子癇前症リスクの判定方法
胎児の母親が妊娠中に子癇前症にかかるリスクを判定するための方法であって、(a)胎児に血縁のある個人からのゲノムDNAサンプルを提供するステップと;(b)PP13遺伝子における1又はそれ以上の変異の存在について前記DNAを解析するステップと;(c)前記変異の存在に基づいて母親のリスクを判定するステップとを含む方法。また、変異PP13タンパク質バリアント、および天然PP13遺伝子の特異的ゲノム配列および/またはその変異配列のためのDNAプローブを含む、本発明の方法における使用のためのキットも開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子癇前症にかかるリスクを示すことのできるPP13の変異バリアントを同定するためのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
子癇前症(PE)として知られる妊娠疾患は全ての妊婦の5−7%に起こる望ましくない合併症であり、妊娠中の母体死亡の2番目に頻度の高い原因である(米国においては妊娠に伴う母体死亡の18%を占める)。この疾患は、臨床症状を起こす胎盤形成および胎盤への血液/酸素/栄養素供給の障害に起因する、胎盤機能不全から生じる。
【0003】
子癇前症は、妊娠20週後に、以前には尿中タンパク質が無から微量であった女性が尿試験紙で≧2+、または24時間の蓄尿において>300mg/dLと判定されるタンパク尿症と合わせて、以前には正常血圧であった女性が4−6時間の間隔(ある場合には4−72時間の間隔)での2度の血圧測定により、≧90/140mmHg(収縮期/拡張期、少なくとも1つの)の高血圧を新規に発症することとして定義される。
【0004】
全ての子癇前症の妊娠のうち約50%は帝王切開により分娩し、これは全人口の妊娠においてはわずかに15−18%であることと比較される。妊娠中に子癇前症を経験した女性は、その結果として寿命の短縮につながる循環器疾患にかかることへの9倍高いリスクを有する。PEにかかる妊婦の比率は発展途上国において比較的高いが、その米国における数も高いままである(5−7%)。
【0005】
重篤な子癇前症は、高血圧症が≧110/160mmHg(収縮期/拡張期、少なくとも1つの)、およびタンパク尿症が尿試験紙で≧3+、または24時間の蓄尿において>3gr/dLである子癇前症として定義される。極端な場合子癇前症は、母親を死亡のリスクにさらす痙攣、脳卒中、および昏睡を伴う緊急事態である子癇に変わる可能性がある。結果として、重篤な子癇前症にかかった女性は、胎盤を取り除いて母親の生命を救うため48時間以内に分娩させられる。
【0006】
早期の子癇前症は、疾患の重篤度が期間以前(<妊娠37週)の分娩を要求する、上で定義された重篤な子癇前症の形である。この疾患の形はしばしば子宮内での胎児の発育遅延(IUGR)を伴い、これは母親の生命だけでなく、胎児の生命も危険にさらす。NICHDによると、早期の子癇前症は全てのPEのケースの20−25%を占めており、このことはその15%が34週以前に分娩する(すなわち負担のかかる前分娩期間を経験した後に乳児が非常に未熟な状態で出生する)100人の妊婦のうちの1−2人を意味する。分娩が早期であるほど乳児の合併症は重篤であり、これは乳児の低出生体重、失明を含む不完全な内部器官の成熟、運動および認知障害、生涯にわたる医学的な障害、および後に高血圧、循環器疾患および糖尿病にかかるリスクの増大を合併する。34妊娠週(GW)以前に分娩するケースのうちの10%は、ほとんどの死亡ケースの原因である最も重篤なものであり、出生した乳児が生存する場合は6−8週の新生児集中治療室に入ることが必要である。NICHDによると、これは救命の可能性および未熟児の予防のために早期発見が必須となるグループである。現在、子癇前症の唯一の治療法は母親に分娩させることであり、このような分娩が未熟な状態で行なわれた場合、新生児には低出生体重、運動および認知障害による様々な障害が表れ、かつ非常に重篤な場合には分娩中または分娩後に死亡する。子癇前症にかかるリスクを早期に同定する試みのための多数の研究が行なわれてきた。
【0007】
この疾患は通常、妊娠の3番目の3ヶ月間に起こるが、根底にある胎盤の病理変化はかなり早期に発生する。従って、受胎前または妊娠中のいずれかにおいて子癇前症にかかるリスクを早期に発見することは、疾患の予防または症状の程度を緩和させるための手段となる。
【0008】
1)早期発見は、女性の綿密な調査によるリスクの管理を可能にする。高リスクにある女性の有効な拡大調査は米国産科婦人科学会(American College of Obstetric and Gynecology)の指針(“ACOG指針”)に従い、高リスクのケースにおけるこの拡大調査は、結果を有意に改善する。妊娠管理プログラム(Pregnancy Management Programs)は、綿密な調査を参加する妊婦への教育および認識プログラムの提供と組み合わせることによる費用の節約を示した。利点の中には、全ての分娩中、早期PE(<34週)による出生の中止が全国平均の1.96%に比べわずかに0.6%であること、全ての分娩中の未熟児分娩が全国基準の2.3%に比べ0.9%に減少したこと、および子癇前症による低出生体重が全国平均の2.9%に比べ1.3%であったことがある。綿密な調査は、妊婦が出生前に第三次レベルの医療センターに至ることを可能にする。これは地域の診療所および地方を拠点とした保健サービスの設置においては非常に重要な課題である。その他の利点には、治療や胎児の臓器の成熟を促進する出産前コルチコステロイドのような薬剤を投与するための時間を稼げることがある。綿密な調査は特定のケースにおいて、未熟新生児の重篤度を減少させるための妊娠の持続延長を可能にする。
【0009】
2)早期発見により、リスクを予防/減少させるために胎盤に作用するとみなされる様々な予想される薬剤を用いた薬剤介入ストラテジーの展開のための長い期間が利用可能となる。治療のためのゴールドの基準は存在しないが、中でも低量アスピリン、低分子量ヘパリン、ビタミンCおよびEのような抗酸化剤、および硫酸マグネシウムを含む幾つかの候補が見込みを示している。これらの全ての研究においても、リスクを持つ全ての女性が治療介入の恩恵を受けられるわけではない。あるケースでは治療介入の開始が遅すぎたことが示されるが、他のケースでは、使用した薬物が適切ではなかったか、あるいは適切な時間または量において使用されなかったかを示すはっきりとした証拠がない。現在の研究は、それぞれの女性に対して、現在入手可能な予想される薬剤のリスト(いずれ入手可能になる薬剤も同様に)から最も適したものによる薬剤介入を仕立てること、および治療の効果を継続的にモニターすることが必要であることを示している。
【0010】
3)家族歴または以前の妊娠歴に基づいた子癇前症にかかりやすい患者、特に子癇前症により子を失った患者には、妊娠計画のために妊娠前の発見が最も重要であり、上に説明したような予防的処置がとられる。体外受精プログラムに参加する女性にとって、子癇前症の増加した事前のリスクの発見は、着床の管理および子癇前症の増加した事前のリスクを伴わないであろうインプラントの選択のために有利であり得る。
【0011】
胎盤タンパク質13(PP13)は15−16,000MWのタンパク質であり、ヒト胎盤組織から精製されるか、またはここにその内容が参照として取り込まれる米国特許第6,548,306号(Admon,et al)に記載された組み換え技術により調製されてよい。PP13のアミノ酸およびDNA配列を図5に示し、アミノ酸配列を図8Aに示す。精製されたPP13は、子宮内発育遅延(IUGR)、子癇前症、およびここにその内容が参照として取り込まれる米国特許第5,198,366号(Silberman)に記載された早期分娩のような幾つかの妊娠関連疾患を検出するためのアッセイの開発に用いられた。標識PP13および抗PP13ポリクローナル抗血清を用いて、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合免疫測定法(ELISA)の両者が開発された。
【0012】
PP13遺伝子、LGALS13の解析は、その3イントロンおよび4エクソンを含む基本的構造を明らかにし、前記構造は着床において特に重要な糖残基に高アフィニティを有するタンパク質群であるガレクチンファミリ(Than,N.G.,et al(1999)Placenta 20:703−710;Than,et al.,(2004)Eur.J Biochem.271(6):1065−1078)に高い配列相同性を示す。実際にPP13は免疫組織化学により、胎盤形成に重要であることが見出された。
【0013】
ここにその内容が参照として取り込まれる米国特許第6,790,625号は、PP13に対するモノクローナル抗体および妊娠初期段階の間に母親の血清PP13を測定できる固相免疫アッセイを開示している。実際に、Nicolaides et al.,(2006)A novel approach to first−trimester screening for early pre−eclampsia combining serum PP−13 and Doppler ultrasound Ultrasound in Obstetrics and Gynecology,27(1)pp.13−17では他と同様に、この特許に基づいて開発されたELISAキットを使用して、子癇前症の増加リスクに対応する最初の3ヶ月間における比較的低量のPP13を非常に高い精度で示している。
【0014】
ここにその内容が参照として取り込まれる国際公開第04/021012号は、PP13の濃度を含む幾つかの因子に基づいた妊娠合併症のための診断法を開示している。
【0015】
ここにその内容が参照として取り込まれるStolk,M.Et Al.(2006)Hypertension In Pregnancy,Abstracts from the 15th World Conference of the Intl.Soc.for the Study of Hyper,in Preg.,Vol.25(Suppl.1)P029は、ヒトガレクチン/胎盤タンパク質13遺伝子、LGALS13の核酸配列変異について記載している。
【0016】
ここにその内容が参照として取り込まれるSammar,M.et al.(2007)RNA splicing and DNA polymorphism leading to two shorter subforms of placenta protein 13 in preeclampsia,american college of obstetric and gynecology conferenceは、PP13遺伝子のエクソン2を欠失したスプライスバリアントについて記載している。
【発明の概要】
【0017】
本発明の目的は、妊婦が子癇前症にかかるリスクの判定方法を提供することである。
【0018】
本発明の一態様によれば、
(a)胎児に血縁のある個人からのPP13遺伝子を含むゲノムDNAサンプルを提供するステップと;
(b)PP13遺伝子における1又はそれ以上の変異の存在について前記DNAを解析するステップと;
(c)前記変異の存在に基づいて母親のリスクを判定するステップとを含む、胎児の母親が妊娠中に子癇前症にかかるリスクの判定方法が提供される。
【0019】
よく知られているように、PP13の主要な源である胎盤の遺伝子型は胎児の遺伝子型に由来する。従って、胎盤のゲノム中のPP13遺伝子に変異が存在するリスクがあるかどうかを判定するためには、胎児の両親または兄弟姉妹の遺伝子型の判定またはハプロタイプの構築および解析、遺伝様式の調査、遺伝様式の調査(母親から子へ)、インプリンティングの証拠の同定、およびその他の遺伝的分析法を行うことが十分である。従って、本発明の方法における胎児に血縁のある個人は以下の、
(a)胎児の母親、または彼女の母親または父親;
(b)胎児の父親、または彼の母親または父親;
(c)胎児の兄弟姉妹、または胎児の父親もしくは母親の兄弟姉妹(陰性結果は確実ではないが);
(d)妊娠もしくは双生児妊娠の胎盤、または母親の以前の妊娠の胎盤;および
(e)胎児それ自身;
の1又はそれ以上から選択されてよい。上記のことからゲノムDNAサンプルは母親の妊娠前に提供されてよいことが理解され、従って母親の妊娠中と同様、受胎前の助言も可能になる。
【0020】
PP13遺伝子は、全血からのDNA抽出およびPCRによる増幅に続くMultiphor SSCP/ヘテロ二本鎖分析によるスクリーニング、またはその他の関連技術のような、当業の標準的な方法を用いて解析されてよい。
【0021】
PP13遺伝子内の変異は、妊婦におけるPP13の表現型に影響を与える、すなわちサイレント変異ではないことが予想され得る。例えば、以下のPP13のパラメータ:
(a)女性の身体物質において測定されるPP13の発現レベル;
(b)発現するアミノ酸配列の発現の正確さ、例えば、起こり得る1又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失、反復または置換;
(c)翻訳後のプロセシング、すなわち糖鎖付加、リン酸化、メチル化など;
(d)輸送、すなわちエンドソームのような、胎盤環境におけるPP13の再配置;
(e)着床、母親の動脈の調節、細胞外マトリックス内の糖残基への結合、胎盤内でのカルシウム代謝、リゾホスホリパーゼ活性、リン脂質の放出またはプロスタグランジンの上昇に関する機能喪失;および
(f)上記に関わる機能獲得。
