を十分に高くすることができる。
【0014】
また、媒体押え圧が媒体の左右で等しくされるので、媒体が排出方向に対して傾斜して排出されることがなく、媒体積載部における媒体の整列性が低くなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態における排出部の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの平面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における排出フラップの斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における用紙のカール状態の第1の例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における用紙のカール状態の第2の例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第1の図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第2の図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第3の図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第4の図である。
【図11】乾燥した環境下における用紙の排出状態を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における排出フラップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0017】
図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図、図3は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの平面図である。
【0018】
図に示されるように、プリンタ11の底部には、媒体としての用紙12を収容する媒体収容部としての用紙カセット13が着脱自在に装着される。前記用紙カセット13内の用紙12の上部には、用紙12を1枚ずつ繰り出すための繰出部材としてのピックアップローラ14が回転自在に配設され、該ピックアップローラ14の近傍に、用紙12を1枚ずつ給紙するための給紙部材としての給紙ローラ15及びリタードローラ16が互いに対向させて配設される。そして、用紙12の搬送方向における給紙ローラ15及びリタードローラ16より下流側に、第1の搬送部材としての搬送ローラ対17が配設され、該搬送ローラ対17より下流側に、画像形成ユニット40に用紙12を送るためのレジストローラ18が配設される。
【0019】
前記画像形成ユニット40は、現像剤としてのトナーを収容する現像剤収容部としての、かつ、現像剤カートリッジとしてのトナーカートリッジ41、像担持体としての感光体ドラム43、帯電装置としての図示されない帯電ローラ、現像装置としての図示されない現像器等を備え、露光装置としてのLEDヘッド42及び転写部材としての転写ローラ44と共に画像形成部を構成する。
【0020】
前記用紙12は、用紙カセット13から給紙され、レジストローラ18に送られ、該レジストローラ18によって用紙12の斜行が矯正された後、画像形成ユニット40と転写ローラ44との間の転写部に送られる。
【0021】
そして、前記画像形成ユニット40において、LEDヘッド42によって感光体ドラム43の表面に潜像としての静電潜像が形成され、現像器によって前記静電潜像にトナーが付着させられてトナー像が形成され、転写ローラ44によって前記トナー像が用紙12に転写される。
【0022】
また、用紙12の搬送方向における画像形成ユニット40より下流側には、定着装置としての定着器19が配設され、該定着器19は、加熱ローラ19a、及び該加熱ローラ19に圧接させられた加圧ローラ19bを備え、前記定着器19において、用紙12に転写されたトナー像が加熱され、加圧されて定着させられる。
【0023】
そして、用紙12の搬送方向における前記定着器19より下流側には、第2の搬送部材としての搬送ローラ対20が配設され、該搬送ローラ対20より更に下流側には、第3の搬送部材としての搬送ローラ対22が、プリンタ11の筐体の一部から成る排出部21に形成された排出口21aに臨ませて配設される。したがって、用紙12は、前記搬送ローラ対22を回転させることによって、プリンタ11の本体、すなわち、装置本体外に形成された媒体積載部としての排紙トレイ23に排出され、積載される。
【0024】
