孔の検査方法および孔を有する導電部材の製造方法
【課題】孔を確実に検査することが可能な方法を提供することを目的とする。
【解決手段】孔22の検査方法は、導電層10上に形成されて、導電層10に達する孔22が設けられた有機物層20の孔22を検査する方法であって、孔22の底22aに波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、孔22の底22aに照射された電磁波が孔22の底22aに残存する有機物によって吸収される量を測定することで、孔の底22aに残存する有機物の分布を測定する工程とを備える。
【解決手段】孔22の検査方法は、導電層10上に形成されて、導電層10に達する孔22が設けられた有機物層20の孔22を検査する方法であって、孔22の底22aに波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、孔22の底22aに照射された電磁波が孔22の底22aに残存する有機物によって吸収される量を測定することで、孔の底22aに残存する有機物の分布を測定する工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、孔の検査方法および孔を有する導電部材の製造方法に関し、より特定的には、ビアホール底の樹脂の残渣を評価する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線のビアホールに関連する発明が、たとえば特開平10−190242号公報(特許文献1)、特開平10−322034号公報(特許文献2)、特開平10−85976号公報(特許文献3)、特開2001−102720号公報(特許文献4)および特開2002−252442号公報(特許文献5)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−190242号公報
【特許文献2】特開平10−322034号公報
【特許文献3】特開平10−85976号公報
【特許文献4】特開2001−102720号公報
【特許文献5】特開2002−252442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば特許文献1では、ビアホール底の残渣を検出することが開示されているが、評価領域については、ホール底全体および1点のみであり、残渣の有無についてのみの実施例が開示されている。そのため、十分な判断ができないという問題があった。
【0005】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、孔を確実に検査することが可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った穴の検査方法は、導電層上に形成されて、導電層に達する孔が設けられた有機物層の孔を検査する方法であって、孔の底に波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、孔の底に照射された電磁波が孔の底に残存する有機物によって吸収される量を測定することで、孔の底に残存するの有機物の分布を測定する工程とを備える。
【0007】
このように構成された検査方法では、孔底に残存する有機物の分布を測定するため、孔全体にわたって有機物の残存量を測定することができる。その結果、孔の底を正しく評価することができる。
【0008】
好ましくは、有機物はPET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)およびLCP(液晶ポリマー)からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む。
【0009】
好ましくは、孔は円形状であり、電磁波を照射する領域は、辺の長さが孔の半径に等しい、中心角が90度以上の扇形の領域である。
【0010】
この発明に従った孔を有する導電部材の製造方法は、導電層上に形成された有機物層に、導電層に達する孔を形成する工程と、孔の底に波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、孔の底に照射された電磁波が孔の底に残存する有機物によって吸収される量を測定することで、孔の底の有機物の分布を測定する工程と、孔の底の有機物の分布が所定範囲内であれば後工程を実施する。
【0011】
このように構成された導電部材の製造方法では、孔底に残存する有機物の分布を測定するため、孔全体にわたって有機物の残存量を測定することができる。その結果、孔の底を正しく評価することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に従えば、確実に孔の検査を行なうことができる孔の検査方法および導電部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に従った孔の検査方法を説明するための図である。
【図2】この発明の実施の形態1に従った孔の検査方法において有機物を除去する工程を説明するための断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に従った孔の検査方法において孔の検査工程を説明するための断面図である。
