説明

媒体給送装置

【課題】媒体の給送中に発生する複数種類の給送異常を簡易な構成で検出することができる媒体給送装置を提供する。
【解決手段】給送手段3により給送されるシート状の媒体に該媒体の幅方向に沿った複数点又は該幅方向に沿った線上で接触して転動可能な転動手段6と、転動手段6を給送手段3による給送方向の所定位置で支持し、該転動手段6と共に給送手段3により給送される媒体に追従可能な支持手段7と、支持手段7に作用する3方向の加速度を計測可能な加速度計測手段8と、加速度計測手段8により計測される3方向の加速度に基づいて媒体の給送異常を検出する検出手段44を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体給送装置に関し、特に、複数のシート状の媒体を1枚ずつ分離して給送可能な媒体給送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の媒体給送装置は、イメージスキャナ、複写機、ファクシミリ、文字認識装置等の画像読取装置など、複数のシート状の媒体としての用紙を取り扱う装置に搭載されており、積層された用紙を1枚ずつ分離し、分離した状態の用紙を1枚ずつ画像読取装置に送り込むものである。これにより、用紙が複数積層されている場合でも、1枚ずつ自動で装置に給送することで、該装置にてシート媒体を1枚ずつ処理することができる。このような媒体給送装置では、媒体の給送中に給送異常が発生すると媒体が折れ曲がるなどして、当該媒体が破損するおそれがある。
【0003】
そこで、このような従来の媒体給送装置として、例えば、特許文献1に記載のシート搬送装置は、シート搬送路の幅方向に一対で配置され、前記搬送されるシートにより振動が加えられる振動伝達部材と、前記振動伝達部材に加えられた振動を検知する加速度検知手段と、前記加速度検知手段によって検知された前記振動伝達部材に加えられた振動の状態を基に、前記搬送されるシートの搬送異常を検出する搬送異常検出手段とを備える。通常のシート搬送の場合、一対の振動伝達部材が加速度検知手段に与える振動は同時に発生するので、加速度検知手段からの出力信号は、同一タイミングのピークとして重なり合う。一方、斜行(いわゆる、スキュー)してシートが搬送された場合、加速度検知手段の出力信号は、1枚のシート搬送において、2つのピークを形成するようになる。これにより、このシート搬送装置は、シートの斜行を検出することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2007−31104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されたシート搬送装置では、給送中に媒体が回転あるいは変形することで発生するいわゆる累積スキューや媒体の浮き上がりや詰まりによって発生するいわゆるジャムなどの媒体の給送中に発生する複数種類の給送異常を検出するには、加速度検知手段や振動伝達部材が複数必要であり、より簡易な構成で複数種類の給送異常を媒体の破損前に事前に検出することができる媒体給送装置が望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、媒体の給送中に発生する複数種類の給送異常を簡易な構成で検出することができる媒体給送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による媒体給送装置は、給送手段により給送されるシート状の媒体に該媒体の幅方向に沿った複数点又は該幅方向に沿った線上で接触して転動可能な転動手段と、前記転動手段を前記給送手段による給送方向の所定位置で支持し、該転動手段と共に前記給送手段により給送される前記媒体に追従可能な支持手段と、前記支持手段に作用する3方向の加速度を計測可能な加速度計測手段と、前記加速度計測手段により計測される前記3方向の加速度に基づいて前記媒体の給送異常を検出する検出手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明による媒体給送装置では、記加速度計測手段は、前記給送方向と、該給送方向に水平に直交する前記幅方向と、該給送方向及び該幅方向にそれぞれ直交する高さ方向の加速度を計測可能であり、前記支持手段は、前記高さ方向及び該高さ方向に沿った軸周りに追従可能であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明による媒体給送装置では、前記検出手段は、前記給送方向又は前記幅方向の加速度の増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合に、前記媒体の給送異常として該媒体のスキューを検出することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明による媒体給送装置では、前記検出手段は、前記高さ方向の加速度の増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合に、前記媒体の給送異常として該媒体のジャムを検出することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明による媒体給送装置では、前記加速度計測手段に高さ方向に沿った周期的な振動を付加する振動付加手段と、前記高さ方向の加速度の計測値に基づいて、前記高さ方向の計測加速度波形を生成する波形生成手段と、前記給送手段による給送速度に応じた前記高さ方向の加速度波形の基準となる基準加速度波形を記憶する記憶部と、前記計測加速度波形と前記基準加速度波形とを比較する比較手段とを備え、前記検出手段は、前記比較手段による比較結果に基づいて、前記媒体の給送異常を検出することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明による媒体給送装置では、前記転動手段は、円柱状に形成され転動中心が前記幅方向に沿って設定されることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明による媒体給送装置では、基端部が前記支持手段に設けられると共に、先端部に前記加速度計測手段が設けられるアーム部材を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明による媒体給送装置では、前記媒体が積載される積載手段を備え、前記給送手段は、前記積載手段に積載された前記媒体を1枚ずつ分離可能な分離手段を有し、前記転動手段は、前記給送方向に対して前記分離手段より上流側に設けられることを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明による媒体給送装置では、前記検出手段の検出結果に応じて前記給送手段による前記媒体の給送を停止する給送停止手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る媒体給送装置によれば、転動手段と共に媒体に追従可能な支持手段に作用する3方向の加速度に基づいて媒体の給送異常を検出するので、媒体の給送中に発生する複数種類の給送異常を簡易な構成で媒体の破損前に事前に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る媒体給送装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係るシート給送装置の構成を示す概略ブロック図、図2は、本発明の実施例1に係るシート給送装置の構成を示す平面図、図3は、本発明の実施例1に係るシート給送装置の構成を示す側面図、図4−1は、本発明の実施例1に係るシート給送装置の加速度検出部の平面図、図4−2は、本発明の実施例1に係るシート給送装置の加速度検出部を給送方向下流側から見た正面図、図4−3は、本発明の実施例1に係るシート給送装置の加速度検出部の側面図、図5は、本発明の実施例1に係るシート給送装置の動作を示す平面図、図6は、本発明の実施例1に係るシート給送装置の動作を示す側面図、図7は、本発明の実施例1に係るシート給送装置による給送異常検出方法の制御を示すフローチャートである。
【0019】
本発明の実施例に係る媒体給送装置としてのシート給送装置1は、図1乃至図3に示すように、積層されているシート状の媒体としての用紙Sを1枚ずつ自動で装置に給送するものである。以下、本発明の実施例に係るシート給送装置は、複数の用紙Sを取り扱う装置として、イメージスキャナ、複写機、ファクシミリ、文字認識装置等の画像読取装置に搭載され、積層された用紙Sを1枚ずつ分離し、分離した状態の用紙Sを1枚ずつ画像読取装置に送り込むシート給送装置1に適用して説明するが、これに限らず、種々の装置のシート給送装置に適用可能であり、例えば、印刷機に枚葉紙を給紙するシート給送装置に適用してもよい。
【0020】
このシート給送装置1は、複数のサイズの用紙Sを大量に連続的に、画像読取装置内に設けられる搬送部(不図示)に自動給紙することができるものである。この本実施例のシート給送装置1は、複数種類のサイズの用紙Sに対応しており、すなわち、シート給送装置1は、複数種類のサイズの用紙Sを搬送部に自動給紙することができる。このシート給送装置1は、積載手段としてのホッパ2と、給送手段としての分離給送部3と、制御装置4とを備える。