なお、プリンタ11内における用紙12の位置を検出するために、用紙12の搬送方向におけるレジストローラ18より上流側の直前、該レジストローラ18と転写ローラ44との間、及び定着器19と搬送ローラ対20との間に、センサ29〜31が配設される。
【0025】
本実施の形態においては、用紙12に対して両面印刷を行うことができ、そのために、搬送ローラ対22は、用紙12を正方向及び逆方向に搬送することができるようになっている。そして、一方の印刷面に対して印刷が行われた用紙12を、搬送ローラ対22を正方向に回転させた後、逆方向に回転させることによって反転経路25に送り、他方の印刷面に対して印刷を行うことができる。前記反転経路25は、用紙カセット13の上方において着脱自在に配設された再搬送トレイ26内に水平な搬送路を備え、該搬送路に、第4、第5の搬送部材としての搬送ローラ対27、28が配設される。
【0026】
ところで、トナー像を用紙12に定着させるために、前記定着器19においては、用紙12が加熱され、加圧されるので、トナー像が定着させられた用紙12にカールが発生することがある。
【0027】
その場合、カールが発生した用紙12が排紙トレイ23に排出されて積載されると、例えば、用紙12の後端が跳ね上がった状態になるので、次の用紙12によって前の用紙12の後端が押され、前の用紙12が排紙トレイ23から落下してしまい、排紙トレイ23に積載された用紙12の積載性が低くなってしまう。
【0028】
そこで、本実施の形態においては、前記排出部21に、排紙トレイ23に排出された用紙12の後端を押さえるための押え部材としての一対の排出フラップ24が配設される。なお、図3に示されるように、搬送ローラ対22は、用紙12の幅方向において2箇所に配設され、各排出フラップ24は、用紙12の幅方向において、二つの搬送ローラ対22より外側で、用紙12の両端部に対応させて配設される。なお、搬送ローラ対22、排紙トレイ23、排出フラップ24等によって媒体排出装置が構成される。
【0029】
図1は本発明の第1の実施の形態における排出部の断面図、図4は本発明の第1の実施の形態における排出フラップの斜視図である。
【0030】
図に示されるように、排出フラップ24は、用紙12の排出方向における搬送ローラ対22より下流側において、揺動軸としての回転軸24aを揺動中心にして揺動自在に配設される。前記回転軸24aは、用紙12の排出方向における搬送ローラ対22より下流側において、かつ、搬送ローラ対22の各中心を結ぶ線に対して直角の方向(接線方向)に延びる用紙12の排出線gより上方において、前記排出部21に取り付けられた図示されない軸受けによって回転自在に支持される。
【0031】
前記排出フラップ24は、前記回転軸24aから用紙12の排出方向における下流側に向けて延び、排出される用紙12を案内する媒体案内部としての用紙案内部24c、及び該用紙案内部24cから上方に向けて延びる係止部としての一対のストッパ24dを備える。該ストッパ24dは、前記排出部21に形成された被係止部21bと係合することによって、排出フラップ24が自重で回転軸24aを中心として回動するのを阻止し、排出フラップ24を、用紙12の排出方向において前下方に向けて傾斜する傾斜位置に置く。また、前記用紙案内部24cは、本体部m1、及び該本体部m1から上方に向けて傾斜させて延在させられた傾斜部m2を備え、前記排出フラップ24が前記傾斜位置に置かれると、本体部m1と用紙12の排出線gとが交差させられる。この場合、用紙12の排出線gに対して本体部m1が成す角度を、排出される用紙12が用紙案内部24cに突入する角度、すなわち、突入角θ1としたとき、該突入角θ1は、43〔°〕以上、かつ、53〔°〕以下にされ、本実施の形態においては、48〔°〕にされる。
【0032】
ところで、用紙12に対して片面印刷が行われた場合、通常、カールが発生することはなく、用紙12は、搬送ローラ対22の回転に伴って、排紙トレイ23の上方を移動し、自重によって排紙トレイ23に落下するが、排紙トレイ23が、排出口21aに近いほど低く、排出口21aから離れるほど高くなるように傾斜させて形成されるので、落下した用紙12は、排出口21a側に移動し、後端をそろえた状態で積載される。
【0033】
これに対して、両面印刷が行われた場合は、カールが発生しやすく、カールの方向及び大きさは、用紙12の繊維の配列方向、吸湿状態、加熱ローラ19aの外径、定着器19において用紙12に供給された熱量等によって異なる。
【0034】
図5は本発明の第1の実施の形態における用紙のカール状態の第1の例を示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における用紙のカール状態の第2の例を示す図である。
【0035】
