説明

子宮内膜症を治療するためのビスホスホネート

【課題】子宮内膜症の発生を予防し、以前に診断された病変を消失させ、再発を防止する薬剤の提供。
【解決手段】子宮内膜症の治療のための、以下の式Iを有するビスホスホネート化合物を含む粒子。


(I)[式中、R1は、H、OH又はハロゲン基であり、R2は、ハロゲン;ヘテロアリール又はヘテロシクリルC1−C10アルキルアミノ又はC3−C8シクロアルキルアミノで置換されていてもよい、直鎖又は分枝のC1−C10アルキル又はC2−C10アルケニル;Yが、水素、C3−C8シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールである−NHYであり;或いはR2は、Zがクロロ置換フェニル又はピリジニルである−SZである]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮内膜症の治療方法、及び、より具体的には、食細胞を抑制することができる薬剤を含む粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
子宮内膜症(EM)は、子宮内膜に似た組織が子宮体腔の外側で増殖することを特徴とする婦人科疾患である。その主要な臨床的要素には、骨盤痛、月経困難症、性交疼痛症、骨盤部/腹部の腫瘤及び不妊症が含まれる。腹内出血を発現すると、局所的な炎症作用を引き起こし、その結果、癒着形成及び進行性の腹腔内免疫機能障害に至り、これが、活動性のEMに関与する、傷み及び不妊の両方を悪化させることにつながる。
【0003】
子宮内膜症は、出産年齢の女性の5〜10%を侵している。子宮内膜症の有病率は、不妊の女性で62%と高く、重度の月経困難症のティーンエイジャーでは50%、及び卵管結紮のための腹腔鏡術を受けている無症候性の女性では4%であることが見出されている。
【0004】
現在の臨床試験実施計画書には、外科的腹腔鏡術が最も基準となるものであり、これによって子宮内膜症を診断し治療するように指図されている。アメリカだけで毎年20,000〜40,000人の患者が子宮内膜症に対する腹腔鏡術を必要としていると予想されている。若い患者については経過観察の1年以内の再発率が30〜60%、又は子宮内膜症の全個体数では1年当たりの再発率が5〜20%であり5年累積再発率は40%であることが予想され得る。再発率は、初期段階、経過観察の期間に合わせて増加し、以前の手術と関連している。従来の内科的治療は、再発を遅らせることができるが、防止することはできない。これらの治療には、経口避妊薬、ゴナドトロピン放出ホルモン及びダナゾールが含まれる。症状(傷み又は不妊)は、5年以内に書類上「完全な」外科的切除を行った女性の20%に再発する。潜在的に危険な状態にある女性の特定のマーカーがはっきりとは確認されていないので、有効な第1次予防は現時点で不可能である。
【0005】
したがって、子宮内膜症の発生を予防し、以前に診断された病変を消失させ、再発を防止することができる薬剤が緊急に必要とされている。
【0006】
子宮内膜症の免疫生物学は、極めて複雑であり、今のところ完全には理解されていない。最初の移植は、子宮内膜細胞が腹膜表面に付着し残存することができる機構を必要とし、かかる機構は、恐らく、ナチュラルキラー活性の減少を惹起し、可溶性ICAM−1の形の遮断抗体を産生することによって、免疫監視から回避することを含む。子宮内膜細胞はまた、RANTES及びMCP−1などの単球活性化物質を含む種々のサイトカインの量を増加させる。マクロファージの活性化及び腹膜炎症は、EMの開始、移植及び永続化の中心となっている。活性化したマクロファージは、リンパ球活性化因子、子宮内膜間質の増殖因子及び血管由来の因子を分泌することによって、並びにEM細胞増殖及び血管新生を促進することによって、免疫機能障害を永続させる。その上、マクロファージの活性化はまた、子宮及び胎児の機能を妨げる、IL−1β及びTNFαを産生することによって妊孕性を妨げる。したがって、マクロファージは子宮内膜症を開始し持続することにおいて極めて重要である。
【0007】
TNF−α結合タンパク質r−hTBP(現在、関節リウマチ及び他の炎症性症候群に対して臨床的に使用されている)を、ラットモデルを対象として検討し、少数の動物において、子宮内膜病変のサイズが64%縮小することを見出した。また、ヒヒモデルを対象に同製剤を使用した最近の報告によれば、ホルモン療法をTBPと組み合わせた場合、ホルモン療法単独の場合と比較して、より良い結果を示したとされている。他の免疫調節薬、ロキソリビンを使用して、子宮内膜症外植片の退行が認められた。ロキソリビンは、免疫増強性を有するグアニン誘導体であり、リンパ球のナチュラルキラー活性を増加させる。しかし、これらの両治療形態は特異的ではなく、したがって、所望されていない副作用を誘発する恐れがある。しかも、これらの研究のいずれもヒト臨床試験で実証されていない。
【0008】
ビスホスホネート(BP)は、骨粗鬆症及び他の骨疾患を治療する際に広く使用されている。BPは、細胞膜透過性が非常に乏しいことを特徴とするが、骨塩に対して高い親和性を有し、骨組織に一度取り込まれると単球由来の破骨細胞によって直接内在化され、最終的に破骨細胞を抑制することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
BPの粒子介在細胞内送達によって、平滑筋及び内皮細胞に及ぼす影響を最小限に抑えながら、マクロファージ及び単球などの食細胞を激減させることができることを、本発明者らは見出している。BPは、有効な食作用の結果として、マクロファージ及び単球を不活化し、壊死させる。したがって、Golombによる米国特許第6719998号は、再狭窄の治療のためのビスホスホネート封入粒子を教示している。また、Danenbergによる米国特許出願第20040266734号は、不安定狭心症及び心筋梗塞などのマクロファージ関連炎症性心疾患の治療のためのビスホスホネート封入粒子を教示している。子宮内膜症の治療のための、ビスホスホネート、ビスホスホネートの粒子又は一般粒状薬の使用について、決して示唆されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によると、子宮内膜症を治療するために同定された医薬品を製造するための、食細胞を抑制するための薬剤を含む粒子の使用が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によると、子宮内膜症を治療するために同定された医薬品を製造するための、ビスホスホネートを含む粒子の使用が提供される。
【0012】
本発明のさらにもう1つの態様によると、子宮内膜症の治療方法であって、これを必要とする女性対象に、女性対象の食細胞を抑制することができる薬剤を含む粒子の治療有効量を投与し、これによって子宮内膜症を治療することを含む方法が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の態様によると、子宮内膜症の治療方法であって、これを必要とする女性対象に、ビスホスホネートを含む粒子の治療有効量を投与し、これによって子宮内膜症を治療することを含む方法が提供される。
【0014】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態における、さらなる特徴によると、薬剤はビスホスホネートである。
【0015】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、食細胞はマクロファージ又は単球である。
【0016】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、食細胞の抑制は、食細胞を消失させること、食細胞の増殖を遅延させること、及び/又は食細胞の活性を下方制御することによって達成される。