の1又はそれ以上が影響され得る。
【0022】
ゲノム変異の例は、
・エクソンまたはイントロン内のフレームシフト変異;
・LGALS13遺伝子の発現レベル、構造、プロセシング、輸送、またはプロモータバリアントの転写活性をアッセイするための基本的なルシフェラーゼレポータの使用を含む複数の方法により評価される活性に影響し得る、前記遺伝子のプロモータまたは他のいずれの調節エレメントにおけるいずれの変異;
・LGALS13またはその19番染色体上の遺伝子座の機能、またはPP13に関連する全ての染色体の機能を損ない得る、いずれの拡張可能な反復変異;
・後のRNAスプライシングまたはその他の現象に影響し得る、イントロン領域におけるいずれの伸展;
・ヘテロ接合性欠失(LOP)を導き、かつ遺伝様式を変化させるいずれの変異;
・脆弱な遺伝子領域を導き得る反復変異、またはその他の切断変異;
・反転、転位、またはその他の作用に関する染色体変異;
・エクソン、またはイントロンレベルにおける単一ヌクレオチド点変異(SNIPS);
・メチル化による遺伝子の全体的制御;および
・反転、転位などに関する変異;
等を含んでよい。
【0023】
変異のタイプは、女性が子癇前症にかかるリスクにあるかどうかだけでなく、どのタイプの子癇前症にかかるリスクにあるかを判定するために使用できる。例えば、早発性の子癇前症にかかった女性にみつけられた一フレームシフト変異は222delT/L74Wと名付けられた。この変異のDNA配列(配列番号11)を図7に示す。この変異においてはbp#222(=T)が欠失し、そのためにアミノ酸#74がLからWに変化している。図8C(配列番号1)に示すように、この変異は末端に変化をもたらし、かつ切断されたPP13分子の101アミノ酸の産生をもたらす。従って、222delT/L74Wタイプのフレームシフト変異の存在は早発性の子癇前症にかかる増大したリスクを示す。同様に、PP13遺伝子のその他の変異が同定されてよく、これは子癇前症の特異的なタイプと関連してよい。本発明はまた、誘導、発現、およびDNAからRNAを通して機能性/機能障害性タンパク質を導く下流ステップを調節し得る、LGALS13遺伝子のいずれの調節性領域(プロモータを含む)の同定を含む。
【0024】
本発明の方法に従い、変異の存在に基づいて母親が子癇前症にかかるリスクを判定するためのアルゴリズムが開発されてよい。例えば、PP13遺伝子内の特定の変異について両親共にホモ接合性である場合、胎児もまた100%の確率で前記変異を有し得ることから、母親が前記変異の同一性に基づいた子癇前症の特定のタイプにかかるリスクが判定できる。別のケースでは、PP13遺伝子内の特定の変異について両親共にヘテロ接合性である場合、胎児は25%の確率で前記変異を有し得ることから、母親が前記変異の同一性に基づいた子癇前症の特定のタイプにかかるリスクが判定できる。前記アルゴリズムはまた、解析に影響するいずれの特異的な遺伝様式、またはインプリンティングを考慮してよい。
【0025】
本発明の別の態様によれば、
(a)母親の身体物質由来のPP13分子のサンプルを提供するステップと;
(b)前記PP13分子の構造を決定するステップと;
(c)前記PP13分子の構造に基づき女性のリスクを判定するステップとを含む、妊婦が子癇前症にかかるリスクの判定方法が提供される。
【0026】
身体物質の限定されない例は、母親の血液、母親の唾液、母親の尿、羊水、臍帯血、絨毛膜絨毛、および胎盤組織を含む。
【0027】
本発明の一態様によれば、PP13分子はPP13タンパク質であり、PP13分子の構造はPP13分子の分子サイズまたはアミノ酸配列である。PP13タンパク質の構造は例えば、平均的な当業者に公知の免疫学的に、またはタンパク質化学により決定されてよい。例えば、天然野生型PP13および/または特定の変異PP13タンパク質に対する特異的な抗体が、天然PP13および/または変異PP13それぞれの存在を決定するために使用されてよい。
【0028】
本発明のこの態様の別の実施形態において、PP13分子はPP13のmRNAまたはこれに対応するcDNAであり、PP13分子の構造はPP13のmRNAまたはこれに対応するcDNAの配列である。mRNAまたはcDNAの配列は、PCR増幅のような当業における標準法を用いて決定されてよい。
【0029】
本発明のこの態様の別の実施形態において、LGLAS13のDNA、cDNAまたはRNAにおける多型性は、
a.指定されたマイクロチップと、以下の全てのタイプ:SNIPSのアイソフォーム、フレームシフト変異、マイクロサテライトまたはフットプリントまたはプロモータ活性化/抑制化またはRNAスプライスまたは上に列挙したようなその他のいずれの変異の形とのオーバーレイ;
b.上に列挙したような患者の組織または体液との反応;
c.蛍光、比色、ランタニド、またはその他のいずれの検出法および/または増幅光学法(amplification visual method)による変異の存在およびその性質の検出;および
d.シグナルプロセシングのソフトウェアおよび解釈;
に対して使用される。
【0030】
本発明の以前の態様にあるように、女性が子癇前症にかかるリスクは変異PP13分子の同一性に依存し得る。例えば、変異PP13分子がフレームシフト変異の結果として見出される場合、これは子癇前症、あるケースでは特定のタイプの子癇前症にかかるリスクを示していると考えられる。上記の222delT/L74W変異の例を上げると、mRNAがこのような欠失をもつと判定することは、早発性の子癇前症にかかるリスクを示していると考えられる。以下に述べるように本発明の発明者は、上記の変異遺伝子によりコードされるPP13由来のポリペプチドの単離に成功した。さらに、天然野生型PP13に対する特異的なモノクローナル抗体は変異PP13ポリペプチドを認識しないことが示された。従って、変異PP13に対する特異的な抗体が調製されてよく、早発性の子癇前症にかかるリスクを判定するための変異分子を同定するために使用されてよい。
【0031】
PP13分子内の可能な変異の別の例は、選択的スプライシングによる変異である。PP13遺伝子は3個のイントロンにより連結された4個のエクソンよりなる。天然PP13分子の転写においてイントロンは切除され、続いてエクソンがスプライスされて、図5(配列番号6)に示される139アミノ酸のPP13タンパク質をコードするmRNAを生じる。しかしながら選択的スプライス部位におけるスプライシングは、天然の長さとは異なる長さのPP13タンパク質をコードする、RNAのスプライスバリアントを生じる。このような変異の一例にΔEX−2スプライスバリアントがあり、これは図6(配列番号2)に見られ得るように大部分のエクソン2、およびエクソン3の小部分を欠損している。結果として139に代わり109アミノ酸のタンパク質を生じる(図6、8B)。このスプライスバリアントは、遅発性の子癇前症にかかった女性由来のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより得られた。従って、ΔEX−2スプライスバリアントの存在の決定により、遅発性の子癇前症にかかる増大したリスクを示すことができる。
【0032】
本発明のさらなる態様において、変異PP13タンパク質バリアントが提供される。バリアントを生じる変異は様々なタイプであってよく、フレームシフト変異、点変異、染色体変異、および選択的スプライシングによる変異を含む。
【0033】
本発明のこの態様の一実施形態において、以下の変異:
(a)a−98C/A置換[rs3764843];
(b)IVS2−22(A/G)[rs2233706];
(c)IVS2−36(A/G);
(d)222delT/L74W;および
(e)ΔEX−2
のうち1又はそれ以上が除外される。
【0034】
本発明のこの態様の別の実施形態において、バリアントはIVS2−36(A/G)、222delT/L74W(配列番号1)またはΔEX−2(配列番号2)からなる群より選択される。
【0035】
本発明のこの態様はまた、前記バリアントに特異的に結合する抗体、前記バリアントをコードする核酸配列およびこれらの配列を含むベクタを含む。
【0036】
本発明のさらなる態様によれば、
(a)ホスト細胞内にPP13バリアントを発現させるステップと;
(b)前記ホスト細胞を破壊して細胞の内容物を遠心分離するステップと;
(c)遠心分離されたペレットを、高濃度の変性剤を含む緩衝液中に再懸濁するステップと;
(d)再懸濁ペレットを、PP13を結合できるアフィニティカラムにロードするステップと;
(e)前記アフィニティカラムを変性剤の勾配により洗浄するステップと;
(f)カラムよりPP13を可溶型で溶出するステップと;
を含む、変異PP13タンパク質バリアントを可溶型で精製する方法が提供される。
【0037】
細菌ホスト内に外来性タンパク質を発現させることにより、発現されたタンパク質がしばしば「封入体」中の不溶性の形で産生されることはよく知られている。このことは要求されるタンパク質が、有用な可溶性の形で産生されることを妨げる。このことはまた、PP13の様々なタンパク質バリアントの発現に対しても事実であった。ここで本発明は、可溶性タンパク質を得るためのバリアントの精製法を見出した。前記方法では尿素の使用が例示されているが、塩酸グアニジンのようなその他のタンパク質変性剤も使用されてよい。
【0038】
本発明のその他の態様は、体外受精または体外診断またはライブ(live)、または体外予後診断または治療の成功へと応用された、PP13のレパートリをそれ自体において、または子癇前症との関連において多様化し得る発現、活性様式、または子孫への伝達過程またはその他の方法のいずれかを調節するための手段として、制限断片長多型(RFLP)、低分子ヘアピン型(sh)RNAまたは低分子干渉(si)RNAまたは(mi)RNAを含むがこれらに限定されないRNAによる手段の使用を含む。
【0039】
本発明のさらなる態様は、本発明の方法における使用のための診断キットを含む。このようなキットは、
a.PP13天然遺伝子の特定のゲノム配列および/またはその変異配列に対するDNAプローブを含む、女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキット
b.PP13天然配列および/またはその変異配列に対する抗体を含む、女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキット
c.PP13天然mRNAの特定の配列および/またはその変異配列に対するRNAプローブを含む、女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキット
d.PP13のcDNAの特定の配列および/またはその変異配列に対するDNAプローブを含む、女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキット
e.PP13のcDNAまたはRNAの特定の配列および/またはその変異配列を含むDNAまたはRNAチップを含む、女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキット
を含んでよい。
【0040】
本発明に従い、LGALS13遺伝子は以下の分析方法:
(a)バイオインフォマティクス
i)プロモータ予測
ii)系統的保存/フットプリント
iii)多型性スペクトル(SNP、マイクロサテライトなど)
(b)遺伝的変異のスクリーニング
i)民族的な頻度
ii)ハプロタイプの構築および分析
iii)初期妊娠損失(すなわちPOC)の頻度−(?生存率への影響)
(c)伝達についての研究
i)伝達様式の調査(母から子へ)
ii)インプリンティングの証拠
(d)メチル化についての研究
i)遺伝子の全体的制御についての調査
(e)選択されたLGALS13配列バリアントの性質決定
(f)鋳型のゲノム性質の完全決定
(g)調査された拡張イントロン領域
(h)マイクロサテライトのような多型性マーカーが利用できる場合、エクソン2のLOHについての探索
(i)「タイプ」222delTバリアントに対する対立遺伝子特異的アッセイの開発
(j)222delTバリアントおよびその他のいずれの可能性のある切断バリアントを同定するためのPTTの使用の検討
(k)エクソン3における配列バリアント[可能な遺伝子変換現象]の特徴付けにはどの方法が最も適するかについての調査
(l)RNAの抽出および調製
(m)pGEM−T Easy vector(Promega)へのクローニング
i)PCRおよびゲル精製
ii)A−テーリング
iii)ライゲーション
iv)コンピテント細胞の調製
v)形質転換
vi)クローン選択
vii)ミニプレップ
(n)pGL2−Basicルシフェラーゼレポータ(プロモータバリアントの転写活性のアッセイのため)
i)ベクタの調製(消化、精製、脱リン酸化、ライゲーション)
ii)形質転換
iii)マキシプレップ
(o)バリアントおよび野生型対立遺伝子を表すコンストラクト[ルシフェラーゼレポータベクタ中の]が、FuGene 6をトランスフェクション試薬として用い、変化した転写活性について調査され得る。
(p)細胞培養
(q)トランスフェクトされた細胞は、回収前に外部刺激[例えば不定のエストロゲン濃度、一過性の低酸素など]を受け、発光法によりルシフェラーゼ活性について分析される。
(r)自動シークエンス(クローンの確認、メチル化状態など)
(s)定量的調査はエクソンバリアントの解析(ミニ遺伝子システムによる)を含むが、リアルタイムPCRは、4個の同定されたイントロン配列バリアントが遺伝子のスプライシングに影響するか否かについての調査に使用され得る。
