説明

媒体記録装置

【課題】牛肉商品のトレーサビリティ情報を容易に取得できる問合せコードを生成する。
【解決手段】牛肉商品の加工前の部分肉61には、各種の情報を示す部分肉ラベル3が貼付されている。この部分肉ラベル3には、一部にメーカコードと、個体識別番号とを含む食肉標準物流バーコードが記載されている。検品装置1は、食肉標準物流バーコードをバーコードリーダで読み取り、そのコード内容からメーカコードと個体識別番号とを抽出する。そして、メーカコードと個体識別番号とを結合した複合コードを問合せコードとして生成し、牛肉商品に付随させる継承ラベル4に印刷する。さらに、問合せコードは牛肉商品の値付ラベル5に印刷される。この問合せコードを、所定のネットワークシステムに用いることで、容易にトレーサビリティ情報を取得できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品のトレーサビリティ情報を提供するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
牛肉商品の安全性に対する信頼確保やBSE(牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病)のまん延防止などを目的とした「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別処置法(いわゆる、牛肉トレーサビリティ法)」の施行を受け、国産の牛肉商品に関しては、個体識別番号によって一元的に牛の個体を管理し、生産履歴などのトレーサビリティ情報を消費者に提供するトレーサビリティシステムが確立されている。
【0003】
このトレーサビリティシステムでは、牛肉商品を購入する消費者に対して、その牛肉商品の加工元となった牛の個体識別番号が、牛肉商品に付されたラベルなどにより提供される。消費者は、家庭にあるパーソナルコンピュータなどの通信端末を用いて、インターネット上の所定のウェブサイト(家畜改良センターのサイト)にアクセスし、その個体識別番号を入力することにより、当該牛肉商品の材料となった牛個体等に係る各種情報を取得することができるようになっている。
【0004】
なお、トレーサビリティシステムに係る先行技術文献としては、以下のようなものがある。
【0005】
【特許文献1】特許第3532901号公報
【特許文献2】特開2004−30016号公報
【特許文献3】特開2004−139475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年の消費者の牛肉商品に対する安全衛生意識の高まりを受け、国産の牛肉商品のみならず、外国産の牛肉商品に関しても、トレーサビリティシステムを確立するように強く要望がなされている。しかしながら、牛肉トレーサビリティ法は国産の牛肉商品のみを対象としているため、外国産の牛肉商品については、その部分肉を製造する製造メーカなどが、個別にトレーサビリティ情報を提供するウェブサイト(情報提供サイト)を構築せざるを得ない状況にある。
【0007】
このように製造メーカごとに情報提供サイトが構築されると、消費者はある牛肉商品のトレーサビリティ情報を入手するためには、その牛肉商品の材料としての部分肉を製造した製造メーカを牛肉商品ごとに各々特定しなければならない。しかしながら、部分肉の製造メーカを示す情報は通常は消費者に提供されないため、一般の消費者が製造メーカを特定するのは非常に困難である。また、製造メーカを特定するといった煩雑な作業が必要であることは、トレーサビリティ情報を消費者へ簡便に提供するというトレーサビリティシステムの基本趣旨にも反することになる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、繁雑な作業を伴うことなく商品のトレーサビリティ情報を容易に取得するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、商品に係る情報を、当該商品に付随させる商品用記録媒体に記録する媒体記録装置であって、ネットワークを介してトレーサビリティ情報を提供する複数の情報提供サイトを識別するためのサイト識別コードと、前記トレーサビリティ情報の管理単位ごとに前記商品に対して割り当てられる情報識別コードとを含む複合コードを生成する生成手段と、生成された前記複合コードを、前記商品用記録媒体に記録する記録手段と、を備えている。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の媒体記録装置において、前記商品は、流通過程を経た材料商品から加工されるものであり、前記流通過程において前記材料商品に付随された物流用記録媒体から、前記物流用記録媒体に記録された少なくとも一つの物流用コードを取得する取得手段と、前記少なくとも一つの物流用コードから、前記情報識別コードを抽出する手段と、をさらに備えている。