説明

子乗せ装置付自転車

【課題】子供を乗り降りさせる際において、自転車が転倒する危険を減らすとともに、乗り手の負担も減らすことができる子乗せ装置付自転車を提供する。
【解決手段】サドル8の前方にハンドル21が備えられるとともに子乗せ装置2が設けられた子乗せ装置付自転車1であって、上記ハンドル21がハンドルポストを有し、このハンドルポストに、縦軸を中心として子乗せ装置2を回転自在に取り付ける回転機構3が設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子乗せ装置付自転車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
子供を自転車に乗せることができる自転車用子乗せ装置の提案が数多くなされている。例えば、自転車の前部に子乗せ装置を設けたものとして、特許文献1には、ハンドルバーを左右のハンドルグリップ間で大きく窪ませるとともに、このハンドルグリップ間の窪みに配置されてハンドルポストの上端に固定された子乗せ装置と、この子乗せ装置を設けた自転車とが開示されている。この子乗せ装置は、子供を前向きの姿勢のまま、子乗せ装置に乗り降りさせるように構成されている。したがって、この子乗せ装置を設けた自転車に子供を乗り降りさせるには、乗り手が子乗せ装置の前方まで行き、その後ハンドルの前方から子供を抱き上げて子乗せ装置に座らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−56880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、子供を乗り降りさせるために乗り手が子乗せ装置の前方まで行くことは、乗り手にとって負担になっていた。また、子供を子乗せ装置に乗せた状態で、乗り手が子乗せ装置の前方とサドルとの間を移動するので、この移動の際にハンドルが子供の重みで回転し、車体が転倒するおそれがあった。さらに、駐輪場は、自転車の前方を壁に向けて駐輪させる形式が多く、このような駐輪場では壁が妨げとなり、乗り手は自転車(子乗せ装置)の前方に行くことができないので、子供を乗り降りさせることが困難になっていた。したがって、駐輪時には駐輪位置の手前で子供を降ろしてから、改めて自転車を壁近くの駐輪位置まで移動させなければならず、一方、乗車時には一旦自転車を壁から離れた位置に移動させてから、子供を乗せなければならず、多くの手間や時間がかかっていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、子供の乗り降りを容易にするとともに、車体の転倒の危険性を減らすことができる子乗せ装置付自転車を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る子乗せ装置付自転車は、サドルの前方にハンドルが備えられるとともに子乗せ装置が設けられた子乗せ装置付自転車であって、
上記ハンドルがハンドルポストを有し、
このハンドルポストに、縦軸を中心として子乗せ装置を回転自在に取り付ける回転機構が設けられたものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る子乗せ装置付自転車は、請求項1に記載の子乗せ装置付自転車において、回転機構が、少なくとも2つの所定角度で子乗せ装置の回転を停止させるものである。
【0008】
さらに、本発明の請求項3に係る子乗せ装置付自転車は、請求項1または2に記載の子乗せ装置付自転車において、ハンドルポストに対して子乗せ装置を固定する固定具が設けられたものである。
【0009】
また、本発明の請求項4に係る子乗せ装置付自転車は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の子乗せ装置付自転車において、子乗せ装置が、開口部から子供の胴体部および頭部を収容する本体と、子供の足を載置させる足置きとを具備し、
上記本体の外面形状が曲面であるものである。
【0010】
また、本発明の請求項5に係る子乗せ装置付自転車は、請求項4に記載の子乗せ装置付自転車において、本体の開口部の内縁部に、引出式のシートベルトが設けられたものである。
【0011】
また、本発明の請求項6に係る子乗せ装置付自転車は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の子乗せ装置付自転車において、ハンドルが、湾曲したハンドルバーを有し、
この湾曲した部分の内側に子乗せ装置の本体が位置するように、上記ハンドルバーが配置されたものである。