【0017】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、ビスホスホネートは下記式Iを有する化合物を含む。
【0018】
【化1】

【0019】
ここで、Rは、H、OH又はハロゲン原子であり、
は、ハロゲン;ヘテロアリール又はヘテロシクリルC−C10アルキルアミノ又はC−Cシクロアルキルアミノで置換されていてもよく、アミノが第1級、第2級又は第3級であってよい、直鎖又は分枝のC−C10アルキル又はC−C10アルケニル;Yが、水素、C−Cシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールである−NHY;或いはRは、Zがクロロ置換フェニル又はピリジニルである−SZである。
【0020】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、ビスホスホネートは、クロドロネート、エチドロネート、チルドロネート、パミドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、アレンドロネート、イバンドロネート、リセドロネート及びゾレドロネートからなる群から選択される。
【0021】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、粒子は、ポリマー粒子、マイクロカプセルリポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル及びナノスフェアからなる群から選択される。
【0022】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、粒子は、サイズが0.02〜1ミクロンである。
【0023】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、薬剤を含む粒子は、凝集体、綿状の固まり、コロイド、ポリマー鎖、不溶性塩及び不溶性複合体からなる群から選択される。
【0024】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、ビスホスホネートを含む粒子は、凝集体、綿状の固まり、コロイド、ポリマー鎖、不溶性塩及び不溶性複合体からなる群から選択される。
【0025】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、薬剤は粒子内に被包される。
【0026】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、ビスホスホネートは粒子内に被包される。
【0027】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、薬剤は粒子内に包埋される。
【0028】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、ビスホスホネートは粒子内に包埋される。
【0029】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、薬剤は粒子表面に吸着される。
【0030】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、ビスホスホネートは粒子表面に吸着される。
【0031】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、粒子は腹腔内投与に適合する。
【0032】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、粒子は静脈内投与に適合する。
【0033】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、粒子は免疫抑制剤をさらに含む。
【0034】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、治療は前記子宮内膜症の再発を防止することを含む。
【0035】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、方法は、粒子を投与する前に、粒子を投与すると同時に、及び/又は粒子を投与した後に、ホルモンを投与することをさらに含む。
【0036】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、ホルモンは、避妊薬、ゴナドトロピン放出ホルモン及びダナゾールからなる群から選択される。
【0037】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、方法は、粒子を投与する前に、粒子を投与すると同時に、及び/又は粒子を投与した後に、免疫抑制剤を投与することをさらに含む。
【0038】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、免疫抑制剤は粒子中に混合調剤される。
【0039】
記載される好ましい実施形態における、その上さらなる特徴によると、免疫抑制剤は、r−hTBP又はロキソリビンである。
【0040】
他に特に定義しない限り、本明細書において使用される科学技術用語はすべて、本発明が属する普通の当業者によって共通に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において記載されているものと類似又は同等の方法及び原料を、本発明の粒子又は試験に使用することができるが、適切な方法及び原料を以下に記載する。本明細書において言及される、出版物、特許出願、特許及び他の参照文献はすべて、参照によって完全に組み込まれる。抵触する場合には、本特許明細書は定義を含めて責に帰する。また、原料、方法及び実施例は、一例に過ぎず、限定するためのものではない。
【0041】
本発明は、例としてのみ、添付の図面を参照して、本明細書に記載される。これから詳しい図面を具体的に参照するが、示されている詳細は、本発明の好ましい実施形態の例証となる議論の、例として及び目的のためだけのものであり、本発明の原理及び概念的態様の、最も有用で容易に理解される説明と考えられるものを提供するために提示されることを強調する。この点について、本発明の基本的な理解に必要である以上に詳しく本発明の構造的な細部を示すつもりはなく、図面に付帯される説明は、本発明のいくつかの形をいかにして実際に具体化することができるかを当業者に明らかにするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は、食細胞を抑制することができる薬剤を含む粒子の新規の使用に関する。
【0043】
特に、子宮内膜症を治療するために、担持粒子を使用することができる。
【0044】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、本出願において、以下の説明に記述されている詳細、又は実施例によって例証されている詳細に、限定されないということが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は種々の方法で実施若しくは遂行することができる。また、本明細書において使用されるフレーズ及び専門用語は、記述するためであり、限定していると見なされるべきではないということが理解されるべきである。
【0045】
子宮内膜症(EM)は、子宮の外側の場所、通常は腹膜での子宮内膜組織の増殖である。腹内出血を発現すると、局所的な炎症作用を引き起こし、その結果、癒着形成及び進行性の腹腔内免疫機能障害に至り、これが、活動性のEMに関与する、傷み及び不妊の両方を悪化させることにつながる。