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の媒体記録装置において、前記少なくとも一つの物流用コードから、前記サイト識別コードを抽出する手段、をさらに備えている。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項2または3に記載の媒体記録装置において、前記商品は、牛肉商品であり、前記情報識別コードは、前記牛肉商品の材料としての牛の個体を識別するための個体識別番号である。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項4に記載の媒体記録装置において、前記物流用記録媒体は、前記材料商品としての部分肉に付随された部分肉ラベルであり、前記物流用コードは、前記部分肉ラベルに印刷された食肉標準物流バーコードである。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項5に記載の媒体記録装置において、前記サイト識別コードは、前記部分肉を製造するメーカを識別するためのメーカコードである。
【0015】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の媒体記録装置において、前記記録手段は、前記商品用記録媒体としてのラベルに前記複合コードを印刷する印刷手段である。
【0016】
また、請求項8の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の媒体記録装置において、前記記録手段は、前記商品用記録媒体としての電磁的な記録素子に前記複合コードをデジタルデータとして記録する手段である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1ないし8の発明によれば、所定のネットワークシステムに用いることで、繁雑な作業を伴うことなく商品のトレーサビリティ情報を容易に取得可能な複合コードを生成して、商品に付随させることができる。
【0018】
また、特に請求項2の発明によれば、ユーザ操作によるコードの入力を行わなくとも情報識別コードを取得でき、複合コードを容易に生成できる。
【0019】
また、特に請求項3の発明によれば、ユーザ操作によるコードの入力を伴うことなく、複合コードを生成できる。
【0020】
また、特に請求項4の発明によれば、牛の個体に係るトレーサビリティ情報を容易に取得でき、BSEなどの問題のない安全な牛の個体から加工された牛肉商品であるかを確認できる。
【0021】
また、特に請求項5の発明によれば、業界標準として使用される食肉標準物流バーコードから、複合コードを容易に生成できる。
【0022】
また、特に請求項6の発明によれば、メーカごとに提供される情報提供サイトから、トレーサビリティ情報を容易に取得できる。
【0023】
また、特に請求項7の発明によれば、複合コードを低コストに記録できる。
【0024】
また、特に請求項8の発明によれば、複合コードをデジタルデータで記録できるため、複合コードを取り扱う他の装置において複合コードを容易かつ正確に取得できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書では、「トレーサビリティ」という用語を「材料個体、生産履歴、流通履歴、及び、加工履歴などの食品に関する情報を事後的に追跡できること」の意として用いる。また、トレーサビリティにおいて扱われる「材料個体、生産履歴、流通履歴、及び、加工履歴などの食品に関する情報」を「トレーサビリティ情報」という。
【0026】
<1.牛肉商品の取扱い>
本発明の実施の形態に係る媒体記録装置の具体的な構成及び動作を説明する前に、まず、媒体記録装置が使用されるスーパーマーケットなどの小売店舗における牛肉商品の取り扱いについて簡単に説明する。図1は、店舗において牛肉商品を取り扱う処理の入荷から販売までのおおまかな流れを示す図である。また、図2は、この処理における牛肉商品の形態の遷移を示す図である。
【0027】
牛肉商品は、カタ、ヒレ、サーロインなど生牛の各部位に相当する部分肉(ブロック肉)61として流通過程を経て入荷される。部分肉が入荷されるとまず、検品処理によって、発注データと入荷された部分肉61とが一致するかどうかが検査される(ステップS1)。次に、部分肉61は、薄切り肉や角切り肉など種々の形態の精肉62に加工される(ステップS2)。加工された精肉62は、販売用のトレー63などに載せられて中間体商品64とされる。この中間体商品64は、搬送用の台車69等に載置される。
【0028】