【0012】
また、本発明の請求項7に係る子乗せ装置付自転車は、請求項6に記載の子乗せ装置付自転車において、ハンドルバーの中間部が子乗せ装置の前方に位置するとともに、ハンドルバーの両端部が当該子乗せ装置の後方に位置するように、ハンドルバーが配置されたものである。
【発明の効果】
【0013】
上記子乗せ装置付自転車によると、子供を乗り降りさせるのに、乗り手はハンドルの前方まで移動する必要がないので、自転車が転倒する危険を減らすとともに、乗り手の負担も減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における子乗せ装置付自転車の側面図である。
【図2】同子乗せ装置の斜視図である。
【図3】同子乗せ装置の平面図および側面図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】同子乗せ装置の使用状態を説明する斜視図であり、(a)は蛇腹式シェードおよび引出式シートベルトを収縮した状態の図、(b)は蛇腹式シェードおよび引出式シートベルトを伸展した状態の図である。
【図5】同回転機構の拡大斜視図である。
【図6】同回転機構の一部切欠拡大断面図である。
【図7】同子乗せ装置の回転を説明する平面図であり、(a)は子乗せ装置を60度回転させた図、(b)は子乗せ装置を120度回転させた図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態に係る子乗せ装置付自転車を図1〜図7に基づき説明する。
図1に示すように、子乗せ装置付自転車1は、自転車本体5と、この自転車本体5に設けられる子乗せ装置2と、この子乗せ装置2を上記自転車本体5に鉛直軸心回りに(縦軸を中心として)回転自在に取り付ける回転機構3とから構成される。
【0016】
上記自転車本体5は、前輪6および後輪7と、これら前輪6および後輪7を連結するフレーム10と、このフレーム10の上端に取り付けられて乗り手が腰掛けるサドル8と、上記フレーム10に設けられて上記後輪7を駆動するための駆動機構(スプロケット、チェーンおよびペダル等からなる)9と、フレーム10の前部上端に設けられて上記前輪6に連結されたハンドル21とから構成される。また、上記フレーム10は、前輪6の車軸に接続されるフロントホーク11と、このフロントホーク11を回転自在に支持するヘッドパイプ12と、前端がヘッドパイプ12に接続されるとともに後端が後輪7の車軸に接続されるフレーム体13と、このフレーム体13に上方へ向けて接続され上端にサドル8が取り付けられたシートパイプ14とから構成される。
【0017】
次に、本発明の要旨となる子乗せ装置2および回転機構3について詳細に説明する。
上記子乗せ装置2は、合成樹脂からなり、図2および図3に示すように、開口部32から子供の胴体部および頭部を収容する本体31と、子供の足を載置させる足置き47とから構成される。上記本体31は、外面形状が全て曲面であり、具体的には、外面が半卵形に形成されているので、外部からの衝撃に対して強い形状である。また、上記本体31は、収容した子供の頭部を保護するヘッドレスト33と、子供の胴体部を保護するシート41とから構成されている。
【0018】
図2および図4に示すように、上記開口部32の縁のヘッドレスト33部分には、子供の顔への風雨避けとして、繊維素材からなる蛇腹式シェード34が設けられている。この蛇腹式シェード34は、伸縮自在であり、収縮時には図4(a)に示すように、開口部32の縁のヘッドレスト33部分に畳んで納め、伸展時には図4(b)に示すように、開口部32のヘッドレスト33部分を覆うことができるものである。また、この蛇腹式シェード34には、ヘッドレスト33の内部への通気性と視界を確保するためのメッシュ窓35が設けられている。
【0019】
図4(a)および(b)に示すように、上記開口部32の内縁部(開口部32の縁から内部にかけて5cmまでの範囲)のシート41部分には、引出式シートベルト42が設けられている。具体的には、上記内縁部の下端中央に、出退自在な下部ストラップ45と、この下部ストラップ45の先端に取り付けられたバックル46とが設けられ、また上記内縁部のシート41部分における左右上端(ヘッドレスト33との境界近く)に、出退自在な上部ストラップ43と、これら上部ストラップ43の先端に取り付けられて上記バックル46に着脱自在なダンク44とがそれぞれ設けられている。なお、上部ストラップ43および下部ストラップ45は、繊維素材からなる。
【0020】
