説明

孔版印刷用エマルションインキ

【課題】両面印刷時の給紙ローラによる汚れ(コロ跡汚れ)が少なく、VOCの発生が少なく、かつ環境に優しい植物原料をベースとした孔版印刷用エマルションインキの提供。
【解決手段】油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含んでなり、該油相が、着色剤、植物性アルキド樹脂、植物油、植物性乳化剤、及び油相中含有量が5質量%以下の前記4成分以外のその他の成分を含む孔版印刷用エマルションインキである。アルキド樹脂が大豆油脂肪酸アルキド樹脂であり、植物油がエステル化大豆油であり、乳化剤が大豆油由来ソルビタンモノオレートである態様などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面印刷時の給紙ローラによる汚れ(コロ跡汚れ)が少なく、VOCの発生が少なく、かつ環境に優しい植物原料をベースとした孔版印刷用エマルションインキに関する。
【背景技術】
【0002】
孔版印刷方法は、周知のように穿孔部を有する孔版印刷原紙(孔版)を用い、この孔版の穿孔部を介して孔版の一方の側より他方の側にインキを移動させることにより、紙などの被印刷物面に印刷を行う方法である。この孔版印刷方法には、従来より揮発性溶剤、不揮発性溶剤、樹脂、着色剤、界面活性剤、水、凍結防止剤、電解質、及び防腐剤などを含有する油中水型(W/O型)のエマルションインキが用いられている。
【0003】
近年、紙等の資源保護の観点から、孔版印刷機に関しても両面印刷の要求が増えてきており、外部からの強制的なエネルギー(UVや熱)ではなく、浸透乾燥定着方式による孔版印刷機においては、両面印刷時の給紙ローラによる汚れが大きな課題の一つになっている。
【0004】
また、インキに対しても、より安全なインキ、より環境に配慮されたインキへの要求が年々高まってきており、例えば、植物性インキ(ベジタブルインキ)やVOC(揮発性有機化合物)が少ないインキへの要求も少なくない状況である。
それらの要求に対して、オフセットインキの業界では、「method24」と言うアメリカの測定標準に従ったVOC測定が一般的に行われており、VOC1%未満の基準により「ノンVOCインキ」として上市している。しかし、前記基準を満たしていても、従来の孔版印刷用エマルションインキ(油相成分)においては、鉱物系の揮発溶剤やVOCを含んだ鉱物油が使用されており、ノンVOCインキと言えども、必ずしも環境に十分に配慮されたインキは開発されていない状況である。
【0005】
更に、孔版印刷用インキにおいては、最近になって環境に配慮されたアメリカ大豆協会認定の「SOYインキ」が上市されてはいるものの、これは6%以上の大豆油成分を含有していればよく、それ以外の成分では、鉱物油をはじめとした石油成分が依然として含まれている状況である。
【0006】
その対処法として、孔版印刷用インキの油相が含む特定の植物油に酸化防止剤を配合することや(特許文献1参照)、前記油相中に植物油と大豆油脂肪酸アルキドとを含有すること(特許文献2参照)等が提案されている。
しかしながら、前記いずれの提案においても、石油成分が相当量使用されており、環境への配慮の面では依然として不十分であると共に、「method24」によるVOCの発生も少なくはないと考えられる。
【0007】
したがって、両面印刷時の給紙ローラによる汚れ(コロ跡汚れ)が少なく、VOCの発生が少なく、かつ環境に優しい植物原料をベースとした孔版印刷用エマルションインキは未だ提案されていないのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特許第3462472号公報
【特許文献2】特開2005−325207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、両面印刷時の給紙ローラによる汚れ(コロ跡汚れ)が少なく、VOCの発生が少なく、かつ環境に優しい植物原料をベースとした孔版印刷用エマルションインキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含んでなり、該油相が、着色剤、植物性アルキド樹脂、植物油、植物性乳化剤、及び油相中含有量が5質量%以下の前記4成分以外のその他の成分を含むことを特徴とする孔版印刷用エマルションインキである。前記<1>に記載の孔版印刷用エマルションインキにおいては、油相における、着色剤、植物性アルキド樹脂、植物油、及び植物性乳化剤以外のその他成分の含有量を5質量%以下としたため、コロ跡汚れが多発しない程度の乾燥性を維持した状態で、VOCを大幅に低減することができる。また、植物性の成分は、石油系のようなVOC成分をほとんど含有していないことから、有害なVOCを発生しにくいことに加えて、系を植物性成分に統一することで、相溶性のバランスも良く、安定性にも問題ないインキとすることができる。より具体的には、従来の孔版印刷用エマルションインキでは、エマルション系の油相には鉱物油及び鉱物系溶剤が用いられてきたので、米国「Method24」のVOC測定で、相当量のVOCが検出されてしまう。それは、石油系のオイルには、低分子量の揮発成分が含有されていることに由来し、この成分が一般に有害なVOCなのである。また、石油系の溶剤も、沸点が低いことにより、有害なVOCを環境中に放出しやすい。更に、乳化剤は一般的に牛油等の動物系や石油系が多く、これらもあまり環境に良いとは言えない。これらの問題に対して、VOCの比較的少ない高沸点の鉱物油を使用すると、インキの浸透性と乾燥性とが阻害されてコロ跡汚れが悪化するが、前記油相を植物系成分により統一することで、その問題も解消される。