【0021】
なお、以下の説明では、シート給送装置1により用紙Sを給送する方向を「給送方向」、当該給送方向と水平に直交する方向を「幅方向」、給送方向及び当該幅方向にそれぞれ直交する方向を「高さ方向」という。また、「給送方向」、「幅方向」及び「高さ方向」は、それぞれ「給送方向」を「Y方向」、「幅方向」を「X方向」、「高さ方向」を「Z方向」とする。
【0022】
分離給送部3は、ホッパ2に積載された用紙Sを1枚ずつ分離して連続的に自動給紙するものである。そして、画像読取装置内に設けられる搬送部(不図示)は、給送方向Yに対してこの分離給送部3よりさらに下流側に設けられる。
【0023】
ここで、この搬送部は、このシート給送装置1が搭載される画像読取装置内に設けられ、シート給送装置1により給紙された用紙Sを画像読取装置内の各部に搬送するものである。搬送部は、その搬送経路中に、例えば、用紙S上の画像を読み取る画像読取手段としての光学ユニットなどが設けられており、したがって、搬送部により画像読取装置内を搬送される用紙Sは、この光学ユニットにより画像が読み取られる。搬送部(不図示)は、例えば、駆動源の駆動力により回転駆動可能な駆動ローラと、この駆動ローラに従動して回転可能な従動ローラとを有する。駆動ローラと従動ローラとは、用紙Sの幅方向Xに沿うように設けられ、中心軸を回転軸線として回転可能に設けられる。従動ローラは、駆動ローラと対向して接するように設けられると共に、不図示の付勢手段により駆動ローラ側に付圧(付勢)されている。したがって、この搬送部は、従動ローラの付圧により駆動ローラの外周面と従動ローラの外周面との間に用紙Sを挟持すると共に駆動ローラが回転駆動することで、搬送経路に沿って設けられた複数の駆動ローラ(不図示)と従動ローラ(不図示)とのローラ対間を順次受け渡されることで、画像読取装置内部の各部、例えば、上述の光学ユニットに搬送される。
【0024】
ホッパ2は、積層された用紙Sを積載すると共に高さ方向Zに沿って昇降可能なものであり、略矩形状に形成された積載面21を有する。ホッパ2は、この積載面21に用紙Sを複数枚積層させて積載する。ホッパ2に載置される積層された用紙Sは、不図示の付勢手段の付勢力により積載面21側に押圧されている。そして、このホッパ2は、不図示のホッパ昇降機構を備え、積載面21上に積載されている用紙Sの積載量に応じて高さ方向Zに沿って昇降する。
【0025】
分離給送部3は、いわゆる、上取方式の分離機構であり、ホッパ2に積載された用紙Sを1枚ずつ分離して給送可能な分離手段としての分離ローラ31と、分離ローラ31に直接接触する用紙S以外の用紙Sの給送を規制するブレーキローラ32を備える。
【0026】
分離ローラ31は、ホッパ2に積載された用紙Sのうち最上面に位置する用紙Sを給送するものであり、例えば発泡ゴムなどの摩擦力の大きい材料により円柱状の形状で形成される。分離ローラ31は、その中心軸が、積載面21の幅方向Xにほぼ平行、すなわち、積載面21に沿いつつ用紙Sの給送方向Yに直交する方向に設定されている。また、この分離ローラ31は、その中心軸がホッパ2の上面側(積載面21側)に設定されると共に、その外周面がホッパ2の積載面21に対して高さ方向Zに沿って所定の間隔を有する位置に設定されている。用紙Sは、積載面21上において、給送方向Yに対してこの分離ローラ31より上流側に後端(給送方向上流側端部)が位置するように積載される。上述したホッパ2は、高さ方向Zに沿って上昇することでこの分離ローラ31に接近する一方、下降することでこの分離ローラ31から離間する。
【0027】
また、この分離ローラ31は、不図示の伝達ギヤやベルトを介して駆動手段としての駆動モータ31aに接続されており、中心軸を回転中心としてこの駆動モータ31aの回転駆動力により回転駆動する。分離ローラ31は、ピック方向、すなわち、外周面が積載面21上にて給送方向Yの下流側に向かう方向に回転駆動する。
【0028】
ブレーキローラ32は、分離ローラ31と長さがほぼ同じであり、円柱状の形状で形成される。ブレーキローラ32は、分離ローラ31と同様に、その中心軸が用紙Sの給送方向Yと水平に交差するように、すなわち、用紙Sの幅方向Xに沿うように設けられ、中心軸を回転軸線として回転可能に設けられる。ブレーキローラ32は、積載面21側にて、分離ローラ31と対向して設けられる。このブレーキローラ32は、中心軸が高さ方向Zに対して上述の分離ローラ31の中心軸とホッパ2の積載面21との間に設定される。ブレーキローラ32は、不図示の付勢手段により分離ローラ31側に付圧(付勢)されており、分離ローラ31の回転に従動して外周面が分離ローラ31との接触面にて給送方向Yの下流側に向かう方向に回転する。なお、この分離給送部3のブレーキローラ32は、不図示の付勢手段により分離ローラ31側に付圧を加える構成のかわりに、このブレーキローラ32をセパレータローラの回転駆動方向とは反対方向に回転駆動させることで、最上層の用紙Sに同伴された用紙Sを停止、分離する構成としてもよい。
【0029】
制御装置4は、マイクロコンピュータを中心として構成され、シート給送装置1の各部を制御するものである。この制御装置4は、上述の駆動モータ31aと共に、例えば、積載面21上にて、分離ローラ31より上流側に後端が位置する用紙Sの有無を検知するエンプティセンサや積載面21上に積載されている用紙Sの積載量を検出する用紙センサが電気的に接続されている。エンプティセンサや用紙センサは、例えば、赤外線等を用いたフォトセンサなどを用いることができ、用紙Sの検知結果信号をこの制御装置4に送信することができる。
【0030】
上記のように構成されるシート給送装置1では、分離給送部3の分離ローラ31がピック方向に回転駆動することで、分離ローラ31より上流側の積載面21に積載されている用紙Sのうち最上層の用紙Sを分離ローラ31の外周面で受け取り、給送方向下流側(画像読取装置の搬送部側)に給送する。このとき、分離ローラ31により最上層の用紙Sを給送する際、この最上層の用紙Sの給送に伴って用紙S同士の摩擦力によって最上層の用紙S以外の用紙S(例えば、最上層の用紙Sの下に位置する用紙S)も給送方向下流側に向かうことがあるが、分離給送部3のブレーキローラ32により、最上層の用紙Sに同伴された用紙Sは分離される。
【0031】
すなわち、最上層の用紙Sは、その先端が分離ローラ31とブレーキローラ32との間に保持される一方で、最上層の用紙Sに同伴された用紙Sは、ブレーキローラ32に接触し、ブレーキローラ32により給送方向下流側への移動が規制され、ブレーキローラ32の上流側で停止する。この状態で、分離ローラ31とブレーキローラ32との間にその先端部が保持された用紙Sが分離ローラ31の回転駆動に伴って下流側へと給送されると、次に、ブレーキローラ32の上流側で停止していた用紙Sの先端が分離ローラ31とブレーキローラ32との間に保持され、分離ローラ31の回転駆動に伴って下流側へと給送される。そして、ホッパ2が積載面21上に積載されている用紙Sの積載量に応じて高さ方向Zに沿って順次上昇することで、分離給送部3にて、分離ローラ31とブレーキローラ32とにより、最上層の用紙Sに同伴された用紙Sが分離され、積載面21上の用紙Sのうちの最上層の用紙Sが順次1枚ずつ搬送部(不図示)に給紙される。
【0032】
ところで、このようなシート給送装置1では、用紙Sの給送中に給送異常が発生すると用紙Sが折れ曲がるなどして、この用紙Sが破損するおそれがある。このため、給送中に用紙Sが回転あるいは変形することで発生するいわゆる累積スキューや用紙Sの浮き上がりや詰まりによって発生するいわゆるジャムなどの用紙Sの給送中に発生する複数種類の給送異常をより簡易な構成で検出することが望まれている。
【0033】
そこで、本実施例のシート給送装置1は、給送される用紙Sに接触して転動する転動手段としての追従ローラ6と共に用紙Sに追従可能な支持手段としてのローラ支持機構7に作用する3方向の加速度に基づいて用紙Sの給送異常を検出することで、簡易な構成により複数種類の給送異常を用紙Sの破損前に事前に検出している。ここで、シート給送装置1において検出する給紙異常とは、用紙Sの破損前の給紙異常を含むものであり、これにより、用紙Sの破損を未然に防止可能となる。
【0034】
具体的には、シート給送装置1は、図1、図2、図3に示すように、加速度検出部5を備えると共に、制御装置4に、検出手段としての異常検出部44と、計数部45と、給送停止手段としての給送停止部46を備えている。加速度検出部5は、用紙Sに接触して相対的に転動する追従ローラ6と、この追従ローラ6を支持する支持手段としてのローラ支持機構7とを備え、さらにこのローラ支持機構7に作用する加速度を計測する加速度計測手段としての3軸加速度センサ8を備える。
【0035】
追従ローラ6は、円柱状に形成され転動中心が幅方向Xに沿って設定される。追従ローラ6は、高さ方向Zに対して分離給送部3の分離ローラ31とほぼ同じ高さに設けられる一方、給送方向Yに対してこの分離ローラ31より上流側に設けられる。したがって、追従ローラ6は、分離給送部3により用紙Sが給送されると、分離給送部3の上流側にて、給送される最上層の用紙Sに幅方向Xに沿った線上で線接触しながら転動する。また、この追従ローラ6は、上述した分離ローラ31、ブレーキローラ32と共に適正に給送される用紙Sの幅方向Xに沿った中心線上に設けられている。また、この追従ローラ6、分離ローラ31及びブレーキローラ32は、その中心軸線が互いにほぼ平行に設けられている。