【図4】ポリイミドの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【図5】ポリエチレンテレフタレートの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【図6】液晶ポリマーの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【図7】ポリイミドの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【図8】ポリエチレンテレフタレートおよび液晶ポリマーの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【図9】この発明の実施の形態2に従った孔の検査方法において、孔の底での検査領域を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2に従った孔の検査方法において、孔を形成するときのレーザの渦巻き状の照射軌跡を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態2に従った孔の検査方法において、孔を形成するときのレーザの同心円状の照射軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。また、各実施の形態を組合されることも可能である。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従った孔の検査方法を説明するための図である。図1を参照して、導電層10、有機物層20および導電層30の積層構造体に開口31を形成する。開口31の直径はDとされる。導電層10はいずれの導電層であってもよい。たとえば、銅、アルミニウムなどの金属であってもよく、不純物が導入されたシリコンなどの半導体であってもよい。
【0016】
また、有機物層20は、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)および液晶ポリマー(LCP)などのさまざまな有機物を採用することが可能である。
【0017】
図2は、この発明の実施の形態1に従った孔の検査方法において有機物を除去する工程を説明するための断面図である。図2を参照して、レーザ40により、有機物層20に孔22を形成する。このとき、レーザ40は、導電層10を露出させるようにレーザ40が照射される。しかしながら、有機物20の取り残しが孔22の底部分に残存する場合がある。
【0018】
図3は、この発明の実施の形態1に従った孔の検査方法において孔の検査工程を説明するための断面図である。図3を参照して、光源51から電磁波52を照射する。そして、孔22の底22aから反射した電磁波を検出器53が検出する。このときの検出量によって、底22aにどの程度残存した有機物20が残っているかどうかを検出することができる。そして、底22a全体で有機物20の残存量のマップを作成する。
【0019】
図4は、ポリイミドの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。図5は、ポリエチレンテレフタレートの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。図6は、液晶ポリマーの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。図4から図6を参照して、いずれの有機物層20を構成する材料においても、特定の波数で吸収が大きくなっていることがわかる。これは、有機物層20を構成する化学結合に起因する吸収である。その吸収波数を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
表1における4桁の数字は、吸収波数(cm−1)である。
さらに、PETでは波長が300nm、PIでは波長が450nm、LCPでは波長が400nmの領域で吸収のピークがあるので、これらのピークを利用して有機物層20の残存を測定してもよい。この場合、赤外よりも波長の短い、いわゆる紫外線および可視光線を光源51から照射することとなる。
【0022】
底22aに有機物がどの程度残存しているかの評価に関しては、赤外顕微鏡を用いることができる。具体的には、赤外顕微鏡(パーキンエルマー社製Spotlight400)のイメージングIR(infrared)機能を用いて、孔22加工後の残渣について、材質の特定だけでなく、底22aを一定の空間分解能で分割してそれぞれをマッピングしていき、樹脂残渣の厚みおよび分布について評価する。樹脂残渣の厚みの対数と吸光度とは比例するため、吸光度を特定することで樹脂残渣の厚みを測定することができる。
【0023】
樹脂残渣量に応じて、良品か不良品かを判断する光源51からの光の照射量と、検出器53における吸光後の検出量とのデータがコンピュータ60に伝えられる。コンピュータ60では、底22aにおける残渣21の残量に応じて孔22が規定どおりに形成されたかどうかを判断することができる。
【0024】
例えば、底22aのうち、20%以上の面積で残渣が残っていたら不良品と判断し、20%未満の残量であれば良品と判断してもよい。この場合、残渣21の被覆面積と底22aの面積との比率のみが問題となり、残渣21の厚みは問題とならない。
【0025】
残渣21の厚みをも考慮して不良品の判定をする場合には、残渣21による底22aの被覆面積と残渣21の平均厚みとを掛け合わせることで残渣21の体積を計算することができる。この体積が所定値以上であれば不良品と判断し、所定値未満であれば良品と判断してもよい。残渣21による被覆面積が一定であっても、残渣21の厚みが異なれば、後の洗浄工程において残渣21をどの程度除去できるかが異なる。すなわち、残渣21による被覆面積が広くても、残渣21の厚みが薄ければ後の洗浄工程においてその残渣21を除去できるために良品と判断する。これとは反対に、残渣21の被覆面積が狭くても残渣21の厚みが厚ければ残渣21を後の洗浄工程で取り除くことができない。その結果、不良品と判断する。