<2> アルキド樹脂が大豆油脂肪酸アルキド樹脂であり、植物油がエステル化大豆油であり、乳化剤が大豆油由来ソルビタンモノオレートである前記<1>に記載の孔版印刷用エマルションインキである。前記<2>に記載の孔版印刷用エマルションインキにおいては、主要成分を大豆油由来の成分で統一することで、本来大豆油が有する乾燥性を生かしつつ、系全体の相溶性も良く、更には容易に「soyインキ」の条件を満たすことができ、環境への配慮にも優れる。
<3> 水相成分が、植物性グリセリン、防腐剤、及び水相中含有量が1質量%以下の電解質を含み、かつ前記防腐剤が天然物である前記<1>から<2>のいずれかに記載の孔版印刷用エマルションインキである。前記<3>に記載の孔版印刷用エマルションインキにおいては、植物性のグリセリンを使用することで、環境への配慮がなされる。また、防腐剤に、天然原料由来の成分を用いることで、同様に環境への配慮がなされる。より具体的には、一般的にエマルションインキの水相には、不凍液成分が含有されている。前記不凍液成分としては、価格的な面でエチレングリコールが使用されていたが、前記エチレングリコールはPRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)該当物質であることに加え、VOCでもあることから、エチレングリコールの使用は避ける必要がある。その代わりとしてグリセリンがあるが、こちらも動物性原料由来のもの等が多く使用されているので、環境への配慮が十分でない。また、防腐剤についても、天然原料の材料の使用がほとんどされていなかったことから同様である。このため、植物性のグリセリンを使用し、かつ天然物の防腐剤を使用することで、環境への配慮に優れたインキとすることができる。
<4> 植物性グリセリンがパーム油由来のグリセリンであり、防腐剤がビタミンEである前記<3>に記載の孔版印刷用エマルションインキである。
<5> 油相が、着色剤、植物性アルキド樹脂、植物油、及び植物性乳化剤のみを含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の孔版印刷用エマルションインキである。前記<5>に記載の油相の孔版印刷用エマルションインキにおいては、着色剤以外の油相成分を、全て植物原料とすることができ、これまで孔版印刷用エマルションインキでは実現できなかった真の「ベジタブルインキ」「ノンVOCインキ」を達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来における諸問題を解決でき、両面印刷時の給紙ローラによる汚れ(コロ跡汚れ)が少なく、VOCの発生が少なく、かつ環境に優しい植物原料をベースとした孔版印刷用エマルションインキを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の孔版印刷用エマルションインキは、油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含んでなり、該油相が、着色剤、植物性アルキド樹脂、植物油、植物性乳化剤、及び油相中含有量が5質量%以下の前記4成分以外のその他の成分を含む。
【0013】
前記孔版印刷用エマルジョンインキは、油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含み、油相20〜50質量%及び水相50〜80質量%が好ましい。
前記油相の混合割合が10質量%未満であると、W/Oエマルジョンとしての形態をとれなくなることがあり、90質量%を超えると、物性的にW/Oエマルジョンとすることの効果が不足してしまうことがある。
【0014】
<油相>
前記油相としては、着色剤、植物性アルキド樹脂、植物油、植物性乳化剤を含み、更に必要に応じて、着色剤分散剤、体質顔料、酸化防止剤、鉱物油、ゲル化剤、などのその他の成分を含んでなる。
【0015】
−植物性アルキド樹脂−
前記植物性アルキド樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、油脂と多塩基酸と多価アルコールとを含む。
前記油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、オリーブ油、ひまし油、米糠油、綿実油、大豆油、アマニ油、キリ油、等の脂肪酸が挙げられ、これらの中でも、アメリカ大豆協会のSOYマーク認定を受けられるようにする観点からは、大豆油が特に好ましい。
前記多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸等の飽和多塩基酸、およびマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、等の不飽和多塩基酸が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリット、ジペンタエリスリット、マンニット、ソルビット、等が挙げられる。
前記植物性アルキド樹脂の含有量は、例えば、油相中5〜30質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