【0036】
ローラ支持機構7は、図4−1乃至図4−3に示すように、追従ローラ6を分離給送部3による給送方向Yの所定位置で支持するものである。ローラ支持機構7は、追従ローラ6を回転可能に支持すると共に、少なくとも高さ方向Z及びこの高さ方向Zに沿った軸周りに用紙Sに追従可能である。ローラ支持機構7は、ローラ支持軸71と、ブラケット72と、ローラ支持部73と、ローラ側連結部74と、支持部側連結部75とを備える。
【0037】
ローラ支持軸71は、幅方向Xに沿って設けられ、追従ローラ6の転動中心をなす。ブラケット72は、下面(用紙Sが位置する側の面)が開口した略コの字型に形成され内側にローラ支持軸71の両端が固定されている。したがって、追従ローラ6は、ローラ支持軸71を介してブラケット72に回転可能に軸支されている。また、ブラケット72は、上面(用紙Sが位置する面とは反対側の面)にローラ側連結部74が設けられる。このローラ側連結部74は、ブラケット72の上面に立設される一対の連結プレート74a、74bにより構成される。連結プレート74a、74bは、幅方向Xに沿って延設されると共に、連結プレート74aが給送方向Yの下流側に設けられ、連結プレート74bが給送方向Yの上流側に設けられる。
【0038】
ローラ支持部73は、給送方向Yに沿って平行に一対で設けられる。一対のローラ支持部73は、互いに幅方向Xに所定の間隔をあけて設けられる。このローラ支持部73は、追従ローラ6を初期位置に復帰するために、例えば、所定の弾性を有する板バネのような部材で構成される。そして、ローラ支持部73は、給送方向Yの上流側に位置する基端部に基端支持軸76が設けられる一方、給送方向Yの下流側に位置する先端部に先端支持軸77が設けられる。基端支持軸76及び先端支持軸77は、共に幅方向Xに平行に設けられる。ローラ支持部73は、先端部に先端支持軸77を介して上述の支持部側連結部75が回転自在に設けられている。そして、この支持部側連結部75と上述のローラ側連結部74とは、給送方向軸78を介して相対的に回転自在に連結されている。給送方向軸78は、給送方向Yに平行に設けられる。この給送方向軸78と支持部側連結部75とは、給送方向Yに対して連結プレート74aと連結プレート74bとの間に設けられる。また、ローラ支持部73は、基端部が基端支持軸76を介してシート給送装置1のケーシング(不図示)などに軸支されている。
【0039】
したがって、ローラ支持機構7全体は、追従ローラ6と共に基端支持軸76周り、すなわち、幅方向X軸周りに回転することができる。また、ローラ支持機構7全体は、ローラ支持部73の弾性力に対する反力が作用することで基端部を中心として、追従ローラ6と共に高さ方向Z軸周りに回転することができる。このとき、ブラケット72に支持されている追従ローラ6は、ローラ支持軸71周りに回転することができると共に、このブラケット72は、追従ローラ6と共に給送方向軸78周り、すなわち、給送方向Y軸周りに回転することができる。この結果、ローラ支持機構7は、追従ローラ6を給送方向Yの所定位置で支持すると共に、追従ローラ6と共に分離給送部3により給送される用紙Sに追従可能である。つまり、追従ローラ6及びローラ支持機構7は、分離給送部3により給送される用紙Sの挙動に変化があった際に、この用紙Sの挙動に追従して移動(回転)することができる。
【0040】
3軸加速度センサ8は、種々の形式のセンサを用いることができ、例えば、静電容量型の加速度センサや圧電式加速度センサ等を用いることができる。ここでは、静電容量型の加速度センサとして、アナログデバイセス社の完全3軸加速度センサを用いる。この3軸加速度センサ8は、重力の静的加速度の他、動き、衝撃、振動による動的加速度も計測することができる。すなわち、3軸加速度センサ8は、この3軸加速度センサ8自体にかかる加速度を計測し、重力もまた加速度として捉えられ、3軸加速度センサ8が取り付けられた物体の傾きを検出することも可能である。この3軸加速度センサ8は、例えば、1Gから3Gの範囲で加速度を計測することができる。
【0041】
そして、この3軸加速度センサ8は、ローラ支持機構7の連結プレート74aに設けられており、ローラ支持機構7に作用する3方向、すなわち、幅方向X、給送方向Y、高さ方向Zの加速度G、G、Gを同期して計測可能である。また、3軸加速度センサ8による加速度G、G、Gのサンプリング間隔(1データの取得間隔)は、用紙Sに対する追従ローラ6及びローラ支持機構7の追従速度、言い換えれば、給送される用紙Sの挙動に変化があった際の追従ローラ6及びローラ支持機構7の追従時間に対して十分に短い間隔に設定され、例えば0.1〜0.25秒に設定される。これにより、分離給送部3により給送される用紙Sの挙動に変化があった際に、この用紙Sの挙動に追従して移動(回転)する追従ローラ6及びローラ支持機構7に作用する加速度を3方向の加速度成分、すなわち、加速度G、G、Gに分解して確実に検出することができる。また言い換えれば、この3軸加速度センサ8は、追従ローラ6及びローラ支持機構7の挙動を検出することで、用紙Sの挙動を間接的に検出することになる。そして、3軸加速度センサ8は、制御装置4に電気的に接続されており、計測した加速度G、G、Gをこの制御装置4に送信することができる。
【0042】
ここで、このシート給送装置1の制御装置4は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータであり、図1に示すように、処理部41と、記憶部42と、入出力部43とを備える。処理部41と記憶部42とは、互いに接続されている。さらに、制御装置4は、入出力部43を介して上述の駆動モータ31a、3軸加速度センサ8が処理部41に接続されている。
【0043】
記憶部42は、本発明の給送異常検出方法を実現するコンピュータソフトウェアプログラムを格納している。ここで、記憶部42は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
【0044】
なお、上記コンピュータソフトウェアプログラムは、コンピュータシステムにすでに記録されているコンピュータソフトウェアプログラムとの組み合わせによって、本発明の給送異常検出方法を実現できるものであってもよい。また、処理部41の機能を実現するための上記コンピュータソフトウェアプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたコンピュータソフトウェアプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより本発明の給送異常検出方法を実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器などのハードウェアを含むものとする。また、記憶部42は、処理部41に内蔵されるものであっても、他の装置(例えばデータベースサーバ)内にあってもよい。
【0045】
処理部41は、メモリ(図示省略)及びCPU(図示省略)により構成されている。給送異常検出処理を実行する際には、処理部41は、予め設定されている本発明の給送異常検出方法の手順に基づいて前記コンピュータソフトウェアプログラムを当該処理部41に組み込まれたメモリに読み込んで演算する。その際に処理部41は、適宜記憶部42へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、この処理部41は、前記コンピュータソフトウェアプログラムの代わりに専用のハードウェアにより実現されるものであってもよい。
【0046】
そして、本実施例の制御装置4では、処理部41に、異常検出部44と、計数部45と、給送停止部46を備えている。
【0047】
異常検出部44は、3軸加速度センサ8により計測される3方向の加速度G、G、Gに基づいて用紙Sの給送異常を検出する。ここでは、異常検出部44は、給送方向Yの加速度G又は幅方向Xの加速度Gの増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合に、用紙Sの給送異常としてこの用紙Sのスキュー(累積スキュー)を検出する。
【0048】
すなわち、例えば、図2に示すように、分離給送部3による用紙Sの給送が正常な給送である場合、ローラ支持機構7に支持されている追従ローラ6は、給送方向Yに沿って適正に給送される用紙Sに接触しながら転動し、給送方向Yに対して同じ位置で空転している。つまり、用紙Sが移動する方向は給送方向Yのみであるが、追従ローラ6がローラ支持機構7により給送方向Yの所定位置で支持されていることから、追従ローラ6は、当該所定位置に留まりながら空転を続ける。このとき、3軸加速度センサ8は、追従ローラ6自体に直接設けられるのではなく、ローラ支持機構7に設けられていることから、この3軸加速度センサ8が追従ローラ6と共に一体回転することはない。この結果、3軸加速度センサ8にはどの方向にも加速度は作用せず、したがって、この状態では加速度G、G、Gすべての計測値で変化量は検出されず、すなわち、加速度G、G、Gはゼロである。
【0049】