(t)統計解析
の1又はそれ以上により特徴付けられてよい。
【0041】
本発明のその他の態様は、以下の詳細な記述により明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の理解のため、およびそれが実際にはどのように実行され得るかを理解するために、ここで好ましい実施形態をそれに限定されない例としてのみの目的で、付随する図への参照と共に記述する。
【0043】
【図1】図1は、変異PP13分子がPP13遺伝子からどのように生じるかを例示する模式図である。
【図2】図2は、クローニングおよび大腸菌での発現により、PP13タンパク質が変異cDNAからどのように調製されるかを例示する模式図である。
【図3】図3は、PP13の天然および変異バリアントにより作られるバンドを示すSDS−PAGEゲルの写真である。
【図4】図4A,4B,および4Cは、特異的な抗PP13抗体(4Aおよび4B)またはコントロールの抗ヒスチジン抗体(4C)を用いた、PP13の天然または変異バリアントに対する抗体希釈の作用を表す抗体結合のプロットである。
【図5】図5は、天然組み換えPP13(rPP13)のDNA(配列番号3および4)およびアミノ酸(配列番号5−8)配列である。
【図6】図6は、ΔEX−2PP13スプライスバリアントのDNA(配列番号9および10)およびアミノ酸(配列番号2)配列である。
【図7】図7は、222delT/L74W変異のDNA(配列番号11)配列である。下線で示すヌクレオチドの間にTの欠失が生じる。
【図8】図8A,8B,および8Cは、天然rPP13(配列番号6)、ΔEX−2PP13バリアント(配列番号2)および222delT/L74Wバリアント(配列番号1)それぞれのアミノ酸配列である。後者のバリアントにおける欠失は、末端領域(下線で示す)から終止コドン(#)までに28の新規アミノ酸を作り出すフレームシフトの原因となる。
【図9A】図9は、80例の初期(<妊娠期間(GA)34週)の子癇前症および〜100のコントロールからなる初妊婦の南アフリカコホートにおける多型性の解析であり、図9Aは多型性頻度の解析である。3個の新規なSer;3個の欠失した、および2個の新規なCys;除去されたE75CHO結合部位。
【図9B】図9は、80例の初期(<妊娠期間(GA)34週)の子癇前症および〜100のコントロールからなる初妊婦の南アフリカコホートにおける多型性の解析であり、図9Bは、エクソン3.1SSCP/ヘテロ二本鎖のゲルである。3個の新規なSer;3個の欠失した、および2個の新規なCys;除去されたE75CHO結合部位。
【図9C】図9は、80例の初期(<妊娠期間(GA)34週)の子癇前症および〜100のコントロールからなる初妊婦の南アフリカコホートにおける多型性の解析であり、図9Cは、delT222/−電気泳動図である。3個の新規なSer;3個の欠失した、および2個の新規なCys;除去されたE75CHO結合部位。
【図9D】図9は、80例の初期(<妊娠期間(GA)34週)の子癇前症および〜100のコントロールからなる初妊婦の南アフリカコホートにおける多型性の解析であり、図9Dは、delTと野生型とのアラインメントである。3個の新規なSer;3個の欠失した、および2個の新規なCys;除去されたE75CHO結合部位。
【図9E】図9は、80例の初期(<妊娠期間(GA)34週)の子癇前症および〜100のコントロールからなる初妊婦の南アフリカコホートにおける多型性の解析であり、図9Eは、野生型遺伝子に対する様々な変異体の相対的な位置である。3個の新規なSer;3個の欠失した、および2個の新規なCys;除去されたE75CHO結合部位。
【発明を実施するための形態】
【0044】
1.222deIT/L74WおよびΔEX−2PP13バリアントのクローニング、発現および精製(図2)
【0045】
A.222delT/L74W変異バリアントのためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
【0046】
PP13遺伝子の多型性解析、および多型性の発生と子癇前症の発生との関連に基づいて222delT7L74W(ここでは切断型とも称される)の配列をPCR技術により作製するため、野生型PP13の配列(図5)を鋳型として使用した。2個のプライマが以下の配列:センスプライマ:CGAATCCATGTCTTCTTTACCCGTGC(配列番号12)およびアンチセンスプライマ:TAAGTCGAGCTCCATCCATATCCCAAACTCAC(配列番号13)、によりデザインされた。
【0047】
センスおよびアンチセンスプライマそれぞれに、BamHIおよびSacIの制限酵素部位の配列が導入された。プライマは両者ともSigma−Genosysにより合成された。
【0048】
切断型PP13DNAの配列を増幅するため、1ngの野生型PP13DNA(プラスミド中)を鋳型として使用した。0.1−1μMの上記の特異的プライマ、1UのPfuDNAポリメラーゼ(Promega)、200μM dNTPミックスおよびPfuDNAポリメラーゼX10バッファを使用した。PCRを以下の高温サイクル:94℃2分、94℃30秒、60℃30秒および72℃1分、35を超えるサイクル、において行った。最終伸長を72℃4分で行い、アガロースゲルによる分析で予想された288bpのサイズが明らかになったPCR産物を、使用まで4℃で保存した。
【0049】
B.ΔEX−2バリアントのためのPCR
【0050】
子癇前症の胎盤由来のcDNAライブラリーのスクリーニングにより、PP13のエクソン2が欠失した(ここではスプライス型とも称される)配列(30アミノ酸の欠失)が明らかになった。欠失型PP13バリアントのヌクレオチド配列解析に基づき、完全長DNAの隣接部位に対する一組のプライマをデザインした。2個のプライマが以下の配列:センスプライマ:5’−CGATACGGATCCATGTCTTCTTTACCCGTGC−3’(配列番号14)およびアンチセンスプライマ:5’−TAAGTCGAGCTCATTGCAGACACACACTGAGG−3’(配列番号15)、によりデザインされた。プライマは両者ともSigma−Genosysにより合成された。
【0051】
欠失型ΔEX−2PP13DNAの配列を増幅するため、1ngの欠失型PP13DNAを鋳型として使用し、0.1−1μMの上記の特異的プライマ、1UのPfuDNAポリメラーゼ(Promega)、200μMのdNTPミックスおよびPfuDNAポリメラーゼX10バッファを使用した。PCRを以下の高温サイクル:94℃2分、94℃30秒、55℃30秒および72℃1分、35を超えるサイクル、において行った。最終伸長ステップを72℃4分で行い、アガロースゲルによる分析で予想された338bpのサイズが明らかになったPCR産物を、使用まで−20℃で保存した。得られたPCR断片をpUC57−Tクローニングベクタ(T−Cloning Kit #1212MBI Fermentase)に挿入し、インサートを含むクローンを選択し、Weizmann Institute(レホボト、イスラエル)のBiological Servicesにおいて自動DNAシークエンシングによりシークエンスした。
【0052】
2.−切断型およびスプライス型DNAの発現ベクタ中へのクローニング
【0053】
A−ライゲーション:切断型およびスプライス型PP13DNAのPCR産物を、ライゲーションに先立ちQIAquick PCR purification kitを用いて精製した。精製されたPP13DNA産物(1μg)および発現ベクタpQE30(0.5μg、Qiagen)を、BamHIおよびSacI(各20U、New England Biolabs−NEB)により、NEBuffer BamHI中およびNEBuffer SacI中でそれぞれ消化した。消化したPCR産物DNAと50ngの消化したpQE−30の、100UのT4リガーゼ(NEB)およびT4リガーゼ緩衝液を用いた2時間22℃によるライゲーションのために、3:1,1:1および1:3のインサート:ベクタの比を使用した。
【0054】
B−形質転換:M15(pREP4)細胞(Qiagen)をライゲーション混合物により形質転換した。10μlのライゲーション混合物を100μlのコンピテントM15(pREP4)細胞に加えて10分間氷中に置き、その後42℃の水槽に50秒間移した。熱ショックの後、混合物を氷上にさらに2分間置き、900μlのLB培地を形質転換反応に加え、約225rpmにて振とうしながら37℃で60分間インキュベートした。10−100μlの細胞を、100μg/mlのアンピシリン(Sigma)および25μg/mlのカナマイシン(Sigma)を含むLB寒天プレートにまき、37℃で一晩培養した。
【0055】
C−陽性コロニのスクリーニング:プレート上で増殖した20個の単一コロニを採取し、アンピシリン(100μg/ml)およびカナマイシン(μg/ml)を含む2mlのLB培地中で、225rpmにて振とうしながら37℃で、一晩培養した。各コロニ培養からプラスミドDNAを、Wizard Plus SV minipreps DNA purification system(Promega)により精製した。PP13DNAインサートの存在を、PCRにより以下:1ngのDNA鋳型、0.1−1μMの切断型PP13およびスプライス型バリアントに特異的な各プライマ、および10mlのPCR用x2 ready mix (Bio−Lab Ltd)から構成されるPCR反応(20μl量)、のように試験した。PCRの条件は上記の通りである。PCR産物は1.5%アガロースにおいて分離し、DNAバンドはLAS−3000 image system (Fuji)により可視化した。PCR産物の算出されたサイズに従い、可能性のある陽性クローン(4)を選択した。各クローンの最終的なDNA配列は、multi−disciplinary laboratories unit (Rappaport Institute of Medical Science - Technion、ハイファ)において行なわれたシークエンシングにより決定された。
【0056】
3.−切断型およびスプライス型PP13の発現
【0057】
確認された配列解析に基づいて1個の陽性クローンがタンパク質発現のために選択され、アンピシリンおよびカナマイシンを含む20mlのLB培地中に、振とうしながら37℃、一晩で植菌した。培養物を1:50にて抗生剤を含むLB培地中に混合し、37℃でOD600が0.6になるまで増殖させた。タンパク質の発現は、1mMのイソプロピル−b−D−チオガラクトピラノシド−IPTGにより、3時間誘導した。細菌細胞は、4℃における4000gx20分の遠心分離により回収した。細胞ペレットは、使用まで−80℃で保存した。組み換えタンパク質の分子量を決定するため、一定分量をSDS−PAGE分析により試験した。
【0058】
4.切断型およびスプライス型PP13の精製
【0059】
SDS−PAGE分析に基づき、組み換え体の切断型PP13を封入体中にトラップされるように局在させた。可溶性ポリペプチドを得るために用いられた方法は、以下の通りである。
【0060】
細胞ペレットを、20mM Tris−HCl、pH8、150mM NaCl、5mMイミダゾール、およびプロテアーゼインヒビター(Roche)、10%グリセロールを含む溶解緩衝液に再懸濁し、0.2mg/mlのリゾチーム(Sigma)と共に4℃で1時間インキュベートした。細胞は氷上で200W、6x10秒の超音波処理により破壊するか、あるいはminicell French press (Thermo)中で1000PSiの圧力を適用することにより破壊した。可溶性タンパク質を廃棄し、封入体(0.75gr)を含むペレットを結合緩衝液(20mM Tris−HCl、pH8.0、300mM NaCl、5mMイミダゾール、6M尿素、PMSF、Complete(プロテアーゼ阻害剤−Roche)、1mM DTTおよび10%グリセロール)中に再懸濁した。室温での1時間のインキュベーションの後、20,000gにおける20分間の遠心分離(SS34ローター、Sorval−RC)により不溶性タンパク質を廃棄した。可溶性の画分を0.45μmポアサイズのフィルタに通してろ過し、室温で予め1時間平衡化したNi−NTAアガロース(Qiagen)1mlと混合した。結合した組み換え体の切断型PP13のリフォールディングは、段階的線形(step−wise linear)の6−0M尿素勾配を用いたカラム上で行なった。最初にNi−NTAアガロースカラムを10mlの洗浄緩衝液(20mM Tris−HCl、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール、6M尿素、PMSF、Complete、1mM DTTおよび10%グリセロール)で洗浄し、続いて前記カラムを10mlのリフォールディング緩衝液(4,2,1,0.5および0M尿素を含む洗浄緩衝液)で洗浄した。結合した組み換え体PP13を、5mlの溶出緩衝液(20mM Tris−HCl、pH8.0、300mM NaCl、0.5Mイミダゾール、PMSF、Complete、1mM DTTおよび10%グリセロール)により溶出した。組み換え体の切断型PP13タンパク質をTBS(20mM Tris−HCl、pH−8、150mM NaCl)に対して透析し、同量の60%グリセロールを含んだTBSで希釈し、使用までに−80℃で保存した。タンパク質の濃度をブラッドフォードアッセイにより決定し、さらなる分析のために−20℃で保存した。