【0016】
−植物油−
前記植物油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、なたね油、サフラワー油、ごま油、ひまし油、脱水ひまし油、つばき油、オリーブ油、やし油、米油、綿実油、パーム油、あまに油、パーム核油、桐油、カメリアオイル、グレープシード油、スイートアルモンド油、ピスタチオナッツ油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、メドウホーム油、等が挙げられる。
前記植物油としては、加工植物油でもよく、該加工植物油としては、例えば、エステル化植物油、再生エステル化植物油、等が挙げられる。
前記加工植物油を得るために加工される植物油としては、特に制限はなく、例えば、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、なたね油、サフラワー油、ごま油、ひまし油、脱水ひまし油、つばき油、オリーブ油、やし油、米油、綿実油、パーム油、あまに油、パーム核油、桐油、カメリアオイル、グレープシード油、スイートアルモンド油、ピスタチオナッツ油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、メドウホーム油、等が挙げられる。
前記エステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、等が挙げられる。
前記植物油の含有量は、例えば、油相中30〜80質量%が好ましく、50〜70質量%がより好ましい。
【0017】
−植物性乳化剤−
前記植物性乳化剤は、油中水型のエマルションを形成する目的で使用され、非イオン系界面活性剤であることが好ましい。前記非イオン系界面活性剤の植物性乳化剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、高級アルコール、等が挙げられ、これらの中でも、大豆油由来のソルビタン脂肪酸エステルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、HLBの異なるものを2種類以上併せて、安定性の高いエマルションを調製して使用してもよい。
前記植物性乳化剤の添加量は、前記孔版印刷用エマルションインキ質量に対し、通常、1〜8質量%であり、2〜5.5質量%が好ましい。
【0018】
前記植物性アルキド樹脂、植物油、及び植物性乳化剤の含有量比は、例えば、質量比で、5:80:10〜30:30:10が好ましく、10:70:10〜20:50:10がより好ましく、15:60:10〜20:50:10が特に好ましい。
【0019】
−着色剤−
前記着色剤としては、各種色調の、公知の顔料、分散染料、等を用いることができ、例えば、カーボンブラック類、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサンジン系、縮合多環系顔料、油溶性染料、蛍光顔料、などが挙げられる
前記カーボンブラック類としては、例えば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、等のカーボンブラック類;アルミニウム粉、ブロンズ粉、等が挙げられる。
前記カーボンブラックは、油相に添加する場合には、pH5未満の酸性のカーボンブラックを使用することが好ましい。前記カーボンブラックとしては、例えば、MA-100、MA-7、MA-77、MA-11、#40、#44(以上、三菱化学社製)、Raven1100、Raven1080、Raven1255、Raven760、Raven410(以上、コロンビヤンカーボン社製)、などが挙げられる。
前記金属粉としては、例えば、アルミニウム粉、ブロンズ粉、等が挙げられる。前記アゾ系顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、等が挙げられる。前記フタロシアニン系顔料としては、無金属フタロシアニン顔料、銅フタロシアニン顔料、等が挙げられる。
前記縮合多環系顔料としては、例えば、アントラキノン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサンジン系、スレン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キノフタロン系、金属錯体、等が挙げられる。
前記油溶性染料としては、例えば、酸性又は塩基性染料のレーキ等の有機顔料、ジアゾ染料、アントラキノン系染料、等が挙げられる。
前記蛍光顔料としては、例えば、合成樹脂を塊状重合する際又は塊状重合した後に、様々な色相を発色する蛍光染料を溶解又は染着し、得られた着色塊状樹脂を粉砕して微細化した、所謂、合成樹脂固溶体タイプのものが挙げられる。
前記蛍光染料を担持する合成樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、アルキド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、等が挙げられる。
前記着色剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよく、2種以上を使用する場合は、通常、油相及び水相にそれぞれ1種ずつ、分散あるいは添加されるが、性質の近い着色剤は、2種類以上の着色剤を同相に添加してもよい。