そして、例えば、図5に示すように、正常に送られていた用紙Sが給送過程で斜め方向にずれていく場合、分離給送部3により給送される用紙Sに累積スキューが発生することで用紙Sの挙動に変化が生じる。すると、用紙Sに幅方向Xに沿った線上で線接触する追従ローラ6及びこの追従ローラ6を支持しているローラ支持機構7に対して高さ方向Z軸周りの回転モーメントが作用する。そして、この回転モーメントがローラ支持部73の弾性力に対する反力として作用することで、ローラ支持機構7全体が追従ローラ6と共に用紙Sに追従しローラ支持部73の基端部を中心として、高さ方向Z軸周りに回転する。このとき、高さ方向Z軸周りの回転に伴って3軸加速度センサ8に作用する加速度が幅方向Xの加速度成分としての加速度Gと給送方向Yの加速度成分としての加速度Gとに分解されて計測される。この結果、異常検出部44は、給送方向Yの加速度G又は幅方向Xの加速度G、あるいは両方に基づいて用紙Sの給送異常としてこの用紙Sのスキュー(累積スキュー)を検出することができる。
【0050】
また、この異常検出部44は、高さ方向Zの加速度の増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合に、用紙Sの給送異常としてこの用紙Sのジャムを検出する。ここで、異常検出部44によりジャムを検出するという場合、用紙Sの破損を未然に防ぐため用紙Sのジャムの発生を事前に検出(推測)することを含む概念である。すなわち、例えば、図6に示すように、正常に送られていた用紙Sが給送過程で浮き上がっていく場合、分離給送部3により給送される用紙Sに浮き上がりによるジャムが発生し始めると用紙Sの挙動に変化が生じる。すると、用紙Sに接触する追従ローラ6及びこの追従ローラ6を支持しているローラ支持機構7に対しても用紙Sの浮き上がりによる力が作用する。そして、この浮き上がりによる力が作用することで、ローラ支持機構7全体が追従ローラ6と共に用紙Sに追従して基端支持軸76周り、すなわち、幅方向X軸周りに回転する。このとき、基端支持軸76周り(幅方向X軸周り)の回転に伴って3軸加速度センサ8に作用する加速度が給送方向Yの加速度成分としての加速度Gと高さ方向Zの加速度成分としての加速度Gとに分解されて計測される。この結果、異常検出部44は、高さ方向Zの加速度Gに基づいて用紙Sの給送異常としてこの用紙Sのジャムの発生を事前に検出(推測)することができる。
【0051】
この結果、追従ローラ6及びローラ支持機構7の挙動を検出し用紙Sの挙動を間接的に検出することで、1つのセンサとして3軸加速度センサ8を設けるだけで、コンパクトで簡易な構成で複数種類の給送異常の状態を切り分けて検出することができる。
【0052】
ここで、上記の異常検出部44によるスキューの検出及びジャムの発生を事前に検出(推測)に際して、3軸加速度センサ8が検出した加速度の増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合にスキュー又はジャムを検出する構成としたのは、スキュー又はジャムの誤検出を防止するためである。すなわち、言い換えれば、3軸加速度センサ8の計測値の瞬間値ではなく、一定時間内の経時的な変化量に基づいて給送異常を検出することで、ノイズの影響を排除することができ、誤検出を防止することができる。またこれにより、より詳細な給送異常の状態を把握することもできる。上記所定期間は、スキュー、ジャムの検出感度に応じて適宜設定すればよい。
【0053】
なおここで、3軸加速度センサ8が検出した加速度の増加又は減少が継続した場合にスキューを検出及びジャムを推測(検出)する構成としたのは、例えば、幅方向Xにおいて、給送方向Y下流側に向かって左方に加速度が作用した場合と右方に加速度が作用した場合とでは、3軸加速度センサ8が計測する加速度の出力値の符号は正負が逆になる。すなわち、ここでは、加速度の増加又は減少が継続するという場合、例えば、幅方向Xにおいて、どちらか一方側に向かって継続的に加速度が作用し計測されている状態を示す。以下の説明では、特に断りのない限り、加速度の増加が継続した場合にスキュー又はジャムを検出するものとして説明するが、加速度の減少が継続した場合でもほぼ同様にスキュー又はジャムを検出することができる。
【0054】
本実施例では、上述のように、処理部41に計数部45が設けられている。計数部45は、3軸加速度センサ8が計測した3方向の加速度G、G、Gに基づいて、幅方向X軸成分、給送方向Y軸成分、高さ方向Z軸成分の各加速度の増加又は減少が継続した場合、すなわち、前回計測した加速度が増加し今回の計測した加速度も増加した場合、あるいは、前回計測した加速度が減少し今回の計測した加速度も減少した場合に各加速度のカウント値に「1」を加算する。そして、異常検出部44は、当該カウント値が予め設定される閾値以上になった場合、すなわち、加速度の増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合に上記のようにスキューやジャムを検出する。そして、給送停止部46は、異常検出部44の検出結果に応じて分離給送部3による用紙Sの給送を停止する。つまり、上述したようないずれのスキュー、ジャムの場合でも、そのまま用紙Sの給送を続けてしまうと、用紙Sの破損が発生するおそれがある。このため、給送停止部46は、異常検出部44が用紙Sの給送異常を検出した際に、駆動モータ31aを制御して分離ローラ31の駆動を停止することで、用紙Sの給送を停止する。これにより、用紙Sの破損を未然に防止することができる。
【0055】
次に、図7の流れ図を参照して、シート給送装置1による給送異常検出についてさらに具体的に説明する。まず、制御装置4は、現在が用紙Sの給送中か否かを判定する(S100)。現在が用紙Sの給送中でない場合(S100:No)、計数部45は、計数結果としての各方向の加速度に関するカウント値を全てクリアし、そのまま正常終了する。現在が用紙Sの給送中である場合(S100:Yes)、制御装置4は、所定のサンプリング間隔で3軸加速度センサ8が計測する3方向の加速度G、G、Gを取得し(S102)、取得した加速度G、G、Gを記憶部42の時間トレース用バッファに格納する(S104)。
【0056】
次に、制御装置4は、今回取得した加速度と前回取得した加速度とを比較し(S106)、計数部45は、高さ方向Zの加速度Gが増加(又は減少)しているか否かを判定する(S108)。高さ方向Zの加速度Gが増加(又は減少)している場合(S108:Yes)、計数部45は、加速度Gに関するカウント値に「1」を加算し、異常検出部44は、加算後のカウント値が予め設定される閾値以上になったか否かを判定することで加速度Gの増加(又は減少)が所定期間継続したか否かを判定する(S110)。加速度Gの増加が所定期間継続したと判定された場合(S110:Yes)、異常検出部44は、用紙Sの浮き上がりによるジャムの発生を事前に検出(推測)し、制御装置4は、エラー処理として利用者に異常を報知すると共に、給送停止部46により用紙Sの給送を停止し(S112)、異常終了する。
【0057】
高さ方向Zの加速度Gが増加(又は減少)していないと判定された場合(S108:No)及び加速度Gの増加(又は減少)が所定期間継続していないと判定された場合(S110:No)は、計数部45は、給送方向Yの加速度Gが増加(又は減少)しているか否かを判定する(S114)。給送方向Yの加速度Gが増加(又は減少)している場合(S114:Yes)、計数部45は、加速度Gに関するカウント値に「1」を加算し、異常検出部44は、加算後のカウント値が予め設定される閾値以上になったか否かを判定することで加速度Gの増加が所定期間継続したか否かを判定する(S116)。加速度Gの増加が所定期間継続したと判定された場合(S116:Yes)、異常検出部44は、用紙Sの傾きによるスキューを検出し、制御装置4は、エラー処理として利用者に異常を報知すると共に、給送停止部46により用紙Sの給送を停止し(S118)、異常終了する。
【0058】
給送方向Yの加速度Gが増加(又は減少)していないと判定された場合(S114:No)及び加速度Gの増加(又は減少)が所定期間継続していないと判定された場合(S116:No)は、計数部45は、幅方向Xの加速度Gが増加(又は減少)しているか否かを判定する(S120)。幅方向Xの加速度Gが増加(又は減少)している場合(S120:Yes)、計数部45は、加速度Gに関するカウント値に「1」を加算し、異常検出部44は、加算後のカウント値が予め設定される閾値以上になったか否かを判定することで加速度Gの増加が所定期間継続したか否かを判定する(S122)。加速度Gの増加が所定期間継続したと判定された場合(S122:Yes)、異常検出部44は、用紙Sの傾きによるスキューを検出し、制御装置4は、エラー処理として利用者に異常を報知すると共に、給送停止部46により用紙Sの給送を停止し(S124)、異常終了する。幅方向Xの加速度Gが増加(又は減少)していないと判定された場合(S120:No)及び加速度Gの増加(又は減少)が所定期間継続していないと判定された場合(S122:No)は、S100に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
【0059】