図2〜図4に示すように、上記足置き47は、略円弧面形状であり上面が足裏に接触し得る足置板48と、下端がこの足置板48の円弧辺に接続されるとともに上端が上記開口部32の下端中央に回転自在に取り付けられる下腿保護部49とから構成される。
【0021】
一方、上記回転機構3は、図5および図6に示すように、ハンドルポスト(後述する)22の上端に設けられる軸体51と、子乗せ装置2の下端部に設けられるとともに上記軸体51の上端部が挿入される軸穴63が形成されたボス体61と、このボス体61から軸体51の抜けを防止するための抜け止め(図示しない)とから構成される。また、図示しないが、子乗せ装置2のシート41は、ボス体61に対してリクライニング可能に取り付けられている。
【0022】
上記軸体51は、ハンドルポスト22の上端に取り付けられる短円柱形状の基部52と、この基部52より小径の短円柱形状で当該基部52の上側に一体的に形成された軸部54とから構成される。また、上記基部52には、上端面に小半球形状の係止粒53が、基部52の軸心を中心として60度おきに5つ形成されている。
【0023】
上記ボス体61は、下端面が開口して上記軸穴63が形成された略円筒形状の回転ボス部62と、この回転ボス部62の上記軸穴63に嵌め込まれたブッシュ66と、このブッシュ66を貫通して突出した上記軸部54を側方から押さえることで軸部54に対して回転ボス部62を固定する固定具67とから構成される。また、上記回転ボス部62は、下端面に上記係止粒53が嵌まり込む係止穴64が1つ形成されるとともに、側面に固定具67を上記軸穴63まで貫通させるネジ穴65が形成されている。また、上記固定具67は、上記回転ボス部62のネジ穴65に螺合される締めネジ68からなり、この締めネジ68の先端で軸穴63内の軸部54を側方から締め付けることで、軸部54に対して回転ボス部62を固定し、ハンドルポスト22に対する子乗せ装置2の回転を防ぐものである。
【0024】
次に、上述した子乗せ装置2および回転機構3とハンドル21との関係について説明する。
上記ハンドル21は、図2および図3に示すように、上記フロントホーク11の上端に接続されるハンドルポスト22と、水平面状で略U字形に湾曲して両端部にハンドルグリップ25を有するハンドルバー24と、ハンドルバー24の回転操作をハンドルポスト22に伝える連結部23とから構成される。
【0025】
上記ハンドルバー24は、上記湾曲した部分の内側に子乗せ装置2の本体31が位置するとともに、中間部が当該本体31の前方に、且つ両端部である両ハンドルグリップ25が当該本体31の後方に位置するように、配置される。言い換えれば、上記ハンドルバー24は、上記本体31の開口部32を囲うとともに、後方が開放するように配置される。
【0026】
上記連結部23は、上記両ハンドルグリップ25の前方から分岐するようにハンドルバー24に接続されており、子乗せ装置2を回転させても当該子乗せ装置2と干渉しないように湾曲しつつ、下端でハンドルポスト22の上端部に接続されている。
【0027】
以下に、上記構成における子乗せ装置付自転車1の作用について説明する。
上記子乗せ装置付自転車1に子供を乗せるには、まず、締めネジ68を緩めて、子乗せ装置2をハンドルポスト22に対して回転自在にする。そして、子乗せ装置2を回転させていき、子乗せ装置2の開口部32が自転車本体5の前方に対して平面視で60度になると(図7(a)参照)、係止粒53が係止穴64に嵌まり込んで回転が一時的に止まるが、さらに回転させていく。
【0028】
その後、開口部32が自転車本体5の前方に対して120度の位置になると(図7(b)参照)、再び係止粒53が係止穴64に嵌まり込んで回転が一時的に止まる。この状態では、開口部32がサドル8の側方位置、つまり乗り手の立ち位置に直面することになる。次に、乗り手の立つサドル8の側方位置から、子供を子乗せ装置2に抱き上げて乗せ、本体31内に座らせるとともに、足置き47に足を載置させる。
【0029】
そして、子乗せ装置2を回転させて当該子乗せ装置2の向きを戻していき、開口部32が自転車本体5の前方に向くと(図2参照)、係止粒53が係止穴64に嵌まり込んで回転が一時的に止まる。その後、締めネジ68を締めて、子乗せ装置2をハンドルポスト22に対して固定することで、子乗せ装置付自転車1を発進させても、子乗せ装置2が回転することはない。
【0030】
次に、上記子乗せ装置付自転車1から子供を降ろすには、子供を乗せる場合と同様に、締めネジ68を緩めて、開口部32が自転車本体5の前方に対して120度の位置になるまで、子乗せ装置2を回転させる。そして、子供を子乗せ装置2から、乗り手の立つサドル8の側方位置まで抱き上げて降ろす。