次に、中間体商品64は、値付け処理により、計量及びフィルム包装されるとともに、その重量に応じた売価等を示す値付ラベルが貼付され、販売に供するための精肉パック65とされる(ステップS3)。この精肉パック65は店舗の販売エリアに陳列され(ステップS4)、その後、消費者となる顧客が購入を希望する精肉パック65については、その売価の精算がなされて顧客に販売されることになる(ステップS5)。
【0029】
以上が牛肉商品の簡単な処理の流れであるが、これらの処理では、適宜、牛肉商品の加工元となった牛個体の個体識別番号を、牛肉商品に付随させるラベルに記録するラベル記録装置(ラベルを記録媒体とする媒体記録装置)を含む商品処理システムが利用される。具体的には、検品処理(ステップS1)には検品装置が使用され、値付け処理(ステップS3)には計量値付装置が使用される。なお、ここにいう「牛肉商品に付随させるラベル」とは、牛肉商品に直接貼付するラベルに限定されるものではなく、牛肉商品に関連して準備され、貼付以外の方法で牛肉商品に対応付けられるラベルも含む。
【0030】
<2.装置構成>
以下、商品処理システムに含まれるこれらの検品装置及び計量値付装置のそれぞれの構成について説明する。
【0031】
図3は、検品処理(ステップS1)に使用される検品装置1の構成を機能ブロックにて示す図である。検品装置1は、装置全体を制御する制御部10と、各種情報の表示を行う表示部15と、ユーザの操作や入力を受け付ける入力部16と、バーコードを読み取るバーコードリーダ17と、ラベルを印刷するラベル印刷部18とを備えて構成され、これらはそれぞれバスライン101に接続される。
【0032】
制御部10は、各種演算処理を行うCPU11と、プログラム等を記憶するROM12と、演算処理の作業領域となるRAM13と、各種データを記憶する不揮発性メモリであるバッテリーバックアップされたSRAM14とを備えている。制御部10は、装置各部の制御機能や各種データの処理機能を有するが、これらの機能は、ROM12内のファームウェアとしてのプログラムに従ってCPU11が演算処理を行なうことで実現される。
【0033】
また、図4は、値付け処理(ステップS3)に使用される計量値付装置2の構成を機能ブロックにて示す図である。計量値付装置2は、装置全体を制御する制御部20と、各種情報の表示を行う表示部25と、ユーザの操作や入力を受け付ける入力部26と、バーコードを読み取るバーコードリーダ27と、商品の重量を計量する計量部211と、商品をラップフィルムで包装する包装部212と、値付ラベルを印刷して商品に貼付するラベル処理部28とを備えて構成され、これらはそれぞれバスライン201に接続される。
【0034】
制御部20は、各種演算処理を行うCPU21と、プログラム等を記憶するROM22と、演算処理の作業領域となるRAM23と、各種データを記憶する不揮発性メモリであるバッテリーバックアップされたSRAM24とを備えている。制御部20は、装置各部の制御機能や各種データの処理機能を有するが、これらの機能は、ROM22内のファームウェアとしてのプログラムに従ってCPU21が演算処理を行なうことで実現される。
【0035】
<3.問合せコード>
本実施の形態の店舗においては、販売に供される精肉パック65に、その材料としての牛が国産であるか外国産であるかを問わず、牛の個体を識別するための個体識別番号が付与されるようになっている。具体的には、個体識別番号と、部分肉61の製造メーカのメーカコードとを含む複合コードが精肉パック65に付与される。この複合コードは、トレーサビリティ情報を取得する際の照会情報として利用されるため(詳細は後述)、「問合せコード」と呼ばれる。この問合せコードの精肉パック65への付与までの過程において、検品装置1及び計量値付装置2が利用される。以下、図5を参照して、この過程について説明する。
【0036】
前述したように牛肉商品の加工前の材料商品は、部分肉61である。部分肉61には、店舗への入荷時点において、物流用記録媒体としての部分肉ラベル3が貼付されている。この部分肉ラベル3は、部分肉61の流通過程において、当該部分肉61に係る各種の情報を示すものである。問合せコードは、部分肉ラベル3の記載内容に基づいて生成される。
【0037】
図6は、部分肉ラベル3の一例を示す図である。図6に示すように、部分肉ラベル3には、部分肉61に係る原産地、品名、品質保持期限、加工年月日などの各種情報を示す文字列とともに、2つのバーコード31,32が印刷されている。これら2つのバーコード31,32は、部分肉61の流通過程において業界標準に使用される「食肉標準物流バーコード」であり、一方が「基本バーコード」31、他方が「補助バーコード」32である。
【0038】
食肉標準物流バーコードのバーコード体系は、国際標準である「UCC/EAN−128」形式に準拠している。この「UCC/EAN−128」形式のバーコードは、アプリケーション識別子3iと、データコードとで構成される。アプリケーション識別子3iは、バーコードの下部の数字においてはかっこ書で示される。
【0039】