以上で説明した本発明の実施例に係るシート給送装置1によれば、分離給送部3により給送されるシート状の用紙Sにこの用紙Sの幅方向Xに沿った線上で線接触して転動可能な追従ローラ6と、追従ローラ6を分離給送部3による給送方向Yの所定位置で支持し、この追従ローラ6と共に分離給送部3により給送される用紙Sに追従可能なローラ支持機構7と、ローラ支持機構7に作用する3方向の加速度を計測可能な3軸加速度センサ8と、3軸加速度センサ8により計測される3方向の加速度に基づいて用紙Sの給送異常を検出する異常検出部44を備える。
【0060】
したがって、追従ローラ6と共に用紙Sに追従可能なローラ支持機構7に作用する幅方向X、給送方向Y及び高さ方向Zの3方向の加速度G、G、Gに基づいて用紙Sの給送異常を検出することから、追従ローラ6及びローラ支持機構7の挙動を検出し用紙Sの挙動を間接的に検出することで、1つのセンサとして3軸加速度センサ8を設けるだけで、コンパクトで簡易な構成で複数種類の給送異常の状態を切り分けて検出することができる。
【0061】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るシート給送装置1によれば、3軸加速度センサ8は、給送方向Yと、この給送方向Yに水平に直交する幅方向Xと、この給送方向Y及び幅方向Xにそれぞれ直交する高さ方向Zの加速度を計測可能であり、ローラ支持機構7は、高さ方向Z及びこの高さ方向Zに沿った軸周りに追従可能である。したがって、正常に送られていた用紙Sに累積スキューが発生することで用紙Sの挙動に変化が生じ、追従ローラ6及びローラ支持機構7に対して高さ方向Z軸周りの回転モーメントが作用すると、ローラ支持機構7全体が追従ローラ6と共に高さ方向Z軸周りに回転することができる。そして、このとき、高さ方向Z軸周りの回転に伴って3軸加速度センサ8に作用する加速度が幅方向Xの加速度Gと給送方向Yの加速度Gとに分解されて計測されることから、この加速度Gx、加速度Gに基づいて用紙Sの給送異常として用紙Sのスキューを検出することができる。また、用紙Sに浮き上がりによるジャムが発生し始めることで用紙Sの挙動に変化が生じ、追従ローラ6及びローラ支持機構7に対して用紙Sの浮き上がりによる力が作用すると、ローラ支持機構7全体が追従ローラ6と共に高さ方向Zに沿って用紙Sに追従することができる。そして、このとき、高さ方向Zに沿った追従に伴って3軸加速度センサ8に作用する加速度が給送方向Yの加速度Gと高さ方向Zの速度Gとに分解されて計測されることから、この加速度Gに基づいて用紙Sの給送異常として用紙Sのジャムの発生を事前に検出することができる。
【0062】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るシート給送装置1によれば、異常検出部44は、給送方向Yの加速度G又は幅方向Xの加速度Gの増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合に、用紙Sの給送異常としてこの用紙Sのスキューを検出する。したがって、異常検出部44が加速度の増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合にスキューを検出することから、ノイズの影響を排除することができ、スキューの誤検出を防止することができる。
【0063】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るシート給送装置1によれば、異常検出部44は、高さ方向Zの加速度Gの増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合に、用紙Sの給送異常としてこの用紙Sのジャムを検出する。したがって、異常検出部44が加速度の増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合にジャムの発生を事前に検出することから、ノイズの影響を排除することができ、ジャムの誤検出を防止することができる。
【0064】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るシート給送装置1によれば、追従ローラ6は、円柱状に形成され転動中心が幅方向Xに沿って設定される。したがって、追従ローラ6が幅方向Xに沿った円柱状に形成されることから、この追従ローラ6は、分離給送部3により用紙Sが給送されると、用紙Sに幅方向Xに沿った線上で線接触しながら転動することができる。
【0065】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るシート給送装置1によれば、用紙Sが積載されるホッパ2を備え、分離給送部3は、ホッパ2に積載された用紙Sを1枚ずつ分離可能な分離ローラ31を有し、追従ローラ6は、給送方向Yに対して分離ローラ31より上流側に設けられる。したがって、追従ローラ6を給送方向Yに対して分離ローラ31より上流側に設けることから、用紙Sの挙動の変化があらわれ易い位置で、用紙Sに追従する追従ローラ6及びローラ支持機構7に作用する加速度を計測することができるので、より確実に用紙Sの給送異常を検出することができる。
【0066】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るシート給送装置1によれば、異常検出部44の検出結果に応じて分離給送部3による用紙Sの給送を停止する給送停止部46を備える。したがって、異常検出部44が用紙Sの給送異常を検出した際に給送停止部46が分離給送部3による用紙Sの給送を停止することから、用紙Sの破損を未然に防止することができる。
【0067】
なお、上述した本発明の実施例に係る媒体給送装置は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、本発明の媒体給送装置は、イメージスキャナ、複写機、ファクシミリ、文字認識装置等の画像読取装置に適用されるものとして説明したが、これに限らず、種々の装置の媒体給送装置に適用可能である。
【0068】
また、以上の説明では、転動手段は、円柱状に形成され用紙Sに幅方向Xに沿った線上で線接触して転動するものとして説明したが、高さ方向Z軸周りの回転モーメントが作用した際に高さ方向Z軸周りに回転する形状であればよく、例えば、円板状に形成された一対のディスクを回転軸で連結することで、幅方向Xに沿った複数点(2点)で用紙Sに接触する構成であってもよい。
【0069】
また、追従ローラ6を給送方向Yに対して積載面21に積層される用紙Sの下流側端部(先端部)よりも下流側に設けることで、用紙Sが予め斜めにセットされていた場合に発生するいわゆる先端スキューを検出することもできる。すなわち、この場合、用紙Sが予め斜めにセットされていた状態で給送が開始されると、円柱状に形成され用紙Sに幅方向Xに沿った線上で線接触する追従ローラ6がこの用紙Sに接触し始める時期は、幅方向Xに沿った位置に応じて時間差が生じる。このため、追従ローラ6の幅方向Xに沿った位置に応じて用紙Sとの間で生じる摩擦力の差に起因して、この追従ローラ6に高さ方向Z軸周りの回転モーメントが作用し、この結果、追従ローラ6は、高さ方向Z軸周りに回転する。そして、異常検出部はこのときに3軸加速度センサ8に作用する加速度に基づいて先端スキューを検出することができる。すなわち、1つの3軸加速度センサ8によって先端スキューを検出することもできる。
【0070】
また、以上の説明では異常検出部44によるスキュー及びジャムの検出に際して、3軸加速度センサ8が検出した加速度の増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合にスキュー又はジャムの発生を事前に検出するものとして説明したが、3軸加速度センサ8が検出した加速度に対して閾値を設定し、単純にこの加速度が閾値を上回った場合にスキュー又はジャムを検出するようにしてもよい。
【0071】
また、異常検出部44は、3軸加速度センサ8が計測する3方向の加速度G、G、Gの組み合わせによって、用紙Sの給送異常状態をさらに詳細に判定するようにしてもよい。また、各方向の加速度検出値の変化を経時的に把握することで、より詳細な給送異常状態を判定することもできる。そして、以上の説明では、異常検出部44が用紙Sの給送異常を検出した際には給送停止部46が用紙Sの給送を停止するものとして説明したが、より詳細な給送異常状態に応じてエラー処理を適宜個別に設定してもよい。
【実施例2】
【0072】
図8−1は、本発明の実施例2に係るシート給送装置の加速度検出部の平面図、図8−2は、本発明の実施例2に係るシート給送装置の加速度検出部を給送方向下流側から見た正面図、図8−3は、本発明の実施例2に係るシート給送装置の加速度検出部の側面図である。実施例2に係る媒体給送装置は、実施例1に係る媒体給送装置と略同様の構成であるが、支持手段の構成が実施例1に係る媒体給送装置とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
【0073】
実施例2に係る媒体給送装としてのシート給送装置201は、加速度検出部205を備える。この加速度検出部205は、用紙Sに接触して相対的に転動する追従ローラ6と、この追従ローラ6を支持する支持手段としてのローラ支持機構207とを備え、さらにこのローラ支持機構207に作用する加速度を計測する加速度計測手段としての3軸加速度センサ8を備える。
【0074】