【0046】
子宮内膜症は、一般的には外科的腹腔鏡術によって治療される。しかし、再発率は高く、初期段階、経過観察の期間に合わせて増加し、以前の手術と関連している。従来の内科的治療は、再発を遅らせることができるが、防止することはできない。これらの治療には、経口避妊薬、ゴナドトロピン放出ホルモン及びダナゾールが含まれる。
【0047】
本発明者らはこれまでに、ビスホスホネート(BP)の粒子介在細胞内送達によって、平滑筋及び内皮細胞に及ぼす影響を最小限に抑えながら、マクロファージ及び単球などの食細胞を激減させることができることを見出している。BPは、有効な食作用の結果として、マクロファージ及び単球を不活化し、壊死させる。したがって、Golombによる米国特許第6719998号は、再狭窄の治療のためのビスホスホネート封入粒子を教示している。また、Danenbergによる米国特許出願第20040266734号は、不安定狭心症及び心筋梗塞などの心臓関連炎症性疾患の治療のためのビスホスホネート封入粒子を教示している。
【0048】
本発明を実施する間に、本発明者らは、食細胞を抑制するための薬剤を含む粒子が子宮内膜症の治療にも使用され得ることを発見していなかった。
【0049】
以下の本明細書に及び続く実施例の項に例証されるように、リポソームに充填されたビスホスホネートを子宮内膜症ラットモデルに投与したところ、子宮内膜症転移率が低下し、子宮内膜症の平均直径が減少し、子宮内膜症の平均体積が減少し、子宮内膜症の癒着が低減する結果となった。免疫組織化学は、リポソームに充填されたビスホスホネートによる治療後に、マクロファージの浸潤が有意に減少する傾向を示した(図4及び5)。
【0050】
したがって、本発明の一態様によると、子宮内膜症の治療方法であって、これを必要とする女性対象に、女性対象の食細胞を抑制することができる薬剤を含む粒子の治療有効量を投与し、これによって子宮内膜症を治療することを含む方法が提供される。
【0051】
本明細書において、「治療する」という用語は、子宮内膜症の進行を、無にすること、実質的には抑制すること、遅延させること、若しくは後退させること、又は子宮内膜症の発症若しくは子宮内膜症の症状を実質的に抑制すること、又は特に外科的介入後に再発を防止することを目的として、従来の治療後に子宮内膜症の再発を防止することを含む。治療するとは、子宮内膜症に関連する症状を治すこと、例えば、実質的に消失させることが好ましい。
【0052】
本明細書において使用される場合、「子宮内膜症」という用語は、外性腺筋症及び外性子宮外膜症とも称され、子宮内膜組織が、体内の子宮以外の位置、即ち子宮体腔の外側(例えば、骨盤腔)に存在するか、又は子宮仙骨結節、子宮内膜腫、付属器癒着及び腺筋症など子宮筋層内に存在する疾患を指す。子宮内膜症はまた、腺筋腫、子宮仙骨靱帯の子宮内膜結節又は腺筋結節、及び子宮内膜の瘢痕などの他の場所の子宮内膜結節を含む。
【0053】
本明細書において使用される「対象」という用語は、雌哺乳動物、好ましくは任意の年齢のヒト女性対象を指す。女性対象は、再狭窄、不安定狭心症及び心筋梗塞などのマクロファージ関連炎症性心疾患から選択される疾患に罹患しておらず、かかる疾患に対する治療を受けていないことが好ましい。
【0054】
本明細書において使用される場合、「食細胞」というフレーズは、食作用の能力のある細胞である。食作用という用語はまた、飲作用、受容体を介した飲食作用及び本発明の免疫細胞の外部から物質を吸収/内在化するための、細胞の他の手段を含むがこれらに限定されない、飲食作用の形態を包含する。
【0055】
食細胞の例には、単核食細胞系(MPS)の細胞が含まれるがこれらに限定されず、かかる細胞には、マクロファージ及び循環する単球が含まれるがこれらに限定されない。食作用の能力のある他の細胞には、例えば、好中球、樹状細胞及び線維芽細胞が含まれる。食細胞はマクロファージ及び/又は単球であることが最も好ましい。
【0056】
本発明の本態様によると、食細胞の抑制には、食細胞の数を減少させること、消失させること(即ち、死滅させること)、食細胞の増殖を遅延させること、及び/又は食細胞の活性を減少させること(例えば、食作用能力又はサイトカイン分泌能力を低減させること)が含まれる。食細胞を抑制することができる医薬品は、以下の本明細書に記載されている。
【0057】
本明細書において使用される場合、「粒子」という用語は完全に閉じられた担体分子を指し、これには、ポリマー粒子、マイクロカプセルリポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル及びナノスフェアが含まれるがこれらに限定されない。
【0058】
本発明の本態様によると、粒子は、粒子のサイズが、食作用によって内在化される以外ない、又は主に内在化されるほど十分に大きく、したがって好ましい選択性を食細胞に付与することができるように調製される。本発明の1.0μm未満の粒子は、一般的には副作用(BBBの破綻、肺の閉塞、肺胞及び肺血管の閉塞並びに補体活性化など)を避けるために使用される。
【0059】
マクロファージに対して外因性の特異性を付与する粒子は、サイズの範囲が好ましくは0.02〜1.0ミクロン、より好ましくは0.08〜0.5ミクロン、及びより好ましくは0.08〜0.3ミクロンである。
【0060】
粒子を必要とする患者への投与前に、粒子のサイズを測定するために、当技術分野において知られている任意の方法を使用することができる。例えば、レーザー光散乱を利用するNicomp Submicron Particle Sizer(model 370、Nicomp社製、サンタバーバラ、カリフォルニア州)を使用することができる。粒子のサイズを測定する他の方法を、以下の本明細書において詳しく述べる。
【0061】
食細胞によって飲み込まれる粒子の最適なサイズ、剤形及び/又は量については、米国特許出願第20040266734号及び米国特許出願第20040266734号;並びにDanenberg et al., Journal of cardiovascular pharmacology 2003, 42:671-9;Circulation 2002, 106:599-605;Circulation 2003, 108:2798-804に記載されているアッセイなどの、当技術分野において知られている手法を使用して決定することができる。例えば、粒子は、親水性のマーカーである1−ヒドロキシピレン−3,6,8−トリスルホン酸及び疎水性のマーカーであるRhodamin-DSPEなどの蛍光マーカーを含むように調剤してもよい。インビトロスクリーニングアッセイでは、マクロファージの組織培養についてリポソームの取り込みを試験する。食細胞は、樹立細胞系から得るか、又は最近では初代細胞系としての個体から分離することができる。インビボアッセイでは、粒子を被験体(例えばマウス、ウサギ)に投与し、一定時間後に組織を摘出し、共焦点顕微鏡法を使用して試験することができる。該組織を、以下の実施例の項で使用されるものなどのミトコンドリアマーカーのために染色して、蛍光マーカーがミトコンドリアマーカーで共染色するかどうかを確かめることができる。
【0062】
一般的には、本発明の粒子は、食細胞を抑制することができる薬剤を十分な時間隔離して、薬剤が標的部位へ送達されることを強化する。さらに、粒子が標的部位における標的細胞(例えば、食細胞)内にある場合、薬剤は一般的に粒子から放出される。
【0063】
一実施形態では、食細胞を抑制することができる薬剤は、所望の特性を有する担体(即ち、被包剤)中に被包される。具体的な実施形態では、被包剤はリポソームである。本明細書において使用される場合、及び当技術分野において認識されているように、リポソームは、液晶相又は液体ゲル相中の脂質からなる、任意の合成の(即ち、天然に存在しない)構造を含み、液体体積を封入している。