アプリケーション識別子3iは、データ項目を示しており、そのデータ項目に対応するデータ内容を示す所定の桁数のデータコードがその後に続くことが予め定められている。例えば、「(11)050628」とあった場合は、アプリケーション識別子3iである「11」がデータ項目としての「加工年月日」を示し、その後に続く6桁のデータコード「050628」がそのデータ項目の具体的なデータ内容「2005年6月28日」となる。つまり、この場合は、「加工年月日は2005年6月28日」であることが示されることになる。このような方式によって、バーコード全体の桁数や配置順序を定めなくとも、アプリケーション識別子3iに基づいて一つのバーコードから、各種データ項目の具体的なデータ内容が認識できるようになっている。
【0040】
食肉標準物流バーコードの基本バーコード31には、部分肉61を製造した製造メーカを識別するためのメーカコードが含まれている。具体的には、アプリケーション識別子3iとしての「01」の後のデータコードの4桁目から8桁目までの5桁がメーカコードC1である。一方、食肉標準物流バーコードの補助バーコード32には、部分肉61の加工元となった牛の個体に係る個体識別番号が含まれている。具体的には、アプリケーション識別子3iとしての「251」の後のデータコード10桁が個体識別番号C2である。部分肉61の流通過程においては、この補助バーコード32によって個体識別番号との対応づけがなされることになる。
【0041】
図5に戻り、検品処理(ステップS1)においては、部分肉ラベル3に印刷された基本バーコード31及び補助バーコード32の双方が、検品装置1のバーコードリーダ17により読み取られる。これにより、これらのコード内容が検品装置1に取得され、RAM13内に格納される。そして、CPU11により、基本バーコード31のコード内容から、アプリケーション識別子3iに基づいてメーカコードC1が抽出される。これとともに、CPU11により、補助バーコード32のコード内容から、アプリケーション識別子3iに基づいて個体識別番号C2が抽出される。
【0042】
このようにしてメーカコードC1及び個体識別番号C2が抽出されると、次にCPU11により、図7に示すように、5桁のメーカコードC1と10桁の個体識別番号C2とがこの順で結合される。これにより、15桁の新たな複合コードが「問合せコード」C3として生成される。この生成にあたっては、メーカコードC1及び個体識別番号C2の双方が、物流用コードたる食肉標準物流バーコードから取得されるため、ユーザ操作によるコードの入力を一切行う必要がない。
【0043】
生成された問合せコードC3は、検品装置1のラベル印刷部18によって新規のラベル4にバーコード形式にて印刷される。問合せコードC3が記録されたラベル4は、図5に示すように、部分肉61から加工された中間体商品64に付随させるように、中間体商品64が載置される台車69等に貼付される。このラベル4によって、中間体商品64は問合せコードC3(個体識別番号)と対応づけされることになる。ラベル4は、部分肉ラベル3から得られた問合せコードC3(個体識別番号)を、さらに計量値付装置2に受け渡すために利用されるため「継承ラベル」と呼ばれる。
【0044】
続く値付け処理(ステップS3)においては、継承ラベル4の問合せコードC3を示すバーコードが、計量値付装置2のバーコードリーダ27によって読み取られる。これにより、問合せコードC3が計量値付装置2に取得され、RAM23内に格納される。そして、CPU21により、精肉パック65に貼付するための値付ラベル5に、問合せコードC3が印刷されることになる。
【0045】
図8は、値付ラベル5の一例を示す図である。図に示すように、値付ラベル5においては、精肉パック65の販売のために必要な商品名や売価等の通常の値付情報とともに、問合せコードC3が印刷されている。本実施の形態では問合せコードC3としての15桁の数値とともに、その数値をエンコードしたバーコードも印刷される。このバーコードは印刷されなくてもよい。この値付ラベル5により、精肉パック65は、問合せコードC3(個体識別番号)と対応づけされることになる。これにより、この店舗において精肉パック65(牛肉商品)を購入した消費者に、当該牛肉商品に係る問合せコードC3が提供されることになる。
【0046】
<4.トレーサビリティ情報の取得>
消費者は、以上のようにして得られた牛肉商品に係る問合せコードC3を、所定のネットワークシステムにおいて使用することで、当該牛肉商品に係るトレーサビリティ情報を取得することが可能となる。以下、このネットワークシステムについて説明する。
【0047】