前記着色剤において、不溶性着色剤を用いた場合、分散された前記不溶性着色剤の平均粒径は、通常、10〜0.1μmであり、1〜0.1μmであることが好ましい。
前記着色剤の使用量は、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、2〜15質量%である。
【0020】
−その他の成分−
前記その他の成分は、合計含有量が、油相中5質量%以下であることが必要であり、3質量%以下であることが好ましく、含まないことが特に好ましい。前記合計含有量が、5質量%を超えると、VOCの発生量が多くなってしまう。
−−体質顔料−−
前記体質顔料は、インキ中には滲み防止、粘度調整のために油相、水相、又は両相に添加することができる。
前記体質顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機微粒子、有機微粒子、などが挙げられる。前記無機微粒子としては、例えば、白土、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナホワイト、ケイソウ土、カオリン、マイカ、水酸化アルミニウム、などが挙げられる。前記有機微粒子としては、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリシロキサン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はこれらの共重合体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記体質顔料の前記孔版印刷用エマルションインキにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜50質量%が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0021】
−−着色剤分散剤−−
前記着色剤分散剤としては、エマルションの形成を阻害しないものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する乳化剤用非イオン界面活性剤、アルキルアミン系高分子化合物、アルミニウムキレート化合物、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン、脂肪族多価カルボン酸、ポリエーテル、エステル型アニオン界面活性剤、高分子量ポリカルボン酸の長鎖アミン塩、ポリアミド系化合物、燐酸エステル系界面活性剤、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ポリエチレンイミン、アルキロールアミン塩、インキの保存安定性を阻害しない範囲であればイオン性界面活性剤、両性界面活性剤なども使用可能であり、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、経時によっても粘度を保ち、優れた乳化安定性を付与する観点から、アルミニウムキレート化合物及びポリグリセリン脂肪酸エステル化合物から選択される少なくともいずれかが好ましい。
前記着色剤分散剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、着色剤の総質量の40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、VOC低減の観点からは、0質量%が特に好ましい。
【0022】
−−酸化防止剤−−
前記酸化防止剤は、樹脂等の酸化を防ぎ、ドラム内での長期間放置でのインキの変質を防止でき、油相及び水相の少なくともいずれかに添加することができる。該酸化防止剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、例えば、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、グアヤク脂、クエン酸エステル、抽出トコフェロール、トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸塩類、チオ硫酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸誘導体等が挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ総量に対し2質量%以下が好ましく、1.0質量%がより好まし以下がより好ましく、VOC低減の観点からは、0質量%が特に好ましい。
【0023】
−−鉱物油−−
前記鉱物油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、石油系溶剤、スピンドル油、流動パラフィン、軽油、灯油、マシン油、ギヤー油、潤滑油、モーター油、等が挙げられ、これらの中でも、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、石油系溶剤が特に好ましい。
前記パラフィン系オイルとしては、市販品を用いることができ、例えば、モービル石油社製のガーゴオイルアークティックシリーズ、新日本石油株式会社製の日石スーパーオイルシリーズ、出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイル、ダイアナフレシアシリーズ等が挙げられる。