【0026】
また、残渣21の体積および面積が所定値を超えないものの、所定値に近い場合には、レーザ40による照射時間を長くすることで、有機物層20の除去工程の時間を長くして確実に有機物層20を除去するように、コンピュータ60がレーザ40を制御してもよい。
【0027】
図7は、ポリイミドの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。図8は、ポリエチレンテレフタレートおよび液晶ポリマーの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【0028】
図7および図8で示すように、短波長領域において吸収の多い領域(波長が200から450nm)が見られるため、この領域を用いて、残渣21の量を算出することが可能である。なお、紫外および可視領域での吸収は、赤外領域での吸収のように、有機物を構成する特定の化学結合に基づく吸収ではない。そのため、赤外吸収で見られた鋭いピークは紫外および可視領域では見当たらない。
【0029】
実施の形態に従った孔22の検査方法は、導電層10上に形成されて、導電層10に達する孔22が設けられた有機物層20の孔22を検査する方法であって、孔22の底22aに波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、孔22の底22aに照射された電磁波が孔22の底22aに残存する有機物の特定の化学結合によって、および/または特定の化学結合によらず吸収される量を測定することで、孔の底22aに残存する有機物の分布を測定する工程とを備える。
【0030】
孔22を有する導電部材の製造方法は、導電層10上に形成された有機物層20に、導電層10に達する孔22を形成する工程と、孔22の底22aに波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、孔22の底22aに照射された電磁波が孔22の底22aに残存する有機物によって吸収される量を測定することで、孔22の底22aの有機物の分布を測定する工程と、孔22の底22aの有機物の分布が所定範囲内であれば後工程を実施する。
【0031】
以上のように構成された、この発明に従った方法では、底22a全体にわたる残渣21の分布を測定するため、孔22の底22aの状体を正確に把握して良品か不良品かの判断をすることが可能となる。
【0032】
(実施の形態2)
図9は、この発明の実施の形態2に従った孔の検査方法において、孔の底での検査領域を示す図である。図10は、この発明の実施の形態2に従った孔の検査方法において、孔を形成するときのレーザの渦巻き状の照射軌跡を示す図である。図11は、この発明の実施の形態2に従った孔の検査方法において、孔を形成するときのレーザの同心円状の照射軌跡を示す図である。
【0033】
図9で示すように、底22aのうち、1/4の扇形領域25のみで残渣のマップを作成すれば、残りの領域でも、扇形領域25と同じように残渣が分布していると推測することも可能である。円形の孔22を形成する場合には、図10および図11で示すように、レーザの照射軌跡26を渦巻き形状にするか、照射軌跡27を同心円形状にすることがある。この場合には、残渣の分布は、円の中心に対して対称形状となり、全体の1/4の部分において残渣の分布を調べれば、他の部分でも同じように残渣が分布していると判断することができる。
【0034】
すなわち、孔22は円形状であり、電磁波を照射する領域は、辺の長さが孔の半径に等しい、中心角が90度以上の扇形領域25である。
【0035】
この場合、有機物の光吸収を利用してマップを形成する領域の面積を小さくすることができるため、マップ形成時間を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、導電層上に有機物層を形成して、その有機物層に孔を形成する、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板および液晶基板の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10,30 導電層、20 有機物層、21 残渣、22 孔、22a 底、25 扇形領域、26,27 照射領域、31 開口、40 レーザ、51 光源、52 電磁波、53 検出器、60 コンピュータ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、孔の検査方法および孔を有する導電部材の製造方法に関し、より特定的には、ビアホール底の樹脂の残渣を評価する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線のビアホールに関連する発明が、たとえば特開平10−190242号公報(特許文献1)、特開平10−322034号公報(特許文献2)、特開平10−85976号公報(特許文献3)、特開2001−102720号公報(特許文献4)および特開2002−252442号公報(特許文献5)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−190242号公報
【特許文献2】特開平10−322034号公報
【特許文献3】特開平10−85976号公報
【特許文献4】特開2001−102720号公報
【特許文献5】特開2002−252442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば特許文献1では、ビアホール底の残渣を検出することが開示されているが、評価領域については、ホール底全体および1点のみであり、残渣の有無についてのみの実施例が開示されている。そのため、十分な判断ができないという問題があった。