図9は、問合せコードC3を利用するためのネットワークシステム70の概要を示す図である。図に示すように、このネットワークシステム70においては、消費者が取り扱う消費者端末71と、牛肉商品を販売した販売者が管理する販売者サーバ72と、トレーサビリティ情報を提供する複数の情報サーバ73とが、インターネット74を介して接続されている。ネットワークシステム70では、牛肉商品に係るトレーサビリティ情報が、部分肉61を製造する製造メーカごとに管理されており、製造メーカのそれぞれが情報サーバ73を管理している。
【0048】
消費者端末71は、インターネット74に接続可能なウェブブラウザが予めインストールされた通信端末装置であり、代表的には、家庭にあるパーソナルコンピュータや携帯電話等である。
【0049】
また、販売者サーバ72及び情報サーバ73は、それぞれ、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えた一般的なコンピュータで構成されており、ウェブサーバとして機能するためのアプリケーションがインストールされている。これにより、販売者サーバ72及び情報サーバ73のそれぞれはウェブサーバとして機能し、その内部にはインターネット74上の通信装置に各種コンテンツを公開するウェブサイトが構築されている。
【0050】
情報サーバ73のそれぞれには、情報サーバ73を管理する製造メーカで製造された部分肉61に係るトレーサビリティ情報を蓄積した情報データベースが含まれている。情報データベースにおいてトレーサビリティ情報は、牛の個体識別番号ごとに管理され、その個体識別番号と関連付けられている。情報サーバ73のウェブサイト(以下、「情報提供サイト」という。)は、インターネット74を介してアクセスしてきた通信装置から個体識別番号を受け付けると、その個体識別番号に対応するトレーサビリティ情報を情報データベースから抽出し、当該通信装置に返信するように機能する。
【0051】
複数の情報サーバ73の情報提供サイトのそれぞれが同様の機能を有しているが、各情報提供サイトにて提供されるトレーサビリティ情報は、あくまで当該製造メーカで生産された部分肉61に係るもののみであり、他の製造メーカで生産された部分肉61に係るトレーサビリティ情報は含まれていない。このため、消費者が情報サーバ73から直接的にトレーサビリティ情報を取得するためには、部分肉61を製造した製造メーカを特定し、さらに、その製造メーカの情報提供サイトのアドレス(URL)を特定する必要がある。
【0052】
消費者が、このように製造メーカや情報提供サイトのアドレスを特定することは困難である。したがって、これを解消するためにネットワークシステム70では、販売者サーバ72内に構築されたウェブサイトである代理要求サイトが、消費者が必要なトレーサビリティ情報を提供する製造メーカの情報提供サイトを代理で特定する機能を有している。
【0053】
販売者サーバ72の代理要求サイトは、消費者端末71から問合せコードC3を受け付け、この問合せコードC3に含まれるメーカコードC1に基づいて、製造メーカごとの情報提供サイトのアドレスを特定する。このため、販売者サーバ72には、メーカコードC1から、情報提供サイトのアドレスを特定するために必要な変換テーブルが記憶されている。図10は、この変換テーブル72tの一例を示す図である。図に示すように、変換テーブル72tでは、そのレコードごとに、一のメーカコードと一の情報提供サイトのアドレス(URL)とが対応付けられている。
【0054】
図11は、消費者端末71が、アドレス特定機能を有する代理要求サイトを利用してトレーサビリティ情報を取得するまでの流れの概要を示す図である。
【0055】
まず、ある牛肉商品のトレーサビリティ情報の取得を希望する消費者が、消費者端末71を利用して、販売者サーバ72の代理要求サイトにアクセスする。代理要求サイトは販売者のウェブサイトであるため、そのアドレスは、店舗内のポスターや買物袋等によって容易に入手可能である。消費者は、購入した牛肉商品の値付ラベル5に示された問合せコードC3を消費者端末71に入力し、代理要求サイトに送信する(ステップST1)。なお、消費者端末71がバーコードリーダを備えたものであれば、バーコードリーダの値付ラベル5のバーコードの読み取りにより、消費者端末71に問合せコードC3を入力できるようになっていてもよい。
【0056】
販売者サーバ72の代理要求サイトは、問合せコードC3を受信すると、問合せコードC3の上位5桁のメーカコードC1を抽出する。そして、変換テーブル72tに基づいて、そのメーカコードC1に対応する情報提供サイトのアドレスを特定する。この処理は、問合せコードに含まれるメーカコードC1を、情報提供サイトのアドレスに変換する処理であるとも表現できる(ステップST2)。このようにして特定されたアドレスは、消費者が購入した牛肉商品の材料となった部分肉61を製造した製造メーカの情報サーバ73の情報提供サイトを示すことになる。代理要求サイトは、情報提供サイトのアドレスを特定すると、この情報提供サイトに対して、問合せコードC3のうちの下位10桁の個体識別番号C2を送信する(ステップST3)。
【0057】