【0061】
5.組み換え体の切断型およびスプライス型PP13バリアントの性質決定
【0062】
A.SDS−PAGE
【0063】
組み換え体の切断型およびスプライス型PP13バリアント(1−5μg)を5%β−メルカプトエタノール存在下でサンプル緩衝液に再懸濁し、95℃で5分間煮沸した。タンパク質を15%SDS−PAGEにロードし、120ボルトで約2時間分離した。タンパク質バンドの可視化のため、ゲルをH2Oで分間洗浄し、GelCode試薬(Pierce)により1時間染色した。染色されたPP13が十分に明瞭になるまで、微量の染色試薬をH2Oによる数回の洗浄によって除去した。PP13タンパク質バリアントのおおよその分子サイズを標準タンパク質の分子量により決定した。前記標準タンパク質を同じゲルにて平行に分離し、そのアミノ酸組成に基づいて算出したタンパク質の分子サイズと比較した。ゲルを図3に示す。
【0064】
天然の野生型PP13の分子サイズは最大(約16−17kDa)で、スプライス型(約14−15kDa)および切断型(約12−13kDa)バリアントがそれに続くことが観察され得る。
【0065】
B.酵素結合免疫測定法(ELISA)
【0066】
ELISA試験は、抗PP13モノクローナル抗体による切断型組み換えPP13の認識を試験するために使用した。簡単に述べると、マイクロプレートウェルに1−10μg/mlの組み換え野生型、切断型およびスプライス型のPP13を37℃で2時間コーティングし、続いて非制限の結合部位を炭酸緩衝液中の1%ウシ血清アルブミン−BSAにより1時間ブロッキングした。コーティングされたタンパク質は、段階希釈した以下のモノクローナル抗体:クローン27−2−3、215−28−3、および534−16、および抗ヒスチジン(コントロール)、と共に4℃で、一晩インキュベートした。非結合抗体は、0.05%Tween−20を含むリン酸緩衝食塩水で洗浄した。続いてHRP結合ヤギ抗マウスIgGを結合抗体の検出に使用し、HRPの基質としてTMBを用いた。得られた酵素産物の吸光度をELISAリーダーにより、650nmにおいて測定した。30分後に反応を停止させ、吸光度を450対650nmにおいて再測定した。結果を図4A、4Bおよび4Cに示す。
【0067】
野生型PP13は特異的抗PP13抗体に反応するが、切断型およびスプライス型バリアントは反応しないことが観察され得る(図4Aおよび4B)。全てのPP13タンパク質は、コントロール抗ヒスチジン抗体に反応した(図4C)。このことは、最初の3ヶ月間において、子癇前症の高いリスクをもつ女性の身体物質中のPP13の測定量は低いという観察に対する説明となる。
【0068】
C.ドットブロット分析
【0069】
野生型、切断型およびスプライス型PP13をニトロセルロースメンブレン(Biorad)に吸収させ、非制限の結合部位をトリス緩衝食塩水(TBS)pH8.0中の5%ミルクで1時間ブロッキングした。メンブレンを抗PP13モノクローナル抗体(クローン27−2−3、215−28−3、および534−16)と共に37℃で2時間インキュベートし、遊離の抗体をTBS−tween20で洗浄した。結合した抗PP13抗体の検出のため、二次抗体であるHRP酵素結合ヤギ抗マウスIgGをメンブレンに添加し、室温(RT)で90分間インキュベートした。続いて、遊離の過剰な抗体を上記の洗浄により廃棄した。高感度化学発光(ECL)試薬をHRPの基質として使用することによりシグナルを可視化、捕獲し、LAS3000 IMAGE SYSTEM(FUJI)を用いて分析した。
【0070】
D.222deltT7/L74W変異
【0071】
以下、222deltT7/L74W変異の同定および分析について、図9A−9Eへの参照と共に記載する。
【0072】
PCRのためのイントロンのオリゴヌクレオチドプライマを、4個の各LGALS−13遺伝子エクソンの隣接部位、同様に5’および3’非翻訳領域の短い部分の隣接部位に対してデザインした。産生した各アンプリコンを、Multiphor SSCP/ヘテロ二本鎖分析に供した(図9B)。さらに、立体構造バリアントを自動シークエンシングにより、かつそれが適切な場合には制限酵素分析により特徴付けた。イントロンバリアントの遺伝子型を、初妊婦患者の小グループ内で同定した(n<20)。
【0073】
同定された欠失をさらに、早期(GA<34週)の子癇前症にかかった初妊婦患者、その乳児、および健康な母親および血縁のない新生児を含む〜100個人の対応するコントロール群による大きなコホート(n>80)内で特徴付けた。分析結果を以下の表に要約する(図9A)。
【0074】
【表1】
【0075】
このコホート内で4個の配列バリアントが同定された。大部分の子癇前症患者はPP13遺伝子内に1−2の変異を有していた。中でも切断型PP13に付随する222deltT/L74W変異は、子癇前症の6%(コントロール内での1%に比べ、ヘテロ接合体の5%、およびホモ接合体の1%)、およびその乳児の8%(コントロール内での4%に比べ)に見出され、早期(GA<34週)子癇前症対コントロールの間の比較的高い比率、および新生児への伝達経路に対する推定される父性の寄与が推測された。
【0076】
エクソン2のスプライスバリアント(変異IVS2−22A>GおよびIVS2−36A>G))の発生に決定的であり得るエクソン2および3の間での点変異は、子癇前症例のみ(各15%および28%)に見られ、かつヘテロ接合体の形のみであり、かつ新生児においてもやや高い頻度で検出される(各19%および37%)。
【0077】
欠失(T)フレームシフト変異(222deltT/L74W)は子癇前症患者および子のエクソン3において検出され、数例において父性の寄与が推測された。前記変異は、野生型PP13よりも38または37アミノ酸ほど短い、新規な28または27のC末端領域を作り出すと予想される。
【0078】
変異体エクソン3.1SSCP/ヘテロ二本鎖を、野生型に対してゲルに流した(図9B)。変異体delT222/−は、電気泳動図(図9C)を用いて分析した。Lgals13wtおよびLgals13delTのアミノ酸配列のアラインメントを図9Dに示す。delTフレームシフトは、野生型ペプチドより37AA短い新規な27AA末端領域(下線で示す)を作り出す。図9Eは、野生型遺伝子に対する様々な変異体の相対的位置を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、子癇前症にかかるリスクを示すことのできるPP13の変異バリアントを同定するためのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
子癇前症(PE)として知られる妊娠疾患は全ての妊婦の5−7%に起こる望ましくない合併症であり、妊娠中の母体死亡の2番目に頻度の高い原因である(米国においては妊娠に伴う母体死亡の18%を占める)。この疾患は、臨床症状を起こす胎盤形成および胎盤への血液/酸素/栄養素供給の障害に起因する、胎盤機能不全から生じる。
【0003】
子癇前症は、妊娠20週後に、以前には尿中タンパク質が無から微量であった女性が尿試験紙で≧2+、または24時間の蓄尿において>300mg/dLと判定されるタンパク尿症と合わせて、以前には正常血圧であった女性が4−6時間の間隔(ある場合には4−72時間の間隔)での2度の血圧測定により、≧90/140mmHg(収縮期/拡張期、少なくとも1つの)の高血圧を新規に発症することとして定義される。
【0004】
全ての子癇前症の妊娠のうち約50%は帝王切開により分娩し、これは全人口の妊娠においてはわずかに15−18%であることと比較される。妊娠中に子癇前症を経験した女性は、その結果として寿命の短縮につながる循環器疾患にかかることへの9倍高いリスクを有する。PEにかかる妊婦の比率は発展途上国において比較的高いが、その米国における数も高いままである(5−7%)。
【0005】
重篤な子癇前症は、高血圧症が≧110/160mmHg(収縮期/拡張期、少なくとも1つの)、およびタンパク尿症が尿試験紙で≧3+、または24時間の蓄尿において>3gr/dLである子癇前症として定義される。極端な場合子癇前症は、母親を死亡のリスクにさらす痙攣、脳卒中、および昏睡を伴う緊急事態である子癇に変わる可能性がある。結果として、重篤な子癇前症にかかった女性は、胎盤を取り除いて母親の生命を救うため48時間以内に分娩させられる。
【0006】
早期の子癇前症は、疾患の重篤度が期間以前(<妊娠37週)の分娩を要求する、上で定義された重篤な子癇前症の形である。この疾患の形はしばしば子宮内での胎児の発育遅延(IUGR)を伴い、これは母親の生命だけでなく、胎児の生命も危険にさらす。NICHDによると、早期の子癇前症は全てのPEのケースの20−25%を占めており、このことはその15%が34週以前に分娩する(すなわち負担のかかる前分娩期間を経験した後に乳児が非常に未熟な状態で出生する)100人の妊婦のうちの1−2人を意味する。分娩が早期であるほど乳児の合併症は重篤であり、これは乳児の低出生体重、失明を含む不完全な内部器官の成熟、運動および認知障害、生涯にわたる医学的な障害、および後に高血圧、循環器疾患および糖尿病にかかるリスクの増大を合併する。34妊娠週(GW)以前に分娩するケースのうちの10%は、ほとんどの死亡ケースの原因である最も重篤なものであり、出生した乳児が生存する場合は6−8週の新生児集中治療室に入ることが必要である。NICHDによると、これは救命の可能性および未熟児の予防のために早期発見が必須となるグループである。現在、子癇前症の唯一の治療法は母親に分娩させることであり、このような分娩が未熟な状態で行なわれた場合、新生児には低出生体重、運動および認知障害による様々な障害が表れ、かつ非常に重篤な場合には分娩中または分娩後に死亡する。子癇前症にかかるリスクを早期に同定する試みのための多数の研究が行なわれてきた。
【0007】
この疾患は通常、妊娠の3番目の3ヶ月間に起こるが、根底にある胎盤の病理変化はかなり早期に発生する。従って、受胎前または妊娠中のいずれかにおいて子癇前症にかかるリスクを早期に発見することは、疾患の予防または症状の程度を緩和させるための手段となる。
【0008】
1)早期発見は、女性の綿密な調査によるリスクの管理を可能にする。高リスクにある女性の有効な拡大調査は米国産科婦人科学会(American College of Obstetric and Gynecology)の指針(“ACOG指針”)に従い、高リスクのケースにおけるこの拡大調査は、結果を有意に改善する。妊娠管理プログラム(Pregnancy Management Programs)は、綿密な調査を参加する妊婦への教育および認識プログラムの提供と組み合わせることによる費用の節約を示した。利点の中には、全ての分娩中、早期PE(<34週)による出生の中止が全国平均の1.96%に比べわずかに0.6%であること、全ての分娩中の未熟児分娩が全国基準の2.3%に比べ0.9%に減少したこと、および子癇前症による低出生体重が全国平均の2.9%に比べ1.3%であったことがある。綿密な調査は、妊婦が出生前に第三次レベルの医療センターに至ることを可能にする。これは地域の診療所および地方を拠点とした保健サービスの設置においては非常に重要な課題である。その他の利点には、治療や胎児の臓器の成熟を促進する出産前コルチコステロイドのような薬剤を投与するための時間を稼げることがある。綿密な調査は特定のケースにおいて、未熟新生児の重篤度を減少させるための妊娠の持続延長を可能にする。
【0009】
2)早期発見により、リスクを予防/減少させるために胎盤に作用するとみなされる様々な予想される薬剤を用いた薬剤介入ストラテジーの展開のための長い期間が利用可能となる。治療のためのゴールドの基準は存在しないが、中でも低量アスピリン、低分子量ヘパリン、ビタミンCおよびEのような抗酸化剤、および硫酸マグネシウムを含む幾つかの候補が見込みを示している。これらの全ての研究においても、リスクを持つ全ての女性が治療介入の恩恵を受けられるわけではない。あるケースでは治療介入の開始が遅すぎたことが示されるが、他のケースでは、使用した薬物が適切ではなかったか、あるいは適切な時間または量において使用されなかったかを示すはっきりとした証拠がない。現在の研究は、それぞれの女性に対して、現在入手可能な予想される薬剤のリスト(いずれ入手可能になる薬剤も同様に)から最も適したものによる薬剤介入を仕立てること、および治療の効果を継続的にモニターすることが必要であることを示している。
【0010】
3)家族歴または以前の妊娠歴に基づいた子癇前症にかかりやすい患者、特に子癇前症により子を失った患者には、妊娠計画のために妊娠前の発見が最も重要であり、上に説明したような予防的処置がとられる。体外受精プログラムに参加する女性にとって、子癇前症の増加した事前のリスクの発見は、着床の管理および子癇前症の増加した事前のリスクを伴わないであろうインプラントの選択のために有利であり得る。
【0011】
胎盤タンパク質13(PP13)は15−16,000MWのタンパク質であり、ヒト胎盤組織から精製されるか、またはここにその内容が参照として取り込まれる米国特許第6,548,306号(Admon,et al)に記載された組み換え技術により調製されてよい。PP13のアミノ酸およびDNA配列を図5に示し、アミノ酸配列を図8Aに示す。精製されたPP13は、子宮内発育遅延(IUGR)、子癇前症、およびここにその内容が参照として取り込まれる米国特許第5,198,366号(Silberman)に記載された早期分娩のような幾つかの妊娠関連疾患を検出するためのアッセイの開発に用いられた。標識PP13および抗PP13ポリクローナル抗血清を用いて、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合免疫測定法(ELISA)の両者が開発された。