【0005】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、孔を確実に検査することが可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った穴の検査方法は、導電層上に形成されて、導電層に達する孔が設けられた有機物層の孔を検査する方法であって、孔の底に波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、孔の底に照射された電磁波が孔の底に残存する有機物によって吸収される量を測定することで、孔の底に残存するの有機物の分布を測定する工程とを備える。
【0007】
このように構成された検査方法では、孔底に残存する有機物の分布を測定するため、孔全体にわたって有機物の残存量を測定することができる。その結果、孔の底を正しく評価することができる。
【0008】
好ましくは、有機物はPET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)およびLCP(液晶ポリマー)からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む。
【0009】
好ましくは、孔は円形状であり、電磁波を照射する領域は、辺の長さが孔の半径に等しい、中心角が90度以上の扇形の領域である。
【0010】
この発明に従った孔を有する導電部材の製造方法は、導電層上に形成された有機物層に、導電層に達する孔を形成する工程と、孔の底に波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、孔の底に照射された電磁波が孔の底に残存する有機物によって吸収される量を測定することで、孔の底の有機物の分布を測定する工程と、孔の底の有機物の分布が所定範囲内であれば後工程を実施する。
【0011】
このように構成された導電部材の製造方法では、孔底に残存する有機物の分布を測定するため、孔全体にわたって有機物の残存量を測定することができる。その結果、孔の底を正しく評価することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に従えば、確実に孔の検査を行なうことができる孔の検査方法および導電部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に従った孔の検査方法を説明するための図である。
【図2】この発明の実施の形態1に従った孔の検査方法において有機物を除去する工程を説明するための断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に従った孔の検査方法において孔の検査工程を説明するための断面図である。
【図4】ポリイミドの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【図5】ポリエチレンテレフタレートの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【図6】液晶ポリマーの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【図7】ポリイミドの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【図8】ポリエチレンテレフタレートおよび液晶ポリマーの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【図9】この発明の実施の形態2に従った孔の検査方法において、孔の底での検査領域を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2に従った孔の検査方法において、孔を形成するときのレーザの渦巻き状の照射軌跡を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態2に従った孔の検査方法において、孔を形成するときのレーザの同心円状の照射軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。また、各実施の形態を組合されることも可能である。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従った孔の検査方法を説明するための図である。図1を参照して、導電層10、有機物層20および導電層30の積層構造体に開口31を形成する。開口31の直径はDとされる。導電層10はいずれの導電層であってもよい。たとえば、銅、アルミニウムなどの金属であってもよく、不純物が導入されたシリコンなどの半導体であってもよい。
【0016】
また、有機物層20は、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)および液晶ポリマー(LCP)などのさまざまな有機物を採用することが可能である。
【0017】
図2は、この発明の実施の形態1に従った孔の検査方法において有機物を除去する工程を説明するための断面図である。図2を参照して、レーザ40により、有機物層20に孔22を形成する。このとき、レーザ40は、導電層10を露出させるようにレーザ40が照射される。しかしながら、有機物20の取り残しが孔22の底部分に残存する場合がある。
【0018】