ローラ支持機構207は、追従ローラ6を分離給送部3による給送方向Yの所定位置で支持するものである。ローラ支持機構207は、追従ローラ6を回転可能に支持すると共に、少なくとも高さ方向Z及びこの高さ方向Zに沿った軸周りに用紙Sに追従可能である。ローラ支持機構207は、ローラ支持軸71と、ブラケット72と、ガイドシャフト支持部273と、ローラ側連結部74と、支持部側連結部275とを備える。
【0075】
ガイドシャフト支持部273は、支持板273aとガイドシャフト273bとを備える。支持板273aは、シート給送装置201のケーシング(不図示)などに固定されている。ガイドシャフト273bは、棒状に形成される。ガイドシャフト273bは、基端が支持板273aに固定されると共に、この支持板273aの下方に高さ方向Zに沿って延在して設けられる。支持部側連結部275は、高さ方向Zに沿って延在するガイド穴275aが形成される。ガイドシャフト273bの先端は、この支持部側連結部275のガイド穴275aに挿入される。支持部側連結部275は、ガイドシャフト273bの先端がガイド穴275aに挿入された状態で、このガイドシャフト273bに案内されながら高さ方向Zに移動可能である。そして、支持部側連結部275とローラ側連結部74とは、給送方向軸78を介して相対的に回転自在に連結されている。
【0076】
したがって、ローラ支持機構207全体は、追従ローラ6と共にガイドシャフト273bに沿って高さ方向Zに上下に移動することができる。このため、用紙Sに浮き上がりによるジャムが発生し始めることで用紙Sの挙動に変化が生じ、追従ローラ6及びローラ支持機構7に対して用紙Sの浮き上がりによる力が作用すると、ローラ支持機構7全体が追従ローラ6と共に高さ方向Zに沿って用紙Sに追従することができる。そして、用紙Sに累積スキューが発生することで用紙Sの挙動に変化が生じ、追従ローラ6及びローラ支持機構7に対して高さ方向Z軸周りの回転モーメントが作用すると、ローラ支持機構7全体が追従ローラ6と共にこのガイドシャフト273bを回転中心として回転することができる。
【0077】
以上で説明した本発明の実施例に係るシート給送装置201によれば、分離給送部3により給送されるシート状の用紙Sにこの用紙Sの幅方向Xに沿った線上で線接触して転動可能な追従ローラ6と、追従ローラ6を分離給送部3による給送方向Yの所定位置で支持し、この追従ローラ6と共に分離給送部3により給送される用紙Sに追従可能なローラ支持機構207と、ローラ支持機構207に作用する3方向の加速度を計測可能な3軸加速度センサ8と、3軸加速度センサ8により計測される3方向の加速度に基づいて用紙Sの給送異常を検出する異常検出部44を備える。
【0078】
したがって、追従ローラ6と共に用紙Sに追従可能なローラ支持機構207に作用する幅方向X、給送方向Y及び高さ方向Zの3方向の加速度G、G、Gに基づいて用紙Sの給送異常を検出することから、追従ローラ6及びローラ支持機構207の挙動を検出し用紙Sの挙動を間接的に検出することで、1つのセンサとして3軸加速度センサ8を設けるだけで、コンパクトで簡易な構成で複数種類の給送異常の状態を切り分けて検出することができる。
【実施例3】
【0079】
図9は、本発明の実施例3に係るシート給送装置の構成を示す平面図、図10は、本発明の実施例3に係るシート給送装置の構成を示す側面図である。実施例3に係る媒体給送装置は、実施例1に係る媒体給送装置と略同様の構成であるが、アーム部材を備える点で実施例1に係る媒体給送装置とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
【0080】
実施例3に係る媒体給送装置としてのシート給送装置301は、加速度検出部305を備える。この加速度検出部305は、用紙Sに接触して相対的に転動する追従ローラ6と、この追従ローラ6を支持する支持手段としてのローラ支持機構7と、3軸加速度センサ8を備える。そして、このシート給送装置301の加速度検出部305は、さらに、アーム部材309を備える。
【0081】
アーム部材309は、基端部がローラ支持機構7の連結プレート74aに設けられると共に、先端部に3軸加速度センサ8が設けられる。アーム部材309は、棒状に形成され、追従ローラ6及びローラ支持機構7が正常な位置にある際に給送方向Yに沿って下流側に延在するように設けられる。このため、延長したアーム部材309の先端に3軸加速度センサ8を取り付けることで、用紙Sの挙動が変化した際に追従する追従ローラ6及びローラ支持機構7の回転中心などから相対的に離間した位置に3軸加速度センサ8を設けることができる。このため、用紙Sの挙動が変化した際に、追従ローラ6、ローラ支持機構7と共に追従する3軸加速度センサ8の回転半径を相対的に長く確保し、移動量を増やすことができるので、用紙Sの小さな挙動がこのアーム部材309にて増幅されこの3軸加速度センサ8に作用する加速度を増幅することができる。この結果、用紙Sの小さな動きでも、3軸加速度センサ8にて大きな動きとして検出することができ、3軸加速度センサ8による計測値(出力値)を機械的な構成で増幅することができる。
【0082】
以上で説明した本発明の実施例に係るシート給送装置301によれば、分離給送部3により給送されるシート状の用紙Sにこの用紙Sの幅方向Xに沿った線上で線接触して転動可能な追従ローラ6と、追従ローラ6を分離給送部3による給送方向Yの所定位置で支持し、この追従ローラ6と共に分離給送部3により給送される用紙Sに追従可能なローラ支持機構7と、ローラ支持機構7に作用する3方向の加速度を計測可能な3軸加速度センサ8と、3軸加速度センサ8により計測される3方向の加速度に基づいて用紙Sの給送異常を検出する異常検出部44を備える。
【0083】
したがって、追従ローラ6と共に用紙Sに追従可能なローラ支持機構7に作用する幅方向X、給送方向Y及び高さ方向Zの3方向の加速度G、G、Gに基づいて用紙Sの給送異常を検出することから、追従ローラ6及びローラ支持機構7の挙動を検出し用紙Sの挙動を間接的に検出することで、1つのセンサとして3軸加速度センサ8を設けるだけで、コンパクトで簡易な構成で複数種類の給送異常の状態を切り分けて検出することができる。
【0084】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るシート給送装置301によれば、基端部がローラ支持機構7に設けられると共に、先端部に3軸加速度センサ8が設けられるアーム部材309を備える。したがって、アーム部材309の先端に3軸加速度センサ8を取り付けることで、用紙Sの小さな挙動がこのアーム部材309にて増幅されこの3軸加速度センサ8に作用する加速度を増幅することができる。この結果、用紙Sの小さな動きでも、3軸加速度センサ8にて大きな動きとして検出することができ、3軸加速度センサ8による計測値(出力値)を機械的な構成で増幅することができることから、用紙Sの給送異常をより正確に検出することができる。
【実施例4】
【0085】
図11は、本発明の実施例4に係るシート給送装置の構成を示す概略ブロック図、図12は、本発明の実施例4に係るシート給送装置の加速度検出部の斜視図、図13は、本発明の実施例4に係るシート給送装置における基準加速度波形(正常時波形)の一例を示す図、図14は、本発明の実施例4に係るシート給送装置における計測加速度波形(異常時時波形)の一例を示す図、図15は、本発明の実施例4に係るシート給送装置による給送異常検出方法の制御を示すフローチャートである。実施例4に係る媒体給送装置は、実施例2に係る媒体給送装置と略同様の構成であるが、振動付加手段を備える点で実施例2に係る媒体給送装置とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
【0086】
実施例4に係る媒体給送装置としてのシート給送装置401は、加速度検出部405を備える。この加速度検出部405は、用紙Sに接触して相対的に転動する転動手段としての追従ローラ406と、この追従ローラ406を支持する支持手段としてのローラ支持機構407と、3軸加速度センサ8を備える。そして、このシート給送装置401の加速度検出部405は、さらに、振動付加手段としての振動付加部410を備える。
【0087】
ローラ支持機構407は、図12に示すように、追従ローラ406を分離給送部3による給送方向Yの所定位置で支持するものである。ローラ支持機構407は、追従ローラ406を回転可能に支持すると共に、少なくとも高さ方向Z及びこの高さ方向Zに沿った軸周りに用紙Sに追従可能である。ローラ支持機構407は、ローラ支持軸471と、ガイドシャフト支持部473と、ローラ側支持シャフト479とを備える。
【0088】
ローラ支持軸471は、幅方向Xに沿って設けられ、追従ローラ406の転動中心をなす。ガイドシャフト支持部473は、支持板473aとガイドシャフト473bとを備える。支持板473aは、シート給送装置401のケーシング(不図示)などに固定されている。ガイドシャフト473bは、棒状に形成される。ガイドシャフト473bは、基端が支持板473aに固定されると共に、この支持板473aの下方に高さ方向Zに沿って延在して設けられる。ローラ側支持シャフト479は、一端部がローラ支持軸471の一端部に接続されこのローラ支持軸471と一体で形成される。ローラ側支持シャフト479は、他端部に高さ方向Zに沿って延在するガイド穴479aが形成される。ガイドシャフト473bの先端は、このローラ側支持シャフト479のガイド穴479aに挿入される。ローラ側支持シャフト479は、ガイドシャフト473bの先端がガイド穴479aに挿入された状態で、このガイドシャフト473bに案内されながら、ローラ支持軸471及び追従ローラ406と共に高さ方向Zに移動可能である。