【0064】
リポソームには、エマルジョン、フォーム、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散剤、ラメラ層などが含まれる。リポソームは、当技術分野において知られている任意の方法によって調製することができる[Monkkonen, J. et al., 1994, J. Drug Target, 2:299-308;Monkkonen, J. et al., 1993, Calcif. Tissue Int., 53:139-145;Lasic D D., Liposomes Technology Inc., Elsevier, 1993, 63-105. (chapter 3);Winterhalter M, Lasic D D, Chem Phys Lipids, 1993 September; 4(1-3):35-43]。リポソームは、正に帯電していてもよく、中性でもよく、又はより好ましくは負に帯電していてもよい。リポソーム膜の親水性遮蔽(例えば、ポリエチレングリコール結合された脂質及び親水性粒子の使用による)は、MPSによる取り込みが少なくなる可能性があるので、リポソームは疎水性であることも好ましい。ガングリオシド−GM及びホスファチジルイノシトールなどの立体的に遮蔽された脂質は、MPSによる取り込みを妨げるので、リポソームはこれらの脂質を含まないことも好ましい。リポソーム中にコレステロールを含有すると、MPSによる取り込みが強化される[Ahsan, F. et al., 2002, Journal of controlled Release, 79, 29-40]ので、本発明のリポソームはコレステロールも含むことができる。
【0065】
以上に詳しく述べたように、リポソームのリン脂質成分及び非リン脂質成分のみならず、リポソームのサイズ、電荷及び疎水性を含むがこれらに限定されない多くの特性が、食細胞によるリポソームの取り込みに影響を及ぼす。
【0066】
食細胞によるこれらの取り込みを強化するために、リポソームは他の任意の方法で修飾される可能性がある。かかる方法には、例えば、マクロファージFc受容体と相互作用するリガンド若しくはガラクトシルリガンドなどの、食細胞によって選択的に認識される分子をリポソームに付着させることによる方法、又は二重層中に補体フィブロネクチンリポタンパク質若しくはγグロブリンなどの物質を包含することによる方法が挙げられる。
【0067】
リポソームは単一の脂質層であってもよく、又は多重膜であってもよい。食細胞を抑制することができる薬剤が親水性である場合、内部の体積がより大きいため、大単層ベシクルを使用して、薬剤の送達をさらに改良することができる。反対に、薬剤が疎水性である場合、多重膜ベシクルを使用して、薬剤の送達をさらに改良することができる。また、食細胞を下方制御することができる薬剤(例えば、オリゴヌクレオチド)は、脂質二重層に浸透することができず、その結果としてリポソーム表面に吸着されたままになる。この場合は、リポソームの表面積を増加させることによって、治療薬剤の送達をさらに改良することができる。本発明による適切なリポソームは、非毒性リポソーム、例えば、ホスファチジルコリンホスホグリセロール及びコレステロールから調製されるものなどであることが好ましい。使用されるリポソームの直径は、0.08〜1.0ミクロンの範囲であることが好ましい。しかし、食細胞による食作用に適した範囲の他のサイズも使用することができる。リポソームのサイズを測定するために、均質化を使用することができ、これは、大きいリポソームをより小さいものに細分化する剪断エネルギーに依存する。都合良く使用することができるホモジナイザーには、マサチューセッツ州のMicrofluidics of Boston社製造のマイクロ流動化装置が含まれる。代表的な均質化手法では、標準的なエマルジョンホモジナイザーを通じて、選択されたリポソームサイズが観測されるまで、リポソームを再循環させる。粒径分布は、従来のレーザー光線による粒径識別を使用して、モニターすることが可能である。小細孔ポリカーボネート膜又は非対称なセラミック膜を通したリポソームの押出しは、リポソームサイズを比較的明確に定義されたサイズ分布に縮小するための有効な方法である。一般的には、所望のリポソームサイズ分布が得られるまで、懸濁液を1回又は複数回、膜を通して循環させる。リポソームは、引き続いてさらに小さい細孔膜を通して押し出し、リポソームサイズの段階的な縮小を達成することができる。
【0068】
他の態様では、食細胞を抑制することができる薬剤は、所望の特性を有する担体(即ち、包埋剤)中に包埋される。包埋される薬剤は、担体内に包埋、封入及び/又は吸着されるか、担体基質中に分散されるか、担体表面に吸着又は結合されるか、或いはこれらの形の任意の組合せである薬剤を含む。具体的な実施形態では、包埋剤(即ち担体)は、マイクロ粒子、ナノ粒子、ナノスフェア、マイクロスフェア、マイクロカプセル又はナノカプセルである[NanoparticleTechnology for Drug Delivery, RB Gupta, Taylor & Francis, 2006;及びPharmaceutical Emulsions and Suspensions, F. Nielloud, CRC, 2000]。担体という用語には、ポリマー製剤及び非ポリマー製剤の両方が含まれる。
【0069】
具体的な実施形態によると、包埋剤はナノ粒子である。好ましくは、ナノ粒子は直径が0.03〜1.0ミクロンであり、球形、非球形又はポリマーの粒子であることが可能である。食細胞を抑制することができる薬剤は、ナノ粒子中に包埋されるか、ポリマー基質中に均一若しくは不均一に分散されるか、担体表面に吸着されるか、又はこれらの形の任意の組合せである可能性がある。好ましい実施形態では、ナノ粒子を作製するために使用されるポリマーは、生体適合性及び生体分解性を有するポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)ポリマー(PLGA)などである。しかし、ナノ粒子を作製するために使用される可能性のあるさらなるポリマーには、PLA(polylactic acid)及びこれらのコポリマー、ポリ無水物、ポリアルキル−シアノアクリレート(ポリイソブチルシアノアクリレートなど)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド並びにこれらの誘導体、キトサン、アルブミン、ゼラチンなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0070】
本発明により、一部分は粒子内に被包され、一部分は粒子上に吸着されている、食細胞を抑制することができる薬剤も想像される。
【0071】
他の態様では、食細胞を抑制することができる薬剤は粒子状の形で調剤され、各粒子は所望の特性を有する。粒子状薬剤形には、担体内に被包されていないか、閉じ込められていないか、又は吸着されていない薬剤の、懸濁又は分散された、任意の不溶性の粒子状の形が含まれる。粒子状の形である薬剤には、薬剤の、懸濁又は分散されたコロイド、凝集体、綿状の固まり、不溶性塩、不溶性複合体及びポリマー鎖が含まれる。かかる粒子状物質は、これらが貯蔵/投与される液体(例えば、生理食塩水又は水)、及びこれらが治療効果を供与する液体(例えば、血液又は血清)に不溶である。一般的には、「不溶性」とは、10,000部を超える溶媒中に一部の粒子状治療薬剤が溶けることを指す。粒子状物質又は凝集体を製造するために、当技術分野において知られている任意の方法を使用することができる。好ましくは、粒子状物質は直径が0.03〜1.0ミクロンであり、任意の特定の形状であることが可能である。