図3は、この発明の実施の形態1に従った孔の検査方法において孔の検査工程を説明するための断面図である。図3を参照して、光源51から電磁波52を照射する。そして、孔22の底22aから反射した電磁波を検出器53が検出する。このときの検出量によって、底22aにどの程度残存した有機物20が残っているかどうかを検出することができる。そして、底22a全体で有機物20の残存量のマップを作成する。
【0019】
図4は、ポリイミドの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。図5は、ポリエチレンテレフタレートの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。図6は、液晶ポリマーの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。図4から図6を参照して、いずれの有機物層20を構成する材料においても、特定の波数で吸収が大きくなっていることがわかる。これは、有機物層20を構成する化学結合に起因する吸収である。その吸収波数を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
表1における4桁の数字は、吸収波数(cm−1)である。
さらに、PETでは波長が300nm、PIでは波長が450nm、LCPでは波長が400nmの領域で吸収のピークがあるので、これらのピークを利用して有機物層20の残存を測定してもよい。この場合、赤外よりも波長の短い、いわゆる紫外線および可視光線を光源51から照射することとなる。
【0022】
底22aに有機物がどの程度残存しているかの評価に関しては、赤外顕微鏡を用いることができる。具体的には、赤外顕微鏡(パーキンエルマー社製Spotlight400)のイメージングIR(infrared)機能を用いて、孔22加工後の残渣について、材質の特定だけでなく、底22aを一定の空間分解能で分割してそれぞれをマッピングしていき、樹脂残渣の厚みおよび分布について評価する。樹脂残渣の厚みの対数と吸光度とは比例するため、吸光度を特定することで樹脂残渣の厚みを測定することができる。
【0023】
樹脂残渣量に応じて、良品か不良品かを判断する光源51からの光の照射量と、検出器53における吸光後の検出量とのデータがコンピュータ60に伝えられる。コンピュータ60では、底22aにおける残渣21の残量に応じて孔22が規定どおりに形成されたかどうかを判断することができる。
【0024】
例えば、底22aのうち、20%以上の面積で残渣が残っていたら不良品と判断し、20%未満の残量であれば良品と判断してもよい。この場合、残渣21の被覆面積と底22aの面積との比率のみが問題となり、残渣21の厚みは問題とならない。
【0025】
残渣21の厚みをも考慮して不良品の判定をする場合には、残渣21による底22aの被覆面積と残渣21の平均厚みとを掛け合わせることで残渣21の体積を計算することができる。この体積が所定値以上であれば不良品と判断し、所定値未満であれば良品と判断してもよい。残渣21による被覆面積が一定であっても、残渣21の厚みが異なれば、後の洗浄工程において残渣21をどの程度除去できるかが異なる。すなわち、残渣21による被覆面積が広くても、残渣21の厚みが薄ければ後の洗浄工程においてその残渣21を除去できるために良品と判断する。これとは反対に、残渣21の被覆面積が狭くても残渣21の厚みが厚ければ残渣21を後の洗浄工程で取り除くことができない。その結果、不良品と判断する。
【0026】
また、残渣21の体積および面積が所定値を超えないものの、所定値に近い場合には、レーザ40による照射時間を長くすることで、有機物層20の除去工程の時間を長くして確実に有機物層20を除去するように、コンピュータ60がレーザ40を制御してもよい。
【0027】
図7は、ポリイミドの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。図8は、ポリエチレンテレフタレートおよび液晶ポリマーの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【0028】
図7および図8で示すように、短波長領域において吸収の多い領域(波長が200から450nm)が見られるため、この領域を用いて、残渣21の量を算出することが可能である。なお、紫外および可視領域での吸収は、赤外領域での吸収のように、有機物を構成する特定の化学結合に基づく吸収ではない。そのため、赤外吸収で見られた鋭いピークは紫外および可視領域では見当たらない。
【0029】
実施の形態に従った孔22の検査方法は、導電層10上に形成されて、導電層10に達する孔22が設けられた有機物層20の孔22を検査する方法であって、孔22の底22aに波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、孔22の底22aに照射された電磁波が孔22の底22aに残存する有機物の特定の化学結合によって、および/または特定の化学結合によらず吸収される量を測定することで、孔の底22aに残存する有機物の分布を測定する工程とを備える。
【0030】
孔22を有する導電部材の製造方法は、導電層10上に形成された有機物層20に、導電層10に達する孔22を形成する工程と、孔22の底22aに波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、孔22の底22aに照射された電磁波が孔22の底22aに残存する有機物によって吸収される量を測定することで、孔22の底22aの有機物の分布を測定する工程と、孔22の底22aの有機物の分布が所定範囲内であれば後工程を実施する。
【0031】