【0089】
したがって、ローラ支持機構407全体は、追従ローラ406と共にガイドシャフト473bに沿って高さ方向Zに上下に移動することができる。このため、用紙Sに浮き上がりによるジャムが発生し始めることで用紙Sの挙動に変化が生じ、追従ローラ406及びローラ支持機構407に対して用紙Sの浮き上がりによる力が作用すると、ローラ支持機構407全体が追従ローラ406と共に高さ方向Zに沿って用紙Sに追従することができる。そして、用紙Sに累積スキューが発生することで用紙Sの挙動に変化が生じ、追従ローラ406及びローラ支持機構407に対して高さ方向Z軸周りの回転モーメントが作用すると、ローラ支持機構407全体が追従ローラ406と共にこのガイドシャフト473bを回転中心として回転することができる。
【0090】
振動付加部410は、3軸加速度センサ8に高さ方向Zに沿った周期的な振動を付加するものであり、偏心カム溝411と、摺動シャフト412と、摺動ガイド413とを備える。偏心カム溝411は、追従ローラ406の一端面に凹部状の溝として形成されている。偏心カム溝411は、中心がローラ支持軸471の中心軸線から所定間隔だけずれた位置に設定される円環状の溝であり、すなわち、追従ローラ406の転動中心に対して偏心して設けられる。摺動シャフト412は、棒状に形成され、一端部に突起部414が形成されている。摺動ガイド413は、シート給送装置401のケーシング(不図示)などに固定されている。摺動シャフト412は、突起部414が偏心カム溝411に挿入されると共に、他端部側がこの摺動ガイド413に挿入されることで、摺動ガイド413によって高さ方向Zに沿って往復運動可能に支持される。そして、摺動シャフト412は、他端部に3軸加速度センサ8が設けられている。
【0091】
したがって、追従ローラ406が給送される用紙Sに接触しながら転動することで、偏心カム溝411により摺動シャフト412の突起部414が案内され、これに伴って摺動シャフト412が高さ方向Zに沿って上下に往復運動する。これにより、この摺動シャフト412の端部に設けられた3軸加速度センサ8に高さ方向Zに沿った周期的な振動を付加することができる。この結果、3軸加速度センサ8から所定の周期性を有した加速度Gの計測値を取得することができる。すなわち、3軸加速度センサ8を積極的に高さ方向Zに沿って周期的に振動させることで、正常給送時には、給送速度に応じた安定した周期、位相、振幅を持った加速度Gの計測値を取得することができ、この結果、より詳細な用紙Sの給送状態を把握することが可能となる。
【0092】
具体的には、このシート給送装置401は、図11に示すように、処理部41に、さらに、波形生成手段としての波形生成部447と、比較手段としての比較部448とを備える。波形生成部447は、高さ方向Zの加速度Gの計測値に基づいて、高さ方向Zの計測加速度波形を生成する。ここで、計測加速度波形は、時間Tに対する実際に計測される加速度Gの波形である。これに対し、本実施例の記憶部42は、給送速度に応じた基準加速度波形を記憶している。この基準加速度波形は、分離給送部3による給送速度に応じた高さ方向Zの加速度波形の基準となる波形であり、例えば、紙詰まりなどにより追従ローラ406に回転変動が生じた場合、この基準加速度波形に対して計測加速度波形が一致しなくなる。すなわち、図13に例示する正常時波形のように周期的な波形をしめす基準加速度波形に対して、給送異常が発生した場合は、図14に例示する異常時波形のように非周期的な波形をしめしたり振幅に乱れが生じたりする。つまり、加速度Gの計測加速度波形の周期、振幅、位相などの複数のパラメータにより、より詳細な用紙Sの給送状態を把握することが可能となる。本実施例では、比較部448は、この基準加速度波形と計測加速度波形とを比較し、異常検出部44は、この比較部448による比較結果に基づいて用紙Sの給送異常を検出することができる。
【0093】
次に、図15のフローチャートを参照して、シート給送装置401による給送異常検出についてさらに具体的に説明する。まず、制御装置4は、現在が用紙Sの給送中か否かを判定する(S400)。現在が用紙Sの給送中でない場合(S400:No)、計数部45は、計数結果としての各方向の加速度に関するカウント値を全てクリアし、そのまま正常終了する。現在が用紙Sの給送中である場合(S400:Yes)、制御装置4は、記憶部42に給送速度に応じて複数記憶されている基準加速度波形から現在の給送速度に応じた基準加速度波形を選択する(S402)。
【0094】
次に、制御装置4は、所定のサンプリング間隔で3軸加速度センサ8が計測する3方向の加速度G、G、Gを取得し(S404)、取得した加速度G、G、Gを記憶部42の時間トレース用バッファに格納する(S406)。そして、制御装置4は、波形生成部447により高さ方向Zの加速度Gの計測値に基づいて、高さ方向Zの計測加速度波形を生成する(S408)。
【0095】
次に、制御装置4は、S402で選択した基準加速度波形とS408で生成した計測加速度波形とを比較部448により比較し、2つの波形の振幅が一致しないか否かを判定する(S410)。2つの波形の振幅が一致しないか否かは、例えば、2つの波形の振幅の差分が予め設定される振幅差分閾値以上であるか否かで判定することができる。2つの波形の振幅が一致しないと判定された場合(S410:Yes)、異常検出部44は、用紙Sの給送異常を検出し、制御装置4は、エラー処理として利用者に異常を報知すると共に、給送停止部46により用紙Sの給送を停止し(S412)、異常終了する。
【0096】
2つの波形の振幅が一致すると判定された場合(S410:No)、制御装置4は、S402で選択した基準加速度波形とS408で生成した計測加速度波形とを比較部448により比較し、計測加速度波形が基準加速度波形に対して周期遅れしているか否かを判定する(S414)。周期遅れしているか否かは、例えば、基準加速度波形に対する計測加速度波形の周期遅れが予め設定される周期遅れ閾値以上であるか否かで判定することができる。周期遅れしていると判定された場合(S414:Yes)、用紙Sの給送速度が低下したと推定できるため、異常検出部44は、用紙Sの紙詰まりによるジャムの発生を事前に検出(推測)し、制御装置4は、エラー処理として利用者に異常を報知すると共に、給送停止部46により用紙Sの給送を停止し(S416)、異常終了する。
【0097】
周期遅れしていないと判定された場合(S414:No)、制御装置4は、今回取得した加速度と前回取得した加速度とを比較し(S418)、計数部45は、給送方向Yの加速度Gが増加(又は減少)しているか否かを判定する(S420)。給送方向Yの加速度Gが増加(又は減少)している場合(S420:Yes)、計数部45は、加速度Gに関するカウント値に「1」を加算し、異常検出部44は、加算後のカウント値が予め設定される閾値以上になったか否かを判定することで加速度Gの増加が所定期間継続したか否かを判定する(S422)。加速度Gの増加が所定期間継続したと判定された場合(S422:Yes)、異常検出部44は、用紙Sの傾きによるスキューを検出し、制御装置4は、エラー処理として利用者に異常を報知すると共に、給送停止部46により用紙Sの給送を停止し(S424)、異常終了する。
【0098】
給送方向Yの加速度Gが増加(又は減少)していないと判定された場合(S420:No)及び加速度Gの増加(又は減少)が所定期間継続していないと判定された場合(S422:No)は、計数部45は、幅方向Xの加速度Gが増加(又は減少)しているか否かを判定する(S426)。幅方向Xの加速度Gが増加(又は減少)している場合(S426:Yes)、計数部45は、加速度Gに関するカウント値に「1」を加算し、異常検出部44は、加算後のカウント値が予め設定される閾値以上になったか否かを判定することで加速度Gの増加が所定期間継続したか否かを判定する(S428)。加速度Gの増加が所定期間継続したと判定された場合(S428:Yes)、異常検出部44は、用紙Sの傾きによるスキューを検出し、制御装置4は、エラー処理として利用者に異常を報知すると共に、給送停止部46により用紙Sの給送を停止し(S430)、異常終了する。幅方向Xの加速度Gが増加(又は減少)していないと判定された場合(S426:No)及び加速度Gの増加(又は減少)が所定期間継続していないと判定された場合(S428:No)は、S400に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
【0099】
以上で説明した本発明の実施例に係るシート給送装置401によれば、分離給送部3により給送されるシート状の用紙Sにこの用紙Sの幅方向Xに沿った線上で線接触して転動可能な追従ローラ406と、追従ローラ406を分離給送部3による給送方向Yの所定位置で支持し、この追従ローラ406と共に分離給送部3により給送される用紙Sに追従可能なローラ支持機構407と、ローラ支持機構407に作用する3方向の加速度を計測可能な3軸加速度センサ8と、3軸加速度センサ8により計測される3方向の加速度に基づいて用紙Sの給送異常を検出する異常検出部44を備える。