前記ナフテン系オイルとしては、環分析によるナフテン成分の炭素含有量(CN)が30質量%以上であり、芳香族成分の炭素の含有量(CA)が20質量%以下であり、かつパラフィン成分の炭素含有量(CP)が55質量%以下であるものが好適であり、例えば、モービル石油社製のガーゴオイルアークティックオイル155及び300ID、ガーゴオイルアークティックオイルライト、ガーゴオイルアークティックオイルCヘビー;出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイル、ダイアナフレシアシリーズ;日本サン石油株式会社製のサンセンオイルシリーズなどが挙げられる。
前記石油系溶剤としては、市販品を用いることができ、例えば、エクソン化学社製のアイソパーシリーズ及びエクソール;新日本石油株式会社製のAFソルベントシリーズなどが挙げられる。
【0024】
これらの鉱物油は、インキの安定性等を考慮した場合、3環以上の縮合芳香族環を含む芳香族炭化水素である多環芳香族成分が3質量%未満のものを使用することが好ましい。また、変異原性指数(MI)が1.0未満、アロマ分(%C)が20〜55%、アニリン点が100℃以下であって、かつオイル全質量基準でベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[a]ピレン、ジベンゾ[a,j]アクリジン等の多環芳香族の含有量がそれぞれ10ppm以下であり、かつ合計含有量が50ppm以下であることが好ましく、VOC低減の観点からは、0質量%が特に好ましい。
なお、必要に応じて安全性の高いアロマ系オイル(例えば、特開平11−80640号公報)を使用することもできる。
【0025】
−−ゲル化剤−−
前記ゲル化剤は、油相に含まれる樹脂をゲル化してインキの保存安定性、定着性、及び流動性等を向上させる役割を有し、油相中の樹脂と配位結合する化合物が好ましい。該ゲル化剤としては、例えば、Li、Na、K、Al、Ca、Co、Fe、Mn、Mg、Pb、Zn、Zr等の金属を含む有機酸塩、有機キレート化合物、金属石鹸オリゴマー等が挙げられる。具体的には、オクチル酸アルミニウム等のオクチル酸金属塩、ナフテン酸マンガン等のナフテン酸金属塩、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸塩、アルミニウムジイソプロポキシドモノエチルアセトアセテート等の有機キレート化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ゲル化剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、油相中の樹脂の総量に対し15質量%以下が好ましく、10質量%がより好まし以下がより好ましく、VOC低減の観点からは、0質量%が特に好ましい。
【0026】
<水相>
前記水相は、不凍液、防腐剤、電解質、水、水溶性高分子化合物、水中油型樹脂エマルション、pH調整剤などの成分を含んでなる。
【0027】
−不凍液−
前記不凍液としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、例えば、低級飽和一価アルコール、グリコール、多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記低級飽和一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。前記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。
これらの中でも、水相の揮発等によるインキの経時劣化を抑える効果及びエマルションの安定化の作用により、アルキド樹脂のコロ跡汚れに対する効果を維持したまま、ドラム内での長期間放置でのインキの変質を小さくさせることが可能となる点でグリセリンが好ましい。前記グリセリンの中でも、環境への配慮に優れることから、植物性グリセリンがより好ましく、パーム油由来のグリセリンが特に好ましい。
前記不凍液の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ中の水の総質量に対し15質量%以下が好ましく、4〜12質量%がより好ましい。
【0028】
−防腐剤−
前記防腐剤は、エマルション内で細菌やかびが繁殖するのを防ぐために添加され、エマルションを長期間保存する場合に有効である。前記防腐剤としては、環境への配慮に優れることから、天然物であることが好ましい。
前記天然物の防腐剤としては、例えば、天然のビタミンE、GSE(グレープ シード エクストラクト)、ローズマリー系殺菌剤、等が挙げられ、これらの中でも、環境への配慮により優れることから、天然のビタミンEが特に好ましい。前記天然物の防腐剤としては、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記防腐剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ中に含まれる水の総質量に対し3質量%以下が好ましく、0.1〜1.2質量%がより好ましい。
【0029】
−電解質−