情報サーバ73の情報提供サイトは、個体識別番号C2を受信すると、情報データベースを検索してその個体識別番号C2に対応するトレーサビリティ情報を抽出し、販売者サーバ72に返信する(ステップST4)。販売者サーバ72の代理要求サイトは、トレーサビリティ情報を受信すると、その受信したトレーサビリティ情報をアクセス元の消費者端末71に対して転送する(ステップST5)。これにより、消費者端末71においてトレーサビリティ情報が受信されて、消費者端末71にトレーサビリティ情報が表示されることになる。
【0058】
以上のように、ネットワークシステム70では、代理要求サイトが、メーカコードC1に基づいて情報提供サイトのアドレスを特定する。このため、消費者は、製造メーカや情報提供サイトのアドレスを特定する作業を行わなくとも、消費者端末71を利用して代理要求サイトにアクセスし、牛肉商品の問合せコードC3を入力するのみで、当該牛肉商品のトレーサビリティ情報を容易に取得できることになる。これにより、消費者は、購入した牛肉商品が、BSEなどの問題のない安全な牛の個体から加工された牛肉商品であるかを確認できる。
【0059】
このネットワークシステム70を有効に機能させるためには、メーカコードC1と個体識別番号C2とを組合わせた複合コードとしての問合せコードC3を、牛肉商品に付随させる技術が必要となる。上記の検品装置1では、このような問合せコードC3を生成して、当該牛肉商品に付随させることができることとなる。問合せコードC3において、メーカコードC1はトレーサビリティ情報を提供する複数の情報提供サイトを識別するためのサイト識別コードとして機能し、個体識別番号C2はトレーサビリティ情報の管理単位(牛の個体)ごとに牛肉商品に対して割り当てられる情報識別コードして機能することになる。
【0060】
<5.他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態(以下、「代表形態」という。)に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0061】
代表形態では、継承ラベル4において、問合せコードC3はバーコード形式で印刷されていたが、QRコードなどの二次元コード形式で印刷されてもよい。いずれの場合であっても、商品に付随させる商品用記録媒体としてラベルを用い、印刷により問合せコードC3を記録すれば、低コストに問合せコードC3を記録できる。
【0062】
また、電磁的な記録素子に問合せコードC3をデジタルデータとして記録してもよい。図12は、この場合の継承ラベル41を示す図である。この継承ラベル41には、その一部にRFIDのICチップ42が含まれている。ICチップ42は、非接触にてデータの書き込みや読み出しが可能な記録素子である。検品装置1及び計量値付装置2の双方がICチップ42のICリーダライタを備え、このような継承ラベル41のICチップ42に問合せコードC3を記録すれば、検品装置1から計量値付装置2への問合せコードC3の受け渡しを容易かつ正確に行うことができるようになる。また、図13に示すように、同様のICチップ52を含む値付ラベル51を利用し、ICチップ52に問合せコードC3を記録すれば、ICチップ52のICリーダを備えた消費者端末においても容易かつ正確に問合せコードC3を入力できる。
【0063】
また、代表形態では、検品装置1が部分肉ラベル3に基づいて生成した問合せコードC3を継承ラベル4に記録し、さらに、計量値付装置2がその継承ラベル4に基づいて問合せコードC3を値付ラベル5に記録するようになっていたが、一の媒体記録装置が、部分肉ラベル3に基づいて生成した問合せコードC3を、値付ラベル5に直接記録するようになっていてもよい。
【0064】
また、代表形態では、問合せコードC3は、メーカコードC1と個体識別番号C2とで構成されていたが、情報提供サイトを識別するためのサイト識別コードと、トレーサビリティ情報の管理単位ごとに商品に対して割り当てられる情報識別コードとを含めば、問合せコードC3はどのようなものであってもよい。例えば、代表形態では、情報提供サイトが製造メーカごとに準備されているため、サイト識別コードとしてメーカコードを利用したが、情報提供サイトが牛肉商品の輸入元となる国別に準備された場合などは、サイト識別コードとしては輸入元となる国別のコードを利用すればよい。
【0065】
また、代表形態では、商品が牛肉商品である場合を例に説明を行ったが、商品はこれに限定されず、他の食品、特に生鮮食料品において有効に適用することが可能である。どのような食品であっても、トレーサビリティ情報を消費者に提供する情報提供サイトごとの識別コードをサイト識別コードとし、トレーサビリティ情報の管理単位ごと(食品の識別単位ごと)に食品に付与される識別コードを情報識別コードとすればよい。例えば、食品が養殖マグロであれば、”いけす”をトレーサビリティ情報の管理単位とすればよい。