【0012】
PP13遺伝子、LGALS13の解析は、その3イントロンおよび4エクソンを含む基本的構造を明らかにし、前記構造は着床において特に重要な糖残基に高アフィニティを有するタンパク質群であるガレクチンファミリ(Than,N.G.,et al(1999)Placenta 20:703−710;Than,et al.,(2004)Eur.J Biochem.271(6):1065−1078)に高い配列相同性を示す。実際にPP13は免疫組織化学により、胎盤形成に重要であることが見出された。
【0013】
ここにその内容が参照として取り込まれる米国特許第6,790,625号は、PP13に対するモノクローナル抗体および妊娠初期段階の間に母親の血清PP13を測定できる固相免疫アッセイを開示している。実際に、Nicolaides et al.,(2006)A novel approach to first−trimester screening for early pre−eclampsia combining serum PP−13 and Doppler ultrasound Ultrasound in Obstetrics and Gynecology,27(1)pp.13−17では他と同様に、この特許に基づいて開発されたELISAキットを使用して、子癇前症の増加リスクに対応する最初の3ヶ月間における比較的低量のPP13を非常に高い精度で示している。
【0014】
ここにその内容が参照として取り込まれる国際公開第04/021012号は、PP13の濃度を含む幾つかの因子に基づいた妊娠合併症のための診断法を開示している。
【0015】
ここにその内容が参照として取り込まれるStolk,M.Et Al.(2006)Hypertension In Pregnancy,Abstracts from the 15th World Conference of the Intl.Soc.for the Study of Hyper,in Preg.,Vol.25(Suppl.1)P029は、ヒトガレクチン/胎盤タンパク質13遺伝子、LGALS13の核酸配列変異について記載している。
【0016】
ここにその内容が参照として取り込まれるSammar,M.et al.(2007)RNA splicing and DNA polymorphism leading to two shorter subforms of placenta protein 13 in preeclampsia,american college of obstetric and gynecology conferenceは、PP13遺伝子のエクソン2を欠失したスプライスバリアントについて記載している。
【発明の概要】
【0017】
本発明の目的は、妊婦が子癇前症にかかるリスクの判定方法を提供することである。
【0018】
本発明の一態様によれば、
(a)胎児に血縁のある個人からのPP13遺伝子を含むゲノムDNAサンプルを提供するステップと;
(b)PP13遺伝子における1又はそれ以上の変異の存在について前記DNAを解析するステップと;
(c)前記変異の存在に基づいて母親のリスクを判定するステップとを含む、胎児の母親が妊娠中に子癇前症にかかるリスクの判定方法が提供される。
【0019】
よく知られているように、PP13の主要な源である胎盤の遺伝子型は胎児の遺伝子型に由来する。従って、胎盤のゲノム中のPP13遺伝子に変異が存在するリスクがあるかどうかを判定するためには、胎児の両親または兄弟姉妹の遺伝子型の判定またはハプロタイプの構築および解析、遺伝様式の調査、遺伝様式の調査(母親から子へ)、インプリンティングの証拠の同定、およびその他の遺伝的分析法を行うことが十分である。従って、本発明の方法における胎児に血縁のある個人は以下の、
(a)胎児の母親、または彼女の母親または父親;
(b)胎児の父親、または彼の母親または父親;
(c)胎児の兄弟姉妹、または胎児の父親もしくは母親の兄弟姉妹(陰性結果は確実ではないが);
(d)妊娠もしくは双生児妊娠の胎盤、または母親の以前の妊娠の胎盤;および
(e)胎児それ自身;
の1又はそれ以上から選択されてよい。上記のことからゲノムDNAサンプルは母親の妊娠前に提供されてよいことが理解され、従って母親の妊娠中と同様、受胎前の助言も可能になる。
【0020】
PP13遺伝子は、全血からのDNA抽出およびPCRによる増幅に続くMultiphor SSCP/ヘテロ二本鎖分析によるスクリーニング、またはその他の関連技術のような、当業の標準的な方法を用いて解析されてよい。
【0021】
PP13遺伝子内の変異は、妊婦におけるPP13の表現型に影響を与える、すなわちサイレント変異ではないことが予想され得る。例えば、以下のPP13のパラメータ:
(a)女性の身体物質において測定されるPP13の発現レベル;
(b)発現するアミノ酸配列の発現の正確さ、例えば、起こり得る1又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失、反復または置換;
(c)翻訳後のプロセシング、すなわち糖鎖付加、リン酸化、メチル化など;
(d)輸送、すなわちエンドソームのような、胎盤環境におけるPP13の再配置;
(e)着床、母親の動脈の調節、細胞外マトリックス内の糖残基への結合、胎盤内でのカルシウム代謝、リゾホスホリパーゼ活性、リン脂質の放出またはプロスタグランジンの上昇に関する機能喪失;および
(f)上記に関わる機能獲得。
の1又はそれ以上が影響され得る。
【0022】
ゲノム変異の例は、
・エクソンまたはイントロン内のフレームシフト変異;
・LGALS13遺伝子の発現レベル、構造、プロセシング、輸送、またはプロモータバリアントの転写活性をアッセイするための基本的なルシフェラーゼレポータの使用を含む複数の方法により評価される活性に影響し得る、前記遺伝子のプロモータまたは他のいずれの調節エレメントにおけるいずれの変異;
・LGALS13またはその19番染色体上の遺伝子座の機能、またはPP13に関連する全ての染色体の機能を損ない得る、いずれの拡張可能な反復変異;
・後のRNAスプライシングまたはその他の現象に影響し得る、イントロン領域におけるいずれの伸展;
・ヘテロ接合性欠失(LOP)を導き、かつ遺伝様式を変化させるいずれの変異;
・脆弱な遺伝子領域を導き得る反復変異、またはその他の切断変異;
・反転、転位、またはその他の作用に関する染色体変異;
・エクソン、またはイントロンレベルにおける単一ヌクレオチド点変異(SNIPS);
・メチル化による遺伝子の全体的制御;および
・反転、転位などに関する変異;
等を含んでよい。
【0023】
変異のタイプは、女性が子癇前症にかかるリスクにあるかどうかだけでなく、どのタイプの子癇前症にかかるリスクにあるかを判定するために使用できる。例えば、早発性の子癇前症にかかった女性にみつけられた一フレームシフト変異は222delT/L74Wと名付けられた。この変異のDNA配列(配列番号11)を図7に示す。この変異においてはbp#222(=T)が欠失し、そのためにアミノ酸#74がLからWに変化している。図8C(配列番号1)に示すように、この変異は末端に変化をもたらし、かつ切断されたPP13分子の101アミノ酸の産生をもたらす。従って、222delT/L74Wタイプのフレームシフト変異の存在は早発性の子癇前症にかかる増大したリスクを示す。同様に、PP13遺伝子のその他の変異が同定されてよく、これは子癇前症の特異的なタイプと関連してよい。本発明はまた、誘導、発現、およびDNAからRNAを通して機能性/機能障害性タンパク質を導く下流ステップを調節し得る、LGALS13遺伝子のいずれの調節性領域(プロモータを含む)の同定を含む。
【0024】
本発明の方法に従い、変異の存在に基づいて母親が子癇前症にかかるリスクを判定するためのアルゴリズムが開発されてよい。例えば、PP13遺伝子内の特定の変異について両親共にホモ接合性である場合、胎児もまた100%の確率で前記変異を有し得ることから、母親が前記変異の同一性に基づいた子癇前症の特定のタイプにかかるリスクが判定できる。別のケースでは、PP13遺伝子内の特定の変異について両親共にヘテロ接合性である場合、胎児は25%の確率で前記変異を有し得ることから、母親が前記変異の同一性に基づいた子癇前症の特定のタイプにかかるリスクが判定できる。前記アルゴリズムはまた、解析に影響するいずれの特異的な遺伝様式、またはインプリンティングを考慮してよい。
【0025】
本発明の別の態様によれば、
(a)母親の身体物質由来のPP13分子のサンプルを提供するステップと;
(b)前記PP13分子の構造を決定するステップと;
(c)前記PP13分子の構造に基づき女性のリスクを判定するステップとを含む、妊婦が子癇前症にかかるリスクの判定方法が提供される。
【0026】
身体物質の限定されない例は、母親の血液、母親の唾液、母親の尿、羊水、臍帯血、絨毛膜絨毛、および胎盤組織を含む。
【0027】
本発明の一態様によれば、PP13分子はPP13タンパク質であり、PP13分子の構造はPP13分子の分子サイズまたはアミノ酸配列である。PP13タンパク質の構造は例えば、平均的な当業者に公知の免疫学的に、またはタンパク質化学により決定されてよい。例えば、天然野生型PP13および/または特定の変異PP13タンパク質に対する特異的な抗体が、天然PP13および/または変異PP13それぞれの存在を決定するために使用されてよい。
【0028】
本発明のこの態様の別の実施形態において、PP13分子はPP13のmRNAまたはこれに対応するcDNAであり、PP13分子の構造はPP13のmRNAまたはこれに対応するcDNAの配列である。mRNAまたはcDNAの配列は、PCR増幅のような当業における標準法を用いて決定されてよい。
【0029】
本発明のこの態様の別の実施形態において、LGLAS13のDNA、cDNAまたはRNAにおける多型性は、
a.指定されたマイクロチップと、以下の全てのタイプ:SNIPSのアイソフォーム、フレームシフト変異、マイクロサテライトまたはフットプリントまたはプロモータ活性化/抑制化またはRNAスプライスまたは上に列挙したようなその他のいずれの変異の形とのオーバーレイ;
b.上に列挙したような患者の組織または体液との反応;
c.蛍光、比色、ランタニド、またはその他のいずれの検出法および/または増幅光学法(amplification visual method)による変異の存在およびその性質の検出;および
d.シグナルプロセシングのソフトウェアおよび解釈;
に対して使用される。
【0030】
本発明の以前の態様にあるように、女性が子癇前症にかかるリスクは変異PP13分子の同一性に依存し得る。例えば、変異PP13分子がフレームシフト変異の結果として見出される場合、これは子癇前症、あるケースでは特定のタイプの子癇前症にかかるリスクを示していると考えられる。上記の222delT/L74W変異の例を上げると、mRNAがこのような欠失をもつと判定することは、早発性の子癇前症にかかるリスクを示していると考えられる。以下に述べるように本発明の発明者は、上記の変異遺伝子によりコードされるPP13由来のポリペプチドの単離に成功した。さらに、天然野生型PP13に対する特異的なモノクローナル抗体は変異PP13ポリペプチドを認識しないことが示された。従って、変異PP13に対する特異的な抗体が調製されてよく、早発性の子癇前症にかかるリスクを判定するための変異分子を同定するために使用されてよい。
【0031】
PP13分子内の可能な変異の別の例は、選択的スプライシングによる変異である。PP13遺伝子は3個のイントロンにより連結された4個のエクソンよりなる。天然PP13分子の転写においてイントロンは切除され、続いてエクソンがスプライスされて、図5(配列番号6)に示される139アミノ酸のPP13タンパク質をコードするmRNAを生じる。しかしながら選択的スプライス部位におけるスプライシングは、天然の長さとは異なる長さのPP13タンパク質をコードする、RNAのスプライスバリアントを生じる。このような変異の一例にΔEX−2スプライスバリアントがあり、これは図6(配列番号2)に見られ得るように大部分のエクソン2、およびエクソン3の小部分を欠損している。結果として139に代わり109アミノ酸のタンパク質を生じる(図6、8B)。このスプライスバリアントは、遅発性の子癇前症にかかった女性由来のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより得られた。従って、ΔEX−2スプライスバリアントの存在の決定により、遅発性の子癇前症にかかる増大したリスクを示すことができる。
【0032】
本発明のさらなる態様において、変異PP13タンパク質バリアントが提供される。バリアントを生じる変異は様々なタイプであってよく、フレームシフト変異、点変異、染色体変異、および選択的スプライシングによる変異を含む。
【0033】
本発明のこの態様の一実施形態において、以下の変異:
(a)a−98C/A置換[rs3764843];
(b)IVS2−22(A/G)[rs2233706];
(c)IVS2−36(A/G);
(d)222delT/L74W;および
(e)ΔEX−2
のうち1又はそれ以上が除外される。
【0034】
本発明のこの態様の別の実施形態において、バリアントはIVS2−36(A/G)、222delT/L74W(配列番号1)またはΔEX−2(配列番号2)からなる群より選択される。