【0072】
以上の本明細書に言及されたように、本発明の方法で使用される粒子は、担体粒子/製剤のサイズ又は電荷などの生理化学的特性によって、食細胞を標的とすることが好ましい。本発明の方法で使用される薬剤は、これらの生物学的特性によって食細胞を抑制する。一度でも貪食され、細胞内に取り込まれると、本発明の薬剤は、食細胞の活性を抑制若しくは減少させ、及び/又は食細胞を破壊する。理論によって制限されることなく、製剤形態の薬剤は、適切な細胞内で放出された後、食細胞を無力化及び/又は破壊する。
【0073】
薬剤は、細胞内での、抑制剤、不活性化剤、毒素、阻止物質及び/又は細胞増殖抑制物質/細胞傷害性物質であってよく、かかる物質は、マクロファージ又は単球などの食細胞の内部に一度でも取り込まれると、食細胞がもはや正常に機能すること、及び/又は生存することができなくなるように、食細胞を抑制、破壊、阻止、変性及び/又は変更する。
【0074】
食細胞を抑制する薬剤の例には、以下の無機又は有機化合物が含まれるがこれらに限定されない。即ち、小分子(500ダルトン未満)又は巨大分子;ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、翻訳後修飾タンパク質及び抗体を含むがこれらに限定されないタンパク様分子;又は2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA若しくは3重らせん核酸分子を含むがこれらに限定されない核酸分子が挙げられる。薬剤は、知られている任意の有機体(動物、植物、細菌、真菌、原生生物若しくはウイルスを含むがこれらに限定されない)由来、又は合成分子のライブラリ由来の天然物であることができる。治療薬剤はモノマー及びポリマーの化合物であることができる。
【0075】
本発明の本態様の好ましい実施形態によると、薬剤は、ビスホスホネート又はこの類似体である。
【0076】
本明細書において使用される「ビスホスホネート」という用語は、ジェミナル及び非ジェミナルの両方のビスホスホネートを表す。具体的な実施形態では、ビスホスホネートは下記式(I)を有する。
【0077】
【化2】

【0078】
ここで、Rは、H、OH又はハロゲン原子であり、Rは、ハロゲン;ヘテロアリール又はヘテロシクリルC−C10アルキルアミノ又はC−Cシクロアルキルアミノで置換されていてもよく、アミノが第1級、第2級又は第3級であってよい、直鎖又は分枝のC−C10アルキル又はC−C10アルケニル;Yが、水素、C−Cシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールである−NHYであり;或いはRは、Zがクロロ置換フェニル又はピリジニルである−SZである。
【0079】
より具体的な実施形態では、ビスホスホネートは、アレンドロネート又はこの類似体である。かかる実施形態では、アレンドロネートは下記式(II)を有する。
【0080】
【化3】

【0081】
他の具体的な実施形態では、さらなるビスホスホネートが本発明の方法で使用され得る。他のビスホスホネートの例には、クロドロネート、チルドロネート、パミドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、3−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、例えばジメチル−APD;1−ヒドロキシ−エチリデン−1,1−ビスホスホン酸、例えばエチドロネート;1−ヒドロキシ−3(メチルペンチルアミノ)−プロピリデン−ビスホスホン酸、(イバンドロン酸)、例えばイバンドロネート;6−アミノ−1−ヒドロキシヘキサン−1,1−ジ−ホスホン酸、例えばアミノ−ヘキシル−BP;3−(N−メチル−N−ペンチルアミノ)−1−ヒドロキシ−プロパン−1,1−ジホスホン酸、例えばメチル−ペンチル−APD;1−ヒドロキシ−2−(イミダゾール−1−イル)エタン−1,1−ジホスホン酸、例えばゾレドロン酸;1−ヒドロキシ−2−(3−ピリジル)エタン−1,1−ジホスホン酸(例えばリセドロン酸)、例えばリセドロネート;3−[N−(2−フェニルチオエチル)−N−メチルアミノ]−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ビスホスホン酸;1−ヒドロキシ−3−(ピロリジン−1−イル)プロパン−1,1−ビスホスホン酸、1−(N−フェニルアミノチオカルボニル)メタン−1,1−ジホスホン酸、例えばFR78844(Fujisawa社製);5−ベンゾイル−3,4−ジヒドロ−2H−ピラゾール−3,3−ジホスホン酸テトラエチルエステル、例えばU81581(Upjohn社製);及び1−ヒドロキシ−2−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)エタン−1,1−ジホスホン酸、例えばYM529又はこの類似体が含まれるがこれらに限定されない。
【0082】
本発明の粒子は、以上の本明細書に記載したものなどの、食細胞を抑制することができる2種以上の薬剤を含むことが想像される。さらに、本発明によると、それぞれ異なる活性剤を含む、粒子の混合系(2種以上の異なる系)を使用することができる。
【0083】
また、本発明の粒子は、子宮内膜症を治療するために、ホルモン療法、免疫抑制剤又は抗炎症薬などの他の療法と組み合わせて使用することができ(即ち、併用療法)、これによって、上記粒子は、続く他の治療様式(例えば、ホルモン療法)の前に、続く治療様式と同時に投与される。子宮内膜症を治療するために、本発明の粒子と組み合わせて使用される可能性のあるホルモン治療の例には、エストロゲンとプロゲステロンとの組合せなどの経口避妊薬、Gn−RHアゴニスト(ゴナドトロピン放出ホルモン)、プロゲスチン又はダナゾールが含まれるがこれらに限定されない。子宮内膜症を治療するために、本発明の粒子と組み合わせて使用される可能性のある抗炎症薬の例には、アスピリン又はイブプロフェンなどの抗プロスタグランジンが含まれる。免疫抑制剤の例には、r−hTBP及びロキソリビンが含まれるがこれらに限定されない。
【0084】
本発明の薬剤担持粒子は、それ自体で、又は適切な担体若しくは賦形剤と混合される医薬組成物の状態で、対象に投与することができる。
【0085】
本明細書において使用される場合、「医薬組成物」とは、本明細書において記載されている1種又は複数種の活性成分と、生理的に適切な担体又は賦形剤などの他の化学成分との製剤を指す。医薬組成物の目的は、化合物を有機体に投与しやすくすることである。
【0086】
本明細書において、「活性成分」という用語は、食細胞を抑制することができ、生物学的作用を説明できる薬剤を指す。
【0087】
以下の本明細書において、「生理的に許容できる担体」及び「医薬として許容できる担体」というフレーズは、同義的に使用することができ、有機体に顕著な刺激を引き起こさず、投与される化合物の生物活性及び特性を無にしない担体又は希釈剤を指す。アジュバントはこれらのフレーズの下に含まれる。
【0088】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、活性成分をさらに投与しやすくするために、医薬組成物に加えられる不活性物質を指す。賦形剤の例には、限定されることなく、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖及び各種のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油並びにポリエチレングリコールが含まれる。