前記電解質は、エマルションの安定性を高めるために添加され、エマルションの安定度向上に有効な離液順列が高いイオンで構成された電解質を添加するのが好ましい。離液順列が高い陰イオンとしては、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン等であり、離液順列が高い陽イオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンである。ここで添加される電解質としては少なくとも陰イオンか陽イオンの一方が前記イオンよりなる塩が好ましく、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、等が挙げられる。これらの中でも、2価の陰イオン含有化合物が好ましく、硫酸マグネシウムが特に好適である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電解質の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水相の0.1〜2質量%が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、環境配慮の観点からは、0質量%が特に好ましい。
【0030】
−水−
前記水としては、清浄であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水道水、イオン交換水、蒸留水等を使用することができる。
【0031】
−水溶性高分子化合物−
前記水溶性高分子化合物としては、孔版印刷用エマルジョンインキに保湿性や粘性を付与することができれば、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然高分子化合物、半合成高分子化合物、合成高分子化合物、などが挙げられる。
前記天然高分子化合物としては、例えば、デンプン、マンナン、アルギン酸ソーダ、ガラクタン、トラガントガム、アラビアガム、プルラン、デキストラン、キサンタンガム、ニカワ、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン等が挙げられる。
前記半合成高分子化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等が挙げられる。
前記合成高分子化合物としては、例えば、アクリル酸樹脂、ポリアクリル酸ナトリウム等の中和物;ポリビニルイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリN−アクリロイルピロリジン、ポリN−イソプロピルアクリルアミド等のポリN−アルキル置換アクリルアミド;ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、これらをアルキル基で部分的に疎水した高分子;アクリルアミド系ポリマー又はアクリル系のポリマーの置換基を部分的にアルキル基で疎水化した共重合タイプのポリマー;ポリエチレンと、ポリプロピレン又はポリブチレンのブロックコポリマーなどが挙げられる。
前記水溶性高分子化合物の前記水相における添加量は、25質量%以下が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
【0032】
−水中油型樹脂エマルション−
前記水中油型樹脂エマルションとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、合成高分子化合物でも天然高分子化合物でもよい。前記合成高分子化合物としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂等が挙げられる。前記天然高分子化合物としては、孔版印刷用エマルションインキに普通に用いられる油相に添加できる高分子化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記水中油型樹脂エマルションの分散方法についても特に制限はなく、分散剤、保護コロイド、界面活性剤を添加していてもよく、またソープフリー乳化重合によって合成したものでもよい。前記水中油型樹脂エマルションの最低造膜温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、40℃以下が好ましい。
【0033】
−pH調整剤−
前記pH調整剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、例えば、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、トリアミルアミン等が好適に挙げられる。必要に応じてこれらのpH調整剤を添加して水相のpHを6〜8に保つことができる。水相のpHが前記範囲からはずれると、水溶性高分子化合物が添加されている場合にその効果が損なわれてしまうことがある。
【0034】
なお、本発明の孔版印刷用エマルションインキには、印刷時に印刷用紙と印刷ドラムとの分離をよくするため、或いは印刷用紙の巻き上がり防止等のために油相にワックスを添加することができる。また、水相には、トリエタノールアミンや水酸化ナトリウム等を添加して、水溶性高分子化合物を添加することにより高粘度化を更に増進させることができる。さらに、水相に防錆剤や消泡剤を添加して印刷の際に印刷機がインキによって錆びたり、インキが泡立つことを防止することができる。これらの添加剤は、孔版印刷用エマルションインキに添加されている公知品を必要に応じて添加すればよく、その添加量は従来品の場合と同程度でよい。