【0035】
本発明のこの態様はまた、前記バリアントに特異的に結合する抗体、前記バリアントをコードする核酸配列およびこれらの配列を含むベクタを含む。
【0036】
本発明のさらなる態様によれば、
(a)ホスト細胞内にPP13バリアントを発現させるステップと;
(b)前記ホスト細胞を破壊して細胞の内容物を遠心分離するステップと;
(c)遠心分離されたペレットを、高濃度の変性剤を含む緩衝液中に再懸濁するステップと;
(d)再懸濁ペレットを、PP13を結合できるアフィニティカラムにロードするステップと;
(e)前記アフィニティカラムを変性剤の勾配により洗浄するステップと;
(f)カラムよりPP13を可溶型で溶出するステップと;
を含む、変異PP13タンパク質バリアントを可溶型で精製する方法が提供される。
【0037】
細菌ホスト内に外来性タンパク質を発現させることにより、発現されたタンパク質がしばしば「封入体」中の不溶性の形で産生されることはよく知られている。このことは要求されるタンパク質が、有用な可溶性の形で産生されることを妨げる。このことはまた、PP13の様々なタンパク質バリアントの発現に対しても事実であった。ここで本発明は、可溶性タンパク質を得るためのバリアントの精製法を見出した。前記方法では尿素の使用が例示されているが、塩酸グアニジンのようなその他のタンパク質変性剤も使用されてよい。
【0038】
本発明のその他の態様は、体外受精または体外診断またはライブ(live)、または体外予後診断または治療の成功へと応用された、PP13のレパートリをそれ自体において、または子癇前症との関連において多様化し得る発現、活性様式、または子孫への伝達過程またはその他の方法のいずれかを調節するための手段として、制限断片長多型(RFLP)、低分子ヘアピン型(sh)RNAまたは低分子干渉(si)RNAまたは(mi)RNAを含むがこれらに限定されないRNAによる手段の使用を含む。
【0039】
本発明のさらなる態様は、本発明の方法における使用のための診断キットを含む。このようなキットは、
a.PP13天然遺伝子の特定のゲノム配列および/またはその変異配列に対するDNAプローブを含む、女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキット
b.PP13天然配列および/またはその変異配列に対する抗体を含む、女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキット
c.PP13天然mRNAの特定の配列および/またはその変異配列に対するRNAプローブを含む、女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキット
d.PP13のcDNAの特定の配列および/またはその変異配列に対するDNAプローブを含む、女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキット
e.PP13のcDNAまたはRNAの特定の配列および/またはその変異配列を含むDNAまたはRNAチップを含む、女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキット
を含んでよい。
【0040】
本発明に従い、LGALS13遺伝子は以下の分析方法:
(a)バイオインフォマティクス
i)プロモータ予測
ii)系統的保存/フットプリント
iii)多型性スペクトル(SNP、マイクロサテライトなど)
(b)遺伝的変異のスクリーニング
i)民族的な頻度
ii)ハプロタイプの構築および分析
iii)初期妊娠損失(すなわちPOC)の頻度−(?生存率への影響)
(c)伝達についての研究
i)伝達様式の調査(母から子へ)
ii)インプリンティングの証拠
(d)メチル化についての研究
i)遺伝子の全体的制御についての調査
(e)選択されたLGALS13配列バリアントの性質決定
(f)鋳型のゲノム性質の完全決定
(g)調査された拡張イントロン領域
(h)マイクロサテライトのような多型性マーカーが利用できる場合、エクソン2のLOHについての探索
(i)「タイプ」222delTバリアントに対する対立遺伝子特異的アッセイの開発
(j)222delTバリアントおよびその他のいずれの可能性のある切断バリアントを同定するためのPTTの使用の検討
(k)エクソン3における配列バリアント[可能な遺伝子変換現象]の特徴付けにはどの方法が最も適するかについての調査
(l)RNAの抽出および調製
(m)pGEM−T Easy vector(Promega)へのクローニング
i)PCRおよびゲル精製
ii)A−テーリング
iii)ライゲーション
iv)コンピテント細胞の調製
v)形質転換
vi)クローン選択
vii)ミニプレップ
(n)pGL2−Basicルシフェラーゼレポータ(プロモータバリアントの転写活性のアッセイのため)
i)ベクタの調製(消化、精製、脱リン酸化、ライゲーション)
ii)形質転換
iii)マキシプレップ
(o)バリアントおよび野生型対立遺伝子を表すコンストラクト[ルシフェラーゼレポータベクタ中の]が、FuGene 6をトランスフェクション試薬として用い、変化した転写活性について調査され得る。
(p)細胞培養
(q)トランスフェクトされた細胞は、回収前に外部刺激[例えば不定のエストロゲン濃度、一過性の低酸素など]を受け、発光法によりルシフェラーゼ活性について分析される。
(r)自動シークエンス(クローンの確認、メチル化状態など)
(s)定量的調査はエクソンバリアントの解析(ミニ遺伝子システムによる)を含むが、リアルタイムPCRは、4個の同定されたイントロン配列バリアントが遺伝子のスプライシングに影響するか否かについての調査に使用され得る。
(t)統計解析
の1又はそれ以上により特徴付けられてよい。
【0041】
本発明のその他の態様は、以下の詳細な記述により明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の理解のため、およびそれが実際にはどのように実行され得るかを理解するために、ここで好ましい実施形態をそれに限定されない例としてのみの目的で、付随する図への参照と共に記述する。
【0043】
【図1】図1は、変異PP13分子がPP13遺伝子からどのように生じるかを例示する模式図である。
【図2】図2は、クローニングおよび大腸菌での発現により、PP13タンパク質が変異cDNAからどのように調製されるかを例示する模式図である。
【図3】図3は、PP13の天然および変異バリアントにより作られるバンドを示すSDS−PAGEゲルの写真である。
【図4】図4A,4B,および4Cは、特異的な抗PP13抗体(4Aおよび4B)またはコントロールの抗ヒスチジン抗体(4C)を用いた、PP13の天然または変異バリアントに対する抗体希釈の作用を表す抗体結合のプロットである。
【図5】図5は、天然組み換えPP13(rPP13)のDNA(配列番号3および4)およびアミノ酸(配列番号5−8)配列である。
【図6】図6は、ΔEX−2PP13スプライスバリアントのDNA(配列番号9および10)およびアミノ酸(配列番号2)配列である。
【図7】図7は、222delT/L74W変異のDNA(配列番号11)配列である。下線で示すヌクレオチドの間にTの欠失が生じる。
【図8】図8A,8B,および8Cは、天然rPP13(配列番号6)、ΔEX−2PP13バリアント(配列番号2)および222delT/L74Wバリアント(配列番号1)それぞれのアミノ酸配列である。後者のバリアントにおける欠失は、末端領域(下線で示す)から終止コドン(#)までに28の新規アミノ酸を作り出すフレームシフトの原因となる。
【図9A】図9は、80例の初期(<妊娠期間(GA)34週)の子癇前症および〜100のコントロールからなる初妊婦の南アフリカコホートにおける多型性の解析であり、図9Aは多型性頻度の解析である。3個の新規なSer;3個の欠失した、および2個の新規なCys;除去されたE75CHO結合部位。
【図9B】図9は、80例の初期(<妊娠期間(GA)34週)の子癇前症および〜100のコントロールからなる初妊婦の南アフリカコホートにおける多型性の解析であり、図9Bは、エクソン3.1SSCP/ヘテロ二本鎖のゲルである。3個の新規なSer;3個の欠失した、および2個の新規なCys;除去されたE75CHO結合部位。
【図9C】図9は、80例の初期(<妊娠期間(GA)34週)の子癇前症および〜100のコントロールからなる初妊婦の南アフリカコホートにおける多型性の解析であり、図9Cは、delT222/−電気泳動図である。3個の新規なSer;3個の欠失した、および2個の新規なCys;除去されたE75CHO結合部位。
【図9D】図9は、80例の初期(<妊娠期間(GA)34週)の子癇前症および〜100のコントロールからなる初妊婦の南アフリカコホートにおける多型性の解析であり、図9Dは、delTと野生型とのアラインメントである。3個の新規なSer;3個の欠失した、および2個の新規なCys;除去されたE75CHO結合部位。
【図9E】図9は、80例の初期(<妊娠期間(GA)34週)の子癇前症および〜100のコントロールからなる初妊婦の南アフリカコホートにおける多型性の解析であり、図9Eは、野生型遺伝子に対する様々な変異体の相対的な位置である。3個の新規なSer;3個の欠失した、および2個の新規なCys;除去されたE75CHO結合部位。
【発明を実施するための形態】
【0044】
1.222deIT/L74WおよびΔEX−2PP13バリアントのクローニング、発現および精製(図2)
【0045】
A.222delT/L74W変異バリアントのためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
【0046】
PP13遺伝子の多型性解析、および多型性の発生と子癇前症の発生との関連に基づいて222delT7L74W(ここでは切断型とも称される)の配列をPCR技術により作製するため、野生型PP13の配列(図5)を鋳型として使用した。2個のプライマが以下の配列:センスプライマ:CGAATCCATGTCTTCTTTACCCGTGC(配列番号12)およびアンチセンスプライマ:TAAGTCGAGCTCCATCCATATCCCAAACTCAC(配列番号13)、によりデザインされた。
【0047】
センスおよびアンチセンスプライマそれぞれに、BamHIおよびSacIの制限酵素部位の配列が導入された。プライマは両者ともSigma−Genosysにより合成された。
【0048】
切断型PP13DNAの配列を増幅するため、1ngの野生型PP13DNA(プラスミド中)を鋳型として使用した。0.1−1μMの上記の特異的プライマ、1UのPfuDNAポリメラーゼ(Promega)、200μM dNTPミックスおよびPfuDNAポリメラーゼX10バッファを使用した。PCRを以下の高温サイクル:94℃2分、94℃30秒、60℃30秒および72℃1分、35を超えるサイクル、において行った。最終伸長を72℃4分で行い、アガロースゲルによる分析で予想された288bpのサイズが明らかになったPCR産物を、使用まで4℃で保存した。
【0049】
B.ΔEX−2バリアントのためのPCR
【0050】
子癇前症の胎盤由来のcDNAライブラリーのスクリーニングにより、PP13のエクソン2が欠失した(ここではスプライス型とも称される)配列(30アミノ酸の欠失)が明らかになった。欠失型PP13バリアントのヌクレオチド配列解析に基づき、完全長DNAの隣接部位に対する一組のプライマをデザインした。2個のプライマが以下の配列:センスプライマ:5’−CGATACGGATCCATGTCTTCTTTACCCGTGC−3’(配列番号14)およびアンチセンスプライマ:5’−TAAGTCGAGCTCATTGCAGACACACACTGAGG−3’(配列番号15)、によりデザインされた。プライマは両者ともSigma−Genosysにより合成された。
【0051】
欠失型ΔEX−2PP13DNAの配列を増幅するため、1ngの欠失型PP13DNAを鋳型として使用し、0.1−1μMの上記の特異的プライマ、1UのPfuDNAポリメラーゼ(Promega)、200μMのdNTPミックスおよびPfuDNAポリメラーゼX10バッファを使用した。PCRを以下の高温サイクル:94℃2分、94℃30秒、55℃30秒および72℃1分、35を超えるサイクル、において行った。最終伸長ステップを72℃4分で行い、アガロースゲルによる分析で予想された338bpのサイズが明らかになったPCR産物を、使用まで−20℃で保存した。得られたPCR断片をpUC57−Tクローニングベクタ(T−Cloning Kit #1212MBI Fermentase)に挿入し、インサートを含むクローンを選択し、Weizmann Institute(レホボト、イスラエル)のBiological Servicesにおいて自動DNAシークエンシングによりシークエンスした。
【0052】
2.−切断型およびスプライス型DNAの発現ベクタ中へのクローニング
【0053】
A−ライゲーション:切断型およびスプライス型PP13DNAのPCR産物を、ライゲーションに先立ちQIAquick PCR purification kitを用いて精製した。精製されたPP13DNA産物(1μg)および発現ベクタpQE30(0.5μg、Qiagen)を、BamHIおよびSacI(各20U、New England Biolabs−NEB)により、NEBuffer BamHI中およびNEBuffer SacI中でそれぞれ消化した。消化したPCR産物DNAと50ngの消化したpQE−30の、100UのT4リガーゼ(NEB)およびT4リガーゼ緩衝液を用いた2時間22℃によるライゲーションのために、3:1,1:1および1:3のインサート:ベクタの比を使用した。