【0089】
薬物の製剤及び投与のための技術は、"Remington's Pharmaceutical Sciences," Mack Publishing Co., Easton, PA, latest editionに見出すことができ、これは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0090】
これらの製剤中の粒子の濃度は幅広く、即ち、約0.5重量%未満、通常0.5重量%又は少なくとも約0.5重量%から、15又は20重量%ほどまで変更することができ、選択される特定の投与方法に従って、液量、粘度などによって最初に選択される。粒子製剤を調製するための実際の方法は、当業者には知られているか、又は明らかであろうし、例えば、Remington's Pharmaceutical Science, Mack Publishing company, Easton, PA, latest editionに詳しく記載されている。
【0091】
粒子が子宮内膜症の部位で食細胞(例えば、循環する単球又は腹腔マクロファージ)と接触している状態ならば、任意の投与経路が採択され得る。例えば、適切な投与経路には、筋肉内注射、皮下注射並びに脳室内、静脈内、動脈内、腹腔内及び鼻腔内の直接注射を含む非経口送達が含まれる。
【0092】
以上の本明細書に言及されたように、本発明の粒子は、循環する単球を減少させ、ひいては子宮内膜における機能性マクロファージの数を制限するために、全身に(例えば、静脈内に)投与される可能性がある。
【0093】
子宮内膜部位における食細胞を選択的に下方制御するために、特に好ましい投与経路は腹腔内投与である。例えば、本発明の粒子は、直接腹腔内注射によって投与することができる。また、本発明の粒子は、腹腔鏡手術又は開腹手術中に投与してよい。子宮内膜症を除去するために腹腔鏡手術又は開腹手術を行う場合、術後の再発を防止するために、一般的には粒子が投与される。粒子は、子宮内膜症の除去前又は除去後に投与され得る。腹腔鏡術については、腹部を気体、一般的には二酸化炭素で膨張させる。気体を特殊針で注入し、これによって腹壁が臓器から離れる。次いで、小さい切開口を通じて腹腔鏡を挿入し、粒子を腹腔中に投与及び/又は直視下で病変中に注入することができる。
【0094】
さらにまた、本発明の粒子は、子宮内膜症を縮小/除去する手技中、又はインビトロ受精(IVF)手技中に、腹腔鏡又は超音波誘導下注入によって、子宮内膜症に(病巣内に)直接投与することができる。
【0095】
その上また、本発明の粒子は、腹膜透析のために形成されたものに類似した装置によって、腹膜に投与することができる。例えば、粒子は、一般的には開腹術又は腹腔鏡下中に外科的に挿入される、体内に留置した腹膜カテーテルによって投与することができる。線維組織をカテーテルのポリエステル繊維のカフに接着し、カテーテルを皮下に固着し、皮膚から及び漏出物から持ち込まれる細菌から腹腔を封じる。一般的には、カテーテルは一定時間、例えば30〜120日間、体内に残す。腹膜透析カテーテルは挿入後直ちに使用することができるが、治癒を促進し、漏出の可能性を減らすために10〜14日の待機期間が推奨される。
【0096】
その上また、腹腔内投与は、子宮体腔及び卵管の中を経由して設置することによって達成され得る。
【0097】
したがって、本発明に従って使用される医薬組成物は、1種又は複数種の生理的に許容できる担体を使用して、従来の方法で調剤することができ、かかる担体は、活性成分を医薬として使用することができる製剤に加工処理しやすくする、賦形剤及び添加剤を含む。適した製剤形態は、選択される投与経路及び薬剤によって決まる。
【0098】
注射については、医薬組成物の活性成分は、水溶液、好ましくはアミノ酸緩衝液などの生理的に適合性がある緩衝液、例えばヒスチジン緩衝液に調剤してよい。
【0099】
本明細書において記載されている医薬組成物は、非経口投与用、例えば、ボーラス注射又は持続注入による投与用に調剤されることが好ましい。注射用製剤は、例えばアンプル剤での、又は追加の保存剤を有していてもよい反復投与用容器での単位剤形で提示することができる。組成物は、懸濁剤、液剤或いは油性又は水性の媒体(ゴマ油、又はオレイン酸エチル、トリグリセリドなどの合成の脂肪酸エステルなど)中での乳剤であってよく、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調合剤を含んでよい。
【0100】
注射用水性懸濁剤は、懸濁液の粘度を増加させる物質、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどを含んでよい。
【0101】
また、活性成分は、使用前に、適切な溶媒、例えば発熱物質を含まない滅菌水をベースとした溶液を用いて構成することを目的とした粉末の形態であってもよい。
【0102】
本発明の文脈において使用するのに適した医薬組成物は、意図された目的を達成するために、活性成分が有効な量で含まれる組成物を含む。より具体的には、治療有効量とは、疾患(例えば、連鎖球菌咽頭炎)の症状を予防、緩和若しくは改善するか、又は治療される対象の生存を延長するのに有効な活性成分(治療薬)の量を意味する。診断上有効な量は、疾患の診断(存在、病期又は必要な治療計画を含む)を可能にする活性成分(診断用薬剤)の量である。
【0103】
治療上及び診断上有効な量の決定は、当業者の能力の範囲内で、特に、本明細書に提供される詳細な開示に照らせば申し分ない。
【0104】
本発明の方法で使用される任意の薬剤については、治療有効量又は用量は、インビトロ及び細胞培養のアッセイから最初に推定される可能性がある。例えば、用量は、所望の濃度又は力価を得るために、動物モデルを用いて処方することができる。かかる情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
【0105】
本明細書において記載されている活性成分の毒性及び治療効果は、インビトロ、細胞培養又は実験動物を用いた標準的な製薬学的手法によって測定することができる。インビトロ及び細胞培養のアッセイ及び動物実験におけるこれらから得られたデータを、ヒトに使用するための投与量の範囲を処方する際に使用することができる。投与量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じて変更してもよい。正確な処方、投与経路及び投与量は、患者の状態を考慮して、個々の医師によって選択され得る。(例えば、Fingl, et al., 1975, in "The Pharmacological Basis of Therapeutics", Ch. 1 p.1を参照のこと)。
【0106】
投与量及び投与間隔は、生物学的作用を誘発又は抑制するのに十分な活性成分の血清濃度(最小有効濃度、MEC)を提供するために、個々に調節され得る。MECは各製剤に関して変化するが、インビトロデータから推定することができる。MECを得るのに必要な投与量は、個々の特性及び投与経路によって決まる。血清濃度を測定するために、検出アッセイを使用することが可能である。
【0107】
治療される状態の重症度及び感受性に応じて、数日から数週間まで続く治療の経過とともに、又は治癒するか、又は病状が軽減するまで、投薬は単回又は多回の投与からなることができる。
【0108】
投与される組成物の量は、言うまでもなく、治療されている対象、病気の重症度、投与方法、処方する医師の判断などによって決まる。
【0109】
