説明

孔版印刷機用W/O型エマルションインキ

【課題】油相中に少なくともロジン変性フェノール樹脂または大豆油脂肪酸アルキド樹脂が含有された孔版印刷用のインキを高温で長期間保存しても顔料の凝集を抑制することが可能であり、しかもドラムを長期に使用しなかった場合にも孔版印刷原紙上での顔料の馴染みを良好にさせる。
【解決手段】油相及び水相によって構成される孔版印刷機用W/O型エマルションインキにおいて、油相中のロジン変性フェノール樹脂及び大豆油脂肪酸アルキド樹脂をインキ中に含有させるとともに着色剤として硫酸バリウム等の硫酸バリウムで表面処理された顔料を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強い力に対する残留性(チョーキング)に優れ、高温での長期間の保存後においても顔料の凝集がなく、しかもドラムを長期で使用しなかった場合の孔版印刷原紙上で顔料の滲みが生じ難い孔版印刷用W/O型エマルションインキに関する。
【背景技術】
【0002】
孔版印刷とは良く知られているように、孔版印刷原紙の穿孔部を介して原紙の一方の側より他方の側へインキを移動させることにより、紙などの被印刷物面に印刷を行なうものである。従来からこの孔版印刷には、揮発性溶剤、不揮発性溶剤、樹脂、着色剤、界面活性剤、水、凍結防止剤、電解質、防腐剤等により構成される油中水型(W/O)のエマルションインキが用いられている。近年、紙等の資源保護の観点から、孔版印刷に際して両面印刷の要求が増えてきているが、浸透乾燥定着方式が一般的である孔版印刷においては、消しゴムや強い力に対する残留性(チョーキング性)を向上させることは大きな課題の一つになっている。その対処法として、ロジンフェノール樹脂とアルキド樹脂を併用することが提案されている(特許文献1)。この方法によれば、「指触乾燥性」や「顔料凝集」に対しては効果が確認されているものの、高温での長期間保存した場合の顔料凝集性や、ドラムを長期に使用しなかった場合の孔版印刷原紙上での顔料の馴染みの効果が不十分であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、油相中に少なくともロジン変性フェノール樹脂または大豆油脂肪酸アルキド樹脂が含有された孔版印刷用のインキにおいて、高温で長期間保存しても顔料の凝集を抑制することが可能であり、ドラムを長期に使用しなかった場合にも孔版印刷原紙上での顔料の馴染みの効果が良好な孔版印刷機用エマルションインキを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願第1の発明によれば、油相及び水相によって構成される孔版印刷機用W/O型エマルションインキであって、該油相中にロジン変性フェノール樹脂及び大豆油脂肪酸アルキド樹脂を含有したインキにおいて、着色剤として硫酸バリウムで表面処理された顔料を用いることを特徴とする孔版印刷機用W/O型エマルションインキを提供する。
第2の発明によれば、油相中に環分析による炭素分布におけるパラフィン成分の炭素含有量(Cp)が55%以上である鉱物油が含有された上記の孔版印刷機用W/O型エマルションインキを提供する。
第3の発明によれば、油相中にエステル化大豆油が含有された上記の孔版印刷機用W/O型エマルションインキを提供する。
【発明の効果】
【0005】
請求項第1の発明によれば、硫酸バリウムで表面処理された顔料を使用することにより、強い力に対する残留性(チョーキング)に優れ、顔料が高温で長期間保存しても凝集せず、またドラムを長期で使用しなかった場合にも孔版印刷原紙上における顔料の滲みが抑制された孔版印刷機用W/O型エマルションインキが得られる。
請求項第2の発明によれば、上記効果に加え、パラフィン成分の炭素含有量(Cp)が55%以上の鉱物油を用いることにより、分散系の相溶性を低下させて孔版印刷原紙上の顔料の滲みをさらに抑制することができる。
請求項第3の発明によれば、エステル化大豆油を用いて相溶性を低下させることにより、孔版印刷原紙上の顔料の滲みをさらに抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
孔版印刷には通常、揮発性溶剤、不揮発性溶剤、樹脂、着色剤、界面活性剤、水、凍結防止剤、電解質、防腐剤等により構成される油中水型(W/O)のエマルションインキが用いられているが、この孔版印刷機用エマルションインキの油相中には、ロジン変性フェノール樹脂か大豆油脂肪酸アルキド樹脂のいずれか、又はそれらの双方が含有されている。ロジン変性フェノール樹脂は乾燥時に複数の顔料が吸着すると同時に紙にも吸着するため顔料と紙との固着する効果があるが、それと同時に顔料同士の凝集にも作用する。また、大豆油脂肪酸アルキド樹脂は分子構造中に持っている二重結合が空気中の酸素と酸化重合することで顔料を紙に固定する効果を持っているが、初期の段階では顔料分散効果により顔料は分散された状態になっている。したがって、ドラムを長期的に使用しない場合において、顔料分散効果があまり良好過ぎる大豆油脂肪酸アルキド樹脂等を使用する場合は孔版印刷原紙上での顔料の滲みが発生する原因にもなる。
【0007】