この場合、両面印刷が行われた用紙12が排出口21a(図1)から矢印方向に排出される。図5に示される第1の例においては、用紙12の左右の両縁が上方に反り、特に、後端の両縁、すなわち、後端両縁部12aが跳ね上がり、後端逆カールのカール状態となる。
【0036】
また、図6に示される第2の例においては、排紙トレイ23上の積載された用紙12は、前端及び後端が下方に反り、特に、前端の両縁、すなわち、前端両縁部12bが下方に湾曲し、前端正カールのカール状態となる。
【0037】
次に、後端逆カールのカール状態となった用紙12を排出する際の排出フラップ24の動作について説明する。
【0038】
図7は本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第1の図、図8は本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第2の図、図9は本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第3の図である。
【0039】
図7に示されるように、搬送ローラ対22が矢印方向に回転させられ、用紙12が排出され、該用紙12の前端が排出フラップ24の用紙案内部24cに当たると、用紙12の搬送力を受けた排出フラップ24は、回転軸24aを中心に矢印方向に回転させられて上方に押されるが、直ちに自重で矢印方向に対して反対方向に回転させられ、用紙12を排紙トレイ23に向けて押さえる。
【0040】
続いて、図8に示されるように、用紙12の後端が搬送ローラ対22を通過すると、用紙12の後端部は、排出フラップ24の本体部m1と傾斜部m2との間の曲折部に形成された押圧部24eによって下方(矢印方向)に向けて押され、後端両縁部12aが用紙12の排出線gより下方に位置させられる。
【0041】
そして、前の用紙12が、排紙トレイ23に排出され、積載された後に、次の用紙12が排出口21aから排出されると、次の用紙12の前端が排出フラップ24の本体部m1に当たる。このとき、前の用紙12の後端両縁部12aは排出線gより下方に位置させられるので、次の用紙12の前端は、前の用紙12の後端両縁部12aより上方に位置させられて、排出フラップ24の本体部m1に当たる。したがって、次の用紙12は前の用紙12の上面を通過して排出トレイ23に排出される。
【0042】
ところが、排出フラップ24の重量が小さく、図9に示されるように、前の用紙12の後端両縁部12aが排出線gより上方に位置すると、前の用紙12の下に次の用紙12が潜り込む潜込みが発生したり、次の用紙12が前の用紙12の後端を押し、前の用紙12を排紙トレイ23から落下させたりしてしまう。
【0043】
そこで、本実施の形態においては、プリンタ11において使用される各種の用紙12の後端が搬送ローラ対22を通過したときに、前の用紙12の後端両縁部12aが排出線gより下方に位置するように、排出フラップ24の重量が設定される。
【0044】
次に、前端正カールのカール状態となった用紙12を排出する際の排出フラップ24の動作について説明する。
【0045】
図10は本発明の第1の実施の形態における排出フラップの動作を示す第4の図である。
【0046】
前述されたように、搬送ローラ対22によって用紙12が排出され、該用紙12の前端が排出フラップ24の用紙案内部24cに当たると、用紙12の搬送力を受けた排出フラップ24は、回転軸24aを中心に矢印方向に回転させられて上方に押されるが、直ちに自重で反対方向に回転させられ、用紙12を排紙トレイ23に向けて押さえる。
【0047】
このとき、用紙12が前端正カールのカール状態になっていると、次の用紙12が前の用紙12に対して突入する角度を突入角θ2としたとき、該突入角θ2は、用紙12が前端正カールのカール状態になっていないときより大きくなり、次の用紙12の前端と前の用紙12との間に大きな摩擦が発生し、前の用紙12によって大きな抵抗力が発生させられる。
【0048】
その結果、次の用紙12が排出されるのに伴って、前記抵抗力に応じた力で前の用紙12を押す現象である背押しが発生し、前の用紙12が排紙トレイ23から落下してしまう。
【0049】
ところが、本実施の形態においては、前の用紙12が排出されたときに、排出フラップ24の押圧部24eによって前の用紙12が排紙トレイ23に向けて押さえられるので、突入角θ2を小さくすることができ、背押しが発生するのを防止することができる。
【0050】
次に、排出フラップ24が用紙12を押さえる力、すなわち、媒体押え圧としての用紙押え圧、排出フラップ24の重量及び用紙12の積載性の関係について説明する。
【0051】
【表1】
【0052】