【0100】
したがって、追従ローラ406と共に用紙Sに追従可能なローラ支持機構407に作用する幅方向X、給送方向Y及び高さ方向Zの3方向の加速度G、G、Gに基づいて用紙Sの給送異常を検出することから、追従ローラ406及びローラ支持機構407の挙動を検出し用紙Sの挙動を間接的に検出することで、1つのセンサとして3軸加速度センサ8を設けるだけで、コンパクトで簡易な構成で複数種類の給送異常の状態を切り分けて検出することができる。
【0101】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るシート給送装置401によれば、3軸加速度センサ8に高さ方向Zに沿った周期的な振動を付加する振動付加部410と、高さ方向Zの加速度Gの計測値に基づいて、高さ方向Zの計測加速度波形を生成する波形生成部447と、分離給送部3による給送速度に応じた高さ方向Zの加速度波形の基準となる基準加速度波形を記憶する記憶部42と、計測加速度波形と基準加速度波形をと比較する比較部448とを備え、異常検出部44は、比較部448による比較結果に基づいて、用紙Sの給送異常を検出する。したがって、3軸加速度センサ8を積極的に高さ方向Zに沿って周期的に振動させることで、所定の周期、位相、振幅を持った加速度Gの計測値を取得することができ、この結果、加速度Gの計測加速度波形の周期、振幅、位相などの複数のパラメータに基づいて、より詳細な用紙Sの給送状態を把握することができる。
【0102】
なお、上述した本発明の実施例に係る媒体給送装置は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、振動付加手段は、偏心カム溝411と、摺動シャフト412と、摺動ガイド413とを備えるものとして説明したが、3軸加速度センサ8に高さ方向Zに沿った周期的な振動を付加するものであればこの構成に限らない。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上のように、本発明に係る媒体給送装置は、媒体の給送中に発生する複数種類の給送異常を簡易な構成で検出するものであり、種々の媒体給送装置に適用して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施例1に係るシート給送装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係るシート給送装置の構成を示す平面図である。
【図3】本発明の実施例1に係るシート給送装置の構成を示す側面図である。
【図4−1】本発明の実施例1に係るシート給送装置の加速度検出部の平面図である。
【図4−2】本発明の実施例1に係るシート給送装置の加速度検出部を給送方向下流側から見た正面図である。
【図4−3】本発明の実施例1に係るシート給送装置の加速度検出部の側面図ある。
【図5】本発明の実施例1に係るシート給送装置の動作を示す平面図である。
【図6】本発明の実施例1に係るシート給送装置の動作を示す側面図である。
【図7】本発明の実施例1に係るシート給送装置による給送異常検出方法の制御を示すフローチャートである。
【図8−1】本発明の実施例2に係るシート給送装置の加速度検出部の平面図である。
【図8−2】本発明の実施例2に係るシート給送装置の加速度検出部を給送方向下流側から見た正面図である。
【図8−3】本発明の実施例2に係るシート給送装置の加速度検出部の側面図である。
【図9】本発明の実施例3に係るシート給送装置の構成を示す平面図である。
【図10】本発明の実施例3に係るシート給送装置の構成を示す側面図ある。
【図11】本発明の実施例4に係るシート給送装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図12】本発明の実施例4に係るシート給送装置の加速度検出部の斜視図である。
【図13】本発明の実施例4に係るシート給送装置における基準加速度波形(正常時波形)の一例を示す図である。
【図14】本発明の実施例4に係るシート給送装置における計測加速度波形(異常時時波形)の一例を示す図である。
【図15】本発明の実施例4に係るシート給送装置による給送異常検出方法の制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0105】
1、201、301、401 シート給送装置(媒体給送装置)
2 ホッパ(積載手段)
3 分離給送部(給送手段)
4 制御装置
5、205、305、405 加速度検出部
6、406 追従ローラ(転動手段)
7、207、407 ローラ支持機構(支持手段)
8 3軸加速度センサ(加速度計測手段)
21 積載面
31 分離ローラ(分離手段)
31a 駆動モータ
32 ブレーキローラ
41 処理部
42 記憶部
44 異常検出部(検出手段)
45 計数部
46 給送停止部(給送停止手段)
309 アーム部材
410 振動付加部(振動付加手段)
447 波形生成部(波形生成手段)
448 比較部(比較手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給送手段により給送されるシート状の媒体に該媒体の幅方向に沿った複数点又は該幅方向に沿った線上で接触して転動可能な転動手段と、
前記転動手段を前記給送手段による給送方向の所定位置で支持し、該転動手段と共に前記給送手段により給送される前記媒体に追従可能な支持手段と、
前記支持手段に作用する3方向の加速度を計測可能な加速度計測手段と、
前記加速度計測手段により計測される前記3方向の加速度に基づいて前記媒体の給送異常を検出する検出手段を備えることを特徴とする、
媒体給送装置。
【請求項2】
前記加速度計測手段は、前記給送方向と、該給送方向に水平に直交する前記幅方向と、該給送方向及び該幅方向にそれぞれ直交する高さ方向の加速度を計測可能であり、
前記支持手段は、前記高さ方向及び該高さ方向に沿った軸周りに追従可能であることを特徴とする、
請求項1に記載の媒体給送装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記給送方向又は前記幅方向の加速度の増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合に、前記媒体の給送異常として該媒体のスキューを検出することを特徴とする、
請求項2に記載の媒体給送装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記高さ方向の加速度の増加又は減少が予め設定される所定期間継続した場合に、前記媒体の給送異常として該媒体のジャムを検出することを特徴とする、
請求項2又は請求項3に記載の媒体給送装置。
【請求項5】
前記加速度計測手段に高さ方向に沿った周期的な振動を付加する振動付加手段と、
前記高さ方向の加速度の計測値に基づいて、前記高さ方向の計測加速度波形を生成する波形生成手段と、
前記給送手段による給送速度に応じた前記高さ方向の加速度波形の基準となる基準加速度波形を記憶する記憶部と、
前記計測加速度波形と前記基準加速度波形とを比較する比較手段とを備え、
前記検出手段は、前記比較手段による比較結果に基づいて、前記媒体の給送異常を検出することを特徴とする、
請求項2又は請求項3に記載の媒体給送装置。
【請求項6】
前記転動手段は、円柱状に形成され転動中心が前記幅方向に沿って設定されることを特徴とする、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の媒体給送装置。
【請求項7】
基端部が前記支持手段に設けられると共に、先端部に前記加速度計測手段が設けられるアーム部材を備えることを特徴とする、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の媒体給送装置。
【請求項8】
前記媒体が積載される積載手段を備え、
前記給送手段は、前記積載手段に積載された前記媒体を1枚ずつ分離可能な分離手段を有し、
前記転動手段は、前記給送方向に対して前記分離手段より上流側に設けられることを特徴とする、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の媒体給送装置。
【請求項9】
前記検出手段の検出結果に応じて前記給送手段による前記媒体の給送を停止する給送停止手段を備えることを特徴とする、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の媒体給送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図4−3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図8−3】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−12959(P2009−12959A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178953(P2007−178953)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000136136)株式会社PFU (354)
【Fターム(参考)】