本発明の要旨は、油相中にロジン変性フェノール樹脂及び大豆油脂肪酸アルキド樹脂を含有したW/O型エマルションインキにおいて、硫酸バリウムで表面処理された顔料を特定して用いることにより、残留性(チョーキング)に優れ、顔料が高温での長期保存後も凝集を起こさず、しかも、ドラムを長期で使用しなかった場合においても孔版印刷原紙上で顔料の滲みを抑制することを可能にするものである。
なお、本発明における典型的なエマルションの水相としては、水、電解質、防腐剤、水蒸発防止剤、凍結防止剤、水溶性高分子、水中油型樹脂エマルション、着色剤、着色剤分散剤等を例示することができる。また、油相としては、植物油、鉱物油、着色剤分散剤、着色剤、体質顔料、樹脂、乳化剤等の本出願前公知のものの使用が可能である。
以下、本発明に用いる好適な材料と発明の態様の詳細について説明する。
【0008】
本発明で用いられるロジン変性フェノール樹脂としては、重量平均分子量で1万〜15万程度のものが好ましく、例えば、荒川化学社製のタマノール−361、KG−836、KG−1808−1、KG−885、KG−1800、タマノール−370、タマノール−396、KG−801、KG−825、KG−846、KG−1816、タマノールG−5などが挙げられる。また、大豆油脂肪酸アルキド樹脂としては、大豆油由来の油脂と多塩基酸及び多価アルコールから構成されている。大豆油の油脂は、ヨウ素価が90〜140程度の半乾性の領域であるため、アルキド樹脂自体の乾燥性の観点から、酸価は15以下、好ましくは10以下と、低い方が好ましいが本願発明の効果を阻害しない範囲であれば、任意の大豆油脂肪酸アルキド樹脂を使用することができる。
【0009】
着色剤としては、本発明の用件(硫酸バリウムにて表面処理)を満たす範囲において、公知の顔料を用いることができる。例えば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック類、アルミニウム粉、ブロンズ粉などの金属粉、弁柄、黄鉛、群青、酸化クロム、酸化チタン等の無機顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料などのアゾ系顔料、無金属フタロシアニン顔料や銅フタロシアニン顔料などのフタロシアニン系顔料、アントラキノン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサンジン系、スレン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キノフタロン系、金属錯体、などの縮合多環系顔料、酸性または塩基性染料のレーキ等の有機顔料、等が挙げられる。
【0010】
また、蛍光顔料としては、合成樹脂を塊状重合する際または重合した後に、様々な色相を発色する蛍光染料を溶解または染着し、えられた着色塊状樹脂を粉砕して微細化した、所謂、合成樹脂固溶体タイプのもので、染料を坦持する合成樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、アルキド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を染料に坦持する蛍光顔料等が上げられる。これらの顔料類は、単独でも2種以上混合して添加しても良い。油相に分散された不溶性着色剤の平均粒径は10〜0.1μm、好ましくは1〜0.1μmであることが望ましい。その使用量は必要量に応じて添加することが可能であるが、通常2〜15重量%である。また油相、水相に分散あるいは添加できるが、性質の近い着色剤は2種類以上の着色剤を同相に添加しても良い。
【0011】
着色剤分散剤としては、エマルションの形成を阻害しない任意の物が使用でき、前記の乳化剤用非イオン性界面活性剤及び水溶性高分子も使用することができる。分散剤としてはアルミニウムキレート系化合物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルアミン系高分子化合物、スチレン−無水マレイン酸系共重合高分子化合物、ポリカルボン酸エステル型高分子化合物、脂肪族系多価カルボン酸、高分子ポリエステルのアミン塩類、エステル型アニオン界面活性剤、高分子量ポリカルボン酸の長鎖アミン塩類、長鎖ポリアミノアミドと高分子酸ポリエステルの塩、ポリアミド系化合物、燐酸エステル系界面活性剤、アルキルスルホカルボン酸塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸塩類、ポリエチレンイミン、アルキロールアミン塩、などもあげられる。この他にもインキの保存安定性を阻害しない範囲であればイオン性界面活性剤、両性界面活性剤なども挙げられる。これらの分散剤は単独または2種類以上混合して添加すれば良く、高分子及び樹脂以外の着色剤分散剤の添加量は着色剤重量の50重量%以下、好ましくは2〜35重量%とすれば良い。
【0012】
乳化剤としては、油中水型のエマルションを形成する目的で使用され、好ましくは非イオン系界面活性剤であり、たとえば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油及び高級アルコール等があげられる。これらは、単独あるいはこれらのHLBの異なるものを2種類以上あわせて安定性の高いエマルションを調整する。添加量はインキ重量の1〜8重量%、好ましくは2〜5.5重量%とすればよい。