【0054】
B−形質転換:M15(pREP4)細胞(Qiagen)をライゲーション混合物により形質転換した。10μlのライゲーション混合物を100μlのコンピテントM15(pREP4)細胞に加えて10分間氷中に置き、その後42℃の水槽に50秒間移した。熱ショックの後、混合物を氷上にさらに2分間置き、900μlのLB培地を形質転換反応に加え、約225rpmにて振とうしながら37℃で60分間インキュベートした。10−100μlの細胞を、100μg/mlのアンピシリン(Sigma)および25μg/mlのカナマイシン(Sigma)を含むLB寒天プレートにまき、37℃で一晩培養した。
【0055】
C−陽性コロニのスクリーニング:プレート上で増殖した20個の単一コロニを採取し、アンピシリン(100μg/ml)およびカナマイシン(μg/ml)を含む2mlのLB培地中で、225rpmにて振とうしながら37℃で、一晩培養した。各コロニ培養からプラスミドDNAを、Wizard Plus SV minipreps DNA purification system(Promega)により精製した。PP13DNAインサートの存在を、PCRにより以下:1ngのDNA鋳型、0.1−1μMの切断型PP13およびスプライス型バリアントに特異的な各プライマ、および10mlのPCR用x2 ready mix (Bio−Lab Ltd)から構成されるPCR反応(20μl量)、のように試験した。PCRの条件は上記の通りである。PCR産物は1.5%アガロースにおいて分離し、DNAバンドはLAS−3000 image system (Fuji)により可視化した。PCR産物の算出されたサイズに従い、可能性のある陽性クローン(4)を選択した。各クローンの最終的なDNA配列は、multi−disciplinary laboratories unit (Rappaport Institute of Medical Science - Technion、ハイファ)において行なわれたシークエンシングにより決定された。
【0056】
3.−切断型およびスプライス型PP13の発現
【0057】
確認された配列解析に基づいて1個の陽性クローンがタンパク質発現のために選択され、アンピシリンおよびカナマイシンを含む20mlのLB培地中に、振とうしながら37℃、一晩で植菌した。培養物を1:50にて抗生剤を含むLB培地中に混合し、37℃でOD600が0.6になるまで増殖させた。タンパク質の発現は、1mMのイソプロピル−b−D−チオガラクトピラノシド−IPTGにより、3時間誘導した。細菌細胞は、4℃における4000gx20分の遠心分離により回収した。細胞ペレットは、使用まで−80℃で保存した。組み換えタンパク質の分子量を決定するため、一定分量をSDS−PAGE分析により試験した。
【0058】
4.切断型およびスプライス型PP13の精製
【0059】
SDS−PAGE分析に基づき、組み換え体の切断型PP13を封入体中にトラップされるように局在させた。可溶性ポリペプチドを得るために用いられた方法は、以下の通りである。
【0060】
細胞ペレットを、20mM Tris−HCl、pH8、150mM NaCl、5mMイミダゾール、およびプロテアーゼインヒビター(Roche)、10%グリセロールを含む溶解緩衝液に再懸濁し、0.2mg/mlのリゾチーム(Sigma)と共に4℃で1時間インキュベートした。細胞は氷上で200W、6x10秒の超音波処理により破壊するか、あるいはminicell French press (Thermo)中で1000PSiの圧力を適用することにより破壊した。可溶性タンパク質を廃棄し、封入体(0.75gr)を含むペレットを結合緩衝液(20mM Tris−HCl、pH8.0、300mM NaCl、5mMイミダゾール、6M尿素、PMSF、Complete(プロテアーゼ阻害剤−Roche)、1mM DTTおよび10%グリセロール)中に再懸濁した。室温での1時間のインキュベーションの後、20,000gにおける20分間の遠心分離(SS34ローター、Sorval−RC)により不溶性タンパク質を廃棄した。可溶性の画分を0.45μmポアサイズのフィルタに通してろ過し、室温で予め1時間平衡化したNi−NTAアガロース(Qiagen)1mlと混合した。結合した組み換え体の切断型PP13のリフォールディングは、段階的線形(step−wise linear)の6−0M尿素勾配を用いたカラム上で行なった。最初にNi−NTAアガロースカラムを10mlの洗浄緩衝液(20mM Tris−HCl、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール、6M尿素、PMSF、Complete、1mM DTTおよび10%グリセロール)で洗浄し、続いて前記カラムを10mlのリフォールディング緩衝液(4,2,1,0.5および0M尿素を含む洗浄緩衝液)で洗浄した。結合した組み換え体PP13を、5mlの溶出緩衝液(20mM Tris−HCl、pH8.0、300mM NaCl、0.5Mイミダゾール、PMSF、Complete、1mM DTTおよび10%グリセロール)により溶出した。組み換え体の切断型PP13タンパク質をTBS(20mM Tris−HCl、pH−8、150mM NaCl)に対して透析し、同量の60%グリセロールを含んだTBSで希釈し、使用までに−80℃で保存した。タンパク質の濃度をブラッドフォードアッセイにより決定し、さらなる分析のために−20℃で保存した。
【0061】
5.組み換え体の切断型およびスプライス型PP13バリアントの性質決定
【0062】
A.SDS−PAGE
【0063】
組み換え体の切断型およびスプライス型PP13バリアント(1−5μg)を5%β−メルカプトエタノール存在下でサンプル緩衝液に再懸濁し、95℃で5分間煮沸した。タンパク質を15%SDS−PAGEにロードし、120ボルトで約2時間分離した。タンパク質バンドの可視化のため、ゲルをH2Oで分間洗浄し、GelCode試薬(Pierce)により1時間染色した。染色されたPP13が十分に明瞭になるまで、微量の染色試薬をH2Oによる数回の洗浄によって除去した。PP13タンパク質バリアントのおおよその分子サイズを標準タンパク質の分子量により決定した。前記標準タンパク質を同じゲルにて平行に分離し、そのアミノ酸組成に基づいて算出したタンパク質の分子サイズと比較した。ゲルを図3に示す。
【0064】
天然の野生型PP13の分子サイズは最大(約16−17kDa)で、スプライス型(約14−15kDa)および切断型(約12−13kDa)バリアントがそれに続くことが観察され得る。
【0065】
B.酵素結合免疫測定法(ELISA)
【0066】
ELISA試験は、抗PP13モノクローナル抗体による切断型組み換えPP13の認識を試験するために使用した。簡単に述べると、マイクロプレートウェルに1−10μg/mlの組み換え野生型、切断型およびスプライス型のPP13を37℃で2時間コーティングし、続いて非制限の結合部位を炭酸緩衝液中の1%ウシ血清アルブミン−BSAにより1時間ブロッキングした。コーティングされたタンパク質は、段階希釈した以下のモノクローナル抗体:クローン27−2−3、215−28−3、および534−16、および抗ヒスチジン(コントロール)、と共に4℃で、一晩インキュベートした。非結合抗体は、0.05%Tween−20を含むリン酸緩衝食塩水で洗浄した。続いてHRP結合ヤギ抗マウスIgGを結合抗体の検出に使用し、HRPの基質としてTMBを用いた。得られた酵素産物の吸光度をELISAリーダーにより、650nmにおいて測定した。30分後に反応を停止させ、吸光度を450対650nmにおいて再測定した。結果を図4A、4Bおよび4Cに示す。
【0067】
野生型PP13は特異的抗PP13抗体に反応するが、切断型およびスプライス型バリアントは反応しないことが観察され得る(図4Aおよび4B)。全てのPP13タンパク質は、コントロール抗ヒスチジン抗体に反応した(図4C)。このことは、最初の3ヶ月間において、子癇前症の高いリスクをもつ女性の身体物質中のPP13の測定量は低いという観察に対する説明となる。
【0068】
C.ドットブロット分析
【0069】
野生型、切断型およびスプライス型PP13をニトロセルロースメンブレン(Biorad)に吸収させ、非制限の結合部位をトリス緩衝食塩水(TBS)pH8.0中の5%ミルクで1時間ブロッキングした。メンブレンを抗PP13モノクローナル抗体(クローン27−2−3、215−28−3、および534−16)と共に37℃で2時間インキュベートし、遊離の抗体をTBS−tween20で洗浄した。結合した抗PP13抗体の検出のため、二次抗体であるHRP酵素結合ヤギ抗マウスIgGをメンブレンに添加し、室温(RT)で90分間インキュベートした。続いて、遊離の過剰な抗体を上記の洗浄により廃棄した。高感度化学発光(ECL)試薬をHRPの基質として使用することによりシグナルを可視化、捕獲し、LAS3000 IMAGE SYSTEM(FUJI)を用いて分析した。
【0070】
D.222deltT7/L74W変異
【0071】
以下、222deltT7/L74W変異の同定および分析について、図9A−9Eへの参照と共に記載する。
【0072】
PCRのためのイントロンのオリゴヌクレオチドプライマを、4個の各LGALS−13遺伝子エクソンの隣接部位、同様に5’および3’非翻訳領域の短い部分の隣接部位に対してデザインした。産生した各アンプリコンを、Multiphor SSCP/ヘテロ二本鎖分析に供した(図9B)。さらに、立体構造バリアントを自動シークエンシングにより、かつそれが適切な場合には制限酵素分析により特徴付けた。イントロンバリアントの遺伝子型を、初妊婦患者の小グループ内で同定した(n<20)。
【0073】
同定された欠失をさらに、早期(GA<34週)の子癇前症にかかった初妊婦患者、その乳児、および健康な母親および血縁のない新生児を含む〜100個人の対応するコントロール群による大きなコホート(n>80)内で特徴付けた。分析結果を以下の表に要約する(図9A)。
【0074】
【表1】
【0075】
このコホート内で4個の配列バリアントが同定された。大部分の子癇前症患者はPP13遺伝子内に1−2の変異を有していた。中でも切断型PP13に付随する222deltT/L74W変異は、子癇前症の6%(コントロール内での1%に比べ、ヘテロ接合体の5%、およびホモ接合体の1%)、およびその乳児の8%(コントロール内での4%に比べ)に見出され、早期(GA<34週)子癇前症対コントロールの間の比較的高い比率、および新生児への伝達経路に対する推定される父性の寄与が推測された。
【0076】
エクソン2のスプライスバリアント(変異IVS2−22A>GおよびIVS2−36A>G))の発生に決定的であり得るエクソン2および3の間での点変異は、子癇前症例のみ(各15%および28%)に見られ、かつヘテロ接合体の形のみであり、かつ新生児においてもやや高い頻度で検出される(各19%および37%)。
【0077】
欠失(T)フレームシフト変異(222deltT/L74W)は子癇前症患者および子のエクソン3において検出され、数例において父性の寄与が推測された。前記変異は、野生型PP13よりも38または37アミノ酸ほど短い、新規な28または27のC末端領域を作り出すと予想される。
【0078】
変異体エクソン3.1SSCP/ヘテロ二本鎖を、野生型に対してゲルに流した(図9B)。変異体delT222/−は、電気泳動図(図9C)を用いて分析した。Lgals13wtおよびLgals13delTのアミノ酸配列のアラインメントを図9Dに示す。delTフレームシフトは、野生型ペプチドより37AA短い新規な27AA末端領域(下線で示す)を作り出す。図9Eは、野生型遺伝子に対する様々な変異体の相対的位置を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胎児の母親が妊娠中に子癇前症にかかるリスクを判定する方法であって、
(a)前記胎児に血縁のある個人からのゲノムDNAサンプルを提供するステップと;
(b)PP13遺伝子における1又はそれ以上の変異の存在について前記DNAを解析するステップと;
(c)前記変異の存在に基づいて前記母親のリスクを判定するステップと;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記胎児に血縁のある前記個人が以下の、
(a)前記胎児の母親、または彼女の母親または父親;
(b)前記胎児の父親、または彼の母親または父親;
(c)前記胎児の兄弟姉妹、または前記胎児の父親もしくは母親の兄弟姉妹;
(d)前記妊娠もしくは双生児妊娠の胎盤、または前記母親の以前の妊娠の胎盤;および
(e)前記胎児
から選択されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記PP13遺伝子内の前記変異が、PP13の以下のパラメータ:
(a)発現レベル;
(b)アミノ酸配列;
(c)翻訳後のプロセシング;
(d)輸送;
(e)機能喪失;および
(f)機能獲得;
の1又はそれ以上に影響を与えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記PP13遺伝子内の前記変異が以下の、
(a)フレームシフト変異;
(b)染色体変異;
(c)点変異;および