【0031】
このように、子供を乗り降りさせるのに、乗り手はハンドル21の前方まで移動する必要がないので、自転車が転倒する危険性を減らすとともに、乗り手の負担も減らすことができる。また、ハンドル21の前方に、子供を乗り降りさせる空間を確保する必要がないので、自転車の前方を壁に向けて駐輪させる形式の駐輪場でも、駐輪位置で駐輪したまま子供を乗り降りさせることができる。
【0032】
さらに、子乗せ装置2の本体31は、その外面が強度的に有利な半卵形に形成されており、またU字形のハンドルバー24の内側に位置するので、子乗せ装置2に乗せた子供を十分に保護することができる。
【0033】
また、引出式シートベルト42が開口部32の内縁部に設けられているため、子乗せ装置2に子供を乗せる際に引出式シートベルト42が子供の下にならず、容易に引出式シートベルト42を子供に装着することができる。
【0034】
ところで、上記実施の形態では、開口部32が自転車本体5の前方から0度、60度および120度の位置で回転を停止させるとして説明したが、これらに限定されるものではなく、少なくとも2つの角度で回転を停止させるものであればよい。例えば、開口部32が自転車本体5の前方から0度および180度の位置で回転を停止させるように構成してもよく、この構成では、180度の位置まで回転させると開口部32に臨む部分にハンドルバー24がないので、子供を乗り降りさせる際に、ハンドルバー24が邪魔にならないという利点がある。
【0035】
また、回転機構3および固定具67は、上記実施の形態の構成に限定されるものではない。すなわち、回転機構3は、ハンドルポスト22に縦軸を中心として子乗せ装置2を回転自在に取り付けるものであればよく、固定具67は、ハンドルポスト22に対して子乗せ装置2を固定するものであればよい。
【0036】
さらに、子乗せ装置2の本体31の外面は半卵形として説明したが、他の曲面形状であってもよく、一部が曲面であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、一般の自転車だけでなく、電動アシスト自転車などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 子乗せ装置付自転車
2 子乗せ装置
3 回転機構
21 ハンドル
22 ハンドルポスト
24 ハンドルバー
31 本体
32 開口部
42 引出式シートベルト
47 足置き
67 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サドルの前方にハンドルが備えられるとともに子乗せ装置が設けられた子乗せ装置付自転車であって、
上記ハンドルがハンドルポストを有し、
このハンドルポストに、縦軸を中心として子乗せ装置を回転自在に取り付ける回転機構が設けられたことを特徴とする子乗せ装置付自転車。
【請求項2】
回転機構が、少なくとも2つの所定角度で子乗せ装置の回転を停止させることを特徴とする請求項1に記載の子乗せ装置付自転車。
【請求項3】
ハンドルポストに対して子乗せ装置を固定する固定具が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の子乗せ装置付自転車。
【請求項4】
子乗せ装置が、開口部から子供の胴体部および頭部を収容する本体と、子供の足を載置させる足置きとを具備し、
上記本体の外面形状が曲面であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の子乗せ装置付自転車。
【請求項5】
本体の開口部の内縁部に、引出式のシートベルトが設けられたことを特徴とする請求項4に記載の子乗せ装置付自転車。
【請求項6】
ハンドルが、湾曲したハンドルバーを有し、
この湾曲した部分の内側に子乗せ装置の本体が位置するように、上記ハンドルバーが配置されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の子乗せ装置付自転車。
【請求項7】
ハンドルバーの中間部が子乗せ装置の前方に位置するとともに、ハンドルバーの両端部が当該子乗せ装置の後方に位置するように、ハンドルバーが配置されたことを特徴とする請求項6に記載の子乗せ装置付自転車。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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