【0013】
本発明で用いられる鉱物油としては、本発明の効果を損なわない範囲で公知の鉱物油、石油系溶剤、流動パラフィン、スピンドル油等の公知のものを併用しても良い。パラフィン系オイルはモービル石油社のガーゴオイルアークティックシリーズ、日本石油社の日石スパーオイルシリーズ、出光興産社のダイアナプロセスオイル、ダイアナフレシアシリーズ等があげられる。安全性の高い石油系溶剤としてはエクソン化学社のアイソパーシリーズ及びエクソール、日本石油社のAFソルベントシリーズ等があげられる。
これらの油成分は安定性を考慮した場合、3環以上の縮合芳香族環を含む芳香族炭化水素である多環芳香族成分が3質量%未満のものを使用する事が望ましい。
さらに、変異原性指数MIが1.0未満、アロマ分(%C)が20〜55%、アニリン点が100℃以下であって、かつオイル全重量基準でベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[a]ピレン、ジベンゾ[a,j]アクリジン等の多環芳香族の含有量がそれぞれ個々に10重量ppm以下であり、含有量の合計量が50重量ppm以下である、安全性の高いアロマ系オイル(特開平11−80640号公報)も必要であれば使用しても良い。これらのオイルは単独でも複数混合して添加しても良い。
【0014】
植物油としては、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、なたね油、サフラワー油、ごま油、ひまし油、脱水ひまし油、つばき油、オリーブ油、やし油、米油、綿実油、パーム油、あまに油、パーム核油、桐油、カメリアオイル、グレープシード油、スイートアルモンド油、ピスタチオナッツ油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、メドウホーム油等が挙げられ、更にそれら植物油をエステル化した加工油等も用いる事ができるが、これに限定させるものではない。その他、本願の効果を阻害しない範囲で他の樹脂を使用しても良い。以下に具体例を示すが、これに限定されるものではない。
ロジン;重合ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル,ロジンポリエステル樹脂、水素化ロジンエステル等のロジン系樹脂;ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂;等のロジン変性樹脂;マレイン酸樹脂;フェノール樹脂;石油樹脂;環化ゴムなどのゴム誘導体樹脂;テルペン樹脂;重合ひまし油;その他大豆油脂肪酸以外のアルキド樹脂、等を1種または2種以上を混合して添加して良い。また、油相中に樹脂を添加する場合の樹脂使用量は、インキのコストおよび印刷適正から油相の2〜50重量%、より好ましくは5〜20重量%である。樹脂の重量平均分子量が小さい場合や添加量が少ない場合は定着性への効果が小さい。また、重量平均分子量が大き過ぎたり樹脂の添加量が多い場合はインキの塑性粘度が高くなり、ドラム後端からインキが漏れるなどの印刷適性の問題が生じる。
【0015】
また、本願発明では、本願の効果を阻害しない範囲でゲル化を使用しても良い。
ゲル化剤は、油相に含まれる樹脂をゲル化してインキの保存安定性、定着性、流動性を向上させる役割をもち、本発明のインキに添加されるゲル化剤としては油相中の樹脂と配位結合する化合物が好ましい。このような化合物を例示すると、Li、Na、K、Al、Ca、Co、Fe、Mn、Mg、Pb、Zn、Zr等の金属を含む有機酸塩、有機キレート化合物、金属石鹸オリゴマー等であり、具体的にはオクチル酸アルミニウム等のオクチル酸金属塩、ナフテン酸マンガン等のナフテン酸金属塩、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸塩、アルミニウムジイソプロポキシドモノエチルアセトアセテート等の有機キレート化合物等が挙げられる。ゲル化剤は1種または2種類以上を油相に添加すれば良く、添加量は油相中の樹脂の15重量%以下、好ましくは5〜10重量%である。
【0016】
また、インキ中には滲み防止、あるいは粘度調整のために体質顔料も添加できる。
インキ中に添加される体質顔料としては白土、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナホワイト、ケイソウ土、カオリン、マイカ、水酸化アルミニウム等の無機微粒子およびポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリシロキサン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、等の有機微粒子またはこれらの共重合体からなる微粒子が挙げられる。これらは油相、水相また両相に添加しても良く。添加量はインキに対して0.1〜50重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。水の蒸発防止剤と凍結防止剤は兼用可能であり、これらの目的で添加される薬品は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブイタノール、イソブタノール等の低級飽和一価アルコール;グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール;等である。これらの薬品は1種または2種以上を添加すれば良く、その添加量はインキ中の水重量の15重量%以下、好ましくは4〜12重量%である。