(d)RNAスプライシング
から選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、ステップ(c)においては、フレームシフト変異の存在が早発性の子癇前症にかかるリスクを示すことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記フレームシフト変異が222delT/L74Wであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記ゲノムDNAのサンプルが前記母親の妊娠前に提供されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記ゲノムDNAのサンプルが前記母親の妊娠中に提供されることを特徴とする方法。
【請求項9】
妊婦が子癇前症にかかるリスクを判定するための方法であって、
(a)PP13分子を含む母親の身体物質由来のサンプルを提供するステップと;
(b)前記PP13分子の構造を決定するステップと;
(c)前記PP13分子の構造に基づき女性のリスクを判定するステップと;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記身体物質が母親の血液、母親の唾液、母親の尿、羊水、臍帯血、絨毛膜絨毛、および胎盤組織から選択されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、前記PP13分子がPP13タンパク質であり、かつ前記PP13分子の構造が前記PP13分子の分子サイズまたはアミノ酸配列であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記PP13の構造が免疫学的に、またはタンパク質化学によって決定されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記免疫学的決定がPP13および/または変異PP13に対する特異的な抗体の使用により行なわれることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法において、前記PP13分子がPP13のmRNAまたはこれに対応するcDNAであり、かつ前記PP13分子の構造がPP13のmRNAまたはこれに対応するcDNAの配列であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項9に記載の方法において、ステップ(c)においては、フレームシフト変異による切断型PP13の存在が早発性の子癇前症にかかるリスクを示すことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記フレームシフト変異が222delT/L74Wであることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項9に記載の方法において、ステップ(c)においては、選択的スプライシングによるスプライスバリアントPP13の存在が遅発性の子癇前症にかかるリスクを示すことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記スプライスバリアントがΔEX−2であることを特徴とする方法。
【請求項19】
変異PP13タンパク質バリアント。
【請求項20】
請求項19に記載のPP13バリアントにおいて、前記変異が以下の
(a)フレームシフト変異;
(b)点変異;および
(c)選択的スプライシングによる変異
から選択されることを特徴とするPP13バリアント。
【請求項21】
請求項20に記載のPP13バリアントにおいて、以下の変異:
(a)C/A置換[rs3764843];
(b)IVS2−22(A/G)[rs2233706];
(c)IVS2−36(A/G);
(d)222delT/L74W;および
(e)ΔEX−2;
のうち1又はそれ以上が除外される条件とすることを特徴とするPP13バリアント。
【請求項22】
請求項20に記載のPP13バリアントにおいて、当該バリアントがIVS2−36(A/G)、222delT/L74W(配列番号1)またはΔEX−2(配列番号2)からなる群より選択されることを特徴とするPP13バリアント。
【請求項23】
女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキットであって、
(a)PP13天然遺伝子の変異配列の特異的なゲノム配列に対するDNAプローブ、または
(b)前記PP13天然遺伝子の変異配列に対する抗体、
を含むことを特徴とするキット。
【請求項24】
女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキットであって、PP13天然または組み換え型mRNAの変異配列の特定の配列に対するRNAプローブを含むことを特徴とするキット。
【請求項25】
女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキットであって、PP13cDNAの変異配列の特定の配列に対するDNAプローブを含むことを特徴とするキット。
【請求項26】
女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキットであって、PP13cDNAまたはRNAの変異配列の特定の配列を含むDNAまたはRNAチップを含むことを特徴とするキット。
【請求項1】
胎児の母親が妊娠中に子癇前症にかかるリスクを判定する方法であって、
(a)前記胎児に血縁のある個人からのゲノムDNAサンプルを提供するステップと;
(b)PP13遺伝子における1又はそれ以上の変異の存在について前記DNAを解析するステップと;
(c)前記変異の存在に基づいて前記母親のリスクを判定するステップと;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記胎児に血縁のある前記個人が以下の、
(a)前記胎児の母親、または彼女の母親または父親;
(b)前記胎児の父親、または彼の母親または父親;
(c)前記胎児の兄弟姉妹、または前記胎児の父親もしくは母親の兄弟姉妹;
(d)前記妊娠もしくは双生児妊娠の胎盤、または前記母親の以前の妊娠の胎盤;および
(e)前記胎児
から選択されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記PP13遺伝子内の前記変異が、PP13の以下のパラメータ:
(a)発現レベル;
(b)アミノ酸配列;
(c)翻訳後のプロセシング;
(d)輸送;
(e)機能喪失;および
(f)機能獲得;
の1又はそれ以上に影響を与えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記PP13遺伝子内の前記変異が以下の、
(a)フレームシフト変異;
(b)染色体変異;
(c)点変異;および
(d)RNAスプライシング
から選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、ステップ(c)においては、フレームシフト変異の存在が早発性の子癇前症にかかるリスクを示すことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記フレームシフト変異が222delT/L74Wであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記ゲノムDNAのサンプルが前記母親の妊娠前に提供されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記ゲノムDNAのサンプルが前記母親の妊娠中に提供されることを特徴とする方法。
【請求項9】
妊婦が子癇前症にかかるリスクを判定するための方法であって、
(a)PP13分子を含む母親の身体物質由来のサンプルを提供するステップと;
(b)前記PP13分子の構造を決定するステップと;
(c)前記PP13分子の構造に基づき女性のリスクを判定するステップと;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記身体物質が母親の血液、母親の唾液、母親の尿、羊水、臍帯血、絨毛膜絨毛、および胎盤組織から選択されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、前記PP13分子がPP13タンパク質であり、かつ前記PP13分子の構造が前記PP13分子の分子サイズまたはアミノ酸配列であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記PP13の構造が免疫学的に、またはタンパク質化学によって決定されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記免疫学的決定がPP13および/または変異PP13に対する特異的な抗体の使用により行なわれることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法において、前記PP13分子がPP13のmRNAまたはこれに対応するcDNAであり、かつ前記PP13分子の構造がPP13のmRNAまたはこれに対応するcDNAの配列であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項9に記載の方法において、ステップ(c)においては、フレームシフト変異による切断型PP13の存在が早発性の子癇前症にかかるリスクを示すことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記フレームシフト変異が222delT/L74Wであることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項9に記載の方法において、ステップ(c)においては、選択的スプライシングによるスプライスバリアントPP13の存在が遅発性の子癇前症にかかるリスクを示すことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記スプライスバリアントがΔEX−2であることを特徴とする方法。
【請求項19】
変異PP13タンパク質バリアント。
【請求項20】
請求項19に記載のPP13バリアントにおいて、前記変異が以下の
(a)フレームシフト変異;
(b)点変異;および
(c)選択的スプライシングによる変異
から選択されることを特徴とするPP13バリアント。
【請求項21】
請求項20に記載のPP13バリアントにおいて、以下の変異:
(a)C/A置換[rs3764843];
(b)IVS2−22(A/G)[rs2233706];
(c)IVS2−36(A/G);
(d)222delT/L74W;および
(e)ΔEX−2;
のうち1又はそれ以上が除外される条件とすることを特徴とするPP13バリアント。
【請求項22】
請求項20に記載のPP13バリアントにおいて、当該バリアントがIVS2−36(A/G)、222delT/L74W(配列番号1)またはΔEX−2(配列番号2)からなる群より選択されることを特徴とするPP13バリアント。
【請求項23】
女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキットであって、
(a)PP13天然遺伝子の変異配列の特異的なゲノム配列に対するDNAプローブ、または
(b)前記PP13天然遺伝子の変異配列に対する抗体、
を含むことを特徴とするキット。
【請求項24】
女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキットであって、PP13天然または組み換え型mRNAの変異配列の特定の配列に対するRNAプローブを含むことを特徴とするキット。
【請求項25】
女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキットであって、PP13cDNAの変異配列の特定の配列に対するDNAプローブを含むことを特徴とするキット。
【請求項26】
女性が子癇前症にかかるリスクの判定方法において使用するためのキットであって、PP13cDNAまたはRNAの変異配列の特定の配列を含むDNAまたはRNAチップを含むことを特徴とするキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【公表番号】特表2010−517525(P2010−517525A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547807(P2009−547807)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/IL2007/001284
【国際公開番号】WO2008/093318
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(509213956)ダイアグノスティク テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/IL2007/001284
【国際公開番号】WO2008/093318
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(509213956)ダイアグノスティク テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]