【0035】
−製造方法−
本発明の孔版印刷用エマルションインキの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができるが、例えば、常法により油相及び水相液を予め別々に調製し、前記油相中に水相を添加して、ディスパーミキサー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー等の公知の乳化機内で乳化させることにより製造することができる。具体的には、着色剤、植物性アルキド樹脂、植物油、植物性乳化剤、及び必要に応じて添加されるその他の成分等の添加物を三本ロールミルでよく分散させて油相を常法で調製し、これに、不凍液、防腐剤、電解質、水等の成分が必要に応じて添加されている水相液を徐々に添加して乳化させればよい。
【0036】
本発明の孔版印刷用エマルションインキは、ずり速度20sec−1の時の粘度が3〜40Pa・sが好ましく、10〜30Pa・sがより好ましい。
以上説明したように、本発明の孔版印刷用エマルションインキは、両面印刷時の給紙ローラによる汚れ(コロ跡汚れ)が少なく、VOCの発生が少なく、かつ環境に優しい植物原料をベースとしているので、例えば、輪転孔版印刷機による孔版印刷に好適に用いられる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
着色剤としてのカーボンブラック(コロンビヤンカーボン社製、R1100)5質量%、植物性アルキド樹脂としてのヤシ油脂肪酸アルキド樹脂5質量%、植物油としての精製ひまし油17質量%、及び植物性乳化剤としての大豆油由来のソルビタンモノオレート3質量%、並びにアルミニウムキレート化合物(味の素ファインテクノ社製、プレンアクトAL−M)0.3質量%、及びジブチルヒドロキシトルエン0.1質量%を加え混合して、三本ロールミルで分散し、油相を調製した。
一方、不凍液としての動物性グリセリン(花王社製、グリセリン(動物性))5質量%、防腐剤としてのベンゾイソチアゾリン(THORケミカル社製、ベンゾイソチアゾリン)0.1質量%、電解質としての硫酸マグネシウム(関東化学社製、硫酸マグネシウム)0.3質量%、及び水道水残部を、混合して攪拌し、水相を調製した。
次に、前記油相に前記水相を徐々に添加し、ディスパーミキサーで乳化させて、実施例1の孔版印刷用エマルションインキを調製した。
【0039】
(実施例2)
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例1において、植物性アルキド樹脂を大豆油脂肪酸アルキド樹脂5質量%、植物油を大豆ブチルエステル(当栄ケミカル社製、トエノール#4120)17質量%とし、ジブチルヒドロキシトルエンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、実施例2の孔版印刷用エマルションインキを調製した。
【0040】
(実施例3)
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例2において、不凍液をパーム油由来のグリセリン(花王社製、グリセリン(パーム))5質量%、防腐剤を天然ビタミンE0.1質量%とした以外は、実施例2と同様にして、実施例3の孔版印刷用エマルションインキを調製した。
【0041】
(実施例4)
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例3において、アルミニウムキレート化合物を添加しなかった以外は、実施例3と同様にして、実施例4の孔版印刷用エマルションインキを調製した。
【0042】
(実施例5)
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例1において、精製ひまし油を15.5質量%とし、パラフィン系鉱物油(粘度10Pa・s)(三和化成社製、サミックGA1010)0.5質量%を更に添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の孔版印刷用エマルションインキを調製した。
【0043】
(比較例1)
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例2において、植物性アルキド樹脂及び植物油の代わりにパラフィン系鉱物油(粘度46Pa・s)(三和化成社製、サミックGA1046)22質量%を添加し、大豆油由来のソルビタンモノオレートの代わりに牛脂由来のソルビタンモノオレート(ユニケマ社製、アトラスG−946)3質量%を添加し、かつ動物性グリセリンの代わりにエチレングリコール(三愛石油社製、エチレングリコール)5質量%を添加した以外は、実施例2と同様にして、比較例1の孔版印刷用エマルションインキを調製した。
【0044】
(比較例2)
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例2において、植物油の代わりにパラフィン系鉱物油(粘度10Pa・s)(三和化成社製、サミックGA1010)17質量%を添加し、かつ動物性グリセリンの代わりにエチレングリコール(三愛石油社製、エチレングリコール)5質量%を添加した以外は、実施例2と同様にして、比較例2の孔版印刷用エマルションインキを調製した。