【0017】
発明で用いる酸化防止剤としては、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、グアヤク脂、クエン酸エステル、抽出トコフェロール、トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸塩類、チオ硫酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸誘導体等の公知のものが使用でき、その添加量はインキ中の油の2重量%以下、好ましくは0.01〜1.0重量%である。なお酸化防止剤は単独でも2種類以上を混合して使っても良い。エマルションインキの水相には、保湿や増粘及び不溶性着色剤、体質顔料の分散および固着のために水溶性高分子やO/W樹脂エマルションを添加しても良い。
【0018】
水溶性高分子としては具体的には下記の天然または合成高分子が添加される。
例えば、デンプン、マンナン、アルギン酸ソーダ、ガラクタン、トラガントガム、アラビアガム、ブルラン、デキストラン、キサンタンガム、ニカワ、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン等の天然高分子;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等の半合成高分子;アクリル酸樹脂およびポリアクリル酸ナトリウムなどの中和物、ポリビニルイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリN−アクリロイルピロリジンやポリN−イソプロピルアクリルアミドなどのポリN−アルキル置換アクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体及びこれらをアルキル基で部分的に疎水した高分子、またアクリルアミド系ポリマーおよびアクリル系のポリマーに関しては置換基を部分的にアルキル基で疎水化した共重合タイプのポリマーでも良い。またポリエチレンとポリプロピレンまたはポリブチレンのブロックコポリマー用いることができる。これらの水溶性高分子は単独でも2種類以上混合しても良く、インキに含まれる水の25重量%以下、好ましくは0.5〜15重量%が添加される。
【0019】
O/W樹脂エマルションの樹脂としては、合成高分子でも天然高分子でもよく、合成高分子としては、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン等が挙げられる。また、天然高分子としては油相に添加できる一般的な高分子等が挙げられる。これらは油中水型エマルションインキの安定性を阻害しない範囲であれば、2種類以上を併用してもよく、また分散方法も分散剤、保護コロイド、界面活性剤を添加していてもよい。また、ソープフリー乳化重合によって合成したものでも良い。これらのO/W樹脂エマルションの最低造膜温度は40℃以下であることが望ましい。
【0020】
水相に添加される防腐・防かび剤としては、エマルション内で細菌やかびが繁殖するのを防ぐために添加されるが、エマルションを長期保存する場合は防腐防かび剤を添加するのが望ましい。その添加量は、インキ中に含まれる水の3重量%以下、好ましくは0.1〜1.2重量%とするのが良い。また防腐・防かび剤としてはサリチル酸、フェノール類、p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸エチル等の芳香族ヒドロキシ化合物およびその塩素化合物のほか、ソルビン酸やデヒドロ酢酸、チアゾリン系防腐剤等が使用され、これらは単独でも2種類以上混合して使っても良い。
【0021】
水相に添加されるpH調整剤としては、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、トリアミルアミン、アンモニア等であり、必要時にはこれらのpH調整剤を添加して水相のpHを6〜8に保つことができる。水相のpHが前記範囲からはずれると、増粘剤用水溶性高分子が添加されている場合にはその効果が損なわれる等の問題がある。
水相に添加される電解質としては、エマルションの安定性を高める為に添加するものである。従って、その電解質にはエマルションの安定性向上に有効な離液順列が高いイオンで構成された電解質を添加するのが良い。離液順列が高い陰イオンは、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン等であり、離液順列が高い陽イオンは、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンである事から、ここで添加される電解質としては、少なくとも陰イオンか陽イオンの一方が前記イオンよりなる塩が好ましい。従って、ここで添加される電解質としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等が好ましく、その添加量は水相の0.1〜2重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0022】