本発明の組成物は、必要に応じて、FDA認可キットなどの、パック又はディスペンサー装置で提示することができ、これらは活性成分を含む1種又は複数種の単位剤形を含んでよい。パック又はディスペンサー装置には、投与上の注意が添付される可能性がある。パック又はディスペンサーには、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された書式の、容器に関連する注意書も添付される可能性がある。かかる注意書は、例えば、処方箋調剤薬については米国食品医薬品局によって認可されたラベルからなるか、又は認可された製品の添付文書からなることが可能である。適合性がある医薬担体で調剤される、本発明の製剤を含む組成物を、以上にさらに詳しく述べたように、調製し、適切な容器に収め、適用される状態の治療に関してラベルで表示することも可能である。
【0110】
以下の実施例は限定するためのものではなく、これらを調べてみると、普通の当業者には、本発明のさらなる目的、利点及び新規の特徴が明らかになろう。また、以上の本明細書に詳しく叙述されているように、及び以上の特許請求の範囲の部に請求されているように、本発明の種々の実施形態及び態様の各々については、以下の実施例に実験的裏づけを見出す。
【0111】
[実施例]
これから以下の実施例に言及するが、かかる実施例は、上記の説明に加えて、限定しないやり方で本発明を例証する。
【0112】
一般に、本明細書において使用される命名法及び本発明において利用される実験手法には、分子の技術、生化学的技術、微生物学的技術及び組換えDNA技術が含まれる。かかる技術は、文献中で十分に説明されている。例えば、以下を参照のこと。"Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994);"Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique" by Freshney, Wiley-Liss, N. Y. (1994), Third Edition;"Current Protocols in Immunology" Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994);Stites et al. (eds), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994);Mishell and Shiigi (eds), "Selected Methods in Cellular Immunology", W. H. Freeman and Co., New York (1980);利用可能なイムノアッセイは、特許及び科学文献に多数記載されている。例えば、以下を参照のこと。米国特許第3791932号;第3839153号;第3850752号;第3850578号;第3853987号;第3867517号;第3879262号;第3901654号;第3935074号;第3984533号;第3996345号;第4034074号;第4098876号;第4879219号;第5011771号及び第5281521号;"Oligonucleotide Synthesis" Gait, M. J., ed. (1984);"Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985);"Transcription and Translation" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1984);"Animal Cell Culture" Freshney, R. I., ed. (1986);"Immobilized Cells and Enzymes" IRL Press, (1986);"A Practical Guide to Molecular Cloning" Perbal, B., (1984)及び"Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press;"PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications", Academic Press, San Diego, CA (1990);Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996);これらはすべて、本明細書に十分に記述されているように、参照によって組み込まれる。他の一般的な参照文献は、この文書全体にわたって提供される。その中の手法は、当業者にはよく知られているとされており、読者に便利なように提供される。その中に含まれている情報はすべて、参照によって本明細書に組み込まれる。
【実施例1】
【0113】
子宮内膜症の治療を目的として、アレンドロネート封入リポソームの試験をラットモデルを対象に行った。
【0114】
原料及び方法
ラットモデルにおける子宮内膜症の発生:Sabra系成熟雌性ラット24匹を、1つの子宮角を切除することによって子宮内膜症モデルに供した。麻酔下に、子宮卵管端及び頚管端での子宮角の結紮術によって子宮角を摘出し、滅菌溶液に浸した。メスを用いて縦方向に切開することによって子宮内膜を露出させ、開口した子宮角から四角い6片を切り取り、5/0のナイロン製縫合糸を用いて小腸の腸間膜に縫合した。
【0115】
リポソームの調製:脂質薄膜を水和させることによって、アレンドロネート封入リポソームを調製した。DSPC、DSPG及びコレステロール(3:1:2)をt−ブタノールに溶かし、一晩凍結乾燥させた。凍結乾燥ケーキを、アレンドロネート(CIPLA LTD社製、Mahesh Hiremath, Mumbai-400008、インド)を含む水溶液で、55〜60℃にて水和し、同温度で1時間放置した。次いで、押出機を用いて、細孔サイズが0.8、0.4及び0.2μmの二重ポリカーボネート膜(Nuclepore社製)を通して、懸濁液を3回押し出した。リポソームを、Sephadex G-50カラムに通し、pH7.2のMES/HEPES緩衝液中(50mM MES、50mM HEPES、75mM NaCl)に溶出させ、被包されていない薬物を除去した。
【0116】
動物への投与:ラットを無作為に2つの投与群及び1つの対照群に分け、アレンドロネート封入リポソームを週1回4週間腹腔内投与した。2投与群の用量は、注入1回につき1mg/kg、及び注入1回につき10mg/kgを使用した。最初の手術後4週目に、ラットを屠殺した。
【0117】
検体調製及び分析:観察者1名が盲検的に、移植片の数及びサイズを記録し、算出した移植率(即ち、屠殺動物における移植片の数/誘導した移植片の数)及び癒着を1〜10の評点によって等級付けした。
【0118】
移植片の組織切片をホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。組織薄片を切り、スライドガラスに固定した。スライドガラスをヘマトキシリン−エオジンで染色した。組織をマウス抗ラットマクロファージ抗体ED1(CD68、Serotec社製、英国)で染色し、ヤギ抗マウスIg−ビオチン(Jackson lmmunoResearch社製)で対比染色した。次いで、観察者2名が盲検的にスライドガラスに評点をつけ、染色マクロファージを高倍率視野で計数することによって、ラット1匹につき1つの移植片におけるマクロファージの浸潤密度に評点をつけ、1例につき5視野の評点を平均した。評点を背景細胞800個につき計数された染色マクロファージの平均数として表した。
【0119】
結果