【0045】
(比較例3)
実施例1において、大豆油由来のソルビタンモノオレートの代わりに牛脂由来のソルビタンモノオレート(ユニケマ社製、アトラスG−946)3質量%を添加した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の孔版印刷用エマルションインキを調製した。
【0046】
(比較例4)
実施例1において、精製ひまし油を15質量%とし、パラフィン系鉱物油(粘度10Pa・s)(三和化成社製、サミックGA1010)2質量%を更に添加した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の孔版印刷用エマルションインキを調製した。
【0047】
なお、便宜のため、実施例1〜4及び比較例1〜2の各孔版印刷用エマルションインキの組成を表1及び表2に示す。
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
〔評価〕
次に、得られた実施例1〜5及び比較例1〜4の各孔版印刷用エマルションインキについて、以下の5種の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0050】
<評価1:コロ跡汚れの評価>
東北リコー製プリポートN−800に、該当インキを十分行き渡らせた後にベタ画像印刷を行い、印刷後24時間放置後に画像の裏面を、白紙製版で再度印刷した。その100枚目の画像の、用紙白部と汚れ部との状態を目視で観察し、下記2段階基準で評価を行った。
評価基準
○:良好
×:悪い
【0051】
<評価2:油相中のVOC成分の測定>
油相中のVOC成分を、米国「Method24」にて測定した。この数値が小さいほど、VOCの発生が少ないことを示す。
米国「Method24」のVOC測定とは、110℃±5℃の強制換気オーブン中に1時間開放サンプルを放置し、減量をVOCと見なす方法であり、オフセットインキの業界では最も一般的なVOC測定方法である。
【0052】
<評価3:水相中のVOC成分の測定>
水相中のVOC成分を、米国「Method24」にて測定した。なお、水自体はVOCに含まれないため、値は、水の減量分を除外して各例の水相組成より推測した。この数値が小さいほど、VOCの発生が少ないことを示す。
【0053】
<評価4:SOYマークの評価>
各例の組成より、アメリカ大豆協会のSOYマーク範囲に入るかを、下記2段階基準で評価した。
評価基準
○:SOYマーク可
×:SOYマーク不可
【0054】
<評価5:植物性成分量の算出>
各例の組成より、水と着色剤とを除いた成分中、植物性成分がどの程度使用されているかを、百分率により求めた。この率が高いほど、植物を多く使用していることになる。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
表3及び表4の結果から、実施例1〜5の孔版印刷用エマルションインキは、比較例1〜4のインキに比べて、コロ跡汚れが少なく、VOCの発生が少なく、かつ環境に優しい植物原料をベースとしていることが判る。また、実施例2〜4の孔版印刷用エマルションインキは、SOYマークが可能な組成であることが判る。更に、実施例3及び実施例4の孔版印刷用エマルションインキは、植物原料の量が多く、より環境に優しいことが判る。特に、実施例4の孔版印刷用エマルションインキは、VOC発生低減効果が更に大きいことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の孔版印刷用エマルションインキは、両面印刷時の給紙ローラによる汚れ(コロ跡汚れ)が少なく、VOCの発生が少なく、かつ環境に優しい植物原料をベースとしているので、例えば、輪転孔版印刷機による孔版印刷に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含んでなり、該油相が、着色剤、植物性アルキド樹脂、植物油、植物性乳化剤、及び油相中含有量が5質量%以下の前記4成分以外のその他の成分を含むことを特徴とする孔版印刷用エマルションインキ。
【請求項2】
アルキド樹脂が大豆油脂肪酸アルキド樹脂であり、植物油がエステル化大豆油であり、乳化剤が大豆油由来ソルビタンモノオレートである請求項1に記載の孔版印刷用エマルションインキ。
【請求項3】
水相成分が、植物性グリセリン、防腐剤、及び水相中含有量が1質量%以下の電解質を含み、かつ前記防腐剤が天然物である請求項1から2のいずれかに記載の孔版印刷用エマルションインキ。
【請求項4】
植物性グリセリンがパーム油由来のグリセリンであり、防腐剤がビタミンEである請求項3に記載の孔版印刷用エマルションインキ。
【請求項5】
油相が、着色剤、植物性アルキド樹脂、植物油、及び植物性乳化剤のみを含む請求項1から4のいずれかに記載の孔版印刷用エマルションインキ。

【公開番号】特開2008−106142(P2008−106142A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290180(P2006−290180)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】