上記のほか、本発明の孔版印刷機用W/O型エマルションインキには、印刷時に印刷用紙と印刷ドラムとの分離を良くするため、或いは、印刷用紙の卷き上がり防止のために油相にワックスを添加することができる。また、水相にはトリエタノールアミンや水酸化ナトリウム等を添加して、水溶性高分子添加による高粘度化を更に増進させることができる。さらに、水相に防錆剤や消泡剤を添加して印刷の際に印刷機がインキによって錆びたり、インキが泡立つことを防止することができる。これらの添加剤は、孔版印刷用インキに添加されている公知品を必要に応じて添加すれば良く、その添加量は従来品の場合と同程度でよい。本発明のエマルションインキは、従来のエマルションインキ製造時と同様にして油相及び水相液をそれぞれ調整し、この両方を公知の乳化機内で乳化させてインキとすればよい。
【実施例】
【0023】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。なお、以下に記す部はいずれも重量部である。
本発明の孔版印刷機用W/O型エマルションインキの油相は、顔料、オイル、ロジン変性フェノール樹脂、大豆油脂肪酸アルキド樹脂を3本ロールで練肉することで顔料分散体の調整を行い、この顔料分散体に乳化用界面活性剤、オイル等を加えて充分攪拌して油相を得た。
また、本発明の水相は、水に不凍液、電解質を加えて充分撹拌する事で、水相を得た。
そして、前記の方法で作成した油相に対して水相を徐々に添加してW/O型エマルションインキを得た。なお、インキの粘度は攪拌条件によっても調節可能であり、システムにあった粘度であれば良く特に規定はないが、ずり速度20s−1の時の見かけ粘度が3〜40Pa・sが望ましく、好ましくは10〜30Pa・sであることが望ましい。
【0024】
尚、実施例1〜8及び比較例1〜2の具体的な処方を表1に示す。
【表1】

(エマルションインキの評価)
インキの評価に関しては、(a)チョーキング、(b)高温長期保存後の顔料凝集、
(c)孔版印刷原紙上で顔料の滲み、の観点から以下3種の評価を実施した。
残留性評価
東北リコー製プリポートN−500に、該当インキを十分いきわたらせた後にベタ画像印刷を行い、ベタ部を消しゴムで強く10回こすった跡の残留濃度の度合いを目視により観察し、劣る順に「×、△、○、◎」と4段階で評価した。
顔料凝集評価
高温での長期保存後の顔料凝集については、インキを60℃の恒温槽に1ヶ月放置した後、光学顕微鏡にて顔料凝集の目視評価を実施し、悪いものから順に「×、△、○、◎」と4段階で評価した。
滲み評価
東北リコー製プリポートN−500に、該当インキを十分いきわたらせた後に、その印刷ドラムを常温で1ヶ月放置し、そのドラム上の孔版印刷原紙が、どの程度顔料が滲んでいるかを目視評価し、劣る順に「×、△、○、◎」と4段階で評価した。
尚、実施例1〜8及び比較例1〜2の評価結果を表2に示す。
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0025】
強い力に対する残留性(チョーキング)に優れ、高温での長期間の保存後においても顔料の凝集がなく、しかもドラムを長期で使用しなかった場合の孔版印刷原紙上で顔料の滲みが生じ難い孔版印刷用エマルションインキを提供できるだけでなく、両面印刷に好適に利用できることから紙等の資源保護の観点からも有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特許第3775531号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相及び水相によって構成される孔版印刷機用W/O型エマルションインキであって、該油相中にロジン変性フェノール樹脂及び大豆油脂肪酸アルキド樹脂を含有したインキにおいて、着色剤として硫酸バリウムで表面処理された顔料を用いることを特徴とする孔版印刷機用W/O型エマルションインキ。
【請求項2】
油相中に環分析による炭素分布におけるパラフィン成分の炭素含有量が55%以上である鉱物油が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の孔版印刷機用W/O型エマルションインキ。
【請求項3】
油相中にエステル化大豆油が含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の孔版印刷機用W/O型エマルションインキ。

【公開番号】特開2012−12485(P2012−12485A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150068(P2010−150068)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】