この場合、後端逆カールが発生しやすい連量の用紙12、及び先端正カールが発生しやすい連量の用紙12に対して印刷を行い、用紙12について積載性を判定した。そして、表1は、用紙押え圧P、排出フラップ24の重量M、並びに潜込み及び背押しが発生したかどうかによる積載性の判定結果を表す。なお、○は潜込み及び背押しが発生しないことを、×は潜込み及び背押しが発生したことを表す。また、一般的に、用紙12が薄い場合に後端逆カールが、用紙12が厚い場合に先端正カールが発生しやすい。
【0053】
なお、実験条件は、気温が26.5〔℃〕、湿度が46〔%〕の環境下とし、用紙12の排出速度を162〔mm/sec〕に、紙間を45〔mm〕に、搬送ローラ対22による用紙12の搬送力を192〔g〕に設定した。また、搬送ローラ対22の搬送力は100〔g〕以上、かつ、220〔g〕以下の範囲にされ、用紙押え圧Pは、排出フラップ24の押圧部24eが用紙12を垂直方向(図8における矢印方向)に押さえる力とした。そして、用紙押え圧Pが排出フラップ24の重量Mに対して比例し、
P=0.565×M
になるように、排出線gに対する用紙案内部24cの角度を設定した。
【0054】
表1に示されるように、用紙12に潜込み及び背押しが発生しないためには、用紙押え圧Pを、1.8〔g〕以上、かつ、2.7〔g〕以下に、排出フラップ24の重量Mを、3.2〔g〕以上、かつ、4.8〔g〕以下にすることが好ましい。なお、この範囲での用紙12の積載量は130〔枚〕以上であった。
【0055】
このように、本実施の形態においては、用紙12の排出方向における搬送ローラ対22より下流側に排出フラップ24が揺動自在に配設され、排出フラップ24が、自重によって用紙12を排紙トレイ23に向けて押さえるので、用紙12の潜込み及び背押しが発生するのを防止することができる。したがって、排紙トレイ23における用紙12の積載性を十分に高くすることができる。また、排出フラップ24による用紙押え圧Pが用紙12の左右で異なることがないので、用紙12が排出方向に対して傾斜して排出されることがなく、排紙トレイ23における用紙12の整列性が低くなることがない。
【0056】
ところで、乾燥した環境下で印刷を行うと、用紙12が静電気を帯び、用紙12の積載性が低くなってしまう。
【0057】
図11は乾燥した環境下における用紙の排出状態を示す図である。
【0058】
湿度が低く、乾燥した環境下においては、用紙12が、画像形成ユニット40(図2)又は定着器19を通過する際に静電気を帯び、静電気を帯びた状態のまま排紙トレイ23に排出されることがあり、特に、用紙12がOHPシート等のフィルム材によって形成される場合には、常湿の環境下でも静電気を帯びやすい。
【0059】
この場合、搬送ローラ対22から排出された次の用紙12と、前の用紙12との帯電極性が互いに吸着する関係にあると、次の用紙12の前端部12fと前の用紙12とが吸着し、次の用紙12の中央部12gが、用紙12の排出方向に移動することができず、矢印方向に移動し、排紙トレイ23の上方に向けて撓んでしまう。また、次の用紙12の中央部12gより排出口21a側の部分12hが、排出フラップ24の下方に向けて湾曲してしまう。
【0060】
そこで、用紙12が静電気を帯びたときでも、用紙12を安定させて排紙トレイ23に排出し、積載性を高くすることができるようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0061】
図12は本発明の第2の実施の形態における排出フラップの斜視図である。
【0062】
図に示されるように、押え部材としての一対の排出フラップ50は、導電性を有する材料、すなわち、導電体から成る板金によって形成され、排出部21に形成された所定の図示されない支持部に固定され、導電体から成る揺動軸としてのシャフト51を揺動中心にして揺動自在に支持される。そのために、各排出フラップ50には、一対のアームk1、k2が立ち上げて形成され、該アームk1、k2に、前記シャフト51を貫通させるための回転支持穴50aが形成される。
【0063】
前記排出フラップ50は、前記シャフト51から媒体としての用紙12の排出方向における下流側に向けて延び、排出される用紙12を案内する媒体案内部としての用紙案内部50c、及び該用紙案内部50cから上方に延びる係止部としてのストッパ50bを備える。該ストッパ50bは、前記排出部21(図1)に形成された被係止部21bと係合することによって、排出フラップ50が自重でシャフト51を中心として回動するのを阻止し、排出フラップ50を、用紙12の排出方向において前下方に向けて傾斜する傾斜位置に置く。また、前記用紙案内部50cは、本体部m1、及び該本体部m1から上方に向けて傾斜させて延在させられた傾斜部m2を備え、前記排出フラップ50が前記傾斜位置に置かれると、本体部m1と用紙12の排出線gとが交差させられる。なお、前記本体部m1と傾斜部m2との間の曲折部に押圧部50eが形成される。