以上のように構成された、この発明に従った方法では、底22a全体にわたる残渣21の分布を測定するため、孔22の底22aの状体を正確に把握して良品か不良品かの判断をすることが可能となる。
【0032】
(実施の形態2)
図9は、この発明の実施の形態2に従った孔の検査方法において、孔の底での検査領域を示す図である。図10は、この発明の実施の形態2に従った孔の検査方法において、孔を形成するときのレーザの渦巻き状の照射軌跡を示す図である。図11は、この発明の実施の形態2に従った孔の検査方法において、孔を形成するときのレーザの同心円状の照射軌跡を示す図である。
【0033】
図9で示すように、底22aのうち、1/4の扇形領域25のみで残渣のマップを作成すれば、残りの領域でも、扇形領域25と同じように残渣が分布していると推測することも可能である。円形の孔22を形成する場合には、図10および図11で示すように、レーザの照射軌跡26を渦巻き形状にするか、照射軌跡27を同心円形状にすることがある。この場合には、残渣の分布は、円の中心に対して対称形状となり、全体の1/4の部分において残渣の分布を調べれば、他の部分でも同じように残渣が分布していると判断することができる。
【0034】
すなわち、孔22は円形状であり、電磁波を照射する領域は、辺の長さが孔の半径に等しい、中心角が90度以上の扇形領域25である。
【0035】
この場合、有機物の光吸収を利用してマップを形成する領域の面積を小さくすることができるため、マップ形成時間を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、導電層上に有機物層を形成して、その有機物層に孔を形成する、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板および液晶基板の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10,30 導電層、20 有機物層、21 残渣、22 孔、22a 底、25 扇形領域、26,27 照射領域、31 開口、40 レーザ、51 光源、52 電磁波、53 検出器、60 コンピュータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層上に形成されて、前記導電層に達する孔が設けられた有機物層の前記孔を検査する方法であって、
孔の底に波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、
前記孔の底に照射された電磁波が前記孔の底に残存する有機物によって吸収される量を測定することで、前記孔の底に残存する有機物の分布を測定する工程とを備えた、孔の検査方法。
【請求項2】
前記有機物はPET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)およびLCP(液晶ポリマー)からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む、請求項1に記載の孔の検査方法。
【請求項3】
前記孔は円形状であり、前記電磁波を照射する領域は、辺の長さが孔の半径に等しい、中心角が90度以上の扇形の領域である、請求項1または2に記載の孔の検査方法。
【請求項4】
導電層上に形成された有機物層に、前記導電層に達する孔を形成する工程と、
孔の底に波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、
前記孔の底に照射された電磁波が前記孔の底に残存する有機物によって吸収される量を測定することで、前記孔の底の有機物の分布を測定する工程と、
前記孔の底の有機物の分布が所定範囲内であれば後工程を実施する、孔を有する導電部材の製造方法。
【請求項1】
導電層上に形成されて、前記導電層に達する孔が設けられた有機物層の前記孔を検査する方法であって、
孔の底に波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、
前記孔の底に照射された電磁波が前記孔の底に残存する有機物によって吸収される量を測定することで、前記孔の底に残存する有機物の分布を測定する工程とを備えた、孔の検査方法。
【請求項2】
前記有機物はPET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)およびLCP(液晶ポリマー)からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む、請求項1に記載の孔の検査方法。
【請求項3】
前記孔は円形状であり、前記電磁波を照射する領域は、辺の長さが孔の半径に等しい、中心角が90度以上の扇形の領域である、請求項1または2に記載の孔の検査方法。
【請求項4】
導電層上に形成された有機物層に、前記導電層に達する孔を形成する工程と、
孔の底に波長が0.2μm以上10μm以下の電磁波を照射する工程と、
前記孔の底に照射された電磁波が前記孔の底に残存する有機物によって吸収される量を測定することで、前記孔の底の有機物の分布を測定する工程と、
前記孔の底の有機物の分布が所定範囲内であれば後工程を実施する、孔を有する導電部材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−19012(P2012−19012A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154702(P2010−154702)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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