【0066】
また、代表形態では、2つの物流用コード(食肉標準物流バーコード)から問合せコードを生成していたが、1つあるいは3以上の物流用コードから問合せコードを生成してもよい。また、物流用コードは、ITF形式やJAN形式などの他の形式であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】牛肉商品を取り扱う処理の流れを示す図である。
【図2】牛肉商品の形態の遷移を示す図である。
【図3】検品装置の構成を機能ブロックにて示す図である。
【図4】計量値付装置の構成を機能ブロックにて示す図である。
【図5】精肉パックへ問合せコードを付与するまでの過程を説明する図である。
【図6】部分肉ラベルの一例を示す図である。
【図7】継承ラベルの一例を示す図である。
【図8】値付ラベルの一例を示す図である。
【図9】問合せコードを利用するネットワークシステムの概要を示す図である。
【図10】変換テーブルの一例を示す図である。
【図11】消費者端末がトレーサビリティ情報を取得する過程を説明する図である。
【図12】継承ラベルの一例を示す図である。
【図13】値付ラベルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 検品装置
2 計量値付装置
3 部分肉ラベル
4 継承ラベル
5 値付ラベル
70 ネットワークシステム
C1 メーカコード
C2 個体識別番号
C3 問合せコード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品に係る情報を、当該商品に付随させる商品用記録媒体に記録する媒体記録装置であって、
ネットワークを介してトレーサビリティ情報を提供する複数の情報提供サイトを識別するためのサイト識別コードと、前記トレーサビリティ情報の管理単位ごとに前記商品に対して割り当てられる情報識別コードとを含む複合コードを生成する生成手段と、
生成された前記複合コードを、前記商品用記録媒体に記録する記録手段と、
を備えることを特徴とする媒体記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体記録装置において、
前記商品は、流通過程を経た材料商品から加工されるものであり、
前記流通過程において前記材料商品に付随された物流用記録媒体から、前記物流用記録媒体に記録された少なくとも一つの物流用コードを取得する取得手段と、
前記少なくとも一つの物流用コードから、前記情報識別コードを抽出する手段と、
をさらに備えることを特徴とする媒体記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の媒体記録装置において、
前記少なくとも一つの物流用コードから、前記サイト識別コードを抽出する手段、
をさらに備えることを特徴とする媒体記録装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の媒体記録装置において、
前記商品は、牛肉商品であり、
前記情報識別コードは、前記牛肉商品の材料としての牛の個体を識別するための個体識別番号であることを特徴とする媒体記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の媒体記録装置において、
前記物流用記録媒体は、前記材料商品としての部分肉に付随された部分肉ラベルであり、
前記物流用コードは、前記部分肉ラベルに印刷された食肉標準物流バーコードであることを特徴とする媒体記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の媒体記録装置において、
前記サイト識別コードは、前記部分肉を製造するメーカを識別するためのメーカコードであることを特徴とする媒体記録装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の媒体記録装置において、
前記記録手段は、前記商品用記録媒体としてのラベルに前記複合コードを印刷する印刷手段であることを特徴とする媒体記録装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の媒体記録装置において、
前記記録手段は、前記商品用記録媒体としての電磁的な記録素子に前記複合コードをデジタルデータとして記録する手段であることを特徴とする媒体記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−318111(P2006−318111A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138640(P2005−138640)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】