【0064】
前記シャフト51は導電体である金属によって形成され、シャフト51の一方の端部に、導電体である金属によって形成された接地用のFGプレート52が圧接される。該FGプレート52は、画像形成装置としてのプリンタ11における電源グラウンド(GND)に接続された筐体の一部から成る板金に固定され、排出フラップ50が、前記シャフト51、FGプレート52、図示されないACコード等を介して電気的に接地させられる。
【0065】
本実施の形態においては、画像形成ユニット40又は定着装置としての定着器19を通過する際に静電気を帯び、第3の搬送部材としての搬送ローラ対22によって排出される用紙12の前端が、排出フラップ50の用紙案内部50cに当たると、用紙12の後端が搬送ローラ対22を通過するまでの間、用紙12は用紙案内部50cに接触し続ける。したがって、用紙12の静電気は、排出フラップ50、シャフト51、FGプレート52、ACコード等を介して除去される。
【0066】
このように、静電気を帯びた用紙12であっても、媒体積載部としての排紙トレイ23に安定させて排出することができ、用紙12の積載性を高くすることができる。
【0067】
本実施の形態において、排出フラップ50は用紙12の幅方向において2箇所に配設され、二つの排出フラップ50のうちの一方が、シャフト51、FGプレート52、ACコード等を介して電気的に接地させられるようになっているが、二つの排出フラップ50を、シャフト51、FGプレート52、ACコード等を介して電気的に接地させることができる。また、二つの排出フラップ50を共通の導電性を有するシャフトによって支持し、該シャフトの一方の端部に接地用のFGプレートを圧接させることができる。
【0068】
本実施の形態においては、画像形成装置としてプリンタを例に説明したが、本発明を、複写機、ファクシミリ、複合機等に適用することができる。
【0069】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0070】
12 用紙
22 搬送ローラ対
23 排紙トレイ
24、50 排出フラップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)媒体を排出する搬送ローラ対と、
(b)該搬送ローラ対によって排出された媒体を積載するための媒体積載部と、
(c)前記媒体の排出方向における前記搬送ローラ対より下流側に揺動自在に配設され、自重によって媒体を前記媒体積載部に向けて押さえるための押え部材とを有することを特徴とする媒体積載装置。
【請求項2】
前記押え部材が媒体を押さえるときの媒体押え圧は、1.8〔g〕以上、かつ、2.7〔g〕以下にされる請求項1に記載の媒体積載装置。
【請求項3】
前記押え部材の重量は、3.2〔g〕以上、かつ、4.8〔g〕以下にされる請求項1に記載の媒体積載装置。
【請求項4】
前記押え部材は、導電体によって形成され、電気的に接地させられる請求項1に記載の媒体積載装置。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の媒体積載装置が搭載された画像形成装置。
【請求項1】
(a)媒体を排出する搬送ローラ対と、
(b)該搬送ローラ対によって排出された媒体を積載するための媒体積載部と、
(c)前記媒体の排出方向における前記搬送ローラ対より下流側に揺動自在に配設され、自重によって媒体を前記媒体積載部に向けて押さえるための押え部材とを有することを特徴とする媒体積載装置。
【請求項2】
前記押え部材が媒体を押さえるときの媒体押え圧は、1.8〔g〕以上、かつ、2.7〔g〕以下にされる請求項1に記載の媒体積載装置。
【請求項3】
前記押え部材の重量は、3.2〔g〕以上、かつ、4.8〔g〕以下にされる請求項1に記載の媒体積載装置。
【請求項4】
前記押え部材は、導電体によって形成され、電気的に接地させられる請求項1に記載の媒体積載装置。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の媒体積載装置が搭載された画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−35994(P2012−35994A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179769(P2010−179769)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
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