子宮内膜症モデルは、対照群において移植率97%及び平均癒着評点8.5/10が実証されたことによって、正当性が確認された(図1)。肉眼的観察によって、代表的な子宮内膜症性嚢胞が明らかになった(図2)。H&E染色によって、子宮内膜間質及び子宮内膜腺が嚢胞腔を取り囲んでいること、即ち子宮内膜症を示すことが明らかになった(図3)。低用量及び高用量の両方のアレンドロネート封入リポソームを投与することによって、子宮内膜症移植片の、移植率、平均直径、平均体積及び癒着評点が有意に減少した(下表1を参照のこと)。高用量群において癒着評点がやや低かったものの、高用量群と低用量群との間に有意差は認められなかった。免疫組織化学は、対照群とは異なり、低用量(注入1回につき1mg/kg)投与においてマクロファージの浸潤が有意に減少する傾向を示した。アレンドロネートを投与したラットは低密度の染色細胞を示した(図4)が、偽薬を投与したラットは高密度の染色細胞を示した(図5)。
【0120】
高用量群(10mg/kg/回)と対照群との間に有意差は認められなかった(下表1、図4及び5を参照のこと)。
【0121】
【表1】

【0122】
結論
活性化したマクロファージは、子宮内膜症移植片の開始及び増殖に極めて重要な役割を果たす。ラット子宮内膜症モデルにおいて、リポソームのアレンドロネートを腹腔内に使用することでマクロファージが激減し、これによって子宮内膜症移植片の開始及び増殖が効果的に抑制された。
【0123】
本発明のいくつかの特徴は、明確にするために別々の実施形態の文面に記載されているが、これらはまた1つの実施形態の中で組み合わせて提供され得ることは認識される。反対に、本発明の種々の特徴は、簡潔にするために1つの実施形態の文面に記載されているが、これらはまた別々に、又は任意の適切な副次的組合せで提供され得る。
【0124】
本発明は、この具体的な実施形態と関連して記載されてきたが、多くの代替案、変更例及び改変例は、当業者には明らかであろうことは明白である。したがって、添付した特許請求の範囲の精神及び幅広い範囲内に含まれる、かかる代替案、変更例及び改変例をすべて包含することが意図される。個々の出版物、特許又は特許出願の各々が、参照によって本明細書に組み込まれることを明確に及び個々に示された場合と同程度に、本明細書において言及された、出版物、特許及び特許出願はすべて、参照によって本明細書に完全に組み込まれる。また、本出願におけるいずれの参照の引用又は識別も、かかる参照が本発明の先行技術として利用できる権利として解釈されないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】ラットモデルにおける最初の子宮内膜症誘導手術後4週目の腹腔内癒着を示す写真である。
【図2】ラットモデルにおける最初の子宮内膜症誘導手術後4週目の開腹下に子宮内膜嚢胞を示す写真である。
【図3】最初の子宮内膜症誘導手術後4週目に切除し、ヘマトキシリン−エオジンで染色した代表的な子宮内膜嚢胞の顕微鏡写真である(倍率400倍)。
【図4】アレンドロネート封入リポソームを1mg/kg/週で投与し、最初の子宮内膜症誘導手術後4週目に切除した典型的な子宮内膜移植片の顕微鏡写真である。パラフィン切片をヘマトキシリン−エオジンで染色し、ED1ラット抗マクロファージ抗体で対比染色した(倍率400倍)。
【図5】偽薬を投与し、最初の子宮内膜症誘導手術後4週目に切除した典型的な子宮内膜移植片の顕微鏡写真である。パラフィン切片をヘマトキシリン−エオジンで染色し、ED1ラット抗マクロファージ抗体で対比染色した(倍率400倍)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮内膜症の治療に使用される、食細胞を抑制するためのビスホスホネートを含む粒子であって、前記ビスホスホネートが以下の式Iを有する化合物を含む粒子。
【化1】

(I)
[式中、Rは、H、OH又はハロゲン基であり、
は、ハロゲン;ヘテロアリール又はヘテロシクリルC−C10アルキルアミノ又はC−Cシクロアルキルアミノで置換されていてもよい、直鎖又は分枝のC−C10アルキル又はC−C10アルケニル;Yが、水素、C−Cシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールである−NHYであり;或いはRは、Zがクロロ置換フェニル又はピリジニルである−SZである]
【請求項2】
ビスホスホネートが、クロドロネート、エチドロネート、チルドロネート、パミドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、アレンドロネート、イバンドロネート、リセドロネート及びゾレドロネートからなる群から選択される、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
ポリマー粒子、マイクロカプセルリポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル及びナノスフェアからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項4】
サイズが0.02〜1ミクロンである、請求項1〜3のいずれかに記載の粒子。
【請求項5】
薬剤を含む粒子が、凝集体、綿状の固まり、コロイド、ポリマー鎖、不溶性塩及び不溶性複合体からなる群から選択される、請求項1に記載の粒子。
【請求項6】
ビスホスホネートが粒子内に被包されている、粒子に包埋されている、或いは粒子表面に吸着されている、請求項1に記載の粒子。
【請求項7】
免疫抑制剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項8】
治療が、子宮内膜症の再発を防止することを含む、請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項9】
粒子の投与前、同時、及び/又は投与後にホルモンが投与される、請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項10】
ホルモンが、避妊薬、ゴナドトロピン放出ホルモン及びダナゾールからなる群から選択される、請求項9に記載の粒子。
【請求項11】
粒子の投与前、同時、及び/又は投与後に免疫抑制剤が投与される、請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項12】
免疫抑制剤が、粒子内に共に製剤化されている、請求項11に記載の粒子。
【請求項13】
免疫抑制剤が、r−hTBP又はロキソリビンである、請求項11に記載の粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−252017(P2011−252017A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178059(P2011−178059)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【分割の表示】特願2007−555776(P2007−555776)の分割
【原出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507275453)ハダシット メディカル リサーチ サービシーズ アンド デベロップメント リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】HADASIT MEDICAL RESEARCH SERVICES AND DEVELOPMENT LTD.
【出願人】(507275464)イッサム リサーチ デベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ イェルサレム (2)
【氏名又は名称原語表記】YISSUM RESEARCH DEVELOPMENT COMPANY OF THE HEBREW UNIVERSITY OF JERUSALEM
【Fターム(参考)】